JP3567945B2 - ポリカーボネート成形物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はポリカーボネート樹脂の表面の耐擦傷性、耐候性を向上させた非平面を持つポリカーボネート樹脂成形物及びその製造法に関するものである。
本発明のポリカーボネートシート樹脂成形物は耐擦傷性が良く、また耐候性による外観、密着性、黄変性などの物性に優れるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリカーボネート樹脂は透明性にすぐれており、軽量で耐衝撃性が良いことから、ガラスに代わる構造材料として広く使用されているが、一方、耐摩耗性が悪く、有機溶剤に侵され易く、しかも経時変化によって着色劣化するという欠点がある。そのため、この成形物については、その表面をハードコート処理したり又、アクリルフィルム、フッ素フィルム等を用いてラミネートを行うことが提案されている。
【0003】
これらの中でオルガノポリシロキサンを用いて被覆したものが、耐摩耗性及び耐薬品性がすぐれたものになるということから、オルガノポリシロキサンが有用なものとされているのが、このオルガノポリシロキサン系塗膜はポリカーボネート樹脂樹脂との密着性が不十分であることから、下記の(1)〜(7)に記す樹脂をプライマー層として使用することが知られている。
【0004】
(1)熱可塑性アクリル系プライマー(特開昭52−138565号)
(2)アミノ基などの官能基を有するアクリル樹脂系プライマー(特開昭53−138476号)
(3)アミノ基またはヒドロキシ基などの官能基を有するアルコキシシランと環状酸無水物との反応物よりなるシリコーン系プライマー(特開昭53−81533号)
(4)エポキシシランの加水分解物とアミノシランとの混合物よりなるシリコーン系プライマー(特開昭54−63176号)
(5)官能基含有熱可塑性樹脂と紫外線吸収剤よりなるアクリル系プライマー(特開昭55−500809号)
(6)アミノシラン、エポキシシラン及び酸無水物の反応物よりなるシリコーン系プライマー(特開昭56−16573号)
(7)アクリル系モノマーとエポキシジメタクリレート及びヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤との反応物よりなる熱可塑性アクリル系プライマー(特開昭57−23661号)
【0005】
一方、プライマー被膜を十分に硬化させ、その上にコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサンによる被覆組成物を塗布することにより、耐摩耗性や耐薬品性の向上が図られており、例えば、シリコーン樹脂の被覆組成物については特公昭52−39691、特公昭62−55554、特公平1−36505などで開示されている。
しかしながら、上記の成形法により得られたポリカーボネート多層シート及びフィルムは塗膜が強固なため、平面状の成形品は成形可能であるが、曲率半径の小さい曲面を有する成形品を成形すると、割れが生じる問題がある。
【0006】
一方、ポリカーボネート樹脂成形物の表面特性を改善するため、まず、曲率を有するポリカーボネート製成形品を成形し、その後その成形物にシリコーン樹脂の被覆組成物等を塗布する方法が行われているが作業上煩雑であるという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、非平面成形物に表面を硬化させるコーティング材を塗布後硬化させることによる操作の煩雑さを除き、塗布を連続的に行うことにより全工程を大幅に単純化して得られる成形物及びその製造法を提供しようとするものである。他の一つの目的は半硬化の状態で成形できることより、通常のシート状物と同様な取扱い性を有しながら、曲率の小さい非平面を有するポリカーボネート樹脂成形物及びその製造法を提供しようとするものがあり、また他の一つの目的は前述した従来技術の欠点を解決しある加工製造を塗布工程、前硬化工程、加工成形工程、後硬化工程の連続工程によって製造を可能にし、これらの工程により得られた製品は表面の耐擦傷性、硬度、耐候性を向上させ更に表面保護膜と基材との密着性に優れた非平面を持つポリカーボネート樹脂成形物及びその製造法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、曲率半径3〜10mmRの部分を有するポリカーボネート製成形品を得る際、ポリカーボネートフィルム又はシート面上にプライマーを塗布して硬化させた後、オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、完全硬化に至らない状態で多層フィルム又はシートを射出成形用金型内に装着し、次いで金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、離型後に後硬化することにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、
