以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電気ポットの断面図である。この電気ポット1は、略円筒形のポット本体11の内部に、真空層を挟んだ二重ステンレススチール製のタンク12を備えている。いわゆる魔法瓶と同様の構造を有することにより、電気ヒータの通電なしに所定の湯温を一定時間保持できるように構成されている。
タンク12の底部に形成された凹部には湯沸し用及び保温用の電気ヒータ13が取り付けられている。また、給湯(吐出)用の開口14がタンク12の底部に設けられ、この開口14は入力管路15aによって電動ポンプ15の入力側に連通している。電動ポンプ15の出力側の管路15bは、電気ポット1の底部から上部に向かって略垂直に延びる吐出管16の基端側に接続されている。吐出管16の先端側は、流量センサ17及び転倒時の漏れ防止弁機構18を通って吐出口19に至る。吐出管16は透明のガラス管でできており、その内部の水面はポット本体11の前面11aに設けられた透明窓から視認することができる。これにより、タンク12内の水面、すなわち残湯量が分かる。
タンク12の上部は注水口として開口しており、この開口を閉じるゴムパッキン21を備えた蓋体22が電気ポット1のポット本体11の上側に設けられている。蓋体22は、後部のヒンジロック機構23によってポット本体11に取り外し自在に枢支されると共に、前部のロック機構24によって開閉自在に構成されている。図示の電気ポット1は、電動ポンプ15による電動給湯と共に、エアポンプによる手動給湯も可能である。このために、蓋体22の中央部には押し下げ操作部25、蛇腹部材26、弁機構27等からなるエアポンプが設けられている。なお、28は電気ポット1が転倒した際に湯水が蒸気孔から外部に漏れるのを防ぐ転倒防止弁である。
ポット本体11の手前側上面には、操作パネル29が設けられている。図2に示すように、操作パネル29には、表示部31と複数の押ボタン32〜36が設けられている。また、複数のLED表示(窓)37〜39が設けられている。詳しくは後述するように、電気ポット1の使用者は、操作パネル29の表示部31の表示によってタンク12内の湯温や沸き上がりまでの時間等を知ることができる。また、押ボタン32〜36を用いて給湯の指示や給湯量の設定等を行うことができる。
操作パネル29の内側には操作パネル29の表示部31に対応する液晶表示器や押ボタン32〜36に対応するスイッチ、及び制御用のマイクロプロセッサが実装された第1プリント基板(以下、マイコン基板という)が取り付けられている。また、電気ポット1の底部には、電源回路、駆動回路等が実装されたプリント基板(以下、電源基板という)が取り付けられている。
図3は、マイコン基板40、電源基板41、その他の電気部品で構成される電気回路の主要部のブロック図である。マイコン基板40には、マイクロプロセッサ(MPU)42、A/D変換器43、波形整形回路44、ブザー46、リセット回路47、発振回路48、押ボタン32〜36に対応するスイッチ群51とスイッチ入力回路52、液晶表示器53、複数のLED54、及び表示駆動回路55が実装されている。電源基板41には、電気ヒータ(湯沸しヒータ及び保温ヒータを含む)13と電動ポンプ15の駆動回路45及び電源回路49が実装されている。
タンク12に貯えられた水(湯)の温度を検出するための温度センサ20がタンク12の外壁に取り付けられており、その検出信号はA/D変換器43でディジタル値に変換されてマイクロプロセッサ42に入力される。また、詳しくは後述するように、流量センサ17から出力されるパルス信号は、波形整形回路44を経て矩形波信号としてマイクロプロセッサ42に入力される。
