JP3652564B2 - 流体管保護装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の壁面等に取付けられる保護カバー内に使用されて、同一の保護カバーを使用して径の異なる2種類の流体管を保持可能にした流体管保護装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、硬質塩化ビニール管から成る水道管においては、JISの規定によって、「呼び径」の異なるものが複数種類定められている。この水道管は、図6に示されるように、基台と蓋体とを組み付けた保護カバーCを建物の壁面等に取付けて、この保護カバーC内に収容保護された状態で使用される。このため、保護カバーのメーカーは、JISに定められた「呼び径」に対応する寸法のものを複数種類だけ製作していた。一方、施工業者は、「呼び径」の異なる水道管の数と同一数のサイズの異なる多種類の保護カバーを保有しておく必要があった。更に、施工の際に、サイズの異なる多種類の保護カバーを多量に施工現場に持ち運ぶ必要があり、施工現場が非常に煩雑になる等の問題があった。
【0003】
また、施工に際しては、配管する水道管の大きさに対応させて、逐一保護カバーを使い分けする必要があり、非常に面倒であった。そのため、配管途中において、配管すべき管の径が変更された場合においても、変更後の管に対応するサイズの保護カバーに変えることなく、変更前の寸法的に非対応の保護カバーをそのまま使用して配管してしまうこともあった。逆に、水道管の分岐箇所等で、保護カバーのサイズを変えると、美観が損なわれるために、管の径が変更された場合においても、保護カバーのサイズを変えずに、寸法的に非対応の保護カバーをそのまま使用して、施工されることもあった。
【0004】
また、現実の施工においては、「呼び径」に該当しないJIS規格外の水道管が多用されており、これに対応する適切な保護カバーがないために、使用される規格外の水道管よりも大きな寸法の既存の保護カバーを選択して施工せざるを得なかったために、規格外の水道管に対応する適切な保護カバーの販売が求められていた。
【0005】
更に、水道管の径に非対応な保護カバーを使用すると、保護カバーと、その内部に収容された水道管との間に所定の隙間が生じる。この隙間の存在によって、水の使用開始時、及びその停止時に生じる軽いウォーターハンマー現象によって、保護カバー内において水道管が揺動して、保護カバーの内周面に衝突し、これにより不快な衝突音を発するという問題もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑み、同一の保護カバーを使用して、径の異なる2種類の流体管を保持可能にすることを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するための請求項1の発明は、基台と蓋体との組み付けにより内部に流体管を収容して保護する長尺状の保護カバーと、流体管を保持する保持部と、該保持部に流体管を挿入するための開口部とを備えた流体管保持具とから成り、前記保護カバーの基台には、大径の流体管を保持するための保持部が内方にわん曲した状態で対向して形成され、しかも前記保持部は、その内側に流体管保持具を嵌合保持すべく、弾性変形により外方に拡開可能となっていて、前記流体管保持具には、その開口部両端に爪部が外方に向けて形成されて、前記流体管保持具は、前記開口部が管挿入側を臨むように位置決めされて、その爪部が前記保護カバーを構成する基台の保持部の開口側端部に係合することにより、前記基台の保持部の間に配置されて取付けられ、前記開口部から挿入された小径の流体管を前記保持部により、前記保護カバー内において保持することを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明によれば、規格外の流体管を使用する場合において、規格の流体管に対応する既存の保護カバーを使用しても、該保護カバーの基台に内方にわん曲した状態で対向して形成された保持部の間に流体管保持具を、その開口部が常に管挿入側を臨むように位置決めして配置できるので、建物の壁面等に取付けられた前記基台に対して管挿入側から流体管を挿入すると、該流体管は、基台に取付けられた流体管保持具に保持された状態で、該基台に収容される。その後に、通常の施工によって、流体管保持具を介して流体管が保持収容されている基台に対して蓋体を覆い被せると、規格外(小径)の流体管が、規格(大径)の流体管に対応する既存の保護カバー内に収容保護される。この結果、請求項1の発明によれば、同一の保護カバーを使用して、規格(大径)の流体管と、規格外(小径)の流体管との2種類の流体管を保持可能であると共に、径が異なっていて、いずれも規格の2種類の流体管も保持可能である。
