JP3539725B2 - 電気ポット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流量センサを備えた電気ポットに関し、詳しくは、流量センサを用いて給湯量の自動制御を行う他に各種付加機能を備えた電気ポットに関する。
【0002】
【従来の技術】
電気ヒータによって飲料用、調理用等の湯を沸かし、保温する電気ポットは広く一般家庭に普及している。近年は、マイクロプロセッサを用いた制御部、温度センサ等を搭載し、押ボタンスイッチや液晶表示器を含む操作パネルを備えた電気ポットが一般的である。例えば、温度センサの検出信号に基づいて制御部は、操作パネルで設定した湯温になるまで電気ヒータを加熱し、その後、保温用のヒータに切り替える自動制御を実行する。
【0003】
また、電動ポンプを内蔵し、給湯を電動で行うものが主流になって来ている。使用者は操作パネルの給湯指示ボタンを押すだけで電気ポットから所定の容器に給湯することができる。この場合、通常は給湯指示ボタンを押している間だけ吐出口(湯の注ぎ口)から湯が吐出され、給湯指示ボタンから指を離せば湯の吐出が停止する。このような操作パネルの操作に応じて電動ポンプを制御する処理もマイクロプロセッサを用いた制御部が実行する。
【0004】
近年、上記のようなマイクロプロセッサを用いた制御部と電動ポンプを備えた電気ポットに、定量給湯機能を付加しようとする試みが為されている(例えば特開平10−328028号参照)。つまり、操作パネルで設定した給湯量に達するまで電動ポンプによって電気ポットからお湯が吐出され、設定した給湯量に達すれば自動的に電動ポンプを停止する機能である。この機能により、計量カップ等を用いなくても適量の湯を電気ポットから得ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来は、電気ポットに適した安価で簡単な構造の流量センサが無かった。このため、例えば上記の特開平10−328028号公報に記載された電気ポットでは、電動ポンプの吐出能力(ml/sec)に電動ポンプの駆動時間(sec)を掛けて得られる値が給湯量であると推定している。実際には、湯が吐出口の近くに達してからの経過時間を計測して給湯量を求めている。
【0006】
しかし、上記の方法は、電動ポンプの吐出能力の変動や器差が大きい場合は、測定誤差が大きくなり、実用的ではない。一方、比較的正確な流量を測定することができる流量センサそのものは種々の方式のセンサがあるが、電気ポットに適したものが無く、今までのところ流量センサを用いて定量自動給湯を行う電気ポットは実用化されていない。
【0007】
そこで、本出願人は、簡単な構造で比較的精度の高い給湯量の計測を可能にする電気ポット用流量センサを開発すると共に、その各種応用例について研究した。本発明は、流量センサを利用した各種付加機能を備えた電気ポットを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による電気ポットの構成は、水を加熱するためのヒータ及びタンクと、該タンク内の水を外部へ吐出するための電動ポンプ及び吐出管と、前記水の吐出量を計測するために前記吐出管の途中に挿入された流量センサと、前記流量センサの出力信号から求めた単位時間当たりの吐出量が設定値になるように前記電動ポンプの吐出能力の制御を行う制御部とを備えた電気ポットであって、前記流量センサは、単位時間当たりのパルス数が単位時間当たりの吐出量に対応するパルス信号を出力し、前記制御部は、前記流量センサから得られるパルス信号の基本単位時間内のパルス数が設定値になるように前記電動ポンプの吐出能力の制御を行い、その際、予め前記基本単位時間として記憶された複数の値の中の1つを選択することにより、前記単位時間当たりの吐出量が段階的に変更可能であることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、タンク内の水量によって多少変化する電動ポンプの吐出能力を補正して、タンク内の水量に影響されずに常に一定の吐出量(単位時間当たりの吐出量)で給湯できるようになる。この際、単位時間当たりのパルス数の設定値を変えることによって吐出量を段階的に変更する代わりに、パルス数の設定値を変えないで基本単位時間を段階的に変更することによって単位時間当たりの吐出量を段階的に変更するので、流量制御(単位時間当たりの吐出量)が安定する効果が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る電気ポットの断面図である。この電気ポット1は、略円筒形のポット本体11の内部に、真空層を挟んだ二重ステンレススチール製のタンク12を備えている。いわゆる魔法瓶と同様の構造を有することにより、電気ヒータの通電なしに所定の湯温を一定時間保持できるように構成されている。