駆動回路45は、マイクロプロセッサ42からの出力信号により、電動ポンプ15及び電気ヒータ13を駆動する。駆動回路45はトライアックのようなスイッチング素子及びリレーを用いて構成される。電気ヒータ13のうちの保温ヒータの加熱能力及び電動ポンプ15の吐出し能力については、スイッチング素子を用いたPWM(パルス幅変調)又はデューティ比制御により連続的に可変制御することができる。電気ヒータ13のうちの湯沸しヒータについては、リレーを用いてオン・オフ制御される。
ブザー46は圧電ブザーであり、マイクロプロセッサ42によって直接、又は駆動回路(図示せず)を介して駆動される。ブザー46は、湯沸し完了等の報知音やクエン酸洗浄時期の報知音、押ボタンの操作音等を発する際に鳴動する。その他、マイクロプロセッサ42のリセット回路47、クロック生成用の発振回路48、マイクロプロセッサ42や周辺回路に直流定電圧を供給するための電源回路49等の回路部品が実装されている。
次に、流量センサ17の構造について説明する。図4は、流量センサ17の構造を示す図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。流量センサ17は、上ケース61、下ケース62、回転部材63、発光素子(LED)66が実装されたプリント基板(LED基板)64、受光素子(PD)67が実装されたプリント基板(PD基板)65、カバー部材68等で構成されている。
上ケース61は透明樹脂で作られており、回転部材63を収容する円筒状部分と円筒状部分から突出する鍔部61aを備えている。この鍔部61aには、LED基板64及びPD基板65を固定するための突起部(図示せず)が設けられている。円筒状部分の上端側の中心(軸心)部には、軸受け部61bが形成されている。軸受け部61bは、120度間隔で設けられた3本のリブ61cによって円筒状部分に接続されている。
下ケース62は、上ケース61の下端部の内周面に嵌合すると共に吐出管16の外周面に嵌合する段形状の断面を有する円筒状部材であり、その中心(軸心)部には、軸受け部62aが形成されている。上ケース61の軸受け部61bと同様に、3本のリブ62bによって軸受け部62aは下ケース62の内壁に接続されている。上ケース61と下ケース62とが一体となって、回転部材63を回転自在に支持する軸部材69の軸受け部61b,62aを有する本体ケースを構成している。上ケース61はLED66から出た光を透過させる必要があるので透明樹脂で作られるが、下ケース62は、透明でも不透明でもよい。
図5は、回転部材63の構造を示す図であり、(a)は軸心方向から見た図、(b)は側面図である。回転部材63は、不透明の樹脂で作られ、軸心に沿う貫通孔HLが形成された円柱状部分63aと、その周囲に螺旋状に形成された回転羽根63b,63cからなる。2つの回転羽根63b,63cがいわば二重螺旋形状を形成している。
図5(b)に示されるように、回転部材63の円柱状部分63aに形成された貫通孔HLに軸部材69が挿通され、軸部材69の両端部は上ケース61及び下ケース62の軸受け部61b,62aによって支持されている。これにより、回転部材63は軸心AX周りに回転自在となっている。また、上ケース61の軸受け部61bと回転部材63の先端側(円柱状部分63aの上端側)との間には金属製のワッシャ70が介装されている。
図4及び図5から分かるように、LED基板64に実装されたLED(発光ダイオード)66とPD基板65に実装されたPD(フォトダイオード)67は、互いに向き合うように配置され、両者を結ぶ直線(光路)LTは、回転部材63の軸心AXに略垂直で、かつ、軸心AXからずれた位置にある。このため、回転部材63の回転羽根63b,63cが図5(b)に示す位置にあるときは、発光素子であるLED66から出た光が透明の上ケース61を通り回転部材63の回転羽根63b,63cの隙間を通過して受光素子であるPD67に到達する(受光状態)。
