JP3548667B2 - 内燃機関の電磁駆動弁 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の電磁駆動弁に係り、特に、内燃機関の吸気弁または排気弁として機能する内燃機関の電磁駆動弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、特開昭59−213913号に開示される如く、内燃機関の電磁駆動弁が知られている。上記従来の電磁駆動弁は、内燃機関の吸気弁または排気弁として機能する弁体と、弁体に連結されたアーマチャとを備えている。弁体およびアーマチャは、弁体の軸方向に変位することができる。以下、弁体およびアーマチャを可動部と称す。
【0003】
アーマチャの上方には第1電磁石およびアッパスプリングが配設されている。また、アーマチャの下方には第2電磁石およびロアスプリングが配設されている。アーマチャは、アッパスプリングおよびロアスプリングにより中立位置に保持されている。第1電磁石および第2電磁石は、それぞれ、励磁電流が供給されることによりアーマチャを引き寄せるための電磁力を発生する。
【0004】
上記従来の電磁駆動弁によれば、第1電磁石に励磁電流を供給することで、アッパスプリングおよびロアスプリングに保持された可動部を第1電磁石側に変位させることができる。アーマチャが第1電磁石側に変位した後に第1電磁石への励磁電流の供給が停止されると、可動部は、アッパスプリングおよびロアスプリングのバネ力により単振動を開始する。
【0005】
単振動の周期Tは、可動部の質量Mと、アッパスプリングおよびロアスプリングのバネ定数Kとで定まる固有振動周期T0 =2π√(M/K)に一致する。従って、上記従来の装置においては、第1電磁石への励磁電流の供給が停止された後、所定時間“T0 /2”が経過した時点で、可動部が第2電磁石の近傍に到達すると判断できる。
【0006】
可動部が第2電磁石の近傍に到達した時点で、第2電磁石に励磁電流を供給すると、アーマチャを第2電磁石側に引き寄せる電磁力を発生させることができる。上記の電磁力が発生すると、単振動時に生ずる摺動損失分を補って、アーマチャを第2電磁石に到達するまで変位させることができる。以後、繰り返し第1電磁石および第2電磁石に、適当なタイミングで励磁電流を供給することで、弁体を開閉させることができる。このように、上記従来の電磁駆動弁によれば、中立位置に保持されているアーマチャを一旦第1電磁石側に引き寄せた後は、可動部の単振動を利用して、少ない消費電力で弁体を開閉動作させることができる。
【0007】
上記従来の電磁駆動弁において、中立位置に保持されているアーマチャは、第1電磁石に連続的に大きな励磁電流を供給することによっても、第1電磁石側に引き寄せることができる。しかし、かかる手法によれば、アーマチャを第1電磁石側へ引き寄せる際に大電力が消費される。このため、上記従来の電磁駆動弁は、中立位置に保持されているアーマチャを第1電磁石に引き寄せる際に、第1電磁石と第2電磁石とに、上述した固有振動周期T0 を一周期として、交互に励磁電流を供給する始動制御を実行する。
【0008】
上述した始動制御によれば、第1電磁石および第2電磁石に対して、著しく大きな励磁電流を供給させることなく、可動部の振幅を徐々に増大させることにより、可動部を第1電磁石側に変位させることができる。このため、上記従来の電磁駆動弁によれば、中立位置に保持されている可動部を、少ない消費電力で第1電磁石側へ引き寄せることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した固有振動周期T0 は、可動部が、アッパスプリングおよびロアスプリングのバネ力のみを外力として単振動する場合に実現される周期である。これに対して、上記従来の電磁駆動弁では、始動制御中および定常動作中の双方において、可動部の駆動に電磁力が用いられている。
【0010】
定常動作中における電磁力は、可動部の摺動に伴って発生する摺動損失分を補うために補助的に用いられるに過ぎない。この場合、可動部の振動周期Tは、ほぼ、固有振動周期T0 に一致する。従って、定常動作中は、可動部の振動周期Tを実質的に固有振動周期T0 と見做しても、何ら不都合は生じない。
一方、上述した始動制御の過程では、電磁力が、単振動によって可動部に生ずる振幅を強制的に増大させるために用いられる。この場合、可動部の振動周期Tは、固有振動周期T0 に比して長期化する傾向を示す。
【0011】
可動部の振動周期Tに現れる長期化の傾向は、第1電磁石または第2電磁石とアーマチャとの間に作用する電磁力が強力であるほど小さくなる。第1電磁石または第2電磁石とアーマチャとの間に作用する電磁力は、両者間の距離が短くなるに連れて大きくなる。このため、始動制御の過程で振動周期Tに生ずる長期化の傾向は、第1電磁石とアーマチャとの距離、および、第2電磁石とアーマチャとの距離が大きいほど、すなわち、可動部の振幅が小さいほど顕著となる。
【0012】
このように、電磁駆動弁においては、始動制御の実行中、特に可動部の振幅が小さい段階において、可動部が、固有振動周期T0 に比して長い周期Tで振動する現象が生ずる。中立位置に保持されているアーマチャを、効率良く第1電磁石側に変位させるためには、可動部の振動周期Tと、第1電磁石および第2電磁石が電磁力を発生する周期とが一致していることが望ましい。この点、上記従来の装置は、電磁駆動弁の省電力化を図るうえで、必ずしも最適なものではなかった。
【0013】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、中立位置に保持されているアーマチャを初期駆動する際に、優れた省電力特性を発揮する内燃機関の電磁駆動弁を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、請求項1に記載する如く、内燃機関の吸気弁または排気弁を構成する弁体と、前記弁体と共に作動するアーマチャと、前記弁体および前記アーマチャを中立位置に向けて付勢するバネ部材と、前記アーマチャを引き寄せる電磁力を発生する電磁石と、を備える内燃機関の電磁駆動弁において、
前記中立位置に保持されている前記アーマチャを前記電磁石側へ引き寄せる際に、前記電磁石に所定の周期で電磁力を発生させる始動制御を実行する始動制御手段と、
前記始動制御の過程で、前記アーマチャを前記電磁石側へ変位させる際に前記電磁石に供給される励磁電流を、前記アーマチャの振幅が充分に大きな値に到達した段階で、第1の電流から該第1の電流に比して小さな第2の電流に変化させる励磁電流変更手段と、
を備える内燃機関の電磁駆動弁により達成される。
【0017】
本発明において、中立位置に保持されているアーマチャは、始動制御が実行されることにより電磁石側に変位する。始動制御の過程で、アーマチャの振幅が小さい間は電磁石に対して第1の電流が供給される。この場合、アーマチャと電磁石との距離が長距離であるにも関わらず、両者間に大きな電磁力が作用する。この場合、アーマチャの振動周期に現れる長期化の傾向が抑制される。一方、アーマチャの振幅が増大した後は、電磁石に対して第2の電流(<第1の電流)が供給される。アーマチャの振幅が増大した後は、電磁石に供給される励磁電流が第2の電流に低下されても、アーマチャの振動周期に顕著な長期化傾向が生ずることがない。このため、始動制御中におけるアーマチャの振動周期は、ほぼ一定の周期に維持される。始動制御の実行中は、電磁石が、その一定の周期と一致する所定の周期で電磁力を発生する。このため、本発明によれば、少ない消費電力で、効率良くアーマチャを電磁石の近傍まで変位させることができる。
【0018】
また、上記の目的は、請求項2に記載する如く、内燃機関の吸気弁または排気弁を構成する弁体と、前記弁体と共に作動するアーマチャと、前記弁体および前記アーマチャを中立位置に向けて付勢するバネ部材と、前記アーマチャを引き寄せる電磁力を発生する電磁石と、を備える内燃機関の電磁駆動弁において、
前記中立位置に保持されている前記アーマチャを前記電磁石側へ引き寄せる際に、前記電磁石に所定の周期で電磁力を発生させる始動制御を実行する始動制御手段と、
前記始動制御の過程で、前記所定の周期を、前記アーマチャの固有振動周期に比して大きな周期から前記固有振動周期に近づける周期変更手段と、
