JP3489764B2 - 屈折率分布型光学樹脂材料 - Google Patents

屈折率分布型光学樹脂材料

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JP3489764B2
JP3489764B2 JP26556295A JP26556295A JP3489764B2 JP 3489764 B2 JP3489764 B2 JP 3489764B2 JP 26556295 A JP26556295 A JP 26556295A JP 26556295 A JP26556295 A JP 26556295A JP 3489764 B2 JP3489764 B2 JP 3489764B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来の光学樹脂で
は実現が困難であった、高い透明性と耐熱性を併有する
屈折率分布型光学樹脂材料(以下、光学樹脂材料と略す
ことがある)、及びそれに使用しうる有用な末端安定化
クロロトリフルオロエチレン系オリゴマーに関するもの
である。
【0002】本発明の光学樹脂材料は、それ自身が光フ
ァイバー等の光伝送体であってもよく、また光ファイバ
ーのプリフォーム等の光伝送体の母材であってもよい。
【0003】本発明の光学樹脂材料である光伝送体は、
非結晶樹脂であるため光の散乱がなくしかも紫外光から
近赤外光まで広範囲の波長帯で透明性が非常に高いた
め、多種多様な波長の光システムに有効利用が可能であ
る。特に光通信分野において幹線石英ファイバーに利用
されている波長である1300nm、1550nmで低
損失である光伝送体を与えるものである。
【0004】また本発明の光学樹脂材料である光伝送体
は、自動車のエンジンルーム等での過酷な使用条件に耐
える、耐熱性、耐薬品性、耐湿性、不燃性を備えるもの
である。
【0005】本発明の光学樹脂材料である光伝送体は、
屈折率分布型の光ファイバー、ロッドレンズ、光導波
路、光分岐器、光合波器、光分波器、光減衰器、光スイ
ッチ、光アイソレーター、光送信モジュール、光受信モ
ジュール、カップラー、偏向子、光集積回路等の多岐に
わたる屈折率分布型光伝送体として有用である。ここ
で、屈折率分布とは光伝送体の特定の方向に沿って屈折
率が連続的に変化する領域を意味し、例えば屈折率分布
型光ファイバーの屈折率分布は、ファイバーの中心から
半径方向に向かって屈折率が放物線に近い曲線で低下し
ている。
【0006】本発明の光学樹脂材料が光伝送体の母材の
場合は、これを熱延伸等で紡糸して、屈折率分布型光フ
ァイバー等の光伝送体を製造できる。
【0007】
【従来の技術】従来より知られている屈折率分布型プラ
スチック光伝送体用の樹脂としては、メチルメタクリレ
ート系樹脂を代表とした光学樹脂や、WO94/049
49に記載されたテトラフルオロエチレン樹脂やビニリ
デンフルオライド樹脂が提案されている。
【0008】段階屈折型プラスチック光ファイバーとし
てはコアをメチルメタクリレート樹脂、スチレン樹脂、
カーボネート樹脂、ノルボルネン樹脂等の光学樹脂を使
用し、クラッドを含フッ素ポリマーとする提案が多くな
されている。また特開平2ー244007号公報にはコ
アとクラッドに含フッ素樹脂を用いた提案もされてい
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、メチルメタ
クリレート樹脂、カーボネート樹脂、ノルボルネン樹脂
等の光伝送体では達し得なかった、自動車、オフィスオ
ートメーション(OA)機器、家電機器用途等で要求さ
れる耐熱性、耐湿性、耐薬品性、不燃性を有する光学樹
脂材料を提供する。
【0010】また本発明は、メタクリレート樹脂、カー
ボネート樹脂、ノルボルネン樹脂等の光伝送体では達し
得なかった紫外光(波長200nmから400nm)と
近赤外光(波長700nmから2500nm)を利用可
能とし、さらに広範囲の伝送領域帯で低い光伝送損失を
もつ光学樹脂材料を新規に提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記問題点
の認識に基づいて鋭意検討を重ねた結果、耐熱性、耐湿
性、耐薬品性、不燃性を付与しかつ近赤外光で光吸収が
起こるC−H結合(すなわち、炭素−水素結合)をなく
すためにはC−H結合を実質的に含まない含フッ素重合
体が最適であるとの知見を得た。この含フッ素重合体は
C−H結合の代わりにC−F結合(すなわち、炭素−フ
ッ素結合)を有する。
【0012】すなわち、物質に光を照射すると、ある原
