JP2964519B2 - 四輪駆動用変速機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この発明は四輪駆動用変速機に係り、特に変速機に連
絡する終減速用差動機を有するとともに、前後車輪への
回転力の差動を調整するトランスファを有する四輪駆動
用変速機に関する。

［従来の技術］ 車両の変速機にトランスファが接続され、このトラン
スファによって前後車輪への回転力の差動を調整してい
る。

また、トランスファの回転軸にはプロペラシャフトを
介して例えばリヤデファレンシャルギヤが接続されてお
り、回転軸によって回転力を後車輪に伝達させている。

このトランスファは、一端側にリングギヤを設けたト
ランスファ軸を有し、リングギヤで掻き上げられた潤滑
油を回転軸の軸受部位に供給されている。また、トラン
スファ軸の他端側には、差動機の終減速歯車が噛合して
おり、前記変速機からの駆動力をトランスファ軸に伝達
させている。

四輪駆動用変速機としては、特公昭63−39450号公報
に開示されるものがある。この公報に開示される車両用
パワーユニットは、副変速機構を、クラッチケースの端
壁とミッションケースとの間に両端部を回転自在に支承
させて入・出力軸と平行な副軸と、両端部が嵌合支持さ
れる中間軸と、中間軸に回転自在に嵌合される副入力歯
車と、副軸に固設される副出力歯車と、副入力歯車の一
側に一体に形成される減速入力歯車と、減速出力歯車
と、同期機構とによって構成し、既存の変速機および車
体構造を変更することなく、大幅な減速比が得られる副
変速機構を付設するとともに、副変速機構の組付作業を
容易としている。

また、特公平１−16687号公報に開示されるものがあ
る。この公報に開示される４輪駆動装置は、トランスフ
ァケースをその少なくとも一部分においてクラッチハウ
ジングのフロントディファレンシャルの収容部分のエン
ジン側側部で車体前後方向に延びる端面に合致させてク
ラッチハウジングにボトル止めし、４輪駆動用および２
輪駆動用の部品の共通化を図る駆動装置において、動力
伝達系をエンジンとの干渉を避け、しかも後輪駆動用出
力の取り出す機構の配置に関し十分な自由度を確保して
いる。

［発明が解決しようとする問題点］ ところで、従来の四輪駆動用変速機においては、第５
図に示す如く、変速機102は、前側差動機104とトランス
ファ106とを有するとともに、内燃機関（図示せず）か
らの駆動力を入力する歯車伝達系の入力軸たる変速機側
入力軸108と、この変速機側入力軸108の回転力を差動機
104に伝達させるべく中間軸たるカウンタ軸（図示せ
ず）とを有している。

前記変速機102は、駆動軸を介して前車輪（図示せ
ず）を回転させる差動機104に連結している。

この差動機104に連結するトランスファ106は、内部に
トランスファ軸110を有している。このトランスファ軸1
10の一端側にリングギヤ112が設けられているととも
に、他端側には被動歯車114が設けられている。これに
より、内燃機関の駆動力を分配するトランスファ106
は、前側差動機104の終減速歯車116と噛合する被動歯車
114により変速機102から伝達される駆動力を、リングギ
ヤ12を介して回転軸118に出力する。この回転軸118から
出力される駆動力は、接続具120を介して接続された図
示しない推進軸、後側差動機等を経て、図示しない後車
輪側に伝達されるものである。

前記変速機102は、第５図から明らかな如く、変速機
ケース122とクラッチハウジング124とトランスファケー
ス126とが連結される際に、内部の空間部位も連結さ
れ、一の内部空間を形成している。

そして、一の内部空間に潤滑油を供給し、各部の潤滑
を果たしている。

しかし、潤滑油として低粘性のATF（オートマチック
・トランスミッション・フルード、自動変速機油）を使
用してトランスファの潤滑を行う際には、ATFの使用量
が大であるとともに、ATFの量変化が著しく、ATFの温度
が上昇し易く、ベベルギヤ等の各ギヤの噛合部位や軸受
部位に油切れが惹起され、潤滑不良状態となるという不
都合がある。

また、手動式の変速機において、高粘性の潤滑油を使
用した際には、変速機の回転に伴って回転するデファレ
ンシャルギヤにより潤滑油が吸引され、トランスファへ
の潤滑が十分に行われないとともに、高粘性の潤滑油に
よって変速機のシクロン機構を潤滑することにより、シ
フトフィーリングへの影響が大となって悪化する惧れが
あるという不都合がある。

［発明の目的］ そこでこの発明の目的は、上述不都合を除去するため
に、四輪駆動用変速機に連絡する終減速用差動機を設け
るとともに、差動機の終減速歯車に被動歯車を噛合させ
て差動機トランスファを連絡して設け、トランスファの
トランスファ軸の一端側にトランスファベベルギヤに噛
合するリングギヤを設けるとともに他端側に被動歯車を
設け、リングギヤと被動歯車間とトランスファのトラン
スファ軸上に大径部を設け、差動機とトランスファとを
包囲するハウジングと大径部間にはオイルシール部を設
けて低粘性のオイルを収容する差動機側の第１空間部と
高粘性のオイルを収容するトランスファ側の第２空間部
との区画分離することにより、変速機内を２つの第１、
第２空間部に区画分離することができ、粘性の異なる潤
滑油を夫々供給して効率良く潤滑を果たし得る四輪駆動
用変速機を実現するにある。