前記始動制御の過程で、前記アーマチャを前記電磁石側へ変位させる際に前記電磁石に供給される励磁電流を、前記アーマチャの振幅が充分に大きな値に到達した段階で、第1の電流から該第1の電流に比して小さな第2の電流に変化させる励磁電流変更手段と、
を備える内燃機関の電磁駆動弁によっても達成される。
【0019】
本発明において、始動制御の実行中は、▲1▼電磁石に供給する励磁電流を変化させることによりアーマチャの振動周期の変動を抑制する制御、および、▲2▼電磁石に励磁電流を供給する周期を変化させることにより、電磁石が電磁力を発生する周期とアーマチャの振幅周期とを一致させる制御の双方が実行される。この場合、電力消費を必要最小限に抑制しつつ、始動制御によってアーマチャを効率良く電磁石の近傍まで変位させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例である電磁駆動弁10の全体構成図を示す。電磁駆動弁10は、弁体12を備えている。弁体12は、内燃機関の吸気弁を構成する部材である。弁体12は、内燃機関の燃焼室内に露出するようにシリンダヘッド13に配設されている。内燃機関のシリンダヘッド13には、吸気吸気ポート14が表されている。吸気ポート14には、弁体12に対する弁座11が形成されている。吸気ポート14は、弁体12が弁座11から離座することにより導通状態となり、また、弁体12が弁座11に着座することにより遮断状態となる。
【0021】
弁体12には、弁軸15が固定されている。弁軸15は、バルブガイド16により軸方向に摺動可能に保持されている。バルブガイド16は、シリンダヘッド13に支持されている。また、バルブガイド16には、電磁駆動弁10のロアキャップ18が固定されている。弁軸15の上部には、非磁性材料で構成されたプランジャ20が固定されている。
【0022】
弁軸15の上端部には、ロアリテーナ21が固定されている。ロアリテーナ21とロアキャップ18との間には、両者を離間させる方向の付勢力を発生するロアスプリング22が配設されている。ロアスプリング22は、ロアリテーナ21を、すなわちプランジャ20および弁体12を、図1における上方へ向けて付勢している。
【0023】
一方、プランジャ20の上端部には、アッパーリテーナ24が固定されている。アッパーリテーナ24の上部には、アッパースプリング26の下端部が当接している。アッパースプリング26は、アッパーリテーナ24を、すなわち、プランジャ20および弁体12を、図1における下方へ向けて付勢している。
アッパースプリング26の周囲には、その外周を取り巻くように円筒状のアッパーキャップ27が配設されている。更に、アッパーキャップ27の上端部には、アジャストボルト28が配設されている。アッパスプリング26の上端は、アジャスタボルト28に当接している。
【0024】
プランジャ20には、アーマチャ30が接合されている。アーマチャ30は、磁性材料で構成された環状の部材である。アーマチャ30の上方には、第1電磁石32が配設されている。第1電磁石32は、アッパコイル34およびアッパコア36を備えている。また、アーマチャ30の下方には、第2電磁石38が配設されている。第2電磁石38は、ロアコイル40およびロアコア42を備えている。アッパコア36およびロアコア42は磁性材料で構成された部材であり、その中央部にプランジャ20を摺動可能に保持している。
【0025】
第1電磁石32および第2電磁石38の外周には、外筒44が配設されている。外筒44は、第1電磁石32と第2電磁石38との間に所定の間隔が確保されるように、それら両者を保持している。上述したアッパーキャップ27は、第1電磁石32の上端面に当接するように、取り付けブラケット46および取り付けボルト48によってシリンダヘッド13に固定されている。一方、上述したロアキャップ18は、第2電磁石38の下端部近傍に当接するように、シリンダヘッド13内部に固定されている。そして、上述したアジャスタボルト28は、アーマチャ30の中立位置が、第1電磁石32と第2電磁石38との中間点となるように調整されている。
【0026】
以下、電磁駆動弁10の動作について説明する。アッパコイル34およびロアコイル40に励磁電流が供給されていない場合は、アーマチャ30がその中立位置、すなわち、第1電磁石32と第2電磁石38との中間に維持される。アーマチャ30が中立位置に維持された状態で、アッパコイル34への励磁電流の供給が開始されると、アーマチャ30と第1電磁石32との間に、アーマチャ30を第1電磁石32側へ引き寄せる電磁力が発生する。
【0027】
このため、電磁駆動弁10によれば、アッパコイル34に適当な励磁電流を供給することで、アーマチャ30、プランジャ20、および、弁体12等を第1電磁石32側へ変位させることができる。以下、アーマチャ30と共に変位する部分を可動部50と称す。
電磁駆動弁10において、可動部50の変位は、アーマチャ30がアッパコア36と当接するまで継続させることができる。電磁駆動弁10は、アーマチャ30がアッパコア36と当接するまで変位した際に、弁体12が弁座11に着座するように設計されている。従って、電磁駆動弁10によれば、アッパコイル34に適当な励磁電流を供給することで、弁体12を閉弁位置まで変位させることができる。
【0028】
弁体12が閉弁位置に維持されている場合、アッパスプリング26およびロアスプリング22は、可動部50を中立位置に向けて付勢する付勢力を発生する。かかる状況下で、アッパコイル34への励磁電流の供給が停止されると、可動部50は、以後、アッパスプリング26およびロアスプリング22のバネ力により単振動を開始する。
【0029】
単振動の周期Tは、可動部50の質量Mと、アッパスプリング26およびロアスプリング22のバネ定数Kとで定まる固有振動周期T0 =2π√(M/K)に一致する。従って、電磁駆動弁10においては、アッパコイル34への励磁電流の供給が停止された後、所定時間“T0 /2”が経過した時点で、アーマチャ30がロアコア42の近傍に到達すると判断できる。
【0030】
アーマチャ30がロアコア42の近傍に到達した時点で、ロアコイル40に励磁電流を供給すると、アーマチャ30を第2電磁石38側に引き寄せる電磁力を発生させることができる。上記の電磁力が発生すると、単振動時に生ずる摺動損失分を補って、アーマチャ30がロアコア42に当接するまで可動部50の変位を継続させることができる。
【0031】
電磁駆動弁10は、アーマチャ30がロアコア42に当接する際に、弁体12が全開位置に到達するように設計されている。従って、アッパコイル34への励磁電流の供給が停止された後、上記の如く所定のタイミングでロアコイル40へ励磁電流を供給すれば、少ない消費電力で弁体12を閉弁位置から全開位置まで変位させることができる。
【0032】
アーマチャ30がロアコア42に当接した後、ロアコア42への励磁電流の供給が停止されると、可動部50は、以後、固有振動周期T0 の単振動期で単振動を開始する。その結果、アーマチャ30は、図1における上方へ向かって変位する。以後、適当なタイミングで、繰り返しアッパコイル34およびロアコイル40に励磁電流を供給すると、少ない消費電力で適切に弁体12を開閉動作させることができる。
【0033】
上述の如く、停止中の電磁駆動弁10を作動させるためには、中立位置に保持されているアーマチャ30を、一旦はアッパコア36(またはロアコア42)に当接するまで変位させる必要がある。上記の変位は、例えば、アッパコイル34に対して、充分に大きな励磁電流を連続的に供給することによっても発生させることができる。しかしながら、上記の変位をかかる手法で発生させようとすると、電磁駆動弁10の始動時に大電流が消費される。
【0034】
電磁駆動弁10の可動部50は、中立位置から変位した位置でその拘束が解かれると、以後、上述した固有振動周期T0 を伴う単振動を開始する。また、可動部50の単振動に伴う振幅は、可動部50が第1電磁石32に向かって変位している際に第1電磁石に電磁力を発生させ、かつ、可動部50が第2電磁石38に向かって変位している過程で第2電磁石38に電磁力を発生させることにより成長させることができる。
【0035】