回転部材63が図5(b)に示す位置から90度回転すると、光路LTは回転羽根63b又は63cによって遮られるので、LED66から出た光はPD67に到達しない(非受光状態)。なお、図4(b)において、66aはLED基板64の配線パターンを介してLED66に接続されたLED引出し線であり、同様に67aはPD67に接続されたPD引出し線である。また、LED66(発光素子)及びPD67(受光素子)は上記のような働きにより回転部材63の回転速度を検出するための光センサを構成している。
上記のような構造を有する流量センサ17は、図1に示すように、吐出管16の途中に挿入されている。図4(b)に示すように、流量センサ17の上ケースの先端部と吐出管16との合わせ部分の周囲は、ゴムパッキン71によって封止されている。また、下ケース62と吐出管16との嵌合部分については、同様にゴムパッキン(図示せず)で封止してもよいし、接着剤で封止してもよい。本発明の流量センサ17は、小型軽量であり、電気ポット1の本体に固定することなく、吐出管16の途中に挿入するように取り付けるだけでよい。また、吐出管16における挿入位置は、満水位より上であることが望ましい。
図1において、電動ポンプ15が駆動されてタンク12内の水(湯)が吐出管16内を下から上へ流れると、その水が流量センサ17を通る際に螺旋形状の回転羽根63b,63c(すなわち回転部材63)を回転させる。この回転速度は、水流の速さ、すなわち単位時間あたりの流量に略比例する。また、回転羽根63b,63cが回転すると、上述のように、図5(b)の受光状態と、それから90度回転したときの非受光状態とが交互に繰り返される。この結果、受光レベル(例えば低レベル)と非受光レベル(例えば高レベル)との間で変化する略正弦波状の電気信号がPD67から出力される。この略正弦波状の電気信号の周期(周波数)は、回転部材63の回転速度に比例している。
詳しくは後述するが、PD67から出力される略正弦波状の電気信号をマイコン基板40の波形整形回路44によって矩形波に整形してマイクロプロセッサ42に入力する。波形整形回路44は、コンパレータで構成され、略正弦波状の電気信号をしきい値と比較することにより、透過電位(例えば低電位)と遮光電位(例えば高電位)とが交互に繰り返される矩形波を生成する。マイクロプロセッサ42は、その矩形波の周期又は周波数を内部タイマーによって計測することにより、単位時間あたりの流量を求める。
次に、本実施形態の電気ポット1の代表的な操作及び動作を、定量自動給湯と共に説明する。まず、図1において、蓋体22のロック機構24を解除して蓋体22を後方へ開き、タンク12内に所要量の水を入れる。蓋体22を閉じ、ロック機構24を確実にロックし、電気ポット1に接続された電気ケーブルのプラグをコンセント(アウトレット)に差し込むと、マイコン基板40が通電される。マイクロプロセッサ42がリセットされ、内蔵ROMに記憶されたプログラムにしたがって動作を開始する。つまり、電気ヒータ13の通電制御を開始すると共に、図2に示した操作パネル29の表示部31に所定の表示を行い、押ボタン32〜36の押下が認識されるようになる。
図2の操作パネル29において、表示部31のうち、複数桁7セグメント表示部は、残湯量、湯温、沸き上がりまでの時間等の数値表示を行う。どの数値を表示しているかを示すための文字表示(「残湯量」、「温度」、「あと」、「分」、「ml」)が3桁7セグメント表示部の周辺に配置され、該当する文字表示が点灯する。
また、3桁7セグメント表示部の下側に並んでいる3つの三角マークは、表示部31の下側に印刷で表示された「98」、「90」及び「まほうびん」に対応しており、これらは保温選択状態を択一的に示している。沸騰/保温ボタン35を押下すると、点灯している三角マークが順番に移動して、「98」、「90」又は「まほうびん」が選択される。「98」又は「90」が選択されると、タンク12の湯温が略98℃又は90℃になるように電気ヒータ13の通電制御が行われる。「まほうびん」が選択されると、電気ヒータ13は通電されず、真空層を挟んだ二重構造のタンク12による魔法瓶としての機能のみによって保温が行われる。また、「沸騰」中は沸騰LED39が点灯し、「保温」中は保温LED38が点灯する。
