JP2502997Y2 - 圧力容器のスタッドボルト探傷装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、圧力容器胴フランジの円周方向に配列され
たスタッドボルトの軸心に形成された検査孔内に探触子
を挿入させてスタッドボルトを検査するための圧力容器
のスタッドボルト探傷装置に関する。

［従来の技術］ 原子力発電所においては、原子炉圧力容器の定期点検
時、原子炉圧力容器の胴フランジに配列され、圧力容器
の蓋を締結するためのスタッドボルトの検査が行われ
る。

これらスタッドボルトの軸心には、スタッドボルトの
締結時、胴フランジと蓋とのシール面圧をスタッドボル
トの伸びで計測するための検査孔が形成されている。定
期点検時、スタッドボルトの健全性の確認のためこの検
査孔を利用し、その検査孔内に探触子を挿入してスタッ
ドボルトの探傷検査を行っていた。

［考案が解決しようとする課題］ ところで、上記の検査方法で使用される探触子は、直
線状の支持棒の先端部に探触子を設けた探傷装置が使用
され、その支持棒をスタッドボルトの検査孔内に挿入し
て探傷検出を行うことになるが、検査孔が深い（約2m）
ため、支持棒の長さが長くなり、スタッドボルトの上方
の空間が狭隘であると、支持棒を操作することができ
ず、その探傷検査が困難であるという問題がある。

本考案は、上記課題を解決するために創案されたもの
で、その目的は、スタッドボルトの検査孔内に探触子を
容易に挿入させることのできる圧力容器のスタッドボル
ト探傷装置を提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 上記目的を達成するために本考案は、圧力容器胴フラ
ンジの円周方向に配列されたスタッドボルトの軸心に形
成された検査孔内に探触子を挿入させてそのスタッドボ
ルトを検査する探傷装置において、上記胴フランジ近傍
に固定される基台と、該基台よりスタッドボルトの検査
孔に挿入されるべくテレスコープ状に伸縮自在に形成さ
れたテレスコープ管と、そのテレスコープ管の先端に設
けられたスタッドボルトを探傷する探触子と、上記テレ
スコープ管を伸長すべく管内に圧力流体を供給する流体
供給手段と、上記テレスコープ等の先端部に連結され、
テレスコープ管を吊り上げて収縮させるための吊りワイ
ヤとを備えて構成されたものである。

［作用］ 上記構成によれば、テレスコープ管は流体供給手段か
ら供給される圧力流体で、その先端部の探触子が、スタ
ッドボルトの検査孔の底まで届くように挿入された後、
吊りワイヤで徐々に吊り上げられて収縮されることによ
り、探触子を順次下方から上方に上昇させながら探傷検
査を行うことができる。

テレスコープ管は、スタッドボルトの検査孔内への挿
入前あるいは引き抜き後は吊りワイヤで収縮されるた
め、この探傷装置をスタッドボルトの上方の空間が狭隘
なところでも容易に位置させることができ、その位置か
ら伸長させて、その先端部の探触子を検査孔内に挿入さ
せてスタッドボルトの探傷検査を行うことができる。

［実施例］ 本考案の実施例を添付図面に基づいて説明する。

第１図〜第３図は原子炉圧力容器の蓋を取り外した状
態の胴フランジ上に載置された本考案に係る圧力容器の
スタッドボルト探傷検査を示したものである。

図において、１は圧力容器（図示せず）の胴フランジ
で、この胴フランジ１の円周方向に沿って多数のスタッ
ドボルト２が配列されている。これらスタッドボルト２
の軸心には、上述したように検査孔３が形成されてい
る。

４はこれらスタッドボルト２の検査孔３に探触子５を
挿入してそのスタッドボルト２を検査するための探傷装
置で、本実施例において、探傷装置４は、図示するよう
に、その基台６が胴フランジ１上を移動自在に形成され
た移動台７上に設けられている。

上記移動台７は、第１図〜第３図に示すように、上部
移動台８と下部移動台９とで構成されており、これら上
下の移動台8,9間には、その長手方向に移動台8,9を交互
に移動させるための移動手段10が設けられ、これら移動
台8,9の両端部のそれぞれにはスタッドボルト２を把持
するクランプ11が設けられている。

上部移動台８上には、図示するように、上記基台６が
その長手方向に移動自在に設けられており、この基台６
は、上部移動台８上の長手方向に亘ってスタッドボルト
２の配列に沿って円弧状に形成されたガイドレール12に
案内されるガイド溝13が形成されている。ガイドレール
12上にはこれに沿ってガイドラック14が設けられ、基台
６には、このガイドラック14に噛合するピニオン15が駆
動モータ16を介して回転自在に設けられている。