【0009】
このように、規格外の流体管が、規格の流体管に対応する既存の保護カバー内に収容保護されるために、規格外の流体管に対応する保護カバーを製作準備する必要がなくなる。また、寸法的に非対応の保護カバーの内部に流体管がしっかりと固定される。更に、保護カバーの基台の保持部の間に予め流体管保持具を配置して取付けておくのみで、他は、通常の施工と全く同様にして、保護カバーの内部に流体管を収容保護できると共に、保護カバーの基台に流体管保持具が取付けられているために、配管後において前記保持具の位置調整を行う必要もなくなる。
【0010】
また、保護カバーの基台の開口から流体管保持具を押し込むと、流体管保持具の開口側両端の爪部は、基台の保持部の開口側端部に係合して、基台に流体管保持具が回動不能に取付けられる。この状態で、流体管保持具の開口から小径の流体管を内部に押し込むことにより確実に収容される。また、保護カバーの基台の保持部は、その内側に流体管保持具を嵌合保持すべく、内方にわん曲して形成されていて、弾性変形により外方に拡開可能であると共に、保護カバーの保持部の内側に流体管保持具が部分的に嵌合保持されて、流体管保持具の開口部両端に外方に向けて形成された爪部が、保護カバーの基台の保持部の開口側端部に係合する構造である。よって、保護カバーの基台の保持部の内側に流体管保持具を嵌合保持させた状態で、流体管保持具は保護カバーの保持部の開口部両端に確実に係合されているため、流体管保持具の開口部から小径の流体管を押し込む際に、流体管保持具が回ることなく、小径の流体管を流体管保持具に対して確実に押し込んでしっかりと保持できる。
【0011】
【0012】
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記流体管保持具は、前記保護カバーの全長に亘って配置されることを特徴としているため、小径の流体管が全長に亘って流体管保持具により保持されて、保護カバーの内部において小径の流体管を一層しっかりと固定できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、実施形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1は、本発明に係る流体管保持具S1 を使用して水道管Pを収容保護した状態の断面図であり、図2は、同じく斜視図であり、図3は、流体管保護装置を構成する各部材の分解斜視図である。図1ないし図3において、流体管保護装置は、規格の水道管に対応する既存の保護カバーCと、該保護カバーCを構成する基台10に取付けられる流体管保持具S1 とで構成される。保護カバーCは、長尺状の樹脂成形品であって、水道管Pが収容される基台10と、該基台10の全体を覆う蓋体20とで構成され、取付部分の長さに切断して使用される。
【0015】
前記保護カバーCを構成する基台10は、幅方向の中央部が両端部よりも高くなった段差状の底板部11と、該底板部11の上面に一体に設けられた一対の側板部12とで構成され、側板部12は、底板部11の段差部に設けられていて、該底板部11に対して垂直に設けられた側板基部12aの上端部に、側板本体部12bが設けられている。側板本体部12bの下端部は、外方に向けて屈曲成形されており、その上端部は、内方に向けてわん曲されている。側板部12が上記形状になっているために、その下端部と、前記底板部11の幅方向の両端部との間には、後述の蓋体20の嵌合凸部23が嵌合される嵌合凹部13が長手方向に沿って形成されている。
【0016】
一方、蓋体20は、天板部21の両側にそれぞれ側板部22が一体に設けられて、下方が開口した形状になっていて、各側板部22の下端部の内側には、前記基台10の嵌合凹部13に嵌合される中空構造の嵌合凸部23が長手方向に沿って相対向して設けられている。
【0017】
