JP3545474B2 - 防振装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、振動発生部からの振動を吸収する防振装置に関し、例えば自動車、一般産業用機械等に適用可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、外筒内にゴム等で形成された弾性体を介して内筒が取り付けられると共に複数の液室を内蔵し、エンジンへこの内筒の下端部が連結されるような構造の防振装置が知られている。このような防振装置では、内筒の外周側に弾性体が加硫接着されていて、エンジンの振動により生じる内筒の軸方向に沿った変位に伴って、弾性体の内周側が変位するようになっている。
【0003】
例えば、この種の防振装置の一例として、図5に示されるようなものが知られており、この図に基づき従来技術を説明する。
【0004】
この図に示すように、この防振装置110は、内筒112と外筒114とをゴムなどの弾性体116で連結し、この弾性体116にてエンジンの重量を支持する構造となっている。つまり、内筒112の下端部に螺合されたボルト122により、エンジンに繋がる取付アーム120と内筒112とが連結されると共に、外筒114の下部に取り付けられたブラケット134で外筒114が車体側に連結される形となっている。
【0005】
さらに、この外筒114、ダイヤフラム118及び弾性体116で区画された空間で液室130を形成している。そして、弾性材料124を挟みつつ仕切部材126と仕切部材128とを合わせることによって、前記液室130内を区切って一対の液室130A、130Bを形成すると共にこれら液室130A、130B間を連結する制限通路132を形成する。
【0006】
従って、この防振装置110では、内外筒間の上下方向への相対変位に伴って、制限通路132内を液体が行き来し、液柱共振により振動が減衰され、10Hz近辺の例えばエンジンのシェイク振動等を抑えることが可能となる。
【0007】
しかし、エンジンでさらに高周波数の振動が発生した場合、10Hz近辺で液柱共振した制限通路132が目詰まり状態となり、アイドリング振動領域(例えば30Hz近辺の周波数)での動ばね係数Kdが高まって、アイドリング時における振動や音が大きくなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、従来の防振装置では、広範囲な周波数帯域の振動に対応して、振動を減衰することができないという欠点を有していた。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、広範囲な周波数帯域の振動に対応して、振動を減衰することができる防振装置を提供することが目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明による防振装置は、振動発生部及び振動受け部の一方に連結される筒状の外筒と、
前記外筒の内側に基端側が位置し且つ振動発生部及び振動受け部の他方に連結される内筒と、
前記内筒と前記外筒とを連結するように前記内筒と前記外筒との間に配設されて弾性変形により前記内筒と前記外筒とを相対変位可能とする弾性体と、
前記弾性体を隔壁の少なくとも一部として拡縮可能とされ且つ液体が充填される受圧液室と、
前記受圧液室と隔離されて前記外筒内に配設され且つ前記受圧液室と第1の通路によって繋がれると共に弾性変形可能な第1の弾性膜を隔壁の一部とした第1の副液室と、
前記受圧液室及び前記第1の副液室と並んで前記外筒の内部に配設されるように前記内筒の基端側に形成される第2の副液室と、
前記内筒の基端側に形成され且つ前記受圧液室と前記第2の副液室との間を繋ぐと共に第1の通路より抵抗が小さい第2の通路と、
前記第2の副液室の隔壁の一部とされ且つ弾性変形可能であって前記第1の弾性膜より高剛性の第2の弾性膜と、
前記第2の弾性膜を介して前記第2の副液室と隣接するように前記内筒の内部に設けられた空気室と、
を有したことを特徴とする。
【0011】
【作用】
請求項1に係る防振装置の作用を以下に説明する。
【0012】
振動発生部が振動を発生させた場合、外筒あるいは内筒を介して振動が弾性体に伝達され、弾性体の変形により振動が吸収されて内筒あるいは外筒に連結された振動受部側に振動が伝達され難くなる。
【0013】
これに合わせて、振動発生部が発生させた振動が低周波数の振動の場合には、弾性体の変形に伴って受圧液室が拡縮し、これに伴って第1の通路内を液体が流通する。そして、第1の通路を介して受圧液室と繋がる第1の副液室が第1の弾性膜の変形により拡縮するので、液体流動の粘性抵抗及び液柱共振に基づく減衰作用で、防振効果を向上することができる。
【0014】
さらに、振動発生部が発生させた振動が高周波数の振動の場合には、第1の通路は目詰まり状態となるが、第1の通路より抵抗の小さい第2の通路内を液体が流通する。そして、第2の通路を介して受圧液室と繋がる第2の副液室が第2の弾性膜の変形により拡縮するので、低動ばねとなって振動が減衰されて、防振効果を向上することができる。
【0015】
一方、本請求項によれば、第2の副液室が、受圧液室及び第1の副液室と並んで外筒の内部に配設されるように内筒の基端側に形成されると共に、空気室が第2の弾性膜を介して第2の副液室と隣接するように内筒の内部に設けられているので、外筒の内部における他の部分に別途第2の副液室及び空気室を形成する必要がなくなり、防振装置をより小型化することが可能となる。また、受圧液室に対して相対的に変位する内筒に、第2の通路及び第2の副液室が形成されているので、高周波数の振動が伝達された際に、より積極的に第2の通路を介して受圧液室と第2の副液室との間で液体が流通することになる。
【0016】
他方、第2の弾性膜は第1の弾性膜より高剛性に形成されているので、一般に大きな振幅を伴うことになる低周波数の振動が伝達された際には、第2の弾性膜が変形せず、積極的に第1の副液室側に液体が流通することになる。
【0017】
【実施例】
本発明の第1実施例に係る防振装置を図1から図3までに示し、これらの図に基づき本実施例を説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施例の防振装置10は、一例として振動受け部としての自動車の車体側へ連結される下部外筒12を備えている。この下部外筒12は円筒状とされ、上部側は一定の径に形成された大径部12Aとされており、下部側には、段部を介して、大径部12Aより小径の小径部12Cが設けられている。この小径部12Cの下端部には、この下端部側を覆う底部12Bが形成され、この底部12Bの中心部に円形の円孔12Eが形成されている。