従って、電磁駆動弁10の始動を図る際に、上記の条件が満たされるように、第1電磁石32および第2電磁石38に電磁力を発生させれば、アッパコイル34およびロアコイル40に大きな励磁電流を供給することなく、可動部50に対して大きな振幅を与えることができる。そして、アーマチャ30がアッパコア36(またはロアコア42)と当接するまで、可動部50の振幅を成長させれば、少ない消費電力で、電磁駆動弁10の始動を図ることができる。
【0036】
本実施例の電磁駆動弁10は、その始動が要求される場合に、アッパコイル34とロアコイル40とに、所定の振動周期Tを一周期として、交互に励磁電流を供給することにより、中立位置に保持されているアーマチャ30をアッパコア36(またはロアコア42)側へ引き寄せる。以下、この制御を始動制御と称す。電磁駆動弁10は、始動制御の過程でアッパコイル34およびロアコイル40に励磁電流を供給する周期Tを、可動部50の振幅に応じて変化させる点に特徴を有している。以下、図2乃至図5を参照して、電磁駆動弁10の特徴部について説明する。
【0037】
図2(A)は、電磁駆動弁10において上記の始動制御が実行された場合に弁体12に生ずる変位を示す。図2(B)および図2(C)は、励磁電流の供給周期Tを可動部50の固有振動周期T0 に一致させた場合に、それぞれ、アッパコイル34またはロアコイル40に供給される励磁電流の波形を示す。また、図2(C)および図2(D)は、本実施例において、始動制御が実行される際にアッパコイル34およびロアコイル40に供給される励磁電流の波形を示す。
【0038】
上述した始動制御を実行するにあたっては、比較例の始動制御のように、励磁電流の供給周期Tを可動部50の固有振動周期T0 に一致させることが考えられる。しかし、可動部50の固有振動周期T0 は、可動部50が、アッパスプリング26およびロアスプリング22のバネ力のみを外力として単振動する場合に実現される振動周期である。これに対して、始動制御の実行中は、可動部50が、アッパスプリング26およびロアスプリング22のバネ力に加えて、第1電磁石32および第2電磁石38の電磁力を受けて動作する。このため、始動制御の実行中は、可動部50が固有振動周期T0 と異なる周期で振動する。
【0039】
始動制御の実行に伴って可動部50の振幅が増幅される過程で、第1電磁石32および第2電磁石38が発する電磁力は、アッパスプリング26およびロアスプリング22のバネ力が可動部50の変位速度を下げようとする際に、そのバネ力に抗って変位速度の低下を妨げるように作用する。第1電磁石32および第2電磁石38の発する電磁力がこのように作用すると、可動部50が単振動している場合に比して、可動部50が上死点または下死点に到達するタイミングが遅延する。このため、始動制御が実行されている場合、可動部50の振動周期Tは、具体的には、図2(A)に示す如く固有振動周期T0 に比して長期化する。
【0040】
また、可動部50の振動周期Tに現れる長期化の傾向は、第1電磁石32または第2電磁石38とアーマチャ30との間に作用する電磁力が強力であるほど小さく、その電磁力が小さいほど顕著となる。第1電磁石32または第2電磁石38とアーマチャ30との間に作用する電磁力は、両者間の距離が短くなるに連れて大きくなる。このため、始動制御の過程で振動周期Tに生ずる長期化の傾向は、可動部50の振幅が小さい領域で顕著であり、可動部50の振幅が増大するに連れて消滅する。
【0041】
図3は、始動制御が開始された後、可動部50に生じた振動の回数kと、可動部50の振動周期Tとの関係を表す図を示す。可動部50の振幅は、始動制御が開始された後、可動部50の振動回数kが増すに連れて大きくなる。このため、可動部50の振動周期Tは、始動制御が開始された後、振動回数kが増すに連れて、固有振動周期T0 に比して大きな値から固有振動周期T0 に近づく傾向を示す。
【0042】
図2(D)および図2(E)に示す如く、本実施例の電磁駆動弁10においては、始動制御の過程で可動部50の振動周期Tが上記の如く変化することを考慮して、固有振動周期T0 に補正値δk を加算した周期“T0 +δk ”を一周期として、アッパコイル34およびロアコイル40に対して励磁電流を供給することとしている。
【0043】
図4は、励磁電流の供給周期の補正に用いられる補正項δk を求める際に参照されるマップの一例を示す。図4に示す如く、補正項δk は、始動制御が開始された後、可動部50に生じた振動の回数kが増すに連れて小さな値に変化する。図4に示すマップによれば、励磁電流の供給周期T0 +δk を、始動制御が開始された後、可動部50の振動回数kが増すに連れて、可動部50の振動周期Tと同様に固有振動周期T0 に近づけることができる。
【0044】
また、始動制御の実行中に可動部50の振動周期Tに現れる長期化の傾向は、上述の如く、第1電磁石32および第2電磁石38が発生する電磁力が大きいほど抑制される。従って、始動制御の実行中に、可動部50の振動周期Tに生ずる変化幅を抑制するためには、可動部50の振幅が小さい段階ではアッパコイル34およびロアコイル40に大きな励磁電流を供給し、かつ、可動部50の振幅が増大した後はアッパコイル34およびロアコイル40に小さな励磁電流を供給することが適切である。更に、励磁電流を上記の如く変化させることは、始動制御の実行に伴う消費電力を削減するうえでも有効である。
【0045】
図2(D)に示す如く、電磁駆動弁10において、アッパコイル34およびロアコイル40に供給される励磁電流は、振動回数kが少なく、可動部50の振幅が小さい段階では第1の電流IL に設定される。また、可動部50の振幅が充分に大きな値に到達する段階では、その励磁電流が第1の電流IL に比して小さな第2の電流I2 に設定される。このため、電磁駆動弁10によれば、始動制御の実行中に可動部50の振動周期Tが大幅に変化するのを防止することができると共に、少ない消費電力で始動制御を完了させることができる。
【0046】
図5は、上記の機能を実現すべく、電磁駆動弁10において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図5に示すルーチンは、車両のイグニッションスイッチがオン状態とされた後、繰り返し起動されるルーチンである。本ルーチンが起動されると、先ずステップ100の処理が実行される。
ステップ100では、フラグXCLOSEがオン状態であるか否かが判別される。フラグXCLOSEは、イグニッションスイッチがオン状態とされた後、始動制御が実行されることにより弁体12が閉弁位置まで変位したか否かを表すフラグである。本ステップ100で、既にXCLOSE=ONが成立すると判別される場合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルーチンが終了される。一方、未だXCLOSE=ONが成立しないと判別される場合は、次にステップ102の処理が実行される。
【0047】
ステップ102では、カウンタkがインクリメントされる。カウンタkは、アッパコイル34およびロアコイル40に励磁電流を供給した繰り返し回数を係数するためのカウンタである。カウンタkは、イグニッションスイッチがオンとされる毎に初期化処理により“0”とされる。本実施例において、カウンタkの計数値は、始動制御が開始された後、可動部50に生じた振動の回数と一致する。本ステップ102の処理が終了すると、次にステップ104の処理が実行される。
【0048】
ステップ104では、カウンタkの計数値に基づいて、励磁電流の供給周期Tを設定する処理が実行される。本ステップ104では、具体的には、上記図4に示すマップを参照してカウンタkの計数値に対応する補正項δk を求めると共に、固有振動周期t0 にその補正項δk を加算した値を供給周期Tとして記憶する処理が実行される。本ステップ104の処理が終了すると、次にステップ106の処理が実行される。
【0049】
ステップ106では、アッパコイル34に対して励磁電流Iを供給する処理が実行される。励磁電流Iは、イニシャル処理により、第1の電流IL に設定されている。本ステップ106の処理が終了すると、次にステップ108の処理が実行される。
