JP2019156989A - 延伸多孔フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】 柔軟性と風合いといった優れた触感を有するとともに、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制し、通気性、透湿性および強度にも優れた延伸多孔フィルムの提供。【解決手段】 熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなる延伸多孔フィルムであって、該樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が、−20℃において0.100以上であり、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g〜45J/gである延伸多孔フィルム。【選択図】なし
Description
本発明は、柔軟性と風合いといった優れた触感を有するとともに、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制し、通気性、透湿性、および強度にも優れた延伸多孔フィルムに関する。より詳細には、紙おむつ、女性用生理用品などの衛生用品;作業服、ジャンパー、ジャケット、医療用衣服、化学防護服などの衣服;その他マスク、カバー、ドレープ、シーツ、ラップといった通気性、透湿性を求められる用途に好適に利用することができる使用感の優れた延伸多孔フィルムに関する。
従来、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂と無機充填材を含有する樹脂組成物を延伸することにより、熱可塑性樹脂と無機充填材との間で界面剥離を発生させ、多数のボイド(微多孔)を形成した多孔フィルムが知られている。特に、ポリオレフィン系樹脂と無機充填材を含有する樹脂組成物からなる延伸多孔フィルムは内部の微多孔が連通孔を形成しているため、高い透気度・透湿度を有しながらも液体の透過を抑制した透湿防水フィルムとして利用されており、特に、紙おむつや女性用生理用品などの衛生材料、作業服、ジャンパー、ジャケット、医療用衣服、化学防護服などの衣服、マスク、カバー、ドレープ、シーツ、ラップなどの通気性や、透湿性を求められる用途に幅広く使用されている。
これらの用途に用いられる多孔フィルムは、直接、人の肌に触れる用途に用いられることが多いため、装着した状態での活動において、フィルムがガサガサ、ゴワゴワといった不快な音や感触を有することは使用感を妨げる要因となる。そのため、多孔フィルムには、風合いや柔軟性がよく肌触りが良いことと共に、不快音の抑制が求められる。
これらの課題に対し、例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体65〜90重量%、熱可塑性エラストマー35〜10重量%の合計量100重量部に対して50〜300重量部の無機充填材を含む多孔性フィルム(特許文献1)や、炭素数が4〜8個のα−オレフィンコモノマーを12重量%以上含有する結晶性低密度ポリエチレン20〜100重量部とポリエチレン80〜0重量部とからなる樹脂成分100重量部に対して、無機充填材50〜400重量部を含む透湿フィルム(特許文献2)が開示されている。
また、ポリエチレン系樹脂30〜70質量部とオレフィン系エラストマー70〜30質量部の合計量100質量部に対して50〜300質量部の無機充填材、1〜30質量部の可塑剤を含有する通気性フィルム(特許文献3)や、ポリエチレン樹脂40〜90質量部、プロピレン単独重合体5〜30質量部、プロピレン・エチレン共重合エラストマー5〜30質量部を含む100質量部の樹脂成分と該樹脂成分に対して無機充填剤100〜200質量部、可塑剤1〜20質量部を含む透湿性フィルム(特許文献4)、ポリエチレン樹脂組成物と無機充填材とスチレン系エラストマーを含む透湿性フィルム(特許文献5)、さらには、直鎖状低密度ポリエチレン30〜85質量部、高圧重合法低密度ポリエチレン5〜20質量部、メタロセン系エチレン・α−オレフィン共重合体10〜50質量部を含む樹脂成分と、樹脂成分100質量部に対し100〜200質量部の無機充填剤と1〜20質量部の可塑剤を含有する透湿性フィルム(特許文献6)がそれぞれ開示されている。
しかしながら、特許文献1、2では、融点が60〜100℃のエチレン・α−オレフィン共重合体や炭素数が4〜8個のα−オレフィンコモノマーを12重量%以上含有する結晶性低密度ポリエチレンが主成分となるフィルムであるため、柔軟性には富むが、他部材を貼り合わせる工程などで生じる高温条件下においては、融解する恐れがあり、寸法安定性や耐熱性などが不十分となる。
また、特許文献3〜6では、ポリエチレン系樹脂と無機充填材を含有する組成物中に、オレフィン系エラストマー、プロピレン・エチレン共重合エラストマー、スチレン系エラストマー、メタロセン系エチレン・α−オレフィン共重合体などの軟質樹脂を含有することにより、柔軟性や伸縮性を有し、風合いや触感に優れたフィルムが得られる。
一方で、これらの多孔フィルムが使用される用途では、更なる使用感の向上が求められているため、柔軟性や風合いなどの触感の更なる改良や、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生の抑制などが必要となる。しかしながら、特許文献3〜6では、不快音の抑制に関する技術的設計指針に関する言及がない。
一方で、これらの多孔フィルムが使用される用途では、更なる使用感の向上が求められているため、柔軟性や風合いなどの触感の更なる改良や、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生の抑制などが必要となる。しかしながら、特許文献3〜6では、不快音の抑制に関する技術的設計指針に関する言及がない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、柔軟性と風合いといった優れた触感を有するとともに、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制し、通気性、透湿性、よび強度にも優れた延伸多孔フィルムを提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記従来技術の課題を解決し得る延伸多孔フィルムを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の目的は、以下の延伸多孔フィルム(以下、「本発明の延伸多孔フィルム」ともいう。)により達成される。
すなわち、本発明の課題は、熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなる延伸多孔フィルムであって、該樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が、−20℃において0.100以上であり、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g〜45J/gである延伸多孔フィルムによって解決される。
本発明によれば、柔軟性と風合いといった優れた触感を有するとともに、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制し、通気性、透湿性、および強度にも優れた延伸多孔フィルムを得ることができるため、通気性や透湿性を求められる用途に好適に利用することができる。
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明の延伸多孔フィルムについて説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。ここで、延伸多孔フィルムとは、少なくとも一軸方向に延伸された多孔フィルムである。
なお、本明細書において、「主成分」とは、構成する組成物において最も多い質量比率を占める成分であることをいい、45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。また、「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
1.延伸多孔フィルム
本発明の延伸多孔フィルムは熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなる延伸多孔フィルムであって、該樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が−20℃において0.100以上であり、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g〜45J/gである延伸多孔フィルムである。
