以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“10”によって参照される降圧電源回路は(図3参照)、降圧電源回路10と表記されることもあるし、電源回路10と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
まず、本発明の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。回路においてラインと配線は同義である。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本発明の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解して良い。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。
任意のスイッチを1以上のFET(電界効果トランジスタ)にて構成することができ、或るスイッチがオン状態のときには当該スイッチの両端間が導通する一方で或るスイッチがオフ状態のときには当該スイッチの両端間が非導通となる。以下、任意のトランジスタ又はスイッチについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意のトランジスタ又はスイッチについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。また、任意のトランジスタ又はスイッチについて、トランジスタ又はスイッチがオン状態となっている区間をオン区間と称することがあり、トランジスタ又はスイッチがオフ状態となっている区間をオフ区間と称することがある。
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。図1は、車両CCにECU1が搭載される様子を概略的に示した図である。電圧源VS1は車両CCに搭載されたバッテリであり、鉛蓄電池等の任意の二次電池にて構成される。電圧源VS1はECU1に対して外部接続される。図1では、車両CCとして乗用車が示されているが、車両CCは任意の車両(特に例えば路上を走行可能な車両)であって良い。ECU1は、いわゆる車両緊急通報システムの機能を実現するために車両CCに搭載されるECU((Electronic Control Unit)であり、通報モジュール(車両緊急通報モジュール)として機能する。車両緊急通報システムはe−callシステムとも称される。
図2に示す如く、車両緊急通報システムは、ECU1と、車両CCの外部に存在する外部装置SVとを備えて構成される。外部装置SVは、例えば、インターネット網などの通信網に接続されたサーバ装置である。ECU1は、所定の移動体通信網を介して外部装置SVと双方向通信が可能である。
また、車両CCには、通報モジュールとしてのECU1を含む複数のECUが搭載されており、複数のECUは、車両CCに設けられた通信網であるCAN(Controller Area Network)を介して相互に各種の情報を送受信できる。
図3に第1実施系形態に係るECU1aの構成を示す。第1実施形態では、図1のECU1として図3のECU1aが用いられる。ECU1aは、電圧源VS1とは異なる電圧源VS2を備えると共に、降圧電源回路10と、昇圧電源回路20と、分圧回路DIV1、DIV2及びDIV3と、CANトランシーバ61と、MPU(Micro-processing unit)62と、通信モジュール63と、GPS処理部64と、備える。
電圧源VS2はリチウムイオン電池等にて構成される直流電圧源である。ECU1(ここではECU1a)は、電圧源VS1を主たる電圧源として駆動し、電圧源VS2は、電圧源VS1に基づく電力供給が途絶えたときなどに有効に機能する予備バッテリとして機能する。電圧源VS2は一次電池であっても良いし、二次電池であっても良い。電圧源VS2の容量は電圧源VS1の容量よりも小さい。また、電圧源VS1の出力電圧の公称電圧値(例えば12V)は、電圧源VS2の出力電圧の公称電圧値(例えば3V)よりも大きい。以下では、電圧源VS1の出力電圧を電圧VAで表し、電圧源VS2の出力電圧を電圧VBで表す。
降圧電源回路10は、電圧源VS1の出力電圧VAを受ける入力端子10INと、出力端子10OUTを備え、入力端子10INへの入力電圧(従って電圧VA)を降圧することにより出力端子10OUTから自身の出力電圧(降圧出力電圧)を出力可能である。降圧電源回路10には分圧回路DIV1から帰還電圧VfbAが入力されており、降圧電源回路10は帰還電圧VfbAに基づいて降圧出力電圧の生成動作(後述の降圧動作に相当)を行う。
昇圧電源回路20は、電圧源VS2の出力電圧VBを受ける入力端子20INと、出力端子20OUTを備え、入力端子20INへの入力電圧(従って電圧VB)を昇圧することにより出力端子20OUTから自身の出力電圧(昇圧出力電圧)を出力可能である。昇圧電源回路20には分圧回路DIV2から帰還電圧VfbBが入力されており、昇圧電源回路20は帰還電圧VfbBに基づいて昇圧出力電圧の生成動作(後述の昇圧動作に相当)を行う。
但し、降圧電源回路10の出力端子10OUTと昇圧電源回路20の出力端子20OUTとは主電源ラインLN1にて互いに共通接続されているため、降圧出力電圧の生成動作と昇圧出力電圧の生成動作の内、一方の生成動作のみが実行されることになる。ECU1aに設けられた主電源ラインLN1に加わる電圧を、主電源電圧VMと称する。
分圧回路DIV1は、分圧抵抗R1、R2及びR3と、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタM1と、備える。分圧抵抗R1〜R3の直列回路が主電源ラインLN1とグランドとの間に配置され、この際、主電源ラインLN1からグランドに向けて、分圧抵抗R1、R2、R3が、この順番で配置される。より具体的には、分圧抵抗R1の一端は主電源ラインLN1に接続され、分圧抵抗R1の他端は分圧抵抗R2の一端に接続され、分圧抵抗R2の他端は分圧抵抗R3の一端に接続され、分圧抵抗R3の他端はグランドに接続される。トランジスタM1のドレインは分圧抵抗R1及びR2間の接続ノードに接続され、トランジスタM1のソースは分圧抵抗R2及びR3間の接続ノードに接続される。分圧抵抗R2及びR3間の接続ノードに帰還電圧VfbAが生じる。
分圧回路DIV1は、主電源電圧VMを分圧することで降圧電源回路10への帰還電圧VfbAを生成する降圧用分圧回路として機能するが、主電源電圧VMから帰還電圧VfbAを生成する際の分圧比は可変となっている。つまり、トランジスタM1のオン/オフによって当該分圧比が可変とされる。
より具体的には、分圧抵抗R1、R2、R3の抵抗値を、夫々、記号“R1”、“R2”、“R3”で表した場合、主電源電圧VMを分圧することで帰還電圧VfbAを生成する際の分圧比は、トランジスタM1がオフであるにおいて“R3/(R1+R2+R3)”となる一方、トランジスタM1がオンであるにおいて“R3/(R1+R3)”となる。但し、ここでは、トランジスタM1のオン抵抗が十分に低いとしてゼロと仮定としている。
分圧回路DIV2は、分圧抵抗R4、R5及びR6と、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタM2と、備える。分圧抵抗R4〜R6の直列回路が主電源ラインLN1とグランドとの間に配置され、この際、主電源ラインLN1からグランドに向けて、分圧抵抗R4、R5、R6が、この順番で配置される。より具体的には、分圧抵抗R4の一端は主電源ラインLN1に接続され、分圧抵抗R4の他端は分圧抵抗R5の一端に接続され、分圧抵抗R5の他端は分圧抵抗R6の一端に接続され、分圧抵抗R6の他端はグランドに接続される。トランジスタM2のドレインは分圧抵抗R5及びR6間の接続ノードに接続され、トランジスタM2のソースはグランドに接続される。分圧抵抗R4及びR5間の接続ノードに帰還電圧VfbBが生じる。
分圧回路DIV2は、主電源電圧VMを分圧することで昇圧電源回路20への帰還電圧VfbBを生成する昇圧用分圧回路として機能するが、主電源電圧VMから帰還電圧VfbBを生成する際の分圧比は可変となっている。つまり、トランジスタM2のオン/オフによって当該分圧比が可変とされる。
より具体的には、分圧抵抗R4、R5、R6の抵抗値を、夫々、記号“R4”、“R5”、“R6”で表した場合、主電源電圧VMを分圧することで帰還電圧VfbBを生成する際の分圧比は、トランジスタM2がオフであるにおいて“(R5+R6)/(R4+R5+R6)”となる一方、トランジスタM2がオンであるにおいて“R5/(R4+R5)”となる。但し、ここでは、トランジスタM2のオン抵抗が十分に低いとしてゼロと仮定としている。
