JP3354780B2 - リヤシートのアームレスト構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は自動車用リヤシート
のアームレスト構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、実開昭６２−６１３７号公報に開
示されているように、シートバックの両側部にアームレ
ストを設けた自動車用シートが知られている。一般の自
動車用シートは、シートバックの側部上側を切り欠いて
細幅とし、アームレストがこの切欠部に納まるように構
成されている。そして、アームレストの下端部がシート
バックに対し前後に回動可能に取り付けられている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、アームレス
ト付きのリヤシートの場合、リヤシートをリクライニン
グ状態またはフルフラット状態とするため、シートバッ
クを後方へ倒そうとすると、アームレストがシートの後
部に位置するホイールハウスもしくはホイールハウスの
室内側を覆うトリムと干渉し、倒すことができない。

【０００４】そこで、従来では、リヤシートを前方へス
ライドさせた状態でのみシートバックを後方へ倒すこと
ができるようにしたものがある。しかし、この場合に
は、通常使用状態からフルフラット状態に変更しようと
しても、一旦リヤシートを前方へスライドさせる必要が
あるため、即座に変更できない。

【０００５】また、リヤシートを前方へスライドさせな
くてもシートバックを後方へ倒すことができるようにす
るため、アームレストをシートバックに対して前方へ倒
したうえでシートバックを後方へ倒すことができるよう
にしたものもある。この場合には、アームレストがホイ
ールハウスと干渉することはないが、アームレストが上
方に起立することになるので、アームレストを肘掛けと
して使用できない。

【０００６】そこで、本発明の目的は、アームレストと
ホイールハウスとの干渉を防止し、通常の着座姿勢から
フルフラット姿勢やリクライニング姿勢への変更が容易
なリヤシートのアームレスト構造を提供することにあ
る。また、他の目的は、シートバックを後傾させた時で
も、アームレストを肘掛けなどとして使用可能なリヤシ
ートのアームレスト構造を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項１に記載の発明は、後倒可能なシートバック
の両側部にアームレストを配置した自動車用リヤシート
において、シートバックの両側部下部に、シートバック
と別体のサイドクッションを配置するとともに、その前
面が通常着座姿勢のシートバックとほぼ面一となるよう
に車体に固定し、サイドクッションの上部に、前面がサ
イドクッションとぼぼ面一となる起立位置と水平な前倒
位置との間で回動可能なアームレストを設け、サイドク
ッションの後部に、ホイールハウスの室内側を覆うデッ
キサイドトリムを設け、アームレストを水平に前倒させ
た時にアームレストの背面とデッキサイドトリムの上面
とがほぼ面一状に連続するように、デッキサイドトリム
の上面を平坦に形成したものである。

【０００８】リヤシートのシートバックを後方へ倒す
と、アームレストはシートバックとは別体でかつ車体に
取り付けられているので、シートバックのみが倒れる。
そのため、リヤシートを前方へスライドさせなくても、
アームレストがリヤシート後部のホイールハウスと干渉
することがなく、シートバックを後方へ簡単に倒すこと
ができる。また、シートバックを後方へ倒してリクライ
ニング姿勢またはフルフラット姿勢とした時でも、シー
トバックの角度とは無関係にアームレストを起立位置と
前方水平位置とに調整できる。そのため、リクライニン
グ姿勢またはフルフラット姿勢においても、アームレス
トを肘掛け等として使用できる。

【０００９】この発明の場合、アームレストを前方水平
位置へ倒した時、アームレストの背面とデッキサイドト
リムの上面とがほぼ面一状に連続するので、平坦な広い
スペースを確保できる。このスペースを肘掛けとして使
用できることは勿論、簡易テーブル等としても用いるこ
とが可能である。

