以下、本発明の実施の形態による減衰力調整式緩衝器を、車両用の減衰力調整式油圧緩衝器に適用した場合を例に挙げ、図1ないし図9に従って詳細に説明する。
図1において、減衰力調整式油圧緩衝器1(以下、油圧緩衝器1という)の外殻をなすシリンダとしての有底筒状の外筒2は、下端側が溶接手段等を用いて固着されたボトムキャップ3により閉塞され、上端側は、径方向内側に屈曲されたかしめ部2Aとなっている。かしめ部2Aと内筒4との間には、後述のロッドガイド9とシール部材10が設けられている。一方、外筒2の下部側には、後述する中間筒12の接続口12Cと同心位置に開口2Bが形成され、該開口2Bと対応する位置には、後述の減衰力調整機構20を収容するハウジング17が取付けられている。さらに、ボトムキャップ3には、例えば車両の車輪側に取付けられる取付アイ3Aが設けられている。
外筒2内には、該外筒2と同一軸線上に位置してシリンダとしての内筒4が設けられている。この内筒4は、下端側が後述のボトムバルブ13に嵌合して取付けられ、上端側はロッドガイド9に嵌合して取付けられている。内筒4内には作動流体としての油液が封入されている。作動流体としては油液、オイルに限らず、例えば添加剤を混在させた水等でもよい。
内筒4と外筒2との間には、環状のリザーバ室Aが形成され、このリザーバ室A内には、前記油液と共にガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。また、内筒4の長さ方向(上,下方向)の途中位置には、ロッド側油室Bを環状油室Dに常時連通させる油穴4Aが径方向に穿設されている。
ピストン5は、内筒4内に摺動可能に挿嵌されている。ピストン5は、内筒4内をロッド側油室Bとボトム側油室Cとに画成している。ピストン5には、ロッド側油室Bとボトム側油室Cとを連通可能とする油路5A,5Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。
ここで、ピストン5の下端面には、伸長側のディスクバルブ6が設けられている。この伸長側のディスクバルブ6は、ピストンロッド8の伸長行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室B内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を各油路5Aを介してボトム側油室C側にリリーフする。このリリーフ設定圧は、後述の減衰力調整機構20がハードに設定されたときの開弁圧より高い圧に設定される。
ピストン5の上端面には、ピストンロッド8の縮小行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する縮み側の逆止弁7が設けられている。この逆止弁7は、ボトム側油室C内の油液がロッド側油室Bに向けて各油路5B内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止するものである。この逆止弁7の開弁圧は、減衰力調整機構20がソフトに設定されたときの開弁圧より低い圧に設定され、実質的に減衰力を発生しない。この実質的に減衰力を発生しない開弁圧とは、ピストン5やシール部材10のフリクション以下の力であり、車の運動に対し影響しないものである。
内筒4内を軸方向に延びるピストンロッド8は、下端側が内筒4内に挿入され、ナット8A等によりピストン5に取付けられている。また、ピストンロッド8の上端側は、ロッドガイド9を介して外筒2および内筒4の外部に延出している。なお、ピストンロッド8の下端をさらに延ばしてボトム部(例えば、ボトムキャップ3)側から外向きに延出させることにより、所謂、両ロッドとして構成してもよい。
内筒4の上端側には、段付円筒状のロッドガイド9が設けられている。ロッドガイド9は、内筒4の上側部分を外筒2と同心円上に位置決めすると共に、その内周側でピストンロッド8を軸方向に摺動可能にガイドしている。また、ロッドガイド9と外筒2のかしめ部2Aとの間には、環状のシール部材10が設けられている。
シール部材10は、中心にピストンロッド8が挿通される孔が設けられた金属製の環状板にゴム等の弾性材料を焼き付けたもので、内周がピストンロッド8の外周側に摺接することにより該ピストンロッド8との間をシールするものである。また、シール部材10は、下面側にロッドガイド9と接触するように延びるチェック弁としてのリップシール10Aが形成されている。このリップシール10Aは、油溜め室11とリザーバ室Aとの間に配置され、油溜め室11内の油液等がロッドガイド9の戻し通路9Aを介してリザーバ室A側に向け流通するのを許し、逆向きの流れを阻止するものである。