【0021】
タンク12の底部に形成された凹部には湯沸かし用及び保温用の電気ヒータ13が取り付けられている。また、給湯(吐出)用の開口14がタンク12の底部に設けられ、この開口14は入力管路15aによって電動ポンプ15の入力側に連通している。電動ポンプ15の出力側の管路15bは、電気ポット1の底部から上部に向かって略垂直に延びる吐出管16の基端側に接続されている。吐出管16の先端側は、流量センサ17及び転倒時の漏れ防止弁機構18を通って吐出口19に至る。吐出管16は透明のガラス管でできており、その内部の水面はポット本体11の前面11aに設けられた透明窓から視認することができる。これにより、タンク12内の水面、すなわち残湯量が分かる。
【0022】
タンク12の上部は注水口として開口しており、この開口を閉じるゴムパッキン21を備えた蓋体22が電気ポット1のポット本体11の上側に設けられている。蓋体22は、後部のヒンジロック機構23によってポット本体11に取り外し自在に枢支されると共に、前部のロック機構24によって開閉自在に構成されている。図示の電気ポット1は、電動ポンプ15による電動給湯と共に、エアポンプによる手動給湯も可能である。このために、蓋体22の中央部には押し下げ操作部25、蛇腹部材26、弁機構27,28等からなるエアポンプが設けられている。
【0023】
ポット本体11の手前側上面には、操作パネル29が設けられている。図2に示すように、操作パネル29には、表示部31と複数の押ボタン32〜36が設けられている。また、複数のLED(発光ダイオード)の表示窓37〜39が設けられている。詳しくは後述するように、電気ポット1の使用者は、操作パネル29の表示部31の表示によってタンク12内の湯温や沸き上がりまでの時間等を知ることができる。また、押ボタン32〜36を用いて給湯の指示や給湯量の設定等を行うことができる。
【0024】
操作パネル29の内側には操作パネル29の表示部31に対応する液晶表示器や押ボタン32〜36に対応するマイクロスイッチ、及び制御用のマイクロプロセッサが実装されたプリント基板(図示せず)が取り付けられている。また、電気ポット1の底部には、電源回路、駆動回路等が実装されたプリント基板(制御基板)40が取り付けられている。
【0025】
図3は、操作パネル29のプリント基板、制御基板40、その他の電気部品で構成される電気回路の主要部のブロック図である。電気回路は、マイクロプロセッサ(MPU)42、A/D変換器43、波形整形回路44、駆動回路45、ブザー46、リセット回路47、発振回路48、電源回路49、押ボタン32〜36に対応する複数のスイッチ51とスイッチ入力回路52、液晶表示器53、複数のLED54、及び表示駆動回路55等で構成されている。
【0026】
タンク12に貯えられた水(湯)の温度を検出するための温度センサ20がタンク12の外壁に取り付けられており、その検出信号はA/D変換器43でディジタル値に変換されてマイクロプロセッサ42に入力される。また、詳しくは後述するように、流量センサ17から出力されるパルス信号は、波形整形回路44を経て矩形波信号としてマイクロプロセッサ42に入力される。
【0027】
駆動回路45は、マイクロプロセッサ42からの出力信号により、電動ポンプ15及び電気ヒータ13を駆動する。駆動回路45はパワーFETのようなスイッチング素子又はリレーを用いて構成され、PWM(パルス幅変調)又はデューティ比制御により、電動ポンプ15の吐出し能力及び電気ヒータ13の加熱能力を連続的に可変制御することができる。
【0028】
ブザー46は圧電ブザーであり、マイクロプロセッサ42によって直接、又は駆動回路(図示せず)を介して駆動される。ブザー46は、湯沸かし完了等の報知音や押ボタンの操作音を発する際に鳴動する。その他、マイクロプロセッサ42のリセット回路47、クロック生成用の発振回路48、マイクロプロセッサ42や周辺回路に直流定電圧を供給するための電源回路49等の回路部品が実装されている。
【0029】
