以下、図面を参照して本考案の一実施例を説明する。以下で説明する各実施例は、自動車用内燃機関の制御に用いられる制御装置を対象としているが、自動車用内燃機関に限らず種々の制御装置に適用可能である。しかし、以下で説明する各実施例は、厳しい環境に設置され、長期に亘って高い信頼性が要求される自動車用内燃機関制御装置として用いられるのに好適な構造を有している。
図1は本考案に係る第1実施例の構成を示す断面図である。図示しない装置を電気的に制御するために電子部品1Aとパターンにより構成された回路とを有する基板1は、外部との電気的な接続をするための接栓座となるコネクタ2の端子21と半田4により接続されている。また、基板1と基板1に取り付けられたコネクタ2とは、基板1の一方の基板面がカバー6の内面と対向して覆われるように、カバー6にねじ5により固定されている。放熱用のフィン31を有するケース3に、ねじ5により固定されている。カバー6に基板1が組み付けられた後、基板1の他方の基板面がケース3の内面と対向して覆われるように、カバー6がネジ9によりケース3に固定される。この際にケース3に設けられている伝熱用ボス32に伝熱部材7が設置され、この伝熱部材7を介して電子部品1Aの熱がケース3に伝熱されるように構成されている。コネクタ2はケーブルに接続された接栓と連結される側の端部がケース3の開口部3oから外部に突出して露出するように、カバー6とケース3とが組み付けられる。
また、ケース3とカバー6の間には防水性、防塵性及び防錆能力を確保するための防水用接着剤8が配置されている。防水用接着剤8が配置されるケース3とカバー6との接合部には、防水構造部が構成される。ケース3の防水構造部には、凹部33が設けられており、一方の構造体であるカバー6の防水構造部にも同様に凹部61が設けられており、これらが組み合わされて構成させる隙間部に充填されるように防水用接着剤8が塗布されている。防水構造部は、ケース3とカバー6との接合部(合わせ面)に構成され、ケース3の防水構造部を構成する凹部33と、カバー6の防水構造部を構成する凹部61と、防水用接着剤8とで構成される。
ケース3はカバー6との接合部に1つの凹部33を有し、カバー6はケース3との接合部に2列の凹部61a,61bを有している。ケース3側の凹部33を形成する2つの側壁部3a,3bがそれぞれカバー6側の2列の凹部61a,61bに分かれて挿入されている。そして、カバー6側の2列の凹部61a,61bの内側面とケース3の面とが対向する隙間部の全範囲に防水接着剤8が充填されている。ここで、2列の凹部61a,61bの内側面とは、側壁部6aの側壁面61aaと仕切壁6bの側壁面61abと底面61acと仕切壁6bの側壁面61baと側壁部6cの側壁面61bbと底面61bcと仕切壁6bの先端面6baのことである。仕切壁6bの先端面6baは凹部61a,61bの窪みの外側に位置しているが、仕切壁6bは凹部61の内側にあって凹部61aと凹部61bとを分けている部分であるため、2列の凹部61a,61b(すなわち、凹部61)の内側面を構成する面である。以下、詳細に説明する。
ケース3の防水構造部を構成する凹部33は、側壁部3aで構成される側壁面33aと、側壁部3bで構成される側壁面33bと、底面33cとで構成され、ケース3のカバー6と接合される周縁部(接合部)に沿って溝状に形成されている。また、カバー6の防水構造部を構成する凹部61は、側壁部6aと仕切壁6bと側壁部6cとにより、二列の凹部61a,61bとして形成されている。凹部61aは側壁部6aで構成される側壁面61aaと仕切壁6bで構成される側壁面61abと底面61acとにより、カバー6のケース3と接合される周縁部(接合部)に沿って溝状に形成されている。凹部61bは仕切壁6bで構成される側壁面61baと側壁部6cで構成される側壁面61bbと底面61bcとにより、カバー6のケース3と接合される周縁部(接合部)に沿って溝状に形成されている。凹部(溝)61aは凹部(溝)61bと仕切壁6bにより隔てられて凹部(溝)61bの外周側に形成されている。
防水構造部には、内周側から外周側に向かって、カバー6の側壁面61bbとケース3の側壁部3bの内周側側壁面33baとの間に形成される第1の隙間81と、側壁部3bの先端面3bbと凹部61bの底面61bcとの間に形成される第2の隙間82と、側壁部3bの外周側側壁面33bと仕切壁6bの内周側側壁面61baとの間に形成される第3の隙間83と、仕切壁6bの先端面6baと凹部33の底面33cとの間に形成される第4の隙間84と、仕切壁6bの外周側側壁面61abと側壁部3aの内周側側壁面33aとの間に形成される第5の隙間85と、側壁部3aの先端面3abと凹部61aの底面61acとの間に形成される第6の隙間86と、側壁部3aの外周側側壁面33aaと側壁部6aの内周側側壁面61aaとの間に形成される第7の隙間87とが形成されている。