分圧回路DIV3は、分圧抵抗R7及びR8の直列回路から成る。具体的には、分圧抵抗R7の一端は主電源ラインLN1に接続され、分圧抵抗R7の他端は分圧抵抗R8の一端に接続され、分圧抵抗R8の他端はグランドに接続される。分圧抵抗R7及びR8間の接続ノードに、主電源電圧VMの分圧である電圧Vdetが生じる。
主電源ラインLN1には、主電源電圧VMを駆動源として動作する複数の負荷装置が接続される。ここでは、複数の負荷装置として、CANトランシーバ61、MPU62、通信モジュール63及びGPS処理部64を挙げているが、これら以外の負荷装置も、主電源ラインLN1に接続され得る。
CANトランシーバ61は、ECU1aと異なるECUであって且つ車両CCに搭載された各ECUと、CANを介して、任意の情報の双方向通信を実現する。
MPU62は、信号FET_EN及びBoost_ENを出力する機能及び電圧Vdetを評価する機能を有すると共に、ECU1a内の各部位の動作を統括的に制御する。信号FET_EN及びBoost_ENの夫々は、ローレベル又はハイレベルの信号レベルをとる二値信号である。ECU1aでは、信号FET_ENがトランジスタM1及びM2の各ゲートに供給されている。信号FET_ENがハイレベルであるときにトランジスタM1及びM2がオンとなり、信号FET_ENがローレベルであるときにトランジスタM1及びM2がオフとなる。信号Boost_ENは昇圧電源回路20のイネーブル信号であり、ここでは、信号Boost_ENがハイレベルであるときに限り昇圧電源回路20が起動するものとする。
通信モジュール63は、外部装置SV(図2参照)との間で任意の情報の双方向通信を実現する。
GPS処理部64は、GPS(Global Positioning System)を形成する複数のGPS衛星からの信号を受信することで車両CCの現在位置を検出し、車両CCの現在位置を示す車両位置情報を生成する。車両位置情報では、車両CCの現在位置が、地球上における経度及び緯度によって表現される。
ECU1aにより実現される車両緊急通報機能では、所定の緊急通報条件が成立したときに、MPU62の制御の下、所定の緊急通報信号が通信モジュール63を用いて外部装置SVに送信される。緊急通報信号は、GPS処理部64にて生成された最新の車両位置情報を含み、その他、各種の登録情報(車両CCの車種や車両CCの所有者情報等)も含みうる。例えば、車両CCには、エアバッグとエアバッグの展開制御を行うエアバッグECUが設けられており、エアバッグの展開が行われたときエアバッグECUからCANトランシーバ61に対し所定のエアバック展開通知信号が送信される。CANトランシーバ61でのエアバック展開通知信号の受信により緊急通報条件が成立する。この他、車両CCに搭載された衝撃センサが一定値以上の衝撃を検出したときなどにおいても、緊急通報条件が成立しうる。
図4に降圧電源回路10の具体的な構成例を示す。降圧電源回路10は、降圧用トランジスタ(降圧用のスイッチングトランジスタ)を有する降圧スイッチングレギュレータ(降圧DC/DCコンバータ)であって、降圧用トランジスタのスイッチングを伴う降圧動作により電圧VAに基づく降圧出力電圧を出力端子10OUTに発生させる。
図4の降圧電源回路10は、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ11と、還流ダイオード(整流ダイオード)として機能するダイオード12と、インダクタ13と、平滑コンデンサ14と、基準電圧源15と、制御回路16と、を備える。
トランジスタ11において、ドレインは入力端子10INに接続され、ソースはダイオード12のカソード及びインダクタ13の一端に共通接続される。インダクタ13の他端は出力端子10OUTに接続される。平滑コンデンサ14の一端は出力端子10OUTに接続され、平滑コンデンサ14の他端はグランドに接続される。ダイオード12のアノードはグランドに接続される。基準電圧源15は、電圧VAに基づき所定の正の直流電圧値を有する基準電圧VrefAを生成する。
制御回路16は、帰還電圧VfbA及び基準電圧VrefAに基づき、帰還電圧VfbAが基準電圧VrefAと一致するように又は近づくように、トランジスタ11をスイッチングさせる又はトランジスタ11をオフ状態に維持する。具体的には例えば、制御回路16は、帰還電圧VfbA及び基準電圧VrefA間の差に応じた誤差信号を生成するエラーアンプ16aと、誤差信号を所定のPWM周波数を有する三角波信号と比較するPWMコンパレータ16bと、PWMコンパレータの出力信号に応じトランジスタ11のゲート電位を制御することによりトランジスタ11をオン又はオンとするドライバ16cと、を備える。
図3のトランジスタM1及びM2の状態によって、トランジスタ11のスイッチングが停止されることもあるが(詳細は後述)、トランジスタ11のスイッチングが行われる降圧動作について説明を補足する。降圧動作では、所定のPWM周期でトランジスタ11が交互にオン、オフされ、帰還電圧VfbAが基準電圧VrefAと一致するように、トランジスタ11のオンデューティが制御されることで出力端子10OUTに降圧出力電圧が生じる。降圧動作において、トランジスタ11のオンデューティとは、トランジスタ11のオン区間とオフ区間との和に対するトランジスタ11のオン区間の割合を指す。
降圧動作が行われるとき、出力端子10OUTに生じる降圧出力電圧は主電源電圧VMとなる。降圧動作において、帰還電圧VfbAが基準電圧VrefAと一致するとき、出力端子10OUTに生じる降圧出力電圧(主電源電圧VM)は、降圧出力電圧の目標である降圧目標電圧と一致する。故に、降圧動作では、降圧出力電圧が降圧目標電圧と一致するようトランジスタ11のオンデューティが制御されることになる。降圧目標電圧は、基準電圧VrefAと、分圧回路DIV1の分圧比(主電源電圧VMを分圧することで帰還電圧VfbAを得る際の分圧比)とで定まるので、トランジスタM1の状態に依存して変化する。
制御回路16は、電圧VAの値が一定値以上となると起動して上述の降圧動作を実行可能な状態となる。車両CCの事故等の発生により電圧源VS1及び入力端子10IN間の配線が断線して電圧VAの値が一定値未満となることもあるが、以下では、特に記述なき限り、電圧VAの値が一定値以上であって、制御回路16は降圧動作を実行可能な状態にあるとする。
図5に昇圧電源回路20の具体的な構成例を示す。昇圧電源回路20は、昇圧用トランジスタ(昇圧用のスイッチングトランジスタ)を有する昇圧スイッチングレギュレータ(昇圧DC/DCコンバータ)であって、昇圧用トランジスタのスイッチングを伴う昇圧動作により電圧VBに基づく昇圧出力電圧を出力端子20OUTに発生させる。
図5の昇圧電源回路20は、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ21と、還流ダイオード(整流ダイオード)として機能するダイオード22と、インダクタ23と、平滑コンデンサ24と、基準電圧源25と、制御回路26と、を備える。
トランジスタ21のドレインと入力端子20INとの間にインダクタ23が挿入される。即ち、インダクタ23の一端は入力端子20INに接続され、インダクタ23の他端はトランジスタ21のドレインに接続される。トランジスタ21のソースはグランドに接続される。故に、インダクタ23とトランジスタ21の直列回路に対して電圧源VS2からの電圧VBが加わることになる。ダイオード22のアノードはトランジスタ21のドレインに接続され、ダイオード22のカソードは出力端子20OUTに接続される。平滑コンデンサ24の一端は出力端子20OUTに接続され、平滑コンデンサ24の他端はグランドに接続される。基準電圧源25は、電圧VBに基づき所定の正の直流電圧値を有する基準電圧VrefBを生成する。
制御回路26は、帰還電圧VfbB及び基準電圧VrefBに基づき、帰還電圧VfbBが基準電圧VrefBと一致するように又は近づくように、トランジスタ21をスイッチングさせる又はトランジスタ21をオフ状態に維持する。具体的には例えば、制御回路26は、帰還電圧VfbB及び基準電圧VrefB間の差に応じた誤差信号を生成するエラーアンプ26aと、誤差信号を所定のPWM周波数を有する三角波信号と比較するPWMコンパレータ26bと、PWMコンパレータの出力信号に応じトランジスタ21のゲート電位を制御することによりトランジスタ21をオン又はオンとするドライバ26cと、を備える。但し、制御回路26は信号Boost_ENがハイレベルであるときに限り動作し、信号Boost_ENがローレベルであるときには制御回路26が動作せずにトランジスタ21がオフ状態に維持される。