基台６上には、第３図に示すように、垂直フレーム17
がスタッドボルト２に沿って並行に、これより高く上方
へ延出されて立設されており、垂直フレーム17の上端部
には、スタッドボルト２の上方に向けて水平に延出され
た水平フレーム18が設けられている。この水平フレーム
18の下面には、テレスコープ管19を、これより下方に垂
下してスタッドボルト２の上部に至るように支持する支
持フレーム20が回転自在に設けられており、この支持フ
レーム20を回転駆動するための回転駆動用モータ21が水
平フレーム18上に設けられている。この支持フレーム20
の下方には、テレスコープ管19を垂直に伸縮させるよう
に案内すると共に収縮したテレスコープ管19を収納する
支持筒体22が垂下されて設けられている。

上記テレスコープ管19は、第４図に示すように、支持
筒体22内に固定された第１管23と、この第１管23内から
下方に向けて伸縮自在に嵌挿された第２管24と、この第
２管24内から下方に伸縮自在に嵌挿された第３管25と、
この第３管25内に伸縮自在に嵌挿されると共に、その先
端部に探触子５を備えた第４管26とからなり、これら第
１〜第３管23,24,25のそれぞれの下端部には、内面側に
突出する段部27が形成されており、第２〜第４管24,25,
26のそれぞれの上端部の外周には、上記段部27に当接し
て、これら管24,25,26の伸長を規制するためのストッパ
28が設けられ、第４管26の下端部近傍の外周には、第４
管26の収縮を規制するためのストッパ29が設けられてい
る。また上記段部27の内周面には、シール部材30が設け
られている。

テレスコープ管19の上部には、この管19内に圧力流体
を供給するための流体供給手段31が設けられ、この流体
供給手段31には、その一端側が図示しない供給源に連結
された供給管32が連結されている。テレスコープ管19
は、流体供給手段31からその管19内に供給される圧力流
体により、第１管23内から第２管24を、第２管24内から
第３管25を、さらに第３管25内から第４管26を順次伸長
させるようになっており、供給される圧力流体は、管内
から外方に漏洩しないように上記段部27のシール部材30
で遮断されている。

上記第４管26の先端部には、第４図に示すように、探
触子５を支持する筒体状の探触子支持部33が設けられて
おり、この探触子支持部33には、複数の探触子５が、そ
の外周面にバネ部材34を介して取り付けられている。こ
れら探触子５は、スタッドボルト２の検査孔３内に挿入
されたときバネ部材34により、検査孔３の周面にソフト
に当接するようになっており、また、探触子５のそれぞ
れの発信方向は、図中矢印で示すように、互いに異なる
方向に発信されるようになっている。上記探触子支持部
33の下端部には、スタッドボルト２の検査孔３の底部に
接触したことを検知する接触センサ35が設けられてお
り、探触子支持部33の上端部には、テレスコープ管19を
収縮させるための吊りワイヤ36が連結されている。

吊りワイヤ36は、第４図に示すように、支持フレーム
20に設けられた巻取装置37から繰出され、ガイドローラ
38を経てテレスコープ管19内を通過して探触子支持部33
の上端部に連結されている。上記ガイドローラ38は、吊
りワイヤ36の水平方向の移動を規制するように吊りワイ
ヤ36を挾む両側に設けられており、このガイドローラ38
の下方には、第５図に示すように、吊りワイヤ36の繰り
出し量を検出するための検出ローラ39が設けられ、この
検出ローラ39には、これの回転量を検出するためのエン
コーダ40が連結されている。

上記巻取装置37は、第５図に示すように、吊りワイヤ
36を巻回するワイヤドラム41がクラッチ42を介して駆動
用モータ43に係脱自在に連結されている。クラッチ42は
図示するように、クラッチ用シリンダ44に連結されたカ
ム部材45に連結されており、このカム部材45は、シリン
ダ44の伸縮で上記クラッチ42を嵌脱してワイヤドラム軸
41aと駆動用モータ軸43aとの連結を係脱させるようにな
っている。

上記支持フレーム20には、第３図に示すように、テレ
スコープ管19の先端部の探触子５と信号を送受するため
のケーブル46を巻き込み繰出しするためのケーブルドラ
ム47が設けられている。このケーブルドラム47は、第６
図に示すように、ドラム47を常にケーブル46を巻き込む
方向に付勢するコンストンバネ48が設けられており、こ
のコンストンバネ48は、その基端部側がケーブルドラム
47に並設されたリール49に巻き込み方向に付勢されて巻
回され、他端側がケーブルドラム47と同軸上に設けられ
たリール50に巻回されている。このコンストンバネ48
は、テレスコープ管19が収縮したときに、それに追従し
てリール50を介してドラム47を回転させケーブル46を巻
き込むようになっている。