おやすみボタン36は「おやすみ」タイマーの設定に使用される。「おやすみ」タイマーが設定されると、表示部31の「おやすみ」表示が点灯し設定時間経過後にヒータの通電制御による保温が終了する。
給湯の際に押下される給湯ボタン32は、安全を確保するために、ロック解除ボタン33を押下した後20秒間だけ有効になる。ロック解除ボタン33を押下すると、給湯LED37が点灯し、20秒後に消灯する。給湯LED37が点灯している間に給湯ボタン32を押下すると、電動ポンプ15が駆動され、吐出口19から湯が吐出される。給湯ボタン32を押下している間だけ電動ポンプ15が駆動され、給湯ボタン32から指を離すと電動ポンプ15は停止して、給湯が終了する。なお、本実施形態の電気ポット1は、蓋体22の中央部に設けられた押し下げ操作部25を押し下げることによって、前述のようにエアポンプによる手動給湯も可能である。押し下げ操作部25についても安全性を確保するために、ロックレバー(図示せず)が設けられ、ロックレバーのロック状態を解除した後に押し下げ操作部25の押し下げが可能になる。
図2に示すように、流量センサ17を用いた自動定量給湯の給湯量を設定するための給湯量設定ボタン(増加ボタン34a及び減少ボタン34b)が操作パネル29に設けられている。自動定量給湯の機能を利用する場合は、給湯量設定ボタン34a及び34bを用いて、表示部31に表示される設定給湯量を増減することにより、所望の給湯量を設定する。
この後、通常の給湯と同様に、ロック解除ボタン33を押下し、続けて給湯ボタン32を押下する。給湯ボタン32を押下し続けていると、湯の吐出量が設定給湯量に達すれば自動的に電動ポンプ15は停止して、給湯が終了する。つまり、マイコン基板40のマイクロプロセッサ42が、前述のようにして、流量センサ17の出力信号から単位時間当たりの流量を測定し、それを積算することにより吐出量を算出する。そして、吐出量が設定給湯量に達したときに電動ポンプ15を停止する。
また、安全性を確保するために、この自動定量給湯を行っているときに給湯ボタン32から指を離すと、マイクロプロセッサ42は、吐出量が設定給湯量に達する前であっても直ちに電動ポンプ15を停止して給湯を終了する。つまり、給湯ボタン32が押下され続けていることが、自動定量給湯の動作の必要条件となっている。
また、図2において表示部31の「クエン酸洗浄」の表示文字は、流量センサ17の上ケース61(すなわち透明チューブ)の内壁の汚れを解消するためにクエン酸洗浄を実施すべき適切な時期を報知するときに点灯する。例えば、MPU42に内蔵又は外付けされた不揮発性メモリに電気ポット1の使用時間を積算し、その積算値が所値に達すれば「クエン酸洗浄」の表示文字を点灯させる。あるいは後述するように、流量センサ17のPD67から出力される信号に基づいて上ケース61内壁の汚れ具合を推定し、「クエン酸洗浄」の表示文字を点灯させるようにしてもよい。
図6は、流量センサ17及び波形整形回路44を含む流量検出回路の例を示す回路図である。流量センサ17の発光素子であるLED66は、電流制限用抵抗R1を介して電源電圧VDDと接地電位との間に接続され、所定の電流で駆動される。また、流量センサ17の受光素子であるPD67は、感度調整用抵抗R2を介して接地電位と電源電圧VDDとの間に接続されている。
図6の回路例では、電流制限用抵抗R1の抵抗値を小さくすればLED66に流れる電流が増加し、LED66から発する光の強さが強くなる。また、感度調整用抵抗R2の抵抗値を大きくするほど感度が高くなり、PD67から出力される略正弦波状の電気信号(電圧波形)の振幅が大きくなる。この略正弦波状の電気信号は、波形整形回路44のコンパレータ44aの入力電圧信号となる。コンパレータ44aの基準電圧端子には、電源電圧VDDを抵抗R3及びR4で分圧した基準電圧(しきい値)Vrefが入力されている。コンパレータ44aの出力信号は波形整形後の矩形波としてMPU42に入力される。
