JP3593108B2 - 緑茶フレーバーの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は呈味を改善した緑茶フレーバーの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、缶、PET容器等に充填された形態の茶系飲料が多く上市されている。これらの飲料は止渇飲料の目的を有しながらも、呈味の面では、実際に飲用者が自分の手によって茶葉から調製する飲料と比較される嗜好飲料の一面を持っている。缶、PET容器等の容器詰め飲料においては、殺菌処理を行っているため、長期の保存が可能であることから、いつでも摂取できる簡便性を持っているが、一方では製造プロセスに由来するいくつかの制限があり、呈味面において、必ずしも消費者の満足感を充足しているとは言い難い。
【0003】
緑茶風味を際立たせた飲料、例えば緑茶飲料については、二つの風味設計の方向性がある。一つはカテキンを強化し苦味を高め“切れ”を出す方向性を持った飲料であって、もう一つはカテキンの溶出量を押さえて苦味を抑制した“旨味”重視の方向性を持った飲料である。
しかしながら旨味を重視した飲料においては、加熱殺菌臭の発生を抑制するために比較的希薄な成分組成となるように抽出されている為に、家庭で抽出されたお茶に本来備わっている“滋味”については十分に醸し出されていない。ここでいう“滋味”とは緑茶の味の一般的な表現の一つであり、滋味を構成する成分としてはアミノ酸、カテキン類、プリン塩基、糖、有機酸、ミネラルなどであってこれらの成分の調和に関係するものとされ、中心的な役割はアミノ酸やカテキン類が担っているものといわれている(調理科学,Vol.25,No.1,p55,1992年)。
【0004】
上記の加熱殺菌臭の発生防止手段については研究が行われており、茶類から20℃以下の冷水により抽出して得た抽出液を除去し、抽出残渣の茶葉から飲料を製造する方法(特開平11−113491号)、一度抽出を行った茶葉の残渣から飲料を製造する方法(特開2001−231450)が報告されている。
しかしながら、滋味に関与する成分であるアミノ酸等はぬる目の湯で抽出できるといわれており、上記の方法ではいずれも一回目の抽出により緑茶の滋味に関与する成分の一部を除去することによって加熱殺菌臭の発生の問題を解決しており、苦味を強化した切れの良い茶系飲料の製造は可能でも、滋味に優れた家庭のお茶に近い風味を有する飲料は得られていない。
【0005】
また、特開2000−50799には、旨味を有し、かつ渋味が少ない茶の抽出方法として、溶存酸素が除去され且つ0〜36℃に保持されてなる静水中に茶葉を浸漬し濾すとともに、上記静水中に溶存酸素が除去され且つ0〜36℃に保持されてなる水を常時供給する方法が開示されている。しかし、この方法は、水からの溶存酸素の除去操作、そのような水を常時供給するための装置等が必要であり、工業的に採用できる方法ではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、旨味重視の本格的な茶系容器詰飲料を得るための緑茶フレーバーの製造法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者は緑茶葉の抽出方法について種々検討したところ、緑茶葉を一定量の−5〜9℃の水で抽出すると、これよりも高温で抽出した場合に比べて滋味が良好なフレーバーが得られ、かつ飲料に配合した場合に、加熱による異臭や雑味の発生の少ない緑茶フレーバーが得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、−5〜9℃の水を緑茶葉に対して5〜40重量倍を用いて緑茶葉を水で抽出する緑茶フレーバーの製造法であって、緑茶フレーバーの抽出において同時に抽出されるカテキン類の抽出率が茶葉中の総カテキン類量(ここで、茶葉中のカテキン類の総量は、窒素雰囲気下、茶葉を100倍量の沸騰水にて十分な撹拌下、10分間抽出し、茶葉を除去した後、HPLCにて検出された量である。)の2〜20重量%であり、抽出される総カテキン類中の没食子酸エステルの含量が32重量%以下である緑茶フレーバーの製造法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する緑茶葉としては、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica及び、やぶきた種、又はそれらの雑種から得られる茶葉から製茶された、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜入り茶等が挙げられる。
【0010】