本発明の延伸多孔フィルムは熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなる延伸多孔フィルムであって、該樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が−20℃において0.100以上であり、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g〜45J/gである延伸多孔フィルムである。
本発明の延伸多孔フィルムは、延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が、−20℃において0.100以上であることが重要であり、0.110以上であることが好ましく、0.120以上であることがより好ましく、0.130以上であることが更に好ましい。また、延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)のtanδの上限に関しては、特に制限はないが、寸法安定性の観点から、−20℃において1.000以下であることが好ましい。tanδ(=E’’/E’)が、−20℃において0.100以上であることにより、後述するように、フィルムが擦れる際に生じる不快音を抑制するための吸音率(振動減衰率)を向上することができ、かつ、柔軟性や風合いといった触感に優れたフィルムとなる。
前記tanδは、−20℃〜−10℃において0.100以上であることが好ましく、−20℃〜0℃において0.100以上であることがより好ましく、−30℃〜0℃において0.100以上であることが更に好ましく、−30℃〜10℃において0.100以上であることが更に好ましく、−30℃〜20℃において0.100以上であることが更により好ましく、−30℃〜30℃において0.100以上であることが最も好ましい。本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出されるtanδが0.100以上となる温度範囲が広くなることで、後述するように、様々な周波数の不快音を抑制できる。
さらに、本発明の延伸多孔フィルムの空孔率は25%〜80%であることが好ましい。空孔率は30%〜80%であることがより好ましく、35%〜80%であることがさらに好ましい。
空孔率が25%以上の場合、後述するように、延伸多孔フィルムの空隙中を伝播する音のエネルギー損失機会が多くなり、不快音を十分に抑制することができる。また、空孔率が80%以下の場合、実用的に使用できる程度のフィルム強度を確保することができ、さらに、防水性が十分となり接する液状物の漏れを引き起こしにくいものとなる。
空孔率が25%以上の場合、後述するように、延伸多孔フィルムの空隙中を伝播する音のエネルギー損失機会が多くなり、不快音を十分に抑制することができる。また、空孔率が80%以下の場合、実用的に使用できる程度のフィルム強度を確保することができ、さらに、防水性が十分となり接する液状物の漏れを引き起こしにくいものとなる。
音は物体が動いたり、擦れたりする際に生じる空気の振動波である。音が物体に入射音として衝突する場合、前記入射音は、エネルギー保存則の関係から、物体を透過する透過音、物体を反射する反射音、並びに物体に吸収される吸収音の3つの音として分解される。すなわち、入射音が物体に衝突した際、物体に吸収される吸収音の割合が大きければ、その物体は吸音率の高い物体と考えられる。
本発明の延伸多孔フィルムは、樹脂組成物(Z)の内部に連通した空隙を有するフィルムである。すなわち、本発明の延伸多孔フィルムにおいて音が伝播する場合、フィルムとして固体部を形成している樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音と、フィルム内部に形成された連通した空隙を伝播する音との2つの伝わり方を示す。そのため、音の抑制には、樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音の抑制、及び、連通した空隙を伝播する音の抑制を考慮しなければならない。
本発明の延伸多孔フィルムは、樹脂組成物(Z)の内部に連通した空隙を有するフィルムである。すなわち、本発明の延伸多孔フィルムにおいて音が伝播する場合、フィルムとして固体部を形成している樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音と、フィルム内部に形成された連通した空隙を伝播する音との2つの伝わり方を示す。そのため、音の抑制には、樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音の抑制、及び、連通した空隙を伝播する音の抑制を考慮しなければならない。
本発明の延伸多孔フィルムにおける、樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音の抑制には、音の振動源や媒体での減衰が効果的であると考えられる。樹脂のような粘弾性体においては、振動のエネルギーを、熱エネルギーに損失させることで吸音効果が得られる。従って、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδは、この吸音効果を発現するために必要な要素となると考えられる。そのため、本発明においては、延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)のtanδのピーク値は大きい方が好ましい。
また、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)のtanδのピーク位置は音の発生雰囲気温度での減衰に関連すると共に、温度−時間換算則の観点から、周波数に対する減衰にも関連する。そのため、様々な周波数を有する不快音を吸音、または発生させないためには、tanδのピーク幅は広い方が好ましい。
従って、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が、−20℃において0.100以上であることが、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制のために重要である。前述したように、tanδが0.100以上となる温度範囲が広くなることが様々な周波数の不快音を抑制できるため好ましい。
また、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)のtanδのピーク位置は音の発生雰囲気温度での減衰に関連すると共に、温度−時間換算則の観点から、周波数に対する減衰にも関連する。そのため、様々な周波数を有する不快音を吸音、または発生させないためには、tanδのピーク幅は広い方が好ましい。
従って、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が、−20℃において0.100以上であることが、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制のために重要である。前述したように、tanδが0.100以上となる温度範囲が広くなることが様々な周波数の不快音を抑制できるため好ましい。
また、多孔フィルムの空孔率も、伝播する音の抑制に寄与すると考えられる。空孔率が増加することで、空気中を伝播する音と物体との衝突回数が増加するために、フィルム内部に形成された連通した空隙を伝播する音抑制の効果が得られるものと考えている。
従って、フィルムの空隙中を伝播する音のエネルギー損失機会が多くするために延伸多孔フィルムの空孔率が25%以上であることが好ましい。
従って、フィルムの空隙中を伝播する音のエネルギー損失機会が多くするために延伸多孔フィルムの空孔率が25%以上であることが好ましい。
また、本発明の延伸多孔フィルムは、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g〜45J/gであることが重要である。また、前記結晶融解エンタルピー(ΔHm)が12J/g〜43J/gであることが好ましく、14J/g〜41J/gであることがより好ましく、16J/g〜39J/gであることが更に好ましい。前記結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g以上となることにより、延伸多孔フィルムの耐熱性や寸法安定性が確保できる。また、前記結晶融解エンタルピー(ΔHm)が45J/g以下となることにより、後述する不快音の発生を抑制できる。
延伸多孔フィルムを擦りあわせる際に生じる不快音を抑制する手法としては、上述した伝播音を抑制することと共に、音源からの音の発生抑制が効果的と考える。音の発生は弾性体の振動であり、振動を起こすもの(=音源)がなければ音は発生しない。