次に、流量センサ17の構造について説明する。図4は、流量センサ17の構造を示す図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。流量センサ17は、上ケース61、下ケース62、回転部材63、発光素子(LED)66が実装されたプリント基板(LED基板)64、受光素子(PD)67が実装されたプリント基板(PD基板)65、カバー部材68等で構成されている。
【0030】
上ケース61は透明樹脂で作られており、回転部材63を収容する円筒状部分と円筒状部分から突出する鍔部61aを備えている。この鍔部61aには、LED基板64及びPD基板65を固定するための突起部(図示せず)が設けられている。円筒状部分の上端側の中心(軸心)部には、軸受け部61bが形成されている。軸受け部61bは、120度間隔で設けられた3本のリブ61cによって円筒状部分に接続されている。
【0031】
下ケース62は、上ケース61の下端部の内周面に嵌合すると共に吐出管16の外周面に嵌合する段形状の断面を有する円筒状部材であり、その中心(軸心)部には、軸受け部62aが形成されている。上ケース61の軸受け部61bと同様に、3本のリブ62bによって軸受け部62aは下ケース62の内壁に接続されている。上ケース61と下ケース62とが一体となって、回転部材63を回転自在に支持する軸部材69の軸受け部61b,62aを有する本体ケースを構成している。上ケース61はLED66から出た光を透過させる必要があるので透明樹脂で作られるが、下ケース62は、透明でも不透明でもよい。
【0032】
図5は、回転部材63の構造を示す図であり、(a)は軸心方向から見た図、(b)は側面図である。回転部材63は、不透明の樹脂で作られ、軸心に沿う貫通孔HLが形成された円柱状部分63aと、その周囲に螺旋状に形成された回転羽根63b,63cからなる。2つの回転羽根63b,63cがいわば二重螺旋形状を形成している。
【0033】
図4(b)に示されるように、回転部材63の円柱状部分63aに形成された貫通孔HLに軸部材69が挿通され、軸部材69の両端部は上ケース61及び下ケース62の軸受け部61b,62aによって支持されている。これにより、回転部材63は軸心AX周りに回転自在となっている。また、上ケース61の軸受け部61bと回転部材63の先端側(円柱状部分63aの上端側)との間には金属製のワッシャ70が介装されている。
【0034】
図4及び図5から分かるように、LED基板64に実装されたLED(発光ダイオード)66とPD基板65に実装されたPD(フォトダイオード)67は、互いに向き合うように配置され、両者を結ぶ直線(光路)LTは、回転部材63の軸心AXに垂直で、かつ、軸心AXからずれた位置にある。このため、回転部材63の回転羽根63b,63cが図5(b)に示す位置にあるときは、発光素子であるLED66から出た光が透明の上ケース61を通り回転部材63の回転羽根63b,63cの隙間を通過して受光素子であるPD67に到達する(受光状態)。
【0035】
回転部材63が図5(b)に示す位置から90度回転すると、光路LTは回転羽根63b又は63cによって遮られるので、LED66から出た光はPD67に到達しない(非受光状態)。なお、図4(b)において、66aはLED基板64の配線パターンを介してLED66に接続されたLED引出し線であり、同様に67aはPD67に接続されたPD引出し線である。また、LED66(発光素子)及びPD67(受光素子)は上記のような働きにより回転部材63の回転速度を検出するための光センサを構成している。
【0036】
上記のような構造を有する流量センサ17は、図1に示すように、吐出管16の途中に挿入されている。図4(b)に示すように、流量センサ17の上ケースの先端部と吐出管16との合わせ部分の周囲は、ゴムパッキン71によって封止されている。また、下ケース62と吐出管16との嵌合部分については、同様にゴムパッキン(図示せず)で封止してもよいし、接着剤で封止してもよい。本発明の流量センサ17は、小型軽量であり、電気ポット1の本体に固定することなく、吐出管16の途中に挿入するように取り付けるだけでよい。また、吐出管16における挿入位置は、満水位より上であることが望ましい。
【0037】