図3のトランジスタM1及びM2の状態によって又は信号Boost_ENのレベルによって、トランジスタ21のスイッチングが停止されることもあるが、トランジスタ21のスイッチングが行われる昇圧動作について説明を補足する。昇圧動作では、所定のPWM周期でトランジスタ21が交互にオン、オフされ、帰還電圧VfbBが基準電圧VrefBと一致するように、トランジスタ21のオンデューティが制御されることで出力端子20OUTに昇圧出力電圧が生じる。昇圧動作において、トランジスタ21のオンデューティとは、トランジスタ21のオン区間とオフ区間との和に対するトランジスタ21のオン区間の割合を指す。
昇圧動作が行われるとき、出力端子20OUTに生じる昇圧出力電圧は主電源電圧VMとなる。昇圧動作において、帰還電圧VfbBが基準電圧VrefBと一致するとき、出力端子20OUTに生じる昇圧出力電圧(主電源電圧VM)は、昇圧出力電圧の目標である昇圧目標電圧と一致する。故に、昇圧動作では、昇圧出力電圧が昇圧目標電圧と一致するようトランジスタ21のオンデューティが制御されることになる。昇圧目標電圧は、基準電圧VrefBと、分圧回路DIV2の分圧比(主電源電圧VMを分圧することで帰還電圧VfbBを得る際の分圧比)とで定まるので、トランジスタM2の状態に依存して変化する。
尚、図4及び図5に示した電源回路10及び20の構成は例示に過ぎず、様々な変形が可能である。例えば、降圧電源回路10又は昇圧電源回路20にて同期整流方式が採用されても良い。また、単一のコンデンサが平滑コンデンサ14及び24として兼用されても良い。
[通常モードと診断モード]
MPU62は通常モード又は診断モードにて動作することができる。MPU62は通常モード及び診断モードの何れとも異なる動作モードにて動作することがあり得ても良いが、ここでは、通常モードと診断モードにのみ注目する。尚、ECU1aが通常モード及び診断モードにて動作し、MPU62がECU1aの動作モードを切り替え制御する、という考え方を採用することもできる。
MPU62は、通常モードにおいて信号FET_ENをローレベルとすることでトランジスタM1及びM2をオフ状態とし、診断モードにおいて信号FET_ENをハイレベルとすることでトランジスタM1及びM2をオン状態とする。
図6及び図7に、通常モード及び診断モードにおける降圧目標電圧及び昇圧目標電圧の関係を示す。以下では、降圧目標電圧、昇圧目標電圧を、夫々、記号“VtgA”、 “VtgB”で参照する。尚、図7では、図示の便宜上、降圧目標電圧VtgAを表す実線波形と、昇圧目標電圧VtgBを表す破線波形と、を左右方向に若干ずらして示している。更に、通常モードにおける降圧目標電圧、昇圧目標電圧を、夫々、記号“VtgA_N”、“VtgB_N”にて表し、且つ、診断モードにおける降圧目標電圧、昇圧目標電圧を、夫々、記号“VtgA_S”、“VtgB_S”にて表す。
トランジスタM1及びM2の状態制御を通じ、分圧回路DIV1及びDIV2の各分圧比は通常モードと診断モードとの間で変化する。この際、まず、
第1不等式“VtgA_N>VtgA_S”、且つ、
第2不等式“VtgB_N<VtgB_S”、が成立する。また、
第3不等式“VtgA_N>VtgB_N”、且つ、
第4不等式“VtgA_S<VtgB_S”、が成立するよう、分圧抵抗R1〜R6の各抵抗値並びに基準電圧VrefA及びVrefBの値が定められている。つまり、通常モードを基準に降圧目標電圧を低下させるとともに昇圧目標電圧を上昇させることで、診断モードにおいて昇圧目標電圧を降圧目標電圧より高く設定する。
更に、4つの目標電圧VtgA_N、VtgA_S、VtgB_N及びVtgB_Sが、全て、所定の仕様電圧範囲RNG内に収まるよう、分圧抵抗R1〜R6の各抵抗値並びに基準電圧VrefA及びVrefBの値が定められている。主電源電圧VMが所定電圧範囲内に収まることを要求する電圧精度仕様が主電源電圧VMに対して(換言すればECU1aに対して)定められており、その所定電圧範囲が仕様電圧範囲RNGである。仕様電圧範囲RNGは所定の下限電圧VLLから所定の上限電圧VHLまでの電圧範囲である(0<VLL<VHL)。上限電圧VHLの値は、電圧源VS1の出力電圧VAの公称電圧値(例えば12V)よりも低く、下限電圧VLLの値は、電圧源VS2の出力電圧VBの公称電圧値(例えば3V)よりも高い。
通常モードで降圧電源回路10が降圧動作を行ったときに出力端子10OUT及び主電源ラインLN1に現れると想定される電圧を、通常降圧想定電圧と称する。通常降圧想定電圧は一定の電圧幅を持つ。通常降圧想定電圧がとりうる設計上の上限電圧、下限電圧を、夫々、記号“VtgA_N_H”、“VtgA_N_L”にて表す(図8(a)参照)。“VtgA_N_H>VtgA_N_L”が成立する。電圧VtgA_N_H及びVtgA_N_Lの各値を、ECU1aの設計段階で、分圧抵抗R1〜R3及び基準電圧VrefAの各値の精度などに基づき見積もることができる。上限電圧VtgA_N_Hから下限電圧VtgA_N_Lまでの電圧範囲は、通常モードにおける降圧目標電圧VtgA_Nの変動範囲を表すといえる。
通常モードで昇圧電源回路20が昇圧動作を行ったときに出力端子20OUT及び主電源ラインLN1に現れると想定される電圧を、通常昇圧想定電圧と称する。通常昇圧想定電圧は一定の電圧幅を持つ。通常昇圧想定電圧がとりうる設計上の上限電圧、下限電圧を、夫々、記号“VtgB_N_H”、“VtgB_N_L”にて表す(図8(a)参照)。“VtgB_N_H>VtgB_N_L”が成立する。電圧VtgB_N_H及びVtgB_N_Lの各値を、ECU1aの設計段階で、分圧抵抗R4〜R6及び基準電圧VrefBの各値の精度などに基づき見積もることができる。上限電圧VtgB_N_Hから下限電圧VtgB_N_Lまでの電圧範囲は、通常モードにおける昇圧目標電圧VtgB_Nの変動範囲を表すといえる。
診断モードで降圧電源回路10が降圧動作を行ったときに出力端子10OUT及び主電源ラインLN1に現れると想定される電圧を、診断降圧想定電圧と称する。診断降圧想定電圧は一定の電圧幅を持つ。診断降圧想定電圧がとりうる設計上の上限電圧、下限電圧を、夫々、記号“VtgA_S_H”、“VtgA_S_L”にて表す(図8(b)参照)。“VtgA_S_H>VtgA_S_L”が成立する。電圧VtgA_S_H及びVtgA_S_Lの各値を、ECU1aの設計段階で、分圧抵抗R1〜R3及び基準電圧VrefAの各値の精度などに基づき見積もることができる。上限電圧VtgA_S_Hから下限電圧VtgA_S_Lまでの電圧範囲は、診断モードにおける降圧目標電圧VtgA_Sの変動範囲を表すといえる。
診断モードで昇圧電源回路20が昇圧動作を行ったときに出力端子20OUT及び主電源ラインLN1に現れると想定される電圧を、診断昇圧想定電圧と称する。診断昇圧想定電圧は一定の電圧幅を持つ。診断昇圧想定電圧がとりうる設計上の上限電圧、下限電圧を、夫々、記号“VtgB_S_H”、“VtgB_S_L”にて表す(図8(b)参照)。“VtgB_S_H>VtgB_S_L”が成立する。電圧VtgB_S_H及びVtgB_S_Lの各値を、ECU1aの設計段階で、分圧抵抗R4〜R6及び基準電圧VrefBの各値の精度などに基づき見積もることができる。上限電圧VtgB_S_Hから下限電圧VtgB_S_Lまでの電圧範囲は、診断モードにおける昇圧目標電圧VtgB_Sの変動範囲を表すといえる。
図8(a)及び(b)には、通常降圧想定電圧、通常昇圧想定電圧、診断降圧想定電圧及び診断昇圧想定電圧の夫々における上限電圧及び下限電圧と、仕様電圧範囲RNGにおける上限電圧VHL及び下限電圧VLLとの関係が示されている。
通常モードに関して、
“VHL>VtgA_N_H”、
“VtgA_N_L>VtgB_N_H”、及び、
“VtgB_N_L>VLL”が成立するように、且つ、
診断モードに関して、
“VHL>VtgB_S_H”、
“VtgB_S_L>VtgA_S_H”、及び、
“VtgA_S_L>VLL”が成立するように、ECU1aが形成されている。
つまり、分圧抵抗R1〜R6の抵抗値並びに基準電圧VrefA及びVrefBの各値などの誤差を含めたとしても、図8(a)及び(b)に示す如く、通常モードに関しては通常降圧想定電圧の方が常に通常昇圧想定電圧よりも高く、診断モードに関しては診断昇圧想定電圧の方が常に診断降圧想定電圧よりも高い。更に、通常モードに関して、上記誤差を含めたとしても、図8(a)に示す如く、通常降圧想定電圧よりも仕様電圧範囲RNGの上限電圧VHLの方が高く、通常昇圧想定電圧よりも仕様電圧範囲RNGの下限電圧VLLの方が低い。同様に、診断モードに関して、上記誤差を含めたとしても、図8(b)に示す如く、診断昇圧想定電圧よりも仕様電圧範囲RNGの上限電圧VHLの方が高く、診断降圧想定電圧よりも仕様電圧範囲RNGの下限電圧VLLの方が低い。
