JP2020045412A - 延伸多孔フィルム - Google Patents
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Abstract
Description
具体的には、紙おむつ等の衛生材料は、多孔フィルムと不織布とをホットメルトラミネーションにて貼り合わされて製造されるのが一般的であるが、その際、ホットメルト接着剤は100〜200℃に加熱、溶融されて多孔フィルムに噴霧されるため、多孔フィルムの耐熱性が不十分な場合、フィルムが破れ、生産性を著しく阻害する。そのため、多孔フィルムが十分な耐熱性を有することは、非常に重要となる。
一方で、これらの多孔フィルムが使用される用途では、更なる使用感の向上が求められているため、柔軟性や風合いなどの触感の更なる改良や、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生の抑制などが必要となる。しかしながら、特許文献3〜6では、不快音の抑制に関する技術的設計指針に関する言及がない。
該樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が−20℃において0.100以上であり、140℃〜200℃に結晶融解ピーク(Pm1)を有する延伸多孔フィルムによって解決される。
本発明の延伸多孔フィルムは、熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなる延伸多孔フィルムであって、該樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が−20℃において0.100以上であり、140℃〜200℃に結晶融解ピーク(Pm1)を有する延伸多孔フィルムである。
空孔率が15%以上の場合、後述するように、延伸多孔フィルムの空隙中を伝播する音のエネルギー損失機会が多くなり、不快音を十分に抑制することができる。また、空孔率が80%以下の場合、実用的に使用できる程度のフィルム強度を確保することができ、さらに、防水性が十分となり接する液状物の漏れを引き起こしにくいものとなる。
本発明の延伸多孔フィルムは、樹脂組成物(Z)の内部に連通した空隙を有するフィルムである。すなわち、本発明の延伸多孔フィルムにおいて音が伝播する場合、フィルムとして固体部を形成している樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音と、フィルム内部に形成された連通した空隙を伝播する音との2つの伝わり方を示す。そのため、音の抑制には、樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音の抑制、及び、連通した空隙を伝播する音の抑制を考慮しなければならない。
また、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)のtanδのピーク位置は音の発生雰囲気温度での減衰に関連すると共に、温度−時間換算則の観点から、周波数に対する減衰にも関連する。そのため、様々な周波数を有する不快音を吸音、または発生させないためには、tanδのピーク幅は広い方が好ましい。
従って、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が、−20℃において0.100以上であることが、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制のために重要である。前述したように、tanδが0.100以上となる温度範囲が広くなることが様々な周波数の不快音を抑制できるため好ましい。
従って、フィルムの空隙中を伝播する音のエネルギー損失機会が多くするために延伸多孔フィルムの空孔率が15%以上であることが好ましい。
前記結晶融解ピーク(Pm1)を有するには、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)に、融点が140℃〜200℃の熱可塑性樹脂を含有することによって、上記範囲に結晶融解ピーク(Pm1)を有するように調整することができる。
本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)における、融点が140℃〜200℃の熱可塑性樹脂の混合比率を調整することによって、結晶融解エンタルピー(ΔHm1)を上記範囲に調整することができる。
前記結晶融解ピーク(Pm2)を有するには、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)に、融点が30℃〜130℃の熱可塑性樹脂を含有し、混合比率を調整することによって、結晶融解ピーク(Pm2)、及び、結晶融解エンタルピー(ΔHm2)を上記範囲に調整することができる。
本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)に含まれる熱可塑性樹脂に着目すると、熱可塑性樹脂は、弾性的性質と粘性的性質の両方を有する粘弾性体である。すなわち、熱可塑性樹脂の弾性的性質の割合を減少することで、フィルムを擦り合わせるという外力を与えた時に、その外力に反発して振動する弾性成分が少なくなり、音の発生が抑制される。弾性的性質と粘性的性質の割合を示す指標が上述のtanδであるが、この弾性的性質の割合をマクロ視点とミクロ視点から減少させることが、不快音の低減に効果的と考えている。マクロ視点の弾性的性質とは、上述した本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)であり、ミクロ視点の弾性的性質とは、後述する樹脂の結晶成分である。
なお、動的粘弾性測定は、サンプル片の厚みをあらかじめ測定し、サンプル片の厚みとサンプル片の幅の値を測定装置に入力することにより、サンプル片の断面積が計算され、各値が算出される。