外筒2と内筒4との間には、中間筒12が配設されている。中間筒12は、例えば、内筒4の外周側に上,下のシールリング12A,12Bを介して取付けられている。中間筒12は、内筒4の外周側を全周に亘って取囲むように延びた環状油室Dを内部に形成し、この環状油室Dはリザーバ室Aとは独立した油室となっている。環状油室Dは、内筒4に形成した径方向の油穴4Aによりロッド側油室Bと常時連通している。一方、中間筒12の下端側には、後述する減衰力調整機構20の筒形ホルダ20Eが取付けられる接続口12Cが設けられている。
ボトムバルブ13は、内筒4の下端側に位置してボトムキャップ3と内筒4との間に設けられている。ボトムバルブ13は、ボトムキャップ3と内筒4との間でリザーバ室Aとボトム側油室Cとを画成するバルブボディ14と、バルブボディ14の下面側に設けられた縮小側のディスクバルブ15と、バルブボディ14の上面側に設けられた伸び側の逆止弁16とにより構成されている。バルブボディ14には、リザーバ室Aとボトム側油室Cとを連通可能とする油路14A,14Bがそれぞれ周方向に間隔をおいて形成されている。
縮小側のディスクバルブ15は、ピストンロッド8の縮小行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室C内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときのボトム側油室C内の圧力を各油路14Aを介してリザーバ室A側にリリーフする。このリリーフ設定圧は、減衰力調整機構20がハードに設定されたときの開弁圧より高い圧に設定される。
伸び側の逆止弁16は、ピストンロッド8の伸長行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する。この逆止弁16は、リザーバ室A内の油液がボトム側油室Cに向けて各油路14B内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止するものである。この逆止弁16の開弁圧は、減衰力調整機構20がソフトに設定されたときの開弁圧より低い圧に設定され、前述した逆止弁7と同様に、実質的に減衰力を発生しない。
ハウジング17は、外筒2の下部側に位置して該外筒2の外部に延出して設けられている。ハウジング17は、図2、図3、図4等に示すように、減衰力調整機構20の一部を収容するもので、収容筒18とロックナット19とにより構成されている。収容筒18は、ハウジング17の中心位置となる中心軸線の位置O1を中心とする直径寸法d1をもった円筒体として形成されている。収容筒18の基端側は、外筒2の開口2Bの周囲に固着され、先端側は、外筒2から径方向の外向に突出している。収容筒18の先端側には、図4に示すように、ロックナット19のめねじ部19Cに螺合するおねじ部18Aが形成されている。なお、収容筒18は筒状であれば、多角形等の他の形状であってもよい。
一方、ロックナット19は、直径寸法d2をもった円筒体として形成され、収容筒18の内径寸法とほぼ同等の内径寸法をもった厚肉部19Aと、該厚肉部19Aの内径寸法よりも大きな内径寸法をもった薄肉部19Bとにより構成されている。薄肉部19Bの内周側には、収容筒18のおねじ部18Aに螺合するめねじ部19Cが形成されている。また、厚肉部19Aの内周側には、薄肉部19Bとの境界部位を拡径することによりリング押え19Dが形成されている。このリング押え19Dは、減衰力調整機構20に取付けられた後述のリング部材21を押えるものである。
そして、ハウジング17に減衰力調整機構20を取付けるときは、ロックナット19内に減衰力調整機構20の本体部20Aを挿入し、該本体部20Aの外周に取付けたリング部材21をリング押え19Dに係合させる。この状態で、減衰力調整機構20の本体部20Aを収容筒18内に挿入しつつ、ロックナット19のめねじ部19Cを収容筒18のおねじ部18Aに螺着する。
これにより、ハウジング17は、先端側のロックナット19の位置が直径寸法D2の大径部となり、ロックナット19と外筒2との間の収容筒18の位置が直径寸法D1の小径部となる断付円筒体として形成されている。この断付円筒体として形成されたハウジング17内には、減衰力調整機構20を抜止め状態で収容することができる。なお、ロックナットを廃止し、ハウジングに対して減衰力調整機構の本体部を直接的に螺合、嵌合、かしめ固定する構成としてもよい。この場合には、ハウジングの外周に拡径部を設け、断付円筒体として形成すればよい。