【0019】
また、外筒の一端側である下端側を構成するこの小径部12Cには、下部外筒12を車体へ取り付けるための略L字形の取付脚14が一対固着されており、これら取付脚14には、図示しない取付ボルトを挿通するボルト孔16がそれぞれ形成されている。
【0020】
この下部外筒12の内部には、弾性体ブロック18が配設されている。図1に示すように、弾性体ブロック18は、それぞれ下部外筒12と同軸的に配設される中間筒22、弾性体24及び内筒金具26等から構成されている。
【0021】
この弾性体ブロック18を構成している中間筒22の軸方向中央部よりも上側部分は下部外筒12の大径部12Aと嵌合される嵌合部22Aとされており、中間筒22の下部側は、嵌合部22Aよりも径の小さい小径部22Bとされている。なお、中間筒22は、嵌合部22Aと小径部22Bと間の段部が下部外筒12の大径部12Aと小径部12Cとの間の段部に当接して、中間筒22が下部外筒12内で位置決めされている。
【0022】
また、内筒金具26は、平面状であって小円形の底部30Aを有し且つ内筒金具26の基端側を構成する円板状のフランジ部30及び、上端面が底部30Aに溶接されて固着されているパイプ状に形成された円筒部28から構成されている。
【0023】
この円筒部28の内周側には雌ねじ28Aが形成されており、内筒金具26の図1上、下側となる先端側が、下部外筒12の円孔12Eから下方へ突出している。また、円筒部28と接合されるフランジ部30の底部30Aの外周側には、上方へ行くに従って径が拡大される管状部であるテーパ部30Bが連続的に形成されており、さらにテーパ部30Bの上端には、半径方向外側へ延びるリング状の支持部30Cが形成されている。
【0024】
この支持部30C上には、複数の孔部75が穿設された中央部を下側に突出して形成された円板状であって金属製の規制板74が配置されている。また、この規制板74の上側には、中央部が上側に突出するように形成された円板状であって金属製の挟持板76が位置しており、管状に上側に延びる管状部76Aがこの挟持板76の中央部に形成されている。
【0025】
そして、規制板74と挟持板76との間には、同じく円板状に形成されたゴム製のダイヤフラム78が配置されていて、規制板74及び挟持板76の外周側部分にこのダイヤフラム78の外周側部分が全周にわたって挟持されている。従って、このダイヤフラム78が固定されると共にダイヤフラム78によりダイヤフラム78の上下の空間が隔離されている。
【0026】
さらに、外周側が屈曲された支持部30Cにより、これら規制板74、挟持板76及びダイヤフラム78の外周側部分がかしめられて、フランジ部30に規制板74、挟持板76及びダイヤフラム78が固着されている。
【0027】
一方、弾性体24はゴム製であってリング状に形成され、内筒金具26と中間筒22との間に配設されて、外周が中間筒22のほぼ内周面全域にわたって加硫接着されており、内周がフランジ部30の外周面及び円筒部28の外周面の略上半分へ加硫接着されている。
【0028】
他方、図1及び図2に示すように、下部外筒12の下方側であって下部外筒12の底部12Bに対向した位置には、取付金具60が配設されている。この取付金具60は、金属の角パイプ62の外周に厚肉のゴム製の弾性体64を加硫接着したものであり、角パイプ62の軸方向は下部外筒12の軸線方向と直交するような方向とされている。
【0029】
角パイプ62内には、鉄鋳物等で形成された取付アーム66の基端側を構成する角柱部66Aが挿入されている。そして、角パイプ62の下壁には孔62Aが形成され、角パイプ62の上壁に孔62Bが形成されており、角柱部66Aにはボルト孔65が形成されている。
【0030】
従って、角パイプ62の下壁に形成された孔62A、角柱部66Aに形成されたボルト孔65及び角パイプ62の上壁に形成された孔62Bをそれぞれ下方からボルト67が挿通しており、円筒部28の雌ねじ28Aにこのボルト67が螺合されて、取付アーム66が内筒金具26に固定される。
【0031】
また、取付アーム66の先端側には取付部66Bが形成されており、振動発生部となるエンジン(図示せず)に連結するための複数個のボルト孔68がこの取付部66Bに形成されている。
【0032】
この一方、図1に示すように、下端側が下部外筒12の上端側にかしめられて下部外筒12と密接して、この下部外筒12とで外筒を構成する略円管形状の上部外筒20が、弾性体ブロック18の上側を囲むように配設されている。
【0033】
この上部外筒20の上部側には、上部外筒20の上部側を覆うように薄肉のゴムで形成された第1の弾性膜であるダイヤフラム44が配設されており、この上部外筒20の内外壁面には、ダイヤフラム44から延びる薄肉のゴム材が加硫接着されている。
【0034】
さらに、ダイヤフラム44の上側には、薄肉の金属板で形成されたダイヤフラムカバー46がダイヤフラム44を保護するために配設されている。このダイヤフラムカバー46の中央部は上方へ向かって凸部が形成されており、また、ダイヤフラムカバー46の外周縁部46Aが上部外筒20の外周側にかしめられている。なお、ダイヤフラムカバー46とダイヤフラム44との間は、空気室47とされていて、ダイヤフラムカバー46に空気室47内の空気を外部と連通させる為の孔部を適宜設けることとしてもよい。
【0035】
さらに、ダイヤフラム44の上端部の凸部回りには、板状であって幅方向両端部及び長手方向中程が強度向上の為に屈曲された形状となった補強用のステー70が、溶接等により接合されている。
【0036】
このようにダイヤフラムカバー46に固着されたステー70の他端側には、車体へのねじ止め用のボルト孔72が形成されていて、このボルト孔72に挿入されたボルト(図示せず)の車体側へのねじ止めにより、ステー70を介して上部外筒20の上端部が支持されることとなる。
【0037】