図7は、PD67から出力される略正弦波状の電圧波形と波形整形後の矩形波の第1例を示す波形図である。(a)は従来のしきい値Vrefを約2.5Vに設定した場合を示し、(b)は本実施形態においてしきい値Vrefを約4Vに設定した場合を示している。
図7(a)に示す従来の場合において、電気ポットの使用初期においてPD67から出力される略正弦波状の電圧波形(波形整形前)は実線で示すように0Vから5Vの間で略均等に変化している。そして、略正弦波状の電圧波形をしきい値Vref=2.5Vと比較して得られた波形整形後の矩形波では0V期間と5V期間とがほぼ均等に繰り返されている。
しかし、使用期間が長くなり、流量センサ17の上ケース61(透明チューブ)の内壁の汚れてくると、光の透過率が低下しPD67の受光量が減少する。その結果、PD67から出力される略正弦波状の電圧波形は、破線で示すように0V側(透過電位側)の電位が上昇し中間電位に近づいてくる。そして、波形整形後の矩形波の0V期間が破線で示すように狭くなり、本来あるべき箇所に0V期間が無くなる現象(パルス抜け)が発生する。パルス抜けが生じた箇所では、図7(a)に示すように本来の周期Tが誤って2倍のT’と誤計測されることになる。あるいは、単位時間当たりのパルス数である周波数が本来の値より小さく(低く)なる誤計測が発生する。
これに対して図7(b)に示す本実施形態の場合は、しきい値Vrefが中間レベル(2.5V)よりも5V側(遮光電位側)である約4Vに設定されている。このため、使用初期において波形整形後の矩形波では、0V期間が5V期間より長くなっている。しかし、繰り返しの周期Tは図7(a)の場合と同じであり、周期又は周波数は問題なく計測できる。
図7(a)の場合と同様に、使用期間が長くなるに伴ってPD67の受光量が減少すると、PD67から出力される略正弦波状の電圧波形は破線で示すように0V側(透過電位側)の電位が上昇し中間電位に近づいてくる。しかし、しきい値Vref=4Vと比較して得られた波形整形後の矩形波は破線で示すように実線の使用初期の状態からほとんど変化せず、上記のようなパルス抜け現象は発生しない。したがって、図7(b)に示す本実施形態の場合は、図7(a)に示した従来の場合に比べて、流量センサ17を正常に使用できる期間(寿命)が長くなる。
図8は、PD67から出力される略正弦波状の電圧波形と波形整形後の矩形波の第2例を示す波形図である。(a)は略正弦波状の電圧波形が0Vから5Vの間で略均等に変化している従来の場合を示し、(b)は本実施形態の場合を示している。
図8(a)に示す従来の場合は、図7(a)を用いて説明したように、電気ポットの使用初期では理想的な波形の信号(実線)が得られるが、流量センサ17の上ケース61(透明チューブ)の内壁の汚れてくると破線に示すような波形に変化し、波形整形後の矩形波にパルス抜け現象が生じる。その結果、パルス抜けが生じた箇所で本来の周期TがT’と誤計測され、あるいは単位時間当たりのパルス数である周波数が本来の値より小さく(低く)なる誤計測が発生する。
図8(b)に示す本実施形態の場合は、PD67から出力される略正弦波状の電圧波形が、実線で示すように電気ポットの使用初期において0V側(透過電位側)に飽和し、中間レベル(2.5V)より0V側の期間が5V側(遮光電位側)の期間より長くなるように設定されている。つまり、波形整形後の矩形波は、図8(b)に示すように0V期間が5V期間より長い。このため、しきい値Vrefが図8(a)の従来の場合と同じく中間レベル(2.5V)に設定してあっても、流量センサ17の上ケース61(透明チューブ)の内壁の汚れに伴って略正弦波状の電圧波形の透過電位側レベルが中間レベルに近づく時期を遅らせることができる。つまり、破線で示すように、透過電位側レベルが0Vから上昇しても、中間レベルに達するまでの時間は図8(a)の場合に比べて長くなる。換言すれば、図8(b)に示す本実施形態の場合は、図8(a)に示した従来の場合に比べて、流量センサ17を正常に使用できる期間(寿命)が長くなる。
