JP3665777B2 - 磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法、及び磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法、及び磁気記録媒体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、高密度記録再生が可能な磁気記録媒体に用いられる磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法及び磁気記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、さらなる高密度記録に対応可能な磁気記録媒体が要請されている。磁気記録媒体の高密度記録化を達成するためには、磁気記録媒体表面に対する磁気ヘッドの浮上高さを小さくすることが重要となる。磁気ヘッドの浮上高さは磁気記録媒体表面の表面粗さに相関があるため、磁気記録媒体表面、磁気記録媒体用基板の表面粗さをより平滑にする試みがなされている。
【0003】
従来より磁気記録媒体用基板として機械的耐久性や高い平滑性が得られるなどの理由からガラス基板が用いられている。そして、ガラス基板を平滑にする方法として、特開平7−240025や特開平10−241144が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特開平7−240025に記載されている方法は、除去ステップ(研磨工程)として、酸性になるようにpH調製されたコロイド粒子(コロイダルシリカ)溶液を用いて磁気ディスク用基板を作製する方法が開示されている。
【0005】
また、特開平10−241144に記載されている方法は、研削工程の後、酸化セリウム+水を用いた第1、2研磨工程、さらにコロイダルシリカ+水を用いた第3研磨工程によって磁気記録媒体用ガラス基板を作製する方法が開示されている。
【0006】
しかし、前者の方法は研磨液として酸性の水溶液を用いており、スラリーの凝集/定盤の腐食(酸化)といった問題がある。また、後者の方法は、ガラス基板表面を高平滑性とするために3段階の研磨工程を実施しており製造コストがかかる。また、第3研磨工程では、コロイダルシリカ+水の研磨液を用いているので研磨速度が遅く、研磨時間がかかり生産性が劣る。さらには、研磨工程後の洗浄として、水やアルカリ水溶液を用いて超音波洗浄が行われるが、水の場合、コロイダルシリカ研磨砥粒を十分に除去しきれず研磨残りが発生する。また、アルカリ水溶液(通常濃度7wt%(PHでは14.243)による洗浄の場合、コロイダルシリカ研磨砥粒は溶解除去されるため研磨残りの問題はないが、コロイダルシリカ研磨砥粒を除去するためにアルカリ水溶液濃度や洗浄条件等を強くするとガラス基板にアルカリ水溶液によるダメージ(凹欠陥)が発生するという問題がある。この凹欠陥は、基板上に少なくとも磁性層を形成して磁気記録媒体を作製し、記録再生を行った場合に、信号エラーとなる要因となる。
【0007】
そこで本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、研磨残りや凹欠陥のない高平滑性の磁気記録媒体用ガラス基板を提供し、生産性のよい磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法、及び磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段は以下の構成を有する。
(構成1)
円板状ガラス基板の表面を研削した後、コロイダルシリカ砥粒を含む研磨液によって研磨し、次いでアルカリ洗浄を行うことによってこの円板状ガラス基板の表面を所定の表面粗さにして磁気記録媒体用ガラス基板を得る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、
前記研磨液は、アルカリを含有させることにより、そのpHが 10.2 を超え、 12 以下となるように調整されたものであり、
前記アルカリ洗浄における洗浄液のpHが、前記研磨における研磨液のpHより大きくなるように調整されていることを特徴とする。
(構成2)
構成1において、アルカリ洗浄における洗浄液のpHが 13.87 〜 14.2 であることを特徴とする。
(構成3)
構成1又は2において、前記アルカリ洗浄における洗浄液のアルカリ成分は NaOH であり、その NaOH 濃度が 3 wt%〜5wt%であることを特徴とする。