一方、金属等で筒状に形成された押さえ金具42の外周面が上部外筒20の内壁面に嵌合されると共に、この押さえ金具42の下端側が下部外筒12の上端側に上部外筒20と一体的にかしめられて、上部外筒20内に押さえ金具42が配設されている。この押さえ金具42の上端部には、複数の開口部42Bを中央部に有した円形の頂板部42Aが形成されている。そして、この開口部42Bは、弾性体ブロック18側から厚肉円板状とされたメンブランゴム40で閉塞されている。
【0038】
また、薄肉の筒状であって上部側が閉鎖されるように形成された金属製の挟持金具43が、押さえ金具42の内壁面に嵌合されて配設されている。この挟持金具43の中央部に形成された凹部43Aと押さえ金具42との間に前記のメンブランゴム40が位置していて、メンブランゴム40の外周縁部がこれらの間に挟持されて、固定されている。さらに、挟持金具43の中央近傍には孔54が形成されており、メンブランゴム40側と弾性体ブロック18側とは、この孔54を介して連通されている。
【0039】
ここで、押さえ金具42、挟持金具43及び弾性体ブロック18で囲まれる空間及び、挟持金具43とメンブランゴム40とで囲まれる空間が受圧液室57とされ、押さえ金具42、メンブランゴム40及びダイヤフラム44で囲まれる空間が第1の副液室59とされている。
【0040】
他方、挟持金具43の上側外周部には、挟持金具43の約半周にわたって通路用凹部43Bが形成されており、挟持金具43の通路用凹部43Bと押さえ金具42とに囲まれる空間は、第1の通路を構成するオリフィスである制限通路48とされている。そして、挟持金具43の底部に形成された貫通孔50によって受圧液室57と制限通路48とが連通している。また、押さえ金具42には、防振装置10の軸線を挟んで貫通孔50と反対側に貫通孔52が形成されており、制限通路48はこの貫通孔52を介して第1の副液室59と連通している。したがって、受圧液室57と第1の副液室59とは、制限通路48を介して常に連通している。
【0041】
以上より、挟持板76の上側に突出した中央部とダイヤフラム78の上面との間に形成される空間が第2の副液室80となり、この第2の副液室80と受圧液室57との間が管状部76Aの内周面により形成される第2の通路であってオリフィスである制限通路82により、連通されて繋がっている。
【0042】
そして、この制限通路82は、図1に示されるように、制限通路48より通路長さを短くされると共に通路断面積を大きくされるように、形成されている。この為、制限通路82は、液体の抵抗が制限通路48より小さいことになる。
【0043】
また、規制板74の下面側とフランジ部30の上面側とで区画される空間は空気室84となっていて、規制板74に形成された孔部75により、ダイヤフラム78の下面と規制板74の突出した中央部とで区画された空間と、この空気室84とが連通されている。従って、空気室84は大きな体積を有する為、ダイヤフラム78の変形によっても僅かな気圧変動しか生ぜず、ダイヤフラム78の弾性変形を妨げることはない。また、ダイヤフラム78の変形が大きくなった場合には、規制板74によりダイヤフラム78の変形が規制される為、ダイヤフラム78の変形が一定の範囲に抑えられることになる。
【0044】
尚、この第2の弾性膜を構成するダイヤフラム78は、ダイヤフラム44より肉厚に形成されているので、ダイヤフラム44より剛性が高く、また、メンブランゴム40より肉薄に形成されているので、メンブランゴム40より剛性が低いように構成されている。一方、上記受圧液室57、第1の副液室59、第2の副液室80及び制限通路48、82内には、水、シリコンオイル、エチングリコール等の液体が充填されている。
【0045】
次に本実施例の組立を説明する。
この防振装置10の組立に際しては、図1及び図2に示すように、まず取付脚14が固着された状態の下部外筒12内に、規制板74、挟持板76及びダイヤフラム78等を上部に取り付けた弾性体ブロック18を挿入して、内周面側に弾性体24を介して内筒金具26が取り付けられた状態とする。
【0046】
そして、内筒金具26の先端側を構成する円筒部28の下部に、取付金具60及び取付アーム66をボルト67の雌ねじ28Aへのねじ込みにより、ねじ止める。
【0047】
その後、図1に示すように、挟持金具43との間でメンブランゴム40が挟持された押さえ金具42、ダイヤフラム44を加硫接着した上部外筒20及び、ステー70が溶接により接合されたダイヤフラムカバー46を順に、下部外筒12の上部に組付けて、上部外筒20及び押さえ金具42の下端側を下部外筒12側にかしめ加工する。
【0048】
なお、上部外筒20、押さえ金具42、ダイヤフラムカバー46及び下部外筒12等の組立を液体中で行うことによって、防振装置10内に液体を充填してもよく、組立て後に、上部外筒20に形成した液体充填用の孔(図示せず)から注入するようにしてもよい。
【0049】
さらに、本実施例の防振装置10は、取付脚14及びステー70をそれぞれボルトによって自動車の車体へ連結し、取付アーム66をエンジンに連結するような、つり下げ形式となっている。従って、防振装置10の自動車内への装着に際して、内筒金具26がエンジンの荷重を受けると、弾性体24が圧縮変形され、内筒金具26が図1の状態よりも下方へ移動して、取付金具60が下部外筒12の底部12Bから所定寸法離間する。
【0050】
次に本実施例の作用を説明する。
エンジンが振動を発生させてエンジンからの振動が取付アーム66を介して内筒金具26に伝達されると、弾性体24が変形して振動を吸収することにより振動が減衰され、下部外筒12に連結される車体側に伝達される振動が小さくなるが、さらに、受圧液室57、第1の副液室59、第2の副液室80及び制限通路48、82等により、以下のように作用する。
【0051】
つまり、エンジンが発生させた振動が、10Hz近辺の例えばエンジンのシェイク振動等の低周波数の振動の場合には、弾性体24の変形に伴って受圧液室57が拡縮し、これに合わせて制限通路48内を液体が流通して、制限通路48を介して受圧液室57と繋がる第1の副液室59がダイヤフラム44の変形により拡縮する。この為、液体が制限通路48を介して主液室57と第1の副液室59との間を行き来し、液体流動の粘性抵抗及び液柱共振に基づく減衰作用で、大きな減衰力を発生することにより低周波数の振動が吸収され、図3に示すように、10Hz近辺のtanδが高まって、防振効果を向上することができる。
【0052】