子間の結合の伸縮振動や、変角振動と共鳴振動する波長
の光が、優先的に吸収されることになる。これまでプラ
スチック光ファイバーに用いられた高分子物質は主にC
−H結合を有する化合物であった。このC−H結合を基
本とする高分子物質では、水素原子が軽量で振動しやす
いために、基本吸収は、赤外域に短波長側(3400n
m)に現れる。従って、光源の波長である近赤外〜赤外
域(600〜1550nm)では、このC−H伸縮振動
の比較的低倍音吸収がとびとびに現れ、これが吸収損失
の大きな原因になっている。
【0013】そこで水素原子をフッ素原子に置換する
と、それらの倍音吸収ピークの波長は長波長側に移動
し、近赤外域での吸収量が減少する。理論値から見れ
ば、C−H結合を有するPMMA(ポリメチルメタアク
リレート)の場合には波長650nmにおいてC−H結
合の吸収損失は、105dB/kmと見積もられてお
り、波長1300nmにおいては10000dB/km
以上になる。
【0014】一方、水素原子をフッ素原子に置き換えた
物質では波長650nmでは実質的に吸収による損失は
なく、波長1300nmにおいてもC−F結合の伸縮振
動の6倍音と7倍音の間で、1dB/kmのオーダーで
あり吸収損失はないと考えてよい。そのために我々はC
−F結合を有する化合物を用いることを提案する。
【0015】また、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、不燃性
を阻害する要因となるカルボキシル基やカルボニル基等
の官能基を除外することが望ましい。また、カルボキシ
ル基があると近赤外光の光吸収があり、カルボニル基が
あると紫外光の光吸収があるため、これらの基を除外す
ることが望ましい。さらに光の散乱による伝送損失を低
減するためには非結晶性の重合体にする事が重要であ
る。
【0016】更に、段階屈折率型光ファイバーの場合、
マルチモードの光はコアとクラッドの界面で反射されな
がら伝搬する。そのためモード分散が起こり伝送帯域が
低下する。しかし屈折率分布型光ファイバーではモード
分散が起こりにくく伝送帯域は増加する。
【0017】そこで光学樹脂材料として実質的にC−H
結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体、特に主鎖に
環構造を有する含フッ素重合体と、該重合体に比較して
屈折率の異なる物質の濃度が特定の方向に勾配を有す光
学樹脂材料及びそれに使用し得る有用な末端安定化クロ
ロトリフルオロエチレン系オリゴマーを新規に見いだ
し、下記本発明(1)〜(2)に至った。
【0018】(1)実質的にC−H結合を有しない非結
晶性の含フッ素重合体(a)と、含フッ素重合体(a)
との比較において屈折率の差が0.001以上である少
なくとも1種類の物質(b)とからなり、含フッ素重合
体(a)中に物質(b)が特定の方向に沿って濃度勾配
を有して分布している屈折率分布型光学樹脂材料におい
て、物質(b)がクロロトリフルオロエチレン系オリゴ
マーをフッ素化してなる末端安定化クロロトリフルオロ
エチレン系オリゴマーであることを特徴とする屈折率分
布型光学樹脂材料。
【0019】(2)屈折率分布型光学樹脂材料が、屈折
率分布型光ファイバーであり、末端安定化クロロトリフ
ルオロエチレン系オリゴマーが光ファイバーの周辺より
中心に高密度に存在していることを特徴とする上記
(1)に記載の屈折率分布型光学樹脂材料。
【0020】含フッ素重合体として、従来よりテトラフ
ルオロエチレン樹脂、パーフルオロ(エチレン−プロピ
レン)樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂、ビニリデン
フルオライド樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン
樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂等が広く知られ
ている。しかしながら、これらの含フッ素樹脂は結晶性
を有するため、光の散乱が起こり、透明性が良好でな
く、プラスチック光伝送体の材料としては好ましくな
い。
【0021】これに対して、非結晶性の含フッ素重合体
は、結晶による光の散乱がないため、透明性に優れる。
本発明における含フッ素重合体(a)としては、C−H
結合を有しない非結晶性の含フッ素重合体であれば何ら
限定されないが、主鎖に環構造を有する含フッ素重合体
が好ましい。主鎖に環構造を有する含フッ素重合体とし
ては、含フッ素脂肪族環構造、含フッ素イミド環構造、
