JP2010236149A - 還元塩析ケラチン繊維の製造方法 - Google Patents

還元塩析ケラチン繊維の製造方法 Download PDF

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賢治 金山
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Abstract

【課題】ケラチン含有物質の還元塩析工程で不具合を生じさせることなく、安定して強度の高い還元塩析ケラチン繊維を安価かつ容易に製造することが可能な還元塩析ケラチン繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る還元塩析ケラチンの製造方法においては、タンパク質変性剤、界面活性剤および第三級ホスフィン化合物を加えた水溶液中でケラチン含有物質を還元処理する際に、界面活性剤の量が、ケラチン含有物質の質量に対して60質量%以上100質量%以下に調整される。また、還元ケラチンを含む水溶液に無機塩を添加してケラチンを塩析させる際に、ケラチン水溶液に加える無機塩あるいは無機塩の水溶液の量が、0.9M以上から飽和濃度未満に調整される。
【選択図】なし

Description

本発明は、羊毛、毛髪、爪、角等の角質タンパク質の主成分であるケラチンタンパク質を原料とした繊維の製造方法に関するものであり、詳しくは、ケラチンタンパク質含有物質を還元・塩析して得られる還元塩析ケラチンからなる還元塩析ケラチン繊維の製造方法に関するものである。
羊毛、毛髪、爪、角等のケラチンタンパク質含有物質を還元して得られる還元ケラチンは、タンパク質の主鎖構造であるペプチド結合を分解することなく高分子量のタンパク質が得られること、タンパク質中のシスチンのジスルフィド結合(−S−S−結合)を開裂させて活性なチオール基(−SH基)とすることが可能なことから、産業材料として重要な物質である。かかる還元ケラチンの製造としては、特許文献1の如く、2−メルカプトエタノール等のチオール系化合物、メタ重亜硫酸ナトリウム等の重亜硫酸塩化合物、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩化合物等を還元剤としてケラチンタンパク質含有物質を還元処理する方法が知られている。また、還元ケラチンからなる繊維の製造方法としては、上記した還元剤を用いた可溶性S−スルホン化ケラチン誘導体(ブンデ塩)を利用したケラチン繊維の製造方法が知られている(特許文献2)。
特開2003−12807号公報 特表2005−501153号公報
しかしながら、特許文献1に示された還元剤の内、チオール系のものは、独特の強い刺激臭を有しており、作業者に著しい不快感を与えるため、工業的生産に利用することは困難である。また、亜硫酸塩化合物系の還元剤は、抽出時にSOx等のガスを発生する等の問題点を有する上、還元力が弱いため、還元処理に長い時間を要するという不具合がある。一方、特許文献2に示された還元塩析ケラチン繊維の製造方法は、可溶性S−スルホン化ケラチン誘導体からでは可紡性の溶液が得られにくいため、安定した連続した繊維の製造が困難であった。
本発明の目的は、上記従来の還元ケラチン繊維の製造方法が有する問題点を解消し、ケラチン含有物質の還元塩析工程で不具合を生じさせることなく、安定して強度の高い還元塩析ケラチン繊維を安価かつ容易に製造することが可能な還元ケラチン繊維の製造方法を提供することにある。
本発明の発明者らは、上記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、ケラチン含有物質を水性媒体中でタンパク質変性剤、還元剤、界面活性剤の存在下で還元抽出するときに、還元剤として第三級ホスフィン化合物を用いると、100℃で30分間程度の短時間の処理で、臭気やガスをほとんど発生させることなく容易にケラチンの抽出作業を行うことができることを見出した。また、上記の如く可溶化還元ケラチン抽出液を得る際に、抽出時に加える界面活性剤の量を調整すること、および、可溶化還元ケラチン抽出液に無機塩を加えて塩析反応により還元塩析ケラチンの溶液またはゾル状物を析出させる際に、無機塩の添加量、塩析後の還元塩析ケラチンの温度、塩析からの経過時間をそれぞれ調整をすることによって、還元塩析ケラチンに紡糸・成形に適した粘性を付与して曳糸性を向上させることが可能であることを見出した。さらに、還元塩析ケラチンからなる紡糸液を、乾式紡糸法、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法によって紡糸した後に、紡糸後の還元塩析ケラチンに酸性溶液に接触させることによ って、還元塩析ケラチン繊維の強度を高め得ることを見出した。そして、それらの知見に基づいて、本発明を案出するに至った。