ポリカーボネートフィルム又はシート面上に紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂からなるプライマーを塗布して硬化させ、次いで該アクリル系樹脂被膜上にオルガノトリアルコキシシランとコロイダルシリカから成るコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、塗膜の粘着性がなくかつ完全硬化に至らない状態であって、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが20〜50%(ASTM1044による)となるまで前硬化させ、その後該多層フィルム又はシートを曲率半径3〜10mmRの部分を有する射出成形用金型内面に該オルガノポリシロキサン被膜面が金型側の面となる様に装着し、次いで該金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、金型より成形物を取り出した後、更に後硬化させて得られたポリカーボネート成形物
および
非平面を有するポリカーボネート成形物の製造方法において、ポリカーボネートフィルム又はシート面上に紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂からなるプライマーを塗布して硬化させ、次いで該アクリル系樹脂被膜上にオルガノトリアルコキシシランとコロイダルシリカから成るコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、塗膜の粘着性がなくかつ完全硬化に至らない状態であって、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが20〜50%(ASTM1044による)となるまで前硬化させ、その後該多層フィルム又はシートを曲率半径3〜10mmRの部分を有する射出成形用金型内面に該オルガノポリシロキサン被膜面が金型側の面となる様に装着し、次いで該金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、金型より成形物を取り出した後、更に後硬化させることを特徴とするポリカーボネート成形物の製造方法
に関する発明である。
【0010】
本発明で使用するポリカーボネートフィルム又はシートは、特に制限はないが芳香族系等の通常のポリカーボネートフィルム又はシートが使用できる。
尚、ポリカーボネートフィルム又はシートが紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂をコーテングする面と相対する面に、防曇、帯電防止又は反射防止シートもしくはフィルムなどから選択された1種もしくは2種以上の機能性を有する膜がコーテングされているものも使用することができる。
【0011】
紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂からなるプライマーを塗布して硬化する技術は、公知の方法が採用できるがプライマー層は例えば乾燥塗膜が2〜5μmになる様に塗布することができる。
【0012】
オルガノトリアルコキシシランとコロイダルシリカから成るコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物は、通常ポリカーボネートのフィルム及びシートの表面加工に使用されているコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物が使用できる。例えば、コロイダルシリカ、オルガノトリアルコキシシランを混合し硬化触媒と溶剤からなるコーティング材を例えば乾燥塗膜2〜5μmになる様に塗布することができる。
塗布する方法としてはスプレー、浸漬、フロー、ロールコーティング等といった良く知られた方法でこれらいずれかの方法を用いて塗布すると良い。
【0013】
本発明において、プライマー上にオルガノポリシロキサン組成物を塗布する際、塗膜の粘着性がなくかつ完全硬化に至らない状態であって、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが20〜50%(ASTM1044による)となるまで前硬化させるが、例えば、50〜70℃の温度で約1時間前硬化させることができる。
ここにおいて、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが上記20%未満であれば硬化が進み過ぎて成形品にクラックが発生し易くなる。一方、ヘイズが上記50%を越えると成形機の表面に付着したり、表面に傷がつき、目的とする外観良好な成形品を得ることができない。
【0014】
その後該多層フィルム又はシートを曲率半径3〜10mmR以下の部分を有する射出成形用金型内面に該オルガノポリシロキサン被膜面が金型側の面となる様に装着する。
【0015】
次に、該金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、金型より成形物を取り出した後、更に後硬化させてポリカーボネート成形物を得る。
ここにおいて後硬化の条件に特に制約はないが、通常、120〜130℃にて約1時間程度硬化させればよい。
【0016】
