JP2022076292A - 伸縮性多層回路基板、それを用いた伸縮性ディスプレイ、ウェアラブルデバイス、又は生体センサー、表示装置、及び伸縮性多層回路基板の製造方法 - Google Patents

伸縮性多層回路基板、それを用いた伸縮性ディスプレイ、ウェアラブルデバイス、又は生体センサー、表示装置、及び伸縮性多層回路基板の製造方法 Download PDF

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Akihiro Horimoto
裕美子 山野井
Yumiko Yamanoi
潤 岡田
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Abstract

Figure 2022076292000001
【課題】伸縮電気特性に優れた伸縮性多層回路基板を提供する。
【解決手段】本発明の伸縮性多層回路基板は、基板と、基板の上に設けられた複数の下部配線と、下部配線の上に設けられた下部絶縁層と、下部絶縁層の上に設けられた複数の上部配線と、上部配線の上に設けられた上部絶縁層と、を有する多層配線構造を備える、伸縮性多層回路基板であって、基板、下部配線、下部絶縁層、上部配線、及び上部絶縁層が、それぞれ熱硬化性エラストマーを含み、多層配線構造中において、基板の一面に対して垂直方向に見たとき、第一の下部配線と第一の上部配線とが互いに交差する交差構造と、第一の下部配線と第一の上部配線とが互いに電気的に接続可能な接続構造と、を備えるものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、伸縮性多層回路基板、それを用いた伸縮性ディスプレイ、ウェアラブルデバイス、又は生体センサー、表示装置、及び伸縮性多層回路基板の製造方法に関する。
これまで多層回路基板について様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、金属箔からなる導体パターンが形成された熱可塑性樹脂からなる複数枚の樹脂フィルムが、加熱加圧によって相互に貼り合わせてなる、多層回路基板が記載されている(特許文献1の請求項1、図2(b)等)。
2008-198859号公報
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の多層回路基板において、伸縮電気特性の点で改善の余地があることが判明した。
本発明者はさらに検討したところ、多層配線構造中、基板、配線、絶縁層等の各構成を、熱硬化性エラストマーを含むように構成することで、伸縮性電気特性を向上させつつも、上部配線と下部配線とが交差する交差構造を配置することで、高集積化が可能な伸縮性多層回路基板を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
基板と、
前記基板の上に設けられた複数の下部配線と、
前記下部配線の上に設けられた下部絶縁層と、
前記下部絶縁層の上に設けられた複数の上部配線と、
前記上部配線の上に設けられた上部絶縁層と、を有する多層配線構造を備える、伸縮性多層回路基板であって、
前記基板、前記下部配線、前記下部絶縁層、前記上部配線、及び前記上部絶縁層が、それぞれ熱硬化性エラストマーを含み、
前記多層配線構造中において、
前記基板の一面に対して垂直方向に見たとき、第一の前記下部配線と第一の前記上部配線とが互いに交差する交差構造と、
第一の前記下部配線と第一の前記上部配線とが互いに電気的に接続可能な接続構造と、
を備える、伸縮性多層回路基板が提供される。
また本発明によれば、
上記の伸縮性多層回路基板を有する、伸縮性ディスプレイ、ウェアラブルデバイス、又は生体センサーが提供される。
また本発明によれば、
表示部、制御部、電源部及び/又は通信部を備える表示装置であって、
前記表示部が、上記の伸縮性ディスプレイを備える、表示装置が提供される。
また本発明によれば、
基板を形成する工程と、
前記基板の上に複数の下部配線を形成する工程と、
前記下部配線の上に下部絶縁層を形成する工程と、
前記下部絶縁層の上に複数の上部配線を形成する工程と、
前記上部配線の上に上部絶縁層を形成する工程と、を含む、多層配線構造を備える伸縮性多層回路基板の製造方法であって、
前記基板、前記下部配線、前記下部絶縁層、前記上部配線、及び前記上部絶縁層を、それぞれ熱硬化性エラストマーを用いて形成するとともに、
前記基板の一面に対して垂直方向に見たとき、少なくとも第一の前記下部配線に対して第一の前記上部配線が交差しつつも、互いに電気的に接続可能となるように、前記下部配線及び前記上部配線を形成する、
伸縮性多層回路基板の製造方法が提供される。
本発明によれば、伸縮電気特性に優れた伸縮性多層回路基板、それを用いた伸縮性ディスプレイ、ウェアラブルデバイス、又は生体センサー、表示装置、及び伸縮性多層回路基板の製造方法が提供される。
(a)本実施形態に係る伸縮性多層回路基板の構成を模式的に示す上面図である。(b)図1(a)のA領域の拡大図である。 (a)~(c)は図1(a)のA領域のa1~a3断面図、(d)は図1(a)のB領域のb1断面図、(e)は図1(a)のC領域のc1断面図である。 本実施形態に係る伸縮性多層回路基板の製造工程の一例を模式的に示す図である。 本実施形態に係る伸縮性ディスプレイを備える表示装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。 実施例における伸縮性多層回路基板の構成を模式的に示す上面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
本実施形態の伸縮性多層回路基板を概説する。
本実施形態の伸縮性多層回路基板は、基板と、基板の上に設けられた複数の下部配線と、下部配線の上に設けられた下部絶縁層と、下部絶縁層の上に設けられた複数の上部配線と、上部配線の上に設けられた上部絶縁層と、を有する多層配線構造を備えており、基板、下部配線、下部絶縁層、上部配線、及び上部絶縁層が、それぞれ熱硬化性エラストマーを含むように構成される、多層柔軟伸縮性基板である。
この伸縮性多層回路基板は、多層配線構造中において、基板の一面に対して垂直方向に見たとき、第一の下部配線と第一の上部配線とが互いに交差する交差構造と、第一の下部配線と第一の上部配線とが互いに電気的に接続可能な接続構造と、を備える。
本発明者の知見によれば、基板、上部配線、下部配線、上部絶縁層、及び下部絶縁層等の多層配線構造における各構成部材を、エラストマーを用いて構成することにより、伸縮性多層回路基板の伸縮性電気特性を向上させることができる。また、少なくとも第一の上部配線と第一の下部配線とが交差する交差構造を配置することにより、伸縮性多層回路基板の高集積化が可能となる。
また、第一の下部配線と第一の上部配線との間等、複数の上部配線と複数の下部配線との間における接続構造のそれぞれにおいて、複数の電子部品を搭載可能であるため、機能集積化が容易となる。
ここで、特許文献1に記載の熱可塑性樹脂は、配線形成時における熱処理によって熱収縮し、多層回路基板における接続信頼性が低下する恐れがある。このような課題は、配線を集積化した構造において、より顕在化する。
これに対して、本実施形態の伸縮性多層回路基板において、エラストマーとして、熱硬化性エラストマー、とくにシリコーンゴムを用いることにより、耐熱性を高め、製造過程に受ける熱履歴によって、基板サイズが熱収縮することを抑制できるため、接続信頼性に優れた多層配線構造を実現できる。また、本実施形態の伸縮性多層回路基板は、基板、回路、絶縁層などの構成部材が弾性体で構成されるため、熱可塑性材料と比較して塑性変形しにくい。
本実施形態によれば、上部配線や下部配線等の配線部材について、印刷方法で形成できるため、配線の設計自由度に優れた伸縮性多層回路基板を提供できる。
本実施形態の伸縮性多層回路基板は、プリント配線基板のように各種の電子部品を搭載可能である。
電子部品としては、例えば、LEDチップなどの発光素子、脳波・筋電位などの生体電位や血圧・脈拍などの生体活動を検知する生体測定計、圧力・温度・位置・湿度・光・音・加速度などの環境情報を検知する一般的な測定計、コンデンサなどのポータブル電源、音響モジュール、通信モジュール等が挙げられる。
本実施形態によれば、基板の一面側において、2次元(面)センシングが可能な伸縮性多層回路基板を提供できる。
本実施形態によれば、伸縮性多層回路基板を用いて、伸縮性ディスプレイ、ウェアラブルデバイス、又は生体センサー等の各種の電子デバイスを提供できる。電子デバイスの使用時に屈曲や伸縮等の変形が要求される場合でも、伸縮性多層回路基板を用いることで、高い接続信頼性を実現できる。
以下、本実施形態の伸縮性多層回路基板を詳述する。
図1(a)は、本実施形態の伸縮性多層回路基板100の一例を模式的に示す上面図である。
図1(b)は、図1(a)のA領域の拡大図、図2(a)~(c)は、図1(a)のA領域中の3つの点線箇所a1~a3における断面図、図2(d)は、図1(a)のB領域中の点線箇所b1における断面図、図2(e)は、図1(a)のC領域中の点線箇所c1における断面図である。
本実施形態の伸縮性多層回路基板100は、伸縮性基板(基板110)、複数の伸縮性下部配線(第一の下部配線120、第二の下部配線126)、伸縮性下部絶縁層(下部絶縁層130)、複数の伸縮性上部配線(第一の上部配線150、第二の上部配線156)、及び伸縮性上部絶縁層(上部絶縁層160)を備える。
本明細書中、伸縮性を有するとは、例えば、伸縮性配線の延在方向に伸長したとき、基板110、下部配線120及び上部配線150等の構成部材の伸長率が、それぞれ、未伸長時の長さに対して、例えば、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは100%まで伸長可能であることを意味する。伸縮性多層回路基板100は、下部配線120及び/又は上部配線150の延在方向に伸長したとき、上記の伸長率の範囲内において、下部配線120又は上部配線150が断線しない状態を維持できる。
ここで延在方向とは、下部配線120または上部配線150の内、面内方向において最長の長さを有する部分の一端から他端に向かう方向と定義できる。
伸縮性多層回路基板100の積層方向における断面(以下、単に「断面視」と呼称することもある。)の一つにおいて、図2(b)に示すように、多層配線構造200は、基板110と、基板110上に設けられた下部配線120と、下部配線120上に設けられた下部絶縁層130と、下部絶縁層130上に設けられた上部配線150と、上部配線150上に設けられた上部絶縁層160と、を備える。
伸縮性多層回路基板100は、図1(b)、図2(a)に示すように、多層配線構造200中において、基板110の一面に対して垂直方向に見たとき(以下、単に「上面視」と呼称することもある。)、第一の下部配線120と第一の上部配線150とが互いに交差する交差構造210を備える。
交差とは、積層方向において絶縁層を介して配置される2つの配線間において、下部側の配線の延在方向と、上部側の配線の延在方向とが、同一方向ではなく、互いに異なる配線領域が、上面視において重なる領域がある状態を意味する。
本実施形態の一例では、上面視において、下部配線120と上部配線150との少なくとも一部の領域が、直交方向、すなわち、交差角度が90度となるように交差してもよい。
また、伸縮性多層回路基板100は、基板110の一面に対して垂直方向に見たとき(上面視にみたとき)、多層配線構造200中において、複数の下部配線と複数の上部配線とが互いに交差する、複数の交差構造を備えてもよい。この複数の交差構造は、格子状に配置されてもよい。これにより、機能集積性を一層高めることが可能になる。
このように、伸縮性多層回路基板100が、複数の交差構造を有する場合、各交差構造の上面視における交差角度は、同一でも異なっていてもよいが、集積性の観点から、すべて同一となるように構成されてもよく、耐久性の観点から、すべて略90度となるように構成されてもよい。
本明細書中、「略」という用語は、特に明示的な説明の無い限りは、製造上の公差やばらつき等を考慮した範囲を含むことを表す。
また、伸縮性多層回路基板100は、図2(a)に示すように、第一の下部配線120と第一の上部配線150とが互いに電気的に接続可能な接続構造220を備える。
接続構造220は、構造や構成部材が特に限定されず、電子部品170等を介して、第一の下部配線120と第一の上部配線150とが電気的に接続可能な構造を有する。
接続構造220の一例では、下部配線120は、電子部品170等の外部と接続する下部接続部122を有し、かつ、上部配線150は、電子部品170等の外部と接続する上部接続部152を有する。
下部接続部122は、図1(b)に示すように、上面視において、下部配線120の線幅よりも幅広に構成されてもよい。この下部接続部122は、電極パットとして機能し、電子部品170との積層方向における接続安定性を高められる。
下部接続部122は、図2(a)及び図2(b)に示すように、突出接続部を有してもよい。突出接続部は、多層配線構造200の積層方向に切断したときの断面視において、基板110から下部配線120に向かって上向きに、下部配線120から突出した構造を有する。すくなくとも、第一の下部配線120が、突出接続部で構成された下部接続部122を有してもよい。これにより、下部接続部122と上部接続部152との接続容易性を向上できる。
上部接続部152は、上部配線150から分岐した分岐接続部で構成されてもよい。分岐接続部は、例えば、図1(b)に示すように、上部配線150と同じ層内において、上部配線150の側面から突出し、上部配線150の延在方向とは異なる方向に延在する配線である。この分岐接続部は、下部接続部122の近傍に形成される。これにより、伸縮性多層回路基板100の集積化を高められる。