上述のように流量センサ17の上ケース61(透明チューブ)の内壁の汚れてくると、光の透過率が低下しPD67の受光量が減少するが、この状態はクエン酸洗浄と呼ばれる洗浄煮沸のメンテナンスを実行することにより、解消される。
電気ポット1を長期間使用していると、水に含まれる炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の成分がタンク12の内壁に析出し、タンク内がしだいに白く汚れてくる。また、この析出物が剥がれ落ちて電動ポンプ15の内部に入り込むと、電動ポンプ15が詰まり、動作不良を引き起こす原因となる。
そこで、タンク12の内壁の汚れがひどくなったときは、あるいは一定期間ごとに、クエン酸洗浄を行うことが取扱説明書等により使用者に推奨されている。クエン酸洗浄では、メンテナンス用消耗品として電気ポットの製造者から販売されているクエン酸を水と共にタンク12内に入れ、所定時間の煮沸を行う。本実施形態の電気ポット1では、操作パネル29のおやすみボタン36と沸騰/保温ボタン35を同時押下することにより、クエン酸洗浄モードが実行される。クエン酸洗浄モードでは、煮沸状態を所定時間継続した後、ヒータ通電を停止する。
上記のように、クエン酸洗浄モードは元来、タンク12の内壁の汚れ(析出物)を取り除き電動ポンプ15の動作不良を回避することを目的として行われる。しかし、クエン酸洗浄によって流量センサ17の上ケース61(透明チューブ)の内壁の汚れも洗浄され、流量センサ17のPD67から出力される略正弦波状の電圧波形がほぼ使用初期の状態に復旧する。次に、流量センサ17のPD67から出力される略正弦波状の電圧波形に基づいてクエン酸洗浄を実施すべき時期を使用者に報知する処理について説明する。
図9は、流量センサ17及び波形整形回路44A,44Bを含む流量検出回路の第2例を示す回路図である。この例では、2つの波形整形回路44A,44Bを用いて2つの矩形波A、Bを得る。第1の波形整形回路44Aはコンパレータ44Aaを用いて構成され、その基準電圧(第1のしきい値)Vref1は、図6に示した回路例における基準電圧と同様に、約4Vに設定されている。第2の波形整形回路44Bはコンパレータ44Baを用いて構成され、その基準電圧(第2のしきい値)Vref2は、分圧抵抗R5及びR6によって約1Vに設定されている。つまり、第2のしきい値Vref2は第1のしきい値Vref1より0V側(透過電位側のレベル)寄りに設定されている。
図10は、図9の回路例において、PD67から出力される略正弦波状の電圧波形と波形整形後の矩形波との第1例を示す波形図である。第1の波形整形回路44Aからは第1矩形波がMPU42に与えられ、第2の波形整形回路44Bからは第2矩形波がMPU42に与えられる。
図10に実線で示すように、電気ポットの使用初期においてPD67から出力される略正弦波状の電圧波形は、0Vから5Vの間でほぼ均等に変化している。したがって、波形整形後の第1矩形波は5V期間より0V期間が長い周期Tの矩形波となり、第2矩形波は5V期間より0V期間が短い周期Tの矩形波となる。 電気ポットの使用期間が長くなるに伴ってPD67の受光量が減少すると、PD67から出力される略正弦波状の電圧波形は破線で示すように0V側(透過電位側)の電位が上昇し、Vref2に近づいてくる。このとき、第1矩形波はほとんど変化しないが、第2矩形波は破線で示すように0V期間が更に短くなり、本来あるべき箇所に0V期間が無くなる現象(パルス抜け)が発生する。パルス抜けが生じた箇所では、本来の周期Tが誤って2倍のT’と誤計測されることになる。あるいは、単位時間当たりのパルス数である周波数が本来の値より小さく(低く)なる誤計測が発生する。