すなわち、本発明の内、請求項1に記載された発明は、ケラチン含有物質を還元処理した後に、得られた還元ケラチンを塩析することによって得られる還元塩析ケラチンを用いて還元塩析ケラチン繊維を製造する方法であって、以下の(a)〜(c)の工程を備えたことを特徴とする還元塩析ケラチン繊維の製造方法である。
(a)タンパク質変性剤、第三級ホスフィン化合物、および、ケラチン含有物質の質量に対して60質量%以上100質量%以下の界面活性剤を加えた水溶液中でケラチン含有物質を還元処理する工程
(b)前記還元処理工程で得られた還元ケラチンを含む水溶液に、0.9M以上飽和濃度未満に相当する量の無機塩あるいは無機塩の水溶液を添加して、水溶液中のケラチン成分を塩析させることによって還元塩析ケラチンを得る工程
(c)還元塩析ケラチンを繊維状に形成して気中に吐出あるいは所定の濃度に調整した酸性凝固液中に浸漬する工程
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記還元処理時に使用するタンパク質変性剤、界面活性剤、第三級ホスフィン化合物が、それぞれ、尿素またはチオ尿素、ドデシル硫酸ナトリウム、トリアルキルホスフィンであるとともに、前記塩析時に用いる無機塩が、硫酸アンモニウムあるいは硫酸ナトリウムであることを特徴とするものである。
請求項3に記載された発明は、請求項1、または請求項2に記載された発明において、(d)繊維状に形成された還元塩析ケラチンにアルデヒド類を接触させて還元塩析ケラチンを架橋する工程を備えたことを特徴とするものである。
請求項1に記載の還元塩析ケラチン繊維の製造方法によれば、ケラチン抽出時の界面活性剤の量、塩析時の無機塩の濃度を特定の範囲に調整することで、還元塩析ケラチンに適度な流動性および粘性を付与し、曳糸性を良好なものとすることによって、還元塩析工程で悪臭やガスの発生等の不具合を生じさせることなく、還元塩析ケラチン繊維を、安定して安価かつ容易に製造することができる。また、界面活性剤にてミセル化されているもののチオール基(SH基)の反応活性を維持した状態にある還元塩析ケラチンを気中に吐出して乾燥・脱水することによって、ケラチン分子鎖に配向性を付与しチオール基がジスルフィド結合に再架橋する。さらに、酸性凝固液を接触させることによって、還元塩析ケラチンをミセル化していたSDSが凝固液中に溶出し、同時に還元塩析ケラチンが酸変性・固化して繊維状に形成される。このことにより、実用に耐え得る強度を有する還元塩析ケラチン繊維を、安定して安価かつ容易に製造することができる。
請求項2に記載の還元塩析ケラチン繊維の製造方法によれば、還元時に用いるタンパク質変性剤、界面活性剤、第三級ホスフィン化合物として、それぞれ、尿素またはチオ尿素、ドデシル硫酸ナトリウム、トリアルキルホスフィンを用い、塩析時に用いる無機塩として、硫酸アンモニウムあるいは硫酸ナトリウムを用いることによって、還元塩析ケラチン繊維を、より効率的に製造することができる。
請求項3に記載の還元塩析ケラチン繊維の製造方法によれば、繊維状に形成された還元塩析ケラチンにアルデヒド類を接触させることにより、還元塩析ケラチン繊維の強度をより高いものとすることができる。
還元塩析ケラチンの粘度と曳糸性との関係を示すグラフである。 抽出時のドデシル硫酸ナトリウムの濃度と還元塩析ケラチンの粘度との関係を示すグラフである。
本発明におけるケラチンとは、所謂、硬質ケラチンのことであり、人の毛髪、羊毛、鳥類の羽、動物の爪等の主要なタンパク質成分のことである。また、本発明におけるケラチン含有物質としては、羊毛、人の毛髪、馬毛などの哺乳動物の体毛、動物の爪、角、ひずめ、鳥類の羽、魚類の鱗等を用いることができる。その中でも、羊毛および毛髪を用いると好ましい。なお、それらのケラチン含有物質中において、ケラチンは総重量の30〜90%を占め、羊毛や人の毛髪の場合には、約60〜85%を占める。したがって、本発明において「ケラチン含有物質の質量に対して60質量%以上100質量%以下」とは、ケラチン含有物質が羊毛や人の毛髪である場合には、「ケラチンの純分の質量に対して71質量%以上167質量%以下」であることを意味する。
また、ケラチン含有物質を還元処理する際に使用するタンパク質変性剤としては、尿素またはチオ尿素を用いることができる。その中でも尿素を用いると、還元処理の効率が上昇するので好ましい。
さらに、ケラチン含有物質を還元処理する際に使用する界面活性剤としては、各種の陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤を用いることができる。その中でも、陰イオン界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS,CAS登録番号151−21−3)を用いると、還元処理の効率が上昇するので好ましい。