図1において、電動ポンプ15が駆動されてタンク12内の水(湯)が吐出管16内を下から上へ流れると、その水が流量センサ17を通る際に螺旋形状の回転羽根63b,63c(すなわち回転部材63)を回転させる。この回転速度は、水流の速さ、すなわち単位時間あたりの流量に略比例する。また、回転羽根63b,63cが回転すると、上述のように、図5(b)の受光状態と、それから90度回転したときの非受光状態とが交互に繰り返される。この結果、図6に破線で示すように、PD67から受光レベル(例えば低レベル)と非受光レベル(例えば高レベル)とが交互に繰り返されるパルス信号72がPD67から出力される。このパルス信号72の周期(周波数)は、回転部材63の回転速度に比例している。
【0038】
図6に示すように、PD67から出力されるパルス信号(破線)72は歪んでいる(なまっている)ので、これを制御基板40の波形整形回路44によって実線73で示すような矩形波に整形してマイクロプロセッサ42に入力する。マイクロプロセッサ42は、その矩形波73の周期を内部タイマーによって計測し、単位時間あたりの流量を求める。なお、波形整形の際に使用されるしきい値Vrefは、受光レベルを0V、非受光レベルを5Vとしたとき、5Vに近い値(例えば4V)に設定される。電気ポット1を長く使用したときに上ケース61の壁面が汚れて光透過率が低下してくると、パルス信号72の低レベル側が次第に高くなるのに対して、非受光時の高レベル側はほとんど変化しないからである。
【0039】
なお、流量センサ17の筒状部分の内径は吐出管16の内径と同等であるが、その流路の断面積は軸受け部61b,62aと回転部材63の断面積分だけ吐出管16の断面積より小さくなる。その結果、流量センサ17内を流れる水流の速度が速くなり、少ない吐出量の場合も効率的に流量センサ17の回転部材63を回転させて流量を正確に計測することができる。また、流量センサ17から吐出口19に至る管路の断面積は、流量センサ17の筒状部分の流路の断面積より大きくなるように維持されている。これにより、流量センサ17を通過した水に抵抗を与えて流量センサ17の検出精度を低下させるようなことが無いようにしている。
【0040】
次に、本実施形態の電気ポット1の代表的な操作及び動作を、定量自動給湯と共に説明する。まず、図1において、蓋体22のロック機構24を解除して蓋体22を後方へ開き、タンク12内に所要量の水を入れる。蓋体22を閉じ、ロック機構24を確実にロックし、電気ポット1に接続された電気ケーブルのプラグをコンセント(アウトレット)に差し込むと、制御基板40が通電される。マイクロプロセッサ42がリセットされ、内蔵ROMに記憶されたプログラムにしたがって動作を開始する。つまり、電気ヒータ13の通電制御を開始すると共に、図2に示した操作パネル29の表示部31に所定の表示を行い、押ボタン32〜36の押下が認識されるようになる。
【0041】
図2の操作パネル29において、表示部31のうち、3桁7セグメント表示部は、沸き上がりまでの時間、保温温度、設定給湯量等の数値表示を行う。どの数値を表示しているかを示すための文字表示が3桁7セグメント表示部の周辺に配置され、該当する文字が点灯する。
【0042】
また、3桁7セグメント表示部の下側に並んでいる3つの三角マークは、表示部31の下側に印刷で表示された「98」、「90」及び「まほうびん」に対応しており、これらは保温選択状態を択一的に示している。保温選択ボタン35を押下すると、点灯している三角マークが順番に移動して、「98」、「90」又は「まほうびん」が選択される。「98」又は「90」が選択されると、タンク12の湯温が略98℃又は90℃になるように電気ヒータ13の通電制御が行われる。「まほうびん」が選択されると、電気ヒータ13は通電されず、真空層を挟んだ二重構造のタンク12による魔法瓶としての機能のみによって保温が行われる。
【0043】
押ボタン36は、「再沸騰」、「カルキ抜き」及び「おやすみ」の兼用ボタンである。「おやすみ」によってタイマーを設定すると、所定時間経過後にヒータの通電制御による保温が終了する。押ボタン36の右側には、保温中に点灯するLED表示窓38と、沸騰中に点灯するLED表示窓39とが設けられている。
【0044】
給湯の際に押下される給湯ボタン32は、安全を確保するために、ロック解除ボタン33を押下した後20秒間だけ有効になる。ロック解除ボタン33を押下すると、給湯ランプ(LED表示窓)37が点灯し、20秒後に消灯する。給湯ランプ37が点灯している間に給湯ボタン32を押下すると、電動ポンプ15が駆動され、吐出口19から湯が吐出される。給湯ボタン32を押下している間だけ電動ポンプ15が駆動され、給湯ボタン32から指を離すと電動ポンプ15は停止して、給湯が終了する。なお、本実施形態の電気ポット1は、蓋体22の中央部には押し下げ操作部25を押し下げることによって、前述のようにエアポンプによる手動給湯も可能である。押し下げ操作部25についても安全性を確保するために、ロックレバー(図示せず)が設けられ、ロックレバーのロック状態を解除した後に押し下げ操作部25の押し下げが可能になる。