(構成4)
構成1〜3のいずれかにおいて、前記磁気記録用ガラス基板の主表面の表面粗さが Rmax ≦ 3 nmであることを特徴とする。
ただし、前記 Rmax は、原子間顕微鏡(AFM)を用いて測定した最大高さである。
(構成5)
構成1〜4のいずれかにおいて、前記コロイダルシリカ砥粒の粒径が 0.02 〜 0.5 μmであることを特徴とする。
(構成6)
構成1〜5のいずれかにおいて、前記磁気記録用ガラス基板は、アルミノシリケートガラスからなることを特徴とする。
(構成7)
構成1〜6の何れかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法によって得られた磁気記録媒体用ガラス基板の主表面上に少なくとも磁性層を形成することを特徴とする。
【0009】
上記構成1によれば、研磨液としてコロイダルシリカ砥粒の微細な研磨剤を用いることにより高い平滑性が得られ、かつ研磨液にアルカリを含有させて研磨液のpHが10.2を超え、12以下となるように調整しているので、平滑性を維持したままガラス基板に対する研磨速度を上げることができる。従って、従来のように研削工程の後、酸化セリウム砥粒などによる複数段階の研磨工程を行いさらに最終研磨工程としてコロイダルシリカ砥粒による精密研磨が行われていたのを、最終研磨工程前の研磨工程を1回、又は省略することができ、生産性を向上させてなおかつ高平滑性のガラス基板が得られる。
【0010】
研磨液のpHが10.2以下のアルカリ性の場合、ガラス基板に対する研磨速度が遅くなるので、生産性に劣るので好ましくない。また、pHが12を超える場合、コロイダルシリカ砥粒が溶解し、精密研磨が出来ないので好ましくない。また、研磨液のPHが小さくなると、コロイダルシリカ砥粒が凝集し、好適に研磨できなくなる場合がある。
【0011】
研磨液のpHを調整するアルカリとしては、例えば、NaOH、KOH、などが挙げられる。NaOHにより研磨液のPHを調節すると、好適に研磨できるので好ましい。
【0012】
研磨液のpHは生産性と研磨布の耐アルカリ性の点から10.5以上11以下とすることが好ましい。
【0013】
コロイダルシリカ砥粒の平均粒径は、研磨後に得る基板の平滑性(表面粗さ)によって適宜調整される。例えば、0.02〜0.5μmとする。近年の高密度記録再生が可能な高い平滑性(表面粗さRmax≦3nm)のガラス基板を得るためには、コロイダルシリカの平均砥径は0.5μm以下を必要とする。
【0014】
またコロイダルシリカ砥粒の濃度は、加工速度や表面粗さに応じて適宜調整される。例えば、加工速度を考慮して20〜35wt%とすることが好ましい。研磨剤濃度が高くなるに従って、基板の表面は粗くなる。
【0015】
本発明に用いるガラス基板の材料には特に制限はない。石英ガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、アルミノボロシリケートガラス、無アルカリガラス、結晶化ガラスなどが挙げられる。
【0016】
アルカリを含有させたコロイダルシリカ砥粒による研磨を行った後、アルカリ洗浄を行うことにより、コロイダルシリカの研磨残りを確実になくすことができるとともに、コロイダルシリカ砥粒を溶解除去するために行なわれるアルカリ洗浄のガラス基板に対する負荷(アルカリ濃度やPH)を低減することができるので、凹欠陥の発生を抑制することができる。研磨後のアルカリ洗浄の濃度は、研磨残りをなくすために研磨工程でのアルカリ濃度より大きいことが望ましく、pH14以上が好ましい。但し、アルカリ洗浄によるガラス基板に対するダメージ(凹欠陥)が起きない濃度(pH)が良い。以上の観点から本発明者が研究したところ、前記研磨後のガラス基板のアルカリ洗浄において好適な洗浄液のPHは、13.87〜14.20とするのが望ましい。
【0017】
研磨液に含有させるアルカリ及び、研磨後のアルカリ洗浄に用いるアルカリとして同じアルカリ成分、特にNaOHを使用することにより、基板表面における研磨剤残りなどの付着物を効果的に除去できるので好ましい。前記研磨後のアルカリ洗浄においてNaOHを用いる場合、洗浄液に含有するNaOHの濃度は3wt%〜5wt%とすると好適である。
【0018】
ガラス基板の材料としてアルミノシリケートガラスを用いることにより、アルカリに対する化学的耐久性が良いので、凹欠陥の発生を低減することができるので好ましい。
【0019】
