JP3438201B2 - コイルボビン - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、例えばオーディ
オ用電源トランスとして用いられるカバー付き小型トラ
ンスのコイルボビンに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種のトランスのコイルボビン
としては、特開平１１−２９７５３５号公報が存在す
る。図８（ａ）、（ｂ）はその一例を示すもので、１次
巻線３１と２次巻線３２と間の絶縁距離を確保するため
にコイルボビン３０の１次巻線３１側に、樹脂製の箱状
の絶縁カバー３３を上方から被せて取付けるようにした
ものがある。この絶縁カバー３３には、コイルボビン３
０の端子部３４に被せ易くするために下方に切欠き３５
を形成し、容易に端子部３４を覆う部分を上方に曲げる
ことができるように構成されている。

【０００３】図９は他の従来例を示す。この従来例で
は、コイルボビン４０の１次巻線側に、矢印で示す方向
から成形品または絶縁紙からなる絶縁カバー４を取付け
ている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】この種の製品は、今日
ではコスト競争が激しく、いかにして材料費を削減でき
るかが常に課題となっている。また、生産性、省力化等
の観点から、組立性をいかに良くするかも課題となって
いる。

【０００５】このような背景の下において、図８
（ａ）、（ｂ）に示した従来例では、絶縁カバー３３の
作製に費用を要し、コストを安くできない、という欠点
がある。また、コイルボビン３０に絶縁カバー３３を取
付ける場合、切欠き３５の部分の前方を上方に曲げる手
間を要し、その分、組立性が悪い、という欠点もある。

【０００６】また、図９の従来例は代表的な例である
が、この構成によると、絶縁カバー４１を矢印方向から
しか取付けることができず、かつ場合によってはテープ
等を用いて固定しなければならず、その分、部分点数が
多くなり、また、作業性が煩雑である、という欠点があ
った。

【０００７】この発明は上記のことに鑑み提案されたも
ので、その目的とするところは、絶縁カバーの形状を簡
易形状とし、かつ組立性も良好とし、量産に適し、コス
ト安を図ったコイルボビンを提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】この発明は、巻胴部３
と、この巻胴部３の両端に上側フランジ４、下側フラン
ジ５がそれぞれ形成され、かつ上側フランジ４と下側フ
ランジ５との間に中間フランジ６が形成され、1次、２
次巻線領域が区画形成されたコイルボビン１において、
前記上側フランジ４に断面ほぼコ字状をなす絶縁カバー
の上板挿入用の絶縁カバー取付部９、１０を形成し、か
つ前記中間フランジ６に溝状の絶縁カバーの下板挿入用
の絶縁カバー挿入部１２を形成し、かつ前記絶縁カバー
取付部９、１０の天井面、前記絶縁カバー挿入部１２の
天井面に絶縁カバーの上板、下板圧入用の突起１１、１
１ａを形成した構成とし、上記目的を達成している。ま
た、前記上記フランジ４の前面側および背面側の外端部
に段部７を形成して凹段部８を形成し、かつ前記絶縁カ
バー取付部９、１０は前面側および背面側の両端部にそ
れぞれ一対ずつ形成され、一対の絶縁カバー取付部９、
１０のうち一端部側の絶縁カバー取付部９の基部９ａは
前記段部７上に設けられ、他端部側の絶縁カバー取付部
１０の基部１０ａは圧入されてきた絶縁カバーの位置決
め用として前記凹段部８上に設けたことを特徴としてい
る。さらに、絶縁カバー挿入部９、１０はその前方また
は側方から絶縁カバーを挿入可能としている。

【０００９】

【発明の実施の形態】この発明では、絶縁カバー２を、
図８のものに比べほぼコ字状からなる単純な形状とし、
その分、コスト安となるようにしている。また、コイル
ボビン１に、絶縁カバー２の脱落を防止するための突起
１１、１１ａを有する絶縁カバー取付部９、１０を形成
し、固定用のテープ等を用いることなく単に絶縁カバー
２を挿入しただけで容易に固定できるようにし、組立性
を良好にしている。さらに、絶縁カバー２を、コイルボ
ビン１の前方からの取付以外に、コア装着後において
も、横方向から差し込んで容易に取付けることもできる
ようにし、組立に自由度を持たせている。

【００１０】

【実施例】図１は本発明の要部斜視図、図２は図１中Ａ
−Ａ’線の拡大断面図である。

【００１１】図中１は絶縁性の樹脂の成形品からなるコ
イルボビン、２は断面ほぼコ字状をなす絶縁カバーであ
り、絶縁カバー２は横長矩形の本体２ａと、この上下部
分において直角方向に折曲形成され、互いに対向して配
置された上板２ｂ、下板２ｃとにて形成されている。

【００１２】このコイルボビン１は、周知のようにコア
の中足（図示せず）が挿入される中空筒形の巻胴部３
と、この巻胴部３の両端にそれぞれ形成された上側フラ
ンジ４、下側フランジ５と、これらの間に形成された中
間フランジ６とを備え、これらにより巻胴部３の外周に
１次巻線領域３ａ、２次巻線領域３ｂが区画形成されて
いる。

