JP3595286B2 - ピッチシフター付きカラオケ装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
この発明は、歌唱者の歌声のピッチ(音の高さ)を修正するピッチシフター付きのカラオケ装置の改良に関し、より具体的には、標準の主旋律のピッチに合わせたり主旋律ピッチのオクターブ上や下に合わせたりして補正する処理方式に関する。
【0002】
【従来の技術】
特許第3179468号公報には、歌唱者の音声をカラオケ伴奏音楽の主旋律データと倍音関係にあり、かつ歌唱者の音声と同じオクターブ域に収まる主旋律になるように、歌唱者の歌声を補正するピッチシフターが開示されている。これは歌唱者の歌声のピッチと主旋律のピッチとの音程を検出し、これが同じオクターブ域であれば(音程が1オクターブ以内)主旋律のピッチになるように歌声のピッチを補正し、1オクターブ以上離れている場合には、主旋律のピッチを1オクターブ上または1オクターブ下にシフトしたピッチになるように歌声のピッチを補正するものである。この従来技術によると音痴な人が歌ってもその歌声と同じオクターブ域内でピッチが補正される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術によれば、女性アーティストの歌を男性が歌う場合には一般的には男性の音域にピッチが変換されて出力されるし、反対に男性アーティストの歌を女性が歌う場合には女性の音域にピッチが変換されて出力されることになるので、便利である。
【0004】
しかし、一般的な音域でしか歌えない人が音域が非常に広いアーティストの歌を歌う場合を考えてみると、かえって具合がよくない。このような曲では歌唱者は自分が歌える音域より高音域の部分は1オクターブ下げて歌うし、自分の音域より低音域の部分は1オクターブ上げて歌って何とか歌い切ろうとする。たとえば男性アーティストの歌を女性が歌う場合は、その曲の大部分は1オクターブ上げて歌うが、高音域は元歌どおりのピッチに戻す。逆に女性アーティストの歌を男性が歌う場合には、大部分は1オクターブ下げて歌うが、低音域は元歌どおりのピッチに戻して歌う。上記の従来技術によればこのような場合にも忠実に歌声と同じオクターブ域になるようにピッチ変換されることになるので、高音域と低音域の間の連続性がとぎれ、せっかく部分的には模範的な歌唱となっても、全体的に音楽として聞き苦しいものになってしまう。
【0005】
そこで本発明者らは、歌い出した時点のオクターブ域が歌唱者にとってもっとも歌唱しやすい音域であると考え、そのオクターブ域での主旋律に歌声のピッチが変換され、しかも歌の途中でオクターブ上下して歌唱しても歌い出し時のオクターブ域のままでピッチを補正し続けることができないかと考えた。そうすれば、歌唱者のごく自然な音域で完成度の高い音楽となって聞こえるので、自他ともに気持ちがよい筈である。このようにして本発明はなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るピッチシフター付きカラオケ装置は、つぎの事項(A)〜(E)により特定されるものである。
(A)ピッチ検出手段と、ピッチ変換手段と、中央処理手段と、指示ピッチ決定手段とを備えるカラオケ装置であること
(B)ピッチ検出手段は、マイクロホンより入力される歌声信号から歌声ピッチを逐次検出すること
(C)ピッチ変換手段は、指示ピッチ決定手段が決定した指示ピッチに合わせて、入力される歌声信号を周波数変換すること
(D)中央処理手段は、選択された伴奏音楽データを演奏手段に演奏させる際、演奏の進行に伴って伴奏音楽データより主旋律ピッチを逐次取得するとともに、歌い出し冒頭の所定期間、指示ピッチ決定手段にオクターブ域判定を指示すること
(E)指示ピッチ決定手段は、中央処理手段のオクターブ域判定の指示に従い、歌声ピッチを主旋律ピッチ、及び、それとオクターブ違いのピッチと比較し、近似していると判定した主旋律ピッチ、又は、それとオクターブ違いのピッチを指示ピッチとして決定すること
【0007】