アルカリに対する化学的耐久性が良いアルミノシリケートガラスの組成としては、SiO2を58〜75重量%、Al2O3を5〜23重量%、Li2Oを3〜10重量%、Na2Oを4〜13重量%含有するガラスが挙げられる。
【0020】
上記構成によって得られた磁気記録媒体用ガラス基板上に少なくとも磁性層を形成することにより、高密度記録再生が可能な磁気記録媒体を生産性よく、エラーの発生の起きない信頼性の高い磁気記録媒体が得られる。
【0021】
本発明に用いる磁性層の材料には特に制限はない。例えば、CoCrPtB、CoCrPtTa、CoCrPtNi、CoCrPt、CoCrNiTa、CoCrTa、CoCrNi、CoCrPtTaBなどが挙げられる。
【0022】
また、磁気特性や磁気ヘッドに対する耐久性、摺動特性に応じて、シード層、下地層、中間層、保護層、潤滑層を必要に応じて適宜設けることができる。
【0023】
シード層は、その上に形成する層の結晶粒径を制御する目的で設けられ、例えば、NiAl、AlCo、CrTi、CrNiなどの材料を用いることができる。
【0024】
下地層は、bcc構造を有するものを用いるのが一般的で、主に静磁気特性を良好にする目的で設けられ、例えば、CrやCr合金(CrMo、CrV、CrTi,CrW、CrTaなど)の材料を用いることができる。
【0025】
中間層は、hcp構造を有するものを用いるのが一般的で、hcp構造を有する磁性層の結晶配向を整える目的で設けられ、例えば、CoCr、CoCrB、CoCrPt、CoCrPtTaなどの材料を用いることができる。
【0026】
保護層は、磁気ヘッドに対する耐久性、耐食性のために設けられ、例えば、カーボン、水素化カーボン、窒化カーボン、SiO2、ZrO2などの材料を用いることができる。
【0027】
潤滑層は、磁気ヘッドに対する特性の向上のために設けられ、例えば、パーフルオロポリエーテル潤滑剤を用いるのが一般的である。
【0028】
【本発明の実施の形態】
本発明を実施例を挙げて具体的に説明する。
【0029】
(実施例1)
この実施例は、(1)粗研削工程、(2)形状加工工程、(3)端面研磨工程、(4)精研削工程、(5)第1研磨工程、(6)最終研磨工程、(7)最終研磨後洗浄工程、(8)化学強化工程、(9)強化後洗浄工程、(10)磁気ディスク製造工程の各工程を有する。以下、各工程を説明する。
【0030】
(1)粗研削工程
まず、溶融ガラスを、上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスして、直径66mmφ、厚さ1.2mmの円板状のアルミノシリケートガラスからなるガラス基板を得た。この場合、ダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で形成したシートガラスから研削砥石で切り出して円板状のガラス基板を得ても良い。なお、アルミノシリケートガラスとしては、SiO2:58〜75重量%、Al2O3:5〜23重量%、LiO2:3〜10重量%、Na2O:4〜13重量%を主成分として含有する化学強化基板用ガラスを使用した。
【0031】
次いで、ガラス基板に研削工程を施した。研削工程は、寸法精度及び形状精度の向上を目的としている。研削工程は両面研削装置を用いて行い、砥粒の粒度を#400で行った。詳しくは、粒度#400のアルミナ砥粒を用い、荷重Lを100kg程度に設定して、内転ギアと外転ギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガラス基板の両面を面制度0〜1μm、表面粗さRmaxで6μm程度に仕上げた。
【0032】
(2)形状加工工程
次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔をあけると共に、外周端面も研削して直径65mmφとした後、外周端面および内周端面に所定の面取加工を施した。このときのガラス基板端面(内周、外周)の表面粗さは、Rmaxで4μmであった。
【0033】
(3)端面研磨工程
次いで、ブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながらガラス基板の端面(内周、外周)の表面粗さをRmaxで1μm、Raで0.3μm程度に研磨した。上記端面研磨工程を終えたガラス基板の表面を水洗浄した。
【0034】
(4)精研削工程