接続構造220中、下部配線120及び下部絶縁層130の一部が、下部絶縁層130及び上部絶縁層160に覆われずに露出した状態で構成されてもよい。
接続構造220において、図2(a)に示すように、少なくとも下部絶縁層130および上部絶縁層160を貫通する下部用開口部(開口部140)が形成されており、少なくとも上部絶縁層160を貫通する上部用開口部(開口部142)が形成されてもよい。
この開口部140及び開口部142は、それぞれ、独立した孔でもよく、2以上の開口空間が互いに連結してなる一つの孔で構成されてもよい。
このような開口部を有する場合、第一の下部配線120が、開口部140内において露出するように構成された下部接続部122を有しており、第一の上部配線150が、開口部142内において露出するように構成された上部接続部152を有してもよい。
電子部品170は、各種の接続手段によって、図2(a)に示すように、例えば、下部接続部122と上部接続部152と電気的に接続した状態で、伸縮性多層回路基板100上に搭載される。
電子部品170は、例えば、導電性ペースト及び半田材料の少なくとも一方を用いて、第一の下部配線120および第一の上部配線150に電気的に接続するように構成されてもよい。導電性ペーストは、配線を形成する材料と同じものを使用してもよい。
多層配線構造200において、伸縮性多層回路基板100は、電子部品170を封止する封止部(不図示)を備えてもよい。封止部は、電子部品170の上面や側面の少なくとも一部を覆うように構成されてもよく、電子部品170と各配線との接続部分の少なくとも一部を覆うように構成されてもよい。これにより、電子部品170の接続安定性を高めることができる。
封止材料としては、例えば、熱硬化性エラストマーを用いてもよい。
下部配線120は、図1(a)に示すように、端部に下部接続部124を有してもよく、上部配線150は、端部に上部接続部154を有してもよい。これらの下部接続部124及び上部接続部154は、外部電源等の外部との接続可能な電極として機能する。
下部配線120や上部接続部154は、少なくとも一部が、多層配線構造200を構成する部材、例えば、絶縁層に覆われず、露出した状態となるように構成される。下部配線120や上部接続部154の一例は、図2(d)、図2(e)に示すように、最外層の上部絶縁層160まで突出した突出接続部を構成してもよい。これにより、接続容易な構造を実現できる。
伸縮性多層回路基板100は、図2(a)に示すように、基板110が、下部配線120および上部配線150が設けられた一面とは反対側の他面に、配線を有しないよういに構成されてもよい。すなわち、伸縮性多層回路基板100は、一面型の回路基板であってもよい。これにより、伸縮性多層回路基板100の柔軟伸縮性を担保しつ、配線回路の集積度合を高めることができる。
次に、伸縮性多層回路基板100の変形例について説明する。
複数の伸縮性下部配線は、図1(a)に示すように、第一の下部配線120、及び第二の下部配線126の少なくとも2本以上の配線で構成されていればよく、3本以上、4本以上、8本以上の配線を有してもよい。
複数の伸縮性上部配線は、同様に、図1(a)に示すように、第一の上部配線150、及び第二の上部配線156の少なくとも2本以上の配線で構成されていればよく、3本以上、4本以上、8本以上の配線を有してもよい。
なお、複数の伸縮性下部配線及び複数の伸縮性上部配線の配線数の上限は、必要に応じて設定でき、特に限定されない。
複数の伸縮性下部配線と複数の伸縮性上部配線とは、上面視において、互いに平行な配線部分を有する配線を1又は2本以上有してもよい。
第一の下部配線120及び第二の下部配線126は、少なくとも一部又は全体が、同じ下部配線層中に配置される。第一の下部配線120及び第二の下部配線126の少なくとも一部または全体が、基板110の一面に接するように形成されてもよい。
また、第一の上部配線150及び第二の上部配線156は、少なくとも一部又は全体が、同じ上部配線層中に配置される。第一の上部配線150及び第二の上部配線156の少なくとも一部または全体が、下部配線と上部配線との間に位置する下部絶縁層130の一面に接するように形成されてもよい。
このような第一の上部配線150及び第二の上部配線156は、その一部が、基板110の一面に接し、第一の下部配線120及び第二の下部配線126と同層に形成されていてもよい。
多層配線構造200は、上部絶縁層160上に、さらにその他の配線層を1層又は2層以上有していてもよい。すなわち、多層配線構造200の配線層数は、図2(a)に示す2層に限定されず、必要に応じて、3層以上、4層以上としてもよい。この場合、積層方向における再隣接した配線層の間には、少なくとも1層以上の絶縁層が形成される。
伸縮性多層回路基板100は、交差構造210を少なくとも1以上有していればよく、例えば、上部配線の配線数と下部配線の配線数の積算した値分有していてもよい。複数の交差構造として、例えば、下部配線120と上部配線150との第一の交差構造210、下部配線120と上部配線156との第二の交差構造212等が挙げられる。
上部接続部152の接続面の位置は、下部絶縁層130、上部配線150、上部絶縁層160の各層中のいずれかに配置されてもよいが、上部接続部152の接続面と略同一面を構成してもよい。
下部配線120及び下部接続部122が、導電性ペーストを用いた印刷方法で形成されたもの、すなわち、印刷層で構成されてもよい。また、上部配線150及び上部接続部152も、導電性ペーストを用いた印刷方法で形成されたもの、すなわち、印刷層で構成されてもよい。
これにより、配線と接続部との間がほぼシームレスに形成でき、互いの境界をほぼなくすことが可能になる。
下部絶縁層130及び上部絶縁層160の少なくとも一方は、同一層において、複数の絶縁層が離間して構成されてもよく、1つの絶縁層で構成されてもよい。
多層配線構造200は、断面視において、下部絶縁層130上に上部絶縁層160が存在する領域、下部絶縁層130上に上部絶縁層160が存在しない領域、及び上部絶縁層160の下に下部絶縁層130が存在しない領域の少なくとも一つ以上を有してよい。
上記の開口部は、絶縁層を貫通する貫通孔、複数の絶縁層が互いに分離した離間部、及び、上面視において基板110を絶縁層が覆わない非被覆部の少なくとも一以上で構成されてもよい。
図2中の開口部140及び開口部142は、空隙で構成されてもよいが、絶縁層を構成する材料などで充填されていてもよい。空隙構造とすることで、電子部品170の接続部分に、伸縮性多層回路基板100の伸縮時に発生する応力が伝わり難くなり、伸縮時における接続信頼性を高められる。一方、充填構造とすることで、開口部に埃などの異物の混入を抑制でき、接続部分を外部環境に露出することを抑制できるため、長期接続信頼性を高められる。
空隙構造の一例は、電子部品170と下部接続部122及び上部接続部152との接続部分の周囲に、上部絶縁層160等の絶縁層と接しないように、かかる絶縁層との間に離間部が存在する構造が挙げられる。
電子部品170は、その一部または全部が、開口部140及び開口部142などの、絶縁層に形成された開口部に埋設されてもよい。これにより、電子部品170の接続安定性を高められる。
なお、電子部品170の周囲を封止する場合には、電子部品170の全体が開口部の外側に設けされていてもよい。
配線の厚み/絶縁層の厚みで表される厚み比は、例えば、0.05~20.0、好ましくは0.08~15.0、より好ましくは0.1~10.0である。このような範囲内とすることで、導電性及び絶縁性を向上できる。
絶縁層の厚み/基板の厚みで表される厚み比は、例えば、0.01~2.0、好ましくは0.05~1.0、より好ましくは0.08~0.7である。このような範囲内とすることで、柔軟性及び絶縁性を向上できる。
厚み比は、下部配線120及び上部配線150の少なくとも一方の配線が満たせばよく、両方の配線が満たすことが好ましく、下部絶縁層130及び上部絶縁層160の少なくとも一方の絶縁層が満たせばよく、両方の絶縁層が満たすことが好ましい。
基板110の厚みの上限は、用途に応じて設定可能であり、例えば、10mm以下、好ましくは1mm以下でもよいが、ウェアラブルデバイス用途の観点から、より好ましくは400μm以下である。400μm以下とすることで、薄膜の伸縮性多層回路基板100を実現できる。
基板110の厚みの下限は、機械的強度の観点から、例えば、10μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上である。
次に、伸縮性多層回路基板100を構成する材料や特性について説明する。
本実施形態において、基板110、下部配線120、下部絶縁層130、上部配線150、及び上部絶縁層160が、それぞれ、同一及び/又は異なる熱硬化性エラストマーを含み、好ましくは同一の熱硬化性エラストマーを含むように構成されてもよい。
より具体的には、下部配線120、及び上部配線150は、それぞれ同一及び/又は異なる導電性エラストマーで構成されてもよく、基板110、下部絶縁層130、及び上部絶縁層160は、それぞれ同一及び/又は異なる絶縁性エラストマーで構成されてもよい。
絶縁性エラストマーは、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム等の熱硬化性エラストマーを含むことができる。この中でも、絶縁性エラストマーは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムからなる群から選択される一種以上を含んでもよく、好ましくはシリコーンゴムで構成されてもよい。シリコーンゴムは、エラストマーの中でも、化学的に安定であり、また、機械的強度にも優れる。
絶縁性エラストマーは、導電性フィラーを含まず、非導電性フィラー含んでもよい。これにより、導電性エラストマーの機械的特性を高められる。非導電性フィラーとしては、公知の材料が使用できるが、例えば、無機フィラーを用いてもよい。無機フィラーとして、シリカ粒子、シリコーンゴム粒子、タルク等を用いてもよい。
導電性エラストマーは、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム等の熱硬化性エラストマーと導電性フィラーを含むことができる。この中でも、導電性エラストマーは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムからなる群から選択される一種以上を含んでもよく、好ましくはシリコーンゴム及び導電性フィラーを含むように構成されてもよい。これにより、導電性エラストマーの伸縮性及び電気特性を高められる。
導電性フィラーとしては、例えば、粉末状または繊維状の、金属系フィラー、炭素系フィラー、金属酸化物フィラー、金属メッキフィラー等が挙げられる。この中でも、導電性フィラーとして、金属系フィラー、好ましくは銀粉を用いてもよい。
また、導電性エラストマーは、導電性フィラーとともに非導電性フィラーを含んでもよい。これにより、伸縮耐久性を高められる。
本実施形態の一例として、基板110、下部配線120、下部絶縁層130、上部配線150、及び上部絶縁層160が、それぞれ、同一の熱硬化性エラストマーを含んでもよい。これにより、互いの密着性を向上できるため、伸縮性多層回路基板100の伸縮耐久性を高められる。
本明細書中、同一の熱硬化性エラストマーを含む、同一の絶縁性エラストマーを含む、同一の導電性エラストマーを含むとは、それぞれ、上記に例示される熱硬化性エラストマーの種類のうち、少なくとも一つ以上の同じ種類のエラストマーを含むことを意味する。
より具体的には、基板110、下部絶縁層130、および上部絶縁層160が、それぞれ、同一のシリコーンゴムを含むように構成されてもよい。これにより、各層同士の密着性を向上できる。また、上下の配線間に挟まれた絶縁層において、絶縁耐圧を高めることができる。
基板110、下部絶縁層130、および上部絶縁層160が、少なくとも一つが、好ましくは全てが、無機フィラーを含むように構成されてもよい。これにより、これらの機械的物性を適度に高めることが可能になる。
また、下部配線120、および上部配線150が、それぞれ、同一のシリコーンゴム及び導電性フィラーを含むように構成されてもよい。これにより、伸縮性とともに導電性を高められる。
下部配線120、および上部配線150の少なくとも一つが、好ましくは、全てが、無機フィラーを含むように構成されてもよい。これにより、導電性とともに機械的物性を向上させることが可能になる。
基板110、下部配線120、下部絶縁層130、上部配線150、及び上部絶縁層160が、それぞれ、同種のシリコーンゴムを含むように構成されてもよい。これにより、各層同士の密着性を高められる。また、伸縮時における耐久性を向上できる。
ここで、シリコーンゴム系硬化性組成物における成分について詳細を説明する。
ここで、同一のシリコーンゴムを含むとは、シリコーンゴム系硬化性組成物が、少なくとも、同種のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを含むことを意味し、さらに、同種の架橋剤、同種の非導電性フィラー、同種のシランカップリング剤、及び同種の触媒からなる群から選ばれる一又は二以上を含んでもよい。
絶縁性シリコーンゴムは、ビニル基含有オルガノポリシロキサンを含むシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成されてもよい。