【００１３】上側フランジ４の外端部上面には段部４ａ
を介して上面が一段下方に下った凹段部４ｂが形成さ
れ、かつ段部４ａの両端部にはそれぞれほぼＬ字状をな
す絶縁カバー取付部９、１０が形成されている。

【００１４】図１において右側に示す一端部側の絶縁カ
バー取付部９の基部９ａは段部７の上方に位置、すなわ
ち上側フランジ４の上面の外端部にその基部９ａが形成
されている。また、左側に示す他端部側の絶縁カバー取
付部１０は段部７の外側に位置、つまり凹段部８上に形
成されている。

【００１５】これは、絶縁カバー２を矢印方向の横方
向、つまりＢ方向から挿入した場合、絶縁カバー２の上
板２ｂの一端が、他方の絶縁カバー取付部１０の基部１
０ａに当接して容易に位置決めができるようにしたため
である。なお、別部材により位置決め部材を形成した場
合は、他方の絶縁カバー取付部１０も一方の絶縁カバー
取付部９と同様、段部７上に設けても良い。

【００１６】各絶縁カバー取付部９、１０の内面には断
面ほぼ逆三角形をなす突起１１がそれぞれ形成されてい
る。この突起１１は絶縁カバー２の上板２ｂに当設し、
かつ押圧するもので、これにより絶縁カバー２の上板２
ｂが絶縁カバー取付部９、１０の内面と凹段部８上との
間に圧入され、確実に固定される。

【００１７】中間フランジ６のほぼ中央部にほぼＵ字形
をなす溝状の絶縁カバー挿通部１２が形成されている。
この絶縁カバー挿通部１２に絶縁カバー２の下板２ｃが
挿通される。

【００１８】この場合、絶縁カバー挿通部１２の天井面
にも挿通された下板２ｃの上面を押さえて確実に固定す
るための突起１１ａが形成されている。この突起１１ａ
は天井面の長さ方向に沿って全体的に形成されている
が、部分的に形成しても良い。

【００１９】図３は本発明のコイルボビン１の平面図、
図４は正面図を示す。

【００２０】絶縁カバー取付部９、１０は、図３および
図４に示すように、上側フランジ４の正面側および背面
側の両端部にそれぞれ一対ずつ形成されている。

【００２１】また、巻胴部３内の窓１３の両側にはコア
（図示せず）を位置決めするためのリブ１４、１５が形
成されている。各絶縁カバー取付部９、１０の内側面９
ｂ、１０ｂはリブ１４、１５のほぼ延長線上に形成さ
れ、コアの位置決めも兼用し、堅固にコアを位置決め、
固定し得る。

【００２２】また、上側フランジ４の左側部の適位置に
巻胴部３に巻回される１次巻線の巻始め、巻終わり等の
引出線（図示せず）を外部に引出すための引出溝１６が
複数形成されている。

【００２３】引出溝１６の近傍の適位置には引出線を適
宜絡げ付けるための柱状の突部１７が複数突設されてい
る。

【００２４】また、上側フランジ４の右側部には補強用
のリブ１８が形成されている。この補強用のリブ１８は
リブ１４の外面から外側に向ってテーパ状に形成されて
いる。

【００２５】図５はコイルボビン１の底面図、図６は左
側面図を示す。

【００２６】下側フランジ５側の窓１３の両端部にもコ
ア（図示せず）を位置決め固定するためのリブ１９、２
０が形成されている。

【００２７】また、下側フランジ５の左側部分の適位置
には２次巻線（図示せず）の引出線を引出すための引出
溝２１が複数形成され、かつその近傍にピン端子２２が
設けられている。なお、両側に設けられている突部２３
は面実装のものである。

【００２８】反対側の右側部分には補強用のリブ２４が
形成されている。また、外端部にほぼＵ字状の切欠き２
５が形成されている。

【００２９】図７はコイルボビン１の巻胴部３上に１
次、２次巻線２６、２７をそれぞれ巻回し、かつコア２
８を組込んだ状態を示す概略側断面図を示す。

【００３０】図１に示した絶縁カバー２の上板２ｂおよ
び下板２ｃは、コア２８を組込んだ後、図７において紙
面の垂直方向手前側から、つまり図１におけるＢ方向側
から絶縁カバー取付部９、１０と上側フランジ４の凹段
部８の上面との間、中間フランジ６の絶縁カバー挿入部
１２に圧入すれば、１次巻線２６の外表面は絶縁カバー
本体２ａによって覆うことができ、１次、２次巻線２
６、２７およびコア２８間の絶縁距離が絶縁カバー２に
よって確保されたカバー付き小型トランスが構成され
る。