次に、砥粒の粒度を#1000に変え、ガラス基板表面を研削することにより、平坦度3μm、表面粗さRmaxが2μm程度、Raが0.2μm程度とした。尚、Rmax、Raは原子間力顕微鏡(AFM)(デジタルインスツルメンツ社製ナノスコープ)にて測定、平坦度、は平坦度測定装置で測定したもので、基板表面の最も高い部分と、最も低い部分との上下方向(表面に垂直な方向)の距離(高低差)である。上記精研削工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、水の各洗浄層に順次浸漬して洗浄した。
【0035】
(5)第1研磨工程
次に、研磨工程を施した。研磨工程は、上述した研磨工程で残留したキズや歪みの除去を目的とするもので、両面研磨装置を用いて行った。詳しくは、ポリシャとして硬質ポリシャを用い、以下の研磨条件で実施した。
研磨液:酸化セリウム(平均粒径:1.5μm)+水
荷重:80〜100g/cm2
研磨時間:30〜50分
除去量:35〜45μm
上記第1研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄層に順次浸漬して洗浄した。
【0036】
(6)最終研磨工程
次に、第1研磨工程で使用したタイプと同じ両面研磨装置を用い、ポリシャとして軟質ポリシャに変えて最終研磨工程を実施した。研磨条件は、
研磨液:コロイダルシリカ(平均粒径:0.15μm、研磨剤濃度:32wt%)+NaOH(濃度1mol/l 添加量 400ml)+水
(pH:10.5(EUTEC社製pH Scanにより測定))
荷重:60〜120g/cm2
研磨時間:5〜40分
除去量:0.5〜8μm
とした。
図1に示すように、研磨速度は、0.07μm/minであった。
【0037】
(7)最終研磨後洗浄工程
上記最終研磨工程を終えたガラス基板を、濃度3〜5wt%のNaOH水溶液に浸漬してアルカリ洗浄を行った。尚、洗浄は超音波を印加して行った。さらに、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して洗浄した。この得られたガラス基板の表面をAFM(デジタルインスツルメンツ社製ナノスコープ)により観察したところ、コロイダルシリカの研磨残りは確認されなかった。また、アルカリ洗浄ダメージによる凹欠陥もなかった。
なお、濃度3wt%〜5wt%のNaOH水溶液のPHは、13.875〜14.097である。
【0038】
(8)化学強化工程
次に、上記研削、研磨、最終研磨後洗浄工程を終えたガラス基板に化学強化を施した。化学強化には、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化塩を用意し、この化学強化塩を375℃に加熱し、300℃に予熱された洗浄済みガラス基板を約3時間浸漬して行った。
このように、化学強化塩に浸漬処理することによって、ガラス基板表層のリチウムイオン、ナトリウムイオンは、化学強化塩中のナトリウムイオン、カリウムイオンにそれぞれ置換されガラス基板は強化される。ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは約100〜200μmであった。上記化学強化を終えたガラス基板を20℃の水槽に浸漬して急冷し、約10分維持した。
【0039】
(9)強化後洗浄工程
上記急冷を終えたガラス基板を、約40℃に加熱した硫酸に浸漬し、超音波を掛けながら洗浄を行った。このようにして得られたガラス基板の表面粗さをAFM(デジタルインスツルメンツ社製ナノスコープ)で測定したところ、Rmax=2.62nm、Ra=0.31nmで良好な結果が得られた。
従って、Rmax/Raは。8.45である。
なお、Rmax及びRaは、日本工業規格(JIS)B0601に規定の定義に基づく。
【0040】
(10)磁気ディスク製造工程
上述した工程を経て得られた磁気ディスク用ガラス基板に対し、スパッタリング装置にて、NiAlシード層、CrV下地層、CoCrPtB磁性層、水素化カーボン保護層を成膜し、ディップ法によりパーフルオロポリエーテル潤滑層を形成して磁気ディスクを作製した。
得られた磁気ディスクに対し、グライド高さ、ロードアンロード試験(40万回)を行ったところ、浮上量4.5nmまでは、ヘッド−媒体間に接触が発生しないことが確認できた。また、クラッシュが発生せず、記録再生試験においても信号エラーはなかった。なお、グライド高さの観点でいえば、5.0nmまでは、ヘッド−媒体間に接触が発生しないことが好ましい。即ち、グライド高さは5.0nm以下であることが好ましい。
【0041】
(実施例2)