また望ましくは、前記歌い出し冒頭の所定期間において前記オクターブ域判定手段が判定できない場合に前記所定期間の延長が可能であり、延長後の所定期間において前記オクターブ域判定手段で判定結果が出るまで前記所定期間の延長をくりかえすことを特徴とするピッチシフター付きカラオケ装置とした。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施例によるピッチシフター付きカラオケ装置の構成を図1に示している。このカラオケ装置の基本的な構成は従来の一般的なものと同様であり、パソコン本体に相当する中央処理装置1と、その周辺機器であるハードディスク装置2、操作制御部3、シンセサイザー4、映像制御部5などを備えている。
【0009】
ハードディスク装置2は多数の楽曲のカラオケデータが記憶されてカラオケデータベースとして管理される。カラオケデータは、MIDIデータなどの電子楽譜形式で記述されたカラオケ伴奏音楽データと、伴奏音楽に同期して歌詞を表示して色変えするための歌詞描出データが含まれる。この発明においては、カラオケ伴奏音楽データには主旋律パートが含まれており、カラオケ伴奏音楽の演奏中に歌唱者が発声すべき音の高さを示すデータ(これを主旋律ピッチPmとする)を前記主旋律パートから取得することができる。さらにこの発明のカラオケ伴奏音楽データの歌い出し冒頭に当たる部分には、歌唱者が実際に発声した音の高さ(歌声ピッチPvとする)と主旋律ピッチPmとの関係が単音程(同じオクターブ域であること)なのか複音程なのかを判定する期間(オクターブ域判定期間とする)であることを示す判定期間データが付帯され、カラオケ伴奏音楽に同期して後述のオクターブ域判定回路13に出力されている。
【0010】
ある楽曲を演奏するとき、中央処理装置1は、ハードディスク装置2から事前に読み出してメモリに展開してあるカラオケ伴奏音楽データを逐次処理し、シンセサイザー4を順次駆動してカラオケ伴奏音楽のオーディオ信号を生成する。このカラオケ伴奏音楽の信号はミキシングアンプ6で後述の歌声信号と混合されて増幅され、スピーカシステム7から音響出力される。これと並行して中央処理装置1は、前記の歌詞描出データを逐次処理し、カラオケ伴奏音楽の進行に同期して色変わりする歌詞文字列のグラフィックスデータを映像制御部5に生成し、その歌詞文字列をディスプレイ8で表示する。なお詳しい説明は省略するが、歌詞文字列の背景に適宜な動画が表示される。
【0011】
歌唱者はマイクロホン9を持ち、スピーカシステム7から出る伴奏音楽を聴きながらディスプレイに表示される歌詞を見て歌う。マイクロホン9から出力される歌声信号はマイクロホンアンプ10を経てピッチ変換回路11に入力される。以下に詳しく説明するように、ピッチ変換回路11は、セレクタ12から与えられるピッチ(指示ピッチとする)になるように、マイクロホン9からの歌声信号のピッチを変換して出力する。ピッチ変換回路11から出力される歌声信号はミキシングアンプ6に入力される。
【0012】
マイクロホンアンプ10からの歌声信号はピッチ検出回路14にも入力される。このピッチ検出回路14は、入力された歌声信号を適宜な周期でサンプリングして歌声信号の基本周波数を検出し、その検出値(歌声ピッチPv)をディジタルデータで出力する。なお、ピッチ検出回路14は、入力信号のある程度の継続性のある基本周波数を検出するもので、ごく短期間での周波数変動には感応しないように、そのサンプリング特性や濾波特性を適宜に設定している。
【0013】
ピッチ検出回路14から出力される歌声ピッチPvは、3系統の演算回路15a・15b・15cに入力される。演算回路15aにはまた、中央処理装置1から与えられる前述の主旋律ピッチPmも入力される。この主旋律ピッチPmは、中央処理装置1が主体となってカラオケデータを処理して伴奏音楽の演奏と歌詞文字列の生成を行うのと並行し、中央処理装置1がカラオケデータから取得して逐次出力するもので、カラオケ伴奏音楽の演奏時系列の各時点で歌うべき音の高さを示すディジタルデータのストリームである。中央処理装置1はまた、主旋律ピッチPmを取得する際に主旋律ピッチPmを2倍にしたピッチ(主旋律ピッチPmの1オクターブ上のピッチ)を算出して演算回路15bに入力する。同時に主旋律ピッチを2分の1にしたピッチ(主旋律ピッチPmの1オクターブ下のピッチ)も算出して演算回路15c入力する。
【0014】