尚、2枚のポリカーボネートフィルム又はシート面上にそれぞれ紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂からなるプライマーを塗布して硬化させ、次いで該アクリル系樹脂被膜上にオルガノトリアルコキシシランとコロイダルシリカから成るコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、塗膜の粘着性がなくかつ完全硬化に至らない状態であって、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが20〜50%(ASTM1044による)となるまで前硬化させ、その後上記2枚の多層フィルム又はシートを曲率半径3〜10mmRの部分を有する射出成形用金型内面に該オルガノポリシロキサン被膜面がそれぞれ金型側の面となる様に装着し、次いで該金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、金型より成形物を取り出した後、更に後硬化させて、ポリカーボネート成形物を製造することもできる。
【0017】
本発明の製造方法で得られたポリカーボネート樹脂成形体は耐擦傷性が良く、また耐候性による外観、密着性、黄変性などの物性が良好である。
【0018】
【実施例】
以下に本発明の好適な実施例について説明する。
実施例1
まずポリカーボネート樹脂シート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ユーピロンシート、厚み:0.5mm)にプライマー(信越化学工業(株)製、商品名:プライマーPC−9EHH)を乾燥塗膜が2〜5μmになる様に塗布し、その上に主としてコロイダルシリカ、オルガノトリアルコキシシラン、硬化触媒及び溶剤からなるコーティング材(信越化学工業(株)製、商品名:トップKP85)を乾燥塗膜が2〜5μmになる様塗布する。
【0019】
塗布する方法としては、フロー方法を用いてポリカーボネート樹脂シートに塗布した。以上の様に乾燥膜厚を調整し、塗布した後50〜70℃にて塗膜を1時間前硬化させた。前硬化後のテーバー磨耗、100サイクル後のヘイズは40%(ASTM1044による)であった。
次に前硬化したシートは、それぞれ曲率半径3、5、8、10mmを持つ金型内面(内面形状は、切頭角錐形状で、切頭面のサイズは9cm×9cmで、底面のサイズは10cm×10cm、深さは5mmであり、切頭面の端部の曲率半径がそれぞれ3、5、8、10mmである)に接する様装着し、次いで該金型面へポリカーボネート樹脂を温度290℃、圧力1,600kgf/cm2 にて射出して成形品を得た。離型後更に120〜130℃で1時間後硬化させた。
得られた成形品の外観は、クラックの発生はなく良好であり密着性も良く、また擦傷性についてはスチールウール(#0000)にて擦ったが全く傷が付かなかった。
【0020】
比較例1
前硬化後のテーバー磨耗、100サイクル後のヘイズを15%(ASTM1044による)とした以外は、実施例1と同様に成形加工をおこなった。
得られた成形品の切頭面の4つの端部にはいずれもクラックが生じていた。
【0021】
【発明の効果】
本発明の2段からなる熱硬化を行うことにより、成形が極めて容易となり、従って各種形状の成形を可能とし、しかも成形されたポリカーボネート樹脂成形品の表面は、高強度で耐擦傷性に優れかつ耐候性等の耐久性に優れると共に密着性についても優れている。従ってポリカーボネート樹脂材のもつ軽量、透明、耐衝撃性等の性質を保持した状態でなお表面特性に優れた成形物を製造できることから、自動車部品等に実用上極めて有利なものである。
【産業上の利用分野】
本発明はポリカーボネート樹脂の表面の耐擦傷性、耐候性を向上させた非平面を持つポリカーボネート樹脂成形物及びその製造法に関するものである。
本発明のポリカーボネートシート樹脂成形物は耐擦傷性が良く、また耐候性による外観、密着性、黄変性などの物性に優れるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリカーボネート樹脂は透明性にすぐれており、軽量で耐衝撃性が良いことから、ガラスに代わる構造材料として広く使用されているが、一方、耐摩耗性が悪く、有機溶剤に侵され易く、しかも経時変化によって着色劣化するという欠点がある。そのため、この成形物については、その表面をハードコート処理したり又、アクリルフィルム、フッ素フィルム等を用いてラミネートを行うことが提案されている。
【0003】
これらの中でオルガノポリシロキサンを用いて被覆したものが、耐摩耗性及び耐薬品性がすぐれたものになるということから、オルガノポリシロキサンが有用なものとされているのが、このオルガノポリシロキサン系塗膜はポリカーボネート樹脂樹脂との密着性が不十分であることから、下記の(1)〜(7)に記す樹脂をプライマー層として使用することが知られている。
【0004】
(1)熱可塑性アクリル系プライマー(特開昭52−138565号)
(2)アミノ基などの官能基を有するアクリル樹脂系プライマー(特開昭53−138476号)
(3)アミノ基またはヒドロキシ基などの官能基を有するアルコキシシランと環状酸無水物との反応物よりなるシリコーン系プライマー(特開昭53−81533号)
(4)エポキシシランの加水分解物とアミノシランとの混合物よりなるシリコーン系プライマー(特開昭54−63176号)
(5)官能基含有熱可塑性樹脂と紫外線吸収剤よりなるアクリル系プライマー(特開昭55−500809号)