次に、実施例1において、研磨液中に含まれるアルカリの量を調整し、研磨液のpH濃度を調整した以外は実施例1と同様にして磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクを作製した。
【0042】
その結果、図1に示すように、pH濃度を上げるにしたがって、ガラス基板に対する研磨速度が向上することが確認できる。また、研磨液のpH濃度が12を超えた場合、コロイダルシリカの溶解が始まり加工できない結果となった。
【0043】
尚、研磨液のpH濃度が12以下の範囲内でpH濃度を変えて得られたガラス基板の表面粗さをAFM(デジタルインスツルメンツ社製ナノスコープ)で確認したところ、実施例1と同程度であり表面粗さにはほとんど変化していないことが確認された。
【0044】
実施例1と同様にこれらの得られたガラス基板表面のコロイダルシリカの研磨残りは確認されず、また、アルカリ洗浄ダメージによる凹欠陥もなかった。
【0045】
また、得られた磁気ディスクに対し、グライド高さ、ロードアンロード試験(40万回)を行ったところ、浮上量4.5nmまでは、ヘッド−媒体間に接触が発生しないことが確認できた。また、クラッシュが発生せず、記録再生試験においても信号エラーはなかった。
【0046】
(比較例1)
次に実施例1における最終研磨工程において、研磨液としてNaOHを加えなかった(研磨液のpH濃度:10.2)以外は実施例1と同様にして磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクを作製した。尚、コロイダルシリカ砥粒の研磨残りをなくすために、アルカリ洗浄におけるNaOH濃度は7wt%とし、超音波を強く印加した。なお、アルカリ洗浄におけるNaOH濃度が7wt%のとき、PHは14.243であった。比較例1の結果は図1に示す。
【0047】
その結果、図1に示すとおり、研磨速度は、0.04μm/minに低下した。従って、実施例と同様の表面粗さに仕上げるためには研磨加工時間が余計にかかり、これは、生産枚数に比べると100枚に相当する。(また、特開平10−241144にあるように、研磨工程を3段階にした場合と実施例と比較した場合、生産枚数に比べると150枚に相当する。)
【0048】
実施例1では、研磨速度は0.07μm/minであったので、例えば、研磨加工に必要な研磨除去量が1.5μmであった場合、21.4分の研磨時間が必要である。
比較例1では、研磨速度は0.04μm/minであったので、例えば研磨加工に必要な研磨除去量が1.5μmであった場合、37.5分の研磨時間が必要である。
【0049】
従って、例えば、一度に100枚の磁気ディスク用ガラス基板を研磨する研磨装置を用いた場合にあっては、実施例1の場合、1時間で約300枚の研磨加工でできるのに対し、比較例1の場合、1時間で100枚程度〜200枚未満しか研磨加工できないために、製造コストが高くなる。
本発明においては、研磨速度は0.05μm/min以上が得られると好ましい。この場合、例えば、研磨加工に必要な研磨除去量が1.5μmであった場合、研磨時間は30分となるので、例えば、一度に100枚の磁気ディスク用ガラス基板を研磨する研磨装置を用いた場合にあっては、1時間で200枚の研磨加工が可能となる。
【0050】
また、ガラス基板表面のコロイダルシリカの研磨残りは確認されなかったが、研磨剤を落とすためにアルカリ(NaOH)濃度が高く、洗浄条件(超音波)も強くなり、アルカリ洗浄ダメージによる凹欠陥も見られた。
【0051】
また、得られた磁気ディスクに対し、グライド高さ、ロードアンロード試験を行った結果、実施例との差は見られなかったが、記録再生試験において凹欠陥による信号エラーが確認された。
【0052】
(実施例3)
実施例1の(6)最終研磨工程において、研磨液に含有させるアルカリをNaOHに替えて、KOHとした(実施例3)。研磨液に含有させるアルカリをKOHに変更した点以外は実施例1と同様の製造方法による同様のガラス基板である。なお、研磨液のPHは10.8となるように、KOHの濃度を調節した。その結果、研磨速度は0.07μm/minであった。得られたガラス基板の表面粗さを実施例1と同様に測定したところ、Rmax=2.91nm、Ra=0.29nmであった。従って、Rmax/Ra=10であった。また、研磨残りと、アルカリ洗浄ダメージによる凹欠陥も確認されなかった。
【0053】