本発明の延伸フィルムを構成する樹脂組成物(Z)に含まれる熱可塑性樹脂に着目すると、熱可塑性樹脂は、弾性的性質と粘性的性質の両方を有する粘弾性体である。すなわち、熱可塑性樹脂の弾性的性質の割合を減少することで、フィルムを擦り合わせるという外力を与えた時に、その外力に反発して振動する弾性成分が少なくなり、音の発生が抑制される。弾性的性質と粘性的性質の割合を示す指標が上述のtanδであるが、この弾性的性質の割合をマクロ視点とミクロ視点から減少させることが、不快音の低減に効果的と考えている。マクロ視点の弾性的性質とは、上述した本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)であり、ミクロ視点の弾性的性質とは、後述する樹脂の結晶成分である。
本発明の延伸フィルムを構成する樹脂組成物(Z)に含まれる熱可塑性樹脂に着目すると、熱可塑性樹脂は、弾性的性質と粘性的性質の両方を有する粘弾性体である。すなわち、熱可塑性樹脂の弾性的性質の割合を減少することで、フィルムを擦り合わせるという外力を与えた時に、その外力に反発して振動する弾性成分が少なくなり、音の発生が抑制される。弾性的性質と粘性的性質の割合を示す指標が上述のtanδであるが、この弾性的性質の割合をマクロ視点とミクロ視点から減少させることが、不快音の低減に効果的と考えている。マクロ視点の弾性的性質とは、上述した本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)であり、ミクロ視点の弾性的性質とは、後述する樹脂の結晶成分である。
熱可塑性樹脂は結晶の観点で非晶性樹脂と結晶性樹脂に分類される。非晶性樹脂は分子鎖が比較的かさ高い構造を有するため、分子鎖が規則正しく折り畳むことができず結晶部分を有さない熱可塑性樹脂である。一方、結晶性樹脂は、分子鎖が規則正しく折り畳まれ、密度の高い結晶部分を内部に有する熱可塑性樹脂である。ただし、結晶性樹脂であっても分子鎖が100%結晶化した結晶性樹脂というものは存在せず、分子鎖がランダムに配列した非晶部と分子鎖が規則正しく折り畳まれた結晶部の両方を有する。
結晶性樹脂の非晶部は、ガラス転移温度(Tg)以上の温度域ではミクロブラウン運動が可能であり、モビリティーの高い状態にある。一方、結晶性樹脂の結晶部は、ガラス転移温度(Tg)以上、融点(Tm)以下の温度域では分子鎖が結晶として拘束されており、非常に弾性率が高い部位となる。そのため、結晶性樹脂の結晶化度が低い場合、弾性率が高い結晶部が少なくなるため、外力を与えた時に反発して振動する成分が少なく発生する音も小さくなると考えられる。従って、結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、本発明の延伸多孔フィルムにおける結晶成分割合の指標となり、10J/g〜45J/gであることが重要となる。
結晶性樹脂の非晶部は、ガラス転移温度(Tg)以上の温度域ではミクロブラウン運動が可能であり、モビリティーの高い状態にある。一方、結晶性樹脂の結晶部は、ガラス転移温度(Tg)以上、融点(Tm)以下の温度域では分子鎖が結晶として拘束されており、非常に弾性率が高い部位となる。そのため、結晶性樹脂の結晶化度が低い場合、弾性率が高い結晶部が少なくなるため、外力を与えた時に反発して振動する成分が少なく発生する音も小さくなると考えられる。従って、結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、本発明の延伸多孔フィルムにおける結晶成分割合の指標となり、10J/g〜45J/gであることが重要となる。
以上をまとめると、本発明は、樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ、及び、結晶融解エンタルピー(ΔHm)を好適な範囲とすることで、柔軟性や風合いといった触感に優れるだけでなく、フィルムが擦れる際に生じる不快音を抑制するための吸音率(振動減衰率)を向上するとともに、不快音の発生を抑制することを可能としたものである。
延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)は、20℃において8.0×108Pa以下であることが好ましい。より好ましくは7.0×108Pa以下であり、さらに好ましくは6.0×108Pa以下である。貯蔵弾性率(E’)が、20℃において8.0×108Pa以下である場合、延伸多孔フィルムは風合いや柔軟性といった触感に優れたものとなる。また、下限については特に限定されるものではないが、延伸多孔フィルムのハンドリングの観点から、20℃において1.0×107Pa以上が好ましい。
本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定は、幅4mm、長さ35mmに切り出された短冊状のサンプル片を、測定周波数10Hz、測定歪0.1%、チャック間距離25mm、測定温度−100℃から、昇温速度3℃/minにて昇温しながら測定される。このとき、得られる動的粘弾性の温度依存性プロファイルから、各温度における貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が算出される。
なお、動的粘弾性測定は、サンプル片の厚みをあらかじめ測定し、サンプル片の厚みとサンプル片の幅の値を測定装置に入力することにより、サンプル片の断面積が計算され、各値が算出される。
本発明の延伸多孔フィルムは、樹脂組成物(Z)中に空孔が生じているため、多孔体をそのまま測定した場合、算出される貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、tanδに誤差が生じやすい。よって、本発明の規定する貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、tanδを得るためには、延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の未延伸フィルムを用いてMD4mm、TD35mmに切り出された短冊状のサンプル片について動的粘弾性測定を行うことが好ましい。ただし、延伸多孔フィルムを融点以上に加熱することでフィルムを融解し空孔を消失させた後、プレスサンプルを作製し、該プレスサンプルより短冊状のサンプル片を切り出して動的粘弾性測定を行うことによっても、本発明の規定する貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、tanδを算出することができる。本発明においては、いずれの測定方法も採用することができる。
なお、動的粘弾性測定は、サンプル片の厚みをあらかじめ測定し、サンプル片の厚みとサンプル片の幅の値を測定装置に入力することにより、サンプル片の断面積が計算され、各値が算出される。
本発明の延伸多孔フィルムは、樹脂組成物(Z)中に空孔が生じているため、多孔体をそのまま測定した場合、算出される貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、tanδに誤差が生じやすい。よって、本発明の規定する貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、tanδを得るためには、延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の未延伸フィルムを用いてMD4mm、TD35mmに切り出された短冊状のサンプル片について動的粘弾性測定を行うことが好ましい。ただし、延伸多孔フィルムを融点以上に加熱することでフィルムを融解し空孔を消失させた後、プレスサンプルを作製し、該プレスサンプルより短冊状のサンプル片を切り出して動的粘弾性測定を行うことによっても、本発明の規定する貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、tanδを算出することができる。本発明においては、いずれの測定方法も採用することができる。
また、本発明の延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、示差走査型熱量計(DSC)で本発明の延伸多孔フィルムを−40℃から高温保持温度まで加熱速度10℃/分で昇温後、1分間保持し、次に高温保持温度から−40℃まで冷却速度10℃/分で降温後、1分間保持し、更に−40℃から上記高温保持温度まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際の結晶融解ピーク面積から結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出する。このとき、上記高温保持温度は、用いる熱可塑性樹脂の結晶融解ピーク温度(Tm)に対し、Tm+20℃以上、かつ、Tm+150℃以下の範囲において、任意に選択できる。