演算回路15a・15b・15cは、それぞれに入力された2つのピッチの差分を算出し、その値をオクターブ域判定回路13に出力する。すなわち演算回路15aからは歌声ピッチPvと主旋律ピッチPmとの差分が出力される。また演算回路15bからは歌声ピッチPvと主旋律ピッチPmを2倍にしたピッチとの差分が出力される。同じように演算回路15cからは歌声ピッチPvと主旋律ピッチPmを2分の1にしたピッチとの差分が出力される。
【0015】
3系統の演算回路15a・15b・15cからの出力は前記オクターブ域判定回路13に入力される。オクターブ域判定回路13では、前述の判定期間データを受信した歌い出し冒頭のオクターブ域判定期間において、演算回路15a・15b・15cの出力を比較して以下を判定する。
▲1▼ 歌い出し冒頭部分における歌唱ピッチPvが総体的に主旋律ピッチPmと単音程の関係になっているか(主旋律と同じオクターブ域で歌い始めたか)
▲2▼ 歌い出し冒頭部分における歌唱ピッチPvが総体的に主旋律ピッチPmより高い複音程の関係になっているか(主旋律より1オクターブ高い音域で歌い始めたか)
▲3▼ 歌い出し冒頭部分における歌唱ピッチPvが総体的に主旋律ピッチPmより低い複音程の関係になっているか(主旋律より1オクターブ低い音域で歌い始めたか)
【0016】
歌い出し冒頭のオクターブ域判定期間が経過し、オクターブ域判定回路13において前記▲1▼▲2▼▲3▼のいずれかであると判定したら、判定回路13はセレクタ12に3系統の入力のうちの1つを選択するセレクト信号を供給する。これにより、判定結果が▲1▼であった場合にはセレクタ12の入力▲1▼が選択され、中央処理装置1からの主旋律ピッチPmがセレクタを経由してピッチ変換回路11に指示ピッチとして入力される。また判定結果が▲2▼であった場合にはセレクタ12の入力▲2▼が選択され、主旋律ピッチPmの1オクターブ上のピッチ(Pm×2)がセレクタを経由してピッチ変換回路11に指示ピッチとして入力される。同様に、判定結果が▲3▼であった場合にはセレクタ12の入力▲3▼が選択され、主旋律ピッチPmの1オクターブ下のピッチ(Pm÷2)がセレクタを経由してピッチ変換回路11に指示ピッチとして入力される。
【0017】
以上のようにして指示ピッチを受信したピッチ変換回路11では、マイクロホンアンプ10からの歌声信号を周波数変換して歌声信号のピッチPvを指示ピッチに一致させ、そのようにピッチシフトさせた歌声信号をミキシングアンプ6に供給する。
【0018】
以上に詳しく説明した本実施例のピッチシフトの作用効果について、図2の楽譜を参照しながら、実際のカラオケ歌唱に即して具体的に説明する。図2の1段目は主旋律データであり、2段目は歌唱者が意図した歌唱旋律を譜面化したものである。また3段目はこのカラオケ装置によってピッチシフトされた結果の旋律を譜面化したものである。譜面1段目の主旋律データには判定期間データが付帯されており、第1小節目がオクターブ域判定期間であることが示されている。
【0019】
歌唱者はこの曲をピッチが高い歌だと思っていたので第1小節目を譜面1段目より1オクターブ下げたつもりで歌ってみた。ところが思っていたより音域は低く歌唱者の歌える音域に収まりそうなので第2小節目〜第3小節目は1段目のとおりに歌う。すなわち、1小節目より1オクターブ上げたつもりで歌う。ところがやはり歌の音域が高めで歌唱者の歌える音域をやや逸脱していたので、第4小節目は再度1段目より1オクターブ下げたつもりで歌った。
【0020】
この場合には、オクターブ域判定期間(この例では第1小節目)経過後に、オクターブ域判定回路13ではこの歌唱者は第1小節目には総じて主旋律より1オクターブ下の音域の範囲で歌唱していると判定する。その判定結果からセレクタ12では指示ピッチとして主旋律ピッチより1オクターブ下に変換したピッチ(セレクタ12の入力▲3▼)が選択される。その後は、第2小節目〜第3小節目のように譜面1段目どおりに歌っても、また4小節目のように1オクターブ下げて歌っても、もはやオクターブ域判定回路13は動作せず、歌声ピッチPvによらず譜面1段目より1オクターブ下のピッチになるようにスピーカシステム7から音響出力される。このようにして、第1小節目と第4小節目はほぼ歌唱者の歌声どおりのピッチで、また第2〜第3小節目は歌声よりほぼ1オクターブ下げたピッチで、つまり譜面3段目のように、全体を通して譜面1段目より正確に1オクターブ下げて歌っているように聞こえることになる。
【0021】