【0045】
図2に示すように、流量センサ17を用いた自動定量給湯の給湯量を設定するための給湯量設定操作部34が操作パネル29に設けられている。給湯量設定操作部34は、定量ボタン34a、減量ボタン34b及び増量ボタン34cを含んでいる。自動定量給湯の機能を利用する場合は、定量ボタン34aを押下した後、減量ボタン34b及び増量ボタン34cを用いて、表示部31に表示される設定給湯量を増減することにより、所望の給湯量を設定する。
【0046】
この後、通常の給湯と同様に、ロック解除ボタン33を押下し、続けて給湯ボタン32を押下する。給湯ボタン32を押下し続けていると、湯の吐出量が設定給湯量に達すれば自動的に電動ポンプ15は停止して、給湯が終了する。つまり、制御基板40のマイクロプロセッサ42が、前述のようにして、流量センサ17の出力信号から単位時間あたりの流量を測定し、それを積算することにより吐出量を算出する。そして、吐出量が設定給湯量に達したときに電動ポンプ15を停止する。
【0047】
また、安全性を確保するために、この自動定量給湯を行っているときに給湯ボタン32から指を離すと、マイクロプロセッサ42は、吐出量が設定給湯量に達する前であっても直ちに電動ポンプ15を停止して給湯を終了する。つまり、給湯ボタン32が押下され続けていることが、自動定量給湯の動作の必要条件となっている。
【0048】
次に、流量センサ17を用いた付加機能について説明する。マイクロプロセッサ42(制御部に相当する)に内蔵されたROMに記憶されているプログラムには、湯沸かしや保温のためのヒータ制御プログラム、電動ポンプ15の制御プログラム、温度センサ20や流量センサ17からの信号を処理するためのプログラム、操作パネル29のプリント基板に実装されたスイッチ入力回路52や表示駆動回路55の制御プログラム等、種々の処理プログラムが含まれている。それらの中には、流量センサ17を用いた付加機能のプログラムも各種含まれている。以下に、フローチャートを参照しながら、いくつかの付加機能を説明する。
【0049】
図7は、流量センサを用いて、単位時間当たりの吐出量が設定値になるように電動ポンプ15の吐出能力の制御を行う処理を示すフローチャートである。
【0050】
ステップ#101において、給湯ボタン32が押下されると(給湯SWがオンになると)、マイクロプロセッサ(以下、制御部という)42は、電動ポンプ15を起動し、流量センサ17の出力信号が変化するのを待つ。タンク12内から吐出される水(湯)が流量センサ17に達して回転部材63が回転を始めると、前述のように流量センサ17の出力信号が変化する(ステップ#102のYes)。
【0051】
ステップ#103で制御部42は、T1タイマーを開始して(ステップ#103)、時間T1の経過を待つ。時間T1は、流量センサ17の回転部材63の回転が安定し、出力信号が安定するまでの時間であり、一実施例では1秒に設定した。
【0052】
時間T1が経過すれば(ステップ#104のYes)、ステップ#105以降の処理において、流量センサ17の出力信号に基づいて単位時間当たりの吐出量が設定値になるように電動ポンプ15の吐出能力を制御する。まず、ステップ#105でT2タイマーを開始し、時間T2が経過するまでの間に流量センサ17から出力されるパルス信号のパルス数をカウントし、カウント値をDとする(ステップ#106及びステップ#107)。
【0053】
そして、得られたカウント値Dに基づいて電動ポンプ15の操作量を補正する(ステップ#108)。例えば、電動ポンプ15をPWM制御している場合、その操作量はパルス幅であり、カウント値Dに基づいてパルス幅が補正される。カウント値Dが目標範囲内にあれば補正量はゼロであるが、カウント値Dが目標範囲より大きい場合は、パルス幅を小さくする(電動ポンプ15の吐出能力を下げる)方向の補正を行う。逆に、カウント値Dが目標範囲より小さい場合は、パルス幅を大きくする(電動ポンプ15の吐出能力を上げる)方向の補正を行う。
【0054】
