JP2726450B2 - 分岐管部の補修方法及びその方法に使用するライニング材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、主として上下水道管やガス管等の主管に接
続される比較的短い分岐管の内周面とこれから主管の内
周面側に亘る管分岐部の内周面とをライニング材で被覆
する分岐管部の補修方法とその方法の実施に使用するラ
イニング材に関する。

〔従来の技術〕

従来では、前記分岐管の内周面を被覆する筒状ライニ
ング部分と、管分岐部の内周面を被覆する鍔状ライニン
グ部分とを備えた筒状のライニング材を合成樹脂から一
体成型し、それの鍔状ライニング部分側から分岐管の外
側開口に挿入して、筒状ライニング材を、分岐管の内周
面と管分岐部の内周面とに対応する部位に位置させ、分
岐管の外側開口から筒状ライニング部分内を通して鍔状
ライニング部分に折畳み自在な第１圧着治具を挿入し、
該第１圧着治具を前後左右に動かしながら、鍔状ライニ
ング部分の外周面を管分岐部の内周面に押圧して接合し
た後、この第１圧着治具を抜き取り、更に、分岐管の外
側開口から該分岐管内に第２圧着治具を挿入し、該第２
圧着治具を筒状ライニング部分の筒軸芯方向に沿って動
かしながら、筒状ライニング部分の外周面を分岐管の内
周面に押圧して接合する分岐管部の補修方法が提案され
ている（例えば、特開昭60−107323号公報参照）。

〔発明が解決しようとする課題〕

上記従来技術によれば、前記鍔状ライニング部分を管
分岐部の内周面に接合する接合作業と、筒状ライニング
部分を分岐管の内周面に接合する接合作業とを各別に行
う必要があり、しかも、鍔状ライニング部分の外周面と
筒状ライニング部分の外周面とを、管分岐部の内周面及
び分岐管の内周面にむらなく押圧するには、各圧着治具
による押圧作業を慎重に行わなければならず、分岐管部
の補修作業が煩雑化して作業能率が低下する問題があ
る。

その上、施工現場において、前記各圧着治具を上述の
ように動かしながら、鍔状ライニング部分の外周面と筒
状ライニング部分の外周面を、管分岐部の内周面及び分
岐管の内周面に均一に押圧することは難しく、その結
果、鍔状ライニング部分及び筒状ライニング部分に部分
的な接合不良箇所が生じ易い問題がある。

本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、
ライニング材の押圧手段と装着手順を工夫することによ
って、分岐管部の補修作業の作業能率を向上することが
できるとともに、ライニング材のうち、管分岐部の内周
面及び分岐管の内周面に接合される部分における部分的
な接合不良箇所の発生を抑制することができる分岐管部
の補修方法及びその方法の実施に適したライニング材を
提供することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成するための本発明の特徴構成は、 分岐管の内周面とこれから主管の内周面側に亘る管分岐
部の内周面とをライニング材で被覆する分岐管部の補修
方法であって、 （イ）筒状ライニング部の一端側を膜材で閉塞してなる
可撓性と気密性とを備えた袋状のライニング材を、それ
の膜材側から分岐管の外側開口に挿入して、該袋状ライ
ニング材の筒状ライニング部を、前記分岐管の内周面と
管分岐部の内周面とに対応する部位に位置させる工程、 （ロ）前記袋状ライニング材内にそれの他端側から流体
を供給し、該袋状ライニング材の筒状ライニング部の外
周面を、供給流体の圧力で前記分岐管の内周面及び管分
岐部の内周面に押圧して接合する工程、 （ハ）前記袋状ライニング材のうち、前記分岐管の内周
面及び管分岐部の内周面に接合された部分を除く不要部
分を切断除去する工程、 前記（イ）〜（ハ）の工程を備えている点にある。