減衰力調整機構20は、その一部がハウジング17内に設けられ、残部がハウジング17から突出(露出)している。減衰力調整機構20は、環状油室Dからリザーバ室Aに流通する油液の流量を、減衰力調整バルブ(図示せず)により制御することで、減衰力を発生するものである。また、減衰力調整機構20は、減衰力調整バルブの開弁圧を、直動のソレノイドや回転式のステッピングモータ等から構成されるアクチュエータ(図示せず)により調整することにより、発生する減衰力を可変に調整することができる。即ち、減衰力調整機構20は、乗り味が軟らかいソフト設定の減衰力と乗り味が硬いハード設定の減衰力との間で段階的または無段階で減衰力を調整することができる。
減衰力調整機構20は、略円柱状の本体部20Aを有し、該本体部20Aの内部に収容した状態や外部に接続した状態で減衰力調整バルブ、アクチュエータ等を備えている。換言すれば、本体部20Aは、減衰力調整バルブとアクチュエータとを含んで構成され、例えば、減衰力調整バルブはハウジング17内に配置され、アクチュエータはその一部がハウジング17から突出するように配置される。
本体部20Aの外径寸法は、収容筒18の内径寸法、ロックナット19の厚肉部19Aの内径寸法よりも僅かに小さな寸法に設定されている。また、本体部20Aの外周側には、軸方向の途中に位置して半円状のリング溝20Bが形成され、該リング溝20Bには、リング部材21が係合状態で取付けられている。
一方、本体部20Aには、挿入方向と反対側の端部から径方向の外側に突出してケーブル取出部20Cが設けられている。このケーブル取出部20Cは、アクチュエータを制御するためのケーブル20Dをハウジング17に沿って外部に取出すL字状のガイドを構成している。
さらに、減衰力調整機構20には、減衰力調整バルブから中間筒12に向けて延びる筒形ホルダ20E(図1中に図示)が設けられている。この筒形ホルダ20Eは、基端側が中間筒12の接続口12Cに接続され、先端側がハウジング17内で減衰力調整バルブに接続されている。これにより、筒形ホルダ20Eは、環状油室Dと減衰力調整バルブとの間で油液を流通させる油路を構成している。
リング部材21は、例えば弾性を有する樹脂材料、ゴム材料からリング状に形成され、減衰力調整機構20のリング溝20Bに係合状態で取付けられている。このリング部材21は、ロックナット19のリング押え19Dと減衰力調整機構20のリング溝20Bとの両方に係合することにより、ハウジング17に対して減衰力調整機構20を抜止め状態に保持することができる。
次に、減衰力調整機構20を保護するためにハウジング17に取付けられたカバー22と結合部材26の構成について述べる。
カバー22は、減衰力調整機構20を保護するものであり、ハウジング17の外周の一部となるロックナット19とハウジング17から突出した減衰力調整機構20の露出部とを覆うことができる。カバー22は、例えば弾性を有する樹脂材料からなり、図3、図9等に示すように、カバー本体23と膨出部24と支持部25とにより構成されている。
カバー22を構成するカバー本体23は、図9等に示すように、周方向の一部が開口したU字形状をもって軸方向に延びている。この場合、カバー本体23は、カバー22がハウジング17に取付けられた状態で水平方向に開口するようになっている。カバー本体23の取付け側となる基端側がロックナット19を取囲む大周壁23Aとなり、該大周壁23Aよりも先端側が減衰力調整機構20の本体部20Aを取囲む小周壁23Bとなっている。この小周壁23Bの先端部は蓋部23Cによって閉塞されている。これにより、カバー本体23は、周方向の一部が取付開口23Dとなり、この取付開口23Dを通じてロックナット19の一部と減衰力調整機構20の本体部20Aの露出部とを内部に収容することができる。
膨出部24は、減衰力調整機構20のケーブル取出部20Cを覆うもので、カバー本体23の取付開口23Dと反対側に設けられている。膨出部24は、カバー本体23側が開口したU字形状をもって軸方向に延び、その基端側はカバー本体23から突出している。具体的には、膨出部24は、減衰力調整機構20のケーブル取出部20Cよりも大きな間隔寸法をもって対面し、カバー本体23に取付けられた左,右の側面部24Aと、カバー本体23と反対側に位置して該各側面部24A間を覆った半円筒状の円弧部24Bと、各側面部24Aと円弧部24Bの先端側を覆った蓋部24Cとにより構成されている。これにより、膨出部24は、突出端24D側が開口し、この突出端24D側の各側面部24Aには、後述の支持部25が設けられている。