そこで、本例では、吐出量の計測は図6及び図7を用いて説明した例と同様に第1矩形波を用いて行うが、更に第2矩形波を用いてクエン酸洗浄を実施すべき時期を判断して使用者に報知する処理を行う。具体的には以下に説明するように、第1矩形波と第2矩形波との周波数(単位時間当たりのパルス数)を比較し、両者の比が2以上になれば報知を行う。
図11は、クエン酸洗浄を実施すべき時期を判断して使用者に報知する処理の第1例を示すフローチャートである。MPU42は、給湯を開始するとステップ#101においてポンプを駆動し、ステップ#102において第1矩形波のパルス数のカウントを行う。そのカウント値をAとする。同様にステップ#103において第2矩形波のパルス数のカウントを行い、そのカウント値をBとする。
ステップ#104において給湯量表示を行い、ステップ#105において給湯量が設定値に達したか否かを判断する。すなわち、第1矩形波のパルス数Aが設定値に達するまでステップ#101からステップ#105の処理を繰り返し、設定値に達すれば、ステップ#106でポンプを停止する。
次に、ステップ#107で第1矩形波のパルス数Aと第2矩形波のパルス数Bとを比較する。BがAの半分以下である場合は、図10を用いて説明したように、第2矩形波のパルス抜けが1/2以上発生していることを意味する。そうでない場合は、ステップ#108で例えば2回のブザー鳴動によって給湯完了報知を行い、ステップ#109で給湯量を表示して正常終了する。
ステップ#107でBがAの半分以下であった場合は、ステップ#110で例えば3回のブザー鳴動によって給湯注意報知を行う。この報知は、流量センサ17が汚れによって正確に吐出量を計測できなくなる時期が近づいていることを意味する。そして、ステップ#111で給湯量を表示し、更にステップ#112で「クエン酸洗浄」の表示を点灯して終了する。前述したように、「クエン酸洗浄」の表示は、操作パネル29の表示部31に設けられ、クエン酸洗浄を実施すべき時期になったことを使用者に報知するために点灯される。
図12は、図9の回路例において、PD67から出力される略正弦波状の電圧波形と波形整形後の矩形波との第2例を示す波形図である。図10に示した第1例と同様に、電気ポットの使用初期においてPD67から出力される略正弦波状の電圧波形は実線で示すように0Vから5Vの間でほぼ均等に変化している。したがって、波形整形後の第1矩形波は0V期間(パルス幅W1)が5V期間より長い矩形波となり、第2矩形波は0V期間(パルス幅W2)が5V期間より短い矩形波となる。
電気ポットの使用期間が長くなるに伴ってPD67の受光量が減少すると、PD67から出力される略正弦波状の電圧波形は破線で示すように0V側(透過電位側)の電位が上昇し、Vref2に近づいてくる。このとき、第1矩形波はほとんど変化しないが、第2矩形波は破線で示すように0V期間(パルス幅W2’)が更に短くなる。
そこで、本例では、吐出量の計測は図6及び図7を用いて説明した例と同様に第1矩形波を用いて行うが、更に第2矩形波を用いてクエン酸洗浄を実施すべき時期を判断して使用者に報知する処理を行う。具体的には以下に説明するように、第1矩形波と第2矩形波とのパルス幅(0V期間)を比較し、両者の比が所定値以上になれば報知を行う。
図13は、クエン酸洗浄を実施すべき時期を判断して使用者に報知する処理の第2例を示すフローチャートである。MPU42は、給湯を開始するとステップ#201においてポンプを駆動し、ステップ#202において第1矩形波のパルス幅W1を計測し、その平均値Wを求める。同様にステップ#203において第2矩形波のパルス幅W2を計測し、その平均値wを求める。更にステップ#204において第1矩形波のパルス数のカウントを行い、そのカウント値をAとする。