これらの第1〜第7の隙間81〜87はラビリンス構造の隙間(ラビリンスシール)を構成しており、さらに各隙間81〜87には防水用接着剤8が充填されている。このラビリンス構造の隙間81〜87は複数回に亘って折れ曲がった隙間(つづら折れの隙間)を形成する。また、この隙間81〜87はケース3とカバー6とによって形成される内部空間と外部とを連通する隙間であり、ケース3とカバー6とによって形成される内部空間と外部との間に延設されている。そして隙間81〜87に防水用接着剤8が充填されることにより、隙間81〜87が液密に構成されている。
これらの隙間のうち、第1、第3、第5及び第7の隙間の寸法が、第1、第3、第5及び第7の隙間の順に次第に大きくなるように構成すると良い。すなわち、Gb1<Gb3<Gb5<Gb7の関係となるように構成する。或いは、第1〜第7の全ての隙間の寸法が、第1〜第7の隙間の順に次第に大きくなるように構成すると良い。すなわち、Gb1<Gb2<Gb3<Gb4<Gb5<Gb6<Gb7の関係となるように構成する。これは、側壁間にできる隙間或いは側壁の先端面と凹部の底面との間にできる隙間のうち、側壁間にできる隙間のみにおいてまたは両方の隙間において、制御装置内周側よりも外周側の方に構成される隙間の方が、隙間寸法が大きくなるように形成されることを意味する。
上述した隙間寸法を実現するために、本実施例では、凹部61bの溝幅に対して凹部33の溝幅の方が、また凹部33の溝幅に対して凹部61aの溝幅の方が大きくなるように、各溝幅寸法が設定されている。
本実施例では、各隙間寸法を上述のように構成することにより、カバー6の凹部61bに接着剤を塗布して、ケース3の凹部33を上述した第1〜第7の隙間が形成されるようにカバー6の凹部61に組み付ける際に、各隙間寸法を上述のように構成することにより、接着剤が隙間寸法の大きくなる方に向かって押し流される。すなわち、接着剤は内周側から外周側に向かって押し流され、カバー6の凹部61bから凹部61aに押し流され、各隙間に充填される。最終的には、接着剤は外周側において隙間から溢れだし、盛り上がった形状(盛上り形状)を形成する。これにより、ケース3とカバー6との接合部に凹状部が形成されるのを防ぎ、水等が溜まり難くい接合部構造(防水構造部)を作る。
本実施例では、ケース3とカバー6とが対向面する部分において、外周側から内周側の全範囲に亘って接着剤(シール剤)が充填される隙間87〜81が形成されている。これにより、ケース3とカバー6とによって構成される筐体(ハウジング)の外周側と内周側とを結ぶ方向における接着距離を長くすることができる。これにより、より強力な接着強度と、長期間に亘る防水性能とを確保することができる。また、このような性能を凹部33と凹部61とによるラビリンス構造で実現できるため、ケース3とカバー6との表面積の拡大を抑制し、筐体の小型化に寄与できる。
図2は本考案に係る第2実施例の構成を示す断面図である。図1(第1実施例)に対する変更点として、凹部61bを構成する側壁部6bの内周側側壁面61baと凹部33を構成する側壁部3bの外周側側壁面33bとを、凹部33及び凹部61bの溝幅方向において、第3の隙間83の外周側端部が内周側端部に対してより外周側に位置するように傾斜させている。すなわち、第3の隙間83が傾斜して設けられている。その他の構成は第1実施例と同じである。本実施例によれば、ケース3の凹部33とカバー6の凹部61とが組み合わされる際に隙間に介在する防水用接着剤8が制御装置外周側に押し出されやすくなる。本実施例では、第3の隙間83のみが傾斜して設けられているが、第1〜第7の隙間において、少なくとも2つの隙間の間で制御装置の内周側よりも外周側に位置する隙間の傾斜角度が大きくなるように傾斜を設けてもよい。
本実施例では、カバー6側に設けられた凹部33の側壁部3a,3bとケース3側に設けられた凹部61の側壁部6a,6b,6cとのうち、相互に対向する2つの側壁の各壁面が同じ方向に傾斜して設けられる。この場合、各壁面の傾斜方向は、ケース3とカバー6とによって外部から仕切られた内部と外部との間に延設された隙間81〜87における内部と外部とを結ぶ経路中において、各壁面によって形成される隙間部分の外部側の端部が内部側の端部よりも内部(内部空間)から離れて遠ざかる位置に位置するような傾斜方向である。
