JP3608802B2 - 安定なカルシトニン医薬組成物及びその製造法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は安定なカルシトニン医薬組成物及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決すべき課題】
カルシトニンは、骨粗鬆症における疼痛改善、高カルシウム血症、ページェット病等の治療に用いられる、種々の薬理活性を有するポリペプチドホルモンである。カルシトニンは、通常は注射による投与が行われているが、疾患によっては長期間の連続投与が必要であり、注射以外の簡便な投与製剤が望まれている。経鼻投与もその方法のひとつであるが、その場合、一回の投与量は0.2ないし0.3ml以下が望ましく、液量が多いと鼻腔から漏出して有効に投与できない。
【0003】
従って、有効な治療量を投与するためには、比較的高濃度の薬液が必要である。例えば、ヒトカルシトニンでは、望ましくは0.5mg/ml以上の薬液を調製する必要がある。しかし、カルシトニンは溶液中では凝集し易く、特に振盪のようなメカニカルストレスにより容易に凝集がおこる。また、濃度が高いほど不安定であり、治療に望ましいカルシトニン濃度の溶液を安定に調製することは困難である。
【0004】
薬液が凝集により白濁沈澱を生じると均一な投与を不可能にし、また、鼻粘膜からの吸収は著しく阻害される。一般に蛋白質、ペプチドの凝集防止にはゼラチン、アルブミン、一部の界面活性剤等が報告されているが、局所刺激性が少なく、実用的でかつ安定なカルシトニン医薬組成物及びカルシトニン溶液を調製することは不可能であった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、医用への使用に許容される各種添加剤によるカルシトニン溶液の安定化を鋭意検討した結果、ある種の添加剤を配合することによって、治療に望ましい濃度の、安定でかつ吸収の良好なカルシトニン医薬組成物及びカルシトニン溶液を調製できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0006】
即ち、本発明は、安定なカルシトニン医薬組成物及びカルシトニン溶液の製造法に関するものであり、安定化剤としてクエン酸、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、を一種又は複数含有することを特徴とする。
【0007】
これらの安定化剤(特にクエン酸)は単独で使用しても効果が認められるが、好ましくは、(1)クエン酸、並びに(2)ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の何れか一種又は複数を含有することが望ましく、更に好ましくはこれらの組み合わせのうち、例えば、クエン酸とポリビニルアルコール、クエン酸とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、又はクエン酸とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油をそれぞれ組み合わせること等が望ましい。これらの安定化剤をカルシトニン医薬組成物又はカルシトニン溶液に加えることにより更に安定化の効果が認められる。
【0008】
本発明で用いるクエン酸は、薬液に対して、通常0.05〜5%(W/V)、好ましくは0.1〜2%(W/V)となるように添加混合する。
ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルをラジカル重合して得られる合成高分子であり、薬液に対して、通常0.001〜10%(W/V)、好ましくは0.01〜5%(W/V)となるように添加混合する。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタン脂肪酸エステルに酸化エチレンを付加重合させた非イオン性界面活性剤であり、例えばポリソルベート−40、ポリソルベート−60、ポリソルベート−80等が挙げられる。
【0009】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、薬液に対して、通常0.001〜1%(W/V)、好ましくは0.005〜0.5%(W/V)となるように添加混合する。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、ヒマシ油に水素を添加して得た硬化油に、酸化エチレンを付加重合させた非イオン性界面活性剤であり、例えばニッコールHCO−10、ニッコール HCO−40、ニッコール HCO−50、ニッコール HCO−60等が挙げられる。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、薬液に対して、通常0.001〜1%(W/V)、好ましくは0.005〜0.5%(W/V)となるように添加混合する。
【0010】
本発明の医薬組成物は、溶液の形態もしくは特定の溶解液で用時溶解して用いる粉末の形態とすることができる。溶解液に用時溶解して用いる粉末の場合は、クエン酸、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、粉末あるいは溶解液の一方に添加してもよく、又、粉末及び溶解液の両方に添加してもよい。
【0011】
添加剤としてはpH調節剤、殺菌・防腐剤、粘度調整剤、凍結乾燥助剤、吸収促進剤等を必要に応じて加えることができる。
pH調節剤としては塩酸、酢酸等が用いられる。
殺菌・防腐剤としては医薬組成物に通常用いられるものであればよく、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。
粘度調整剤としてはポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0012】
凍結乾燥助剤としてはアミノ酢酸、マンニトール、白糖、ブドウ糖、デキストラン等が挙げられる。
吸収促進剤としてはカプリン酸ナトリウム、ベスタチン、アマスタチン、メシル酸ナファモスタット、メシル酸カモスタット、アプロチニン等が挙げられる。
【0013】
本発明の医薬組成物の投与形態としては、液剤あるいは用時溶解して得た薬液を点鼻用滴下容器、スプレー容器または鼻用エアゾールアプリケーター等を用いて、滴下あるいは噴霧により投与することができる。
本発明において用いることができるカルシトニンは、ヒト、ブタ、ウシ、サケ、ウナギ、ラット由来等のものを用いることができるので特に限定されないが、以下の実施例においてはヒトカルシトニンを用いた例について示す。
【0014】
【実施例】
以下に実施例および試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 15mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0015】
実施例2.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ポリビニルアルコール 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0016】
実施例3.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ポリソルベート80 10mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0017】
実施例4.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 15mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0018】
実施例5.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ポリビニルアルコール 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0019】
実施例6.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ポリソルベート80 10mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0020】
実施例7.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ポリビニルアルコール 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0021】
実施例8.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ポリソルベート80 1mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0022】
実施例9.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油*1 1mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
*1:ニッコールHCO−60(日光ケミカルズ株)
【0023】
実施例10.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ポリビニルアルコール 100mg
アプロチニン 1mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0024】
実施例11.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ポリソルベート80 1mg
メシル酸ナファモスタット 1mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0025】
実施例12.