含フッ素トリアジン環構造または含フッ素芳香族環構造
を有する含フッ素重合体が好ましい。含フッ素脂肪族環
構造を有する含フッ素重合体では含フッ素脂肪族エーテ
ル環構造を有するものがさらに好ましい。
【0022】含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重
合体は、含フッ素イミド環構造、含フッ素トリアジン環
構造または含フッ素芳香族環構造を有する含フッ素重合
体に比べ、後述の熱延伸または溶融紡糸によるファイバ
ー化に際してもポリマー分子が配向しにくく、その結果
光の散乱を起こすこともないなどの理由から、より好ま
しい重合体である。
【0023】含フッ素重合体(a)の溶融状態における
粘度は、溶融温度200℃〜300℃において103
105ポイズが好ましい。溶融粘度が高過ぎると溶融紡
糸が困難なばかりでなく、屈折率分布の形成に必要な、
物質(b)の拡散が起こりにくくなり屈折率分布の形成
が困難になる。また、溶融粘度が低過ぎると実用上問題
が生じる。すなわち、電子機器や自動車等での光伝送体
として用いられる場合に高温にさらされ軟化し、光の伝
送性能が低下する。
【0024】含フッ素重合体(a)の数平均分子量は、
10,000〜5000,000が好ましく、より好ま
しくは50,000〜1000,000である。分子量
が小さ過ぎると耐熱性を阻害することがあり、大き過ぎ
ると屈折率分布を有する光伝送体の形成が困難になるた
め好ましくない。
【0025】含フッ素脂肪族環構造を有する重合体とし
ては、含フッ素環構造を有するモノマーを重合して得ら
れるものや、少なくとも2つの重合性二重結合を有する
含フッ素モノマーを環化重合して得られる主鎖に含フッ
素脂肪族環構造を有する重合体が好適である。
【0026】含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーを
重合して得られる主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する
重合体は、特公昭63−18964号公報等により知ら
れている。即ち、パーフルオロ(2,2−ジメチル−
1,3−ジオキソール)等の含フッ素脂肪族環構造を有
するモノマーを単独重合することにより、またこのモノ
マーをテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエ
チレン、パーフルオロ(メチルビニールエーテル)など
のラジカル重合性モノマーと共重合することにより主鎖
に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が得られる。
【0027】また、少なくとも2つの重合性二重結合を
有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる主鎖に
含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、特開昭63−
238111号公報や特開昭63−238115号公報
等により知られている。即ち、パーフルオロ(アリルビ
ニルエーテル)やパーフルオロ(ブテニルビニルエーテ
ル)等のモノマーを環化重合することにより、またはこ
のようなモノマーをテトラフルオロエチレン、クロロト
リフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニールエ
ーテル)などのラジカル重合性モノマーと共重合するこ
とにより主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が
得られる。
【0028】また、パーフルオロ(2,2−ジメチル−
1,3−ジオキソール)等の含フッ素脂肪族環構造を有
するモノマーとパーフルオロ(アリルビニルエーテル)
やパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等の少なく
とも2つの重合性二重結合を有する含フッ素モノマーと
を共重合することによっても主鎖に含フッ素脂肪族環構
造を有する重合体が得られる。
【0029】上記の含フッ素脂肪族環構造を有する重合
体としては、具体的には以下の(I)〜(IV)式から
選ばれる繰り返し単位を有するものが例示される。な
お、これらの含フッ素脂肪族環構造を有する重合体中の
フッ素原子は、屈折率を高めるために一部塩素原子で置
換されていてもよい。
【0030】
【化1】
【0031】[上記(I)〜(IV)式において、pは
0〜5、qは0〜4、rは0〜1、p+q+rは1〜