さらに、エンジンが発生させた振動が、30Hz近辺の例えばアイドリング振動等の高周波数の振動の場合には、制限通路48は目詰まり状態となるが、制限通路48より抵抗の小さい制限通路82内を液体が流通する。そして、制限通路82を介して受圧液室57と繋がる第2の副液室80がダイヤフラム78の変形により拡縮するので、図3の点線で示す従来技術の防振装置110と比較して、実線で示すように30Hz近辺の動ばね係数Kdが低下し、振動が減衰されて防振効果を向上することができる。この結果、アイドリング時における振動や音が小さくなる。
【0053】
一方、本実施例によれば、受圧液室57及び第1の副液室59と並んで、下部外筒12と上部外筒20とで区画する空間内に配設されるように、第2の副液室80が内筒金具26に形成されているので、外筒内の他の部分に別途第2の副液室を形成する必要がなくなり、防振装置10をより小型化することが可能となる。また、受圧液室57に対して相対的に変位する内筒金具26に、制限通路82及び第2の副液室80が形成されているので、高周波数の振動が伝達された際には、制限通路82及び第2の副液室80が受圧液室57内で上下動して、制限通路82の上部側より一層積極的に液体を取り込むことになり、受圧液室57と第2の副液室80との間で液体が積極的に流通することになる。
【0054】
他方、ダイヤフラム78はダイヤフラム44より高剛性に形成されているので、一般に大きな振幅を伴うことになる低周波数の振動が伝達された際には、ダイヤフラム78が変形せず、積極的に第1の副液室59側に液体が流通して制限通路48及び第1の副液室59による効果を低減させることがない。
【0055】
次に、本発明の第2実施例に係る防振装置を図4に示し、この図に基づき本実施例を説明する。尚、第1実施例において説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0056】
図4に示すように、本実施例に係るフランジ部30の支持部30C上には、第1実施例と同様の規制板74及びダイヤフラム78が位置しているが、第1実施例で採用された挟持板76の替わりに、例えば合成樹脂製の挟持板90が配置されている。
【0057】
この挟持板90は、下側の外周部分にリング状に突出して肉厚に形成された通路形成部90Aを有した円板状に形成されており、この通路形成部90Aの外周面に約半周にわたって溝部92が形成されている。
【0058】
そして、この挟持板90の通路形成部90Aが規制板74の外周側部分とで、ダイヤフラム78の外周側部分を挟持しつつ、支持部30Cによりかしめられた際に、第2の通路となる制限通路94が溝部92及び支持部30Cにより形成されることになる。
【0059】
さらに、この溝部92の一端側には、受圧液室57側に連通される孔部98が形成されており、また、溝部92の他端側には、挟持板90の下面側とダイヤフラム78の上面側との間に位置する第2の副圧液室96側に連通される孔部99が形成されている。従って、制限通路94及び孔部98、99により受圧液室57と第2の副圧液室96との間が繋がることになる。
【0060】
尚、図4に示されるように、本実施例の制限通路94は、制限通路48と同様に細長く形成されているが、その断面積は制限通路48より大きくされている。
【0061】
以上より、本実施例に係る防振装置10は、第1本実施例と同様な作用、効果を奏することになるが、第1実施例の制限通路82より通路の長さを長くした為、第1本実施例より30Hz近辺の動ばね係数Kdがさらに低下することになる。
【0062】
尚、上記実施例において、ゴム製のメンブランゴム40で受圧液室57と第1の副圧液室57とを仕切ったが、この替わりに単に金属製の壁で仕切ってもよい。
【0063】
また、上記実施例において、振動発生部となるエンジン側に内筒金具26を連結し、振動受け部となる車体側に外筒を連結するような構成としたが、この逆の構成としても良い。尚、この場合には、防振装置10の上下を図1と逆向きにして、防振装置10を装着することが考えられる。
【0064】
他方、実施例において、自動車に搭載されるエンジンの防振を目的としたが、本発明の防振装置は例えば自動車のボディマウント等、あるいは自動車以外の他の用途にも用いられることはいうまでもなく、また、弾性体、弾性膜等の形状、寸法なども実施例のものに限定されるものではない。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の防振装置は上記構成としたので、広範囲な周波数帯域の振動に対応して、振動を減衰することができるという優れた効果をも有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る防振装置の断面図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る防振装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る防振装置による特性を表すグラフを示す図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る防振装置の断面図である。
【図5】従来技術の防振装置の断面図である。
【符号の説明】
10 防振装置
12 下部外筒(外筒)
20 上部外筒(外筒)
24 弾性体
26 内筒金具(内筒)
57 受圧液室
59 第1の副液室
78 ダイヤフラム(第2の弾性膜)
80 第2の副液室
82 制限通路(第2の通路)
【産業上の利用分野】
本発明は、振動発生部からの振動を吸収する防振装置に関し、例えば自動車、一般産業用機械等に適用可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、外筒内にゴム等で形成された弾性体を介して内筒が取り付けられると共に複数の液室を内蔵し、エンジンへこの内筒の下端部が連結されるような構造の防振装置が知られている。このような防振装置では、内筒の外周側に弾性体が加硫接着されていて、エンジンの振動により生じる内筒の軸方向に沿った変位に伴って、弾性体の内周側が変位するようになっている。
【0003】
例えば、この種の防振装置の一例として、図5に示されるようなものが知られており、この図に基づき従来技術を説明する。
【0004】