【００１０】

【発明の実施の形態】図１〜図６は本発明を適用したレ
クリエーショナル車（以下、ＲＶ車と呼ぶ）の一例を示
す。１は車体、２はフロアパネル、３はフロントシー
ト、４はリヤシートである。フロントシート３およびリ
ヤシート４はリクライニング機構を備えており、シート
バック３ａ，４ａは後倒可能である。なお、通常の多段
ロック式リクライニング機構でなくても、ロック装置を
有しない後倒れ機構のみでもよい。車体１の後部には荷
室５が形成され、荷室５に対応するフロアパネル２の後
端部には収納用凹所６が形成され、この凹所６内に工具
やロープなどの小物を収納し得るようになっている。

【００１１】フロアパネル２上には、上記凹所６を閉鎖
する木製または樹脂製のデッキボード１０が載置されて
いる。このデッキボード１０は前後に３分割されてお
り、最前部の第１ボード１１と中間部の第２ボード１２
と最後部の第３ボード１３とで構成されている。第２ボ
ード１２と第３ボード１３は前後、左右の寸法が同一に
形成されており、これらボード１２，１３は互いにヒン
ジ１４を介して回動可能に連結されている。また、第２
ボード１２の裏面にはほぼ全面にクッションパッド１５
が取り付けられている。

【００１２】第２ボード１２と第３ボード１３の左右の
幅寸法はリヤシート４のシートバック４ａと同長であ
る。また、シートバック４ａを後方へ水平に倒した時、
シートバック４ａの頂部が第３ボード１３の前縁と合致
するように、第１ボード１１と第２ボード１２の前後の
幅寸法が設定されている。さらに、クッションパッド１
５の厚みはシートバック４ａの厚みとほぼ同等に設定さ
れている。

【００１３】リヤシート４のシートバック４ａの両側部
下部には、シートバック４ａと別体のサイドクッション
４ｂが配置されている。これらサイドクッション４ｂも
シートバック４ａと同様にクッション部材で構成されて
おり、その前面が通常着座姿勢のシートバック４ａとほ
ぼ面一となるように、やや後傾姿勢で車体１に固定され
ている。サイドクッション４ｂの上端部には、アームレ
スト４ｃの下端部が枢着されている。すなわち、アーム
レスト４ｃは、その前面がサイドクッション４ｂとぼぼ
面一となるやや後傾した起立位置と水平な前倒位置との
間で回動可能である。

【００１４】上記サイドクッション４ｂの後部には、ホ
イールハウス７（図１参照）の室内側を覆う箱型のデッ
キサイドトリム１６が配置されている。デッキサイドト
リム１６の上面１６ａは、アームレスト４ｃを前方へ水
平に倒した時（図３〜図６参照）、アームレスト４ｃの
背面とほぼ面一状に連続するように、水平な平坦面に形
成されている。

【００１５】図７はリヤシート４の右側のサイドクッシ
ョン４ｂとアームレスト４ｃの取付機構を示す。２０は
ブラケットであり、後方へ水平に折り曲げられた上端部
２１はナット２２によってホイールハウス７の上面に締
結され、垂直な中間部２３はボルト２４によって同じく
ホイールハウス７の前面に締結される。さらに、前方へ
水平に折り曲げられた下端部２５には長孔２６が形成さ
れ、この長穴２６にサイドクッション４ｂの上端部後面
から突出したフレーム２７の掛止部２７ａを掛止するこ
とにより、サイドクッション４ｂの上端部は固定され
る。なお、この掛止部２７ａは、デッキサイドトリム１
６の前面に形成された開口穴１６ｂからデッキサイドト
リム１６の内部に挿入され、ブラケット２０の長穴２６
に掛止される。また、サイドクッション４ｂの下端部に
はフレーム２７の他端部２７ｂが突出しており、この端
部２７ｂに取付金具２８が固定されている。この金具２
８は、シートベルト２９のアンカ３０と共に、ボルト３
１によってホイールハウス７の側面に締結されている。

【００１６】ブラケット２０の中間部２３両側には、一
対のヒンジ部３２，３３が前方へ折曲形成されており、
これらヒンジ部３２，３３はデッキサイドトリム１６の
前面に形成された開口穴１６ｂを介して前方へ突出して
いる。ヒンジ部３２，３３にはボルト３４を挿通可能な
軸穴３２ａ，３３ａが形成され、内側のヒンジ部３２の
軸穴３２ａにはボルト３４と螺合するナット３５が固定
されている。なお、ボルト３４の頭部が外部に露出しな
いように、外側のヒンジ部３３の外側は樹脂製のヒンジ
カバー３６で覆われている。