なお、本発明の規定する結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、上記再昇温過程において、半結晶性樹脂にみられるような冷結晶化が生じる場合においても、再昇温過程で生じる結晶融解ピークから算出されたΔHmを適用する。すなわち、再昇温過程において生じる冷結晶化における発熱ピーク面積から算出される結晶化エンタルピー(ΔHc)を、再昇温過程で得られるΔHmからの差し引くことは行わない。
さらに本発明の延伸多孔フィルムが他の層と積層される場合、積層体についてそのままDSC測定を行うと、前記延伸多孔フィルムに由来するΔHmが低く見積もられるおそれがある。そのため、本発明の延伸多孔フィルムが積層体の場合、本発明の延伸多孔フィルムを剥離し、この多孔層についてΔHmを測定することができる。剥離が困難である場合は、DSC測定によって積層体全体における本発明の延伸多孔フィルムのΔHmを算出するとともに、積層体全体における前記多孔層の積層比を算出し、以下の計算式より、本発明の規定するΔHmを算出することができる。なお、積層比の算出は、特に限定されるものではないが、光学顕微鏡、電子顕微鏡等による断面観察により算出されることが好ましい。
本発明の規定するΔHm(J/g)=積層体全体における延伸多孔フィルムのΔHm(J/g)/積層体全体における前記多孔層の積層比(%)/100(%)
なお、本発明の規定する結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、上記再昇温過程において、半結晶性樹脂にみられるような冷結晶化が生じる場合においても、再昇温過程で生じる結晶融解ピークから算出されたΔHmを適用する。すなわち、再昇温過程において生じる冷結晶化における発熱ピーク面積から算出される結晶化エンタルピー(ΔHc)を、再昇温過程で得られるΔHmからの差し引くことは行わない。
さらに本発明の延伸多孔フィルムが他の層と積層される場合、積層体についてそのままDSC測定を行うと、前記延伸多孔フィルムに由来するΔHmが低く見積もられるおそれがある。そのため、本発明の延伸多孔フィルムが積層体の場合、本発明の延伸多孔フィルムを剥離し、この多孔層についてΔHmを測定することができる。剥離が困難である場合は、DSC測定によって積層体全体における本発明の延伸多孔フィルムのΔHmを算出するとともに、積層体全体における前記多孔層の積層比を算出し、以下の計算式より、本発明の規定するΔHmを算出することができる。なお、積層比の算出は、特に限定されるものではないが、光学顕微鏡、電子顕微鏡等による断面観察により算出されることが好ましい。
本発明の規定するΔHm(J/g)=積層体全体における延伸多孔フィルムのΔHm(J/g)/積層体全体における前記多孔層の積層比(%)/100(%)
また、本発明の延伸多孔フィルムにおける結晶融解ピーク温度(Tm)は、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることが更に好ましい。また、結晶融解ピークは1つであってもよく、2つ以上であってもよい。結晶融解ピークが2つ以上である場合、うち1つの結晶融解ピーク温度(Tm)が70℃以上であることが好ましい。さらに、結晶融解ピークが2つ以上ある場合、結晶融解エンタルピー(ΔHm)は2つ以上の結晶融解ピークから算出される結晶融解エンタルピー(ΔHm)のその合計値となる。
また、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)に含まれる熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合、結晶融解開始温度が結晶融解ピーク温度(Tm)より30℃以上低い温度から少しずつ融解し、ブロードなピークを示すことが多い。そのため、示差走査型熱量測定(DSC)を−40℃から昇温することにより、ベースラインを明確にし、より正確な結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出することができる。
また、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)に含まれる熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合、結晶融解開始温度が結晶融解ピーク温度(Tm)より30℃以上低い温度から少しずつ融解し、ブロードなピークを示すことが多い。そのため、示差走査型熱量測定(DSC)を−40℃から昇温することにより、ベースラインを明確にし、より正確な結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出することができる。
本発明の延伸多孔フィルムにおける空孔率は、延伸多孔フィルムを、縦方向(MD):50mm、横方向(TD):50mmの大きさに切り出し、延伸多孔フィルムの比重(W1)の測定を行う。次に、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の比重(W0)の測定を行う。前記樹脂組成物(Z)の比重(W0)の測定においては、本発明の延伸多孔フィルムの未延伸フィルムを、縦方向(MD):50mm、横方向(TD):50mmの大きさに切り出し、比重測定を行うことができる。また、未延伸シートの採取が困難な場合は、本発明の延伸多孔フィルムを融点以上に加熱することにより延伸多孔フィルムを融解し空孔を消失した後、プレスサンプルを作製し、該プレスサンプルより、縦方向(MD):50mm、横方向(TD):50mmの大きさに切り出し、比重測定を行うことができる。
前記延伸多孔フィルムの比重(W1)、及び、前記樹脂組成物(Z)の比重(W0)の測定は、無作為に3点測定し、その算術平均値を用いた。得られた前記延伸多孔フィルムの比重(W1)、及び、前記樹脂組成物(Z)の比重(W0)から、以下の式より空孔率を算出した。
空孔率(%)=[1−(W1/W0)]×100
前記延伸多孔フィルムの比重(W1)、及び、前記樹脂組成物(Z)の比重(W0)の測定は、無作為に3点測定し、その算術平均値を用いた。得られた前記延伸多孔フィルムの比重(W1)、及び、前記樹脂組成物(Z)の比重(W0)から、以下の式より空孔率を算出した。
空孔率(%)=[1−(W1/W0)]×100
本発明の延伸多孔フィルムにおける坪量は10g/m2〜50g/m2が好ましく、より好ましくは15g/m2〜40g/m2である。坪量が10g/m2以上であることにより、引張強度、引き裂き強度などの機械強度を十分確保しやすい。また、坪量が50g/m2以下であることにより、十分な軽量感を得られやすい。
ここで、坪量は、サンプル(縦方向(MD):250mm、横方向(TD):200mm)の質量(g)を電子天秤で測定し、その数値を20倍した値を坪量とする。
ここで、坪量は、サンプル(縦方向(MD):250mm、横方向(TD):200mm)の質量(g)を電子天秤で測定し、その数値を20倍した値を坪量とする。
本発明の延伸多孔フィルムにおける透気度は1秒/100mL〜5000秒/100mLであることが好ましく、10秒/100mL〜4000秒/100mLであることがより好ましく、100秒/100mL〜3000秒/100mLであることがさらに好ましい。透気度が1秒/100mL以上であることによって、耐水性及び耐透液性を十分確保しやすい。また透気度が5000秒/100mL以下であることによって、十分な連通孔を有することを示唆している。
ここで、透気度はJISP8117:2009(ガーレー試験機法)に規定される方法に準じて測定される100mLの空気が紙片を通過する秒数であり、例えば透気度測定装置(旭精工製王研式透気度測定機EGO1−55型)を用いて測定することができる。本発明においては、サンプルを無作為に10点測定し、その算術平均値を透気度とする。
ここで、透気度はJISP8117:2009(ガーレー試験機法)に規定される方法に準じて測定される100mLの空気が紙片を通過する秒数であり、例えば透気度測定装置(旭精工製王研式透気度測定機EGO1−55型)を用いて測定することができる。本発明においては、サンプルを無作為に10点測定し、その算術平均値を透気度とする。
本発明の延伸多孔フィルムにおける透湿度は1000g/(m2・24h)〜15000g/(m2・24h)が好ましく、より好ましくは、1500g/(m2・24h)〜12000g/(m2・24h)である。透湿度が15000g/(m2・24h)以下であることによって、耐水性を有することを示唆している。また、透湿度が1000g/(m2・24h)以上であることによって、空孔が十分な連通性を有することが示唆される。