本発明の延伸多孔フィルムは、樹脂組成物(Z)中に空孔が生じているため、多孔体をそのまま測定した場合、算出される貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、tanδに誤差が生じやすい。よって、本発明の規定する貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、tanδを得るためには、延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の未延伸フィルムを用いてMD4mm、TD35mmに切り出された短冊状のサンプル片について動的粘弾性測定を行うことが好ましい。ただし、延伸多孔フィルムを融点以上に加熱することでフィルムを融解し空孔を消失させた後、プレスサンプルを作製し、該プレスサンプルより短冊状のサンプル片を切り出して動的粘弾性測定を行うことによっても、本発明の規定する貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、tanδを算出することができる。本発明においては、いずれの測定方法も採用することができる。
結晶性樹脂の非晶部は、ガラス転移温度以上の温度域ではミクロブラウン運動が可能であり、モビリティーの高い状態にある。一方、結晶性樹脂の結晶部は、ガラス転移温度以上、融点以下の温度域では分子鎖が結晶として拘束されており、非常に弾性率が高い部位となる。そのため、結晶性樹脂の結晶化度が低い場合、弾性率が高い結晶部が少なくなるため、外力を与えた時に反発して振動する成分が少なく発生する音も小さくなると考えられる。
従って、結晶融解エンタルピーは、本発明の延伸多孔フィルムにおける結晶成分割合の指標となり、前記結晶融解エンタルピー(ΔHm1)は、1J/g〜10J/gであることが好ましい。また、前記結晶融解エンタルピー(ΔHm2)は10J/g〜45J/gであることが好ましい。
また、結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、再昇温させた際に出現する上記結晶融解ピーク(Pm)のピーク面積から結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出する。このとき、上記高温保持温度は、用いる熱可塑性樹脂の最も高い結晶融解ピーク温度(Tm)に対し、Tm+20℃以上、かつ、Tm+150℃以下の範囲において、任意に選択できる。
なお、本発明における結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、上記再昇温過程において、半結晶性樹脂にみられるような冷結晶化が生じる場合においても、再昇温過程で生じる結晶融解ピークから算出されたΔHmを適用する。すなわち、再昇温過程において生じる冷結晶化における発熱ピーク面積から算出される結晶化エンタルピー(ΔHc)を、再昇温過程で得られるΔHmからの差し引くことは行わない。
本発明におけるΔHm(J/g)=積層体全体における延伸多孔フィルムのΔHm(J/g)/積層体全体における前記多孔層の積層比(%)/100(%)
前記延伸多孔フィルムの比重(W1)、及び、前記樹脂組成物(Z)の比重(W0)の測定は、無作為に3点測定し、その算術平均値を用いた。得られた前記延伸多孔フィルムの比重(W1)、及び、前記樹脂組成物(Z)の比重(W0)から、以下の式より空孔率を算出した。
空孔率(%)=[1−(W1/W0)]×100
ここで、坪量は、サンプル(縦方向(MD):250mm、横方向(TD):200mm)の質量(g)を電子天秤で測定し、その数値を20倍した値を坪量とする。
ここで、透気度はJISP8117:2009(ガーレー試験機法)に規定される方法に準じて測定される100mLの空気が紙片を通過する秒数であり、例えば透気度測定装置(旭精工製王研式透気度測定機EGO1−55型)を用いて測定することができる。本発明においては、サンプルを無作為に10点測定し、その算術平均値を透気度とする。
ここで、透湿度はJISZ0208(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))の諸条件に準拠する。吸湿剤として塩化カルシウムを15g用い、温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿環境下で測定した。サンプルは無作為に2点測定し、その算術平均値を求めた。
ここで、延伸方向の引張破断伸びは、JISK7127に準拠して、延伸方向100mm×延伸方向と垂直方向25mmに切り出したサンプルを作製し、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離50mmの条件で3連式引張試験機を用いて破断した際の引張破断伸びである。本発明においては、3回測定を行い算出した引張破断伸びの算術平均値とする。
ここで、全光線透過率は、JISK7361に準拠したヘイズメータを用い、無作為に5点測定し、その算術平均値を求めたものである。
ここで破膜耐熱温度は、サンプル(100mm×100mm)を、その中心をΦ50mmの円状に打ち抜いたステンレス鋼板(100mm×100mm×2mm(厚さ))2枚で挟み、クリップで四辺を固定し、槽内温度120℃の対流オーブンに2分間静置して加熱した後、ステンレス鋼板の円状打ち抜き箇所のサンプルが溶融し、穴が開いていないか、その様子を目視判断し、破れや穴開きがないものを破膜耐熱温度120℃以上とする。また、槽内温度を140℃、160℃と変更し、同様の評価を行った際に、破れや穴開きがないものを、それぞれ、破膜耐熱温度140℃以上、160℃以上とする。
本発明の延伸多孔フィルムは、熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなることが重要である。
前記無機充填材(A)としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、タルク、クレイ、カオリナイト、モンモリロナイトなどの微粒子や鉱物が挙げられるが、微多孔質化の発現、汎用性の高さ、低価格および銘柄の豊富さなどの利点から、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好適に用いることができる。
