JP3546367B2 - 水溶性アルギン酸塩繊維の製造方法 - Google Patents
水溶性アルギン酸塩繊維の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は水溶性のアルギン酸塩繊維の製造方法に関する。水溶性アルギン酸塩繊維は傷口の治療用にガーゼとして使用すると、傷口の血液や体液を吸収してゼリー状物を形成して、傷口を保護することができ、これを除去するときは水洗するだけで容易に取り去ることができる。
【0002】
【従来の技術】
アルギン酸塩から繊維を得る方法として、水溶性アルギン酸塩をカルシウム塩など金属塩を含む水溶液中に吐出紡糸することによって、水不溶性のアルギン酸カルシウム繊維などを得る方法は既に広く知られている(例えば、特開昭56−169809号、ヨーロッパ特許出願公開第0040048、米国特許明細書第3446625 )。
【0003】
また、アルギン酸カルシウムを酸で処理した後、ナトリウム−アルコール溶液で処理してアルギン酸カルシウム/ナトリウム繊維を得る方法も知られている。(英国特許第1232506 、ヨーロッパ特許出願公開第0072680 )。このようにアルギン酸塩繊維の製造は知られているが、これらはいずれも実質的に水不溶性である。
【0004】
これに対し、特開平3−220317号には、アルギン酸ナトリウムをアセトンなどの親水性有機溶剤中に吐出して繊維化する方法として、水溶性アルギン酸塩を含む水性ドープを多量の親水性有機溶剤中に吐出して、ドープ中の水を迅速に上記溶剤で置換することによって繊維が得られることが開示されている。
【0005】
【発明が解決すべき課題】
上記方法によれば、水に可溶なアルギン酸塩繊維は得られるが、極めて多量な有機溶剤を使用しなければならないという問題がある。
【0006】
このような多量の有機溶剤の使用は人体への影響とともに引火による火災等の危険性も含んでいる。従って、工業的規模での生産には安全対策として多額の設備と細心で厳重な管理が必要であり、また、生産コストという面からみても工業生産には実際的ではない。またこの方法で得られた繊維は乾強力が0.35g/デニール程度と弱く取り扱い上に問題点があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、乾強力が0.5g/デニール以上の水溶性アルギン酸塩繊維の製造方法に関する。
【0008】
上記製造方法は、水溶性アルギン酸塩を含有する水性ドープを酸中に吐出紡糸した後、水溶性を付与するイオンからなる水酸化物(以下、水溶性水酸化物と略)を含む水−有機溶剤溶液に所定時間浸漬することを特徴とする水溶性アルギン酸塩繊維の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する、水溶性アルギン酸塩としては、アルギン酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩またはこれらの混合物を挙げることができる。さらに、アルギン酸の分子内において、これら金属塩が2種以上存在する塩構造を有していてもよいが、1種の金属からなるナトリウム塩またはカリウム塩が好ましく、なかでもナトリウム塩がより好ましく用いられる。
【0010】
上記水溶性アルギン酸塩の分子量は、例えばアルギン酸ナトリウムにおいては粘度として300〜1500cp、好ましくは500〜750cpを示す値である。300cp未満では出来上がり繊維の強度が弱く実用に適さず、1500cpを越えるとドープ中のアルギン酸塩の濃度を、粘度を落すために、下げる必要があり、生産性の面から現実的でない。
【0011】
また、水性ドープの水溶性アルギン酸塩濃度は、上記分子量においては、通常、2〜20重量%、好ましくは3〜8重量%である。濃度が余りに小さいと凝固浴である酸の使用量が増えるなど経済的でなく、濃度が大きいとドープの粘度が高くなりドープ吐出が困難となる。
【0012】
本発明において、凝固浴に用いる酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、リン酸、シュウ酸が用いられる。これらの酸は、必要に応じて2種以上の混合溶液としてもよいが、好ましくは硫酸が用いられる。
【0013】
凝固浴の条件としては、酸の濃度は、例えば、硫酸においては20〜200g/リットル、好ましくは50〜100g/リットルが用いられ、温度は、濃度や延伸との関係にもよるが、通常、室温〜80℃の範囲でよい。硫酸濃度が20g/リットル未満ではドープの凝固が難しく、200g/リットルを越えると単糸切れが多くなる。
【0014】
水溶性アルギン酸塩を含む水性ドープを上記凝固浴中に細孔を通して押出し凝固させて繊維とする。このとき必要に応じて延伸をかけてもよい。次に上記繊維に付着している酸を落とすために水洗浄を行って水不溶性のアルギン酸繊維を得る。
【0015】
ここで次の工程に入る前にアルギン酸繊維を乾燥させても、湿潤のままでもよい。但し、湿潤の場合はアルギン酸繊維に付着している水分の次工程への持ち込みを減少させるために後述する有機溶剤で置換しておくことが好ましい。
【0016】
アルギン酸繊維を水溶性とするには水溶性水酸化物−水−有機溶剤の溶液に所定時間浸漬する。浸漬時間は室温で15分以上好ましくは30分以上である。
【0017】