ここで、透湿度はJISZ0208(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))の諸条件に準拠する。吸湿剤として塩化カルシウムを15g用い、温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿環境下で測定した。サンプルは無作為に2点測定し、その算術平均値を求めた。
ここで、透湿度はJISZ0208(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))の諸条件に準拠する。吸湿剤として塩化カルシウムを15g用い、温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿環境下で測定した。サンプルは無作為に2点測定し、その算術平均値を求めた。
本発明の延伸多孔フィルムにおける延伸方向の引張破断強度は7N/25mm以上が好ましく、10N/25mm以上がより好ましい。前記引張破断強度が7N/25mm以上であることによって、実用上十分な機械強度と柔軟性を確保することができる。また、上限については特に限定しないが、延伸性を鑑みると35N/25mm以下であることが好ましい。ここで、延伸方向の引張破断強度はJISK7127に準拠して、延伸方向100mm×延伸方向と垂直方向25mmに切り出したサンプルを作製し、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離50mmの条件で3連式引張試験機を用いて破断した際の引張破断強度である。本発明においては、3回測定を行い算出した引張破断強度の算術平均値とした。
本発明の延伸多孔フィルムにおける延伸方向の引張破断伸びは、40%〜400%であることが好ましく、100%〜300%であることがより好ましい。引張破断伸びが40%以上であると、本発明の延伸多孔フィルムを紙おむつ、及び、生理処理用品などの透湿防水用バックシートなどの衛生用品に用いる場合、肌触りが良く、優れたはき心地が得られる。また、引張破断伸びが400%以下であると、適度な剛性と抗張力を有し機械特性に優れ、印刷、スリット、並びに巻取加工時にフィルムの伸び及びひずみが小さく、生産ラインにおける優れた機械適性が得られる。
ここで、延伸方向の引張破断伸びは、JISK7127に準拠して、延伸方向100mm×延伸方向と垂直方向25mmに切り出したサンプルを作製し、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離50mmの条件で3連式引張試験機を用いて破断した際の引張破断伸びである。本発明においては、3回測定を行い算出した引張破断伸びの算術平均値とする。
ここで、延伸方向の引張破断伸びは、JISK7127に準拠して、延伸方向100mm×延伸方向と垂直方向25mmに切り出したサンプルを作製し、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離50mmの条件で3連式引張試験機を用いて破断した際の引張破断伸びである。本発明においては、3回測定を行い算出した引張破断伸びの算術平均値とする。
本発明の延伸多孔フィルムにおける全光線透過率は18%〜60%であることが好ましい。全光線透過率が18%以上であることにより、本発明の延伸多孔フィルムを紙おむつなどの透湿防水用バックシートなどの衛生用品に用いる場合、排尿したことを知らせるインジケータ薬剤を塗布しても認識できる。また、全光線透過率が60%以下であることにより、フィルムが白く、隠ぺい性に富んでいる。
ここで、全光線透過率は、JISK7361に準拠したヘイズメータを用い、無作為に5点測定し、その算術平均値を求めたものである。
ここで、全光線透過率は、JISK7361に準拠したヘイズメータを用い、無作為に5点測定し、その算術平均値を求めたものである。
以下、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)について説明した後、延伸多孔フィルムの製造方法について説明する。
2.延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)
本発明の延伸多孔フィルムは、熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなることが重要である。
本発明の延伸多孔フィルムは、熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなることが重要である。
2−1.無機充填材(A)
前記無機充填材(A)としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、タルク、クレイ、カオリナイト、モンモリロナイトなどの微粒子や鉱物が挙げられるが、微多孔質化の発現、汎用性の高さ、低価格および銘柄の豊富さなどの利点から、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好適に用いることができる。
前記無機充填材(A)としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、タルク、クレイ、カオリナイト、モンモリロナイトなどの微粒子や鉱物が挙げられるが、微多孔質化の発現、汎用性の高さ、低価格および銘柄の豊富さなどの利点から、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好適に用いることができる。
無機充填材(A)の平均粒子径は0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.3〜5μm、さらに好ましくは0.5〜3μmである。平均粒子径が0.1μm以上であれば、無機充填材(A)の分散不良や二次凝集が抑制され、樹脂組成物(Z)中に均一に分散することができるため好ましい。一方で、平均粒子径が10μm以下であれば、フィルムの薄膜化の際に大きなボイドの発生を抑制することができ、フィルムに十分な強度と耐水性を確保することができる。また、樹脂との分散性・混合性を向上させる目的で、あらかじめ脂肪酸、脂肪酸エステルなどを無機充填材にコーティングし、無機充填材表面を樹脂となじみ易くしておくことが好ましく、本発明に用いられる無機充填材(A)においても、表面処理された無機充填材を用いることができる。
2−2.熱可塑性樹脂
前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール系共重合体、エチレン・酢酸ビニル系共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。中でも、柔軟性、耐熱性、連通孔の形成、環境衛生性、臭気などの観点から、前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。前記熱可塑性樹脂が2種類以上で構成される場合、その合計が前記熱可塑性樹脂の質量となり、樹脂組成物(Z)中における、前記熱可塑性樹脂の質量比率が算出される。
前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール系共重合体、エチレン・酢酸ビニル系共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。中でも、柔軟性、耐熱性、連通孔の形成、環境衛生性、臭気などの観点から、前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。前記熱可塑性樹脂が2種類以上で構成される場合、その合計が前記熱可塑性樹脂の質量となり、樹脂組成物(Z)中における、前記熱可塑性樹脂の質量比率が算出される。
ポリオレフィン系樹脂とは、オレフィンモノマーを主たるモノマー成分とした樹脂である。主たるモノマー成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占めるモノマー成分のことをいう。オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、また、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどのα−オレフィンや、ジエン、イソプレン、ブチレン、ブタジエンなどが挙げられ、これらの単独重合体でもよく、2種以上を共重合した多元共重合体であってもよい。また、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルアルコール、エチレングリコール、無水マレイン酸、スチレン、ジエン、環状オレフィンが共重合されたものでもよい。中でも、柔軟性と風合いの付与の観点から、エチレン単独重合体、分岐状低密度ポリエチレン、エチレン・(α−オレフィン共重合体)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体が好ましい。