この保護カバーCは、図6に示されるように、建物の壁面Wに基台10を固定して、その前面の開口から規格の水道管を挿入して、その内部に収容した後に、基台10に対して蓋体20を覆い被せて、基台10の嵌合凹部13に対して蓋体20の嵌合凸部23を嵌合させることにより、基台10に対して蓋体20を固定して、内部の水道管を保護している。保護カバーCの基台10に規格の水道管を収容した場合には、該水道管は、基台10の両側板部12を僅かに外方に拡開させた不動状態で収容されて、基台10の内周面と水道管との間には、隙間は形成されない。
【0018】
本発明に係る流体管保護装置は、上記の保護カバーCを使用して、規格の水道管よりも小さな径の規格外の水道管Pを揺動不能にして、その基台10内に収容させようとするものである。これを実現するために使用される流体管保持具S1 は、該保護カバーCに対応する規格の水道管とほぼ同一の外径の円筒体の周方向の一部を欠落させて、該欠落部を開口部1とした構成である。即ち、図1及び図2に示されるように、流体管保持具S1 は、保持部2の周方向の一部に開口部1が設けられて、該開口部1の両端部に爪部3が外方に向けてわん曲形成されており、各爪部3は、流体管保持具S1 の全体を基台10に収容した状態において、該基台10の両側板部12における側板本体部12bの上端部に係合される。そして、流体管保持具S1 の径(内径)は、既存の保護カバーCに収容される規格外の水道管Pの外径に対応している。
【0019】
上記構成の流体管保護装置を使用して、これを構成する保護カバーCに対応する規格の水道管よりも小さな径の規格外の水道管Pを揺動不能に配管するには、以下のようにして行う。まず、図6に示されるように、建物の壁面Wの配管位置に基台10をビス止め等により固定した後に、前面を向いている該基台10の開口から前記流体管保持具S1 を押し込むと、該基台10の両側板部12が弾性変形により外方に拡開されて、該流体管保持具S1 の全体が基台10内に収容されて、その開口部1の両端の各爪部3が、基台10の両側板部12の先端部にそれぞれ係合されて、基台10に対して流体管保持具S1 は、回動不能に取付けられる。このようにして、壁面Wに固定された基台10に流体管保持具S1 が取付けられるために、その開口部1は、常に前面を臨むことになる。
【0020】
この状態で、通常の配管と全く同様にして、規格外の水道管Pを基台10の内部に押し込むと、該基台10の両側板部12と流体管保持具S1 の保持部2とが一体となって外方に弾性変形されて、規格外の水道管Pは、流体管保持具S1 の開口部1から内部に挿入されて、部分的に保持部2に嵌合保持された状態で基台10内に収容される。水道管Pが基台10内に収容された後には、外方に弾性変形されていた基台10の両側板部12と流体管保持具S1 の保持部2とは、原形状に近い形状にまで復元される。その後に、通常の施工と同様にして、壁面Wに固定された基台10に蓋体20を覆い被せると、施工が完了する。
【0021】
これにより、保護カバーCの内部(基台10内)に収容保護された規格外の水道管Pは、所定間隔をおいて複数の流体管保持具S1 に保持されているために、基台10と水道管Pとの間に隙間が生じていても、水道管Pは、基台10に対して揺動不能に保持される。また、当然のことながら、保護カバーCには、これに対応する規格の水道管が収容保護されるために、同一の保護カバーCを使用して、規格の水道管と、規格外の水道管との径の異なる2種類の水道管を収容保護できる。
【0022】
また、図4には、本発明の別の実施形態が示されている。本実施形態の流体管保持具S2 は、その底面側の外周面に、基台10の各側板部12を構成する一対の側板基部12aの間に嵌合される一対の嵌合脚部4が設けられて、保持部2の周方向の欠落部が開口部1となった構成である。この流体管保持具S2 によっても、これに設けられた一対の嵌合脚部4を、基台10の一対の側板基部12aの間に嵌合させると、その開口部1は、常に前方(管挿入側)に臨むことになる。
【0023】
また、上記実施形態では、各流体管保持具S1,S2 は、保護カバーCを構成する基台10の長手方向に沿って所定間隔毎に取付けられて、該基台10に収容される水道管Pは、複数の流体管保持具S1(S2)によって部分支持される構造である。しかし、図5に示されるように、横断面形状は前記流体管保持具S1 と同一であるが、その長さが遙に長い流体管保持具S3 を準備しておいて、基台10の全長に亘って流体管保持具S3 を取付けることにより、基台10に収容される水道管Pを、その全長に亘って流体管保持具S3 で保持するようにしてもよい。これにより、寸法的に非対応の保護カバーC内に水道管Pを一層しっかりと固定可能となる。