また導電性シリコーンゴムは、導電性フィラーと、ビニル基含有オルガノポリシロキサンを含むシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物とで構成されてもよい。
同種のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンとは、少なくとも官能基が同じビニル基を含み、直鎖状を有していればよく、分子中のビニル基量や分子量分布、あるいはその添加量が異なっていてもよい。
同種の架橋剤とは、少なくとも直鎖構造や分岐構造などの共通の構造を有していればよく、分子中の分子量分布や異なる官能基が含まれていてもよく、その添加量が異なっていてもよい。
同種の非導電性フィラーとは、少なくとも共通の構成材料を有していればよく、粒子径、比表面積、表面処理剤、又はその添加量が異なっていてもよい。
同種のシランカップリング剤とは、少なくとも共通の官能基を有していればよく、分子中の他の官能基や添加量が異なっていてもよい。
同種の触媒とは、少なくとも共通の構成材料を有していればよく、触媒中に異なる組成が含まれていてもよく、その添加量が異なっていてもよい。
同一のシリコーンゴムを構成するシリコーンゴム系硬化性組成物には、さらに、異なる種類の、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン、架橋剤、非導電性フィラー、シランカップリング剤、及び触媒からなる群から選ばれる一又は二以上を含んでもよい。
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を含むことができる。ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の主成分となる重合物である。
上記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を含むことができる。
上記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、直鎖構造を有し、かつ、ビニル基を含有しており、かかるビニル基が硬化時の架橋点となる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ15モル%以下であるのが好ましい。これにより、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中におけるビニル基の量が最適化され、後述する各成分とのネットワークの形成を確実に行うことができる。
なお、本明細書中において、ビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。ただし、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の重合度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1000~10000程度、より好ましくは2000~5000程度の範囲内である。なお、重合度は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の比重は、特に限定されないが、0.9~1.1程度の範囲であるのが好ましい。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、上記のような範囲内の重合度および比重を有するものを用いることにより、得られるシリコーンゴムの耐熱性、難燃性、化学的安定性等の向上を図ることができる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、特に、下記式(1)で表される構造を有するものであるが好ましい。
Figure 2022076292000002
式(1)中、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
また、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
さらに、式(1)中のRおよびRの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(1)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。さらに、R、およびRについても同様である。
さらに、m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0~2000の整数、nは1000~10000の整数である。mは、好ましくは0~1000であり、nは、好ましくは2000~5000である。
また、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の具体的構造としては、例えば下記式(1-1)で表されるものが挙げられる。
Figure 2022076292000003
式(1-1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を含んでもよい。第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)のビニル基量は、0.1モル%以下でもよい。
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)とビニル基含有量が0.5~15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを含有してもよい。
シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができる。その結果、より効果的にシリコーンゴムの引裂強度を高めることができる。
具体的には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、例えば、上記式(1-1)において、R1がビニル基である単位および/またはR2がビニル基である単位を、分子内に2個以上有し、かつ0.4モル%以下を含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、R1がビニル基である単位および/またはR2がビニル基である単位を、0.5~15モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを用いるのが好ましい。
また、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)は、ビニル基含有量が0.01~0.2モル%であるのが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)は、ビニル基含有量が、0.8~12モル%であるのが好ましい。
さらに、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせて配合する場合、(A1-1)と(A1-2)の比率は特に限定されないが、例えば、重量比で(A1-1):(A1-2)が50:50~95:5であるのが好ましく、80:20~90:10であるのがより好ましい。
なお、第1および第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)および(A1-2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、分岐構造を有するビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(A2)を含んでもよい。
<<オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含むことができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖構造を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐構造を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)とに分類され、これらのうちのいずれか一方または双方を含むことができる。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖構造を有し、かつ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分が有するビニル基とヒドロシリル化反応し、これらの成分を架橋する重合体である。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が20000以下であるのが好ましく、1000以上、10000以下であることがより好ましい。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の重量平均分子量は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算により測定することができる。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
以上のような直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)としては、例えば、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましく用いられる。
Figure 2022076292000004
式(2)中、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
なお、式(2)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。Rについても同様である。ただし、複数のRおよびRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
また、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
なお、式(2)中のR,R,Rの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
さらに、m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは2~150整数、nは2~150の整数である。好ましくは、mは2~100の整数、nは2~100の整数である。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、上記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋する重合体である。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の比重は、0.9~0.95の範囲である。
さらに、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)としては、下記平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
平均組成式(c)
(H(R3-aSiO1/2(SiO4/2
(式(c)において、Rは一価の有機基、aは1~3の範囲の整数、mはH(R3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
式(c)において、Rは一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1~3の範囲の整数、好ましくは1である。
また、式(c)において、mはH(R3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は分岐状構造を有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)では1.8~2.1、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)では0.8~1.7の範囲となる。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の具体例としては、下記式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 2022076292000005
式(3)中、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基、もしくは水素原子である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(3)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
また、式(3)中、「-O-Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は、それぞれ、特に限定されない。ただし、シリコーンゴム系硬化性組成物において、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の合計のヒドリド基量が、0.5~5モルとなる量が好ましく、1~3.5モルとなる量がより好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)および分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)と、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)との間で、架橋ネットワークを確実に形成させることができる。