【００１７】アームレスト４ｃは、図８，図９に示すよ
うに、骨組みとなるフレーム４０とその外周を覆うパッ
ド４１とで構成されている。フレーム４０は前方に向か
って略Ｕ字形に折り曲げられた金属板よりなり、その下
端部背面には、両端にフリクションスプリング部４２ａ
を有するばね鋼板４２が固定されている。上記フリクシ
ョンスプリング部４２ａは、図１０のようにアームレス
ト４ｃの幅方向に弾性変形可能に形成され、中央に上記
ボルト３４が挿通される穴４２ｂを有する。フリクショ
ンスプリング部４２ａは、ブラケット２０のヒンジ部３
２，３３の内側面と圧接し、スプリング反力による摩擦
力で回転時の節度感を与えることができる。

【００１８】フレーム４０の下端部内側には、図１１の
ようにボルト３４を通すためのガイドパイプ４３が固定
されており、このガイドパイプ４３の穴はフリクション
スプリング部４２ａの穴４２ｂに対応している。なお、
図１１ではばね鋼板４２を省略してある。また、フレー
ム４０の下端部には、幅方向に延びる２本のストッパピ
ン４４，４５が固定されており、フレーム４０から突出
したストッパピン４４，４５の端部がヒンジ部３２，３
３のストッパ部３２ｂ，３３ｂと当たることにより、ア
ームレスト４ｃの回動角度を約１１０°に規制してい
る。

【００１９】パッド４１の下端部には、内側のヒンジ部
３２が挿入されるスリット４６が形成されている。スリ
ット４６を挟んでその外側部４１ａを補強するため、フ
レーム４０には補強用ワイヤー４７が固定されている。
フレーム４０の下端部とフリクションスプリング部４２
ａとストッパピン４４，４５の端部は、パッド４１の外
側面とスリット４６の内側面とに露出している。特に、
内側のヒンジ部３２に固定されたナット３５は、スリッ
ト４６の内部でボルト３４と螺合するので、締結部分が
外部に露出せず、見映え品質が良くなる。

【００２０】次に、上記構成よりなるリヤシート４およ
びアームレスト４ｃの使用方法を説明する。図１，図２
はリヤシート４を通常の着座姿勢とした場合であり、シ
ートバック４ａとサイドクッション４ｂとの前面が面一
状となる。この場合は、アームレスト４ｃもシートバッ
ク４ａおよびサイドクッション４ｂと面一状になるよう
起立させることにより、広い背もたれ面積を確保でき
る。

【００２１】図３，図４はアームレスト４ｃを水平位置
まで前倒させるとともに、リヤシート４をリクライニン
グさせた場合である。アームレスト４ｃを前倒させるこ
とにより、アームレスト４ｃの背面とデッキサイドトリ
ム１６の上面１６ａとが面一状に連続するので、広い肘
掛けスペースを確保できる。このスペースを簡易テーブ
ルとして使用することも可能である。この場合には、シ
ートバック４ａを後方へリクライニングさせても、アー
ムレスト４ｃはシートバック４ａの後傾と連動しないの
で、アームレスト４ｃがデッキサイドトリム１６と干渉
することがなく、常に水平位置を保つことができる。

【００２２】図５，図６はリヤシート４をフルフラット
とした場合である。この場合には、第２ボード１２をヒ
ンジ１４を支点として後方へ回動させ、第２ボード１２
のクッションパッド１５が上向きになるように第２ボー
ド１２を第３ボード１３の上に折り返す。そして、シー
トバック４ａからヘッドレスト４ｄを引き抜き、シート
バック４ａを後方へ水平位置まで倒す。このように、シ
ートバック４ａを後倒させた時、シートバック４ａの頂
部がクッションパッド１５の前面とほぼ接触状態とな
り、しかもシートバック４ａの上面とクッションパッド
１５の上面とがほぼ面一状態となる。そのため、フラッ
トな寝台スペースを作ることができる。