前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール系共重合体、エチレン・酢酸ビニル系共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。中でも、耐熱性の観点から、前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、エチレン・ビニルアルコール系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリケトン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアセタール系樹脂などが好ましく、柔軟性、耐熱性、連通孔の形成、環境衛生性、臭気などの観点から、熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂であることが特に好ましい。
前記熱可塑性樹脂は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。前記熱可塑性樹脂が2種類以上で構成される場合、その合計が前記熱可塑性樹脂の質量となり、樹脂組成物(Z)中における、前記熱可塑性樹脂の質量比率が算出される。
ポリエチレン系樹脂(B)は、密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下であり、かつ、エチレンを主たるモノマー成分とした樹脂である。主たるモノマー成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占めるモノマー成分のことをいう。よって、ポリエチレン系樹脂(B)は、エチレン単独重合体でもよく、エチレンを主たるモノマー成分とし、かつ、他のモノマーを含有する共重合体であってもよい。共重合体の例を挙げると、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・(1−ブテン)共重合体、エチレン・(1−ヘキセン)共重合体、エチレン・(4−メチル−1−ペンテン)共重合体、エチレン・(1−オクテン)共重合体などのエチレン・(α−オレフィン)共重合体や、また、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・エチレングリコール共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・スチレン共重合体、エチレン・ジエン共重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体などが挙げられる。エチレン・プロピレン・(1−ブテン)共重合体など、上述のモノマー成分を2種以上含有する多元共重合体であってもよい。
この中でも、寸法安定性の観点から、エチレン単独重合体や、エチレン・(α−オレフィン)共重合体が好ましい。
密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下のポリエチレン系樹脂(B)を含むことにより、延伸多孔フィルムの通気性、透湿性、寸法安定性、耐液漏れ性、隠ぺい性、外観などを満足させることが可能となる。ポリエチレン系樹脂(B)の密度は、0.910g/cm3以上0.937g/cm3以下であることがより好ましく、0.910g/cm3以上0.935g/cm3以下であることが特に好ましい。ここで、密度はピクノメーター法(JIS K7112 B法)により測定した密度である。また、後述する樹脂の密度についても同様に測定したときの値である。
ここで、融点は示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃〜200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温したときに測定されたサーモグラムから求めた結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)である。また、後述する樹脂の融点についても同様に測定したときの値である。
ここで、MFRはJIS K7219に準拠して測定される値であり、その測定条件は190℃、2.16kg荷重である。
軟質ポリオレフィン系樹脂(C)は、密度は0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満であり、かつ、オレフィンモノマーを主たるモノマー成分とした樹脂である。主たるモノマー成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占めるモノマー成分のことをいう。オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、また、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどのα−オレフィンや、ジエン、イソプレン、ブチレン、ブタジエンなどが挙げられ、これらの単独重合体でもよく、2種以上を共重合した多元共重合体であってもよい。また、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルアルコール、エチレングリコール、無水マレイン酸、スチレン、ジエン、環状オレフィンが共重合されたものでもよい。中でも、柔軟性と風合いの付与の観点から、エチレン単独重合体、分岐状低密度ポリエチレン、エチレン・(α−オレフィン共重合体)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(D)は、密度が0.890g/cm3以上0.910g/cm3未満であることが好ましい。また、融点は140℃〜170℃であることが好ましい。また、MFRは10〜50g/10minであることが好ましい。ここで、ポリプロピレン系樹脂(D)のMFRはJISK7210条件Mに準拠して測定される値であり、その測定条件は230℃、2.16kg荷重である。