支持部25は、カバー22をハウジング17に取付けたときに該ハウジング17の外面に嵌合して設けられている。支持部25は、周方向の一部が軸方向に亘って開口し、ハウジング17を構成する収容筒18の中心軸線の位置O1を挟んで対面して配置されている。対面した一対の支持部25は、収容筒18を常に付勢力をもって挟持するものである。
各支持部25は、円弧状の板体として形成され、その長さ方向の一端は膨出部24の突出端24Dに取付けられている。各支持部25は、互いに対面する内面25Aが収容筒18の外周面に当接している。一方、各支持部25の外面25Bには、当該外面25Bを挟むように各リブ25Cが全長に亘って設けられている。各リブ25Cを設けることにより、支持部25は、板厚寸法を厚くすることなく、十分な弾性力(付勢力)を確保でき、軽量化や低コスト化を実現することができる。
各支持部25の長さ方向の中間位置には、カバー22に対して結合部材26の両端、即ち、後述する結合部材26の係合爪部26Eを係止する係止部25Dが設けられている。この係止部25Dは、外面25Bおよび各リブ25Cと協働して長方形状の枠体をなす門方形状に形成され、その門型部分に係合爪部26Eを係合させるものである。
図7に示すように、各支持部25の周方向の一部、具体的には、膨出部24と径方向の反対側位置に軸方向に亘って開口25Eが設けられている。開口25Eは、一側開口部25E1と他側開口部25E2との間が開口間隔寸法W1となっている。この開口25Eの開口間隔寸法W1は、各支持部25の自由状態では収容筒18の直径寸法D1よりも小さく、カバー22の着脱時には各支持部25を弾性変形させて直径寸法D1よりも大きく開くことができる寸法に設定されている。
ここで、各支持部25がハウジング17の収容筒18を常に付勢力をもって挟持するために設定された形状について図7を参照しつつ述べる。
各支持部25の自由状態における内面25Aの形状は、半径寸法rの円形または円形に近い楕円形に形成されている。この半径寸法rは、収容筒18の直径寸法D1に基づく半径寸法D1/2よりも大きな寸法となっている(r>D1/2)。この場合、内面25Aの半径寸法rは、収容筒18の半径寸法D1/2よりも例えば1〜10%、好ましくは2〜6%の範囲で大きく設定されている。
さらに、各支持部25の内面25Aの中心位置O2(カバー22の中心位置)と収容筒18の中心軸線位置O1(ハウジングの中心位置)とは異なる位置に配置している。具体的には、各支持部25の内面25Aの中心位置O2は、収容筒18の中心軸線位置O1を支持部25の反対側に長さ寸法Lだけ超えた位置にオフセット状態で配置している。このオフセット寸法Lは、収容筒18の直径寸法D1よりも各支持部25の最深部25Fの位置における間隔寸法W2が小さくなるように設定されている。
これにより、図6に示すように、各支持部25は、ハウジング17の収容筒18を常に付勢力をもって挟持することができる上に、最深部25Fの周辺位置を収容筒18に当接させることによって該収容筒18を深く挟むことができる。そして、各支持部25によって収容筒18を挟持した状態では、該各支持部25がロックナット19に係合しているから、カバー22は、ハウジング17に対して抜止め状態で取付けることができる。
結合部材26は、カバー22の各支持部25間に設けられた開口25Eの各開口部25E1,25E2の両端を跨いで周方向に延びることにより、該各開口部25E1,25E2の両端を結合するものである。この結合部材26は、ハウジング17に取付けられたカバー22の各支持部25が外れないように、該各支持部25の開口25E側を閉塞して固定状態に保持するもの(カバー保持部材)である。結合部材26は、弾性を有する金属材料からなる帯状体を、長さ方向の複数個所で適宜に折り曲げることによりU字状に形成されている。この場合、結合部材26の幅寸法は、支持部25の外面25Bの幅寸法(係止部25Dの内幅寸法)よりも小さな寸法に設定されている。
結合部材26は、各支持部25間の開口25Eを覆う中央板部26Aと、該中央板部26Aの長さ方向の両側から左,右方向に突出して設けられたU字形状の把持部26Bと、該各把持部26Bから各支持部25の係止部25D内を通るように真直ぐに延びた腕板部26Cと、該各腕板部26Cの先端部を外側に折返してなる折返し部26Dと、該各折返し部26Dの先端をクランク状に折り曲げて形成された係合爪部26Eとにより構成されている。