(6)アミノシラン、エポキシシラン及び酸無水物の反応物よりなるシリコーン系プライマー(特開昭56−16573号)
(7)アクリル系モノマーとエポキシジメタクリレート及びヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤との反応物よりなる熱可塑性アクリル系プライマー(特開昭57−23661号)
【0005】
一方、プライマー被膜を十分に硬化させ、その上にコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサンによる被覆組成物を塗布することにより、耐摩耗性や耐薬品性の向上が図られており、例えば、シリコーン樹脂の被覆組成物については特公昭52−39691、特公昭62−55554、特公平1−36505などで開示されている。
しかしながら、上記の成形法により得られたポリカーボネート多層シート及びフィルムは塗膜が強固なため、平面状の成形品は成形可能であるが、曲率半径の小さい曲面を有する成形品を成形すると、割れが生じる問題がある。
【0006】
一方、ポリカーボネート樹脂成形物の表面特性を改善するため、まず、曲率を有するポリカーボネート製成形品を成形し、その後その成形物にシリコーン樹脂の被覆組成物等を塗布する方法が行われているが作業上煩雑であるという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、非平面成形物に表面を硬化させるコーティング材を塗布後硬化させることによる操作の煩雑さを除き、塗布を連続的に行うことにより全工程を大幅に単純化して得られる成形物及びその製造法を提供しようとするものである。他の一つの目的は半硬化の状態で成形できることより、通常のシート状物と同様な取扱い性を有しながら、曲率の小さい非平面を有するポリカーボネート樹脂成形物及びその製造法を提供しようとするものがあり、また他の一つの目的は前述した従来技術の欠点を解決しある加工製造を塗布工程、前硬化工程、加工成形工程、後硬化工程の連続工程によって製造を可能にし、これらの工程により得られた製品は表面の耐擦傷性、硬度、耐候性を向上させ更に表面保護膜と基材との密着性に優れた非平面を持つポリカーボネート樹脂成形物及びその製造法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、曲率半径3〜10mmRの部分を有するポリカーボネート製成形品を得る際、ポリカーボネートフィルム又はシート面上にプライマーを塗布して硬化させた後、オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、完全硬化に至らない状態で多層フィルム又はシートを射出成形用金型内に装着し、次いで金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、離型後に後硬化することにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、
ポリカーボネートフィルム又はシート面上に紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂からなるプライマーを塗布して硬化させ、次いで該アクリル系樹脂被膜上にオルガノトリアルコキシシランとコロイダルシリカから成るコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、塗膜の粘着性がなくかつ完全硬化に至らない状態であって、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが20〜50%(ASTM1044による)となるまで前硬化させ、その後該多層フィルム又はシートを曲率半径3〜10mmRの部分を有する射出成形用金型内面に該オルガノポリシロキサン被膜面が金型側の面となる様に装着し、次いで該金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、金型より成形物を取り出した後、更に後硬化させて得られたポリカーボネート成形物
および
非平面を有するポリカーボネート成形物の製造方法において、ポリカーボネートフィルム又はシート面上に紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂からなるプライマーを塗布して硬化させ、次いで該アクリル系樹脂被膜上にオルガノトリアルコキシシランとコロイダルシリカから成るコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、塗膜の粘着性がなくかつ完全硬化に至らない状態であって、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが20〜50%(ASTM1044による)となるまで前硬化させ、その後該多層フィルム又はシートを曲率半径3〜10mmRの部分を有する射出成形用金型内面に該オルガノポリシロキサン被膜面が金型側の面となる様に装着し、次いで該金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、金型より成形物を取り出した後、更に後硬化させることを特徴とするポリカーボネート成形物の製造方法
