JP3554100B2 - スパイラルドリルとその製作方法 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は割付け可能インサート（植刃）を具備したスパイラルドリルとして、保持用シャンク、中央インサートと周辺インサートを夫々受け入れるインサートポケットを備えたノーズ部及び冷媒用チァンネルが夫々内部に配設されている２個の螺旋状に湾曲したリブを有する螺旋部を含んで成る、斯ゝるスパイラルドリルに関する。
【０００２】
【従来の技術】
スパイラルドリルにおいては、液を冷媒チァンネルを通じて切刃の近傍にある開孔に供給することにより、チップ形成（切粉出し）を容易にし、そしてフルートの摩擦を低減させることが出来る。捩り剛性を低下させず且つ軸方向力と捩り角の間の望ましくない組合せを与えないようにするため、この種のドリルは多くの場合、スウェーデン特許ＳＥ３３５１１１と欧州特許ＥＰ１８８０３５に示すように２個の螺旋状冷媒チァンネルを備えるように作られる。これらのチァンネルが強度の低下が最小限になるようにフルート間のリブ内部に配位している両特許は更に冷媒チァンネルの個所が異なっている螺旋部とそれとは個別に作られたシャンク部とを継合することにより作成する方法を示している。
【０００３】
スウェーデン特許ＳＥ１９４７０６から、スチールの本体のポケットに割付け可能（インデキシャブル）炭化物インサート（植刃）を備えているドリルを作ることが知られている。この場合、多数のドリル直径を、限定された数のインサートサイズの２個以上のインサートを利用することにより、得ることが出来る。これらのインサートは非対称に配置された割付け可能インサートであって、その１つはドリル中心線の近くにある中央インサートであり、もう１つはドリル周辺の近くにある周辺インサートである。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的はドリルの強度、剛性の低減が最小限度に抑えられる個所に冷媒チァンネルの全長の大部分が配位し、且つ各インサートの切刃の近くに配位するようにした斯ゝる冷媒チァンネルを有するスパイラルドリルを提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、複数の直線状冷媒チァンネルがシャンク部からドリル先端に開通しないように円筒形ドリルブランクに穿設加工（ドリル加工）され、且つチァンネルがブランクの中心から夫々異なる距離に配位するようにする。このブランクは次に加熱され、そして所定角度だけ捩り加工される。この捩り加工の後、フルート、インサートポケット、ドリル先端（チップ）及び直線状出口部が機械工作される。この出口部は冷媒チァンネルと会合させるために設けられ、チァンネルの出口部の少なくとも１つは断面円錐形（テーパ状）チァンネルとして穿設されている。この機械工作の際、シャンク部の冷媒チァンネルは角度基準として使用される。これは断面上の螺旋チァンネル個所に関係なく、インサートポケットに対し相対的に最適な位置に開孔を配設することを可能にする。
【０００６】
本発明の１態様によれば、冷媒チァンネルは相互に平行になるようにドリル加工されるが、これらのチァンネルは円筒形ドリルブランクが加熱中に所定角度に捩られることになる斯ゝるドリルブランクの中心線から異なる距離に配位させられている。これとは別の態様によれば、冷媒チァンネルは中心軸線から異なる距離の個所で終端になる開孔を有するようにドリルブランクの中心軸線に対し傾斜した角度にドリル加工される。
【０００７】
インサートポケットは非対称に配置され、その１方は中心の近くに、他方は周辺の近くに配位する。冷媒の最良の効果を得るために、出口としての開孔は後続のインサートと同じ位置に対応するように配置されるべきである。従って１の開孔は中心の近くに、そして他方の開孔は周辺の近くに配置されるべきである。この配置構成はインサートポケットの工作との関連で出口チァンネルをドリル加工することにより達成される。
【０００８】
【実施例】
図１，２において、本発明例のドリルはシャンク部１５と、２個のフルート２９，３０によって分離されている２個のリブ１１，１２を備えた螺旋部と、ドリル先端として中央インサート１３と周辺インサート１４とがリブ１１，１２の端部に工作されたポケットに螺結されている斯ゝるドリル先端とを含んで成る。ドリルマシンにドリルを装着するときに、ドリルが充分に正確な軸方向位置にあるようにするために、ドリルはシャンク部と螺旋部の間にフランジ１６を具備した形態に作ることが出来る。