6、s、t、uはそれぞれ0〜5、s+t+uは1〜
6、RはFまたはCF3、R1はFまたはCF3、R2はF
またはCF3、X1はFまたはCl、X2はFまたはCl
である。]含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、主
鎖に環構造を有する重合体が好適であるが、環構造を有
する重合単位を20モル%以上、好ましくは40モル%
以上含有するものが透明性、機械的特性等の面から好ま
しい。
【0032】物質(b)は、含フッ素重合体(a)との
比較において屈折率の差が0.001以上である末端安
定化クロロトリフルオロエチレン系オリゴマーであり、
含フッ素重合体(a)よりも高屈折率であっても低屈折
率であってもよい。光ファイバー等においては通常は含
フッ素重合体(a)よりも高屈折率の物質を用いる。
【0033】この物質(b)としては、含フッ素重合体
(a)と同様な理由から実質的にC−H結合を有しない
物質であることが好ましい。又、含フッ素重合体(a)
との屈折率の差は0.005以上であることが好まし
い。
【0034】相溶性が良好であることにより、含フッ素
重合体(a)、特に主鎖に環構造を有する含フッ素重合
体、と物質(b)とは200〜300℃で加熱溶融によ
り容易に混合させることができる。又、含フッ素溶媒に
溶解させて混合した後、溶媒を除去することにより両者
を均一に混合させることができる。
【0035】本発明における、クロロトリフルオロエチ
レン系オリゴマーとは、クロロトリフルオロエチレンの
みからなる単独重合オリゴマーおよびクロロトリフルオ
ロエチレンとこれ以外の共重合性モノマー1種類以上と
の共重合オリゴマーを意味する。
【0036】上記共重合性モノマーとしては、テトラフ
ルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、ヘキサ
フルオロプロピレンなどのパーハロオレフィン類、パー
フルオロ(アルキルビニルエーテル)、パーフルオロ
(アリルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブテニルビ
ニルエーテル)、パーフルオロ(2,2−ジメチル−
1,3−ジオキソール)などのパーフルオロエーテル類
などがあり、実質的にC−H結合を有しないものが好ま
しい。
【0037】共重合オリゴマー中のクロロトリフルオロ
エチレンの共重合割合は特に限定されず、例えば1〜9
9モル%の広い範囲から選択できる。後述の方法で末端
安定化した共重合オリゴマーを前述の物質(b)として
使用する場合には、クロロトリフルオロエチレンの共重
合割合は50モル%以上であることが好ましい。
【0038】後述の方法で末端安定化したクロロトリフ
ルオロエチレン系オリゴマーの分子量は、非結晶性とな
る分子量範囲から選ばれ、数平均分子量300〜10,
000が好ましい。物質(b)として使用する場合、拡
散のしやすさを考慮すると、数平均分子量300〜50
00がさらに好ましい。
【0039】これらオリゴマーの用途には、前述のごと
き光学樹脂材料用の他、オイルや潤滑剤がある。
【0040】通常のクロロトリフルオロエチレン系オリ
ゴマーは一部不安定末端基を有する。即ち、製造上の、
特に開始剤等に由来する、カルボン酸、C−H結合を有
する末端基などを含有する。
【0041】一般に、クロロトリフルオロエチレン系オ
リゴマーはこれら不安定末端基を数百ppm以上含み、
光ファイバー等の用途でこれらを用いた場合には、これ
ら不安定末端基の近赤外における伸縮、変角振動等によ
る吸収が損失増大に働き、かつファイバーの使用波長を
限定してしまう。
【0042】さらに、ファイバー等の成形時に、成形温
度の高温にさらされるために、不安定末端基の熱分解が
発生し、材料を着色させてしまう、あるいは分解後の構
造由来による、新たな吸収損失を生じる。また、分解ガ
スにより、成形体中に発泡が生じ、これが伝送損失の増
大に大きく関与する。
【0043】上記クロロトリフルオロエチレン系オリゴ
マー等をフッ素でフッ素化することにより、末端安定化
を行ったものは、近赤外に吸収を持たず、かつ高温時で
も分解を起こさせないことができる。
【0044】即ち、不安定末端基をフッ素化によりCF
3等の安定末端基に変えたクロロトリフルオロエチレン
系オリゴマーを使用することが光ファイバー等の光学材
料として好適である。
【0045】フッ素化の条件は特に限定されない。フッ
素ガスの濃度が高いと反応が暴走しやすく、かつ、クロ
ロトリフルオロエチレン系オリゴマー中の塩素原子を、