この図に示すように、この防振装置110は、内筒112と外筒114とをゴムなどの弾性体116で連結し、この弾性体116にてエンジンの重量を支持する構造となっている。つまり、内筒112の下端部に螺合されたボルト122により、エンジンに繋がる取付アーム120と内筒112とが連結されると共に、外筒114の下部に取り付けられたブラケット134で外筒114が車体側に連結される形となっている。
【0005】
さらに、この外筒114、ダイヤフラム118及び弾性体116で区画された空間で液室130を形成している。そして、弾性材料124を挟みつつ仕切部材126と仕切部材128とを合わせることによって、前記液室130内を区切って一対の液室130A、130Bを形成すると共にこれら液室130A、130B間を連結する制限通路132を形成する。
【0006】
従って、この防振装置110では、内外筒間の上下方向への相対変位に伴って、制限通路132内を液体が行き来し、液柱共振により振動が減衰され、10Hz近辺の例えばエンジンのシェイク振動等を抑えることが可能となる。
【0007】
しかし、エンジンでさらに高周波数の振動が発生した場合、10Hz近辺で液柱共振した制限通路132が目詰まり状態となり、アイドリング振動領域(例えば30Hz近辺の周波数)での動ばね係数Kdが高まって、アイドリング時における振動や音が大きくなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、従来の防振装置では、広範囲な周波数帯域の振動に対応して、振動を減衰することができないという欠点を有していた。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、広範囲な周波数帯域の振動に対応して、振動を減衰することができる防振装置を提供することが目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明による防振装置は、振動発生部及び振動受け部の一方に連結される筒状の外筒と、
前記外筒の内側に基端側が位置し且つ振動発生部及び振動受け部の他方に連結される内筒と、
前記内筒と前記外筒とを連結するように前記内筒と前記外筒との間に配設されて弾性変形により前記内筒と前記外筒とを相対変位可能とする弾性体と、
前記弾性体を隔壁の少なくとも一部として拡縮可能とされ且つ液体が充填される受圧液室と、
前記受圧液室と隔離されて前記外筒内に配設され且つ前記受圧液室と第1の通路によって繋がれると共に弾性変形可能な第1の弾性膜を隔壁の一部とした第1の副液室と、
前記受圧液室及び前記第1の副液室と並んで前記外筒の内部に配設されるように前記内筒の基端側に形成される第2の副液室と、
前記内筒の基端側に形成され且つ前記受圧液室と前記第2の副液室との間を繋ぐと共に第1の通路より抵抗が小さい第2の通路と、
前記第2の副液室の隔壁の一部とされ且つ弾性変形可能であって前記第1の弾性膜より高剛性の第2の弾性膜と、
前記第2の弾性膜を介して前記第2の副液室と隣接するように前記内筒の内部に設けられた空気室と、
を有したことを特徴とする。
【0011】
【作用】
請求項1に係る防振装置の作用を以下に説明する。
【0012】
振動発生部が振動を発生させた場合、外筒あるいは内筒を介して振動が弾性体に伝達され、弾性体の変形により振動が吸収されて内筒あるいは外筒に連結された振動受部側に振動が伝達され難くなる。
【0013】
これに合わせて、振動発生部が発生させた振動が低周波数の振動の場合には、弾性体の変形に伴って受圧液室が拡縮し、これに伴って第1の通路内を液体が流通する。そして、第1の通路を介して受圧液室と繋がる第1の副液室が第1の弾性膜の変形により拡縮するので、液体流動の粘性抵抗及び液柱共振に基づく減衰作用で、防振効果を向上することができる。
【0014】
さらに、振動発生部が発生させた振動が高周波数の振動の場合には、第1の通路は目詰まり状態となるが、第1の通路より抵抗の小さい第2の通路内を液体が流通する。そして、第2の通路を介して受圧液室と繋がる第2の副液室が第2の弾性膜の変形により拡縮するので、低動ばねとなって振動が減衰されて、防振効果を向上することができる。
【0015】
一方、本請求項によれば、第2の副液室が、受圧液室及び第1の副液室と並んで外筒の内部に配設されるように内筒の基端側に形成されると共に、空気室が第2の弾性膜を介して第2の副液室と隣接するように内筒の内部に設けられているので、外筒の内部における他の部分に別途第2の副液室及び空気室を形成する必要がなくなり、防振装置をより小型化することが可能となる。また、受圧液室に対して相対的に変位する内筒に、第2の通路及び第2の副液室が形成されているので、高周波数の振動が伝達された際に、より積極的に第2の通路を介して受圧液室と第2の副液室との間で液体が流通することになる。
【0016】
他方、第2の弾性膜は第1の弾性膜より高剛性に形成されているので、一般に大きな振幅を伴うことになる低周波数の振動が伝達された際には、第2の弾性膜が変形せず、積極的に第1の副液室側に液体が流通することになる。
【0017】
【実施例】
本発明の第1実施例に係る防振装置を図1から図3までに示し、これらの図に基づき本実施例を説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施例の防振装置10は、一例として振動受け部としての自動車の車体側へ連結される下部外筒12を備えている。この下部外筒12は円筒状とされ、上部側は一定の径に形成された大径部12Aとされており、下部側には、段部を介して、大径部12Aより小径の小径部12Cが設けられている。この小径部12Cの下端部には、この下端部側を覆う底部12Bが形成され、この底部12Bの中心部に円形の円孔12Eが形成されている。
【0019】
また、外筒の一端側である下端側を構成するこの小径部12Cには、下部外筒12を車体へ取り付けるための略L字形の取付脚14が一対固着されており、これら取付脚14には、図示しない取付ボルトを挿通するボルト孔16がそれぞれ形成されている。
【0020】
この下部外筒12の内部には、弾性体ブロック18が配設されている。図1に示すように、弾性体ブロック18は、それぞれ下部外筒12と同軸的に配設される中間筒22、弾性体24及び内筒金具26等から構成されている。
【0021】
この弾性体ブロック18を構成している中間筒22の軸方向中央部よりも上側部分は下部外筒12の大径部12Aと嵌合される嵌合部22Aとされており、中間筒22の下部側は、嵌合部22Aよりも径の小さい小径部22Bとされている。なお、中間筒22は、嵌合部22Aと小径部22Bと間の段部が下部外筒12の大径部12Aと小径部12Cとの間の段部に当接して、中間筒22が下部外筒12内で位置決めされている。