具体的な数値例を挙げる。ここでは、主電源電圧VM(例えばCANトランシーバ61の電源電圧)を“5V±5%”の範囲内に収められることが要求されていると想定する。そうすると、下限電圧VLL、上限電圧VHLは、夫々、4.75V、5.25Vに設定されることになる。この場合例えば、通常モードにおける降圧目標電圧VtgA_Nは5.14Vに設定され、通常モードにおける昇圧目標電圧VtgB_Nは4.85Vに設定され、診断モードにおける降圧目標電圧VtgA_Sは4.85Vに設定され、診断モードにおける昇圧目標電圧VtgB_Sは5.14Vに設定される。更に、
通常モードにおける降圧目標電圧VtgA_N(ここでは5.14V)を中心とした通常降圧想定電圧の変動幅、
通常モードにおける昇圧目標電圧VtgB_N(ここでは4.85V)を中心とした通常昇圧想定電圧の変動幅、
診断モードにおける降圧目標電圧VtgA_S(ここでは4.85V)を中心とした診断降圧想定電圧の変動幅、及び、
診断モードにおける昇圧目標電圧VtgB_S(ここでは5.14V)を中心とした診断昇圧想定電圧の変動幅は、全て、中心の電圧に対して±2%とされる。
これにより、図8(a)及び(b)に示したような各電圧間の高低関係が担保される。本数値例では、“VtgA_N=VtgB_S”及び“VtgB_N=VtgA_S”となっているが、電圧VtgA_N及びVtgB_S間の一致、不一致は問わず、電圧VtgB_N及びVtgA_S間の一致、不一致は問わない。
尚、通常モード及び診断モードの夫々における上述の降圧目標電圧及び昇圧目標電圧の関係が満たされる限り、分圧回路DIV1及びDIV2に構成は任意である。
例えば、トランジスタM1は分圧抵抗R2に並列接続されたバイパス回路を構成し、図3の分圧回路DIV1では、トランジスタM1がオンとされたときに、分圧抵抗R2とバイパス回路との並列回路の抵抗値が実質的にゼロとなるが、トランジスタM1がオフである時と比べてトランジスタM1がオンである時に、分圧抵抗R2とバイパス回路との並列回路の抵抗値が小さくなるのであれば、分圧回路DIV1のバイパス回路の構成は任意である。例えば、分圧回路DIV1のバイパス回路は、トランジスタM1と抵抗との直列回路であっても良い。
同様に例えば、トランジスタM2は分圧抵抗R6に並列接続されたバイパス回路を構成し、図3の分圧回路DIV2では、トランジスタM2がオンとされたときに、分圧抵抗R6とバイパス回路との並列回路の抵抗値が実質的にゼロとなるが、トランジスタM2がオフである時と比べてトランジスタM2がオンである時に、分圧抵抗R6とバイパス回路との並列回路の抵抗値が小さくなるのであれば、分圧回路DIV2のバイパス回路の構成は任意である。例えば、分圧回路DIV2のバイパス回路は、トランジスタM2と抵抗との直列回路であっても良い。
[動作フローチャート]
図9はECU1aの動作フローチャートである。図9の動作フローチャートに沿って、ECU1aの動作の流れを説明する。まず、ステップS11において、電圧源VS1としてのバッテリが車両CCに装着される。するとステップS12にて降圧電源回路10が起動して降圧動作を行い、降圧動作により得られた降圧出力電圧が主電源ラインLN1に主電源電圧VMとして加わって、ステップS13にてMPU62が起動する。
ところで、信号FET_EN及びBoost_ENが加わる各ライン(配線)は、MPU62内又はMPU62外に設けられたプルダウン抵抗にてグランドにプルダウンされている。故に、MPU62の起動前において、信号FET_EN及びBoost_ENはローレベルであり、降圧電源回路10は、自身の起動後において、降圧出力電圧(主電源電圧VM)が通常モードでの降圧目標電圧VtgA_N(例えば5.14V)に一致するよう降圧動作を行い、一方で昇圧電源回路20は昇圧動作を停止している。
MPU62は、自身の起動後、原則として通常モードにて動作し、後述のステップS16の昇圧診断処理を実行するときに限り診断モードにて動作する。通常モードでは、上述したように信号FET_ENがローレベルとされる。
車両CCにはイグニッションキー(不図示)が設けられている。イグニッションキーは、操作者(例えば車両CCの運転手)の操作を受けて、オフ状態又はオン状態となる。イグニッションキーがオン状態であるとき車両CCのエンジンが始動し、イグニッションキーがオフ状態であるとき車両CCのエンジンは始動しない。
ステップS13にてMPU62が起動した後、ステップS14にてイグニッションキーがオン状態となっているか否かがチェックされ、イグニッションキーがオン状態となると、その旨を示すエンジン始動信号がECU1aに送信される。ECU1aにてエンジン始動信号が受信されるとステップS15に進む。エンジン始動信号は、ECU1aと異なる、イグニッションキーの状態検出を行うECUからECU1aに対して伝達される(後述のエンジン停止信号についても同様)。
ステップS15において、MPU62は、信号Boost_ENをローレベルからハイレベルに切り替える。以後、イグニッションキーがオフ状態とされるまで信号Boost_ENはハイレベルに維持される。ステップS15の後、ステップS16に進む。
ステップS16において、MPU62は、動作モードを通常モードから診断モードに切り替えて所定の昇圧診断処理を行う。診断モードでは、上述したように信号FET_ENがハイレベルとされる。昇圧診断処理では昇圧電源回路20の異常の有無が診断される(診断方法について後述)。例えば、トランジスタ21(図5参照)のゲート電位に関わらずトランジスタ21がオフ状態に固定されるような故障は、昇圧電源回路20の異常の一態様である。ステップS16の昇圧診断処理の終了後、ステップS17に進む。
ステップS17において、MPU62は、動作モードを診断モードから通常モードに戻す。従って、ステップS17にて信号FET_ENがハイレベルからローレベルに戻され、以後、診断モードへの再度の移行がない限り、信号FET_ENはローレベルに維持される。ステップS17の後、ステップS18に進む。
ステップS18では、ステップS16の昇圧診断処理の診断結果が確認され、昇圧電源回路20に異常が無いと判断された場合(換言すれば異常があると判断されなかった場合)にはステップS19に進み、昇圧電源回路20に異常があると判断された場合にはステップS30に進む。
ステップS19にてイグニッションキーがオフ状態となっているか否かがチェックされ、イグニッションキーがオフ状態となると、その旨を示すエンジン停止信号がECU1aに送信される。ECU1aにてエンジン停止信号が受信されるとステップS20に進む。
ステップS20において、MPU62は、信号Boost_ENをハイレベルからローレベルに切り替える。その後、ステップS14に戻り、ステップS14以降の上述の処理が繰り返される。
ステップS30において、MPU62は所定のエラー処理を行う。エラー処理において、MPU62は、ECU1aと異なるECUに対し所定のエラー信号を送信する。エラー信号を受信したECUは、例えば、車両CCに設けられた表示装置に所定の警告表示を行う。MPU62は、エラー処理の後、信号Boost_ENをハイレベルからローレベルに切り替えてステップS19に進む。
尚、電圧源VS2の負側出力端子とグランドとの間に、又は、電圧源VS2の正側出力端子と入力端子20INとの間に、MOSFET等にて構成されるスイッチを挿入しておいても良い。この場合、MPU62は、信号Boost_ENのハイレベルへの切り替えに同期して当該スイッチをターンオンし、信号Boost_ENのローレベルへの切り替えに同期して当該スイッチをターンオフすると良い。以下では、特に記述なき限り、信号Boost_ENはハイレベルであるとする。
[正常ケース]
図10に、正常ケースにおける主電源電圧VMの波形610を示す。正常ケースは、電源回路10及び20の双方が異常無く、設計通りに動作するケースである。
図10の正常ケースでは、イグニッションキーの操作を経てタイミングTa1にて通常モードから診断モードへの遷移が発生し、その後、タイミングTa1及びTa2間で昇圧診断処理が行われ、タイミングTa2にて診断モードから通常モードへの遷移が発生する。