【００２３】この場合も、アームレスト４ｃを水平に前
倒させることにより、アームレスト４ｃの背面とデッキ
サイドトリム１６の上面１６ａとが面一状に連続する。
また、左右のアームレスト４ｃおよびデッキサイドトリ
ム１６の上にテーブル板を架け渡して載置すれば、例え
ば座卓として用いることも可能である。

【００２４】本発明は上記実施例に限定されるものでは
ない。上記実施例では、アームレストを前倒れのみ可能
としたが、角度調整可能としてもよい。また、アームレ
ストを水平位置と起立位置との２位置でロックするロッ
ク機構を別途設けてもよい。また、上記実施例では、リ
ヤシートの後部に荷室空間を設けたが、リヤシートの後
部に３列目のシートを配置した車両にも適用できる。さ
らに、リヤシートを前後にスライドできるように、スラ
イド機構を設けてもよい。

【００２５】

【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
よれば、シートバックと別体のサイドクッションをシー
トバックの両側部下部に配置し、サイドクッションの上
端部に起立位置と水平な前倒位置との間で回動可能なア
ームレストを装着したので、シートバックを通常の着座
姿勢から後倒させた時、アームレストがシートバックと
連動せず、アームレストが後部のサイドデッキトリムと
干渉することがない。そのため、シートバックをフルフ
ラット姿勢やリクライニング姿勢に変更する作業が非常
に簡単である。また、アームレストの角度をシートバッ
クとは別個に前倒位置に調整できるので、従来のような
シートバックに取り付けられたアームレストと違い、フ
ルフラット姿勢やリクライニング姿勢においても、アー
ムレストを肘掛けなどとして使用できる。さらに、本発
明の場合、前倒時のアームレストの背面とデッキサイド
トリムの上面とがほぼ面一状に連続するので、広い肘掛
けスペースを確保できるとともに、テーブル等の載せ台
として用いることも可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明にかかるデッキボードを備えた自動車の
後部室内の斜視図である。

【図２】図１の自動車の通常着座姿勢における概略断面
図である。

【図３】リヤシートをリクライニング姿勢とした状態の
室内斜視図である。

【図４】図４における自動車の概略断面図である。

【図５】リヤシートをフルフラット姿勢とした状態の室
内斜視図である。

【図６】図５における自動車の概略断面図である。

【図７】リヤシートの右側サイドクッションとアームレ
ストの分解斜視図である。

【図８】アームレストを斜め前方から見た斜視図であ
る。

【図９】アームレストのフレームの斜視図である。

【図１０】フリクションスプリング部の拡大斜視図であ
る。

【図１１】図９のフレームのヒンジ部分の斜視図であ
る。

【符号の説明】

４ リヤシート ４ａ シートバック ４ｂ サイドクッション ４ｃ アームレスト ７ ホイールハウス １６ デッキサイドトリム

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B60N 2/46 A47C 7/54 B60N 2/22 B60N 2/34

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】後倒可能なシートバックの両側部にアーム
   レストを配置した自動車用リヤシートにおいて、 上記シートバックの両側部下部に、シートバックと別体
   のサイドクッションを配置するとともに、その前面が通
   常着座姿勢のシートバックとほぼ面一となるように車体
   に固定し、 上記サイドクッションの上部に、前面がサイドクッショ
   ンとぼぼ面一となる起立位置と水平な前倒位置との間で
   回動可能なアームレストを設け、 上記サイドクッションの後部に、ホイールハウスの室内
   側を覆うデッキサイドトリムを設け、 上記アームレストを水平に前倒させた時にアームレスト
   の背面とデッキサイドトリムの上面とがほぼ面一状に連
   続するように、デッキサイドトリムの上面を平坦に形成
   し たことを特徴とするリヤシートのアームレスト構造。