JP2570307Y2 - 搬送物押上機構を具えた脚輪装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、床等に置かれた搬送物
に取り付けられ、その搬送物を床等から押し上げる機能
を有する脚輪（いわゆる「キャスター」）装置に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、例えば、精密機器、半導体等の製
造工場のクリーンルーム内において使用される搬送車に
は、フォークリフトの爪のような昇降片を具えた手押式
搬送車（図示省略）がある。この搬送車は、搬送物を積
載してあるパレットの下側空間に昇降片を差込み、パレ
ットごと上昇させて搬送物を搬送するようになってい
る。

【０００３】その他に、向きを自由に変えられる自在車
輪付きの台車（図示省略）や、循環移動する複数のロー
ラを具えたローラクローラ付きの台車（図示省略）等も
ある。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】ところが、昇降片を有
する搬送車は、走行ローラの径が小さく、且つ、向きを
変えることができないため、床面の仕上がり精度が悪い
と、走行中に横方向の力を受けることがあり、円滑に走
行することができないという問題点を有している。又、
昇降片を有する搬送車は、パレットを持ち上げる距離が
短いため、クリーンルーム外の凹凸の多いコンクリート
やアスファルト上を走行するときパレットの下面を擦る
恐れがあるという問題点も有している。

【０００５】一方、自在車輪付きの台車や、ローラクロ
ーラ付きの台車は、搬送物を床から持ち上げる機構や装
置が組込まれていないため、搬送物を積降させる装置や
道具を別に必要とするという問題点を有している。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本考案は、搬送物の側面
に取り付けられるベース板と、前記ベース板に垂直面に
おいて揺動可能に取り付けられた揺動脚と、前記ベース
板と前記揺動脚との間に設けられ前記揺動脚を前記ベー
ス板に対して接近離間させるボルトと、走行面上を走行
する走行体とを有し、前記走行体は前記揺動脚に垂直面
と平行に設けられた回転中心軸の周りに回転可能に設け
られている脚輪装置により、前記の課題を解決した。

【０００７】

【作用】先ず、作業員は、ベース板から揺動脚を離した
状態の脚輪装置をベース板の部分で搬送物の側面に取り
付ける。脚輪装置は、搬送物に少なくとも３つ取り付け
られる。次に、作業員は、ボルトを締め込む。揺動脚
は、走行体を床、コンクリート、アスファルト等の走行
面に押し付けたまま、ベース板に接近し、走行面に対し
て傾斜した状態から垂直の状態に近付けられる。この間
に、搬送物は、走行面から押し上げられる。搬送物と走
行面との間の隙間は、ボルトの締め込み量によって設定
される。これによって、搬送物は、走行面から押し上げ
られて脚輪装置に支持されたことになる。

【０００８】その後、搬送物は、作業員に押されて所望
の場所へ移動させられる。走行面の仕上がり精度が悪
く、脚輪装置に横方向の力が加わるような場合、脚輪装
置は、回転中心軸を中心にして一時的に向きを変えて走
行する。最後に、ボルトを緩めることによって、揺動脚
は元の状態に傾き、搬送物は走行面上に降ろされる。な
お、脚輪装置は、搬送物から取り外してよいし、搬送物
に取り付けたままであってもよい。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の実施例を図１乃至図５に基づ
いて説明する。脚輪装置１０は、ベース板１１、揺動脚
１２、ボルト１３、自在車輪（走行体）１４等で構成さ
れている。

【００１０】ベース板１１は、脚輪装置１０を搬送物Ｗ
に取付ボルト２６，２６によって取り付ける部分であ
る。搬送物Ｗは、ワーク、機械部品、電気部品、又は、
これらを保管する籠等である。揺動脚１２は、支点ピン
１５を中心にして、垂直面において揺動可能にベース板
１１に設けられている。揺動脚１２には、搬送物Ｗの下
面の角に係合する段部１６が形成されている。

【００１１】自在車輪１４は、走行ローラ１７を回転可
能に支持する車輪フレーム１８を有している。車輪フレ
ーム１８は、揺動脚１２上の回転中心軸４０に回転中心
軸４０の周りに回転可能に取り付けられている。回転中
心軸４０は、揺動脚１２に垂直面と平行に設けられてい
る。従って、自在車輪１４は、走行方向に対して向きが
変えられるように取り付けられている。

【００１２】ボルト１３は、ベース板１１と揺動脚１２
との間に設けられている。揺動脚１２には、断面Ｃ字状
のボルト受け１９が形成されている。ボルト受け１９に
は、スペーサ２０が回転可能に装着されている。ボルト
受け１９とスペーサ２０には、ボルト１３が貫通してい
る。ボルト受け１９には、ボルト１３が貫通する逃げ孔
２１が形成されている。

【００１３】ナット２２は、ベース板１１に形成された
ナット支持孔２３に回転可能に装着されている。ナット
２２には、ボルト１３がねじ込まれている。ベース板１
１には、ボルト１３が貫通する逃げ孔２４，２５が形成
されている。この逃げ孔２４，２５とナット支持孔２３
は、互いに交差する方向に形成されている。ボルト１
３、ボルト受け１９、スペーサ２０、ナット２２、ナッ
ト支持孔２３は、揺動脚１２の両側に配設されている。