また、界面活性剤の量は、ケラチン含有物質の質量に対して60質量%以上100質量%以下に調整する必要があり、60質量%以上90質量%以下に調整すると還元処理の効率が上昇するので好ましく、70質量%以上80質量%以下に調整するとより好ましい。すなわち、ケラチン含有物質として羊毛や人の毛髪を用いる場合には、界面活性剤の量は、ケラチンの純分の質量に対して71質量%以上167質量%以下に調整する必要があり、71質量%以上106質量%以下に調整すると還元処理の効率が上昇するので好ましく、82質量%以上94質量%以下に調整するとより好ましい。
一方、ケラチン含有物質を還元処理する際に使用する第三級ホスフィン化合物としては、下記の一般式(I)で示すヒドロキシアルキルホスフィン、ヒドロキシアルキル塩化ホスホニウムなどを用いることができる。その中でも、トリス−3−ヒドロキシプロピルホスフィン(THPP,CAS登録番号4706−17−6)を用いると、還元処理の効率が上昇するので好ましい。
Figure 2010236149
上記一般式(I)中、R,RおよびRは、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。なお、R,RおよびRが、炭素数1〜6のアルキレン基であると、還元処理の効率が上昇するので好ましい。そのような化合物としては、具体的には、ジメチルヒドロキシメチルホスフィン、ジメチルヒドロキシエチルホスフィン、エチルビス(ヒドロキシエチル)ホスフィン、エチルビス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシエチル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシオクチル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシクロヘキシル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシブチル)ホスフィン等を挙げることができる。
一方、還元ケラチンを塩析させる際に添加する無機塩としては、硫酸ナトリウム,硫酸アンモニウム,塩化ナトリウムなどの無機塩を用いることができる。その中でも、硫酸ナトリウムを用いると、塩析処理の効率が上昇するので好ましい。また、無機塩の添加量は、0.9M以上飽和濃度未満に相当する量の無機塩あるいは無機塩の水溶液とする必要があり、0.92M以上1.4M未満に調整すると、塩析処理の効率が上昇するので好ましく、0.93M以上1.13M以下に調整するとより好ましい。
また、得られた還元塩析ケラチンを、湿式紡糸する際に使用する酸性凝固液としては、トリクロロ酢酸(TCA)溶液、グアニジン塩酸溶液、過塩素酸溶液等のタンパク質変性剤の水溶液の他に、塩酸、硫酸、酢酸、リン酸等の酸性物質から選ばれる1種以上からの水溶液を用いることができる。その中でも、TCA、硫酸の水溶液を用いると還元塩析ケラチンの凝固効率が上昇して還元塩析ケラチン繊維の強度が高くなるので好ましい。そのように、酸性凝固液として、TCAの水溶液を用いる場合には、TCAの濃度を3%以上50%以下に調整すると、変性・固化効率が良好なものとなるので好ましく、5%以上40%以下に調整すると特に好ましい。また、酸性凝固液として、硫酸の水溶液を用いる場合には、TCAの濃度を0.3%以上40%以下に調整すると、変性・固化効率が良好なものとなるので好ましく、0.5%以上30%以下に調整すると特に好ましい。
さらに、TCA、硫酸の水溶液を用いて還元塩析ケラチンを変性・固化させる場合には、TCA、硫酸の水溶液からなる凝固液を満たした凝固槽の温度を10℃以上70℃以下に調整すると、変性・固化効率が良好なものとなるので好ましく、17℃以上60℃以下に調整すると特に好ましい。また、TCA、硫酸の水溶液を用いて還元塩析ケラチンを変性・固化させる場合には、変性・固化させる時間(たとえば、TCA、硫酸の水溶液からなる凝固液を満たした凝固槽内に浸漬させる時間)を30秒以上70分以下に調整すると、変性・固化効率が良好なものとなるので好ましく、1分以上60分以下に調整すると特に好ましい。
加えて、上記の如く、酸性凝固液中で凝固・変性させた還元塩析ケラチン繊維には、アルデヒド類を接触させることによって、還元塩析ケラチンを架橋するのが好ましい。そのように、還元塩析ケラチンを架橋させる際に使用するアルデヒド類としては、グルタルアルデヒド(GA)、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等を挙げることができる。その中でも、GA、ホルムアルデヒドを用いると、還元塩析ケラチンの凝固効率が上昇して還元塩析ケラチン繊維の強度が高くなるので好ましい。そのように、架橋剤として、GAを用いる場合には、GAの水溶液の濃度を0.5%以上3%以下に調整すると、架橋効率が良好なものとなるので好ましく、1%以上2%以下であると特に好ましい。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。実施例における物性、特性の評価方法は以下の通りである。