得られた磁気ディスク用ガラス基板に対して、実施例1と同様に(10)磁気ディスク製造工程を施し、得られた磁気ディスクを実施例1と同様に試験したところ、浮上量4.8nmまでは、ヘッド−媒体間に接触が発生しなかった。また、クラッシュが発生せず、記録再生試験においても信号エラーはなかった。
実施例1と実施例3と結果とを比較すると、実施例3においても好適な結果が得られていることが分かるが、実施例1ではグライド高さが4.5nmであるのに対し、実施例3では、グライド高さが4.8nmとやや悪化している。これは、実施例3において、Rmax/Raが10以上となったことによるものと考えられる。グライド高さの観点からは、本発明において、Rmax/Raが10未満とすると好ましいと考えられる。
【0054】
なお、実施例1に比べて実施例3でグライド高さがやや悪化した原因を調査したところ、目視検査では確認できなかったが、電子顕微鏡(SEM)を用いた精密検査の結果、極微量の研磨剤残りが基板表面に僅かに残留していることが分かった。
【0055】
(参考例)
次に実施例1におけるガラス基板を石英ガラスにし、研磨液に含まれるNaOHを変化させた以外は実施例1と同様にして磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクを作製した。
【0056】
その結果、pH濃度を変化させても研磨速度にはほとんど変化は見られなかった。また、アルカリ洗浄ダメージによる凹欠陥はなかった。
【0057】
また、得られた磁気ディスクに対するグライド高さ、ロードアンロード試験、記録再生試験においても実施例と同様の結果となった。
【0058】
よって、実施例と参考例の結果を比較すると、生産性を考慮して研磨速度を調整でき、かつアルカリに対する化学的耐久性に良好なアルミノシリケートガラスが適していることが確認された。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、研磨残りや凹欠陥のない高い平滑性の磁気記録媒体用ガラス基板を得ることができ、磁気記録媒体の高密度記録化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 研磨液のpH濃度と研磨速度の関係を示すグラフである。
Claims (7)
- 円板状ガラス基板の表面を研削した後、コロイダルシリカ砥粒を含む研磨液によって研磨し、次いでアルカリ洗浄を行うことによってこの円板状ガラス基板の表面を所定の表面粗さにして磁気記録媒体用ガラス基板を得る磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、
前記研磨液は、アルカリを含有させることにより、そのpHが 10.2 を超え、 12 以下となるように調整されたものであり、
前記アルカリ洗浄における洗浄液のpHが、前記研磨における研磨液のpHより大きくなるように調整されていることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。 - 前記アルカリ洗浄における洗浄液のpHが 13.87 〜 14.2 であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- 前記アルカリ洗浄における洗浄液のアルカリ成分は NaOH であり、その NaOH 濃度が 3 wt%〜5wt%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- 前記磁気記録用ガラス基板の主表面の表面粗さが Rmax ≦ 3 nmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
ただし、前記 Rmax は、原子間顕微鏡(AFM)を用いて測定した最大高さである。 - 前記コロイダルシリカ砥粒の粒径が 0.02 〜 0.5 μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- 前記磁気記録用ガラス基板は、アルミノシリケートガラスからなることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- 請求項1乃至請求項6の何れかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法によって得られた磁気記録媒体用ガラス基板の主表面上に少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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