に関する発明である。
【0010】
本発明で使用するポリカーボネートフィルム又はシートは、特に制限はないが芳香族系等の通常のポリカーボネートフィルム又はシートが使用できる。
尚、ポリカーボネートフィルム又はシートが紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂をコーテングする面と相対する面に、防曇、帯電防止又は反射防止シートもしくはフィルムなどから選択された1種もしくは2種以上の機能性を有する膜がコーテングされているものも使用することができる。
【0011】
紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂からなるプライマーを塗布して硬化する技術は、公知の方法が採用できるがプライマー層は例えば乾燥塗膜が2〜5μmになる様に塗布することができる。
【0012】
オルガノトリアルコキシシランとコロイダルシリカから成るコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物は、通常ポリカーボネートのフィルム及びシートの表面加工に使用されているコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物が使用できる。例えば、コロイダルシリカ、オルガノトリアルコキシシランを混合し硬化触媒と溶剤からなるコーティング材を例えば乾燥塗膜2〜5μmになる様に塗布することができる。
塗布する方法としてはスプレー、浸漬、フロー、ロールコーティング等といった良く知られた方法でこれらいずれかの方法を用いて塗布すると良い。
【0013】
本発明において、プライマー上にオルガノポリシロキサン組成物を塗布する際、塗膜の粘着性がなくかつ完全硬化に至らない状態であって、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが20〜50%(ASTM1044による)となるまで前硬化させるが、例えば、50〜70℃の温度で約1時間前硬化させることができる。
ここにおいて、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが上記20%未満であれば硬化が進み過ぎて成形品にクラックが発生し易くなる。一方、ヘイズが上記50%を越えると成形機の表面に付着したり、表面に傷がつき、目的とする外観良好な成形品を得ることができない。
【0014】
その後該多層フィルム又はシートを曲率半径3〜10mmR以下の部分を有する射出成形用金型内面に該オルガノポリシロキサン被膜面が金型側の面となる様に装着する。
【0015】
次に、該金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、金型より成形物を取り出した後、更に後硬化させてポリカーボネート成形物を得る。
ここにおいて後硬化の条件に特に制約はないが、通常、120〜130℃にて約1時間程度硬化させればよい。
【0016】
尚、2枚のポリカーボネートフィルム又はシート面上にそれぞれ紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂からなるプライマーを塗布して硬化させ、次いで該アクリル系樹脂被膜上にオルガノトリアルコキシシランとコロイダルシリカから成るコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、塗膜の粘着性がなくかつ完全硬化に至らない状態であって、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが20〜50%(ASTM1044による)となるまで前硬化させ、その後上記2枚の多層フィルム又はシートを曲率半径3〜10mmRの部分を有する射出成形用金型内面に該オルガノポリシロキサン被膜面がそれぞれ金型側の面となる様に装着し、次いで該金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、金型より成形物を取り出した後、更に後硬化させて、ポリカーボネート成形物を製造することもできる。
【0017】
本発明の製造方法で得られたポリカーボネート樹脂成形体は耐擦傷性が良く、また耐候性による外観、密着性、黄変性などの物性が良好である。
【0018】
【実施例】
以下に本発明の好適な実施例について説明する。
実施例1
まずポリカーボネート樹脂シート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ユーピロンシート、厚み:0.5mm)にプライマー(信越化学工業(株)製、商品名:プライマーPC−9EHH)を乾燥塗膜が2〜5μmになる様に塗布し、その上に主としてコロイダルシリカ、オルガノトリアルコキシシラン、硬化触媒及び溶剤からなるコーティング材(信越化学工業(株)製、商品名:トップKP85)を乾燥塗膜が2〜5μmになる様塗布する。
【0019】
塗布する方法としては、フロー方法を用いてポリカーボネート樹脂シートに塗布した。以上の様に乾燥膜厚を調整し、塗布した後50〜70℃にて塗膜を1時間前硬化させた。前硬化後のテーバー磨耗、100サイクル後のヘイズは40%(ASTM1044による)であった。