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、オレフィンモノマーを主たるモノマー成分とした樹脂であれば、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。前記ポリオレフィン系樹脂が2種類以上で構成される場合、その合計が前記ポリオレフィン系樹脂の質量となる。
また、前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、前記ポリオレフィン系樹脂の密度は0.850g/cm3以上0.940g/cm3以下であることが好ましい。また、前記ポリオレフィン系樹脂として、密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下のポリエチレン系樹脂(B)、及び、密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満の軟質ポリオレフィン系樹脂(C)をそれぞれ有することが好ましい。
2−2−1.ポリエチレン系樹脂(B)
前記ポリエチレン系樹脂(B)は、密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下であり、かつ、エチレンを主たるモノマー成分とした樹脂である。主たるモノマー成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占めるモノマー成分のことをいう。よって、ポリエチレン系樹脂(B)は、エチレン単独重合体でもよく、エチレンを主たるモノマー成分とし、かつ、他のモノマーを含有する共重合体であってもよい。共重合体の例を挙げると、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・(1−ブテン)共重合体、エチレン・(1−ヘキセン)共重合体、エチレン・(4−メチル−1−ペンテン)共重合体、エチレン・(1−オクテン)共重合体などのエチレン・(α−オレフィン)共重合体や、また、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・エチレングリコール共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・スチレン共重合体、エチレン・ジエン共重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体などが挙げられる。エチレン・プロピレン・(1−ブテン)共重合体など、上述のモノマー成分を2種以上含有する多元共重合体であってもよい。
この中でも、寸法安定性の観点から、エチレン単独重合体や、エチレン・(α−オレフィン)共重合体が好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂(B)は、密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下であり、かつ、エチレンを主たるモノマー成分とした樹脂である。主たるモノマー成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占めるモノマー成分のことをいう。よって、ポリエチレン系樹脂(B)は、エチレン単独重合体でもよく、エチレンを主たるモノマー成分とし、かつ、他のモノマーを含有する共重合体であってもよい。共重合体の例を挙げると、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・(1−ブテン)共重合体、エチレン・(1−ヘキセン)共重合体、エチレン・(4−メチル−1−ペンテン)共重合体、エチレン・(1−オクテン)共重合体などのエチレン・(α−オレフィン)共重合体や、また、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・エチレングリコール共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・スチレン共重合体、エチレン・ジエン共重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体などが挙げられる。エチレン・プロピレン・(1−ブテン)共重合体など、上述のモノマー成分を2種以上含有する多元共重合体であってもよい。
この中でも、寸法安定性の観点から、エチレン単独重合体や、エチレン・(α−オレフィン)共重合体が好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂(B)は、密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下であり、かつ、エチレンを主たるモノマー成分とした樹脂であれば、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。前記ポリエチレン系樹脂(B)が2種類以上で構成される場合、その合計が前記ポリエチレン系樹脂(B)の質量となる。
密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下のポリエチレン系樹脂(B)を含むことにより、延伸多孔フィルムの通気性、透湿性、寸法安定性、耐液漏れ性、隠ぺい性、外観などを満足させることが可能となる。ポリエチレン系樹脂(B)の密度は、0.910g/cm3以上0.937g/cm3以下であることがより好ましく、0.910g/cm3以上0.935g/cm3以下であることが特に好ましい。ここで、密度はピクノメーター法(JIS K7112 B法)により測定した密度である。また、後述する樹脂の密度についても同様に測定したときの値である。
密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下のポリエチレン系樹脂(B)を含むことにより、延伸多孔フィルムの通気性、透湿性、寸法安定性、耐液漏れ性、隠ぺい性、外観などを満足させることが可能となる。ポリエチレン系樹脂(B)の密度は、0.910g/cm3以上0.937g/cm3以下であることがより好ましく、0.910g/cm3以上0.935g/cm3以下であることが特に好ましい。ここで、密度はピクノメーター法(JIS K7112 B法)により測定した密度である。また、後述する樹脂の密度についても同様に測定したときの値である。
ポリエチレン系樹脂(B)は線状であってもよく、分岐状であってもよい。ポリエチレン系樹脂(B)の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法等が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂(B)の少なくとも1種類が分岐状低密度ポリエチレンであることが好ましい。ポリエチレン系樹脂(B)の少なくとも1種類が分岐状低密度ポリエチレンである場合、樹脂組成物(Z)の溶融張力が上昇し、成形加工性が向上するため好ましい。また、分岐状低密度ポリエチレンは、動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)の値が、0〜30℃において、大きい値を示すため、前記ポリエチレン系樹脂(B)の少なくとも1種が分岐状低密度ポリエチレンであることが好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂(B)は、融点が110〜135℃であることが好ましく、110〜130℃であることがより好ましい。前記ポリエチレン系樹脂(B)の融点が110〜135℃であれば、延伸多孔フィルムの寸法安定性を向上できるため好ましい。
ここで、融点は示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃〜200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温したときに測定されたサーモグラムから求めた結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)である。また、後述する樹脂の融点についても同様に測定したときの値である。
ここで、融点は示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃〜200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温したときに測定されたサーモグラムから求めた結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)である。また、後述する樹脂の融点についても同様に測定したときの値である。