又、本発明による分岐管部の補修方法の実施に適した
ライニング材の特徴構成は、前記袋状ライニング材の膜
材が外方に弾性的に膨張変形自在に構成されているとと
もに、該膜材の剛性が部分的に大きく構成されている点
にある。

〔作 用〕

本発明による分岐管部の補修方法の特徴構成によれ
ば、前記筒状ライニング部を、分岐管の内周面と管分岐
部の内周面とに対応する部位に位置させた状態で、袋状
ライニング材内に流体を供給するだけで、この供給流体
の圧力が筒状ライニング部にほぼ均一に作用して、該筒
状ライニング部の外周面が分岐管の内周面及び管分岐部
の内周面にほぼ均一な圧力で同時に押圧される。

更に、前記筒状ライニング部を分岐管の内周面及び管
分岐部の内周面に接合した後は、この袋状ライニング材
のうち、前記分岐管の内周面及び管分岐部の内周面に接
合された部分を除く不要部分を切断除去するだけで、分
岐管部の補修作業が完了する。つまり、袋状ライニング
材自体に流体を供給するから、例えば、弾力性と気密性
とを備えた袋体を、分岐管の内周面と管分岐部の内周面
とに対応する部位に位置する筒状のライニング材内に挿
入して、この袋体内に流体を供給し、供給流体の圧力に
より膨張変形した袋体の膨張圧力で、筒状ライニング材
の外周面を、前記分岐管の内周面及び管分岐部の内周面
に押圧して接合する場合に比して、袋体を筒状ライニン
グ材内に挿入する作業、並びに、袋体を筒状ライニング
材内から抜き取って回収する作業が共に不要となる。

本発明による分岐管部の補修方法に使用するライニン
グ材の特徴構成によれば、前記袋状ライニング材内に流
体を供給するだけで、この供給流体の圧力により前記膜
材が外方に弾性的に膨張変形するから、筒状ライニング
部のうちの管分岐部の内周面に対応する部位を、該管分
岐部の内周面側に確実に押圧することができ、しかも、
前記膜材の剛性を部分的に大きくすることにより、この
膜材のうち、剛性の大きな部分における膨張を規制する
ことができるから、流体を供給したときのライニング材
の内圧が効果的に増大して、筒状ライニング部の外周面
を分岐管の内周面及び管分岐部の内周面に強固に押圧す
ることができる。

〔発明の効果〕

請求項１記載の分岐管部の補修方法は、袋状ライニン
グ材を流体が供給される袋体に兼用するから、この袋状
ライニング材内に流体を供給するだけで、この供給流体
の圧力により、筒状ライニング部の外周面を、分岐管の
内周面及び管分岐部の内周面に同時に接合することがで
き、しかも、その後は、袋状ライニング材のうちの前記
不要部分を切断除去すればよく、分岐管部の補修作業の
作業能率を向上することができるとともに、筒状ライニ
ング部の外周面は、分岐管の内周面及び管分岐部の内周
面にほぼ均一に押圧されるから、筒状ライニング部にお
ける管分岐部の内周面及び分岐管の内周面に対する部分
的な接合不良箇所の発生を抑制することができる。

請求項２記載のライニング材は、筒状ライニング部の
うち、分岐管部の内周面に対応する部位の外周面を、該
分岐管部の内周面に確実に接合することができることは
無論のこと、管分岐部の内周面に対応する部位の外周面
も、該管分岐部の内周面に確実に接合することができ、
しかも、前記分岐管の内周面及び前記管分岐部の内周面
に対する筒状ライニング部の外周面の接合の信頼性を向
上することができる。

〔実施例〕

本発明の実施例を、地下に埋設されている水道用配管
（Ａ）について説明する。

第２図に示すように、主管（１）内に挿入した主管ラ
イニングホース（２）を主管（１）内周面に接着して老
朽化した主管（１）を更生できるように、主管（１）に
対して距離を隔てた２箇所の位置にピット（P₁）を掘削
し、このピット位置で主管（１）を切断してある。