昇圧電源回路20は、自身の起動後、帰還電圧VfbBが基準電圧VrefBよりも高い状態では、昇圧動作を停止する。つまり、昇圧電源回路20は、自身の起動後、主電源電圧VMが昇圧目標電圧VtgBよりも高いとき、昇圧動作を停止する。昇圧電源回路20において、制御回路26は、帰還電圧VfbBが基準電圧VrefBと一致するように又は近づくようにトランジスタ21の状態制御を行うが、帰還電圧VfbBが基準電圧VrefBよりも高い状態で昇圧動作を行うと電圧VfbB及びVrefB間の誤差が増大するからである。昇圧動作の停止とは、トランジスタ21のスイッチングを行わずにトランジスタ21をオフ状態に維持することを意味する。
タイミングTa1より前の通常モードでは、降圧目標電圧VtgA(VtgA_N)の方が昇圧目標電圧VtgB(VtgB_N)よりも高い(図6及び図7参照)。これは、それらの変動範囲を考慮しても成り立つ(図8(a)参照)。故に、タイミングTa1より前の通常モードでは、主電源電圧VMが降圧目標電圧VtgA(VtgA_N)と一致するように降圧電源回路10にて降圧動作が行われる一方で、昇圧電源回路20では昇圧動作が停止される。
降圧電源回路10は、自身の起動後、帰還電圧VfbAが基準電圧VrefAよりも高い状態では、降圧動作を停止する。つまり、降圧電源回路10は、自身の起動後、主電源電圧VMが降圧目標電圧VtgAよりも高いとき、降圧動作を停止する。降圧電源回路10において、制御回路16は、帰還電圧VfbAが基準電圧VrefAと一致するように又は近づくようにトランジスタ11の状態制御を行うが、帰還電圧VfbAが基準電圧VrefAよりも高い状態で降圧動作を行うと電圧VfbA及びVrefA間の誤差が増大するからである。降圧動作の停止とは、トランジスタ11のスイッチングを行わずにトランジスタ11をオフ状態に維持することを意味する。
タイミングTa1及びTa2間の診断モードでは、昇圧目標電圧VtgB(VtgB_S)の方が降圧目標電圧VtgA(VtgA_S)よりも高い(図6及び図7参照)。これは、それらの変動範囲を考慮しても成り立つ(図8(b)参照)。故に、タイミングTa1及びTa2間の診断モードでは、主電源電圧VMが昇圧目標電圧VtgB(VtgB_S)と一致するように昇圧電源回路20にて昇圧動作が行われる一方で、降圧電源回路10では降圧動作が停止される。
タイミングTa2にて通常モードに戻るが、タイミングTa2以降の通常モードの動作はタイミングTa1以前の通常モードの動作と同様である。つまり、タイミングTa2以降の通常モードでは、主電源電圧VMが降圧目標電圧VtgA(VtgA_N)と一致するように降圧電源回路10にて降圧動作が行われる一方で、昇圧電源回路20では昇圧動作が停止される。
尚、動作モードの切り替え直後では、降圧動作と昇圧動作が短時間だけ併存して実行されることがあり、また主電源電圧VMに若干の乱れが生じうる。
タイミングTa1及びTa2間において、ステップS16(図9参照)の昇圧診断処理が実行される。診断モードでは、昇圧動作に基づく電圧であって、昇圧目標電圧VtgB_Sと一致することが期待される電圧が、主電源電圧VMとして現れているはずである。故に、MPU62は、診断モードにおける電圧Vdet(図3参照)を評価電圧Vdetとして取得する。この際、モード遷移に伴う主電源電圧VMの変動の影響を除外すべく、通常モードから診断モードへ遷移してから所定の安定時間経過後の電圧Vdetを評価電圧Vdetとして取得する。例えば、タイミングTa2直前の電圧Vdetを評価電圧Vdetとして取得すれば良い。
そして、MPU62は、評価電圧Vdetに基づき、診断モードでの主電源電圧VMが診断モードでの昇圧目標電圧VtgB_Sの変動範囲内の電圧を有しているか否かを判断し、これによって昇圧電源回路20の異常の有無を診断する。即ち、昇圧診断処理では、評価電圧Vdetに基づき、診断モードでの主電源電圧VMが、電圧VtgB_S_H以下であって且つ電圧VtgB_S_L以上であるという昇圧正常条件が充足しているか否かを判断する(図8(b)参照)。既知情報である分圧抵抗R7及びR8間の抵抗値比と、評価電圧Vdetとから、昇圧正常条件の成否判断が可能である。そして、昇圧正常条件が充足している場合には昇圧電源回路20に異常は無いと判断し、昇圧正常条件が充足していない場合には昇圧電源回路20に異常があると判断する。図10の正常ケースでは昇圧正常条件が充足される。
MPU62にはA/Dコンバータが含まれている。MPU62は、アナログの評価電圧VdetをA/Dコンバータにてデジタルの電圧値に変換し、得られた電圧値に基づいて昇圧正常条件の充足/不充足を判断する。或いは、A/Dコンバータの代わりに、ECU1aに複数のコンパレータから成るウィンドウコンパレータを設けておき、ウィンドウコンパレータを用いて昇圧正常条件の充足/不充足を判断しても良い。
仮に、タイミングTa2以降の何れかのタイミングにおいて、車両CCの事故等に起因して電圧源VS1及び入力端子10OUT間の断線等が生じた場合、降圧動作の停止に伴って主電源電圧VMが降圧目標電圧VtgA_N(例えば5.14V)近辺から低下してくるが、主電源電圧VMが昇圧目標電圧VtgB_N(例えば4.85V)近辺まで低下してくるとトランジスタ21のスイッチングを伴う昇圧動作が開始されて主電源電圧VMが昇圧目標電圧VtgB_N近辺に保たれる。つまり、予備バッテリとしての電圧源VS2の出力電力に基づきCANトランシーバ61及び通信モジュール63等の動作継続が担保され、車両緊急通報システムの機能を有効に働かせることができる。
[昇圧異常ケース]
図11に、昇圧異常ケースにおける主電源電圧VMの波形620を示す。図11にて例示される昇圧異常ケースにおいて、降圧電源回路10は、異常無く、設計通りに動作するが、故障により昇圧電源回路20の昇圧動作が不能となっている。
図11の昇圧異常ケースでは、イグニッションキーの操作を経てタイミングTb1にて通常モードから診断モードへの遷移が発生し、その後、タイミングTb1及びTb2間で昇圧診断処理が行われ、タイミングTb2にて診断モードから通常モードへの遷移が発生する。
タイミングTb1より前の通常モードでは、降圧目標電圧VtgA(VtgA_N)の方が昇圧目標電圧VtgB(VtgB_N)よりも高い(図6及び図7参照)。これは、それらの変動範囲を考慮しても成り立つ(図8(a)参照)。故に、タイミングTb1より前の通常モードでは、主電源電圧VMが降圧目標電圧VtgA(VtgA_N)と一致するように降圧電源回路10にて降圧動作が行われる一方で、昇圧電源回路20では昇圧動作が停止される。
タイミングTb1及びTb2間の診断モードでは、昇圧目標電圧VtgB(VtgB_S)の方が降圧目標電圧VtgA(VtgA_S)よりも高い(図6及び図7参照)。しかしながら、図11の昇圧異常ケースでは、故障により昇圧電源回路20の昇圧動作が不能となっているため、タイミングTb1及びTb2間の診断モードにおいて昇圧動作が停止している。そうすると、タイミングTb1及びTb2間の診断モードにおいて、降圧電源回路10が、主電源電圧VMと降圧目標電圧VtgA(VtgA_S)とが一致するように降圧動作を行うことになる。タイミングTb2以降の通常モードでも、降圧電源回路10が、主電源電圧VMと降圧目標電圧VtgA(VtgA_N)とが一致するように降圧動作を行うことになる。
モード切り替えに伴って降圧目標電圧VtgAは変化するため、図11の昇圧異常ケースでは、タイミングTb1を起点に主電源電圧VMが比較的高い降圧目標電圧VtgA_Nから比較的低い降圧目標電圧VtgA_Sに向けて低下した後、降圧目標電圧VtgA_Sにて安定化し、その後、タイミングTb2を起点に主電源電圧VMが比較的低い降圧目標電圧VtgA_Sから比較的高い降圧目標電圧VtgA_Nに向けて上昇した後、降圧目標電圧VtgA_Nにて安定化する。
タイミングTb1及びTb2間において、ステップS16(図9参照)の昇圧診断処理が実行される。診断モードでは、昇圧動作に基づく電圧であって、昇圧目標電圧VtgB_Sと一致することが期待される電圧が、主電源電圧VMとして現れているはずである。故に、MPU62は、診断モードにおける電圧Vdet(図3参照)を評価電圧Vdetとして取得する。この際、モード遷移に伴う主電源電圧VMの変動の影響を除外すべく、通常モードから診断モードへ遷移してから所定の安定時間経過後の電圧Vdetを評価電圧Vdetとして取得する。例えば、タイミングTb2直前の電圧Vdetを評価電圧Vdetとして取得すれば良い。