ここで、折返し部26Dは、カバー22に取付けられていない単品の状態では、先端側が支持部25の係止部25Dの差込み高さ寸法(支持部25の径方向となる係止部25Dの内幅寸法)よりも大きく開いている。これにより、腕板部26Cと折返し部26Dを係止部25Dに深く差し込んだときには、折返し部26Dのばね力によって係合爪部26Eが係止部25Dに係止するようになっている。
結合部材26をカバー22の各支持部25に取付ける場合について述べる。カバー22をハウジング17に対して組付けたら、図6中の二点鎖線で示すように、結合部材26の各把持部26Bを指先で挟んで各腕板部26Cと折返し部26Dを各支持部25の係止部25Dに深く差し込む。これらを係止部25Dが係止部25Dを越える位置まで差し込むと、図6中の実線で示すように、折返し部26Dのばね力によって係合爪部26Eは係止部25Dに自動的に係止することができる。この場合、係合爪部26Eには、折返し部26Dのばね力が係止状態を維持する方向に常に作用しているから、係合爪部26Eを係止部25Dに外れないように確実に係合させることができる。
このように、結合部材26をカバー22の各支持部25に取付けた状態では、中央板部26Aが各支持部25間の開口25Eを覆うことができ、カバー22をハウジング17に対し脱落しないように確実に取付けることができる。しかも、結合部材26は、中央板部26Aを収容筒18に押付けることにより、振動によるカバー22のがたつきを防止することができる。
一方、結合部材26をカバー22の各支持部25から取外す場合には、各折返し部26Dをばね力に抗して各支持部25の係止部25Dを通る寸法まで押し潰す。この状態で、結合部材26の各把持部26Bを指先で挟んで引張ることにより、結合部材26をカバー22の各支持部25から取外すことができる。
本実施の形態による油圧緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、油圧緩衝器1を自動車等の車両に実装するときには、例えば、ピストンロッド8の上端側が車両の車体側に取付けられ、ボトムキャップ3に設けられた取付アイ3A側が車輪側に取付けられる。また、減衰力調整機構20のケーブル20Dは、車両のコントローラ(図示せず)等に接続される。
車両の走行時には、路面の凹凸等により、上,下方向の振動が発生すると、ピストンロッド8が外筒2から伸長、縮小するように変位し、減衰力調整機構20等により減衰力を発生することができ、車両の振動を緩衝することができる。このとき、コントローラにより減衰力調整機構20を制御することにより、油圧緩衝器1が発生する減衰力を可変に調整することができる。
次に、ハウジング17に対してカバー22、結合部材26を取付ける場合の作業動作について述べる。
まず、ハウジング17に対してカバー22を取付ける場合には、図9に示すように、減衰力調整機構20のケーブル取出部20C側からカバー22をハウジング17の収容筒18に向けて接近させる。このまま各支持部25を収容筒18の外面に押付けることにより、該各支持部25の開口25Eを開くことができ、各支持部25を収容筒18の外面に嵌合して設けることができる。この状態では、各支持部25が内面25Aの最深部25Fで収容筒18を深く抱き込むように挟持するから、カバー22をハウジング17に対してしっかりと取付けることができる。また、各支持部25は、大径なロックナット19に軸方向の先端側への移動が規制されるから、軸方向に移動してハウジング17から抜け落ちることもない。
さらに、カバー22をハウジング17に取付けたら、結合部材26を各支持部25の開口25E側から当該各支持部25に向けて径方向に接近させる。このときに、結合部材26の各腕板部26Cと折返し部26Dを各支持部25の係止部25D内に深く差し込むことにより、この係止部25Dに係合爪部26Eを係止することができる。これにより、結合部材26は、各支持部25を収容筒18の外面に脱落しないように確実に取付けることができる。
一方、ハウジング17からカバー22を取外す場合には、まず、結合部材26をカバー22の各支持部25から取外す。即ち、結合部材26の各折返し部26Dをばね力に抗して押し潰し、この状態で、結合部材26を取付方向と反対側に引張ることにより、結合部材26をカバー22の各支持部25から取外すことができる。次に、カバー22から結合部材26を取外したら、カバー22を取付方向と反対側に引張ることにより、各支持部25を開いてハウジング17からカバー22を取外すことができる。
かくして、本実施の形態によれば、ハウジング17内に設けられる減衰力調整機構20を覆うカバー22には、ハウジング17の収容筒18の外面に嵌合する一対の支持部25を設け、該各支持部25の周方向の一部は、軸方向に亘って開口25Eとし、この開口25Eは、各支持部25の先端側に位置して開口部25E1,25E2を有している。一方、カバー22には、開口部25E1,25E2の両端を跨いで周方向に延びて該開口部25E1,25E2の両端を結合する結合部材26を設ける構成としている。