ステップ108では、アッパコイル34に励磁電流が供給され始めた後、供給周期Tの半分の時間“T/2”が経過したか否かが判別される。本ステップ108の処理は、T/2が経過したと判別されるまで繰り返し実行される。その結果、所定時間T/2が経過したと判別されると、次にステップ110の処理が実行される。
【0050】
ステップ110では、アッパコイル34への励磁電流の供給を停止する処理が実行される。本ステップ110の処理が実行されると、次にステップ112の処理が実行される。
ステップ112では、ロアコイル40に対して励磁電流Iを供給する処理が実行される。本ステップ112の処理が終了すると、次にステップ114の処理が実行される。
【0051】
ステップ114では、ロアコイル40に励磁電流が供給され始めた後、供給周期Tの半分の時間“T/2”が経過したか否かが判別される。本ステップ114の処理は、T/2が経過したと判別されるまで繰り返し実行される。その結果、所定時間T/2が経過したと判別されると、次にステップ116の処理が実行される。
【0052】
ステップ116では、ロアコイル40への励磁電流の供給を停止する処理が実行される。本ステップ116の処理が実行されると、次にステップ118の処理が実行される。
ステップ118では、カウンタkの計数値k0 が所定値k0 以上であるか否かが判別される。上記の判別の結果、k≧k0 が成立しない場合は、始動制御が開始された後、可動部50の振動回数が、未だ励磁電流Iを第1の電流IL から第2の電流IS に変更すべき回数に達していないと判断される。この場合、次にステップ120の処理が実行される。一方、既にk≧k0 が成立すると判別される場合は、励磁電流Iを第2の電流IS とすべき時期が到来していると判断される。この場合、次にステップ122の処理が実行される。
【0053】
ステップ120では、励磁電流Iを第1の電流IL とする処理が実行される。本ステップ120の処理が終了すると、次にステップ124の処理が実行される。
ステップ122では、励磁電流Iを第2の電流IS とする処理が実行される。本ステップ122の処理が終了すると、次にステップ124の処理が実行される。
【0054】
ステップ124では、カウンタkの計数値が所定回数N以上であるか否かが判別される。所定回数Nは、始動制御によって可動部50を振動させるべき回数である。上記の判別の結果、k≧Nが成立しない場合は、可動部50の振動回数が未だ不十分であると判断することができる。この場合、以後、再び上記ステップ102以降の処理が実行される。一方、K≧Nが成立する場合は、既に可動部50の振幅が充分に成長していると判断することができる。この場合、次にステップ126の処理が実行される。
【0055】
ステップ126では、フラグXCLOSEがオン状態とされる。本ステップ126の処理が終了すると、今回のルーチンが終了される。
上記の処理によれば、始動制御が開始された後、可動部50に所定回数k0 の振動が生ずるまでは励磁電流Iを第1の電流IL とし、可動部50の振動回数が所定回数k0 以上となると、励磁電流Iを第2の電流IS (<IL )とすることができる。このため、本実施例の電磁駆動弁10によれば、始動制御の実行中に可動部50の振動周期に生ずる変動の幅を小さく抑制することができる。
【0056】
また、上記の処理によれば、始動制御の実行中、常に、励磁電流Iの供給周期Tを、可動部50の振動周期と精度良く一致させることができる。このため、本実施例の電磁駆動弁10によれば、その始動が要求された後、少ない消費電力で、極めて効率的に電磁駆動弁10を定常作動状態に移行させることができる。
ところで、上記の実施例においては、励磁電流の供給周期Tを、固有振動周期T0 に比して大きな周期から固有振動周期T0 に向けて低下させる制御と、励磁電流Iを第1の電流IL から第2の電流IS に低下させる制御とを、共に実行することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの制御を、互いに独立に実行することとしてもよい。
【0057】
また、上記の実施例においては、始動制御の実行中に、励磁電流を2段階に変化させることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、励磁電流を、第1の電流ILから第2の電流ISまで、段階的または連続的に変化させることとしてもよい。
尚、上記の実施例においては、アッパスプリング26およびロアスプリング22が前記請求項1および前記請求項2記載の「バネ部材」に、第1電磁石32および第2電磁石38が前記請求項1および前記請求項2記載の「電磁石」に、それぞれ相当していると共に、電磁駆動弁10が、上記ステップ106〜116の処理を実行することにより前記請求項1および前記請求項2記載の「始動制御手段」が、上記ステップ102,104の処理を実行することにより前記請求項2記載の「周期変更手段」が、それぞれ実現されている。また、上記の実施例においては、電磁駆動弁10が、上記ステップ118〜122の処理を実行することにより、前記請求項1および前記請求項2記載の「励磁電流変更手段」が、それぞれ実現されている。
【0058】
【発明の効果】
上述の如く、請求項1記載の発明によれば、始動制御中にアーマチャを電磁石側へ変位させる際に電磁石に供給される励磁電流を必要最小限に抑制しつつ、始動制御中に生ずるアーマチャの振動周期を、ほぼ一定に維持することができる。このため、本発明に係る内燃機関の電磁駆動弁によれば、優れた省電力特性を実現することができる。
【0059】
請求項2記載の発明によれば、始動制御の過程でアーマチャの振動周期を一定に維持する制御と、電磁石が電磁力を発生する周期とアーマチャの振動周期とを一致させる制御との双方を実行することができる。このため、本発明に係る内燃機関の電磁駆動弁によれば、優れた省電力特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である電磁駆動弁の全体構成図である。
【図2】図2(A)は、本実施例の電磁駆動弁において始動制御が実行される場合に弁体に生ずる変位を表す図である。
図2(B)は、励磁電流の供給周期を可動部の固有振動周期T0 に一致させた場合にアッパコイルに供給される励磁電流の波形を表す図である。
図2(C)は、励磁電流の供給周期を可動部の固有振動周期T0 に一致させた場合にロアコイルに供給される励磁電流の波形を表す図である。
図2(D)は、本実施例の電磁駆動弁において始動制御が実行される際にアッパコイルに供給される励磁電流の波形を表す図である。
図2(E)は、本実施例の電磁駆動弁において始動制御が実行される際にロアコイルに供給される励磁電流の波形を表す図である。
【図3】本実施例の電磁駆動弁において始動制御が開始された後に可動部に発生する振動回数kと、可動部の振動周期Tとの関係を表す図である。
【図4】本実施例の電磁駆動弁において始動制御が実行される際に補正項δk を求めるために参照されるマップの一例である。
【図5】本実施例の電磁駆動弁において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【符号の説明】
10 電磁駆動弁
12 弁体
20 プランジャ
30 アーマチャ
32 第1電磁石
34 アッパコイル
36 アッパコア
38 第2電磁石
40 ロアコイル
42 ロアコア
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の電磁駆動弁に係り、特に、内燃機関の吸気弁または排気弁として機能する内燃機関の電磁駆動弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、特開昭59−213913号に開示される如く、内燃機関の電磁駆動弁が知られている。上記従来の電磁駆動弁は、内燃機関の吸気弁または排気弁として機能する弁体と、弁体に連結されたアーマチャとを備えている。弁体およびアーマチャは、弁体の軸方向に変位することができる。以下、弁体およびアーマチャを可動部と称す。
【0003】
アーマチャの上方には第1電磁石およびアッパスプリングが配設されている。また、アーマチャの下方には第2電磁石およびロアスプリングが配設されている。アーマチャは、アッパスプリングおよびロアスプリングにより中立位置に保持されている。第1電磁石および第2電磁石は、それぞれ、励磁電流が供給されることによりアーマチャを引き寄せるための電磁力を発生する。