【0022】
また、内筒金具26は、平面状であって小円形の底部30Aを有し且つ内筒金具26の基端側を構成する円板状のフランジ部30及び、上端面が底部30Aに溶接されて固着されているパイプ状に形成された円筒部28から構成されている。
【0023】
この円筒部28の内周側には雌ねじ28Aが形成されており、内筒金具26の図1上、下側となる先端側が、下部外筒12の円孔12Eから下方へ突出している。また、円筒部28と接合されるフランジ部30の底部30Aの外周側には、上方へ行くに従って径が拡大される管状部であるテーパ部30Bが連続的に形成されており、さらにテーパ部30Bの上端には、半径方向外側へ延びるリング状の支持部30Cが形成されている。
【0024】
この支持部30C上には、複数の孔部75が穿設された中央部を下側に突出して形成された円板状であって金属製の規制板74が配置されている。また、この規制板74の上側には、中央部が上側に突出するように形成された円板状であって金属製の挟持板76が位置しており、管状に上側に延びる管状部76Aがこの挟持板76の中央部に形成されている。
【0025】
そして、規制板74と挟持板76との間には、同じく円板状に形成されたゴム製のダイヤフラム78が配置されていて、規制板74及び挟持板76の外周側部分にこのダイヤフラム78の外周側部分が全周にわたって挟持されている。従って、このダイヤフラム78が固定されると共にダイヤフラム78によりダイヤフラム78の上下の空間が隔離されている。
【0026】
さらに、外周側が屈曲された支持部30Cにより、これら規制板74、挟持板76及びダイヤフラム78の外周側部分がかしめられて、フランジ部30に規制板74、挟持板76及びダイヤフラム78が固着されている。
【0027】
一方、弾性体24はゴム製であってリング状に形成され、内筒金具26と中間筒22との間に配設されて、外周が中間筒22のほぼ内周面全域にわたって加硫接着されており、内周がフランジ部30の外周面及び円筒部28の外周面の略上半分へ加硫接着されている。
【0028】
他方、図1及び図2に示すように、下部外筒12の下方側であって下部外筒12の底部12Bに対向した位置には、取付金具60が配設されている。この取付金具60は、金属の角パイプ62の外周に厚肉のゴム製の弾性体64を加硫接着したものであり、角パイプ62の軸方向は下部外筒12の軸線方向と直交するような方向とされている。
【0029】
角パイプ62内には、鉄鋳物等で形成された取付アーム66の基端側を構成する角柱部66Aが挿入されている。そして、角パイプ62の下壁には孔62Aが形成され、角パイプ62の上壁に孔62Bが形成されており、角柱部66Aにはボルト孔65が形成されている。
【0030】
従って、角パイプ62の下壁に形成された孔62A、角柱部66Aに形成されたボルト孔65及び角パイプ62の上壁に形成された孔62Bをそれぞれ下方からボルト67が挿通しており、円筒部28の雌ねじ28Aにこのボルト67が螺合されて、取付アーム66が内筒金具26に固定される。
【0031】
また、取付アーム66の先端側には取付部66Bが形成されており、振動発生部となるエンジン(図示せず)に連結するための複数個のボルト孔68がこの取付部66Bに形成されている。
【0032】
この一方、図1に示すように、下端側が下部外筒12の上端側にかしめられて下部外筒12と密接して、この下部外筒12とで外筒を構成する略円管形状の上部外筒20が、弾性体ブロック18の上側を囲むように配設されている。
【0033】
この上部外筒20の上部側には、上部外筒20の上部側を覆うように薄肉のゴムで形成された第1の弾性膜であるダイヤフラム44が配設されており、この上部外筒20の内外壁面には、ダイヤフラム44から延びる薄肉のゴム材が加硫接着されている。
【0034】
さらに、ダイヤフラム44の上側には、薄肉の金属板で形成されたダイヤフラムカバー46がダイヤフラム44を保護するために配設されている。このダイヤフラムカバー46の中央部は上方へ向かって凸部が形成されており、また、ダイヤフラムカバー46の外周縁部46Aが上部外筒20の外周側にかしめられている。なお、ダイヤフラムカバー46とダイヤフラム44との間は、空気室47とされていて、ダイヤフラムカバー46に空気室47内の空気を外部と連通させる為の孔部を適宜設けることとしてもよい。
【0035】
さらに、ダイヤフラム44の上端部の凸部回りには、板状であって幅方向両端部及び長手方向中程が強度向上の為に屈曲された形状となった補強用のステー70が、溶接等により接合されている。
【0036】
このようにダイヤフラムカバー46に固着されたステー70の他端側には、車体へのねじ止め用のボルト孔72が形成されていて、このボルト孔72に挿入されたボルト(図示せず)の車体側へのねじ止めにより、ステー70を介して上部外筒20の上端部が支持されることとなる。
【0037】
一方、金属等で筒状に形成された押さえ金具42の外周面が上部外筒20の内壁面に嵌合されると共に、この押さえ金具42の下端側が下部外筒12の上端側に上部外筒20と一体的にかしめられて、上部外筒20内に押さえ金具42が配設されている。この押さえ金具42の上端部には、複数の開口部42Bを中央部に有した円形の頂板部42Aが形成されている。そして、この開口部42Bは、弾性体ブロック18側から厚肉円板状とされたメンブランゴム40で閉塞されている。
【0038】
また、薄肉の筒状であって上部側が閉鎖されるように形成された金属製の挟持金具43が、押さえ金具42の内壁面に嵌合されて配設されている。この挟持金具43の中央部に形成された凹部43Aと押さえ金具42との間に前記のメンブランゴム40が位置していて、メンブランゴム40の外周縁部がこれらの間に挟持されて、固定されている。さらに、挟持金具43の中央近傍には孔54が形成されており、メンブランゴム40側と弾性体ブロック18側とは、この孔54を介して連通されている。
【0039】
ここで、押さえ金具42、挟持金具43及び弾性体ブロック18で囲まれる空間及び、挟持金具43とメンブランゴム40とで囲まれる空間が受圧液室57とされ、押さえ金具42、メンブランゴム40及びダイヤフラム44で囲まれる空間が第1の副液室59とされている。