<<シリカ粒子(C)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、必要に応じ、非導電性フィラーとして、シリカ粒子(C)を含むことができる。
シリカ粒子(C)としては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカ粒子(C)は、例えば、BET法による比表面積が例えば50~400m/gであるのが好ましく、100~400m/gであるのがより好ましい。また、シリカ粒子(C)の平均一次粒径は、例えば1~100nmであるのが好ましく、5~20nm程度であるのがより好ましい。
シリカ粒子(C)として、かかる比表面積および平均粒径の範囲内であるものを用いることにより、形成されるシリコーンゴムの硬さや機械的強度の向上、特に引張強度の向上をさせることができる。
<<シランカップリング剤(D)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シランカップリング剤(D)を含むことができる。
シランカップリング剤(D)は、加水分解性基を有することができる。加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基がシリカ粒子(C)表面の水酸基と脱水縮合反応することで、シリカ粒子(C)の表面改質を行うことができる。
また、このシランカップリング剤(D)は、疎水性基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にこの疎水性基が付与されるため、シリコーンゴム系硬化性組成物中ひいてはシリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)の凝集力が低下(シラノール基による水素結合による凝集が少なくなる)し、その結果、シリコーンゴム系硬化性組成物中のシリカ粒子の分散性が向上すると推測される。これにより、シリカ粒子とゴムマトリックスとの界面が増加し、シリカ粒子の補強効果が増大する。さらに、ゴムのマトリックス変形の際、マトリックス内でのシリカ粒子の滑り性が向上すると推測される。そして、シリカ粒子(C)の分散性の向上及び滑り性の向上によって、シリカ粒子(C)によるシリコーンゴムの機械的強度(例えば、引張強度や引裂強度など)が向上する。
さらに、シランカップリング剤(D)は、ビニル基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にビニル基が導入される。そのため、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化の際、すなわち、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)が有するビニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とがヒドロシリル化反応して、これらによるネットワーク(架橋構造)が形成される際に、シリカ粒子(C)が有するビニル基も、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とのヒドロシリル化反応に関与するため、ネットワーク中にシリカ粒子(C)も取り込まれるようになる。これにより、形成されるシリコーンゴムの低硬度化および高モジュラス化を図ることができる。
シランカップリング剤(D)としては、疎水性基を有するシランカップリング剤およびビニル基を有するシランカップリング剤を併用することができる。
シランカップリング剤(D)としては、例えば、下記式(4)で表わされるものが挙げられる。
-Si-(X)4-n・・・(4)
上記式(4)中、nは1~3の整数を表わす。Yは、疎水性基、親水性基またはビニル基を有するもののうちのいずれかの官能基を表わし、nが1の時は疎水性基であり、nが2または3の時はその少なくとも1つが疎水性基である。Xは、加水分解性基を表わす。
疎水性基は、炭素数1~6のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられ、中でも、特に、メチル基が好ましい。
また、親水性基は、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基またはカルボニル基等が挙げられ、中でも、特に、水酸基が好ましい。なお、親水性基は、官能基として含まれていてもよいが、シランカップリング剤(D)に疎水性を付与するという観点からは含まれていないのが好ましい。
さらに、加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、クロロ基またはシラザン基等が挙げられ、中でも、シリカ粒子(C)との反応性が高いことから、シラザン基が好ましい。なお、加水分解性基としてシラザン基を有するものは、その構造上の特性から、上記式(4)中の(Y-Si-)の構造を2つ有するものとなる。
上記式(4)で表されるシランカップリング剤(D)の具体例は、例えば、官能基として疎水性基を有するものとして、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシランのようなクロロシラン;ヘキサメチルジシラザンが挙げられ、官能基としてビニル基を有するものとして、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシランのようなクロロシラン;ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられるが、中でも、上記記載を考慮すると、特に、疎水性基を有するものとしてはヘキサメチルジシラザン、ビニル基を有するものとしてはジビニルテトラメチルジシラザンであるのが好ましい。
本実施形態において、シランカップリング剤(D)の含有量の下限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、シランカップリング剤(D)の含有量上限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対して、100質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤(D)の含有量を上記下限値以上とすることにより、シリコーンゴムが基板との適度な密着性を持ち、また、シリカ粒子(C)を用いる場合においては、シリコーンゴム全体としての機械的強度の向上に資することができる。また、シランカップリング剤(D)の含有量を上記上限値以下とすることにより、シリコーンゴムが適度な機械特性を持つことができる。
<<白金または白金化合物(E)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、白金または白金化合物(E)を含むことができる。
白金または白金化合物(E)は、硬化の際の触媒として作用する触媒成分である。白金または白金化合物(E)の添加量は触媒量である。
白金または白金化合物(E)としては、公知のものを使用することができ、例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。
なお、白金または白金化合物(E)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<<水(F)>>
また、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物には、上記成分(A)~(E)以外に、水(F)が含まれていてもよい。
水(F)は、シリコーンゴム系硬化性組成物に含まれる各成分を分散させる分散媒として機能するとともに、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)との反応に寄与する成分である。そのため、シリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)とを、より確実に互いに連結したものとすることができ、全体として均一な特性を発揮することができる。
さらに、水(F)を含有する場合、その含有量は、適宜設定することができるが、具体的には、シランカップリング剤(D)100重量部に対して、例えば、10~100重量部の範囲であるのが好ましく、30~70重量部の範囲であるのがより好ましい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
(その他の成分)
さらに、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)~(F)成分以外に、他の成分をさらに含むことができる。この他の成分としては、例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等のシリカ粒子(C)以外の無機充填材、反応阻害剤、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等の添加剤が挙げられる。
なお、シリコーンゴム系硬化性組成物において、各成分の含有割合は特に限定されないが、例えば、以下のように設定される。
本実施形態において、シリカ粒子(C)の含有量の上限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対し、例えば、60重量部以下でもよく、好ましくは50重量部以下でもよく、さらに好ましくは40重量部以下でもよい。これにより、硬さや引張強等の機械的強度のバランスを図ることができる。また、シリカ粒子(C)の含有量の下限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対し、特に限定されないが、例えば、10重量部以上でもよい。
シランカップリング剤(D)は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、例えば、シランカップリング剤(D)が5重量部以上100重量部以下の割合で含有するのが好ましく、5重量部以上40重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。これにより、シリカ粒子(C)のシリコーンゴム系硬化性組成物中における分散性を確実に向上させることができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の含有量は、具体的にビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)及びシリカ粒子(C)及びシランカップリング剤(D)の合計量100重量部に対して、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の割合で含有することが好ましく、0.8重量部以上15重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。(B)の含有量が前記範囲内であることで、より効果的な硬化反応ができる可能性がある。
白金または白金化合物(E)の含有量は、触媒量を意味し、適宜設定することができるが、具体的にビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シリカ粒子(C)、シランカップリング剤(D)の合計量に対して、本成分中の白金族金属が重量単位で0.01~1000ppmとなる量であり、好ましくは、0.1~500ppmとなる量である。白金または白金化合物(E)の含有量を上記下限値以上とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物を十分硬化させることができる。白金または白金化合物(E)の含有量を上記上限値以下とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物の硬化速度を向上させることができる。
さらに、水(F)を含有する場合、その含有量は、適宜設定することができるが、具体的には、シランカップリング剤(D)100重量部に対して、例えば、10~100重量部の範囲であるのが好ましく、30~70重量部の範囲であるのがより好ましい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
<シリコーンゴムの製造方法>
次に、本実施形態のシリコーンゴムの製造方法について説明する。
本実施形態のシリコーンゴムの製造方法としては、シリコーンゴム系硬化性組成物を調製し、このシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを得ることができる。
以下、詳述する。
まず、シリコーンゴム系硬化性組成物の各成分を、任意の混練装置により、均一に混合してシリコーンゴム系硬化性組成物を調製する。
[1]たとえば、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)と、シリカ粒子(C)と、シランカップリング剤(D)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置により、混練することで、これら各成分(A)、(C)、(D)を含有する混練物を得る。