フッ素原子に置換してしまう可能性が高い。また操作上
の危険も伴う。
【0046】一方、フッ素ガスの濃度が低すぎた場合に
は、反応を完結させるのに時間がかかる。そのため、フ
ッ素ガスを窒素ガスで5〜50%に希釈したものを使用
することが反応を穏やかに完結させるのに好適である。
【0047】また、フッ素化の温度条件は、高すぎて
も、低すぎても好ましくない。150℃以下の場合には
反応が進みにくく、長時間かけても反応が完結しにく
い。一方、300℃を越えると反応が暴走しやすく、か
つ主鎖の塩素原子がフッ素原子に置換されやすくなる。
そのため、好ましくは160〜290℃、さらに好まし
くは200〜250℃のフッ素化温度を選ぶことで、反
応を穏やかに、かつ完結させることが可能である。
【0048】反応圧力は、特に限定されないが、低すぎ
た場合には反応の容積効率が悪く、高い場合にはフッ素
ガスが漏れでた場合の危険性が大きいため、1〜10k
g/cm2程度の圧力で、反応を穏やかに完結させるこ
とが好ましい。
【0049】フッ素化したクロロトリフルオロエチレン
系オリゴマーは、不純物の除去及び、分子量分布を揃え
るために、さらに蒸留して用いることが好ましい。
【0050】蒸留条件は特に制限されないが、平均分子
量1000程度のクロロトリフルオロエチレン系オリゴ
マーの場合には、1〜10mmHg程度の減圧下で、1
50〜200℃程度の留分を集めることができる。
【0051】本発明の光学樹脂材料は屈折率分布型光フ
ァイバーであることが最も好ましい。この光ファイバー
において、物質(b)は含フッ素重合体(a)中に中心
から周辺方向に沿って濃度勾配を有して分布している。
好ましくは、物質(b)が含フッ素重合体(a)よりも
高屈折率の物質であり、この物質(b)が光ファイバー
の中心から周辺方向に沿って濃度が低下する濃度勾配を
有して分布している光ファイバーである。ある場合には
物質(b)が含フッ素重合体(a)よりも低屈折率の物
質であり、この物質が光ファイバーの周辺から中心方向
に沿って濃度が低下する濃度勾配を有して分布している
光ファイバーも有用である。前者の光ファイバーなどの
光伝送体は通常物質(b)を中心に配置し周辺方向に向
かって拡散させることにより製造できる。後者の光ファ
イバーなどの光伝送体は物質(b)を周辺から中心方向
に拡散させることによって製造できる。
【0052】本発明の光学樹脂材料である光伝送体は、
波長700〜1,600nmで、100mの伝送損失が
100d以下とすることができる。特に主鎖に脂肪族
環構造を有する含フッ素重合体では同様な波長で、10
0mの伝送損失が50d以下とすることができる。波
長700〜1,600nmという比較的長波長におい
て、このような低レベルの伝送損失であることは極めて
有利である。すなわち、石英光ファイバーと同じ波長を
使えることにより、石英光ファイバーとの接続が容易で
あり、また波長700〜1,600nmよりも短波長を
使わざるをえない従来のプラスチック光ファイバーに比
べ、安価な光源で済むという利点がある。本発明の光学
樹脂材料製造において、樹脂の成形と屈折率分布の形成
は同時であっても別々であってもよい。たとえば、紡糸
や押し出し成形等により屈折率分布を形成すると同時に
屈折率分布を形成して本発明光学樹脂材料を製造でき
る。また、紡糸や押し出し成形で樹脂の成形を行った
後、屈折率分布を形成することができる。さらに、屈折
率分布を有するプリフォーム(母材)を製造し、このプ
リフォームを成形(たとえば紡糸)して光ファイバー等
の光学樹脂材料を製造できる。なお、前記のように本発
明光学樹脂材料は、上記屈折率分布を有するプリフォー
ムをも意味する。
【0053】本発明の光学樹脂材料の製造方法として
は、たとえば以下の(1)〜(7)の方法がある。しか
しこれらに限られるものではない。特に好ましい方法は
(1)の方法である。
【0054】(1)含フッ素重合体(a)を溶融し、含
フッ素重合体(a)の溶融液の中心部に物質(b)また
はその物質(b)を含む含フッ素重合体(a)を注入
し、物質(b)を拡散させながら、または拡散させた後
に成形する方法。
【0055】この場合、物質(b)を注入するには、中
心部に1層のみ物質(b)を注入する場合のみならず、
中心部に物質(b)を多層に注入してもよい。成形には
光ファイバーのプリフォーム等のごときロッド状母材を
成形するために適する押出溶融成形、光ファイバーを成
形するために適する溶融紡糸成形等がある。
【0056】(2)溶融紡糸や延伸などによって得られ
た含フッ素重合体(a)からなる芯材に、物質(b)ま