なお、オクターブ域判定期間中には、歌唱者の歌声信号をそのままスピーカシステム7に出力するようにしてもよいし、オクターブ変換はしないで主旋律Pmのとおりにピッチ補正して出力してもよい。
【0022】
また、オクターブ域判定回路13における判定のやり方は様々であるが、たとえば判定期間において3系統の演算回路の出力の平均値を算出して最小値になるものを選択してもよいし、その際に演算回路の出力に対してしきい値をあらかじめ規定しておき、そのしきい値より大きい出力は無視して平均値算出要素からは除くようにしてもよい。また判定期間データは延長可能に構成しておき、オクターブ域判定回路13で様々な要因で判定ができなかった場合には延長されるようにしてもよい。たとえば判定不能時にオクターブ域判定回路13内で自動的に数小節の判定期間データが付与されるようにしておき、新たに付与された判定期間データで示されたオクターブ域判定期間においてオクターブ域の判定を行うようにする。これを判定結果が出るまでくりかえすようにすればよい。
【0023】
その他、歌声ピッチPvと指示ピッチとの差があらかじめ規定した値(たとえば半音)より小さい場合にのみピッチを変換するようにしてもよい。こうすると、主旋律あるいはオクターブ変換した主旋律からの歌声のピッチのずれがあまり大きい場合にはピッチは変換されず、ずれが微少である場合にのみピッチを補正するように変換される。
【0024】
なおもちろんのことではあるが、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、たとえばピッチ検出回路14・演算回路15a〜c・オクターブ域判定回路13・ピッチ変換回路11・セレクタ12の信号処理機能や中央処理装置1の機能の一部を1つのディジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)を用いてもっぱらソフトウェア的に実現することも可能である。
【0025】
【発明の効果】
この発明にかかるカラオケ装置によれば、歌唱者の歌い始めのオクターブ域にあわせて、歌声のピッチが歌唱すべき主旋律のピッチまたは主旋律を1オクターブ上下したピッチに変換される。これにより歌唱者が歌いづらい箇所を1オクターブ上げたり下げたりしながら歌っても、歌唱者の自然な歌声のまま完成度が高い歌唱にすることができ、その場でしか味わえない満足感を自他ともに得ることができる。その結果、カラオケを利用する人が増大する効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係るピッチシフター付きカラオケ装置の構成例である。
【図2】この発明の一実施例の作用を具体的に説明するために参考となる図である。
【符号の説明】
1 中央制御装置
2 ハードディスク装置
3 操作制御部
4 シンセサイザー
5 映像制御部
6 ミキシングアンプ
7 スピーカシステム
8 ディスプレイ
9 マイクロホン
10 マイクロホンアンプ
11 ピッチ変換回路
12 セレクタ
13 オクターブ域判定回路
14 ピッチ検出回路
15a・15b・15c 演算回路
Claims (2)
- ピッチ検出手段(14)と、ピッチ変換手段(11)と、中央処理手段(1)と、指示ピッチ決定手段(12、13)とを備えるカラオケ装置であって、
ピッチ検出手段(14)は、マイクロホン(9)より入力される歌声信号から歌声ピッチを逐次検出し、
ピッチ変換手段(11)は、指示ピッチ決定手段(12、13)が決定した指示ピッチに合わせて、入力される歌声信号を周波数変換し、
中央処理手段(1)は、選択された伴奏音楽データを演奏手段(4)に演奏させる際、演奏の進行に伴って伴奏音楽データより主旋律ピッチを逐次取得するとともに、歌い出し冒頭の所定期間、指示ピッチ決定手段(12、13)にオクターブ域判定を指示し、
指示ピッチ決定手段(12、13)は、中央処理手段(1)のオクターブ域判定の指示に従い、歌声ピッチを主旋律ピッチ、及び、それとオクターブ違いのピッチと比較し、近似していると判定した主旋律ピッチ、又は、それとオクターブ違いのピッチを指示ピッチとして決定する
カラオケ装置。 - ピッチ変換手段(14)は、指示ピッチが決定されるまで、入力される歌声信号をそのまま出力する
請求項1に記載のカラオケ装置。
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