なお、この混練物は、予めビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とシランカップリング剤(D)とを混練し、その後、シリカ粒子(C)を混練(混合)して得るのが好ましい。これにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中におけるシリカ粒子(C)の分散性がより向上する。
また、この混練物を得る際には、水(F)を必要に応じて、各成分(A)、(C)、および(D)の混練物に添加するようにしてもよい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
さらに、各成分(A)、(C)、(D)の混練は、第1温度で加熱する第1ステップと、第2温度で加熱する第2ステップとを経るようにするのが好ましい。これにより、第1ステップにおいて、シリカ粒子(C)の表面をカップリング剤(D)で表面処理することができるとともに、第2ステップにおいて、シリカ粒子(C)とカップリング剤(D)との反応で生成した副生成物を混練物中から確実に除去することができる。その後、必要に応じて、得られた混練物に対して、成分(A)を添加し、更に混練してもよい。これにより、混練物の成分のなじみを向上させることができる。
第1温度は、例えば、40~120℃程度であるのが好ましく、例えば、60~90℃程度であるのがより好ましい。第2温度は、例えば、130~210℃程度であるのが好ましく、例えば、160~180℃程度であるのがより好ましい。
また、第1ステップにおける雰囲気は、窒素雰囲気下のような不活性雰囲気下であるのが好ましく、第2ステップにおける雰囲気は、減圧雰囲気下であるのが好ましい。
さらに、第1ステップの時間は、例えば、0.3~1.5時間程度であるのが好ましく、0.5~1.2時間程度であるのがより好ましい。第2ステップの時間は、例えば、0.7~3.0時間程度であるのが好ましく、1.0~2.0時間程度であるのがより好ましい。
第1ステップおよび第2ステップを、上記のような条件とすることで、前記効果をより顕著に得ることができる。
[2]次に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、白金または白金化合物(E)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置を用いて、上記工程[1]で調製した混練物に、各成分(B)、(E)を混練することで、シリコーンゴム系硬化性組成物を得る。得られたシリコーンゴム系硬化性組成物は溶剤を含むペーストであってもよい。
なお、この各成分(B)、(E)の混練の際には、予め上記工程[1]で調製した混練物とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)とを、上記工程[1]で調製した混練物と白金または白金化合物(E)とを混練し、その後、それぞれの混練物を混練するのが好ましい。これにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応を進行させることなく、各成分(A)~(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中に確実に分散させることができる。
各成分(B)、(E)を混練する際の温度は、ロール設定温度として、例えば、10~70℃程度であるのが好ましく、25~30℃程度であるのがより好ましい。
さらに、混練する時間は、例えば、5分~1時間程度であるのが好ましく、10~40分程度であるのがより好ましい。
上記工程[1]および上記工程[2]において、温度を上記範囲内とすることにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。また、上記工程[1]および上記工程[2]において、混練時間を上記範囲内とすることにより、各成分(A)~(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中により確実に分散させることができる。
なお、各工程[1]、[2]において使用される混練装置としては、特に限定されないが、例えば、ニーダー、2本ロール、バンバリーミキサー(連続ニーダー)、加圧ニーダー等を用いることができる。
また、本工程[2]において、混練物中に1-エチニルシクロヘキサノールのような反応抑制剤を添加するようにしてもよい。これにより、混練物の温度が比較的高い温度に設定されたとしても、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。
[3]次に、シリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを形成する。
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化工程は、例えば、100~250℃で1~30分間加熱(一次硬化)した後、200℃で1~4時間ポストベーク(2次硬化)することによって行われる。
以上のような工程を経ることで、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化物からなるシリコーンゴムが得られる。
なお、[3]次に、工程[2]で得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、溶剤に溶解させることにより、絶縁性ペーストを得ることができる。
また、[3]次に、工程[2]で得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、溶剤に溶解させ、導電性フィラーを加えることで導電性ペーストを得ることができる。
(溶剤)
導電性ペーストや絶縁性ペーストは、溶剤を含む。
溶剤としては、公知の各種溶剤を用いることができるが、例えば、高沸点溶剤を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記高沸点溶剤の沸点の下限値は、例えば、100℃以上であり、好ましくは130℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。これにより、スクリーン印刷などの印刷安定性を向上させることができる。一方で、上記高沸点溶剤の沸点の上限値は、特に限定されないが、例えば、300℃以下でもよく、290℃以下でもよく、280℃以下でもよい。これにより、配線形成時においての過度の熱履歴を抑制できるので、下地へのダメージや、導電性ペーストで形成された配線の形状を良好に維持することができる。
また、溶剤としては、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の溶解性や沸点の観点から適切に選択できるが、例えば、炭素数5以上20以下の脂肪族炭化水素、好ましくは炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素、より好ましくは炭素数10以上15以下の脂肪族炭化水素を含むことができる。
また、溶剤の一例としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、トリフルオロメチルベンゼン、ベンゾトリフルオリドなどの芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタンなどのハロアルカン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジエチルカーボネートなどのエステル類などを例示することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで用いられる溶媒は、上記の導電性ペースト中の組成成分を均一に溶解ないし分散させることのできる溶媒の中から適宜選択すればよい。
上記溶剤が、ハンセン溶解度パラメータの極性項(δ)の上限値が、例えば、10MPa1/2以下であり、好ましくは7MPa1/2以下であり、より好ましくは5.5MPa1/2以下である第1溶剤を含むことができる。これにより、ペースト中においてシリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の分散性や溶解性を良好なものとすることができる。この第1溶剤の上記極性項(δ)の下限値は、特に限定されないが、例えば、0Pa1/2以上でもよい。
上記第1溶剤におけるハンセン溶解度パラメータの水素結合項(δ)の上限値が、例えば、20MPa1/2以下であり、好ましくは10MPa1/2以下であり、より好ましくは7MPa1/2以下である。これにより、ペースト中において、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の分散性や溶解性を良好なものとすることができる。この第1溶剤の上記水素結合項(δ)の下限値は、特に限定されないが、例えば、0Pa1/2以上でもよい。
ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は、ある物質が他のある物質にどのくらい溶けるのかという溶解性を表す指標である。HSPは、溶解性を3次元のベクトルで表す。この3次元ベクトルは、代表的には、分散項(δ)、極性項(δ)、水素結合項(δ)で表すことができる。そしてベクトルが似ているもの同士は、溶解性が高いと判断できる。ベクトルの類似度をハンセン溶解度パラメータの距離(HSP距離)で判断することが可能である。
本明細書で用いている、ハンセン溶解度パラメーター(HSP値)は、HSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice)というソフトを用いて算出することができる。ここで、ハンセンとアボットが開発したコンピューターソフトウエアHSPiPには、HSP距離を計算する機能と様々な樹脂と溶剤もしくは非溶剤のハンセンパラメーターを記載したデータベースが含まれている。
各樹脂の純溶剤および良溶剤と貧溶剤の混合溶剤に対する溶解性を調べ、HSPiPソフトにその結果を入力し、D:分散項、P:極性項、H:水素結合項、R0:溶解球半径を算出する。
本実施形態の溶剤としては、例えば、エラストマーやエラストマーを構成する構成単位と溶剤との、HSP距離、極性項や水素結合項の差分が小さいもの選択することができる。
室温25℃においてせん断速度20〔1/s〕で測定した時の導電性ペースト及び/又は絶縁性ペーストの粘度の下限値は、例えば、1Pa・s以上であり、好ましくは5Pa・s以上であり、より好ましくは10Pa・s以上である。これにより、成膜性を向上させることができる。また、厚膜形成時においても形状保持性を高めることができる。一方で、室温25℃における導電性ペースト及び/又は絶縁性ペーストの粘度の上限値は、例えば、100Pa・s以下であり、好ましくは90Pa・s以下であり、より好ましくは80Pa・s以下である。これにより、ペーストにおける印刷性を向上させることができる。
室温25℃において、せん断速度1〔1/s〕で測定した時の粘度をη1とし、せん断速度5〔1/s〕で測定した時の粘度をη5とし、チキソ指数を粘度比(η1/η5)とする。
このとき、導電性ペースト及び/又は絶縁性ペーストのチキソ指数の下限値は、例えば、1.0以上であり、好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.2以上である。これにより、印刷法で得られた配線の形状を安定的に保持することができる。一方で、導電性ペースト及び/又は絶縁性ペーストのチキソ指数の上限値は、例えば、3.0以下であり、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.0以下である。これにより、ペーストの印刷容易性を向上させることができる。
絶縁性ペースト中におけるシリコーンゴム系硬化性組成物の含有量は、絶縁性ペースト100質量%中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、絶縁性ペースト中におけるシリコーンゴム系硬化性組成物の含有量は、絶縁性ペースト100質量%中、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。
(導電性フィラー)
導電性フィラーとしては、公知の導電材料を用いてもよいが、金属粉(G)を用いてもよい。
金属粉(G)を構成する金属は特に限定はされないが、例えば、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、或いはこれらを合金化した金属粉のうち少なくとも一種類、あるいは、これらのうちの二種以上を含むことができる。
これらのうち、金属粉(G)としては、導電性の高さや入手容易性の高さから、銀または銅を含むこと、すなわち、銀粉または銅粉を含むことが好ましい。
なお、これらの金属粉(G)は他種金属でコートしたものも使用できる。
本実施形態において、金属粉(G)の形状には制限がないが、樹枝状、球状、リン片状等の従来から用いられているものが使用できる。この中でも、リン片状の金属粉(G)を用いてもよい。
また、金属粉(G)の粒径も制限されないが、たとえば平均粒径D50で0.001μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上であり、さらに好ましくは0.1μm以上である。金属粉(G)の粒径は、たとえば平均粒径D50で1,000μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。