また、前記ポリエチレン系樹脂(B)の混合組成比が上述の好ましい範囲における下限以上である場合、樹脂組成物の成形が容易となり、生産性に問題ないものとなる。
さらに、前記ポリプロピレン系樹脂(D)の混合組成比が上述の好ましい範囲における上限以下であり、かつ、前記ポリエチレン系樹脂(B)の混合組成比が上述の好ましい範囲における上限以下であり、かつ、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の混合組成比が上述の好ましい範囲における下限以上である場合、柔軟性や風合いといった肌触りのよい触感が得られ、フィルムが擦れる際に生じる不快音を抑制しやすくなる。
さらに本発明の延伸多孔フィルムは、前記樹脂組成物(Z)中に、可塑剤(E)を0.1質量%〜8.0質量%含むことが好ましい。可塑剤(E)が0.1質量%以上含まれていれば、前記樹脂組成物(Z)のtanδの値が大きくなり、さらに前記樹脂組成物(Z)のtanδのピーク幅を広くすることができる。また、延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)を小さくすることができる。一方、可塑剤(E)が8.0質量%以下であれば、可塑剤のブリードアウトを抑制することができ、延伸多孔フィルムをロール状に巻き取った際のブロッキングや、印刷時の印刷不良を抑制できる。
ひまし油類としては、通常のひまし油、精製ひまし油、硬化ひまし油および脱水ひまし油などが挙げられる。また、硬化ひまし油としては、12−ヒドロキシオクタデカン酸とグリセリンからなるトリグリセライドを主成分とする硬化ひまし油などが挙げられる。
本発明の延伸多孔フィルムの製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって製造することができるが、少なくとも一軸方向に延伸されることが好ましい。
ここで、「フィルム」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有する。フィルムとしては、平面状、チューブ状のいずれであってもよいが、生産性(原反シートの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という観点から、平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、押出機を用いて前記樹脂組成物を溶融し、ダイからフィルム状に押出し、冷却ロールや空冷、水冷にて冷却固化して得られるフィルム(未延伸フィルム)を、少なくとも一軸方向に延伸した後、巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。
本発明の延伸多孔フィルムは、表裏を貫通する微細な多数形成され、優れた通気性を有している。従って、紙おむつ、女性用生理用品などの衛生用品;作業服、ジャンパー、ジャケット、医療用衣服、化学防護服などの衣服;さらには、マスク、カバー、ドレープ、シーツ、ラップなどの通気性や透湿性を求められる用途に好適に利用することができる。
下記に示す実施例、比較例において、延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の未延伸フィルムを用いて、MD4mm、TD35mmに切り出された短冊状のサンプル片を用い、上述の方法に従い動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)を算出した。表1には、−20℃においてtanδが0.100以上である場合は「○」と表記し、−20℃においてtanδが0.100未満となる場合は「×」と表記した。
さらに、20℃におけるE’(単位:×108Pa)、並びに、−30℃、−20℃、−10℃、0℃におけるtanδの値を表1に纏めた。
上記の方法に従い、延伸多孔フィルムの坪量を算出した。
上記の方法に従い、延伸多孔フィルムの空孔率を算出した。
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの透気度を算出した。透気度測定装置として、旭精工(株)社製 王研式透気度測定機EGO1−55型を用いた。
上記の方法に従い、延伸多孔フィルムの透湿度を算出した。
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの延伸方向(本実施例、比較例ではMD)の引張破断強度を算出した。
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの延伸方向(本実施例、比較例ではMD)の引張破断伸びを算出した。
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの全光線透過率を算出した。
下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔フィルムを、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、−40℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温後、1分間保持し、次に200℃から−40℃まで冷却速度10℃/分で降温後、1分間保持し、更に−40℃から200℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させたことで、再昇温過程における結晶融解ピーク(Pm)、及び再昇温過程における前記結晶融解ピーク(Pm)のピーク面積から、延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出した。
このとき、140℃〜200℃に結晶融解ピーク(Pm1)の有無を確認した。また、前記(Pm1)より、ピーク温度(Tm1)、結晶融解エンタルピー(ΔHm1)を算出した。