【0004】
上記従来の電磁駆動弁によれば、第1電磁石に励磁電流を供給することで、アッパスプリングおよびロアスプリングに保持された可動部を第1電磁石側に変位させることができる。アーマチャが第1電磁石側に変位した後に第1電磁石への励磁電流の供給が停止されると、可動部は、アッパスプリングおよびロアスプリングのバネ力により単振動を開始する。
【0005】
単振動の周期Tは、可動部の質量Mと、アッパスプリングおよびロアスプリングのバネ定数Kとで定まる固有振動周期T0 =2π√(M/K)に一致する。従って、上記従来の装置においては、第1電磁石への励磁電流の供給が停止された後、所定時間“T0 /2”が経過した時点で、可動部が第2電磁石の近傍に到達すると判断できる。
【0006】
可動部が第2電磁石の近傍に到達した時点で、第2電磁石に励磁電流を供給すると、アーマチャを第2電磁石側に引き寄せる電磁力を発生させることができる。上記の電磁力が発生すると、単振動時に生ずる摺動損失分を補って、アーマチャを第2電磁石に到達するまで変位させることができる。以後、繰り返し第1電磁石および第2電磁石に、適当なタイミングで励磁電流を供給することで、弁体を開閉させることができる。このように、上記従来の電磁駆動弁によれば、中立位置に保持されているアーマチャを一旦第1電磁石側に引き寄せた後は、可動部の単振動を利用して、少ない消費電力で弁体を開閉動作させることができる。
【0007】
上記従来の電磁駆動弁において、中立位置に保持されているアーマチャは、第1電磁石に連続的に大きな励磁電流を供給することによっても、第1電磁石側に引き寄せることができる。しかし、かかる手法によれば、アーマチャを第1電磁石側へ引き寄せる際に大電力が消費される。このため、上記従来の電磁駆動弁は、中立位置に保持されているアーマチャを第1電磁石に引き寄せる際に、第1電磁石と第2電磁石とに、上述した固有振動周期T0 を一周期として、交互に励磁電流を供給する始動制御を実行する。
【0008】
上述した始動制御によれば、第1電磁石および第2電磁石に対して、著しく大きな励磁電流を供給させることなく、可動部の振幅を徐々に増大させることにより、可動部を第1電磁石側に変位させることができる。このため、上記従来の電磁駆動弁によれば、中立位置に保持されている可動部を、少ない消費電力で第1電磁石側へ引き寄せることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した固有振動周期T0 は、可動部が、アッパスプリングおよびロアスプリングのバネ力のみを外力として単振動する場合に実現される周期である。これに対して、上記従来の電磁駆動弁では、始動制御中および定常動作中の双方において、可動部の駆動に電磁力が用いられている。
【0010】
定常動作中における電磁力は、可動部の摺動に伴って発生する摺動損失分を補うために補助的に用いられるに過ぎない。この場合、可動部の振動周期Tは、ほぼ、固有振動周期T0 に一致する。従って、定常動作中は、可動部の振動周期Tを実質的に固有振動周期T0 と見做しても、何ら不都合は生じない。
一方、上述した始動制御の過程では、電磁力が、単振動によって可動部に生ずる振幅を強制的に増大させるために用いられる。この場合、可動部の振動周期Tは、固有振動周期T0 に比して長期化する傾向を示す。
【0011】
可動部の振動周期Tに現れる長期化の傾向は、第1電磁石または第2電磁石とアーマチャとの間に作用する電磁力が強力であるほど小さくなる。第1電磁石または第2電磁石とアーマチャとの間に作用する電磁力は、両者間の距離が短くなるに連れて大きくなる。このため、始動制御の過程で振動周期Tに生ずる長期化の傾向は、第1電磁石とアーマチャとの距離、および、第2電磁石とアーマチャとの距離が大きいほど、すなわち、可動部の振幅が小さいほど顕著となる。
【0012】
このように、電磁駆動弁においては、始動制御の実行中、特に可動部の振幅が小さい段階において、可動部が、固有振動周期T0 に比して長い周期Tで振動する現象が生ずる。中立位置に保持されているアーマチャを、効率良く第1電磁石側に変位させるためには、可動部の振動周期Tと、第1電磁石および第2電磁石が電磁力を発生する周期とが一致していることが望ましい。この点、上記従来の装置は、電磁駆動弁の省電力化を図るうえで、必ずしも最適なものではなかった。
【0013】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、中立位置に保持されているアーマチャを初期駆動する際に、優れた省電力特性を発揮する内燃機関の電磁駆動弁を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、請求項1に記載する如く、内燃機関の吸気弁または排気弁を構成する弁体と、前記弁体と共に作動するアーマチャと、前記弁体および前記アーマチャを中立位置に向けて付勢するバネ部材と、前記アーマチャを引き寄せる電磁力を発生する電磁石と、を備える内燃機関の電磁駆動弁において、
前記中立位置に保持されている前記アーマチャを前記電磁石側へ引き寄せる際に、前記電磁石に所定の周期で電磁力を発生させる始動制御を実行する始動制御手段と、
前記始動制御の過程で、前記アーマチャを前記電磁石側へ変位させる際に前記電磁石に供給される励磁電流を、前記アーマチャの振幅が充分に大きな値に到達した段階で、第1の電流から該第1の電流に比して小さな第2の電流に変化させる励磁電流変更手段と、
を備える内燃機関の電磁駆動弁により達成される。
【0017】
本発明において、中立位置に保持されているアーマチャは、始動制御が実行されることにより電磁石側に変位する。始動制御の過程で、アーマチャの振幅が小さい間は電磁石に対して第1の電流が供給される。この場合、アーマチャと電磁石との距離が長距離であるにも関わらず、両者間に大きな電磁力が作用する。この場合、アーマチャの振動周期に現れる長期化の傾向が抑制される。一方、アーマチャの振幅が増大した後は、電磁石に対して第2の電流(<第1の電流)が供給される。アーマチャの振幅が増大した後は、電磁石に供給される励磁電流が第2の電流に低下されても、アーマチャの振動周期に顕著な長期化傾向が生ずることがない。このため、始動制御中におけるアーマチャの振動周期は、ほぼ一定の周期に維持される。始動制御の実行中は、電磁石が、その一定の周期と一致する所定の周期で電磁力を発生する。このため、本発明によれば、少ない消費電力で、効率良くアーマチャを電磁石の近傍まで変位させることができる。
【0018】
また、上記の目的は、請求項2に記載する如く、内燃機関の吸気弁または排気弁を構成する弁体と、前記弁体と共に作動するアーマチャと、前記弁体および前記アーマチャを中立位置に向けて付勢するバネ部材と、前記アーマチャを引き寄せる電磁力を発生する電磁石と、を備える内燃機関の電磁駆動弁において、
前記中立位置に保持されている前記アーマチャを前記電磁石側へ引き寄せる際に、前記電磁石に所定の周期で電磁力を発生させる始動制御を実行する始動制御手段と、
前記始動制御の過程で、前記所定の周期を、前記アーマチャの固有振動周期に比して大きな周期から前記固有振動周期に近づける周期変更手段と、
前記始動制御の過程で、前記アーマチャを前記電磁石側へ変位させる際に前記電磁石に供給される励磁電流を、前記アーマチャの振幅が充分に大きな値に到達した段階で、第1の電流から該第1の電流に比して小さな第2の電流に変化させる励磁電流変更手段と、
を備える内燃機関の電磁駆動弁によっても達成される。
【0019】
本発明において、始動制御の実行中は、▲1▼電磁石に供給する励磁電流を変化させることによりアーマチャの振動周期の変動を抑制する制御、および、▲2▼電磁石に励磁電流を供給する周期を変化させることにより、電磁石が電磁力を発生する周期とアーマチャの振幅周期とを一致させる制御の双方が実行される。この場合、電力消費を必要最小限に抑制しつつ、始動制御によってアーマチャを効率良く電磁石の近傍まで変位させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例である電磁駆動弁10の全体構成図を示す。電磁駆動弁10は、弁体12を備えている。弁体12は、内燃機関の吸気弁を構成する部材である。弁体12は、内燃機関の燃焼室内に露出するようにシリンダヘッド13に配設されている。内燃機関のシリンダヘッド13には、吸気吸気ポート14が表されている。吸気ポート14には、弁体12に対する弁座11が形成されている。吸気ポート14は、弁体12が弁座11から離座することにより導通状態となり、また、弁体12が弁座11に着座することにより遮断状態となる。