そして、MPU62は、評価電圧Vdetに基づき診断モードでの主電源電圧VMが診断モードでの昇圧目標電圧VtgB_Sの変動範囲内の電圧を有しているか否かを判断し、これによって昇圧電源回路20の異常の有無を診断する。この判断及び診断の方法は図10の正常ケースに関連して上述した通りである。図11の昇圧異常ケースでは、降圧目標電圧VtgA_Sに応じた比較的低い電圧が評価電圧Vdetとして取得されることになるので、昇圧正常条件が充足しない。このため、昇圧電源回路20に異常があると判断される。
診断モードで昇圧電源回路20が昇圧動作を行わなかったとしても、診断モードにおける降圧目標電圧VtgA_Sは、主電源電圧VMに要求される電圧精度を満たすため、問題は生じない。
本実施形態において具体化された本発明に係る電源装置Wについて考察する。ECU1aにおける電源装置Wは、降圧出力端子(10OUT)を有し、第1電圧源(VS1)からの電圧を降圧することによって降圧出力端子から降圧出力電圧を出力可能な降圧電源回路(10)と、昇圧出力端子(20OUT)を有し、第2電圧源(VS2)からの電圧を昇圧することによって昇圧出力端子から昇圧出力電圧を出力可能な昇圧電源回路(20)と、降圧出力端子及び昇圧出力端子が共通に接続され、降圧電源回路の出力又は昇圧電源回路の出力に基づく主電源電圧(VM)が加わる主電源ライン(LN1)と、降圧出力電圧の目標となる降圧目標電圧(VtgA)及び昇圧出力電圧の目標となる昇圧目標電圧(VtgB)を設定する制御部(62)と、を備え、制御部は、降圧目標電圧(VtgA)を昇圧目標電圧(VtgB)より高く設定する通常モード又は昇圧目標電圧(VtgB)を降圧目標電圧(VtgA)より高く設定する診断モードにて動作可能であり、診断モードにおいて昇圧電源回路の異常の有無を診断することを特徴とする。
主たる第1電圧源が降圧電源回路に接続されている状態では予備バッテリとしての第2電圧源の蓄電エネルギが消費されないようにしつつも、第1電圧源及び降圧電源回路間の配線が断線した場合には直ちに予備バッテリからの電力供給を行うことが要請される。電源装置Wでは、基本的には通常モードで動作させることで、この要請に応えることができる。その上で、診断モードでの動作を可能しておくことで、昇圧電源回路の異常の有無を容易に診断することが可能となる。この際、図15の構成では必要であった高価なトランジスタ(図15のM900に相当)は不要である。また、そのようなトランジスタの設置に伴う電圧精度の悪化が回避される。
電源装置Wにおいて(図6参照)、前記制御部は、前記通常モードを基準に前記降圧目標電圧を低下させるとともに前記昇圧目標電圧を上昇させることで、前記診断モードにおいて前記昇圧目標電圧を前記降圧目標電圧より高く設定すると良い。
これにより、主電源電圧に対して要求される電圧精度を、通常モード及び診断モードの双方において比較的容易に満たすことが可能となる。
より具体的には、電源装置Wにおいて、降圧電源回路(10)は、降圧用トランジスタ(11)を有し、降圧用トランジスタのスイッチングを伴う降圧動作により降圧出力電圧を生成する降圧スイッチングレギュレータであって、主電源電圧(VM)と降圧目標電圧(VtgA)との関係に応じて降圧動作を実行又は停止し、昇圧電源回路(20)は、昇圧用トランジスタ(21)を有し、昇圧用トランジスタのスイッチングを伴う昇圧動作により昇圧出力電圧を生成する昇圧スイッチングレギュレータであって、主電源電圧(VM)と昇圧目標電圧(VtgB)との関係に応じて昇圧動作を実行又は停止する。
これにより例えば、通常モードにおいて、降圧電源回路は主電源電圧が降圧目標電圧(VtgA_N;例えば5.14V)に一致するように降圧動作を行う一方、昇圧電源回路は“主電源電圧≒降圧目標電圧>昇圧目標電圧”であるが故に昇圧動作を停止させる。診断モードにおいて、昇圧電源回路は主電源電圧が昇圧目標電圧(VtgB_S;例えば5.14V)に一致するように昇圧動作を行う一方、降圧電源回路は“主電源電圧≒昇圧目標電圧>降圧目標電圧”であるが故に降圧動作を停止させる。
そして、第1実施形態に係る電源装置Wでは、複数の分圧抵抗の直列回路から成り、主電源電圧を分圧することで降圧用帰還電圧(VfbA)を生成する降圧用分圧回路(DIV1)と、他の複数の分圧抵抗の直列回路から成り、主電源電圧を分圧することで昇圧用帰還電圧(VfbB)を生成する昇圧用分圧回路(DIV2)と、を更に備え、降圧電源回路は、降圧用帰還電圧が所定の降圧用基準電圧(VrefA)に一致又は近づくよう降圧動作を実行又は停止し、昇圧電源回路は、昇圧用帰還電圧が所定の昇圧用基準電圧(VrefB)に一致又は近づくよう昇圧動作を実行又は停止し、降圧用分圧回路及び昇圧用分圧回路は、夫々に、分圧比が可変となるように構成され、制御部(62)は、降圧用分圧回路における分圧比の可変設定を通じて降圧目標電圧(VtgA)を可変設定し、昇圧用分圧回路における分圧比の可変設定を通じて昇圧目標電圧(VtgB)を可変設定することができる。
第1実施形態に係る電源装置Wでは、制御部(62)は、診断モードにおいて、主電源電圧(VM)に基づき昇圧電源回路の異常の有無を診断する。
診断モードでは昇圧電源回路の昇圧動作に基づく電圧が主電源電圧として現れているはずであるので、本構成により昇圧電源回路の異常の有無を正しく診断することができる。
より具体的には例えば、制御部(62)は、診断モードにおいて、主電源電圧(VM)が、診断モードでの昇圧目標電圧(VtgB_S)に対応する所定の正常電圧範囲内に収まっているか否かを検出することで、昇圧電源回路の異常の有無を診断して良い。ここにおける正常電圧範囲は、例えば、電圧VtgB_S_H以下且つ電圧VtgB_S_L以上の電圧範囲であって良い(図8(b)参照)。
また、電源装置Wにおいて、主電源電圧(VM)が所定電圧範囲(RNG)内に収まることを要求する電圧精度仕様が主電源電圧に対して定められており、前記通常モードにおける前記降圧目標電圧及び前記昇圧目標電圧、並びに、前記診断モードにおける前記降圧目標電圧及び前記昇圧目標電圧は、全て、前記所定電圧範囲内に収まると良い。
これにより、主電源電圧に対して要求される電圧精度を、通常モード及び診断モードの双方において満たすことが可能となる。
そして、上記電源装置Wを備えた本発明に係る通報モジュールは、車両(CC)に搭載される通報モジュール(1;第1実施形態では1a)であって、車両の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得装置(64)と、所定の通報条件が成立したときに前記位置情報を含む所定の緊急通報信号を無線にて外部装置に送信可能な外部通信装置(63)と、車両に搭載された他の回路と通信を行う車両内通信装置(61)と、を備え、位置情報取得装置、外部通信装置及び車両内通信装置、並びに、電源装置における制御部(62)は、主電源電圧(VM)に基づいて駆動する構成であると良い。
これにより、電源装置Wの優位性を包含した通報モジュールを形成することができる。
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態並びに後述の第3及び第4実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2〜第4実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2〜第4実施形態にも適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3及び第4実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1〜第4実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。第1実施形態に記載の事項が第2実施形態に適用される際、第1実施形態中の記載“ECU1a”は、第2実施形態において“ECU1b”に読み替えられる。
図12に第2実施形態に係るECU1bの構成を示す。第2実施形態では、図1のECU1として図12のECU1bが用いられる。図12のECU1bは図3のECU1aの一部を変更したものである。即ち、図3のECU1aを基準として分圧回路DIV1及びDIV2を削除し、代わりに、分圧回路DIV4を設けることでECU1bが形成される。その他の点において、ECU1a及びECU1bは互いに同じ構成を有するため、同じ部分についての重複する説明を省略する。