<粘度測定>
芝浦システム株式会社製 単一円筒型回転粘度計(ビスメトロン粘度計)を用いて、下記の条件において測定した。
試験条件:少量サンプルアダプター 使用ローター SS3
回転数:0.3rpm、温度(以下の実施例・比較例において温度の記述がない場合):20℃
<湿式紡糸における曳糸性>
液中に直径約3mmのガラス棒先端部を試験液に挿入した後、毎秒約10cmの速度で上方に引き上げた。そして、その際に形成された液状糸が破断したときの試験液面からガラス棒先端までの距離(以下、破断長さという)を測定した。そして、その破断長さによって、曳糸性を以下の3段階で評価した。
○:破断長さが50cm以上
△:破断長さが5cm以上50cm未満
×:破断長さが5未満
<乾式紡糸・湿乾式紡糸における製糸性>
還元塩析ケラチンを充填したシリンジに圧力を加えて、シリンジの先端の紡糸ノズル(孔径=0.4mmあるいは0.1mm)から吐出させた際に、還元塩析ケラチンの連なり度合いによって、以下の2段階で官能評価した。
○:還元塩析ケラチンが連なって繊維状になる
×:還元塩析ケラチンが分断されて繊維状にならない
<繊維の強度>
株式会社島津製作所製の定速伸長形の引張り試験機(オートグラフ)を用い、日本工業規格JIS L 1013−1999(化学繊維フィラメント糸試験法)の引張強さおよび伸び率の試験方法に準じて、以下の条件下で測定した。なお、単位繊度当たりの破断時の引張強さを強度として求めた。
温度20℃ 相対湿度65%
試料のつかみ間隔10mm 引張速度:10mm/min
[実施例1]
尿素270g(3M)(愛知県農業協同組合連合会製「46.0尿素」)、トリス−3−ヒドロキシプロピルホスフィン(THPP)40%水溶液(日本化学工業(株)製「ヒシコーリン(P−540))85g(純分34g)(0.1M)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)31%水溶液(日華化学(株)製「サンレックスL−30S)300g(純分93g)(羊毛量に対するSDS純分の質量割合約75%(W/W))に水を添加して、全量を1500mlに調整することによって抽出溶液を得た。しかる後、その抽出溶液と、羊毛トップ125gとを密栓できる回転ポット入れ、100℃で30分間回転しながらケラチンの還元抽出処理を行った。そして、抽出処理後に回転ポットごと冷却して、抽出物全容から濾過布にて残渣を圧搾除去することによって、約1000ml(約1.1kg)の還元ケラチン抽出液を回収した。
しかる後、回収した還元ケラチン抽出液約55ml(約60g)をスターラーで攪拌しながら20%(W/V)硫酸ナトリウム溶液を還元ケラチン抽出液に対して2倍量添加して、還元塩析ケラチンを析出させた。この還元塩析ケラチンを60℃で10分間保温後、反応液とともに回転数3500rpmで10分間遠心分離し、反応液中から還元塩析ケラチン約10mlを回収した。そして、20℃の条件下で塩析させた後、粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元ケラチン抽出液に対する20%(W/V)硫酸ナトリウム溶液の2倍量の添加は、硫酸ナトリウム濃度を0.94Mとしたことに相当するものであった。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から実施例1の方法で製糸した場合の曳糸性が良好であることが分かる。また、20℃の条件下で塩析後の経過時間による粘度の変化と曳糸性との関係を図1に示す。当該図1から、20℃の条件では、紡糸および成形加工等に還元塩析ケラチンを使用するには、塩析から150分以内の還元塩析ケラチンを用いることが好ましいことが分かる。
[実施例2]
還元ケラチン抽出液を得る際に用いるタンパク質変成剤をチオ尿素に変更した以外は、実施例1と同様にして還元塩析ケラチンを得た。そして、実施例1と同様に、20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から実施例2の方法で製糸した場合の曳糸性が良好であることが分かる。
[実施例3]
還元ケラチン抽出液を用いて還元塩析ケラチンを析出させる際に還元ケラチン抽出液に加える無機塩溶液を20%(W/V)硫酸アンモニウム((NHSO)溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして還元塩析ケラチンを得た。そして、実施例1と同様に、20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から実施例3の方法で製糸した場合の曳糸性が良好であることが分かる。
[実施例4]