平均粒径D50をこのような範囲に設定することで、シリコーンゴムとして適度な導電性を発揮することができる。
なお、金属粉(G)の粒径は、たとえば、導電性ペースト、あるいは導電性ペーストを用いて成形したシリコーンゴムについて透過型電子顕微鏡等で観察の上、画像解析を行い、任意に選んだ金属粉200個の平均値として定義することができる。
導電性ペースト中における導電性フィラーの含有量は、導電性ペースト100質量%中、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、導電性ペースト中における導電性フィラーの含有量は、導電性ペースト100質量%中、85質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましい。
導電性フィラーの含有量を上記下限値以上とすることにより、シリコーンゴムが適度な導電特性を持つことができる。また、導電性フィラーの含有量を上記上限値以下とすることにより、シリコーンゴムが適度な柔軟性を持つことができる
導電性ペースト中におけるシリコーンゴム系硬化性組成物の含有量は、導電性ペースト100質量%中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、導電性ペースト中におけるシリコーンゴム系硬化性組成物の含有量は、導電性ペースト100質量%中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
シリコーンゴム系硬化性組成物の含有量を上記下限値以上とすることにより、シリコーンゴムが適度な柔軟性を持つことができる。また、シリコーンゴム系硬化性組成物の含有量を上記上限値以下とすることにより、シリコーンゴムの機械的強度の向上を図ることができる。
導電性ペースト中におけるシリカ粒子(C)の含有量の下限値は、シリカ粒子(C)および導電性フィラーの合計量100質量%中、例えば、1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上とすることができる。これにより、シリコーンゴムの機械的強度を向上させることができる。一方で、上記導電性ペースト中における上記シリカ粒子(C)の含有量の上限値は、シリカ粒子(C)および導電性フィラーの合計量100質量%中、例えば、20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。これにより、シリコーンゴムにおける伸縮電気特性と機械的強度のバランスを図ることができる。
下部配線や上部配線などの配線を構成する導電性ペーストを硬化させた導電硬化物中における、導電性フィラーの含有量は、導電硬化物100質量%中、65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。また、導電硬化物における導電性フィラーの含有量は、導電硬化物100質量%中、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。
導電性フィラーの含有量を上記下限値以上とすることにより、シリコーンゴムが適度な導電特性を持つことができる。また、導電性フィラーの含有量を上記上限値以下とすることにより、シリコーンゴムが適度な柔軟性を持つことができる。
次に、本実施形態の伸縮性多層回路基板100の製造工程について説明する。
本実施形態の伸縮性多層回路基板の製造方法は、多層配線構造を備える柔軟性回路基板の製造方法であって、基板を形成する工程と、基板の上に複数の下部配線を形成する工程と、下部配線の上に下部絶縁層を形成する工程と、下部絶縁層の上に複数の上部配線を形成する工程と、上部配線の上に上部絶縁層を形成する工程と、を含む。
伸縮性多層回路基板の製造方法において、基板、下部配線、下部絶縁層、上部配線、及び上部絶縁層を、それぞれ熱硬化性エラストマーを用いて形成するとともに、基板の一面に対して垂直方向に見たとき、少なくとも第一の下部配線に対して第一の上部配線が交差しつつも、互いに電気的に接続可能となるように、下部配線及び上部配線を形成する。
伸縮性多層回路基板の製造方法において、複数の下部配線及び複数の上部配線は、それぞれ同一または異なる導電性ペーストを塗布、乾燥させることにより形成してもよい。
ここで、伸縮性多層回路基板100の製造工程の一例について図3を用いて説明する。
図3は、伸縮性多層回路基板100の製造工程の概略を示す断面図である。
まず、図3(a)に示すように、作業台11上に支持体120を設置し、その支持体12上に絶縁性ペースト13を塗工する。塗工方法としては、各種の方法を用いることができるが、例えば、スキージ14を用いたスキージ方法などの印刷法を用いることができる。続いて、塗膜状の絶縁性ペースト13を乾燥させて、支持体12上に絶縁層32(絶縁性エラストマーで構成される基板110)を形成することができる。乾燥条件は、絶縁性ペースト13中の溶剤の種類や量に応じて適宜設定することができるが、例えば、乾燥温度を150℃~180℃、乾燥時間を1分~30分等とすることができる。
なお、基板110を構成する絶縁層32は、上記シリコーンゴム系硬化性組成物を用い、カレンダー成形やコンプレッション成形などの成形方法にて形成されてもよい。
続いて、図3(b)に示すように、絶縁層32上に、所定の開口パターン形状を有するマスク16を配置する。そして、図3(b)、(c)に示すように、マスク16を介して、絶縁層32上に導電性ペースト15を塗工する。
塗工方法は、絶縁性ペースト13の塗工方法と同様の手法を用いることができ、例えば、スキージ14によるスキージ印刷を用いてもよい。
ここで、絶縁性ペースト13および導電性ペースト15がそれぞれシリコーンゴム系硬化性組成物を含む場合、乾燥した絶縁層32上に、所定のパターン形状を有する導電性塗膜(導電層52)を積層した後、これらを一括して硬化処理してもよい。硬化処理としては、シリコーンゴム系硬化性組成物に応じて適宜設定できるが、例えば、硬化温度を160℃~220℃、硬化時間を1時間~3時間等とすることができる。硬化処理後または硬化処理前に、図3(d)に示すように、マスク16を取り外すことができる。これにより、絶縁層32の硬化物で構成される基板上に、所定のパターン形状を有する、導電層52の硬化物(導電性エラストマーで構成される下部配線120)を形成することができる。
続いて、図3(e)に示すように、絶縁層32およびパターン状の導電層52の上に、さらに絶縁性ペースト17を塗工し、図3(f)に示すように絶縁層72(絶縁性エラストマーで構成される下部絶縁層130)を形成することができる。
その後、図3(b)から図3(e)の工程を適宜、繰り返してもよい。これにより、導電性エラストマーで構成される上部配線150及び絶縁性エラストマーで構成される上部絶縁層160等を形成し、回路の多層化が可能になる。また、マスクパターンやその配置位置を調整することで、下部配線120及び上部配線150の交差構造を形成できる。
なお、繰り返し工程は、絶縁層32から支持体120を分離した後に行ってもよい。
以上により、図1(a)に示す伸縮性多層回路基板100を得ることができる。
このように、伸縮性多層回路基板100中、基板110、下部絶縁層130、および上部絶縁層160の少なくとも一つが、好ましくは、すべてが、絶縁性ペーストを用いて印刷された絶縁性印刷層で構成されてもよい。これにより、配線との密着性を向上させることが可能である。
伸縮性多層回路基板100中、下部配線120、および上部配線150が、それぞれ導電性ペーストを用いて印刷された導電性印刷層で構成されてもよい。これにより、導電性印刷層のパターン形状を自在に選択可能になる。
下部配線120、および上部配線150の少なくとも一方の導電性フィラーの含有量の下限は、配線100質量%中、例えば、70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。これにより、伸縮性多層回路基板の伸縮電気特性を高められる。一方、下部配線120、および上部配線150の少なくとも一方の導電性フィラーの含有量の上限は、配線100質量%中、例えば、90質量%以下、好ましくは88質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。これにより、伸縮性多層回路基板の伸縮性などのゴム特性の低下を抑制できる。
以下、伸縮性多層回路基板100の特性について説明する。
本実施形態において、基板110、下部配線120、下部絶縁層130、上部配線150及び上部絶縁層160の少なくとも一つ以上が、以下の特性の少なくとも一つを有するエラストマーで構成されてもよい。好ましい態様の一つは、基板110が以下の引裂強度、破断伸び、及びデュロメータ硬度Aの少なくとも一つを有するエラストマーで構成される。
エラストマーの引裂強度の下限は、例えば、25N/mm以上、好ましくは28N/mm以上、より好ましくは30N/mm以上、さらに好ましくは33N/mm以上、一層好ましくは35N/mm以上である。これにより、エラストマーの繰り返し使用時における耐久性を向上できる。また、エラストマーの機械的強度を向上できる。
一方、エラストマーの引裂強度の上限は、特に限定されないが、例えば、80N/mm以下としてもよく、70N/mm以下としてもよい。これにより、エラストマーの諸特性のバランスをとることができる。
エラストマーの引張強度の下限は、例えば、5.0MPa以上であり、好ましくは10.0MPa以上であり、より好ましくは12.0MPa以上である。これにより、エラストマーの機械的強度を向上させることができる。また、繰り返しの変形に耐えられる耐久性に優れたエラストマーを実現できる。
一方、エラストマーの引張強度の上限は、特に限定されないが、例えば、25MPa以下としてもよく、20MPa以下としてもよい。これにより、エラストマーの諸特性のバランスをとることができる。
エラストマーの破断伸びの下限は、例えば、100%以上であり、好ましくは200%以上であり、より好ましくは300%以上であり、さらに好ましくは400%以上である。これにより、エラストマーの高伸縮性および耐久性を向上させることができる。
一方、エラストマーの破断伸びの上限は、特に限定されないが、例えば、2000%以下としてもよく、1500%以下としてもよい。これにより、エラストマーの諸特性のバランスをとることができる。
エラストマーのデュロメータ硬さAの上限は、特に限定されないが、例えば、90以下でもよく、好ましくは75以下でもよく、より好ましくは70以下でもよい。これにより、シリコーンゴムの硬化物性のバランスを図ることができる。これにより、エラストマーにおいて、屈曲や伸張などの変形が容易となる変形容易性を高められる。
一方、エラストマーのデュロメータ硬さAの下限は、特に限定されないが、例えば、30以上、好ましくは35以上、より好ましくは40以上である。これにより、エラストマーの機械的強度を高められる。
本実施形態において、伸縮性多層回路基板の各部材の特性や各部材に使用したエラストマーの特性を測定する方法として、例えば、以下の方法を採用できる。各部材の特性の測定には、試験片として、例えば、基板などの各部材をそのまま使用してもよい。
(引裂強度の測定条件)
エラストマーを用いてクレセント形試験片を作製し、得られたクレセント形試験片について、25℃、JIS K6252(2001)に準拠して、引裂強度を測定する。
(引張強度の測定条件)
エラストマーを用いてダンベル状3号形試験片を作製し、得られたダンベル状3号形試験片について、25℃、JIS K6251(2004)に準拠して、引張強度を測定する。
(破断伸びの測定条件)
エラストマーを用いてダンベル状3号形試験片を作製し、得られたダンベル状3号形試験片について、25℃、JIS K6251(2004)に準拠して、破断伸びを測定する。
(デュロメータ硬さAの測定手順)
エラストマーを用いて、シート状試験片を作製し、JIS K6253(1997)に準拠して、25℃における、得られたシート状試験片のデュロメータ硬さAを測定する。
25℃、未伸長時における第一の下部配線120及び第一の上部配線150の少なくとも一方の体積抵抗率が、例えば、1×10-5Ω・cm以上1×10-1Ω・cm以下、好ましくは5×10-5Ω・cm以上5×10-2Ω・cm以下、より好ましくは1×10-4Ω・cm以上1×10-2Ω・cm以下である。このような範囲内とすることで、未伸長時、さらには伸長時においても、優れた電気特性の伸縮性多層回路基板100が得られる。
25℃、未伸長時における第一の下部配線120及び第一の上部配線150の電気抵抗値の少なくとも一方が、例えば、0.01Ω/cm以上1000Ω/cm以下、好ましくは0.05Ω/cm以上500Ω/cm以下、より好ましくは0.1Ω/cm以上200Ω/cm以下である。
25℃、未伸長時における電気抵抗値が上記範囲内の場合、25℃、50%伸長時における第一の下部配線120及び第一の上部配線150の電気抵抗値の少なくとも一方が、0.1Ω/cm以上1200Ω/cm以下、好ましくは0.2Ω/cm以上700Ω/cm以下、より好ましくは0.3Ω/cm以上300Ω/cm以下である。このような範囲内とすることで、未伸長時、さらには伸長時においても、優れた電気特性の伸縮性多層回路基板100が得られる。
25℃、20%伸長時における配線の電気抵抗値をX1、25℃、50%伸長時における配線の電気抵抗値をX2とする。