前記主管（１）には分岐管（3a）が接続されており、
この分岐管（3a）の外側開口となる該分岐管（3a）の管
分岐部（3b）にできるかぎりの近い位置のフランジ継手
（3c）側の開口（3d）からライニング材（５）を挿入し
て分岐管（3a）内周面に装着することにより、老朽化し
た分岐管（3a）を更生できるように、ピット（P₂）を掘
削して前記フランジ継手（3c）箇所を露出させてある。

次に、前記分岐管（3a）の内周面から、主管（１）の
管壁と分岐管（3a）の管壁とを滑らかに持続する曲面状
の管分岐部（3b）のうち、分岐管（3a）の内周面から主
管（１）の内周面側に亘る内周面とに亘って、分岐管
（3a）の内周面を被覆するライニングホース部分と管分
岐部（3b）の内周面を被覆する環状ライニング材とが一
体形成されている筒状のライニング部（4A）を備えたラ
イニング材（５）の装着する方法について、第１図、第
３図に基づいて説明する。

第３図に示すように、ポリエステル繊維の糸をニット
織り或いは袋織りして一端側がラッパ状に整形された筒
状のジャケット（4a）内周面側に、ポリエチレン、ポリ
エステル等の高分子材料或いはゴム等をコーティングし
て弾力性を備えた防水層（4b）を形成し、その防水層
（4b）の両端を前記防水層（4b）と同質材料の膜材（4
c），（4d）で閉塞するとともに、フランジ側端部を閉
塞する膜材（4d）に流体供給口としてのバルブ（Ｖ）を
装着して、気密性と可撓性とを備えた袋状のライニング
材（５）を構成してある。

つまり、第３図に示すように、前記ジャケット（4a）
と防水層（4b）とをもって前記筒状ライニング部（4A）
が構成されているとともに、第１図（ロ）に示すよう
に、前記両膜材（4c），（4d）が外方に弾性的に膨張変
形自在に構成される。

前記袋状ライニング材（５）の外周面に二液性エポキ
シ系接着剤を塗布して、第１図（イ）に示すように長手
方向に折りたたんで分岐管（3a）の開口（3d）から挿入
し、第１図（ロ）に示すように、筒状ライニング部（4
A）を、分岐管（3a）の内周面と管分岐部（3b）の内周
面とに対応する部位に位置させた後、袋状ライニング材
（５）内にバルブ（Ｖ）から高圧空気を供給してライニ
ング材（５）を膨張させることでライニング材（５）の
外周面を管内周面に押圧して、接着剤が硬化するまで保
持する。

この後、第１図（ハ）に示すように、前記袋状ライニ
ング材（５）のうち、前記分岐管（3a）の内周面及び管
分岐部（3b）の内周面に接合された部分を除く不要部
分、つまり膜材（4c），（4d）をカッターで切除して、
ライニング材（５）の分岐管（3a）及び管分岐部（3b）
への装着作業が完了し、次に主管ライニングホース
（２）を装着して連通孔（６）を形成する。

〔別実施例〕

前記膜剤（4c），（4d）を前記防水層（4f）とは異質
の材料で形成しても良く、同質材料又は異質材料で別々
に形成してから接合しても良い。

図示しないが、主管（１）内周面に主管ライニングホ
ース（２）を装着して、主管（１）と分岐管（3a）とを
連通する連通孔（６）を形成し、この後でライニング材
（５）を主管ライニングホース（２）の連通孔（６）の
端縁に重なる姿勢で装着しても良い。

この場合、管分岐部（3b）内周面に主管ライニングホ
ース（２）の厚み分だけ段差ができるが、ライニング材
の防水層（4b）が弾力性を備えているから、主管ライニ
ングホース（２）の連通孔（６）の周縁部を滑らかに覆
う姿勢でライニング材（５）を装着できる。