実施例1と同様な方法で得た還元ケラチン抽出液約100ml(約110g)を、スターラーで攪拌しながら、20%硫酸ナトリウム溶液を還元ケラチン抽出液に対して容量比で2倍の比率で添加して還元塩析ケラチンを析出させた。この還元塩析ケチンを反応液とともに回転数3500rpmで10分間遠心分離し、反応液中から還元塩析ラチン約15mlを回収した。20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から実施例4の方法で製糸した場合の曳糸性が良好であることが分かる。
[実施例5]
還元ケラチン抽出液を用いて還元塩析ケラチンを析出させる際に添加する20%硫酸ナトリウム溶液の量を、還元ケラチン抽出液に対する容量比で3倍に変更した以外は、実施例2と同様にして還元塩析ケラチンを得た。そして、実施例2と同様に、20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から実施例5の方法で製糸した場合の曳糸性が良好であることが分かる。
[実施例6]
還元ケラチン抽出液を用いて還元塩析ケラチンを析出させる際に添加する20%硫酸ナトリウム溶液の量を、還元ケラチン抽出液に対する容量比で4倍に変更した以外は、実施例2と同様にして還元塩析ケラチンを得た。そして、実施例2と同様に、20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から実施例6の方法で製糸した場合の曳糸性が良好であることが分かる。
[実施例7]
尿素54g(3M)、THPP17g(純分6.8g)、羊毛量に対してSDS60%(W/W)(羊毛25gとしてSDS31%水溶液48.4g)(SDS純分15.0g)を入れ、最後に水を添加し全量を300mlとした溶液と羊毛トップ25gとを密栓できる回転ポット入れて、100℃で30分間回転しながらケラチンの還元抽出処理を行った。抽出処理後に回転ポットごと冷却して、抽出物全容から濾過布にて残渣を圧搾除去して、還元ケラチン抽出液を回収した。そして、得られた還元ケラチン抽出液約55ml(約60g)をスターラーで攪拌しながら20%硫酸ナトリウム溶液を還元ケラチン抽出液に対して2倍量添加して、還元塩析ケラチンを析出させた。この還元塩析ケラチンを60℃で10分間保温後、反応液とともに回転数3500rpmで10分間遠心分離し、反応液中から還元塩析ケラチン約10mlを回収した。粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から実施例7の方法で製糸した場合の曳糸性が良好であることが分かる。
[実施例8]
還元ケラチン抽出液を用いて還元塩析ケラチンを析出させる際に還元ケラチン抽出液に加える界面活性剤(SDS)の量を75%に変更した以外は、実施例7と同様にして還元塩析ケラチンを得た。そして、実施例7と同様に、20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から実施例8の方法で製糸した場合の曳糸性が良好であることが分かる。
[実施例9]
還元ケラチン抽出液を用いて還元塩析ケラチンを析出させる際に還元ケラチン抽出液に加える界面活性剤(SDS)の量を100%に変更した以外は、実施例7と同様にして還元塩析ケラチンを得た。そして、実施例7と同様に、20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から実施例8の方法で製糸した場合の曳糸性が良好であることが分かる。
[実施例10]
実施例1と同様な方法で得られた還元塩析ケラチンを、加圧可能なステンレス容器に入れて、0.1MPaの圧縮空気圧力を加えながら孔径0.4mmの紡糸ノズル(6孔)から、下方大気中に吐出させた(乾式紡糸)。なお、かかる乾式紡糸の際には、事前に液の吐出状態を確認した上で加温または冷却することによって還元塩析ケラチン紡糸液の粘度を調整した。そして、吐出された繊維状の還元塩析ケラチンを、室温約15℃の大気中で固化させながら、ノズル下方約3mのテフロン(登録商標)シート上に回収することによって還元塩析ケラチン繊維を得た。なお、製糸性は良好であり、強度試験を実施し得る還元塩析ケラチン繊維が得られた。そして、上記した方法によって、得られた還元塩析ケラチン繊維の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表1に示す。
[実施例11]
実施例10と同様な方法で得られた還元塩析ケラチン繊維を、10分間5%(W/V)トリクロロ酢酸(TCA)溶液に浸漬し不溶化させ、しかる後に、1%グルタルアルデヒド(GA)水溶液に1分浸漬し架橋させた後に、室温中で十分に乾燥させた。そして、還元塩析ケラチン繊維(不溶化および架橋したもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から不溶化および架橋した還元塩析ケラチン繊維は、そのような処理を施さなかった還元塩析ケラチン繊維に比べて高い強度を有していることが分かる。