【0021】
弁体12には、弁軸15が固定されている。弁軸15は、バルブガイド16により軸方向に摺動可能に保持されている。バルブガイド16は、シリンダヘッド13に支持されている。また、バルブガイド16には、電磁駆動弁10のロアキャップ18が固定されている。弁軸15の上部には、非磁性材料で構成されたプランジャ20が固定されている。
【0022】
弁軸15の上端部には、ロアリテーナ21が固定されている。ロアリテーナ21とロアキャップ18との間には、両者を離間させる方向の付勢力を発生するロアスプリング22が配設されている。ロアスプリング22は、ロアリテーナ21を、すなわちプランジャ20および弁体12を、図1における上方へ向けて付勢している。
【0023】
一方、プランジャ20の上端部には、アッパーリテーナ24が固定されている。アッパーリテーナ24の上部には、アッパースプリング26の下端部が当接している。アッパースプリング26は、アッパーリテーナ24を、すなわち、プランジャ20および弁体12を、図1における下方へ向けて付勢している。
アッパースプリング26の周囲には、その外周を取り巻くように円筒状のアッパーキャップ27が配設されている。更に、アッパーキャップ27の上端部には、アジャストボルト28が配設されている。アッパスプリング26の上端は、アジャスタボルト28に当接している。
【0024】
プランジャ20には、アーマチャ30が接合されている。アーマチャ30は、磁性材料で構成された環状の部材である。アーマチャ30の上方には、第1電磁石32が配設されている。第1電磁石32は、アッパコイル34およびアッパコア36を備えている。また、アーマチャ30の下方には、第2電磁石38が配設されている。第2電磁石38は、ロアコイル40およびロアコア42を備えている。アッパコア36およびロアコア42は磁性材料で構成された部材であり、その中央部にプランジャ20を摺動可能に保持している。
【0025】
第1電磁石32および第2電磁石38の外周には、外筒44が配設されている。外筒44は、第1電磁石32と第2電磁石38との間に所定の間隔が確保されるように、それら両者を保持している。上述したアッパーキャップ27は、第1電磁石32の上端面に当接するように、取り付けブラケット46および取り付けボルト48によってシリンダヘッド13に固定されている。一方、上述したロアキャップ18は、第2電磁石38の下端部近傍に当接するように、シリンダヘッド13内部に固定されている。そして、上述したアジャスタボルト28は、アーマチャ30の中立位置が、第1電磁石32と第2電磁石38との中間点となるように調整されている。
【0026】
以下、電磁駆動弁10の動作について説明する。アッパコイル34およびロアコイル40に励磁電流が供給されていない場合は、アーマチャ30がその中立位置、すなわち、第1電磁石32と第2電磁石38との中間に維持される。アーマチャ30が中立位置に維持された状態で、アッパコイル34への励磁電流の供給が開始されると、アーマチャ30と第1電磁石32との間に、アーマチャ30を第1電磁石32側へ引き寄せる電磁力が発生する。
【0027】
このため、電磁駆動弁10によれば、アッパコイル34に適当な励磁電流を供給することで、アーマチャ30、プランジャ20、および、弁体12等を第1電磁石32側へ変位させることができる。以下、アーマチャ30と共に変位する部分を可動部50と称す。
電磁駆動弁10において、可動部50の変位は、アーマチャ30がアッパコア36と当接するまで継続させることができる。電磁駆動弁10は、アーマチャ30がアッパコア36と当接するまで変位した際に、弁体12が弁座11に着座するように設計されている。従って、電磁駆動弁10によれば、アッパコイル34に適当な励磁電流を供給することで、弁体12を閉弁位置まで変位させることができる。
【0028】
弁体12が閉弁位置に維持されている場合、アッパスプリング26およびロアスプリング22は、可動部50を中立位置に向けて付勢する付勢力を発生する。かかる状況下で、アッパコイル34への励磁電流の供給が停止されると、可動部50は、以後、アッパスプリング26およびロアスプリング22のバネ力により単振動を開始する。
【0029】
単振動の周期Tは、可動部50の質量Mと、アッパスプリング26およびロアスプリング22のバネ定数Kとで定まる固有振動周期T0 =2π√(M/K)に一致する。従って、電磁駆動弁10においては、アッパコイル34への励磁電流の供給が停止された後、所定時間“T0 /2”が経過した時点で、アーマチャ30がロアコア42の近傍に到達すると判断できる。
【0030】
アーマチャ30がロアコア42の近傍に到達した時点で、ロアコイル40に励磁電流を供給すると、アーマチャ30を第2電磁石38側に引き寄せる電磁力を発生させることができる。上記の電磁力が発生すると、単振動時に生ずる摺動損失分を補って、アーマチャ30がロアコア42に当接するまで可動部50の変位を継続させることができる。
【0031】
電磁駆動弁10は、アーマチャ30がロアコア42に当接する際に、弁体12が全開位置に到達するように設計されている。従って、アッパコイル34への励磁電流の供給が停止された後、上記の如く所定のタイミングでロアコイル40へ励磁電流を供給すれば、少ない消費電力で弁体12を閉弁位置から全開位置まで変位させることができる。
【0032】
アーマチャ30がロアコア42に当接した後、ロアコア42への励磁電流の供給が停止されると、可動部50は、以後、固有振動周期T0 の単振動期で単振動を開始する。その結果、アーマチャ30は、図1における上方へ向かって変位する。以後、適当なタイミングで、繰り返しアッパコイル34およびロアコイル40に励磁電流を供給すると、少ない消費電力で適切に弁体12を開閉動作させることができる。
【0033】
上述の如く、停止中の電磁駆動弁10を作動させるためには、中立位置に保持されているアーマチャ30を、一旦はアッパコア36(またはロアコア42)に当接するまで変位させる必要がある。上記の変位は、例えば、アッパコイル34に対して、充分に大きな励磁電流を連続的に供給することによっても発生させることができる。しかしながら、上記の変位をかかる手法で発生させようとすると、電磁駆動弁10の始動時に大電流が消費される。
【0034】
電磁駆動弁10の可動部50は、中立位置から変位した位置でその拘束が解かれると、以後、上述した固有振動周期T0 を伴う単振動を開始する。また、可動部50の単振動に伴う振幅は、可動部50が第1電磁石32に向かって変位している際に第1電磁石に電磁力を発生させ、かつ、可動部50が第2電磁石38に向かって変位している過程で第2電磁石38に電磁力を発生させることにより成長させることができる。
【0035】
従って、電磁駆動弁10の始動を図る際に、上記の条件が満たされるように、第1電磁石32および第2電磁石38に電磁力を発生させれば、アッパコイル34およびロアコイル40に大きな励磁電流を供給することなく、可動部50に対して大きな振幅を与えることができる。そして、アーマチャ30がアッパコア36(またはロアコア42)と当接するまで、可動部50の振幅を成長させれば、少ない消費電力で、電磁駆動弁10の始動を図ることができる。
【0036】
本実施例の電磁駆動弁10は、その始動が要求される場合に、アッパコイル34とロアコイル40とに、所定の振動周期Tを一周期として、交互に励磁電流を供給することにより、中立位置に保持されているアーマチャ30をアッパコア36(またはロアコア42)側へ引き寄せる。以下、この制御を始動制御と称す。電磁駆動弁10は、始動制御の過程でアッパコイル34およびロアコイル40に励磁電流を供給する周期Tを、可動部50の振幅に応じて変化させる点に特徴を有している。以下、図2乃至図5を参照して、電磁駆動弁10の特徴部について説明する。