【0024】
更に、上記した各流体管保持具S1,S2 は、ストレート状の保護カバーCに対してのみならず、このストレート状の保護カバーCを接続するためのエルボ、継手等の付属カバーC’(図6参照)の基台に対しても取付けることが可能である。これにより、互いに連結される水道管どうしの中心が一致する。
【0025】
また、上記実施形態は、同一の保護カバーに対して規格の水道管と、規格外の水道管との2種類の水道管を収容保護する例であるが、本発明によれば、径が異なっていて、いずれも規格の2種類の水道管を同一の保護カバーに収容保護することも当然に可能である。
【0026】
【発明の効果】
本発明は、上記構成であるので、以下のような諸効果が奏される。(1)径が異なっていて、いずれも規格の2種類の流体管を同一の保護カバーに収容保護することもできるので、この点において、メーカーが製作したり、或いは施工業者が保有しておくべき保護カバーの種類が少なくなって、施工現場での使い分け等を含めた保護カバーの管理が容易となる。(2)規格外の流体管が、規格の流体管に対応する既存の保護カバー内に収容保護される結果、同一の保護カバーを使用して、規格の流体管と、規格外の流体管との2種類の流体管を収容保持できる。このため、規格外の流体管に対応する保護カバーを製作準備する必要がなくなる。(3)配管途中において、配管すべき流体管の径が変更された場合でも、変更前の寸法的に非対応の保護カバーをそのまま使用して、変更後の流体管を支障なく配管できる。(4)規格の流体管に対応する既存の保護カバーの基台に形成された保持部の間に流体管保持具を配置するのみで、寸法的に非対応の保護カバーの内部に流体管をしっかり固定できる。(5)流体管保持具には、該保持具を保護カバーの基台に取付けた場合に、その開口部が常に管挿入側を臨むように位置決めするための部分が設けられているために、基台に対して流体管保持具を取付けた後には、その開口部が周方向にずれないので、従来工法と全く同様にして、基台の開口から流体管を無造作に挿入するのみで、該基台内に流体管を収容できる。(6)保護カバーの内部に、これと非対応の流体管を収容する場合でも、該流体管を揺動不能に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る流体管保持具S1 を使用して水道管Pを収容保護した状態の断面図である。
【図2】 同じく斜視図である。
【図3】 流体管保護装置を構成する各部材の分解斜視図である。
【図4】 本発明に係る流体管保持具S2 を使用して水道管Pを収容保護した状態の断面図である。
【図5】 保護カバーCを構成する基台10の全長に亘って本発明に係る流体管保持具S3 を取付けた状態の斜視図である。
【図6】 保護カバーC及び付属カバーC’を使用して壁面Wに水道管Pが配管された状態の斜視図である。
【符号の説明】
C:保護カバー
P:規格外の水道管(流体管)
S1 〜S3 :流体管保持具
W:建物の壁面
1:流体管保持具の開口部
2:流体管保持具の保持部
3:流体管保持具の爪部
4:流体管保持具の嵌合脚部
10:基台
12:基台の側板部(保持部)
20:蓋体
Claims (2)
- 基台と蓋体との組み付けにより内部に流体管を収容して保護する長尺状の保護カバーと、
流体管を保持する保持部と、該保持部に流体管を挿入するための開口部とを備えた流体管保持具とから成り、
前記保護カバーの基台には、大径の流体管を保持するための保持部が内方にわん曲した状態で対向して形成され、しかも前記保持部は、その内側に流体管保持具を嵌合保持すべく、弾性変形により外方に拡開可能となっていて、
前記流体管保持具には、その開口部両端に爪部が外方に向けて形成されて、
前記流体管保持具は、前記開口部が管挿入側を臨むように位置決めされて、その爪部が前記保護カバーを構成する基台の保持部の開口側端部に係合することにより、前記基台の保持部の間に配置されて取付けられ、前記開口部から挿入された小径の流体管を前記保持部により、前記保護カバー内において保持することを特徴とする流体管保護装置。 - 前記流体管保持具は、前記保護カバーの全長に亘って配置されることを特徴とする請求項1に記載の流体管保護装置。
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