【００１４】次に動作を説明する。先ず、作業員は、ベ
ース板１１から揺動脚１２を離した状態の脚輪装置１０
のベース板１１を搬送物Ｗの側面に取り付ける。ベース
板１１は、段部１６を搬送物Ｗの角に引っ掛けて取付ボ
ルト２６，２６によって搬送物Ｗに取り付けられる。脚
輪装置は、搬送物Ｗに少なくとも３つ取り付けられる。
このとき、揺動脚１２は床Ｆに対して傾斜し、走行ロー
ラ１７は床Ｆに接触している。搬送物Ｗは、台（図示省
略）の上に置かれており、床Ｆとの間に多少の隙間Ｓを
有している。

【００１５】次に、作業員は、ボルト１３を締め込む。
揺動脚１２は、ベース板１１と搬送物Ｗに接近させら
れ、床Ｆに対して傾斜した状態から垂直の状態に近付く
（図３参照）。揺動脚１２は支点ピン１５を中心にして
傾く。ボルト１３の先端は、ボルト１３が締め込められ
るに従って搬送物Ｗの下へ入り込む。この間に、搬送物
Ｗは床Ｆから押し上げられる。搬送物Ｗと床Ｆとの間の
隙間Ｓは、ボルト１３の締め込み量によって設定され
る。隙間Ｓは、搬送物Ｗを搬送する際に、床Ｆや走行面
に多少の凹凸があっても、搬送物Ｗが接触しない程度の
間隔である。なお、実際には、揺動脚１２を図３に示す
程、ベース板１１に接近させることはない。ちなみに、
搬送物Ｗの押上量は約５ｍｍである。

【００１６】その後、搬送物Ｗは、作業員に押されて所
望の場所まで搬送される。自在車輪１４は、走行方向に
対して向きが変わるようになっている。このため、床Ｆ
よりも凹凸の多いアスファルト、コンクリート等の走行
面であっても、自在車輪１４は、凹凸を避けるようにし
て走行し、搬送物Ｗを円滑に搬送することができる。最
後に、所望の場所まで搬送された搬送物は、ボルト１３
を緩めることによって、床Ｆ上に降ろされる。脚輪装置
１０は、搬送物Ｗに取り付けられたまま、或いは、取り
外しても何れでも良い。

【００１７】なお、床Ｆに「べた置き」されている搬送
物Ｗを押上げて搬送する場合には、締め込められるボル
ト１３を逃がす空間が、搬送物Ｗに形成されていなけれ
ばならない。又、ボルト１３は一対設けられているた
め、同期回転させた方が、搬送物Ｗを円滑に押し上げる
ことができる。図４に示すボルト１１３には、スプロケ
ット２７が一体に設けられており、このスプロケット２
７にチェーン２８が掛け渡されている。このような構成
にすると、ボルト１１３は同期回転することができる。
なお、スプロケット２７、チェーン２８の替りに、複数
枚からなる歯車列によって一対のボルトを連結してもよ
い。

【００１８】さらに、図５に示すように、自在車輪１４
の替わりに公知のローラクローラ（走行体）２３０を用
いてもよい。このローラクローラ２３０は、無限循環移
動する複数のローラ２３１を支持したフレーム２３２を
有している。フレーム２３２は、支持アーム２３３に対
してピン（回転中心軸）２３４によって水平面において
回転可能に、ピン２３５によって垂直面において回転可
能に設けられている。支持アーム２３３は、揺動脚２１
２に一体に設けられている。ローラクローラ２３０を用
いた脚輪装置２１０は、自在車輪２１４を用いた脚輪装
置２１０よりも重量のある搬送物を搬送することができ
る。

【００１９】

【考案の効果】本考案の脚輪装置は次の効果を奏する。 (1) ボルトの締め込みによって搬送物を押し上げるた
め、作業員はクレーン、フォークリフト等を使用するこ
となく僅かな力で搬送物を押し上げて搬送することがで
きる。 (2) ボルトの締め込み量を加減することによって、搬送
物を搬送する走行面の凹凸に応じて、搬送物と走行面と
の間の隙間を調節することができ、搬送物の底を走行面
に接触させるようなことを回避することができる。 (3) 走行体は走行方向に対して向きを変えられるように
なっているため、走行面の仕上がり精度が悪く、脚輪装
置の走行中に横方向の力が加わるようなことがあって
も、脚輪装置は円滑に走行することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の脚輪装置の正面図である。

【図２】図１の平面図である。

【図３】搬送物を押し上げた状態の脚輪装置の正面図で
ある。

【図４】他の実施例のボルトの部分正面図である。

【図５】他の実施例の脚輪装置の正面図である。

【符号の説明】

Ｗ 搬送物 １０，２１０ 脚輪装置 １１ ベース板 １２，２１２ 揺動脚 １３，１１３ ボルト １４ 自在車輪（走行体） ４０ 回転中心軸 ２３０ ローラクローラ（走行体）

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 搬送物の側面に取り付けられるベース板
   と、前記ベース板に垂直面において揺動可能に取り付け
   られた揺動脚と、前記ベース板と前記揺動脚との間に設
   けられ前記揺動脚を前記ベース板に対して接近離間させ
   るボルトと、走行面上を走行する走行体とを有し、前記
   走行体は前記揺動脚に垂直面と平行に設けられた回転中
   心軸の周りに回転可能に設けられていることを特徴とす
   る、脚輪装置。