25℃、未伸長時における電気抵抗値が上記範囲内の場合、第一の下部配線120及び第一の上部配線150の少なくとも一方が、例えば、1.2≦X2/X1≦8.0、好ましくは1.3≦X2/X1≦7.0、より好ましくは1.4≦X2/X1≦6.0を満たすように構成される。このような範囲内とすることで、伸長時においても、優れた電気特性の伸縮性多層回路基板100が得られる。
25℃、未伸長時おける配線の電気抵抗値のZ1とし、25℃、50%の伸長操作を、100回行った後の未伸長状態における配線の電気抵抗値をZ2とする。
第一の下部配線120及び第一の上部配線150の少なくとも一方が、例えば、1.1≦Z2/Z1≦3.0、好ましくは1.2≦Z2/Z1≦2.9、より好ましくは1.3≦Z2/Z1≦2.8を満たすように構成される。このような範囲内とすることで、繰り返し伸長時においても、優れた電気特性の伸縮性多層回路基板100が得られる。
本実施形態の電子デバイスは、上記の伸縮性多層回路基板を備える。
電子デバイスとしては、例えば、伸縮性ディスプレイ、ウェアラブルデバイス、又は生体センサー等が挙げられる。
以下、伸縮性多層回路基板を伸縮性ディスプレイに適用した一例について、図4を用いて説明する。
図4は、伸縮性ディスプレイを備える表示装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
表示装置300の一例は、表示部310、及び制御部320を備える。この表示装置300は、電源部350や通信部340などの他の機能部を少なくとも一以上さらに備えてもよい。
表示部310は、伸縮性ディスプレイ(表示部310)を備え、伸縮性ディスプレイにより表示を行う。伸縮性ディスプレイは、表示素子等が搭載された上記の伸縮性多層回路基板で構成される。
このような表示装置300は、衣服や身体等の各種用途に応じた対象に装着可能である。
制御部320は、表示部310の表示内容を制御する。表示部310は、例えば、入力部330から入力された情報に基づいて表示内容を制御できる。
入力部330は、表示装置300に直接設けられてもよいが、スマートフォンなどの外部端末に設けられてもよい。入力部330から入力された情報は、表示装置300が備える通信部340を介して制御部320に伝達される。入力部330は、例えば、ボタンまたはタッチパネルで構成されてもよい。
なお、外部端末にディスプレイが設けられている場合、通信部340を介して、表示部310の表示内容と同じものを、そのディスプレイに表示されてもよい。
通信部340は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fiなどの各種通信手段を備える。
表示装置300が、さらに記憶部360を備えてもよい。制御部320は、記憶部360に記憶された表示内容を表示部310に表示させてもよい。また、制御部320は、記憶部360に記憶された表示内容を構成する情報を生成、変更、削除することができる。
電源部350は、モバイルバッテリーで構成されてもよく、外部電源に接続可能な電極を備えてもよい。
表示装置300中、表示部310を構成する伸縮性多層回路基板の基板110上には、表示素子が搭載された表示領域の他に、表示領域の周辺にある非表示領域が設けられていてもよい。非表示領域の基板110上には、例えば、制御部320、電源部350、入力部330、通信部340及び記憶部360等の各部の少なくとも一つ又は二つ以上が設けられていてもよい。これにより、表示素子と各部や各部間を、伸縮性配線で接続可能である。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A))
(A1-1):第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン:下記の合成スキーム1により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(上記式(1-1)で表わされる構造)
(A1-2):第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン:下記の合成スキーム2により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(上記式(1-1)で表わされる構造でRおよびRがビニル基である構造)
(オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B))
(B-1):オルガノハイドロジェンポリシロキサン:モメンティブ社製、「TC-25D」
(シリカ粒子(C))
(C):シリカ微粒子(粒径7nm、比表面積300m/g)、日本アエロジル社製、「AEROSIL300」
(シランカップリング剤(D))
(D-1):ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、Gelest社製、「HEXAMETHYLDISILAZANE(SIH6110.1)」
(D-2)ジビニルテトラメチルジシラザン、Gelest社製、「1,3-DIVINYLTETRAMETHYLDISILAZANE(SID4612.0)」
(白金または白金化合物(E))
(E-1):白金化合物 (モメンティブ社製、商品名「TC―25A」)
(水(F))
(F):純水
(金属粉(G))
(G1):銀粉、徳力化学研究所社製、商品名「TC-101」、メジアン径d50:8.0μm、アスペクト比16.4、平均長径4.6μm
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合成)
[合成スキーム1:第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)の合成]
下記式(5)にしたがって、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を合成した。
すなわち、Arガス置換した、冷却管および攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)、カリウムシリコネート0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。なお、この際、粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。そして、3時間後、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
さらに、4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を得た(Mn=2,2×10、Mw=4,8×10)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.04モル%であった。
Figure 2022076292000006
[合成スキーム2:第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)の合成]
上記(A1-1)の合成工程において、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)に加えて2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.86g(2.5mmol)を用いたこと以外は、(A1-1)の合成工程と同様にすることで、下記式(6)のように、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)を合成した。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.92モル%であった。
Figure 2022076292000007
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
以下の手順に従って、シリコーンゴム系硬化性組成物1~5を調整した。
まず、下記の表1に示す割合で、90%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シランカップリング剤(D)および水(F)の混合物を予め混練し、その後、混合物にシリカ粒子(C)を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、シリカ粒子(C)添加後の混練は、カップリング反応のために窒素雰囲気下、60~90℃の条件下で1時間混練する第1ステップと、副生成物(アンモニア)の除去のために減圧雰囲気下、160~180℃の条件下で2時間混練する第2ステップとを経ることで行い、その後、冷却し、残り10%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を2回に分けて添加し、20分間混練した。
続いて、下記の表2に示す割合で、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)、白金または白金化合物(E)を加えて、ロールで混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物1~5を得た。
Figure 2022076292000008
(絶縁性ペーストの調製)
得られた32重量部のシリコーンゴム系硬化性組成物4を、68重量部のテトラデカン(溶剤)に浸漬し、続いて自転・公転ミキサーで撹拌し、導電性ペーストを得た。
(導電性ペーストの調製)
得られた13.7重量部のシリコーンゴム系硬化性組成物5を、31.8重量部のテトラデカン(溶剤)に浸漬し、続いて自転・公転ミキサーで撹拌し、54.5重量部の金属粉(G1)を加えた後に三本ロールで混練することで、導電性ペーストを得た。
<実施例1>
(伸縮性回路基板の作製)
以下の手順に従って、図5に示す伸縮性多層回路基板100を作製した。
まず、得られたシリコーンゴム系硬化性組成物1を170℃、10MPaで10分間プレスし、シート状に成形すると共に、一次硬化した。続いて、200℃、4時間で二次硬化して、縦×横×厚み:12cm×12cm×表3の基板厚みを有する基板110(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物)を得た。
得られた導電性ペーストを用いて、所定パターンを有するマスクを介して、8本の下部配線パターンを基板110上に描き、140℃、20分で乾燥した。No.1~8の下部配線120は、それぞれ、表2の長さを有する縦配線及び横配線がこの順で90度向きを変えて連結した構造を有しており、各配線の幅が1.0mm、厚みが表3の配線厚みであった。
得られた絶縁性ペーストを用いて、所定パターンを有するマスクを介して、基板110上及び下部配線120上に、絶縁層を形成し、140℃、20分で乾燥することにより、表3の絶縁層厚みを有する下部絶縁層130を形成した。ただし、下部絶縁層130には、8本の下部配線120における下部接続部122及び下部接続部124が露出するように開口部を形成した。
得られた導電性ペーストを用いて、所定パターンを有するマスクを介して、上面視において8本の下部配線120と90度で交差する配線を有する、8本の上部配線パターンを下部絶縁層130上に描き、140℃、20分で乾燥した。No.9~16の上部配線150は、それぞれ、表2の長さを有する縦配線(長)、横配線、及び縦配線(短)がこの順で90度向きを変えて連結した構造を有しており、各配線の幅が1.0mm、厚みが表3の配線厚みであった。
また、8本の上部配線150の縦配線(短)のそれぞれには、下部接続部122の近傍に、配線の幅が1.0mm、厚みが表3の配線厚みを有する上部接続部152を8本形成した。
得られた絶縁性ペーストを用いて、所定パターンを有するマスクを介して、基板110、下部絶縁層130上及び上部配線150上に、絶縁層を形成し、140℃、20分で乾燥することにより表3の絶縁層厚みを有する上部絶縁層160を形成した。ただし、上部絶縁層160には、8本の下部配線120における下部接続部122及び下部接続部124が露出するとともに、8本の上部配線150における上部接続部152及び上部接続部154が露出するように開口部を形成した。
以上の基板110、下部配線120、下部絶縁層130、上部配線150、及び上部絶縁層160を有する多層構造を、180℃、2時間で硬化し、図5に示す、実施例1の伸縮性多層回路基板100を得た。
<実施例2,3>
基板の構成するシリコーンゴム系硬化性組成物1を、表1のシリコーンゴム系硬化性組成物2又は3に変更するとともに、表3の基板厚み、絶縁層厚み、配線厚みを採用した以外は、実施例1と同様にして、実施例2、3の伸縮性多層回路基板100を作製した。
なお、伸縮性多層回路基板100の積層方向における断面において、基板厚み、絶縁層厚み、配線厚みについて顕微鏡を用いて測定した。
(電子装置の作製)
得られた図5の伸縮性多層回路基板100において、No.1~9の下部配線120における下部接続部122とNo.10~16の上部配線150における上部接続部152とが跨がる64箇所のそれぞれに、LEDチップ(電子部品170)を載せ、これらを上記導電ペーストにより接着し、140℃20分乾燥、硬化した。その後、LEDチップを上記絶縁ペーストで封止し、140℃20分乾燥、硬化し、電子装置を得た。
Figure 2022076292000009
Figure 2022076292000010
得られた伸縮性多層回路基板、及び電子装置について、以下の項目を評価した。
(硬度)