【０００９】
各リブ１１，１２の内部には、リブと同じ曲率半径で螺旋状に湾曲した冷媒チァンネル１７，１８が配設されている。両チァンネルは中心線に平行に延在する直線チァンネル２３，２４としてシャンク部１５に引続くように配設されている。
直線チァンネル２３，２４はシャンク部の端面３１に至るまでの全道程に亘って中心線から異なる距離Ｒ_１ Ｒ_２ で以って延在している。
【００１０】
本発明の別の例では、この種のチァンネル２３，２４はシャンク部の端面３１に至る全道程に亘って角度αでドリル先端に向って拡散する（両チァンネルが先き拡がりになる）直線状のものである。この角度αの値は３０−６０ｍｍの直径のドリルのためには１．５−４．０°の範囲のものに、そして直径が１３−３０ｍｍのドリルのためには０．３−２．５°の範囲のものに設定されるべきである。
【００１１】
螺旋冷媒チァンネル１７，１８はドリル先端近傍のリブ１１，１２の内部の終点１９，２０で終端になる本発明の１例では、この終点から円錐状に延在する出口チァンネルがインサートの背後にあるドリル先端面の開孔２１，２２に至る。開孔２１，２２は非対称配位であるが、中央インサート１３を担持するリブ１１に配設された開孔２１は中心線から半径方向に相対的に遠い個所にあり、周辺インサート１４に潤滑液を与える。中央インサートを担持するリブ１１の開孔（２１）は好ましくは他の開孔より断面積の大きなものに作られる。しかしこの中央インサートを担持するリブの開孔を他の開孔より小さな断面のものにするのが有益なケースもあり得る。
【００１２】
本発明の１例に係るドリルはドリルブランクの中心線ＣＬから異なる距離の個所で延在している冷媒チァンネル２３，２４になるように２本の平行な直線状チァンネルを具備している斯ゝる円筒形ドリルブランクから製造される。ドリルの製造方法は上記工程の後の工程に関しては特願平第６−５１４０４５号（スウェーデン特許第９２０３７１６−７号）に開示された工程と同じである。
ドリルブランクは２個のチアック（２７，２８）に取付けられる。１のチアック（２７）はシャンク部（１５）となる個所を保持し、他のチアック（２８）はドリル先端となるべきブランク端（２５）の近くのブランク部分を保持する。ドリルブランクは両チアック間で誘導コイル（２６）或いは他の適宜の加熱手段によって加熱される。加熱されるや、ドリルブランクをチアックに対し相対的に所定角度だけ捩じり加工する（少なくとも１方のチアックを回動させることにより）。チアックの把持力はチアックに保持されているドリルブランク部分の捩りが生じない程度に安定していなければならない。チアック間に配位するチァンネル部分（１７，１８）は螺旋状に湾曲させられ、チァンネル部分の終点（１９，２０）が直線状チァンネル部分（２３，２４）に対して正確に位置付けられる。
【００１３】
ドリルブランクは捩り加工の後、その最終直径寸法に径減加工し、そしてフルート２９，３０を工作する基準としてチァンネル２３，２４を用いることにより、螺旋フルートは冷媒チァンネル１７，１８に近付き過ぎる個所に配位しないようにすることができる。インサート１３，１４用のポケットを次に工作し、そして円錐状に延在する出口チァンネルを開孔２１，２２から終点１９，２０までドリル加工する。この場合の開孔２１，２２は中心線から異なる半径方向距離の位置にある。本発明の別の例によれば、冷媒チァンネル１７，１８は特定のドリル径のためには、ドリル先端部で終端になることが許される。
【００１４】
冷媒チァンネルをドリルブランクの中心線から異なる距離に配位させている上述の構造のお陰で、冷媒チァンネルとその出口としての開孔をチップフルート２９，３０を作るために相対的に大きなスペースをさくように配置させることが容易になった。これは工作されるべき工作物の材質に依存して種々の形式の切粉（チップ）用の孔の個所を選定するときの自由度を高める。本発明の１例では、冷媒チァンネルの１方のサイズを他方のサイズよりも大きくすることが、中央インサートの近傍に多量の冷媒を供給する必要のあるときに、可能となる。
【００１５】
【発明の効果】
本発明により、冷媒チァンネルとそのための開孔を有するスパイラルドリルにおいてフルートを設けるためのドリル上のスペースをチァンネルと開孔に対し支障なく（ドリル強度を阻害せずに）拡大することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係るドリルを示す側面説明図である。
【図２】図１のドリルの断面図である。