【0040】
他方、挟持金具43の上側外周部には、挟持金具43の約半周にわたって通路用凹部43Bが形成されており、挟持金具43の通路用凹部43Bと押さえ金具42とに囲まれる空間は、第1の通路を構成するオリフィスである制限通路48とされている。そして、挟持金具43の底部に形成された貫通孔50によって受圧液室57と制限通路48とが連通している。また、押さえ金具42には、防振装置10の軸線を挟んで貫通孔50と反対側に貫通孔52が形成されており、制限通路48はこの貫通孔52を介して第1の副液室59と連通している。したがって、受圧液室57と第1の副液室59とは、制限通路48を介して常に連通している。
【0041】
以上より、挟持板76の上側に突出した中央部とダイヤフラム78の上面との間に形成される空間が第2の副液室80となり、この第2の副液室80と受圧液室57との間が管状部76Aの内周面により形成される第2の通路であってオリフィスである制限通路82により、連通されて繋がっている。
【0042】
そして、この制限通路82は、図1に示されるように、制限通路48より通路長さを短くされると共に通路断面積を大きくされるように、形成されている。この為、制限通路82は、液体の抵抗が制限通路48より小さいことになる。
【0043】
また、規制板74の下面側とフランジ部30の上面側とで区画される空間は空気室84となっていて、規制板74に形成された孔部75により、ダイヤフラム78の下面と規制板74の突出した中央部とで区画された空間と、この空気室84とが連通されている。従って、空気室84は大きな体積を有する為、ダイヤフラム78の変形によっても僅かな気圧変動しか生ぜず、ダイヤフラム78の弾性変形を妨げることはない。また、ダイヤフラム78の変形が大きくなった場合には、規制板74によりダイヤフラム78の変形が規制される為、ダイヤフラム78の変形が一定の範囲に抑えられることになる。
【0044】
尚、この第2の弾性膜を構成するダイヤフラム78は、ダイヤフラム44より肉厚に形成されているので、ダイヤフラム44より剛性が高く、また、メンブランゴム40より肉薄に形成されているので、メンブランゴム40より剛性が低いように構成されている。一方、上記受圧液室57、第1の副液室59、第2の副液室80及び制限通路48、82内には、水、シリコンオイル、エチングリコール等の液体が充填されている。
【0045】
次に本実施例の組立を説明する。
この防振装置10の組立に際しては、図1及び図2に示すように、まず取付脚14が固着された状態の下部外筒12内に、規制板74、挟持板76及びダイヤフラム78等を上部に取り付けた弾性体ブロック18を挿入して、内周面側に弾性体24を介して内筒金具26が取り付けられた状態とする。
【0046】
そして、内筒金具26の先端側を構成する円筒部28の下部に、取付金具60及び取付アーム66をボルト67の雌ねじ28Aへのねじ込みにより、ねじ止める。
【0047】
その後、図1に示すように、挟持金具43との間でメンブランゴム40が挟持された押さえ金具42、ダイヤフラム44を加硫接着した上部外筒20及び、ステー70が溶接により接合されたダイヤフラムカバー46を順に、下部外筒12の上部に組付けて、上部外筒20及び押さえ金具42の下端側を下部外筒12側にかしめ加工する。
【0048】
なお、上部外筒20、押さえ金具42、ダイヤフラムカバー46及び下部外筒12等の組立を液体中で行うことによって、防振装置10内に液体を充填してもよく、組立て後に、上部外筒20に形成した液体充填用の孔(図示せず)から注入するようにしてもよい。
【0049】
さらに、本実施例の防振装置10は、取付脚14及びステー70をそれぞれボルトによって自動車の車体へ連結し、取付アーム66をエンジンに連結するような、つり下げ形式となっている。従って、防振装置10の自動車内への装着に際して、内筒金具26がエンジンの荷重を受けると、弾性体24が圧縮変形され、内筒金具26が図1の状態よりも下方へ移動して、取付金具60が下部外筒12の底部12Bから所定寸法離間する。
【0050】
次に本実施例の作用を説明する。
エンジンが振動を発生させてエンジンからの振動が取付アーム66を介して内筒金具26に伝達されると、弾性体24が変形して振動を吸収することにより振動が減衰され、下部外筒12に連結される車体側に伝達される振動が小さくなるが、さらに、受圧液室57、第1の副液室59、第2の副液室80及び制限通路48、82等により、以下のように作用する。
【0051】
つまり、エンジンが発生させた振動が、10Hz近辺の例えばエンジンのシェイク振動等の低周波数の振動の場合には、弾性体24の変形に伴って受圧液室57が拡縮し、これに合わせて制限通路48内を液体が流通して、制限通路48を介して受圧液室57と繋がる第1の副液室59がダイヤフラム44の変形により拡縮する。この為、液体が制限通路48を介して主液室57と第1の副液室59との間を行き来し、液体流動の粘性抵抗及び液柱共振に基づく減衰作用で、大きな減衰力を発生することにより低周波数の振動が吸収され、図3に示すように、10Hz近辺のtanδが高まって、防振効果を向上することができる。
【0052】
さらに、エンジンが発生させた振動が、30Hz近辺の例えばアイドリング振動等の高周波数の振動の場合には、制限通路48は目詰まり状態となるが、制限通路48より抵抗の小さい制限通路82内を液体が流通する。そして、制限通路82を介して受圧液室57と繋がる第2の副液室80がダイヤフラム78の変形により拡縮するので、図3の点線で示す従来技術の防振装置110と比較して、実線で示すように30Hz近辺の動ばね係数Kdが低下し、振動が減衰されて防振効果を向上することができる。この結果、アイドリング時における振動や音が小さくなる。
【0053】
一方、本実施例によれば、受圧液室57及び第1の副液室59と並んで、下部外筒12と上部外筒20とで区画する空間内に配設されるように、第2の副液室80が内筒金具26に形成されているので、外筒内の他の部分に別途第2の副液室を形成する必要がなくなり、防振装置10をより小型化することが可能となる。また、受圧液室57に対して相対的に変位する内筒金具26に、制限通路82及び第2の副液室80が形成されているので、高周波数の振動が伝達された際には、制限通路82及び第2の副液室80が受圧液室57内で上下動して、制限通路82の上部側より一層積極的に液体を取り込むことになり、受圧液室57と第2の副液室80との間で液体が積極的に流通することになる。