各実施例1~3のシリコーンゴム系硬化性組成物を170℃、10MPaで10分間プレスし、シート状に成形すると共に、一次硬化した。続いて、200℃、4時間で二次硬化して、表3の基板厚みを有するシート状の基板(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物)を試験片として用いた。
上記試験片を厚さ6mmになるように積層し、JIS K6253(1997)に準拠して、25℃における、得られたシート状試験片のデュロメータ硬さAを測定した。
(引裂強度)
上記試験片を用いて、JIS K6252(2001)に準拠して、25℃における引裂強度を測定した。単位はN/mmである。
(引張強度)
上記試験片を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、25℃における引張強度を測定した。単位はMPaである。
上記試験片を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、破断伸びを測定した。破断伸びは、[チャック間移動距離(mm)]÷[初期チャック間距離(35mm)]×100で計算した。単位は%である。
(接続信頼性)
各実施例1~3のシリコーンゴム系硬化性組成物を用いて得られた上記試験片(シート状の基板)を、さらに、180℃、2hの加熱処理を施した。この加熱処理前後における試験片の寸法変化は、約0%であった。
(電気特性)
各下部配線120及び各上部配線150を介して、得られた電子装置に5Vの電圧を印可し、64個のLEDチップが一斉に発光することを確認した。全個数の5%以上の接続不良(非発光)のLEDがある場合を×、5%未満の場合を○と評し、表1に結果を記載した。
上記下部配線120及び上部配線150に用いた導電性ペーストの硬化物(配線パターン)において、25℃、未伸長時における体積抵抗値が3.2×10-4Ω・cm、25℃、未伸長時における電気抵抗値が1.4Ω/cmであった。
(伸縮電気特性)
得られた電子装置中の伸縮性多層回路基板100について、図5の縦方向に20%伸縮を10回繰り返し行った。伸縮操作後の電子装置において、上記電気特性と同様に電圧を印加し、64個のLEDチップが一斉に発光することを確認した。全個数の5%以上の接続不良(非発光)のLEDがある場合を×、5%未満の場合を○と評し、表1に結果を記載した。
(伸縮耐久性)
伸縮操作後の伸縮性多層回路基板100において、厚み方向に切断した断面視を観察した結果、基板110、下部配線120、下部絶縁層130、上部配線150、及び上部絶縁層160のそれぞれの密着界面に剥離が生じないことを確認した。
実施例1~3は、複数の電子部品(LED)を高集積した構造を有しつつも、伸縮電気特性などに優れた伸縮性多層回路基板が得られる結果を示した。
11 作業台
12 支持体
13 絶縁性ペースト
14 スキージ
15 導電性ペースト
16 マスク
17 絶縁性ペースト
32 絶縁層
52 導電層
72 絶縁層
100 伸縮性多層回路基板
110 基板
120 下部配線
120 支持体
122 下部接続部
124 下部接続部
126 下部配線
130 下部絶縁層
140 開口部
142 開口部
150 上部配線
152 上部接続部
154 上部接続部
156 上部配線
160 上部絶縁層
170 電子部品
200 多層配線構造
210 交差構造
220 接続構造

Claims (30)

  1. 基板と、
    前記基板の上に設けられた複数の下部配線と、
    前記下部配線の上に設けられた下部絶縁層と、
    前記下部絶縁層の上に設けられた複数の上部配線と、
    前記上部配線の上に設けられた上部絶縁層と、を有する多層配線構造を備える、伸縮性多層回路基板であって、
    前記基板、前記下部配線、前記下部絶縁層、前記上部配線、及び前記上部絶縁層が、それぞれ熱硬化性エラストマーを含み、
    前記多層配線構造中において、
    前記基板の一面に対して垂直方向に見たとき、第一の前記下部配線と第一の前記上部配線とが互いに交差する交差構造と、
    第一の前記下部配線と第一の前記上部配線とが互いに電気的に接続可能な接続構造と、
    を備える、伸縮性多層回路基板。
  2. 請求項1に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記基板、前記下部絶縁層、および前記上部絶縁層が、それぞれシリコーンゴムを含む、伸縮性多層回路基板。
  3. 請求項1又は2に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記下部配線、および前記上部配線が、それぞれシリコーンゴム及び導電性フィラーを含む、伸縮性多層回路基板。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記基板、前記下部配線、前記下部絶縁層、前記上部配線、及び前記上部絶縁層が、同種のシリコーンゴムを含む、伸縮性多層回路基板。
  5. 請求項3に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記導電性フィラーが、銀粉を含む、伸縮性多層回路基板。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記基板、前記下部絶縁層、および前記上部絶縁層の少なくとも一つが、無機フィラーを含む、伸縮性多層回路基板。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記下部配線、および前記上部配線の少なくとも一つが、無機フィラーを含む、伸縮性多層回路基板。
  8. 請求項6または7に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記無機フィラーが、シリカを含む、伸縮性多層回路基板。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記基板、前記下部絶縁層、および前記上部絶縁層の少なくとも一つが、絶縁性ペーストを用いて印刷された絶縁性印刷層で構成される、伸縮性多層回路基板。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記下部配線、および前記上部配線が、それぞれ導電性ペーストを用いて印刷された導電性印刷層で構成される、伸縮性多層回路基板。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    JIS K6252(2001)に準拠して測定される、25℃における前記基板の引裂強度が、25N/mm以上である、伸縮性多層回路基板。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    JIS K6251(2004)に準拠して測定される、25℃における前記基板の破断伸びが、100%以上である、伸縮性多層回路基板。
  13. 請求項1~12のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    JIS K6253(1997)に準拠して規定される、25℃における前記基板のデュロメータ硬さAが、30以上90以下である、伸縮性多層回路基板。
  14. 請求項1~13のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記下部絶縁層の厚み/前記基板の厚みが、0.01以上2.0以下である、伸縮性多層回路基板。
  15. 請求項1~14のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記下部配線の厚み/前記下部絶縁層の厚みが、0.05以上20.0以下である、伸縮性多層回路基板。
  16. 請求項1~15のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    25℃、未伸長時における第一の前記下部配線及び第一の前記上部配線の体積抵抗率が、1×10-5Ω・cm以上1×10-1Ω・cm以下である、伸縮性多層回路基板。
  17. 請求項1~16のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    25℃、未伸長時における第一の前記下部配線及び第一の前記上部配線の電気抵抗値が0.01Ω/cm以上1000Ω/cm以下の範囲内にあるとき、20%伸長時における第一の前記下部配線及び第一の前記上部配線の電気抵抗値をX1、50%伸長時における第一の前記下部配線及び第一の前記上部配線の電気抵抗値をX2としたとき、X2/X1が、1.2以上8.0以下である、伸縮性多層回路基板。
  18. 請求項1~17のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    25℃、未伸長時における第一の前記下部配線及び第一の前記上部配線の電気抵抗値が0.01Ω/cm以上1000Ω/cm以下の範囲内にあるとき、50%伸長時における第一の前記下部配線及び第一の前記上部配線の電気抵抗値が、0.1Ω/cm以上1200Ω/cm以下である、伸縮性多層回路基板。
  19. 請求項1~18のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    25℃、未伸長時おける第一の前記下部配線の電気抵抗値のZ1、50%の伸長操作を、100回行った後の未伸長状態の第一の前記下部配線の電気抵抗値をZ2としたとき、
    Z2/Z1が、1.1以上3.0以下である、伸縮性多層回路基板。
  20. 請求項1~19のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記接続構造において、電子部品を介して、第一の前記下部配線と第一の前記上部配線とが電気的に接続するように構成される、伸縮性多層回路基板。
  21. 請求項20に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記電子部品は、導電性ペースト及び半田材料の少なくとも一方を用いて、第一の前記下部配線および第一の前記上部配線に電気的に接続するように構成される、伸縮性多層回路基板。
  22. 請求項20または21に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記多層配線構造中において、前記電子部品を封止する封止部を備える、伸縮性多層回路基板。
  23. 請求項1~22のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記接続構造中において、少なくとも前記下部絶縁層および前記上部絶縁層を貫通する下部用開口部が形成されており、少なくとも前記上部絶縁層を貫通する上部用開口部が形成されており、
    第一の前記下部配線が、前記下部用開口部内において露出するように構成された下部接続部を有しており、
    第一の前記上部配線が、前記上部用開口部内において露出するように構成された上部接続部を有する、伸縮性多層回路基板。
  24. 請求項1~23のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記多層配線構造の積層方向に切断したときの断面視において、前記接続構造中、第一の前記下部配線が、前記基板から前記下部配線に向かって突出した突出接続部を有する、伸縮性多層回路基板。
  25. 請求項1~24のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記基板は、前記上部配線および前記下部配線が設けられた一面とは反対側の他面に、配線を有しない、伸縮性多層回路基板。
  26. 請求項1~25のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板であって、
    前記基板の一面に対して垂直方向に見たとき、
    前記多層配線構造中において、複数の前記下部配線と複数の前記上部配線とが互いに交差する、複数の交差構造を備えており、
    前記複数の交差構造が、格子状に配置される、伸縮性多層回路基板。
  27. 請求項1~26のいずれか一項に記載の伸縮性多層回路基板を有する、伸縮性ディスプレイ、ウェアラブルデバイス、又は生体センサー。
  28. 表示部、制御部、電源部及び/又は通信部を備える表示装置であって、
    前記表示部が、請求項27に記載の伸縮性ディスプレイを備える、表示装置。
  29. 基板を形成する工程と、
    前記基板の上に複数の下部配線を形成する工程と、
    前記下部配線の上に下部絶縁層を形成する工程と、
    前記下部絶縁層の上に複数の上部配線を形成する工程と、
    前記上部配線の上に上部絶縁層を形成する工程と、を含む、多層配線構造を備える伸縮性多層回路基板の製造方法であって、
    前記基板、前記下部配線、前記下部絶縁層、前記上部配線、及び前記上部絶縁層を、それぞれ熱硬化性エラストマーを用いて形成するとともに、
    前記基板の一面に対して垂直方向に見たとき、少なくとも第一の前記下部配線に対して第一の前記上部配線が交差しつつも、互いに電気的に接続可能となるように、前記下部配線及び前記上部配線を形成する、
    伸縮性多層回路基板の製造方法。
  30. 請求項29に記載の伸縮性多層回路基板の製造方法であって、
    前記複数の下部配線及び前記複数の上部配線は、それぞれ同一または異なる導電性ペーストを塗布、乾燥させることにより形成する、伸縮性多層回路基板の製造方法。
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