次に上記実施例の作用を説明する。

先ず、第１図において、探傷装置４は、図示しないク
レーン等により胴フランジ１上のスタッドボルト２の配
列に沿って載置され、クランプ11でスタッドボルト２を
把持して移動台７を固定する。基台６は、移動台７上を
移動して検査すべきスタッドボルト２に位置された後、
流体供給手段31からテレスコープ管19内に圧力流体を供
給してテレスコープ管19を伸長させ、その先端をスタッ
ドボルト２の検査孔３内に挿入させると共に、探触子５
を検査孔３の底部に着地させる。

探触子５が検査孔３の底部に着地した後、吊りワイヤ
36を巻取装置37で巻取って探触子５を徐々に上昇させて
探傷を行う。次に回転駆動用モータ21で支持フレーム20
とともに探触子５を所定の角度だけ回転させて円周方向
に角度を変えた後、上記同様に探触子５を検査孔３の軸
方向に移動させてスタッドボルト２の探傷検査を行う。
この探触子５の上昇の際、探触子５に連結されるケーブ
ル46は、コンストンバネ48の付勢力で回転するケーブル
ドラム47に自動的に巻込まれ、また、吊りワイヤ36は、
ガイドローラ38で水平方向の移動が規制されているので
ワイヤドラム41から離脱したり捩れたりすることがな
い。

次に他のスタッドボルト２の探傷検査を行う場合に
は、基台６を移動台７のガイドレール12に沿って移動さ
せればよく、また、移動台７を移動させるときには、上
下の移動台8,9をスタッドボルト２の配列に沿って交互
に移動させればよい。

テレスコープ管19は、スタッドボルト２の検査孔３内
への挿入前あるいは引抜き後は吊りワイヤ36で収縮され
るため、この探傷装置４をスタッドボルト２の上方の空
間が狭隘なところでも容易に位置させることができ、そ
の位置から伸長して探触子５を検査孔３内に挿入させる
ことによりスタッドボルト２の探傷検査を行うことがで
きる。

また、本実施例の探傷装置４にあっては、水を張った
原子炉ウエル（図示せず）内で圧力容器（図示せず）の
蓋を取り外した状態で、遠隔操作でスタッドボルト２の
探傷検査を行うことができるので、検査作業が被曝する
ことなく安全にできる。

なお、上記実施例においては、基台６を移動台７上に
移動自在に設けて、蓋を取り外した胴フランジ１上から
スタッドボルト２の探傷検査をすることのできる探傷装
置４の例を説明したが、移動台７を設けず、基台６をス
タッドボルト２の近傍に固定する手段を講じれば、圧力
容器の蓋を取り外すことなくスタッドボルト２の探傷検
査を行うことができる。

［考案の効果］ 本考案によれば、伸縮自在なテレスコープ管の先端部
に探触子を設けたので、スタッドボルトの上方の空間が
狭隘なところでも容易に位置させることができ、その位
置から伸長させて検査孔内に探触子を挿入させることが
でき、その孔内からスタッドボルトの探傷検査を行うこ
とができる等の効果を発揮する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例を示す概略平面図、第２図は第
１図の側面図、第３図は第１図のIII-III線一部破断断
面図、第４図はテレスコープ管の詳細を示す断面図、第
５図は吊りワイヤの巻取装置の詳細を示す図、第６図は
ケーブルドラムの詳細を示す斜視図である。 図中、１は胴フランジ、２はスタッドボルト、３は検査
孔、４は探傷装置、５は探触子、６は基台、19はテレス
コープ管、31は流体供給手段、36は吊りワイヤである。

フロントページの続き (72)考案者 田村 満 神奈川県横浜市磯子区新中原町１番地 石川島播磨重工業株式会社横浜第一工場 内 (72)考案者 小林 弘二 神奈川県横浜市磯子区新中原町１番地 石川島播磨重工業株式会社横浜第一工場 内 (56)参考文献 特開 昭60−38641（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】圧力容器胴フランジの円周方向に配列され
   たスタッドボルトの軸心に形成された検査孔内に探触子
   を挿入させてそのスタッドボルトを検査する探傷装置に
   おいて、上記胴フランジ近傍に固定される基台と、該基
   台よりスタッドボルトの検査孔に挿入されるべくテレス
   コープ状に伸縮自在に形成されたテレスコープ管と、そ
   のテレスコープ管の先端に設けられたスタッドボルトを
   探傷する探触子と、上記テレスコープ管を伸長すべくそ
   の管内に圧力流体を供給する流体供給手段と、上記テレ
   スコープ管の先端部に連結され、テレスコープ管を吊り
   上げて収縮させるための吊りワイヤとを備えたことを特
   徴とする圧力容器のスタッドボルト探傷装置。