同様に、30℃〜130℃に結晶融解ピーク(Pm2)の有無を確認した。また、前記(Pm2)より、ピーク温度(Tm2)、結晶融解エンタルピー(ΔHm2)を算出した。
上述の方法に従い、破膜耐熱温度を評価した。評価は、対流オーブンの槽内温度を120℃、140℃、160℃とし、槽内に2分間静置して加熱した後の状態を目視評価にて、下記判断基準に従い、評価した。
○:ステンレス鋼板の円状打ち抜き箇所のサンプルに破れや穴開きがない。
×:ステンレス鋼板の円状打ち抜き箇所のサンプルが溶融し、穴が開いている。
下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔フィルムを、縦方向(MD)1000mm、横方向(TD)200mmに切り出し、手で触り、下記判断基準に従い、評価した。
○:フィルムに柔らかい風合いを感じる。
×:フィルムに硬さを感じる。
延伸多孔フィルムの不快音測定は、測定場所を幅3m程度、長さ4m程度、高さ3m程度の個室内(外部の騒音の影響が少ない環境下)にて、リオン株式会社製、普通騒音計NL−42を用いて、周波数重み付け特性はA特性とし、時間重み付け特性はF特性として行った。
まず、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔フィルムを、縦方向(MD)400mm、横方向(TD)200mmに切り出し、縦方向中央で1度折り畳み、2つ折りに重ねあわせた。その後、重ねあわせた延伸多孔フィルムのTD両端部を挟持し、挟持したTD両端部間距離が100mmとなるように調整した。
さらに、挟持された延伸多孔フィルムと普通騒音計のマイク(集音部)との距離を100mmとなるように調整した後、挟持された延伸多孔フィルムのMD、及び、TDと垂直方向(厚み方向)に、挟持した端部を1秒間に3往復振動させることでフィルムを擦りあわせ、測定時間10秒間における時間平均サウンドレベル(LAeq)を測定し、下記判断基準に従い評価した。
尚、フィルムを振動させない状態(無動作状態)での測定時間10秒間における時間平均サウンドレベル(LAeq)は26dBであった。
◎:時間平均サウンドレベル(LAeq)が26dB以上35dB未満
○:時間平均サウンドレベル(LAeq)が35dB以上45dB未満
×:時間平均サウンドレベル(LAeq)が45dB以上
上記(1)〜(12)に示す評価を鑑み、下記基準にて総合評価を行った。
A:柔軟性と風合いといった優れた触感を有するとともに、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制した、通気性や透湿性を求められる用途に適したフィルムであり、かつ、十分な耐熱性を兼ね備えたフィルムである。
B:柔軟性と風合いといった優れた触感を有するとともに、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制した、通気性や透湿性を求められる用途に適したフィルムであるが、耐熱性が不十分である。
C:通気性と透湿性に優れたフィルムであるが、柔軟性や風合いといった触感を感じられず、かつ、不快な音の発生を感じるフィルムである。
D:通気性と透湿性などの延伸多孔フィルムに求められる物性が不十分なフィルムである。
<無機充填材(A)>
・備北粉化工業(株)社製、重質炭酸カルシウム「ライトンBS−0」(平均粒子径1.1μm、ステアリン酸表面処理品)。以下、「A−1」と略する。
<ポリエチレン系樹脂(B)>
・日本ポリエチレン(株)社製、直鎖状低密度ポリエチレン「ノバテックLL UF230」(密度0.921g/cm3、MFR1.0g/10分、融点121℃)。以下、「B−1」と略する。
・日本ポリエチレン(株)社製、分岐状低密度ポリエチレン「ノバテックLD LF441」(密度0.918g/cm3、MFR2.3g/10分、融点113℃)。以下、「B−2」と略する。
<軟質ポリオレフィン系樹脂(C)>
・日本ポリエチレン(株)社製、メタロセン系エチレン・(α−オレフィン)共重合体「カーネル KF360T」(密度0.898g/cm3、MFR3.5g/10分、融点90℃)。以下、「C−1」と略する。
・三井化学(株)社製、エチレン・(1−ブテン)共重合体「タフマー A1050S」(密度0.862g/cm3、MFR1.2g/10分、融点45℃)。以下、「C−2」と略する。
・ダウ・ケミカル社製、エチレン・オクテンブロック共重合体「Infuse D9107」(密度0.866g/cm3、MFR1g/10分、融点119℃)。以下、「C−3」と略する。
<ポリプロピレン系樹脂(D)>
・日本ポリプロ(株)社製、ポリプロピレン「ノバテックPP SA03」(密度0.900g/cm3、MFR30g/10分、融点165℃)。以下、「D−1」と略する。
<可塑剤(E)>
・ケイエフ・トレーディング(株)社製、硬化ひまし油「HCO−P3」。以下、「E−1」と略する。
<酸化防止剤>
・BASFジャパン(株)社製、酸化防止剤「Irganox B225」。以下、「F−1」と略する。
<他樹脂>
・三井化学(株)社製、α−オレフィン共重合体「アブソートマー EP−1001」(密度0.84g/cm3、MFR10g/10分(230℃2.16kg荷重))。以下、「G−1」と略する。
それぞれの原材料を表1に示す組成比率にて計量した後、ヘンシェルミキサーに投入し、5分間混合、分散させて、同方向二軸押出機を用いて、設定温度200℃にて溶融混練した後、同方向二軸押出機の先端に接続したTダイにて、樹脂組成物を押出し、50℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて厚さ35μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。