［問題点を解決するための手段］ この目的を達成するためにこの発明は、前後車輪への
回転力の差動を調整するトランスファを有する四輪駆動
用変速機において、この変速機に連絡する終減速用差動
機を設けるととに差動機の終減速歯車に被動歯車を噛合
させて差動機にトランスファを連絡して設け、トランス
ファのトランスファ軸の一端側にトランスファベベルギ
ヤに噛合するリングギヤを設けるとともに他端側に前記
被動歯車を設け、前記リングギヤと被動歯車間の前記ト
ランスファのトランスファ軸上に大径部を設け、前記差
動機とトランスファとを包囲するハウジングと前記大径
部間には低粘性のオイルを収容する差動機側の第１空間
部と高粘性のオイルを収容するトランスファ側の第２空
間部とに区画分離するオイルシール部を設けたことを特
徴とする。

［作用］ 上述の如く構成したことにより、差動機とトランスフ
ァとを包囲するハウジングと大径部間に設けたオイルシ
ール部によって変速機内のトランスファと差動機とを差
動機側の第１空間部とトランスファ側の第２空間部とに
区画分離し、粘性の異なる潤滑油を夫々供給して効率良
く潤滑を果たしている。

［実施例］ 以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明す
る。

第１〜３図はこの発明の実施例を示すものである。第
１、２図において、２は四輪駆動用変速機、４は終減速
用前側差動機、６はトランスファである。

前記変速機２は、駆動軸を介して前車輪（図示せず）
を回転させる差動機４に連結している。

この差動機４に連結するトランスファ６は、内部にト
ランスファ軸８を有している。このトランスファ軸８の
一端8a側にリングギヤ10が設けられるとともに、他端8b
側には被動歯車12が設けられている。これにより、内燃
機関の駆動力を分配するトランスファ６は、前側差動機
４の終減速歯車14と噛合する被動歯車12により変速機２
から伝達される駆動力を、リングギヤ10を介してトラン
スファベベルギヤ16から回転軸18に出力する。この回転
軸18から出力される駆動力は、接続具20を介して接続さ
れた図示しない推進軸、後側差動機等を経て、図示しな
い後車輪側に伝達されるものである。

前記前側差動機４に連絡するトランスファ６のトラン
スファ軸８上には後述する差動機４側の第１空間部28と
トランスファ６側の第２空間部30とにを区画分離するオ
イルシール部22を設ける。

詳述すれば、前記トランスファ軸８の途中、例えば略
中央部位に大径部24を形成し、前側差動機４とトランス
ファ６とを包囲するハウジング26と大径部24間に環状オ
イルシール部22を介設する。そして、このオイルシール
部22によって内部を図示しない変速機２側である前側差
動機４側の第１空間部28とトランスファ６側の第２空間
部30とに区画分離するものである。

前記オイルシール部22は、第３図に示す如く、形状保
持用金属部32とこの金属部32を抱持する抱持部34と２本
の環状スプリング36−１、36−２とによってダブルリッ
プ形状に形成される。

そして、前記前側差動機４側の第１空間部28内に潤滑
油として低粘性のATF（オートマチック・トランスミッ
ション・フルード、自動変速機油）を供給すとともに、
トランスファ６側の第２空間部30内には高粘性の潤滑油
たるギヤオイルを供給する。

次に作用について説明する。

図示しない内燃機関の駆動によって前側差動機４の終
減速歯車14が回転すると、第１空間部28内の低粘性のAT
Fを掻き上げ、変速機２の歯車噛合部分やその他の部位
の潤滑が行われる。

また、前記終減速歯車14と噛合する被動歯車12により
前記トランスファ６のトランスファ軸８が回転すると、
前記オイルシール部22によって区画分離された第２空間
部30内の高粘性のギヤオイルが一端8a側のリングギヤ10
で掻き上げられ、回転軸18の軸受部位に潤滑油が供給さ
れる。

これにより、前記前側差動機４側の第１空間部28内に
低粘性のATFを供給することができるとともに、トラン
スファ６側の第２空間部30内には高粘性のギヤオイルを
供給することができ、オイルレベルの変化を少なくし得
るとともに、トランスファベベルギヤ16等の各ギヤの噛
合部位や軸受部位の潤滑を効率良く行うことができ、し
かも低粘性のATFのみを使用する従来のものに比し、ATF
の量を少なくすることができ、ATFの汚れも減少させ得
るものである。

また、前記オイルシール部22によって内部を変速機２
側である前側差動機４側の第１空間部28とトランスファ
６側の第２空間部30とに区画分離することにより、各潤
滑経路を短縮することができ、潤滑効率を向上し得る。