[実施例12]
実施例11と同様な方法で得られた還元塩析ケラチン繊維(不溶化・架橋したもの)を、室温中で手によって約3.2倍延伸した。そして、還元塩析ケラチン繊維(不溶化、架橋および延伸したもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から延伸した還元塩析ケラチン繊維は、延伸しなかった還元塩析ケラチン繊維(不溶化・架橋しなかったもの、および、不溶化・架橋したもの)に比べて高い強度を有していることが分かる。
[実施例13]
実施例1と同様な方法で得られた還元塩析ケラチンをシリンジに入れ、そのシリンジを約0.1MPaに加圧しながら、先端の孔径0.4mmの紡糸ノズル(1孔)を、凝固槽内に満たした約17℃の液温で5%のTCA溶液からなる第一凝固液中に挿入した状態で、シリンジ内の還元塩析ケラチンを吐出させた。凝固液中で吐出した還元塩析ケラチンは直ちに酸変性・固化し、ケラチン繊維が得られた。その後、糸速度約1.4m/分で吐出させながら凝固液中で約80cmの長さに亘って酸変性させつつ延伸した後、凝固槽の外からガイドを経由して気中に引き出して、ケラチン繊維を回転ローラーに巻き取った。このケラチン繊維をさらに第二凝固液として5%のTCA溶液へ10分間浸漬し、その後1%GA溶液中に1分間浸漬し水洗いして乾燥させた。そして、得られた還元塩析ケラチン繊維(酸変性・延伸したもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表1に示す。
[実施例14]
第一凝固液、第二凝固液として用いるTCA溶液の濃度を10%に変更した以外は、実施例13と同様にして還元塩析ケラチン繊維を得た。そして、還元塩析ケラチン繊維(酸変性・延伸したもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から10%のTCA溶液の凝固液を用いて凝固させた場合の還元塩析ケラチン繊維は、5%のTCA溶液の凝固液を用いて凝固させた場合の還元塩析ケラチン繊維に比べて高い強度を有していることが分かる。
[実施例15]
ケラチン含有物質を羊毛トップから廃棄人毛に変更し、実施例1の方法と同様な方法で還元ケラチン抽出液約1500ml(約1580g)を得た。還元ケラチン抽出液約100ml(約105g)をスターラーで攪拌しながら、20%硫酸ナトリウム溶液を還元ケラチン抽出液に対して容量比で3倍量を添加して還元塩析ケラチンを析出させた。この還元塩析ケラチンを反応液とともに回転数3500rpmで10分間心分離し、反応液中から還元塩析ケラチン約10mlを回収した。しかる後、その還元塩析ケラチン液を、加圧できるシリンジに入れて、0.3MPaに加圧しながら孔径約1.0mmの紡糸ノズル(1孔)から、約17℃に調節された30%硫酸溶液からなる凝固液を満たしたシャーレ内に吐出し、当該シャーレ内で約1分間に亘って変性・固化させた。そして、還元塩析ケラチン繊維(変性させたもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表1に示す。
[実施例16]
還元塩析ケラチン繊維を変性させる際の凝固液を10%のTCA溶液に変更した以外は、実施例15と同様にして還元塩析ケラチン繊維を得た。そして、還元塩析ケラチン繊維(変性させたもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表1に示す。
[実施例17]
実施例15と同様な方法によって得られた還元塩析ケラチン液をシリンジに入れ、そのシリンジを約0.3MPaに加圧しながら、先端の孔径約1.0mmの紡糸ノズル(1孔)から、約17℃に調節された5%のTCA溶液からなる凝固液を満たしたシャーレ内に吐出し、当該シャーレ内で約18時間に亘って変性・固化させた。しかる後、その変性後の還元塩析ケラチン繊維をGA水溶液に1分浸漬し架橋させた後に、室温中で十分に乾燥させた。そして、還元塩析ケラチン繊維(変性・架橋したもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から長時間に亘って変性させ架橋した還元塩析ケラチン繊維は、そのような処理を施さなかった還元塩析ケラチン繊維に比べて高い強度を有していることが分かる。
[実施例18〜23]
実施例1と同様な方法で得られた還元塩析ケラチンをシリンジに入れ、そのシリンジを約0.3MPaに加圧しながら、先端の孔径0.6mmの紡糸ノズル(1孔)を、約17℃の液温で0.5%,1%,5%,10%,20%,30%の各濃度に調整した硫酸溶液からなる凝固液を満たしたシャーレ内に挿入した状態で、シリンジ内の還元塩析ケラチンを凝固液中に吐出させた。しかる後、1分間に亘って変性・固化させ、気中で約2倍に延伸した後、1%アンモニア水で中和し、風乾することによって、実施例18〜23の還元塩析ケラチン繊維を得た。そして、還元塩析ケラチン繊維(変性させたもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表2に示す。