【0037】
図2(A)は、電磁駆動弁10において上記の始動制御が実行された場合に弁体12に生ずる変位を示す。図2(B)および図2(C)は、励磁電流の供給周期Tを可動部50の固有振動周期T0 に一致させた場合に、それぞれ、アッパコイル34またはロアコイル40に供給される励磁電流の波形を示す。また、図2(C)および図2(D)は、本実施例において、始動制御が実行される際にアッパコイル34およびロアコイル40に供給される励磁電流の波形を示す。
【0038】
上述した始動制御を実行するにあたっては、比較例の始動制御のように、励磁電流の供給周期Tを可動部50の固有振動周期T0 に一致させることが考えられる。しかし、可動部50の固有振動周期T0 は、可動部50が、アッパスプリング26およびロアスプリング22のバネ力のみを外力として単振動する場合に実現される振動周期である。これに対して、始動制御の実行中は、可動部50が、アッパスプリング26およびロアスプリング22のバネ力に加えて、第1電磁石32および第2電磁石38の電磁力を受けて動作する。このため、始動制御の実行中は、可動部50が固有振動周期T0 と異なる周期で振動する。
【0039】
始動制御の実行に伴って可動部50の振幅が増幅される過程で、第1電磁石32および第2電磁石38が発する電磁力は、アッパスプリング26およびロアスプリング22のバネ力が可動部50の変位速度を下げようとする際に、そのバネ力に抗って変位速度の低下を妨げるように作用する。第1電磁石32および第2電磁石38の発する電磁力がこのように作用すると、可動部50が単振動している場合に比して、可動部50が上死点または下死点に到達するタイミングが遅延する。このため、始動制御が実行されている場合、可動部50の振動周期Tは、具体的には、図2(A)に示す如く固有振動周期T0 に比して長期化する。
【0040】
また、可動部50の振動周期Tに現れる長期化の傾向は、第1電磁石32または第2電磁石38とアーマチャ30との間に作用する電磁力が強力であるほど小さく、その電磁力が小さいほど顕著となる。第1電磁石32または第2電磁石38とアーマチャ30との間に作用する電磁力は、両者間の距離が短くなるに連れて大きくなる。このため、始動制御の過程で振動周期Tに生ずる長期化の傾向は、可動部50の振幅が小さい領域で顕著であり、可動部50の振幅が増大するに連れて消滅する。
【0041】
図3は、始動制御が開始された後、可動部50に生じた振動の回数kと、可動部50の振動周期Tとの関係を表す図を示す。可動部50の振幅は、始動制御が開始された後、可動部50の振動回数kが増すに連れて大きくなる。このため、可動部50の振動周期Tは、始動制御が開始された後、振動回数kが増すに連れて、固有振動周期T0 に比して大きな値から固有振動周期T0 に近づく傾向を示す。
【0042】
図2(D)および図2(E)に示す如く、本実施例の電磁駆動弁10においては、始動制御の過程で可動部50の振動周期Tが上記の如く変化することを考慮して、固有振動周期T0 に補正値δk を加算した周期“T0 +δk ”を一周期として、アッパコイル34およびロアコイル40に対して励磁電流を供給することとしている。
【0043】
図4は、励磁電流の供給周期の補正に用いられる補正項δk を求める際に参照されるマップの一例を示す。図4に示す如く、補正項δk は、始動制御が開始された後、可動部50に生じた振動の回数kが増すに連れて小さな値に変化する。図4に示すマップによれば、励磁電流の供給周期T0 +δk を、始動制御が開始された後、可動部50の振動回数kが増すに連れて、可動部50の振動周期Tと同様に固有振動周期T0 に近づけることができる。
【0044】
また、始動制御の実行中に可動部50の振動周期Tに現れる長期化の傾向は、上述の如く、第1電磁石32および第2電磁石38が発生する電磁力が大きいほど抑制される。従って、始動制御の実行中に、可動部50の振動周期Tに生ずる変化幅を抑制するためには、可動部50の振幅が小さい段階ではアッパコイル34およびロアコイル40に大きな励磁電流を供給し、かつ、可動部50の振幅が増大した後はアッパコイル34およびロアコイル40に小さな励磁電流を供給することが適切である。更に、励磁電流を上記の如く変化させることは、始動制御の実行に伴う消費電力を削減するうえでも有効である。
【0045】
図2(D)に示す如く、電磁駆動弁10において、アッパコイル34およびロアコイル40に供給される励磁電流は、振動回数kが少なく、可動部50の振幅が小さい段階では第1の電流IL に設定される。また、可動部50の振幅が充分に大きな値に到達する段階では、その励磁電流が第1の電流IL に比して小さな第2の電流I2 に設定される。このため、電磁駆動弁10によれば、始動制御の実行中に可動部50の振動周期Tが大幅に変化するのを防止することができると共に、少ない消費電力で始動制御を完了させることができる。
【0046】
図5は、上記の機能を実現すべく、電磁駆動弁10において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図5に示すルーチンは、車両のイグニッションスイッチがオン状態とされた後、繰り返し起動されるルーチンである。本ルーチンが起動されると、先ずステップ100の処理が実行される。
ステップ100では、フラグXCLOSEがオン状態であるか否かが判別される。フラグXCLOSEは、イグニッションスイッチがオン状態とされた後、始動制御が実行されることにより弁体12が閉弁位置まで変位したか否かを表すフラグである。本ステップ100で、既にXCLOSE=ONが成立すると判別される場合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルーチンが終了される。一方、未だXCLOSE=ONが成立しないと判別される場合は、次にステップ102の処理が実行される。
【0047】
ステップ102では、カウンタkがインクリメントされる。カウンタkは、アッパコイル34およびロアコイル40に励磁電流を供給した繰り返し回数を係数するためのカウンタである。カウンタkは、イグニッションスイッチがオンとされる毎に初期化処理により“0”とされる。本実施例において、カウンタkの計数値は、始動制御が開始された後、可動部50に生じた振動の回数と一致する。本ステップ102の処理が終了すると、次にステップ104の処理が実行される。
【0048】
ステップ104では、カウンタkの計数値に基づいて、励磁電流の供給周期Tを設定する処理が実行される。本ステップ104では、具体的には、上記図4に示すマップを参照してカウンタkの計数値に対応する補正項δk を求めると共に、固有振動周期t0 にその補正項δk を加算した値を供給周期Tとして記憶する処理が実行される。本ステップ104の処理が終了すると、次にステップ106の処理が実行される。
【0049】
ステップ106では、アッパコイル34に対して励磁電流Iを供給する処理が実行される。励磁電流Iは、イニシャル処理により、第1の電流IL に設定されている。本ステップ106の処理が終了すると、次にステップ108の処理が実行される。
ステップ108では、アッパコイル34に励磁電流が供給され始めた後、供給周期Tの半分の時間“T/2”が経過したか否かが判別される。本ステップ108の処理は、T/2が経過したと判別されるまで繰り返し実行される。その結果、所定時間T/2が経過したと判別されると、次にステップ110の処理が実行される。
【0050】
ステップ110では、アッパコイル34への励磁電流の供給を停止する処理が実行される。本ステップ110の処理が実行されると、次にステップ112の処理が実行される。
ステップ112では、ロアコイル40に対して励磁電流Iを供給する処理が実行される。本ステップ112の処理が終了すると、次にステップ114の処理が実行される。
【0051】
ステップ114では、ロアコイル40に励磁電流が供給され始めた後、供給周期Tの半分の時間“T/2”が経過したか否かが判別される。本ステップ114の処理は、T/2が経過したと判別されるまで繰り返し実行される。その結果、所定時間T/2が経過したと判別されると、次にステップ116の処理が実行される。
【0052】