更に、前記オイルシール部22によって区画分離した第
１空間部28と第２空間部30内に、例えばATFやギヤオイ
ル以外の粘性の異なる潤滑油を供給することもできるこ
とにより、各歯車や軸受に合致する最良の潤滑油の供給
が可能となり、実用上有利である。

更にまた、前記前側差動機４とトランスファ６とを包
囲するハウジング26とトランスファ軸８途中の大径部24
間に環状オイルシール部22を介設することにより、オイ
ルシール部22がトランスファ軸８の防振や強度向上に寄
与するものである。

また、前記前側差動機４とトランスファ６とを一体化
することができることにより、別体のものに比し重量の
軽減及び小型化し得るとともに、自動変速機と手動変速
機とのレイアウトが略同一となり、推進軸や後側差動機
等の部品を共通とすることができ、経済的に有利であ
る。

更に、第２図において線分Ａから下部分のボトムケー
スＢやトランスファケースＣを付けかえるのみで、四輪
駆動から二輪駆動へ変更することも可能である。

なお、この発明は上述実施例に限定されるものではな
く、種々の応用改変が可能である。

例えば、この発明の実施例においては、前記前側差動
機４とトランスファ６とを包囲するハウジング26とトラ
ンスファ軸８途中の大径部24間に環状オイルシール部22
を介設する構成としたが、第４図に示す如く、前側差動
機４とトランスファ６とを包囲するハウジング26内周に
環状オイルシール部22を設け、この環状オイルシール部
22とトランスファ軸８途中の大径部24間に軸受40を介設
する構成とすることもできる。

また、この発明の実施例においては、変速機側である
前側差動機側の第１空間部内に潤滑油として低粘性のAT
F（オートマチック・トランスミッション・フルード、
自動変速機油）を供給する自動変速機について説明した
が、自動変速機の代わりに手動変速機とすることも可能
である。

［発明の効果］ 以上詳細に説明した如くこの発明によれば、四輪駆動
用変速機に連絡する終減速用差動機を設けるとともに差
動機の終減速歯車に被動歯車を噛合させて差動機にトラ
ンスファを連絡して設け、トランスファのトランスファ
軸の一端側にトランスファベベルギヤに噛合するリング
ギヤを設けるとともに他端側に被動歯車を設け、リング
ギヤと被動歯車間のトランスファのトランスファ軸上に
大径部を設け、差動機とトランスファとを包囲するハウ
ジングと大径部間には低粘性のオイルを収容する差動機
側の第１空間部と高粘性のオイルを収容するトランスフ
ァ側の第２空間部とに区画分離するオイルシール部を設
けたので、粘性の異なる潤滑油を供給することができ、
オイルレベルの変化を少なくし得るとともに、各ギヤの
噛合部位や軸受部位の潤滑を効率良く行うことができ、
しかも従来のものに比し、ATFの量を少なくすることが
でき、ATFの汚れも減少させ得るものである。また、前
記オイルシール部によって内部を区画分離することによ
り、各潤滑経路を短縮することができ、潤滑効率を向上
し得る。更に、オイルシール部がトランスファ軸の防振
や強度向上に寄与し得るものである。更にまた、前記差
動機とトランスファとを一体化することができることに
より、別体のものに比し重量の軽減及び小型化し得ると
ともに、自動変速機と手動変速機とのレイアウトが略同
一となり、推進軸や後側差動機等の部品を共通とするこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

第１〜３図はこの発明の実施例を示し、第１図はオイル
シール部の要部断面図、第２図は変速機の概略側面図、
第３図はオイルシール部の拡大端面図である。 第４図はこの発明の他の実施例を示すオイルシール部の
要部拡大断面図である。 第５図はこの発明の従来技術を示す変速機の概略図であ
る。 図において、２は変速機、４は終減速用前側差動機、６
はトランスファ、８はトランスファ軸、10はリングギ
ヤ、12は被動歯車、14は終減速歯車、16はトランスファ
ベベルギヤ、18は回転軸、20は接続具、22はオイルシー
ル部、24は大径部、26はハウジング、28は第１空間部、
30は第２空間部、32は形状保持用金属部、34は抱持部、
36−１、36−２は環状スプリングである。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】前後車輪への回転力の差動を調整するトラ
   ンスファを有する四輪駆動用変速機において、この変速
   機に連絡する終減速用差動機を設けるととに差動機の終
   減速歯車に被動歯車を噛合させて差動機にトランスファ
   を連絡して設け、トランスファのトランスファ軸の一端
   側にトランスファベベルギヤに噛合するリングギヤを設
   けるとともに他端側に前記被動歯車を設け、前記リング
   ギヤと被動歯車間の前記トランスファのトランスファ軸
   上に大径部を設け、前記差動機とトランスファとを包囲
   するハウジングと前記大径部間には低粘性のオイルを収
   容する差動機側の第１空間部と高粘性のオイルを収容す
   るトランスファ側の第２空間部とに区画分離するオイル
   シール部を設けたことを特徴とする四輪駆動用変速機。