[実施例24]
還元塩析ケラチン繊維を変性させる際の凝固液を10%のTCA溶液に変更した以外は、実施例18と同様にして還元塩析ケラチン繊維を得た。そして、還元塩析ケラチン繊維(変性させたもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表2に示す。
[実施例25]
実施例1と同様な方法で得られた還元塩析ケラチンをシリンジに入れ、そのシリンジを約0.2MPaに加圧しながら、内部の還元塩析ケラチンを先端の孔径0.6mmの紡糸ノズル(1孔)から気中に吐出させた。しかる後、吐出させた還元塩析ケラチンを、約20℃に調節した5%のTCA溶液を満たしたシャーレ中に投入した。なお、その際の紡糸ノズルの先端からのエアギップは、約10mmに調整した。しかる後、シャーレ中に投入された還元塩析ケラチンを、そのシャーレ中で1分間に亘って変性させた後、1%GA溶液に室温で1分間に亘って浸漬させて架橋させた後に、24時間以上に亘って十分に風乾させることによって、還元塩析ケラチン繊維を得た。そして、還元塩析ケラチン繊維(変性させたもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表2に示す。
[実施例26〜29]
還元塩析ケラチン繊維を変性させる際のTCA溶液の濃度を、それぞれ、10%,20%,30%,40%に変更した以外は、実施例25と同様にして、実施例26〜29の還元塩析ケラチン繊維を得た。そして、還元塩析ケラチン繊維(変性させたもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表2に示す。
[実施例30,31]
吐出させた還元塩析ケラチン繊維を変性させる際のTCA溶液の温度を、それぞれ40℃,60℃に変更した以外は、実施例25と同様にして、実施例30,31の還元塩析ケラチン繊維を得た。そして、還元塩析ケラチン繊維(変性させたもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表2に示す。
[実施例32〜35]
吐出させた還元塩析ケラチン繊維を5%のTCA溶液内で変性・凝固させる際の変性時間を、それぞれ、2分、10分、30分、60分に変更した以外は、実施例25と同様にして、実施例32〜35の還元塩析ケラチン繊維を得た。そして、還元塩析ケラチン繊維(変性させたもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表2に示す。
[実施例36〜39]
吐出させた還元塩析ケラチン繊維を5%のTCA溶液内で変性・凝固させる際のTCA溶液の温度を40℃に変更し、変性時間を、それぞれ、2分、10分、30分、60分に変更した以外は、実施例25と同様にして、実施例36〜39の還元塩析ケラチン繊維を得た。そして、還元塩析ケラチン繊維(変性させたもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表2に示す。
[実施例40〜43]
吐出させた還元塩析ケラチン繊維を5%のTCA溶液内で変性・凝固させる際のTCA溶液の温度を60℃に変更し、変性時間を、それぞれ、2分、10分、30分、60分に変更した以外は、実施例25と同様にして、実施例40〜43の還元塩析ケラチン繊維を得た。そして、還元塩析ケラチン繊維(変性させたもの)の強度を測定した。還元塩析ケラチン繊維の強度の測定結果を、製糸条件とともに表2に示す。
[比較例1]
還元ケラチン抽出液を用いて還元塩析ケラチンを析出させる際に添加する20%硫酸ナトリウム溶液の量を、還元ケラチン抽出液に対する容量比で1倍に変更した以外は、実施例2と同様にして還元塩析ケラチンを得た。そして、実施例2と同様に、20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。また、実施例1と同様に、曳糸性を評価した後に全ての還元塩析ケラチンを乾燥させて重量を測定し、還元ケラチン抽出液に添加した硫酸ナトリウムの量が、ケラチン10gに対して何molに相当するものであったのかを算出した。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から比較例1の方法で製糸した場合の曳糸性が不良であることが分かる。
[比較例2]
還元ケラチン抽出液を得る際に用いる界面活性剤(SDS)の量を25%に変更した以外は、実施例1と同様にして還元塩析ケラチンを得た。そして、実施例1と同様に、20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から比較例2の方法で製糸した場合の曳糸性が不良であることが分かる。