次に前硬化したシートは、それぞれ曲率半径3、5、8、10mmを持つ金型内面(内面形状は、切頭角錐形状で、切頭面のサイズは9cm×9cmで、底面のサイズは10cm×10cm、深さは5mmであり、切頭面の端部の曲率半径がそれぞれ3、5、8、10mmである)に接する様装着し、次いで該金型面へポリカーボネート樹脂を温度290℃、圧力1,600kgf/cm2 にて射出して成形品を得た。離型後更に120〜130℃で1時間後硬化させた。
得られた成形品の外観は、クラックの発生はなく良好であり密着性も良く、また擦傷性についてはスチールウール(#0000)にて擦ったが全く傷が付かなかった。
【0020】
比較例1
前硬化後のテーバー磨耗、100サイクル後のヘイズを15%(ASTM1044による)とした以外は、実施例1と同様に成形加工をおこなった。
得られた成形品の切頭面の4つの端部にはいずれもクラックが生じていた。
【0021】
【発明の効果】
本発明の2段からなる熱硬化を行うことにより、成形が極めて容易となり、従って各種形状の成形を可能とし、しかも成形されたポリカーボネート樹脂成形品の表面は、高強度で耐擦傷性に優れかつ耐候性等の耐久性に優れると共に密着性についても優れている。従ってポリカーボネート樹脂材のもつ軽量、透明、耐衝撃性等の性質を保持した状態でなお表面特性に優れた成形物を製造できることから、自動車部品等に実用上極めて有利なものである。
Claims (4)
- ポリカーボネートフィルム又はシート面上に紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂からなるプライマーを塗布して硬化させ、次いで該アクリル系樹脂被膜上にオルガノトリアルコキシシランとコロイダルシリカから成るコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、50〜70℃の温度で、塗膜の粘着性がなくかつ完全硬化に至らない状態であって、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが20〜50%(ASTM1044による)となるまで前硬化させ、その後該多層フィルム又はシートを曲率半径3〜10mmRの部分を有する射出成形用金型内面に該オルガノポリシロキサン被膜面が金型側の面となる様に装着し、次いで該金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、金型より成形物を取り出した後、120〜130℃の温度で、更に後硬化させて得られたポリカーボネート成形物。
- 2枚のポリカーボネートフィルム又はシート面上にそれぞれ紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂からなるプライマーを塗布して硬化させ、次いで該アクリル系樹脂被膜上にオルガノトリアルコキシシランとコロイダルシリカから成るコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、50〜70℃の温度で、塗膜の粘着性がなくかつ完全硬化に至らない状態であって、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが20〜50%(ASTM1044による)となるまで前硬化させ、その後上記2枚の多層フィルム又はシートを曲率半径3〜10mmRの部分を有する射出成形用金型内面に該オルガノポリシロキサン被膜面がそれぞれ金型側の面となる様に装着し、次いで該金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、金型より成形物を取り出した後、120〜130℃の温度で、更に後硬化させて得られたポリカーボネート成形物。
- 使用するポリカーボネートフィルム又はシートが紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂をコーテイングする面と相対する面に、防曇、帯電防止又は反射防止シートもしくはフィルムなどから選択された1種もしくは2種以上の機能性を有する膜がコーテングされていることを特徴とする請求項1ないし2記載のポリカーボネート成形物。
- 非平面を有するポリカーボネート成形物の製造方法において、ポリカーボネートフィルム又はシート面上に紫外線吸収剤を含むアクリル系樹脂からなるプライマーを塗布して硬化させ、次いで該アクリル系樹脂被膜上にオルガノトリアルコキシシランとコロイダルシリカから成るコロイダルシリカ含有オルガノポリシロキサン組成物を塗布し、50〜70℃の温度で、塗膜の粘着性がなくかつ完全硬化に至らない状態であって、テーバー磨耗、100サイクル後のヘイズが20〜50%(ASTM1044による)となるまで前硬化させ、その後該多層フィルム又はシートを曲率半径3〜10mmRの部分を有する射出成形用金型内面に該オルガノポリシロキサン被膜面が金型側の面となる様に装着し、次いで該金型内へ溶融したポリカーボネートを射出し、金型より成形物を取り出した後、120〜130℃の温度で、更に後硬化させることを特徴とするポリカーボネート成形物の製造方法。
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