その後、得られた未延伸フィルムを、60℃に設定したロール(S)と60℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)−(T)ドロー比100%(延伸倍率2.0倍)、(T)−(U)ドロー比100%(延伸倍率2.0倍)を掛けてMDに合計4.0倍延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ35μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ35μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ35μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ35μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ50μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ50μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ30μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ35μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
この結果は、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出されたtanδ、及び、結晶融解ピークの出現温度が本発明の規定する範囲を満たしているためと考えられる。具体的には、実施例1〜5の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出されたtanδが、−20℃において0.100以上となっているため、樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音が減衰し、不快音の抑制に寄与しているためと考えられる。また、実施例1〜5で得られた延伸多孔フィルムは140℃〜200℃に結晶融解ピークを有しているため、高い耐熱性を有することが示された。
一方、比較例1、2で得られたフィルムは、本発明の規定するtanδを満たしていないため、不快音の抑制には不十分であり、時間平均サウンドレベル(LAeq)が高い値を示した。また、比較例3で得られたフィルムは、結晶融解ピークが本発明の規定する温度範囲に有しないため、柔軟で不快音が抑制されたフィルムではあるが、延伸多孔フィルムに求められる耐熱性が不十分であることが分かる。
さらに、比較例4では、密度が0.850g/cm3未満のα−オレフィン共重合体を含むフィルムであるが、本発明の規定するtanδを満たしていないため、不快音の抑制には不十分であった。すなわち、延伸多孔フィルムに必要な耐熱性の付与と、フィルムが擦れ時に生じる不快音の抑制を両立するためには、前述のtanδ、及び、結晶融解ピークが出現する温度の両方が、本発明が規定する範囲を満たすことが重要であることが分かる。
Claims (12)
- 熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなる延伸多孔フィルムであって、
該樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が−20℃において0.100以上であり、140℃〜200℃に結晶融解ピーク(Pm1)を有する延伸多孔フィルム。 - 前記結晶融解ピーク(Pm1)から算出される結晶融解エンタルピー(ΔHm1)が1J/g〜10J/gであることを特徴とする請求項1に記載の延伸多孔フィルム。
- 30℃〜130℃に結晶融解ピーク(Pm2)をさらに有し、該結晶融解ピーク(Pm2)から算出される結晶融解エンタルピー(ΔHm2)が10J/g〜45J/gである請求項1または2に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)が、20℃において8.0×108Pa以下である請求項1〜3のいずれかに記載の延伸多孔フィルム。
- 空孔率が15%〜80%である請求項1〜4のいずれかに記載の延伸多孔フィルム。
- 前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の延伸多孔フィルム。
- 前記ポリオレフィン系樹脂の密度が0.850g/cm3以上0.940g/cm3以下である請求項6に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記ポリオレフィン系樹脂として、密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下のポリエチレン系樹脂(B)、密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満の軟質ポリオレフィン系樹脂(C)、ポリプロピレン系樹脂(D)をそれぞれ有する請求項6または7に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記ポリエチレン系樹脂(B)、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)、前記ポリプロピレン系樹脂(D)の混合組成比が(B)/(C)/(D)=1質量%〜25質量%/50質量%〜98質量%/1質量%〜25質量%(ただし、(B)と(C)と(D)の合計質量%を100質量%とする。)である請求項8に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記樹脂組成物(Z)中に、可塑剤(E)を0.1質量%〜8.0質量%含む請求項1〜9のいずれかに記載の延伸多孔フィルム。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の延伸多孔フィルムを備えた衛生用品。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の延伸多孔フィルムを備えた衣服。
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