ヒトカルシトニン20mg、精製白糖1000mgを10mlの精製水に溶解し、無菌濾過した。濾液をバイアル瓶に無菌的に充填して凍結乾燥した。添付溶解液として、塩化ベンザルコニウム2mg、クエン酸15mgを10mlの精製水に溶解し、無菌濾過した液を調製した。
【0026】
対照例1.
ヒトカルシトニン 20mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0027】
対照例2.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0028】
対照例3.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0029】
比較例1.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
タウロコール酸 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0030】
比較例2.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
デオキシコール酸 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0031】
比較例3.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ショ糖脂肪酸エステル*2 125mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
*2:リョートーシュガーエステルS1670(三菱化成食品)
【0032】
比較例4.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ショ糖脂肪酸エステル*3 125mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
*3:リョートーシュガーエステルP1670(三菱化成食品)
【0033】
比較例5.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
タウロコール酸 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0034】
比較例6.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
デオキシコール酸 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0035】
比較例7.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ショ糖脂肪酸エステル*2 125mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
*2:リョートーシュガーエステルS1670(三菱化成食品)
【0036】
比較例8.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ショ糖脂肪酸エステル*3 125mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
*3:リョートーシュガーエステルP1670(三菱化成食品)
【0037】
比較例9.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ヒト血清アルブミン 200mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0038】
比較例10.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ゼラチン 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
本発明における上記カルシトニン医薬組成物は、以下の試験例1〜3に示すように非常に安定である。
【0039】
試験例1.
実施例1〜6、比較例1〜8、及び対照例1〜3で調製した試料溶液を、室温で振幅3cm、100回/分の振盪回数で振盪し、外観(溶状)を観察した。その結果を表1に示す。
【0040】
表1に示すごとく、実施例では比較例及び対照例と比べて安定であった。
【0041】
試験例2.
実施例7〜11及び比較例9、10で調製した試料溶液を、室温で振幅3cm、100回/分の振盪回数で振盪し、外観(溶状)を観察した。また、溶液のヒトカルシトニン濃度を液体クロマトグラフィーで定量し、ヒトカルシトニンの残存率を求めた。その結果を表2に示す。
【0042】
表2に示すごとく、実施例では比較例及び対照例と比べて安定であった。
【0043】
試験例3.