従って、カバー22は、減衰力調整機構20を覆い隠すことができ、該減衰力調整機構20を走行中の飛石等から保護することができる。しかも、カバー22は、ボルト等を用いることなく、結合部材26の係合爪部26Eをカバー22の支持部25に設けた係止部25Dに係止するだけで、ハウジング17に対して固定状態に保持することができる。
この結果、簡単な作業でカバー22をハウジング17に確実に取付けることができるから、ハウジング17に対するカバー22の取付強度を高めることができる。これにより、カバー22の脱落を未然に防ぐことができ、減衰力調整機構20の寿命や信頼性を向上することができる。
また、カバー22は、樹脂材料を用いて形成しているから、複雑な形状を容易に得ることができる。これにより、カバー22は、減衰力調整機構20を最小限の隙間で効率よく覆うことができ、小型化を図ることができる。一方、結合部材26は、金属材料を用いて形成しているから、経年劣化を生じ難く、クリープ現象を生じることもない。この点においても、カバー22をハウジング17に確実に固定することができる。
また、結合部材26は、弾性を有する金属材料を用いて形成しているから、各係合爪部26Eを支持部25の係止部25Dに対して付勢力(ばね力)を作用させた状態で係止させることができる。従って、各係合爪部26Eは、常に係止部25Dに押付けることで、脱落しないように安定的に係合させることができる。
一方、ハウジング17の中心位置となる収容筒18の中心軸線の位置O1と、カバー22の中心位置となる支持部25の内面25Aの中心位置O2とは、オフセット寸法Lだけ異なる位置に配置する構成としている。これにより、各支持部25は、ハウジング17の収容筒18を常に付勢力をもって挟持することができる上に、最深部25Fの周辺位置を収容筒18に当接させることによって該収容筒18を深く挟むことができ、取付強度を高めることができる。
さらに、カバー22の各支持部25には、それぞれ係止部25Dを設け、カバー22に対して結合部材26を取付けたときには、該結合部材26の両端に設けた係合爪部26Eを係止部25Dに係止する構成としている。これにより、各支持部25に対して結合部材26を外れないように確実に係合させることができる。
なお、実施の形態では、カバー22を樹脂材料を用いて形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、カバー22を金属材料を用いて形成する構成としてもよい。また、ハウジング17、減衰力調整機構20を保護する目的を達成できれば、形状は、どのような形状であってもよい。
また、実施の形態では、外筒2の長さ方向を垂直方向とした場合、カバー22と結合部材26とは、ハウジング17に対して水平方向に着脱した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、カバー22と結合部材26とを、ハウジング17の長さ方向と同じ垂直方向に着脱する構成としてもよい。これ以外にも、水平方向と垂直方向との間の斜め方向に着脱する構成としてもよい。
さらに、実施の形態では、自動車等の車両に設ける減衰力調整式緩衝器としての減衰力調整式油圧緩衝器1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、振動源となる種々の機械、建築物等に用いる減衰力調整式緩衝器にも適用することが可能である。
次に、上記実施の形態に含まれる発明について述べる。即ち、本発明では、カバーは樹脂材料を用いて形成し、結合部材は金属材料を用いて形成する構成としている。従って、樹脂材料からなるカバーは、複雑な形状を容易に得ることができ、減衰力調整機構を最小限の隙間で効率よく覆うことができ、小型化を図ることができる。一方、結合部材は、金属材料を用いて形成しているから、経年劣化を生じ難く、クリープ現象を生じることもない。
また、本発明によると、カバーの中心位置とハウジングの中心位置とは異なる位置に配置する構成としている。これにより、カバーの支持部をハウジングに嵌合させるときに、常に付勢力をもって嵌合させることができる。
さらに、本発明によると、カバーの支持部には、カバーに対して結合部材の両端を係止する係止部を設ける構成としている。これにより、支持部に対して結合部材を外れないように確実に係合させることができる。