補正量は、カウント値Dと目標範囲との差(誤差)に応じて段階的に変えることが好ましい。例えば、制御部42は、そのような誤差に応じて段階的に変化する補正量を定めた補正テーブルを予め記憶しておき、カウント値Dと補正テーブルとから補正量を決定することができる。PWM制御でなく、例えば印加電圧を変えることによって電動ポンプ15の吐出能力を変化させる場合も、操作量である印加電圧に関して、上記と同様の制御を行えばよい。
【0055】
図7のフローチャートでは、給湯ボタン32から指が離れる(給湯SWがオフになる)までの間、時間T2ごとに上記のような処理が繰り返される(ステップ#105〜#109)。つまり、カウント値Dが目標範囲内に入るように、したがって、単位時間当たりの吐出量が設定値になるように、フィードバック制御が行われる。一実施例において、時間T2は0.9秒に設定した。後述するように、この時間T2を変更することにより、単位時間当たりの吐出量を変更することも可能である。
【0056】
上記のように、給湯SWがオフになるまでの間、あるいは、自動定量給湯が完了するまでの間、電動ポンプ15の操作量の補正を繰り返し行うのではなく、1回又は複数回(設定回数)だけ操作量の補正を行うようにしてもよい。
【0057】
図8は、給湯量設定操作部34で設定された給湯量に応じて上記の時間T2を変更することにより、単位時間当たりの吐出量を変更する処理のフローチャートである。
【0058】
ステップ#201において、給湯量設定操作部34を用いて自動定量給湯モードが選択され、給湯量が設定されたとき、制御部42は、設定給湯量に応じて上記の時間T2を変更する。すなわち、設定給湯量が500ml未満の場合(ステップ#202のYes)は時間T2に0.9秒を設定し(ステップ#203)、設定給湯量が500〜990mlの場合(ステップ#202のNo、かつ、ステップ#204のYes)は時間T2に0.75秒を設定する(ステップ#205)。なお、990mlを超える給湯量を設定することはできないようになっている。
【0059】
上記のように設定給湯量に応じて時間T2を変更することにより、設定給湯量が500ml以上の場合に給湯に要する時間をできるだけ短くしながら、給湯量が500ml未満の場合に、より安全な給湯を行うことができる。なお、しきい値500mlは一例であり、適宜変更可能である。また、時間T2の変更による単位時間当たりの吐出量の変更は、2段階に限らず、3段階以上に行ってもよい。
【0060】
次に、流量センサ17を用いてタンク12内の水量を計測して表示部31に表示させる処理について説明する。水量の計測を給湯動作中に行う場合と、電気ポット1の通電直後又は保温中に行う場合の2つの例を説明する。
【0061】
図9は、流量センサ17を用いて給湯動作中にタンク12内の水量を計測する方法の例を示すフローチャートである。ステップ#301において給湯SWがオンになり、電動ポンプ15が起動されると、吐出管16内の水位が上昇して流量センサ17に達する。なお、電動ポンプ15の起動前はタンク12内の水位と同じであり、流量センサ17はタンク12の満水位より高い位置に設けられている。
【0062】
流量センサ17に達した水が回転部材63を回転させると、流量センサ17からのパルス信号のレベルが変化する。制御部42は、電動ポンプ15の起動からパルス信号のレベル変化までの時間をタイマーで計測する(ステップ#302)。この時間をT3とする。ステップ#303において、流量センサ17からのパルス信号の所定時間内のパルス数をカウントする。カウントされたパルス数をAとする。パルス数をカウントする所定時間は、前述のT2(0.9秒)でよいが、誤差を少なくするには、T2の整数倍の時間にわたってパルス数をカウントすることが好ましい。また、前述のように、回転部材63の回転が安定するまでの時間を考慮するのが望ましい。
【0063】
ステップ#304において、上記の時間T3及びパルス数Aに基づいて水量Bを求める。例えば、時間T3と水量Bとの関係を予め実験で求め、テーブルとして記憶しておき、このテーブルを参照することにより、時間T3に対応する水量Bを求めることができる。同様に、パルス数Aと水量Bとの関係についても、同様のテーブルを作成することができる。電動ポンプ15の吐出能力がタンク12内の水量によって多少変化し、それによって、単位時間あたりの流量(パルス数A)が変化するからである。
【0064】