ステップ116では、ロアコイル40への励磁電流の供給を停止する処理が実行される。本ステップ116の処理が実行されると、次にステップ118の処理が実行される。
ステップ118では、カウンタkの計数値k0 が所定値k0 以上であるか否かが判別される。上記の判別の結果、k≧k0 が成立しない場合は、始動制御が開始された後、可動部50の振動回数が、未だ励磁電流Iを第1の電流IL から第2の電流IS に変更すべき回数に達していないと判断される。この場合、次にステップ120の処理が実行される。一方、既にk≧k0 が成立すると判別される場合は、励磁電流Iを第2の電流IS とすべき時期が到来していると判断される。この場合、次にステップ122の処理が実行される。
【0053】
ステップ120では、励磁電流Iを第1の電流IL とする処理が実行される。本ステップ120の処理が終了すると、次にステップ124の処理が実行される。
ステップ122では、励磁電流Iを第2の電流IS とする処理が実行される。本ステップ122の処理が終了すると、次にステップ124の処理が実行される。
【0054】
ステップ124では、カウンタkの計数値が所定回数N以上であるか否かが判別される。所定回数Nは、始動制御によって可動部50を振動させるべき回数である。上記の判別の結果、k≧Nが成立しない場合は、可動部50の振動回数が未だ不十分であると判断することができる。この場合、以後、再び上記ステップ102以降の処理が実行される。一方、K≧Nが成立する場合は、既に可動部50の振幅が充分に成長していると判断することができる。この場合、次にステップ126の処理が実行される。
【0055】
ステップ126では、フラグXCLOSEがオン状態とされる。本ステップ126の処理が終了すると、今回のルーチンが終了される。
上記の処理によれば、始動制御が開始された後、可動部50に所定回数k0 の振動が生ずるまでは励磁電流Iを第1の電流IL とし、可動部50の振動回数が所定回数k0 以上となると、励磁電流Iを第2の電流IS (<IL )とすることができる。このため、本実施例の電磁駆動弁10によれば、始動制御の実行中に可動部50の振動周期に生ずる変動の幅を小さく抑制することができる。
【0056】
また、上記の処理によれば、始動制御の実行中、常に、励磁電流Iの供給周期Tを、可動部50の振動周期と精度良く一致させることができる。このため、本実施例の電磁駆動弁10によれば、その始動が要求された後、少ない消費電力で、極めて効率的に電磁駆動弁10を定常作動状態に移行させることができる。
ところで、上記の実施例においては、励磁電流の供給周期Tを、固有振動周期T0 に比して大きな周期から固有振動周期T0 に向けて低下させる制御と、励磁電流Iを第1の電流IL から第2の電流IS に低下させる制御とを、共に実行することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの制御を、互いに独立に実行することとしてもよい。
【0057】
また、上記の実施例においては、始動制御の実行中に、励磁電流を2段階に変化させることとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、励磁電流を、第1の電流ILから第2の電流ISまで、段階的または連続的に変化させることとしてもよい。
尚、上記の実施例においては、アッパスプリング26およびロアスプリング22が前記請求項1および前記請求項2記載の「バネ部材」に、第1電磁石32および第2電磁石38が前記請求項1および前記請求項2記載の「電磁石」に、それぞれ相当していると共に、電磁駆動弁10が、上記ステップ106〜116の処理を実行することにより前記請求項1および前記請求項2記載の「始動制御手段」が、上記ステップ102,104の処理を実行することにより前記請求項2記載の「周期変更手段」が、それぞれ実現されている。また、上記の実施例においては、電磁駆動弁10が、上記ステップ118〜122の処理を実行することにより、前記請求項1および前記請求項2記載の「励磁電流変更手段」が、それぞれ実現されている。
【0058】
【発明の効果】
上述の如く、請求項1記載の発明によれば、始動制御中にアーマチャを電磁石側へ変位させる際に電磁石に供給される励磁電流を必要最小限に抑制しつつ、始動制御中に生ずるアーマチャの振動周期を、ほぼ一定に維持することができる。このため、本発明に係る内燃機関の電磁駆動弁によれば、優れた省電力特性を実現することができる。
【0059】
請求項2記載の発明によれば、始動制御の過程でアーマチャの振動周期を一定に維持する制御と、電磁石が電磁力を発生する周期とアーマチャの振動周期とを一致させる制御との双方を実行することができる。このため、本発明に係る内燃機関の電磁駆動弁によれば、優れた省電力特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である電磁駆動弁の全体構成図である。
【図2】図2(A)は、本実施例の電磁駆動弁において始動制御が実行される場合に弁体に生ずる変位を表す図である。
図2(B)は、励磁電流の供給周期を可動部の固有振動周期T0 に一致させた場合にアッパコイルに供給される励磁電流の波形を表す図である。
図2(C)は、励磁電流の供給周期を可動部の固有振動周期T0 に一致させた場合にロアコイルに供給される励磁電流の波形を表す図である。
図2(D)は、本実施例の電磁駆動弁において始動制御が実行される際にアッパコイルに供給される励磁電流の波形を表す図である。
図2(E)は、本実施例の電磁駆動弁において始動制御が実行される際にロアコイルに供給される励磁電流の波形を表す図である。
【図3】本実施例の電磁駆動弁において始動制御が開始された後に可動部に発生する振動回数kと、可動部の振動周期Tとの関係を表す図である。
【図4】本実施例の電磁駆動弁において始動制御が実行される際に補正項δk を求めるために参照されるマップの一例である。
【図5】本実施例の電磁駆動弁において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【符号の説明】
10 電磁駆動弁
12 弁体
20 プランジャ
30 アーマチャ
32 第1電磁石
34 アッパコイル
36 アッパコア
38 第2電磁石
40 ロアコイル
42 ロアコア
Claims (2)
- 内燃機関の吸気弁または排気弁を構成する弁体と、前記弁体と共に作動するアーマチャと、前記弁体および前記アーマチャを中立位置に向けて付勢するバネ部材と、前記アーマチャを引き寄せる電磁力を発生する電磁石と、を備える内燃機関の電磁駆動弁において、
前記中立位置に保持されている前記アーマチャを前記電磁石側へ引き寄せる際に、前記電磁石に所定の周期で電磁力を発生させる始動制御を実行する始動制御手段と、
前記始動制御の過程で、前記アーマチャを前記電磁石側へ変位させる際に前記電磁石に供給される励磁電流を、前記アーマチャの振幅が充分に大きな値に到達した段階で、第1の電流から該第1の電流に比して小さな第2の電流に変化させる励磁電流変更手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の電磁駆動弁。 - 内燃機関の吸気弁または排気弁を構成する弁体と、前記弁体と共に作動するアーマチャと、前記弁体および前記アーマチャを中立位置に向けて付勢するバネ部材と、前記アーマチャを引き寄せる電磁力を発生する電磁石と、を備える内燃機関の電磁駆動弁において、
前記中立位置に保持されている前記アーマチャを前記電磁石側へ引き寄せる際に、前記電磁石に所定の周期で電磁力を発生させる始動制御を実行する始動制御手段と、
前記始動制御の過程で、前記所定の周期を、前記アーマチャの固有振動周期に比して大きな周期から前記固有振動周期に近づける周期変更手段と、
前記始動制御の過程で、前記アーマチャを前記電磁石側へ変位させる際に前記電磁石に供給される励磁電流を、前記アーマチャの振幅が充分に大きな値に到達した段階で、第1の電流から該第1の電流に比して小さな第2の電流に変化させる励磁電流変更手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の電磁駆動弁。
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