図3は本考案に係る第3実施例の構成を示す断面図である。図1(第1実施例)に対する変更点として、ケース3の側壁部3aの先端面(下端面)3abに切欠き部(凹凸形状)37を設け、カバー6の側壁部6bの先端面(上端面)6baに切欠き部(凹凸形状)64を設けている。本実施例では、側壁部3aと側壁部6bとの両方に設けているが、いずれか一方に設けてもよい。その他の構成は第1実施例と同じである。本実施例では、カバー6とケース3とが組み合わされる際に、隙間に介在する防水用接着剤8が切欠き部(凹凸形状)37又は64を通じて外周側に押し出されることにより、外周側に構成される溝部に防水用接着剤8が流れ込み易くすることができる。
本実施例の切欠き部(凹凸形状)37又は64のいずれか一方、或いは両方を第1実施例及び第2実施例に適用してもよい。或いは、第1実施例、第2実施例及び第3実施例を組み合わせてもよい。
図4は本考案に係る第4実施例の構成を示す断面図である。図1(第1実施例)に対する変更点として、ケース3をプレス工法により成形した例を示す。ケース3の代わりにカバー6をプレス工法により成形してもよい。すなわち、ケース3とカバー6とのうちのいずれか一方をプレス工法により成形する。ケース3とカバー6とのうちいずれか一方には、基板7を固定するネジ穴を設ける必要がある。ケース3とカバー6との両方をプレス工法により成形すると、基板7を固定するネジ穴が外部に貫通してしまい、液密の点から好ましくない。その他の基本構成は第1実施例と同じであり、第1〜第7の隙間81〜87、凹部33,61は同様に設定されている。本実施例の切欠き部(凹凸形状)37又は64のいずれか一方、或いは両方を第2実施例又は第3実施例に適用してもよい。或いは、第1〜第4実施例の少なくとも2つの実施例を組み合わせてもよい。
図5Aは本考案の第5実施例に係り、ケース3及びカバー6を固定するためのねじ9による締結部93の周囲を、カバー6を実線で示す平面図である。また図5Bは本考案の第5実施例に係り、ケース3及びカバー6を固定するためのねじ9による締結部93の周囲を、ケース3を実線で示す平面図である。凹部33と61とが組み合わされることで構成される溝部(防水構造部)には、外周側の溝部61aと内周側の溝部61bとが構成されることになり、ねじ9による締結部93は、溝61aと溝61bとの間に配置されている。ねじ9による締結部93の両側には、溝61aと溝61bとを連結(連通)するように切欠き部65が設置されている。このように、切欠き部65は溝61aと溝61bとの連通部を構成する。
本実施例では、締結部93はケース3側の凹部33の側壁部3aに設けている。しかし、カバー6側の凹部61とケース3側の凹部33とを入れ替え、カバー6側の凹部を凹部33のように構成し、ケース3側の凹部を凹部61のように構成することもできる。この場合、締結部93はカバー6側の凹部の側壁部に設けられることになる。切欠き部65は締結部93の両側又は片側で締結部93が設けられる側壁部を分断するように1ケ所以上設ければよい。
他の部位とは異なりねじ9による締結部93の外周側の溝61aの部分には防水用接着剤8を塗布する必要があり、ねじ9による締結部93の外周側の溝61aの部分と内周側の溝61aの部分を確実に連結させるために切欠き部65が設けられている。以下、詳細に説明する。
ケース3とカバー6との組立てにあたっては、組立て前に予め凹部61bに防水用接着剤(シール剤)8を塗布し、組付け時にケース3の側壁部3bが凹部61bの防水用接着剤8を第3の隙間83及び第4の隙間84を通じて凹部61a側に押し出す。凹部61a側に押し出された防水用接着剤8は、第5の隙間85及び第6の隙間86を通じて第7の隙間87側に溢れだすことで、防水用接着剤8が第1〜第7の隙間81〜87(凹部61a及び61b)に行き渡るようにする。
このとき、ねじ9による締結部93以外のケース3の側壁部3aの端面3abは、凹部33の底面33cからの高さが端面93aの高さよりも低く、端面3abと凹部61aの底面61acとの間に第6の隙間86が構成されている。しかし、締結部93のカバー3側の端面93aはカバー6の溝61aの底面61acと当接している必要があるため、第6の隙間86が存在しない。このため、ケース3とカバー6との組付け時に、防水用接着剤8が凹部61aにおける締結部93の外周側に流れ難くなる。このため、上述したようにねじ9による締結部93の外周側の溝61aの部分には防水用接着剤8を塗布する。しかし、締結部93の外周側の溝61aの部分に塗布した防水用接着剤8と第6の隙間86から外周側に流れ出てくる接着剤とが十分に合流するようにして、防水用接着剤8による防水性が発揮されるようにする必要がある。