【図３】本発明に係る図１のドリルのブランクを捩るための工程を示す説明図である。
【図４】本発明に係る他の例のドリルブランクの捩る前の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
１１，１２…リブ
１３，１４…インサート（中央と周辺）
１５…シャンク部
１６…フランジ
１７，１８…冷却チァンネル
１９，２０…終点
２１，２２…開孔
２３，２４…直線状チァンネル
２５…ブランク端
２６…誘導コイル
２７，２８…チアック
２９，３０…フルート
３１…端面

Claims (10)

1. 割付け可能インサートとしての中央インサート（１３）と周辺インサート（１４）を具備したスパイラルドリルとして：シャンク部（１５）、中央インサート（１３）と周辺インサート（１４）のためのポケットを有する先端、及び冷媒チャンネル（１７，１８）を夫々内部に有する２本の螺旋状に湾曲したリブ（１１，１２）を有する螺旋部を含んで成り；該冷媒チャンネルが該リブと同じ曲率半径で螺旋状に湾曲しており；各冷媒チャンネルがドリル先端の開孔（２１，２２）で終端となる出口チャンネルと連通していて；該開孔が中心線から異なる距離に配位していて；且つ各冷媒チャンネル(１７，１８)が直線状のチャンネル（２３，２４）のシャンク部に連通している構成のスパイラルドリルにおいて、
   各リブとシャンク部との冷媒チャンネル(１７、１８、２３、２４)が、中心線（ＣＬ）から異なる半径方向距離に配位されていることを特徴とする、スパイラルドリル。
2. 中央インサート（１３）を担持したリブ（１１）の開孔（２１）を終端とする該出口チャンネルが周辺インサート（１４）を担持したリブ（１２）の開孔（２２）より大きな断面を有している、請求項１に記載のスパイラルドリル。
3. 中央インサート（１３）を担持したリブ（１１）の開孔（２１）を終端とする該出口チャンネルが周辺インサート（１４）を担持したリブ（１２）の開孔（２２）を終端とする該出口チャンネルよりも小さな断面積を有している、請求項１に記載のスパイラルドリル。
4. シャンク部（１５）の該冷媒チャンネルが０．３−４．０°の範囲のコーン角（α）で該ドリル先端に向って拡散している直線状のチャンネル（２３，２４）を含んで成る、請求項１−３のいずれか１項に記載のスパイラルドリル。
5. 両冷媒チャンネル（２３，２４）がドリル中心線（ＣＬ）に対し平行である、請求項１に記載のスパイラルドリル。
6. 請求項１−５のいずれか１項に記載の冷媒チャンネルと２個の割付け可能インサートとしての中央インサート（１３）と周辺インサート（１４）を有するスパイラルドリルの製作方法において、
   円筒形ブランクに該円筒形ブランクの一端(３１)から該円筒形ブランクの他端近傍にある終端（１９，２０）まで直線的に延在する２個のチャンネル(２３、２４)をドリル加工し；
   ブランクの少なくとも中間部を加熱し；
   ブランクの両端部（１５，２５）をチァック装置で把持し；
   チァック装置にトルクを付与して所定角度に該中間部を捩り、それによって中間部内の該平行チャンネルを螺旋状に湾曲した冷媒チャンネル（１７，１８）に形成し；
   角度関係が端面（３１）で該平行チャンネル（２３，２４）を有し、捩れドリルブランクに螺旋フルート、先端面及びインサートポケットを機械工作し；且つ
   前述の通りに開孔（２１，２２）から出口チャンネルをドリル加工したことによって；
   二つの直線状のチャンネル(２３，２４)が中心線から異なる距離にドリル加工される工程を特徴とするスパイラルドリルの製作方法。
7. 中央孔（１３）を担持したリブ（１１）に配位する出口チャンネルを他方のリブ（１２）に配位する出口チャンネルより大きな直径になるようにドリル加工する、請求項６に記載の方法。
8. 両冷媒チャンネル（２３，２４）をドリルブランクの中心線（ＣＬ）と平行にドリル加工する、請求項６に記載の方法。
9. 両冷媒チャンネル（２３，２４）を、１３−６０mmの範囲の直径を有するドリルのために中心線（ＣＬ）に対し０．３−４．０°の範囲の角度（α）で末広がりに延在するようにドリル加工する、請求項６記載の方法。
10. 中央インサート（１３）を担持するリブ（１１）に配設される出口チャンネルを周辺インサート（１４）を担持するリブ（１２）に配設される出口チャンネルより直径が小さくなるようにドリル加工する、請求項６に記載の方法。

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