たはその物質(b)を含む含フッ素重合体(a)を繰り
返しディップコートする方法。
【0057】(3)回転ガラス管などを利用して中空状
の含フッ素重合体(a)からなる管を形成し、この重合
体管の内部に物質(b)またはその物質(b)を含む含
フッ素重合体(a)を形成するモノマー相を密封し、低
速で回転させながら重合させる方法。
【0058】この界面ゲル共重合の場合、重合過程にお
いて、含フッ素重合体(a)からなる管がモノマー相に
膨潤し、ゲル相が形成され、モノマー分子が選択的にゲ
ル相内に拡散しながら重合される。
【0059】(4)含フッ素重合体(a)を形成するモ
ノマーと物質(b)を形成するモノマーであって、それ
らモノマーの反応性が異なる2種のモノマーを用いて、
生成する含フッ素重合体(a)と物質(b)の組成比が
周辺部から中心に向かって連続的に変化するように重合
反応を進行させる方法。
【0060】(5)含フッ素重合体(a)と物質(b)
を均一に混合した混合物または溶媒中で均一に混合した
後、溶媒のみを揮発除去させることにより得られる混合
物を、熱延伸または溶融押出によりファイバー化し、次
いで(またはファイバー化直後に)加熱状態で不活性ガ
スと接触させて物質(b)を表面から揮発させることに
より屈折率分布を形成する方法。または、上記ファイバ
ー化した後、含フッ素重合体(a)を溶解せずに物質
(b)のみを溶解する溶媒中にファイバーを浸漬し、物
質(b)をファイバー表面から溶出させることにより屈
折率分布を形成する方法。
【0061】(6)含フッ素重合体(a)からなるロッ
ドまたはファイバーに、含フッ素重合体(a)よりも屈
折率が小さい物質(b)のみを被覆するか、または含フ
ッ素重合体(a)と物質(b)との混合物を被覆し、次
いで加熱により物質(b)を拡散させて屈折率分布を形
成する方法。
【0062】(7)高屈折率重合体と低屈折率重合体と
を加熱溶融または溶媒を含有する溶液状態で混合し、そ
れぞれ混合割合の異なる状態で多層押出させながら(ま
たは押出したのちに)両者を互いに拡散させ、最終的に
屈折率分布の形成されたファイバーを得る方法。この場
合、高屈折率重合体が含フッ素重合体(a)で低屈折率
重合体が物質(b)でもよく、高屈折率重合体が物質
(b)で低屈折率重合体が物質(b)でもよい。
【0063】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施例について更
に具体的に説明するが、この説明が本発明を限定するも
のでないことは勿論である。
【0064】合成例1 パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)[PBVE]
の35g、イオン交換水の150g、及び重合開始剤と
して((CH32CHOCOO)2の90mgを、内容
積200mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。
系内を3回窒素で置換した後、40℃で22時間懸濁重
合を行った。その結果、数平均分子量約1.5×105
の重合体(以下、重合体Aという)を28g得た。
【0065】重合体Aの固有粘度[η]は、パーフルオ
ロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)[PBTHF]中
30℃で0.50であった。重合体Aのガラス転移点は
108℃であり、室温ではタフで透明なガラス状の重合
体であった。また10%熱分解温度は465℃であり、
溶解性パラメーターは5.3(cal/cm31/2であ
り、屈折率は1.34であった。図1に重合体Aの光線
透過率を示す。
【0066】合成例2 重合体Aとの溶解性パラメーターの差が1.4(cal
/cm31/2であるクロロトリフルオロエチレン(CT
FE)オリゴマーを、ハステロイCの1リットルのオー
トクレーブに500g仕込み、減圧脱気した後、窒素ガ
スで希釈された20%フッ素ガスを2kg/cm2の圧
力になるように導入した。反応器を220℃に昇温し、
15hr撹拌を続けた後反応器を冷却し、窒素ガスをパ
ージして残留のフッ素ガスを系内から除去した。得られ
たCTFEオリゴマー(数平均分子量1000、屈折率
1.42)を、4mmHgの減圧下で蒸留し、170〜
190℃の留分(以下、CTFEオリゴマーBという)
を集めた。
【0067】実施例 上記合成で得られた重合体AをPBTHF溶媒中で溶解
し、これにCTFEオリゴマーBを15重量%量添加し
混合溶液を得た。この溶液を脱溶媒し透明な混合重合体
(以下、重合体Cという)を得た。