[比較例3]
還元ケラチン抽出液を得る際に用いる界面活性剤(SDS)の量を50%に変更した以外は、実施例7と同様にして還元塩析ケラチンを得た。そして、実施例7と同様に、20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から比較例3の方法で製糸した場合の曳糸性が不良であることが分かる。
[比較例4]
還元ケラチン抽出液を用いて還元塩析ケラチンを析出させる際に還元ケラチン抽出液に加える界面活性剤(SDS)の量を110%に変更した以外は、実施例7と同様にして還元塩析ケラチンを得た。そして、実施例7と同様に、20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から比較例4の方法で製糸した場合の曳糸性が不良であることが分かる。
[比較例5]
還元ケラチン抽出液を得る際に用いる界面活性剤(SDS)の量を150%に変更した以外は、実施例7と同様にして還元塩析ケラチンを得た。そして、実施例7と同様に、20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から比較例5の方法で製糸した場合の曳糸性が不良であることが分かる。
[比較例6]
還元ケラチン抽出液を得る際に用いる第三級ホスフィン化合物をメタ重亜硫酸ナトリウムに変更した以外は、実施例1と同様にして還元塩析ケラチンを得た。そして、実施例1と同様に、20℃の条件下で粘度測定開始から30分後の還元塩析ケラチンの粘度および曳糸性を調べた。還元塩析ケラチンの粘度・曳糸性の評価結果を、製糸条件とともに表1に示す。表1から比較例6の方法で製糸した場合の曳糸性が不良であることが分かる。
[比較例7,8]
凝固液として用いる硫酸溶液の濃度を、それぞれ、0.1%,0.2%に変更した以外は、実施例18と同様にして還元塩析ケラチン繊維を得ようと試みたが、吐出された還元塩析ケラチンが十分に固化せず、凝固液中に溶解した状態になってしまい、還元塩析ケラチン繊維を得ることができなかった。
[比較例9,10]
還元塩析ケラチン繊維を変性させる際のTCA溶液の濃度を、それぞれ、1%,2%に変更した以外は、実施例25と同様にして還元塩析ケラチン繊維を得ようと試みたが、還元塩析ケラチンが十分に固化せず、凝固液中に溶解した状態になってしまい、還元塩析ケラチン繊維を得ることができなかった。
Figure 2010236149
Figure 2010236149
[実施例の還元塩析ケラチン繊維の効果]
表1、表2から、実施例の方法によって得られる還元塩析ケラチンは、曳糸性が良好であり、繊維状に形成された還元塩析ケラチン繊維が実用に耐え得る強度を発現させることが分かる。これに対して、還元ケラチン抽出液を得る際の界面活性剤の量が少なすぎたり多すぎたりした場合、還元ケラチン抽出液を得る際の第三級ホスフィン化合物が不適切なものである場合や、還元ケラチン抽出液を用いて塩析処理する際の無機塩の濃度が低かったりした場合には、得られる還元塩析ケラチンの曳糸性が不良となり、還元塩析ケラチン繊維が得られないことが分かる。

Claims (3)

  1. ケラチン含有物質を還元処理した後に、得られた還元ケラチンを塩析することによって得られる還元塩析ケラチンを用いて還元塩析ケラチン繊維を製造する方法であって、以下の(a)〜(c)の工程を備えたことを特徴とする還元塩析ケラチン繊維の製造方法。
    (a)タンパク質変性剤、第三級ホスフィン化合物、および、ケラチン含有物質の質量に対して60質量%以上100質量%以下の界面活性剤を加えた水溶液中でケラチン含有物質を還元処理する工程
    (b)前記還元処理工程で得られた還元ケラチンを含む水溶液に、0.9M以上飽和濃度未満に相当する量の無機塩あるいは無機塩の水溶液を添加して、水溶液中のケラチン成分を塩析させることによって還元塩析ケラチンを得る工程
    (c)還元塩析ケラチンを繊維状に形成して気中に吐出あるいは所定の濃度に調整した酸性凝固液中に浸漬する工程
  2. 前記還元処理時に使用するタンパク質変性剤、界面活性剤、第三級ホスフィン化合物が、それぞれ、尿素またはチオ尿素、ドデシル硫酸ナトリウム、トリアルキルホスフィンであるとともに、
    前記塩析時に用いる無機塩が、硫酸アンモニウムあるいは硫酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の還元塩析ケラチン繊維の製造方法。
  3. (d)繊維状に形成された還元塩析ケラチンにアルデヒド類を接触させて還元塩析ケラチンを架橋する工程を備えたことを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の還元塩析ケラチン繊維の製造方法。
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