上記のように、時間T3のみ、又はパルス数Aのみから水量Bを推定することも可能であるが、精度を高めるために、時間T3及びパルス数Aの両方を用いて水量Bを推定することができる。例えば、各テーブルから個別に求めた水量Bの平均値を取る方法でもよいし、時間T3及びパルス数Aの一方から求めた水量Bを他方のデータに基づいて補正する方法でもよい。なお、温度センサ20によって検出されたタンク12内の水温を用いて、水量と単位時間あたりの流量(パルス数A)との関係を補正すれば、一層精度を上げることができる。水温によって水の粘性が変化し、その結果、流量センサ17の回転部材63の回転速度が多少変化するからである。
【0065】
図9に戻り、給湯が終了すれば(ステップ#305のYes)、流量センサ17からのパルス信号の単位時間あたりのパルス数(流量)の積算により給湯量Cを算出する(ステップ#306)。自動定量給湯の場合は、設定給湯量を給湯量Cとして用いてもよい。そして、ステップ#304で求めた水量Bから給湯量Cを減ずることにより、現在の水量Qを算出する(ステップ#307)。このようにして算出された水量Qはステップ#308で表示部31に表示される。
【0066】
上記のようにして、算出され表示された水量は、原則として次回の給湯まで有効であるが、蓋体22を開けてタンク12に水が補給されると、当然有効でなくなる。そこで、例えば温度センサ20によってモニターされている水温が所定値以上低下した場合は、タンク12に水が補給されたものとみなして、上記の水量表示をリセットするようにしてもよい。あるいは、一定時間経過すると水量表示をリセットするようにしてもよい。
【0067】
図10は、流量センサ17を用いて電気ポット1の通電直後又は保温中にタンク12内の水量を計測する方法の例を示すフローチャートである。給湯中以外の場合は、原則として電動ポンプ15を作動させることができないので流量センサ17の検出信号を利用することもできない。しかし、図1に示したように、吐出管16の上端部付近には、転倒時の漏れ防止弁機構18が備えられており、この漏れ防止弁機構18には少量の水を貯えることができるように構成されている。そこで、この漏れ防止弁機構18の貯水容量を越えない範囲内で短時間だけ電動ポンプ15を作動させて、流量センサ17から検出信号を得ることが可能である。
【0068】
ステップ#401で電動ポンプ15を起動し、図9に示した処理と同様に、電動ポンプ15の起動から流量センサ17のパルス信号のレベル変化までの時間をタイマーで計測する(ステップ#402)。この時間をT3とする。ステップ#403でT4タイマーを開始し、流量センサ17のパルス信号のパルス数Nをカウントする。このパルス数が所定値Uを超えれば(ステップ#404のYes)、直ちに電動ポンプを停止し(ステップ#405)、時間T4を確定する(ステップ#406)。
【0069】
この所定値Uは、上記の漏れ防止弁機構18の貯水容量に応じて設定される値である。つまり、流量センサ17のパルス信号のパルス数Nがこの所定値Uを超えると、漏れ防止弁機構18の貯水容量を超える水が電動ポンプによって吐出され、電気ポット1の吐出口19から湯が吐出されることになる。ただし、安全を確保するために適切な余裕を含めて所定値Uを設定する必要がある。
【0070】
ステップ#407において、時間T3及びT4から水量Qを求め、求めた水量Qをステップ#408で表示部31に表示する。図9のフローチャートを用いて説明した方法と同様に、図10の方法においても、時間T3のみ、又は時間T4のみから水量Qを推定することも可能であるが、精度を高めるために、時間T3及び時間T4の両方を用いて水量Qを推定することができる。例えば、それぞれの時間T3又はT4と水量との関係を示すテーブルから個別に求めた水量の平均値を取る方法でもよいし、時間T3及び時間T4の一方から求めた水量Bを他方のデータに基づいて補正する方法でもよい。この方法においても、温度センサ20によって検出されたタンク12内の水温を用いて、流量センサ17の出力信号(パルス数)を補正すれば、一層精度を上げることができる。
【0071】
図11は、流量センサ17を用いて電気ポット1の自然吐出を防止する方法を示すフローチャートである。「自然吐出」は、タンク12の満水位を超えて給水し湯沸かしを行った場合や、定格入力電圧100Vに対して110V以上のAC電圧を電気ポット1に供給したような場合に、沸騰直前又は沸騰中に内圧の上昇によって吐出口19から自然に湯が出てしまう現象である。
【0072】
ステップ#501において、湯沸かし中か否かがチェックされ、湯沸かし中の場合は、更にステップ#502で温度センサ20によって検出された水温が93℃以上か否かがチェックされる。水温が93℃より低い場合は、上記の自然吐出の現象は発生しないので、93℃以上になるのを待つ。