実施例7〜9で調製した試料溶液を、室温で振幅3cm、100回/分の振盪回数で7日間振盪し、その後の溶液の生物活性を以下のように検討した。即ち、24時間絶食後、引き続き24時間低カルシウム食で飼育したS.D.系雄性ラット(6週齢)を、ペントバルビタール麻酔下、背位固定し、大腿動脈カニューレ及び気管カニューレを施した。試料溶液5μl(ヒトカルシトニン50μg/kg)を鼻腔内に投与し、経時的に大腿動脈より採血し、血清カルシウム濃度をカルシウム測定用試薬(サンアッセイCa:三光純薬社製)で定量した。結果を表3に示す。
【0044】
表3に示すごとく、7日間振盪させた溶液においても血清カルシウム濃度の低下が認められた。
【0045】
【発明の効果】
以上、本発明により、局所刺激性が少なく、実用的でかつ溶液で安定なカルシトニン溶液を提供するカルシトニン医薬組成物を製造することができる。
【産業上の利用分野】
本発明は安定なカルシトニン医薬組成物及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決すべき課題】
カルシトニンは、骨粗鬆症における疼痛改善、高カルシウム血症、ページェット病等の治療に用いられる、種々の薬理活性を有するポリペプチドホルモンである。カルシトニンは、通常は注射による投与が行われているが、疾患によっては長期間の連続投与が必要であり、注射以外の簡便な投与製剤が望まれている。経鼻投与もその方法のひとつであるが、その場合、一回の投与量は0.2ないし0.3ml以下が望ましく、液量が多いと鼻腔から漏出して有効に投与できない。
【0003】
従って、有効な治療量を投与するためには、比較的高濃度の薬液が必要である。例えば、ヒトカルシトニンでは、望ましくは0.5mg/ml以上の薬液を調製する必要がある。しかし、カルシトニンは溶液中では凝集し易く、特に振盪のようなメカニカルストレスにより容易に凝集がおこる。また、濃度が高いほど不安定であり、治療に望ましいカルシトニン濃度の溶液を安定に調製することは困難である。
【0004】
薬液が凝集により白濁沈澱を生じると均一な投与を不可能にし、また、鼻粘膜からの吸収は著しく阻害される。一般に蛋白質、ペプチドの凝集防止にはゼラチン、アルブミン、一部の界面活性剤等が報告されているが、局所刺激性が少なく、実用的でかつ安定なカルシトニン医薬組成物及びカルシトニン溶液を調製することは不可能であった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、医用への使用に許容される各種添加剤によるカルシトニン溶液の安定化を鋭意検討した結果、ある種の添加剤を配合することによって、治療に望ましい濃度の、安定でかつ吸収の良好なカルシトニン医薬組成物及びカルシトニン溶液を調製できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0006】
即ち、本発明は、安定なカルシトニン医薬組成物及びカルシトニン溶液の製造法に関するものであり、安定化剤としてクエン酸、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、を一種又は複数含有することを特徴とする。
【0007】
これらの安定化剤(特にクエン酸)は単独で使用しても効果が認められるが、好ましくは、(1)クエン酸、並びに(2)ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の何れか一種又は複数を含有することが望ましく、更に好ましくはこれらの組み合わせのうち、例えば、クエン酸とポリビニルアルコール、クエン酸とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、又はクエン酸とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油をそれぞれ組み合わせること等が望ましい。これらの安定化剤をカルシトニン医薬組成物又はカルシトニン溶液に加えることにより更に安定化の効果が認められる。
【0008】
本発明で用いるクエン酸は、薬液に対して、通常0.05〜5%(W/V)、好ましくは0.1〜2%(W/V)となるように添加混合する。
ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルをラジカル重合して得られる合成高分子であり、薬液に対して、通常0.001〜10%(W/V)、好ましくは0.01〜5%(W/V)となるように添加混合する。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタン脂肪酸エステルに酸化エチレンを付加重合させた非イオン性界面活性剤であり、例えばポリソルベート−40、ポリソルベート−60、ポリソルベート−80等が挙げられる。
【0009】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、薬液に対して、通常0.001〜1%(W/V)、好ましくは0.005〜0.5%(W/V)となるように添加混合する。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、ヒマシ油に水素を添加して得た硬化油に、酸化エチレンを付加重合させた非イオン性界面活性剤であり、例えばニッコールHCO−10、ニッコール HCO−40、ニッコール HCO−50、ニッコール HCO−60等が挙げられる。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、薬液に対して、通常0.001〜1%(W/V)、好ましくは0.005〜0.5%(W/V)となるように添加混合する。
【0010】
本発明の医薬組成物は、溶液の形態もしくは特定の溶解液で用時溶解して用いる粉末の形態とすることができる。溶解液に用時溶解して用いる粉末の場合は、クエン酸、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、粉末あるいは溶解液の一方に添加してもよく、又、粉末及び溶解液の両方に添加してもよい。
【0011】
添加剤としてはpH調節剤、殺菌・防腐剤、粘度調整剤、凍結乾燥助剤、吸収促進剤等を必要に応じて加えることができる。
pH調節剤としては塩酸、酢酸等が用いられる。
殺菌・防腐剤としては医薬組成物に通常用いられるものであればよく、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。
粘度調整剤としてはポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0012】
凍結乾燥助剤としてはアミノ酢酸、マンニトール、白糖、ブドウ糖、デキストラン等が挙げられる。
吸収促進剤としてはカプリン酸ナトリウム、ベスタチン、アマスタチン、メシル酸ナファモスタット、メシル酸カモスタット、アプロチニン等が挙げられる。
【0013】
本発明の医薬組成物の投与形態としては、液剤あるいは用時溶解して得た薬液を点鼻用滴下容器、スプレー容器または鼻用エアゾールアプリケーター等を用いて、滴下あるいは噴霧により投与することができる。
本発明において用いることができるカルシトニンは、ヒト、ブタ、ウシ、サケ、ウナギ、ラット由来等のものを用いることができるので特に限定されないが、以下の実施例においてはヒトカルシトニンを用いた例について示す。
【0014】
【実施例】
以下に実施例および試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 15mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0015】
実施例2.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ポリビニルアルコール 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0016】
実施例3.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ポリソルベート80 10mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0017】
実施例4.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 15mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0018】
実施例5.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ポリビニルアルコール 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0019】
実施例6.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ポリソルベート80 10mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0020】
実施例7.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ポリビニルアルコール 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0021】
実施例8.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ポリソルベート80 1mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0022】
実施例9.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油*1 1mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
*1:ニッコールHCO−60(日光ケミカルズ株)
【0023】
実施例10.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ポリビニルアルコール 100mg
アプロチニン 1mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0024】
実施例11.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ポリソルベート80 1mg
メシル酸ナファモスタット 1mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0025】
実施例12.