水の含有量は2〜15重量%、好ましくは5〜10重量%である。2重量%未満では、反応が進行せず、また15重量%を超えると生成した水溶性アルギン酸塩繊維のー部が溶解する。
【0018】
上記水溶性水酸化物は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウムの1種または2種以上のこれらの混合物が用いられるが、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであり、最も好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0019】
上記水溶性水酸化物の濃度は溶液の3重量%以上であればよい。3重量%未満では反応が不充分となるが、あまり濃度が大きいと後洗浄や経済面から問題があり、5〜15重量%が実用的である。
【0020】
また本発明にもちいる有機溶剤はメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、フェノールの1種または2種以上のこれらの混合物である。
【0021】
上記方法で得られた水溶性アルギン酸塩繊維は最後に水−有機溶剤溶液で洗浄される。
【0022】
洗浄に使用される有機溶剤は水溶性を付与する工程で使用する溶剤の中から選ばれるが前記工程で用いた溶剤と同一でなくてもよい。
【0023】
また上記洗浄用溶液の、水の含有率は10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%であり、10重量%未満では付着している水酸化物の洗浄効果が弱く、そのため製品の綿が高アルカリ性となり実用に適さない。50%を越えると水溶性アルギン酸塩繊維の一部が溶解する。
【0024】
上記洗浄を終えて得られた繊維は余剰の溶剤を除去した後過熱乾燥する。
【0025】
〔実施例〕
アルギン酸ナトリウム(君津化学工業株式会社製規格:食品用650〜750cp)を純水に加えて4重量%とし、70℃に加熱しつつ、90分間かけて溶解した。これを200メッシュの濾布で濾過した後、50℃で30分間遠心脱泡して紡糸用ドープとした。このドープを50℃、濃度80g/リットルの硫酸浴中に紡糸速度8.1m/分で紡糸した後水洗して4デニールのアルギン酸繊維を得た。
【0026】
この繊維を乾燥した後、水酸化ナトリウム8重量%−水8重量%−メタノール84重量%の溶液中に室温で30分間浸漬した。更に水35重量%−メタノール65重量%の溶液中で洗浄した後、乾燥して水溶性のアルギン酸ナトリウム繊維を得た。
【0027】
〔実施例2〕
実施例1と同じドープを、実施例1と同様に紡糸、水洗したのちメタノールで水を置換した。
【0028】
この繊維を乾燥することなしに、水酸化ナトリウム8重量%−水3重量%−メタノール89重量%の溶液中に30分間浸浸した。更に、水35重量%−メタノール65重量%の溶液中で洗浄したのち、乾燥して水溶性のアルギン酸ナトリウム繊維を得た。
【0029】
上記実施例1及び2で得たアルギン酸ナトリウム繊維1グラムを純水99ミリリットル中に投入し、攪拌すると1分後には繊維は溶解し、溶液中に固形物は認められなかった。
【0030】
実施例1及び2で得られたアルギン酸塩繊維の性能を表1に示す。測定方法はJIS L−1015化学繊維ステープル試験法による。
【0031】
【表1】
【0032】
【発明の効果】
本発明によるアルギン酸塩繊維は上記のとおり高強力でしかも完全に水溶性であり、かつ安価に製造することができる。この繊維は従来のアルギン酸塩繊維と同様、例えばガーゼ、包帯、あて布等の医療用材料として好適に使用できる。
Claims (6)
- 水溶性アルギン酸塩を含有する水性ドープを酸中に吐出紡糸した後、水溶性を付与するイオンからなる水酸化物(以下、水溶性水酸化物と略)を含む水−有機溶剤溶液に所定時間浸漬することを特徴とする乾強力が0.5g/デニール以上の水溶性アルギン酸塩繊維の製造方法。
- 水溶性アルギン酸塩がアルギン酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩の1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1記載の水溶性アルギン酸塩繊維の製造方法。
- 酸が硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、リン酸、シュウ酸の1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1記載の水溶性アルギン酸塩繊維の製造方法。
- 水溶性水酸化物が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウムの1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1記載の水溶性アルギン酸塩繊維の製造方法。
- 有機溶剤がメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、フェノールの1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1記載の水溶性アルギン酸塩繊維の製造方法。
- 浸漬時間が15分以上であることを特徴とする請求項1記載の水溶性アルギン酸塩繊維の製造方法。
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