【0073】
水温が93℃以上である(ステップ#502のYes)場合において、流量センサ17の信号の変化が検出されると(ステップ#503のYes)、制御部42は、流量センサ17の信号のパルス数をカウントする(ステップ#504)。所定時間内にカウントされたパルス数をMとする。このパルス数Mを設定値Vと比較し(ステップ#505)、MがV以上になれば、電気ヒータ13の通電を停止し、表示部31に誤使用である旨の表示を行う(ステップ#506)。表示に加えて、ブザー46による報知を行ってもよい。給湯終了まで(ステップ#507のYes)、ステップ#504からステップ#507までの処理が繰り返される。
【0074】
以上、実施形態及びいくつかの変形例を用いて本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態及び変形例に限らず、種々の形態で実施することができる。例えば、流量センサの構造、検出方式は上記実施形態のものに限らず、種々の公知の流量センサを用いることができる。また、実施形態の説明の中で示した時間、温度等の具体的な数値は例示に過ぎず、必要に応じて変更することができる。
【0075】
また、表示部31(液晶表示器53)を用いて行われる給湯量の表示は、7セグメント表示を用いた数値表示に代えてバーグラフ表示としてもよい。
【0076】
また、自動定量給湯の場合に、給湯終了までの時間を7セグメント表示を用いた減算タイマー表示で、あるいはバーグラフ表示のバーの長さを減少させていく表示によって視覚的に分かりやすく表示してもよい。
【0077】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、単位時間当たりの吐出量を計測するための流量センサを用いて、各種付加機能を備えた電気ポットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る電気ポットの断面図である。
【図2】操作パネルの平面図である。
【図3】電気回路の主要部のブロック図である。
【図4】流量センサの構造を示す図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。
【図5】回転部材の構造を示す図であり、(a)は軸心方向から見た図、(b)は側面図である。
【図6】受光素子から出力されるパルス信号及び整形後の信号の波形図である。
【図7】流量センサを用いて、単位時間当たりの吐出量が設定値になるように電動ポンプの吐出能力の制御を行う処理を示すフローチャートである。
【図8】給湯量設定操作部で設定された給湯量に応じて、流量センサから出力されるパルス数をカウントする時間を変更することにより、単位時間当たりの吐出量を変更する処理のフローチャートである。
【図9】流量センサを用いて給湯動作中にタンク内の水量を計測する方法の例を示すフローチャートである。
【図10】流量センサを用いて電気ポットの通電直後又は保温中にタンク内の水量を計測する方法の例を示すフローチャートである。
【図11】流量センサを用いて電気ポットの自然吐出を防止する方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 電気ポット
12 タンク
13 ヒータ
15 電動ポンプ
16 吐出管
17 流量センサ
19 吐出口
29 操作パネル
31 表示部
42 制御部(マイクロプロセッサ)
Claims (1)
- 水を加熱するためのヒータ及びタンクと、該タンク内の水を外部へ吐出するための電動ポンプ及び吐出管と、前記水の吐出量を計測するために前記吐出管の途中に挿入された流量センサと、前記流量センサの出力信号から求めた単位時間当たりの吐出量が設定値になるように前記電動ポンプの吐出能力の制御を行う制御部とを備えた電気ポットであって、
前記流量センサは、単位時間当たりのパルス数が単位時間当たりの吐出量に対応するパルス信号を出力し、
前記制御部は、前記流量センサから得られるパルス信号の基本単位時間内のパルス数が設定値になるように前記電動ポンプの吐出能力の制御を行い、その際、予め前記基本単位時間として記憶された複数の値の中の1つを選択することにより、前記単位時間当たりの吐出量が段階的に変更可能であることを特徴とする電気ポット。
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