本実施例では、締結部93の近傍に溝61aと溝61bとを連通する切欠き部(連通部)65が形成されているため、防水用接着剤8が切欠き部65を通じて凹部61aにおける締結部93の外周側に流れ易くなる。これにより、締結部93の外周側の溝61aの部分に塗布した防水用接着剤8と第6の隙間86から外周側に流れ出てくる接着剤とが十分に合流することができる。そして防水用接着剤8による防水性が確実に発揮される。
なお、「防水」とは単に「水」に限らず、液体に対するシールを意味するものであり、液密にすることをしている。
さらに、図5Aに示すように、カバー6の角部(コーナー部)にはねじ9が挿通される貫通孔91が形成されている。また貫通孔91の近傍にはカバー6とケース3との位置決めを正確に行うための突起(位置決め部)71が設けられている。一方、カバー6の角部に対向するケース3の角部(コーナー部)には、図5Bに示すように、ねじ9が螺合されるねじ穴(ねじ溝が螺刻された孔)92が設けられている。また、ねじ穴92の近傍には突起71が嵌め合わされる位置決め用の凹部(位置決め部)72が設けられている。貫通孔91とねじ穴92とはケース3とカバー6とのいずれに設けられてもよい。また、位置決め用の突起71と位置決め用の凹部72とはケース3とカバー6とのいずれに設けられてもよい。本実施例では、カバー6とケース3との位置決め手段として突起71と凹部72とを用いたが、他の手段で構成してもよい。要は、カバー6側の位置決め部とケース3側の位置決め部とが当接することにより、カバー6とケース3との正確な位置決めを行い、防水構造部に上述した隙間81〜87が構成されるようにすることが必要である。
なお、上述した以外の基本構成は第1実施例と同じである。また、本実施例で説明した構成は第1〜第4実施例に対して共通して適用可能な技術であり、第1〜第4実施例の全て或いは少なくともいずれか一つと組み合わせることができる。
図6は本考案の第6実施例に係り、外部との接続のためのコネクタ2部に対し本考案を適用した実施例を示す断面図である。基本の構成は第1実施例で説明した構成と同じである。また、第1〜第5実施例の全て或いは少なくともいずれか一つと組み合わせることができる。
本実施例では、コネクタ2を外部に露出させるためのケース3に形成された開口部の周縁部に沿って凹部(溝部)35を設けている。凹部35はケース3の内部側から外部に向かって凹形状を成すように形成されている。また、コネクタ2の外周部に沿って凹部(溝部)34を設けている。凹部34はケース3の外部側から内部に向かって凹形状を成す。凹部35における開口部中央側(開口部内側)に位置する側壁部35aを、コネクタ2側に形成された凹部24に挿入することにより、凹部35と凹部34とはラビリンス状の隙間101〜105を構成する。この隙間101〜105に防水用接着剤8が充填されることにより、隙間101〜105は液密に構成され、防水構造部が構成される。
更に、防水構造部における凹部35の凹形状の裏面側は、制御装置の外側に凸となるように、前記ケース表面から突出すように形成された凸状部12が形成されている。これにより制御装置の外部から被水した際に防水部の外部に排水されやすく構成されている。また、この凸部12には防水用接着剤8が塗布されている部位から傾斜13が設けられており、更に排水効果を高めている。すなわち、凸状部12は、凹部35の開口部中央側に位置する側壁部35a側が開口部外側に位置する側壁部35b側よりも高くなるように傾斜している。
上述した各実施例において、凹部33及び凹部61は上記個数に限るものではなく、さらに個数を多くしてもよい。また、凹部61を凹部61aと凹部61bとの2つの凹部で構成せず、1つの凹部で構成してもよい。この場合も、凹部33と凹部61とで構成されるラビリンス状の隙間は筐体の内側から外側に連通するように形成され、その隙間に防水用接着剤8が充填されている。しかし、接着距離を長くして防水構造部の長期信頼性を確保すると共に、ケース3及びカバー6の表面積の不要な増大を避けるためには、上述したように、ケース3とカバー6とに構成される各凹部33,61のうち、一方の凹部(実施例では凹部33)を1つの凹部(1列の溝)で構成し、他方の凹部(実施例では凹部61)は2つの凹部(2列の溝)で構成することが望ましい。
なお、本考案は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本考案を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。