前記袋状のライニング材（５）に高温流体を圧入し
て、ライニング材（５）を熱融着で接合するようにして
も良い。

第４図に示すように、弾力性を備えた材料で外径が長
手方向に沿ってほぼ一定の筒状のライニングホース
（４）を形成し、このライニングホース（４）の両端に
弾力性を備えた膜材（4c），（4d）を一体的に形成して
ライニング材（５）を構成し、フランジ側の膜材（4d）
に装着したバルブ（Ｖ）から高圧流体を注入することに
より、第５図に示すようにライニング材（５）を膨張さ
せて、ライニング材（５）の外周面が管分岐部（3b）内
周面に沿う姿勢で押圧して接合しても良い。

この場合、前記ライニングホース（４）をもって前記
筒状ライニング部（4A）が構成され、ライニング材
（５）外周面と管分岐部（3b）内周面との接合が完了し
た後で、ライニング材（５）の膜材（4c），（4d）を切
除する。

主管（１）側に挿入させる方の膜材（4c）に、例えば
厚みを厚くしたり補強繊維等の補強材を設けて、部分的
に剛性が大きい個所を形成し、高圧流体を供給したとき
のライニング材（５）の膨張を規制して、内圧を増大さ
せるように構成してもよい。

本発明において、ライニング材（５）の筒状ライニン
グ部（4A）を分岐管（3a）の内周面と管分岐部（3b）の
内周面とに接合する手段としては、接着剤を介しての接
着、熱融着の他に、溶着、圧着による手段がある。

実施例においては、上下姿勢で接続される分岐管（3
a）について説明したが、水平或いは斜め方向から接続
される分岐管について適用しても良く、更に、分岐管
（3a）を管分岐部（3b）近くで切断して開口（3d）を形
成しても良い。

尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にする
為に符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構
造および方法に限定されるものではない。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明に係る管分岐部の補修方法及びその方法に
使用するライニング材の実施例を示し、第１図（イ），
（ロ），（ハ）、第２図は本発明方法の説明図、第３図
は本発明方法に使用するライニング材の一部断面側面
図、第４図はライニング材の別実施例を示す一部断面側
面図、第５図は本発明方法の別実施例を示す説明図であ
る。 （１）……主管、（3b）……管分岐部、（3a）……分岐
管、（3d）……開口、（4A）……筒状ライニング部、
（4c）……膜材、（５）……ライニング材。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−107323（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−135343（ＪＰ，Ａ)

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】分岐管（3a）の内周面とこれから主管
   （１）の内周面側に亘る管分岐部（3b）の内周面とをラ
   イニング材（５）で被覆する分岐管部の補修方法であっ
   て、 （イ）筒状ライニング部（4A）の一端側を膜材（4c）で
   閉塞してなる可撓性と気密性とを備えた袋状のライニン
   グ材（５）を、それの膜材（4c）側から分岐管（3a）の
   外側開口（3d）に挿入して、該袋状ライニング材（５）
   の筒状ライニング部（4A）を、前記分岐管（3a）の内周
   面と管分岐部（3b）の内周面とに対応する部位に位置さ
   せる工程、 （ロ）前記袋状ライニング材（５）内にそれの他端側か
   ら流体を供給し、該袋状ライニング材（５）の筒状ライ
   ニング部（4A）の外周面を、供給流体の圧力で前記分岐
   管（3a）の内周面及び管分岐部（3b）の内周面に押圧し
   て接合する工程、 （ハ）前記袋状ライニング材（５）のうち、前記分岐管
   （3a）の内周面及び管分岐部（3b）の内周面に接合され
   た部分を除く不要部分を切断除去する工程、 前記（イ）〜（ハ）の工程を備えていることを特徴とす
   る分岐管部の補修方法。
2. 【請求項２】前記袋状ライニング材（５）の膜材（4c）
   が外方に弾性的に膨張変形自在に構成されるとともに、
   該膜材（4c）の剛性が部分的に大きく構成されている請
   求項１記載の分岐管部の補修方法に使用するライニング
   材。