ヒトカルシトニン20mg、精製白糖1000mgを10mlの精製水に溶解し、無菌濾過した。濾液をバイアル瓶に無菌的に充填して凍結乾燥した。添付溶解液として、塩化ベンザルコニウム2mg、クエン酸15mgを10mlの精製水に溶解し、無菌濾過した液を調製した。
【0026】
対照例1.
ヒトカルシトニン 20mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0027】
対照例2.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0028】
対照例3.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0029】
比較例1.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
タウロコール酸 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0030】
比較例2.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
デオキシコール酸 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0031】
比較例3.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ショ糖脂肪酸エステル*2 125mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
*2:リョートーシュガーエステルS1670(三菱化成食品)
【0032】
比較例4.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ショ糖脂肪酸エステル*3 125mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
*3:リョートーシュガーエステルP1670(三菱化成食品)
【0033】
比較例5.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
タウロコール酸 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0034】
比較例6.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
デオキシコール酸 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0035】
比較例7.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ショ糖脂肪酸エステル*2 125mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
*2:リョートーシュガーエステルS1670(三菱化成食品)
【0036】
比較例8.
ヒトカルシトニン 20mg
マンニトール 500mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
ショ糖脂肪酸エステル*3 125mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
*3:リョートーシュガーエステルP1670(三菱化成食品)
【0037】
比較例9.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ヒト血清アルブミン 200mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
【0038】
比較例10.
ヒトカルシトニン 20mg
精製白糖 1000mg
塩化ベンザルコニウム 2mg
クエン酸 60mg
ゼラチン 100mg
精製水を加えて最終容量を10mlとした。
本発明における上記カルシトニン医薬組成物は、以下の試験例1〜3に示すように非常に安定である。
【0039】
試験例1.
実施例1〜6、比較例1〜8、及び対照例1〜3で調製した試料溶液を、室温で振幅3cm、100回/分の振盪回数で振盪し、外観(溶状)を観察した。その結果を表1に示す。
【0040】
表1に示すごとく、実施例では比較例及び対照例と比べて安定であった。
【0041】
試験例2.
実施例7〜11及び比較例9、10で調製した試料溶液を、室温で振幅3cm、100回/分の振盪回数で振盪し、外観(溶状)を観察した。また、溶液のヒトカルシトニン濃度を液体クロマトグラフィーで定量し、ヒトカルシトニンの残存率を求めた。その結果を表2に示す。
【0042】
表2に示すごとく、実施例では比較例及び対照例と比べて安定であった。
【0043】
試験例3.
実施例7〜9で調製した試料溶液を、室温で振幅3cm、100回/分の振盪回数で7日間振盪し、その後の溶液の生物活性を以下のように検討した。即ち、24時間絶食後、引き続き24時間低カルシウム食で飼育したS.D.系雄性ラット(6週齢)を、ペントバルビタール麻酔下、背位固定し、大腿動脈カニューレ及び気管カニューレを施した。試料溶液5μl(ヒトカルシトニン50μg/kg)を鼻腔内に投与し、経時的に大腿動脈より採血し、血清カルシウム濃度をカルシウム測定用試薬(サンアッセイCa:三光純薬社製)で定量した。結果を表3に示す。
【0044】
表3に示すごとく、7日間振盪させた溶液においても血清カルシウム濃度の低下が認められた。
【0045】
【発明の効果】
以上、本発明により、局所刺激性が少なく、実用的でかつ溶液で安定なカルシトニン溶液を提供するカルシトニン医薬組成物を製造することができる。
Claims (3)
- 0.5mg/mL以上の濃度でカルシトニンを含有する液剤において、クエン酸、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の何れ一種又は複数種の凝集抑制剤の添加によりカルシトニンの凝集を抑制する方法。
- 液剤中の凝集抑制剤の濃度が、クエン酸では0.05〜5%(W/V)、ポリビニルアルコールでは0.001〜10%(W/V)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルでは0.001〜1%(W/V)、そしてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油では0.001〜1%(W/V)である、請求項1に記載の方法。
- 経鼻投与剤である、請求項1又は2に記載の方法。
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