【0054】
他方、ダイヤフラム78はダイヤフラム44より高剛性に形成されているので、一般に大きな振幅を伴うことになる低周波数の振動が伝達された際には、ダイヤフラム78が変形せず、積極的に第1の副液室59側に液体が流通して制限通路48及び第1の副液室59による効果を低減させることがない。
【0055】
次に、本発明の第2実施例に係る防振装置を図4に示し、この図に基づき本実施例を説明する。尚、第1実施例において説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0056】
図4に示すように、本実施例に係るフランジ部30の支持部30C上には、第1実施例と同様の規制板74及びダイヤフラム78が位置しているが、第1実施例で採用された挟持板76の替わりに、例えば合成樹脂製の挟持板90が配置されている。
【0057】
この挟持板90は、下側の外周部分にリング状に突出して肉厚に形成された通路形成部90Aを有した円板状に形成されており、この通路形成部90Aの外周面に約半周にわたって溝部92が形成されている。
【0058】
そして、この挟持板90の通路形成部90Aが規制板74の外周側部分とで、ダイヤフラム78の外周側部分を挟持しつつ、支持部30Cによりかしめられた際に、第2の通路となる制限通路94が溝部92及び支持部30Cにより形成されることになる。
【0059】
さらに、この溝部92の一端側には、受圧液室57側に連通される孔部98が形成されており、また、溝部92の他端側には、挟持板90の下面側とダイヤフラム78の上面側との間に位置する第2の副圧液室96側に連通される孔部99が形成されている。従って、制限通路94及び孔部98、99により受圧液室57と第2の副圧液室96との間が繋がることになる。
【0060】
尚、図4に示されるように、本実施例の制限通路94は、制限通路48と同様に細長く形成されているが、その断面積は制限通路48より大きくされている。
【0061】
以上より、本実施例に係る防振装置10は、第1本実施例と同様な作用、効果を奏することになるが、第1実施例の制限通路82より通路の長さを長くした為、第1本実施例より30Hz近辺の動ばね係数Kdがさらに低下することになる。
【0062】
尚、上記実施例において、ゴム製のメンブランゴム40で受圧液室57と第1の副圧液室57とを仕切ったが、この替わりに単に金属製の壁で仕切ってもよい。
【0063】
また、上記実施例において、振動発生部となるエンジン側に内筒金具26を連結し、振動受け部となる車体側に外筒を連結するような構成としたが、この逆の構成としても良い。尚、この場合には、防振装置10の上下を図1と逆向きにして、防振装置10を装着することが考えられる。
【0064】
他方、実施例において、自動車に搭載されるエンジンの防振を目的としたが、本発明の防振装置は例えば自動車のボディマウント等、あるいは自動車以外の他の用途にも用いられることはいうまでもなく、また、弾性体、弾性膜等の形状、寸法なども実施例のものに限定されるものではない。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の防振装置は上記構成としたので、広範囲な周波数帯域の振動に対応して、振動を減衰することができるという優れた効果をも有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る防振装置の断面図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る防振装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る防振装置による特性を表すグラフを示す図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る防振装置の断面図である。
【図5】従来技術の防振装置の断面図である。
【符号の説明】
10 防振装置
12 下部外筒(外筒)
20 上部外筒(外筒)
24 弾性体
26 内筒金具(内筒)
57 受圧液室
59 第1の副液室
78 ダイヤフラム(第2の弾性膜)
80 第2の副液室
82 制限通路(第2の通路)
Claims (1)
- 振動発生部及び振動受け部の一方に連結される筒状の外筒と、
前記外筒の内側に基端側が位置し且つ振動発生部及び振動受け部の他方に連結される内筒と、
前記内筒と前記外筒とを連結するように前記内筒と前記外筒との間に配設されて弾性変形により前記内筒と前記外筒とを相対変位可能とする弾性体と、
前記弾性体を隔壁の少なくとも一部として拡縮可能とされ且つ液体が充填される受圧液室と、
前記受圧液室と隔離されて前記外筒内に配設され且つ前記受圧液室と第1の通路によって繋がれると共に弾性変形可能な第1の弾性膜を隔壁の一部とした第1の副液室と、
前記受圧液室及び前記第1の副液室と並んで前記外筒の内部に配設されるように前記内筒の基端側に形成される第2の副液室と、
前記内筒の基端側に形成され且つ前記受圧液室と前記第2の副液室との間を繋ぐと共に第1の通路より抵抗が小さい第2の通路と、
前記第2の副液室の隔壁の一部とされ且つ弾性変形可能であって前記第1の弾性膜より高剛性の第2の弾性膜と、
前記第2の弾性膜を介して前記第2の副液室と隣接するように前記内筒の内部に設けられた空気室と、
を有したことを特徴とする防振装置。
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JP (1) | JP3545474B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP5653698B2 (ja) * | 2010-09-24 | 2015-01-14 | 株式会社ブリヂストン | 防振装置、及び、防振装置用ブラケット |
-
1994
- 1994-12-27 JP JP32582094A patent/JP3545474B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08177955A (ja) | 1996-07-12 |
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