【0068】重合体Aを溶融し、その中心に溶融液の重
合体Cを注入しながら250℃で溶融紡糸することによ
り屈折率が中心部から周辺部に向かって徐々に低下する
無色透明な光ファイバー(以下、光ファイバーDとい
う)が得られた。ファイバー径は500μm、外層の屈
折率は1.34、中心部の屈折率は1.36であった。
【0069】光ファイバーDの光伝送特性は、780n
mで120dB/km、1550nmで50dB/km
であり、可視光から近赤外光までの光を良好に伝達でき
る光ファイバーであることを確かめた。またその波長範
囲において、特に末端基由来と考えられる吸収ピークは
検出されなかった。また、この光ファイバーDの割断面
をSEMで観察したところ表面は滑らかで、特に不均一
構造は観測されなかった。
【0070】比較例 CTFEオリゴマーのフッ素化を行なわない以外は、実
施例2と同様にしてファイバー径500μmの屈折率分
布型プラスチック光ファイバー(以下、光ファイバーE
という)を得た。光ファイバーEは中心部が多少黄着色
し、光伝送損失は波長780nmで900dB/km、
1550nmで600dB/kmであった。また、95
0nmと1400nm付近に、カルボン酸のO−H結合
由来と見られる吸収ピークが検出され、この波長におい
ては非常に伝送損失が大きく光通信には使用できないこ
とが判った。また、このファイバーの割断面のSEM観
察で、ファイバーE中に、CTFEオリゴマー末端の分
解由来と考えられる数十μmサイズの発泡が観測され、
これが伝送損失を増大させていることが判った。
【0071】
【発明の効果】本発明では、屈折率分布型光ファイバ
ー、屈折率分布型光導波路、屈折率分布型ロッドレンズ
等の多岐にわたるプラスチック光伝送体において非結晶
性のフッ素樹脂を利用することにより、紫外光から近赤
外光までの光を極めて低損失に伝送することが可能にな
った。
【0072】特に屈折率分布型光ファイバーはファイバ
ー径が大きいにもかかわらずフレキシブルで分岐・接続
が容易であるため短距離光通信用に最適であるが、これ
まで実用可能な低損失の光ファイバーは提案されなかっ
た。本発明は短距離光通信用に実用可能な低損失の光フ
ァイバーを提供するものである。
【0073】又、本発明の光伝送体は、自動車のエンジ
ンルーム、OA機器、プラント、家電等での過酷な使用
条件に耐える、耐熱性、耐薬品性、耐湿性、不燃性を備
えるプラスチック光伝送体を提供するものである。更
に、本発明の屈折率分布型光学樹脂材料は、光ファイバ
ーのみならず平板型やロッド型のレンズとしても利用可
能である。その場合、中心部から周辺部への屈折率変化
を低くするか高くするかにより、凸レンズ及び凹レンズ
として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】重合体Aの光線透過率を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G02B 6/18 G02B 6/12 N (72)発明者 杉山 徳英 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社中央研究所内 (56)参考文献 特開 平5−170811(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08F 8/00 - 8/50

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的にC−H結合を有しない非結晶性
    の含フッ素重合体(a)と、含フッ素重合体(a)との
    比較において屈折率の差が0.001以上である少なく
    とも1種類の物質(b)とからなり、含フッ素重合体
    (a)中に物質(b)が特定の方向に沿って濃度勾配を
    有して分布している屈折率分布型光学樹脂材料におい
    て、物質(b)がクロロトリフルオロエチレン系オリゴ
    マーをフッ素化してなる末端安定化クロロトリフルオロ
    エチレン系オリゴマーであることを特徴とする屈折率分
    布型光学樹脂材料。
  2. 【請求項2】 屈折率分布型光学樹脂材料が、屈折率分
    布型光ファイバーであり、末端安定化クロロトリフルオ
    ロエチレン系オリゴマーが光ファイバーの周辺より中心
    に高密度に存在していることを特徴とする請求項1に記
    載の屈折率分布型光学樹脂材料。
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