前記ポリエチレン系樹脂(B)は、メルトフローレート(MFR)が、0.1〜20g/10分であることが好ましく、0.5〜10g/10分であることがより好ましい。MFRを0.1g/10分以上とすることで、延伸多孔フィルムの成形性を十分に保持することができるため好ましい。また、20g/10分以下とすることで延伸多孔フィルムの強度を十分に保持できるため好ましい。
ここで、MFRはJIS K7219に準拠して測定される値であり、その測定条件は190℃、2.16kg荷重である。
ここで、MFRはJIS K7219に準拠して測定される値であり、その測定条件は190℃、2.16kg荷重である。
2−2−2.軟質ポリオレフィン系樹脂(C)
前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)は、密度は0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満であり、かつ、オレフィンモノマーを主たるモノマー成分とした樹脂である。主たるモノマー成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占めるモノマー成分のことをいう。オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、また、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどのα−オレフィンや、ジエン、イソプレン、ブチレン、ブタジエンなどが挙げられ、これらの単独重合体でもよく、2種以上を共重合した多元共重合体であってもよい。また、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルアルコール、エチレングリコール、無水マレイン酸、スチレン、ジエン、環状オレフィンが共重合されたものでもよい。中でも、柔軟性と風合いの付与の観点から、エチレン単独重合体、分岐状低密度ポリエチレン、エチレン・(α−オレフィン共重合体)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体が好ましい。
前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)は、密度は0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満であり、かつ、オレフィンモノマーを主たるモノマー成分とした樹脂である。主たるモノマー成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占めるモノマー成分のことをいう。オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、また、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどのα−オレフィンや、ジエン、イソプレン、ブチレン、ブタジエンなどが挙げられ、これらの単独重合体でもよく、2種以上を共重合した多元共重合体であってもよい。また、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルアルコール、エチレングリコール、無水マレイン酸、スチレン、ジエン、環状オレフィンが共重合されたものでもよい。中でも、柔軟性と風合いの付与の観点から、エチレン単独重合体、分岐状低密度ポリエチレン、エチレン・(α−オレフィン共重合体)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体が好ましい。
前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)は、密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満であり、かつ、オレフィンモノマーを主たるモノマー成分とした樹脂であれば、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)が2種類以上で構成される場合、その合計が前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の質量となる。密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満の軟質ポリオレフィン系樹脂(C)を含むことにより、延伸多孔フィルムの柔軟性や風合いを良化させ、触感の満足度を向上できる。また、軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の密度は、0.855g/cm3以上0.910g/cm3未満であることが好ましく、0.860g/cm3以上0.910g/cm3未満であることがより好ましい。
前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)は、メルトフローレート(MFR)が、0.1〜20g/10分であることが好ましく、0.5〜10g/10分であることがより好ましい。MFRを0.1g/10分以上とすることで、延伸多孔フィルムの成形性を十分に保持することができるため好ましい。また、20g/10分以下とすることで延伸多孔フィルムの強度を十分に保持できるため好ましい。
また、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)のピークは、−50〜50℃の範囲にあることが好ましい。前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)のtanδのピークが−50〜50℃の範囲にある場合、ガサガサ、ゴワゴワといった不快な音の抑制に寄与するため好ましい。
また、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)のピーク値は、0.100以上であることが好ましく、0.200以上であることがより好ましく、0.300以上であることがさらに好ましい。前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)のtanδのピーク値が0.100以上である場合、ガサガサ、ゴワゴワといった不快な音の抑制に寄与するため好ましい。
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、前記ポリオレフィン系樹脂が、密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下のポリエチレン系樹脂(B)、及び、密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満の軟質ポリオレフィン系樹脂(C)をそれぞれ有する場合、前記無機充填材(A)、前記ポリエチレン系樹脂(B)及び、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の混合組成比は、(A)/(B)/(C)=50質量%〜75質量%/1質量%〜25質量%/5質量%〜49質量%(ただし(A)と(B)と(C)の合計質量%を100質量%とする。)であることが好ましく、(A)/(B)/(C)=50質量%〜70質量%/2質量%〜20質量%/10質量%〜48質量%であることがより好ましい。
前記無機充填材(A)と前記ポリエチレン系樹脂(B)と前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の混合組成比において、前記無機充填材(A)の混合組成比が上述の好ましい範囲における下限以上である場合、延伸に伴う多孔の形成が十分となり連通孔を形成しやすくなり、十分な透気特性や透湿特性を発現しやすくなる。
また、前記無機充填材(A)の混合組成比が上述の好ましい範囲における上限以下である場合、樹脂組成物の成形が容易となり、生産性に問題ないものとなる。
また、前記ポリエチレン系樹脂(B)の混合組成比が上述の好ましい範囲における下限以上であり、かつ、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の混合組成比が上述の好ましい範囲における上限以下である場合、寸法安定性に優れたフィルムとなる。
さらには、前記ポリエチレン系樹脂(B)の混合組成比が上述の好ましい範囲における上限以下であり、かつ、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の混合組成比が上述の好ましい範囲における下限以上である場合、柔軟性や風合いといった肌触りのよい触感が得られ、フィルムが擦れる際に生じる不快音を抑制しやすくなる。
また、前記無機充填材(A)の混合組成比が上述の好ましい範囲における上限以下である場合、樹脂組成物の成形が容易となり、生産性に問題ないものとなる。