ステップ#205において給湯量表示を行い、ステップ#206において給湯量が設定値に達したか否かを判断する。すなわち、第1矩形波のパルス数Aが設定値に達するまでステップ#201からステップ#206の処理を繰り返し、設定値に達すれば、ステップ#207でポンプを停止する。
次に、ステップ#208において第1矩形波のパルス幅の平均値Wと第2矩形波のパルス幅の平均値wとを比較する。wがWの1/3より大きいときは、ステップ#209で例えば2回のブザー鳴動によって給湯完了報知を行い、ステップ#210で給湯量を表示して正常終了する。但し、この例では、電気ポットの使用初期においてwがWの1/2程度以上に設定され、wがWの1/3以下になればクエン酸洗浄を実施すべき時期であるとして使用者に報知するものとする。
すなわち、ステップ#208においてwがWの1/3以下であると判断された場合は、更にステップ#211でwがWの1/5以下であるか否かを判断する。wがWの1/3から1/5の間にある場合(ステップ#211のNo)は、ステップ#212で例えば3回のブザー鳴動によって給湯注意報知を行う。この報知は、流量センサ17が汚れによって正確に吐出量を計測できなくなる時期が近づいていることを意味し、できるだけ早い時期にクエン酸洗浄を実施すべきことを使用者に知らせるものである。そして、ステップ#213で給湯量を表示し、更にステップ#214で「クエン酸洗浄」の表示を点灯して終了する。
wがWの1/5以下である場合(ステップ#211のYes)は、ステップ#215で例えば8回のブザー鳴動によって給湯警告報知を行う。この報知は、すぐにクエン酸洗浄を実施しなければ、流量センサ17が汚れによって正確に吐出量を計測できなくなることを使用者に知らせるものである。この後、ステップ#216で給湯量を表示し、更にステップ#214で「クエン酸洗浄」を点滅表示して終了する。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態限らず、種々の形態で実施することができる。
例えば、上記の実施形態(図6)では流量センサ17(PD67)の出力信号を波形整形回路44(コンパレータ44a)で波形整形した後、マイクロプロセッサ42に入力しているが、コンパレータを内蔵したマイクロコンピュータを用いれば、流量センサ17の出力信号をマイクロコンピュータに直接入力することが可能である。この場合、コンパレータの基準電圧(しきい値)は、マイクロコンピュータのプログラムによって設定することができる。その設定値をプログラムによって動的に変更することができるので、図9の回路例と同様に複数のしきい値を用いて複数の波形整形後の矩形波を得ることも可能である。
あるいは、A/D変換器を内蔵したマイクロコンピュータを用いて、流量センサ17の出力信号をマイクロコンピュータに直接入力することも可能である。この場合は、流量センサ17の出力信号を所定のサンプリング周期で読み取ったディジタルデータをソフトウェアによってしきい値と比較し、透過状態と遮光状態との繰り返し周期又は周波数を求めることになる。
また、上記実施形態では、流量センサの発光素子の電流制限用抵抗と受光素子の感度調整用抵抗の抵抗値を調節することにより、受光素子から出力される略正弦波状の電気信号を、電気ポットの使用初期において透過電位側のレベルが飽和し、中間レベルより透過電位側の期間が遮光電位側の期間より長くなるように設定した。その他の方法として、例えば、流量センサの発光素子から受光素子への光軸と螺旋状回転羽根の軸心との成す角度を調節する(90度から傾ける)ことにより、あるいは螺旋状回転羽根の捩り角を調整することにより、受光素子から出力される略正弦波状の電気信号を上記のように設定してもよい。
また、クエン酸洗浄を実施すべき時期になったことを使用者に報知するためのブザー鳴動や表示の内容については適宜変更可能である。その時期を判断するための処理で例示したパルス数やパルス幅の比較方法及びそのしきい値についても上記実施例の例示に限らず、適宜変更してよい。