ECU1bに設けられた分圧回路DIV4は、分圧抵抗R11〜R14と、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタM3と、備える。分圧抵抗R11〜R14の直列回路が主電源ラインLN1とグランドとの間に配置され、この際、主電源ラインLN1からグランドに向けて、分圧抵抗R11、R12、R13、R14が、この順番で配置される。より具体的には、分圧抵抗R11の一端は主電源ラインLN1に接続され、分圧抵抗R11の他端はノードND11にて分圧抵抗R12の一端に接続され、分圧抵抗R12の他端はノードND12にて分圧抵抗R13の一端に接続され、分圧抵抗R13の他端はノードND13にて分圧抵抗R14の一端に接続され、分圧抵抗R14の他端はグランドに接続される。トランジスタM3のドレインはノードND12に接続され、トランジスタM3のソースはノードND13に接続される。
ECU1bでは、ノードND13に生じる電圧が帰還電圧VfbAとして降圧電源回路10に入力され、ノードND11に生じる電圧が帰還電圧VfbBとして昇圧電源回路20に入力される。このように、分圧回路DIV4は、主電源電圧VMを互いに異なる分圧比で分圧することで帰還電圧VfbA及びVfbBを生成する機能を持ち、主電源電圧VMから帰還電圧VfbAを生成する際の分圧比と、主電源電圧VMから帰還電圧VfbBを生成する際の分圧比とが、トランジスタM3のオン/オフによって同時に変更されるよう構成されている。
より具体的には、分圧抵抗R11、R12、R13、R14の抵抗値を、夫々、記号“R11”、“R12”、“R13”、“R14”で表した場合、主電源電圧VMを分圧することで帰還電圧VfbAを生成する際の分圧比は、トランジスタM3がオフであるにおいて“R14/(R11+R12+R13+R14)”となる一方、トランジスタM3がオンであるにおいて“R14/(R11+R12+R14)”となる。主電源電圧VMを分圧することで帰還電圧VfbBを生成する際の分圧比は、トランジスタM3がオフであるにおいて“(R12+R13+R14)/(R11+R12+R13+R14)”となる一方、トランジスタM3がオンであるにおいて“(R12+R14)/(R11+R12+R14)”となる。但し、ここでは、トランジスタM3のオン抵抗が十分に低いとしてゼロと仮定としている。
トランジスタM3のゲートにはMPU62からの信号FET_ENが入力される。信号FET_ENがローレベルであるときトランジスタM3はオフであり、信号FET_ENがハイレベルであるときトランジスタM3はオンである。信号FET_ENのレベルの制御方法は第1実施形態で示した通りである。従って、通常モードでは信号FET_ENがローレベルとされ、診断モードでは信号FET_ENがハイレベルとされる。
故に、ECU1bにおいて、帰還電圧VfbAは通常モードよりも診断モードでの方が高くなり、帰還電圧VfbBは通常モードよりも診断モードでの方が低くなる。結果、ECU1bにおいて、降圧目標電圧VtgAは通常モードよりも診断モードでの方が低くなり、昇圧目標電圧VtgBは通常モードよりも診断モードでの方が高くなる。
上述の第1〜第4不等式が満たされること及び4つの目標電圧VtgA_N、VtgA_S、VtgB_N及びVtgB_Sが全て所定の仕様電圧範囲RNG内に収まることを含め、降圧目標電圧VtgA及び昇圧目標電圧VtgBの特性は第1実施形態で述べた通りである(第1実施形態で述べた通りとなるように、分圧抵抗R11〜R14の各抵抗値並びに基準電圧VrefA及びVrefBの値が定められている)。
ECU1bでは、降圧目標電圧及び昇圧目標電圧を設定するための分圧抵抗ラダーが共用されるため、電源回路ごとに分圧抵抗ラダーを設ける場合と比べ、降圧目標電圧及び昇圧目標電圧間の電位差の精度を高めることができる(図3の構成では発生する、分圧回路DIV1の分圧抵抗ばらつきと分圧回路DIV2の分圧抵抗ばらつきが、図12の構成では相殺されたような恰好となる)。結果、図6、図7並びに図8(a)及び(b)に示したような降圧目標電圧及び昇圧目標電圧に対する要求を容易に満たしやすくなる。また、分圧比の切り替えに用いられるトランジスタの個数を削減することができる(図3の構成では2つのトランジスタM1及びM2が必要である一方、図12の構成では1つのトランジスタM3で足る)。
尚、通常モード及び診断モードの夫々における上述の降圧目標電圧及び昇圧目標電圧の関係が満たされる限り、分圧回路DIV4に構成は任意である。
例えば、トランジスタM3は分圧抵抗R13に並列接続されたバイパス回路を構成し、図12の分圧回路DIV4では、トランジスタM3がオンとされたときに、分圧抵抗R13とバイパス回路との並列回路の抵抗値が実質的にゼロとなるが、トランジスタM3がオフである時と比べてトランジスタM3がオンである時に、分圧抵抗R13とバイパス回路との並列回路の抵抗値が小さくなるのであれば、分圧回路DIV4のバイパス回路の構成は任意である。例えば、分圧回路DIV4のバイパス回路は、トランジスタM3と抵抗との直列回路であっても良い。
つまり、第2実施形態に係る電源装置Wでは、以下のような構成が採用されているといえる。電源装置Wは、複数の分圧抵抗の直列回路から成り、主電源電圧を互いに異なる分圧比で分圧することで降圧用帰還電圧(VfbA)及び昇圧用帰還電圧(VfbB)を生成する分圧回路(DIV4)を更に備え、この分圧回路(DIV4)において、複数の分圧抵抗の一部の分圧抵抗(図12の例ではR13)に対しバイパス回路(図12の例ではM3)が並列接続され、制御部(62)は、バイパス回路の状態の制御により、一部の分圧抵抗とバイパス回路との並列回路の抵抗値を可変とし、通常モード及び診断モード間の切り替わりにおいて並列回路の抵抗値を変化させることで主電源電圧から降圧用帰還電圧を得るための分圧比及び主電源電圧から昇圧用帰還電圧を得るための分圧比を同時に変化させ、これによって降圧目標電圧と昇圧目標電圧を同時に変化させる。
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。第1又は第2実施形態の記載を第3実施形態に適用可能であり、第1又は第2実施形態に記載の事項が第3実施形態に適用される際、第1実施形態中の記載“ECU1a”又は第2実施形態中の記載“ECU1b”は、第3実施形態において“ECU1c”に読み替えられる。
図13に第3実施形態に係るECU1cの構成を示す。第3実施形態では、図1のECU1として図13のECU1cが用いられる。図13のECU1cは図12のECU1bの一部を変更したものである。即ち、図12のECU1bを基準として分圧回路DIV3を削除し、代わりにモニタ回路30を設けることでECU1cが形成される。その他の点において、ECU1b及びECU1cは互いに同じ構成を有するため、同じ部分についての重複する説明を省略する。尚、図13のECU1cにおいて、第2実施形態における基準電圧VrefA及びVrefBの生成方法の代わりに、第1実施形態における基準電圧VrefA及びVrefBの生成方法を採用することも可能である(即ち、図3のECU1aを基準として分圧回路DIV3を削除し、代わりにモニタ回路30を設けることでECU1cを形成しても良い)。
モニタ回路30は昇圧電源回路20に接続され、昇圧電源回路20にて昇圧動作が行われているか否かに依存する電圧Vdet2を導出する。
図14に昇圧電源回路20とモニタ回路30の構成例を示す。図14の昇圧電源回路20は図5の昇圧電源回路20と同じものである。モニタ回路30は、還流ダイオード(整流ダイオード)として機能するダイオード31と、平滑コンデンサ32と、分圧抵抗33及び34と、を備える。ダイオード22及びダイオード31の各アノードはトランジスタ21のドレインに共通接続される。ダイオード31のカソードはモニタ用ラインLN1’に接続される。平滑コンデンサ32の一端はモニタ用ラインLN1’に接続され、平滑コンデンサ32の他端はグランドに接続される。分圧抵抗33の一端はモニタ用ラインLN1’に接続され、分圧抵抗33の他端は分圧抵抗34を介してグランドに接続される。モニタ用ラインLN1’に加わる電圧を電圧VMdmyと称する。分圧抵抗33及び34間の接続ノードには電圧VMdmyの分圧である電圧Vdet2が発生する。
以上の構成により、昇圧動作が行われていないとき、電圧VMdmyは、電圧源VS2の出力電圧VBからダイオード31の順方向電圧Vfだけ低い電圧(VB−Vf)となる。昇圧動作が行われているときには、電圧VBを昇圧した電圧であって出力端子20OUTでの電圧(即ち主電源電圧VM)とは異なる電圧が電圧VMdmyとして現れる。電圧VMdmyは主電源電圧VMを模した電圧に相当し、昇圧動作が行われているとき、電圧VMdmyは実質的に出力端子20OUTでの電圧(即ち主電源電圧VM)と同じ電圧値を持つと期待される。このため、電圧VMdmyを観測すれば昇圧動作が正常に実行されているかなどの診断が可能となる。図13及び図14の構成では、電圧VMdmyの分圧である電圧Vdet2を用いて電圧VMdmyが評価される。