本発明では、緑茶葉に対して−5〜9℃の冷水にて抽出を行う。9℃以上の温度の水による抽出では、苦味が強くなり、満足すべき滋味は得られない。また9℃以上の温度の水で抽出された液を配合した飲料は、殺菌の際に本来の香りが消失し、異臭が発生し、さらに雑味も発生する。好ましい水温は−5〜8℃であり、さらに好ましくは−5〜5℃である。あまり水温が低すぎると凍結の防止が困難であり、またエネルギー消費が大きくなり、好ましくない。
【0011】
抽出に用いる水の量は、緑茶葉に対して5〜40重量倍、特に5〜25重量倍が好ましい。抽出時間は抽出方法および抽出の際のスケールに依存するが1〜120分程度が好ましく、より好ましくは1〜100分、更に好ましくは1〜80分である。使用する水は水道水、蒸留水、イオン交換水などどれでも良いが、味の面からイオン交換水が好ましい。
【0012】
抽出方法は、撹拌抽出、向流抽出、ティーバッグ様の抽出法などの従来の方法により行うことができる。また、カラム中に茶葉を充填し、これに冷水を通過させる方法が、複数回の抽出を行う場合には作業効率が良い。また抽出時の水に、あらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの酸化防止剤、有機酸又は有機酸塩類等のpH調整剤、凝固点降下作用を示す無機塩類、ポリオール類を添加してもよい。また煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を用いてもよい。抽出液のpHとしては、3〜7、特に4〜7が、フレーバーの抽出効率の観点から好ましい。
【0013】
本発明方法によって得られた緑茶フレーバーはそのまま、あるいは膜等による精製処理を行った後、飲料の製造に用いてもよいし、あるいはこれらを膜等を用いて濃縮した後、殺菌処理を行って保存した後、飲料等への配合に供しても良い。
【0014】
本発明方法により得られるフレーバーは、カテキン類を含有する。本発明でカテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類をあわせての総称である。茶葉中のカテキン類の総量は窒素雰囲気下、茶葉を100倍量の沸騰水にて十分な攪拌下、10分間抽出し、茶葉を除去した後、HPLCにて検出された量をいう。
【0015】
カテキン類の茶葉からの抽出率は、製造効率及び抽出液の風味の点から、茶葉中のカテキン総量の2〜20重量%が好ましく、より好ましくは2〜16重量%、更に好ましくは2〜12重量%である。緑茶フレーバーの抽出において同時に抽出される総カテキン類中の没食子酸エステルの含有率(ガレート体率)は、苦味防止及び生理効果の点から、32重量%以下が好ましく、より好ましくは31.5重量%以下、更に好ましくは31重量%以下、最も好ましくは30重量%である。ガレート体率とは、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートの全量を上記の8種のカテキン類の総量で除した値である。
【0016】
本発明により得られる緑茶フレーバーを配合すれば、緑茶特有の滋味が付与された飲料が得られる。当該飲料としては、緑茶の風味を有する容器詰飲料が好ましい。
【0017】
本発明の飲料には、茶由来の成分以外に酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、苦味調整剤、酸味料、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を単独、あるいは併用して配合しても良い。
例えば甘味料としては、砂糖、ぶどう糖、果糖、異性化液糖、グリチルリチン、ステビア、アスパルテーム、スクラロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖が挙げられる。
苦味調整剤としては、シクロデキストリンに代表される環状デキストリンが挙げられる。α−、β−、γ−シクロデキストリン及び、分岐α−、β−、γ−シクロデキストリンが使用できる。苦味調整剤は、本発明の飲料中に0.05〜0.5重量%、特に0.05〜0.4重量%含有するのが好ましい。
酸味料としては、天然成分から抽出した果汁類のほか、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、リン酸が挙げられる。
無機酸類、無機酸塩類としてはリン酸、リン酸二ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム等が、有機酸類、有機酸塩類としてはクエン酸、コハク酸、イタコン酸、リンゴ酸、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0018】
容器詰飲料とする場合に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などが挙げられる。ここでいう容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0019】