【００３１】この小型トランスによれば、絶縁カバー２
は突起１１、１１ａにより確実に保持され、抜け出るこ
とはない。したがって、テープ等で固定する必要はな
い。

【００３２】なお、絶縁カバー２は、コア２８組込み
前、図１において、前方から、つまり矢印Ｃで示す方向
から押し込んで圧入することも可能であり、本発明では
組立手順に自由度をもたせている。

【００３３】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、上側フラ
ンジ４に絶縁カバー取付部９、１０を形成するととも
に、中間フランジ６に溝状の絶縁カバー挿入部１２を形
成したため、簡単に絶縁カバー２を取付けることがで
き、作業性が良い。

【００３４】また、絶縁カバー取付部９、１０、絶縁カ
バー挿入部１２の天井面に押さえ用の突起１１、１１ａ
がそれぞれ形成されているため、圧入された絶縁カバー
２は抜け出ることがないので、接着剤やテープ等の別途
の固定手段を用いて絶縁カバー２を固定する手間を削減
でき、また、材料費も削減でき、量産に適し、コストダ
ウンに寄与し得る。

【００３５】さらに、絶縁カバー取付部９、１０を一対
ずつ設け、かつ上側フランジ４に段部７を形成して凹段
部８を形成し、一端部側の絶縁カバー取付部９の基部９
ａは段部７上に形成し、他端部側の絶縁カバー取付部１
０の基部１０ａは凹段部８上に設けたため、一端部側か
ら絶縁カバー２を圧入した場合、他端部側の絶縁カバー
取付部１０の基部１０ａの内側面がストッパーになり、
所定の位置に絶縁カバー２を位置決めして取付けること
ができる。

【００３６】また、絶縁カバー２は、コイルボビン１に
対しその前方または側方の何れの方向からも装着可能と
し、組立の手順に自由度をもたせている。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一実施例の要部斜視図。

【図２】 図１中Ａ−Ａ’線断面図。

【図３】 本発明の一実施例にかかるコイルボビンの平
面図。

【図４】 同正面図。

【図５】 同底面図。

【図６】 同左側面図。

【図７】 組立状態の概略部分断面図。

【図８】 （ａ）は一従来例の組立前の側面図、（ｂ）
は組立後の側面図を示す。

【図９】 他の従来例の概略斜視図を示す。

【符号の説明】

１ コイルボビン ２ 絶縁カバー ２ａ 本体 ２ｂ 上板 ２ｃ 下板 ３ 巻胴部 ３ａ １次巻線部 ３ｂ ２次巻線部 ４ 上側フランジ ５ 下側フランジ ６ 中間フランジ ７ 段部 ８ 凹段部 ９、１０ 絶縁カバー取付部 １１、１１ａ 突起 １２ 絶縁カバー挿通部 １３ 窓 １４、１５ リブ １６ 引出線 １７ 突部 １８ 補強用のリブ １９、２０ リブ ２１ 引出溝 ２２ ピン端子 ２３ 突部 ２４ 補強用のリブ ２５ 切欠き ２６ １次巻線 ２７ ２次巻線 ２８ コア

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H01F 27/32 H01F 30/00 H01F 30/12 H01F 37/00 H01F 38/00 H01F 41/12

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 巻胴部（３）と、この巻胴部（３）の両
   端に上側フランジ（４）、下側フランジ（５）がそれぞ
   れ形成され、かつ上側フランジ（４）と下側フランジ
   （５）との間に中間フランジ（６）が形成され、1次、
   ２次巻線領域が区画形成されたコイルボビン（１）にお
   いて、 前記上側フランジ（４）に断面ほぼコ字状をなす絶縁カ
   バーの上板挿入用の絶縁カバー取付部（９）、（１０）
   を形成し、かつ前記中間フランジ（６）に溝状の絶縁カ
   バーの下板挿入用の絶縁カバー挿入部（１２）を形成
   し、かつ前記絶縁カバー取付部（９）、（１０）の天井面、
   前記絶縁カバー挿入部（１２）の天井面に絶縁カバーの
   上板、下板圧入用の突起（１１）、（１１ａ） を形成し
   たことを特徴とするコイルボビン。
2. 【請求項２】 前記上記フランジ（４）の前面側および
   背面側の外端部に段部（７）を形成して凹段部（８）を
   形成し、かつ前記絶縁カバー取付部（９）、（１０）は
   前面側および背面側の両端部にそれぞれ一対ずつ形成さ
   れ、一対の絶縁カバー取付部（９）、（１０）のうち一
   端部側の絶縁カバー取付部（９）の基部（９ａ）は前記
   段部（７）上に設けられ、他端部側の絶縁カバー取付部
   （１０）の基部（１０ａ）は圧入されてきた絶縁カバー
   の位置決め用として前記凹段部（８）上に設けた請求項
   １記載のコイルボビン。
3. 【請求項３】 絶縁カバー挿入部（９）、（１０）はそ
   の前方または側方から絶縁カバーを挿入可能とした請求
   項１記載のコイルボビン。