[診断モードでのモニタ回路の利用]
モニタ回路30を用いた診断モードでの昇圧診断処理を説明する。説明の具体化のため、図10又は図11を再度参照し、上述の正常ケース又は昇圧異常ケースにおける昇圧診断処理を説明する。図10の正常ケースにおいて、タイミングTa1及びTa2間の診断モードでは、第1実施形態で述べたように、主電源電圧VMが昇圧目標電圧VtgB(VtgB_S)と一致するように昇圧電源回路20にて昇圧動作が行われる一方で、降圧電源回路10では降圧動作が停止される。図11の昇圧異常ケースにおいて、タイミングTb1及びTb2間の診断モードでは、第1実施形態で述べたように、故障により昇圧動作が停止しており、主電源電圧VMと降圧目標電圧VtgA(VtgA_S)とが一致するように降圧電源回路10が降圧動作を行うことになる。
正常ケースではタイミングTa1及びTa2間において、昇圧異常ケースではタイミングTb1及びTb2間において、ステップS16(図9参照)の昇圧診断処理が実行される。診断モードでは、昇圧動作に基づく電圧であって、昇圧目標電圧VtgB_Sと一致することが期待される電圧が主電源電圧VMとして現れているはずであり、これに連動して、昇圧目標電圧VtgB_Sと一致することが期待される電圧が電圧VMdmyとして現れているはずである。故に、MPU62は、診断モードにおける電圧Vdet2を評価電圧Vdet2として取得する。この際、モード遷移に伴う電圧VM及びVMdmyの変動の影響を除外すべく、通常モードから診断モードへ遷移してから所定の安定時間経過後の電圧Vdet2を評価電圧Vdet2として取得する。例えば、タイミングTa2又はTb2直前の電圧Vdet2を評価電圧Vdet2として取得すれば良い。
MPU62は、評価電圧Vdet2に基づき所定の昇圧正常条件の充足/不充足を判断することで昇圧電源回路20の異常の有無を診断する。そして、昇圧正常条件が充足している場合には昇圧電源回路20に異常は無いと判断し、昇圧正常条件が充足していない場合には昇圧電源回路20に異常があると判断する。
昇圧正常条件の成否判断(充足/不充足の判断)は、電圧VM及びVMdmyが互いに同じ電圧値を有しているという仮定の下で実行される。昇圧正常条件は、診断モードでの電圧VMdmyが、所定の正常電圧範囲内に収まっているという条件である。ここにおける正常電圧範囲は、診断モードでの昇圧目標電圧(VtgB_S)に対応する電圧範囲であり、故に、電圧VtgB_S_Lから電圧VtgB_S_Hまでの電圧範囲であって良い(図8(b)参照)。但し、正常電圧範囲の下限を電圧VtgB_S_Lよりも低く設定することも可能であり(但し、少なくとも仕様電圧範囲RNGの下限電圧LL以上とされる)、正常電圧範囲の上限を電圧VtgB_S_Hよりも高く設定することも可能である(但し、少なくとも仕様電圧範囲RNGの上限電圧HL以下とされる)。
既知情報である分圧抵抗R7及びR8間の抵抗値比と、評価電圧Vdet2とから、昇圧正常条件の成否判断が可能である。尚、仕様電圧範囲RNGの下限電圧VLLの値は、電圧源VS2の出力電圧VBの公称電圧値(例えば3V)よりも高いため、仮に診断モードで昇圧動作が停止していたのであれば昇圧正常条件が充足することは無い。
図10の正常ケースでは昇圧正常条件が充足される。図11の昇圧異常ケースでは昇圧電源回路20の故障により昇圧動作が停止しているので昇圧正常条件が充足しない。
第1又は第2実施形態の構成の如く、主電源電圧VMを監視する場合、主電源電圧VMが降圧動作に基づくものか昇圧動作に基づくものであるのかを区別すべく、各電源回路の出力電圧精度及び電圧Vdetの読み取り精度を高めることが要請される。第3実施形態では、直流的に主電源ラインLN1と切り離されたモニタ用ラインLN1’の電圧VMdmyを監視するため、そのような要請が緩和される。
MPU62にはA/Dコンバータが含まれている。MPU62は、アナログの評価電圧Vdet2をA/Dコンバータにてデジタルの電圧値に変換し、得られた電圧値に基づいて昇圧正常条件の充足/不充足を判断する。或いは、A/Dコンバータの代わりに、ECU1cに複数のコンパレータから成るウィンドウコンパレータを設けておき、ウィンドウコンパレータを用いて昇圧正常条件の充足/不充足を判断しても良い。
[通常モードでのモニタ回路の利用(通常モード診断処理)]
モニタ回路30は通常モードにおいても有効に機能させることができる。通常モードにおいて、MPU62がモニタ回路30を用いて行うことのできる通常モード診断処理を説明する。
MPU62は、通常モード診断処理において、電圧VMdmyに基づき(実際には電圧Vdet2に基づき)昇圧動作が実行されているか否かを監視し、昇圧動作が実行されていると判断したとき、ECU1cに含まれる電源装置に異常(以下、便宜上、特定異常と称する)があると判定する。ECU1cに含まれる電源装置は、電源回路10及び20を含む他、帰還電圧VfbA及びVfbBを生成する回路(図13では分圧回路DIV4)を含む。特定異常は、主に、電源回路10及び20の何れかにおける異常であるが、帰還電圧VfbA及びVfbBを生成する回路等における異常も、特定異常に属しうる。
基本的に通常モードでは昇圧動作は実行されず、電圧VMdmyは電圧源VS2の出力電圧VB未満の電圧となるはずである。しかしながら何らかの異常により、通常モードにて昇圧動作が実行されておれば、電圧VMdmyが昇圧動作の停止時よりも高まる。故に、MPU62は、通常モード診断処理において、電圧Vdet2を所定の判定電圧Vthと比較し、電圧Vdet2が判定電圧Vth以上であれば特定異常があると判定すれば良い(電圧Vdet2が判定電圧Vth未満であれば特定異常があると判定しない)。例えば、“VMdmy≧VLL”となるときに“Vdet2≧Vth”となるよう、判定電圧Vthを定めておけば良い。
特定異常が発生するケースとして、主に、以下の第1特定異常ケース及び第2特定異常ケースが想定される。
第1特定異常ケースは、通常モードにおいて、降圧電源回路10の故障により降圧動作を停止しており、代わりに昇圧電源回路20が昇圧動作を行うケースである。
第2特定異常ケースは、通常モードにおいて、降圧電源回路10に故障は発生していないが、昇圧電源回路20が昇圧動作を行うケースである。例えば、昇圧目標電圧VtgBが設計値を超えて過剰に高まるようなケースが、第2特定異常ケースに当てはまる。仮に帰還電圧VfbBが加わるべきノードがグランドに短絡するような異常が発生したならば、昇圧電源回路20は主電源電圧VMに関係なく昇圧動作を行うことになる。
特定異常があると判断した場合、MPU62は所定のエラー処理を行う。ここにおけるエラー処理は、ステップS30(図9参照)のエラー処理と同一又は類似するものであって良い。
通常モード診断処理により、通常モードにおいても、電源装置の異常(主に電源回路10又は20の異常)の有無を監視することが可能となる。
但し、MPU62は、通常モードであっても、電圧VAの低下時には通常モード診断処理を非実行とすると良い。電圧VAの低下に伴って主電源電圧VMが低下したときに昇圧動作が行われるのは、正しい挙動だからである。具体的には、ECU1cに、電圧VAを検出する電圧検出回路(不図示)を設けておき、電圧検出回路にて検出された電圧VAが所定の低下判定電圧Vth2以下であるときには、通常モード診断処理を非実行とすると良い。降圧電源回路10の特性を考慮しつつ、例えば、電圧VtgB_N_H以上の電圧が低下判定電圧Vth2に設定される。電圧VAが所定の低下判定電圧Vth2以下となって通常モード診断処理が非実行とされている状態から、電圧VAが回復して(上昇して)低下判定電圧Vth2を上回ったならば、通常モード診断処理を再開して良い。
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態では、第1〜第3実施形態に対する補足事項、変形技術等を説明する。
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示であり、Nチャネル型のFETがPチャネル型のFETに変更されるように、或いは、Pチャネル型のFETがNチャネル型のFETに変更されるように、FETを含む回路の構成は変形され得る。
上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタ(特に例えばスイッチングトランジスタM1)を、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。