また容器詰飲料は、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。
【0020】
【実施例】
カテキン類の測定
フィルター(0.8μm)で濾過した飲料を、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(形式SCL−10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム L−カラムTM ODS(4.6mmΦ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により行った。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0021】
実施例1
煎茶葉100gを内径7cm、高さ40cmの抽出用カラムに充填し、ポンプにて0℃の冷水1500mLを毎分500mLで10分間循環させ抽出を行った。抽出液1301mLを回収し、フレーバー溶液とした。フレーバー溶液中のカテキン濃度は108mg/100mLであった。
【0022】
煎茶葉66.6gを65℃の温水2000mLに加え、攪拌下、5分間抽出を行った。抽出液を氷にて冷却後、2号ろ紙、二枚にて濾過を行った。1718gの抽出液が得られ、抽出液中のカテキン類の濃度は255mg/100mLであった。これを緑茶抽出液1とした。
なお、用いた煎茶葉中のカテキン類総量は茶葉1g当たり141mgであった。
【0023】
緑茶抽出液1を200g、フレーバー溶液を200g、アスコルビン酸0.4gにイオン交換水300gを加え、5%重曹水溶液にてpH6.2とし、さらにイオン交換水を加え総量800gとした。これを缶に充填し、121℃にて20分間殺菌を行い実施例1の飲料を得た。飲料中のカテキン濃度は84mg/100mLであった。
【0024】
実施例2、3
表1に従い、実施例1と同様な方法にて5℃、8℃にて得たフレーバー溶液を用いた実施例2、3の飲料を得た。
【0025】
比較例1、2、3
表1に従い、実施例1で得た緑茶抽出液1又は実施例1と同様な方法にて15℃、40℃にて抽出したフレーバー溶液を用いた比較例1、2,3の飲料を得た。
【0026】
比較例4
煎茶葉66.6gを55℃の温水2000mLに加え、攪拌下、5分間抽出を行った。抽出液を氷にて冷却後、2号ろ紙、二枚にて濾過を行った。
1722gの抽出液が得られ、抽出液中のカテキン類の濃度は189mg/100mLであった。これを緑茶抽出液2とした。この緑茶抽出液2を用いて表1に従い実施例1と同様な方法にて比較例4の飲料を得た。
【0027】
官能評価
香味に関する専門パネラー3名にて本発明の飲料(実施例1、2、3)および比較の飲料(比較例1、2、3、4)の評価を行った。評価項目は加熱殺菌臭の強さ、緑茶としての滋味の強さ、苦味の強さ、雑味の強さであり、評価結果を結果を表1に示す。
【0028】
実施例1、2、3については緑茶の香りが豊であり、濃厚な滋味が認められた。また、雑味が少なく、加熱殺菌に由来する異臭の発生が少なく、苦味も適度であった。飲用後に舌に残る渋味はなかった。比較例1については、加熱殺菌臭は弱く、苦味も適度であったが、緑茶としての滋味は弱く、雑味がやや感じられた。
【0029】
比較例2については、苦味は適度であったが、香りが弱くなり、加熱殺菌臭がやや低くなった。緑茶の滋味は雑味、渋味の発生に伴って弱くなった。比較例3については、さらに香りが失われ、加熱殺菌臭も強くなった。後に残る雑味、渋味は非常に弱くなった。比較例4については緑茶の濃厚な滋味は比較的強く感じられたが、後に残る渋味、雑味も強く感じられた。緑茶の香りが弱く、加熱殺菌臭が強かった。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
本発明方法によれば、緑茶特有の良好な滋味を有する緑茶フレーバーが得られる。またこの緑茶フレーバーを用いれば、殺菌処理による異臭がなく、苦味及び雑味の改善された緑茶系飲料が得られる。
Claims (1)
- −5〜9℃の水を緑茶葉に対して5〜40重量倍を用いて緑茶葉を水で抽出する緑茶フレーバーの製造法であって、緑茶フレーバーの抽出において同時に抽出されるカテキン類の抽出率が茶葉中の総カテキン類量(ここで、茶葉中のカテキン類の総量は、窒素雰囲気下、茶葉を100倍量の沸騰水にて十分な撹拌下、10分間抽出し、茶葉を除去した後、HPLCにて検出された量である。)の2〜20重量%であり、抽出される総カテキン類中の没食子酸エステルの含量が32重量%以下である緑茶フレーバーの製造法。
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