また、前記ポリエチレン系樹脂(B)の混合組成比が上述の好ましい範囲における下限以上であり、かつ、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の混合組成比が上述の好ましい範囲における上限以下である場合、寸法安定性に優れたフィルムとなる。
さらには、前記ポリエチレン系樹脂(B)の混合組成比が上述の好ましい範囲における上限以下であり、かつ、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の混合組成比が上述の好ましい範囲における下限以上である場合、柔軟性や風合いといった肌触りのよい触感が得られ、フィルムが擦れる際に生じる不快音を抑制しやすくなる。
2−3.その他の成分
さらに本発明の延伸多孔フィルムは、前記樹脂組成物(Z)中に、可塑剤(D)を0.1質量%〜8.0質量%含むことが好ましい。可塑剤(D)が0.1質量%以上含まれていれば、前記樹脂組成物(Z)のtanδの値が大きくなり、さらに前記樹脂組成物(Z)のtanδのピーク幅を広くすることができる。また、延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)を小さくすることができる。一方、可塑剤(D)が8.0質量%以下であれば、可塑剤のブリードアウトを抑制することができ、延伸多孔フィルムをロール状に巻き取った際のブロッキングや、印刷時の印刷不良を抑制できる。
さらに本発明の延伸多孔フィルムは、前記樹脂組成物(Z)中に、可塑剤(D)を0.1質量%〜8.0質量%含むことが好ましい。可塑剤(D)が0.1質量%以上含まれていれば、前記樹脂組成物(Z)のtanδの値が大きくなり、さらに前記樹脂組成物(Z)のtanδのピーク幅を広くすることができる。また、延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)を小さくすることができる。一方、可塑剤(D)が8.0質量%以下であれば、可塑剤のブリードアウトを抑制することができ、延伸多孔フィルムをロール状に巻き取った際のブロッキングや、印刷時の印刷不良を抑制できる。
可塑剤(D)としては、下記エステル系可塑剤が挙げられる。極性構造を有するもの、例えば、1価カルボン酸エステル系可塑剤(ブタン酸、イソブタン酸、へキサン酸、2−エチルへキサン酸、へプタン酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリル酸などの1価カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的な化合物を例示すると、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジイソブタノエート、トリエチレングリコール−ヘキサノエート、トリエチレングリコールジ2−エチルブタノエート、トリエチレングリコールジラウレート、エチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、ジエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、PEG#400ジ2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールモノ2−エチルヘキサノエート、グリセリントリ2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールテトラスレアレート、ジペンタエリスリトールヘキサオクタノエート、ジグリセリンテトラステアレート、ジグリセリンジステアレートなど)、多価カルボン酸エステル系可塑剤(アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの多価カルボン酸と、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチルブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、ブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、ベンジルアルコールなどの炭素数1〜12の1価アルコールとの縮合反応により得られる化合物が挙げられる。具体的な化合物を例示すると、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ(ブトキシエチル)、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)、アジピン酸モノ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ(2−エチルブチル)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジドデシル、トリメット酸トリオクチルなど)、ヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤(ヒドロキシカルボン酸の1価アルコールエステル;リシノール酸メチル、リシノール酸エチル、リシノール酸ブチル、6−ヒドロキシヘキサン酸メチル、6−ヒドロキシヘキサン酸エチル、6−ヒドロキシヘキサン酸ブチル、ヒドロキシカルボン酸の多価アルコールエステル;エチレングリコールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル、ジエチレングリコールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル、トリエチレングリコールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(6−ヒドロキシヘキサン酸)エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(2−ヒドロキシ酪酸)エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(3−ヒドロキシ酪酸)エステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(4−ヒドロキシ酪酸)エステル、トリエチレングリコールジ(2−ヒドロキシ酪酸)エステル、グリセリントリ(リシノール酸)エステル、L−酒石酸ジ(1−(2−エチルヘキシル))、ひまし油類など)、ポリエステル系可塑剤などの適当なものを使用することができる。
ひまし油類としては、通常のひまし油、精製ひまし油、硬化ひまし油および脱水ひまし油などが挙げられる。また、硬化ひまし油としては、12−ヒドロキシオクタデカン酸とグリセリンからなるトリグリセライドを主成分とする硬化ひまし油などが挙げられる。
ひまし油類としては、通常のひまし油、精製ひまし油、硬化ひまし油および脱水ひまし油などが挙げられる。また、硬化ひまし油としては、12−ヒドロキシオクタデカン酸とグリセリンからなるトリグリセライドを主成分とする硬化ひまし油などが挙げられる。
また、前記原料の他、使用目的に応じて、その他樹脂原料や、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂、相溶化剤、加工助剤、溶融粘度改良剤、酸化防止剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候性安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、核剤、架橋剤、滑材、アンチブロッキング剤、スリップ剤、防曇剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤および顔料などを、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)に適宜添加してもよい。
3.延伸多孔フィルムの製造方法
本発明の延伸多孔フィルムの製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって製造することができるが、少なくとも一軸方向に延伸されることが重要である。
ここで、「フィルム」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有する。フィルムとしては、平面状、チューブ状のいずれであってもよいが、生産性(原反シートの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という観点から、平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、押出機を用いて前記樹脂組成物を溶融し、ダイからフィルム状に押出し、冷却ロールや空冷、水冷にて冷却固化して得られるフィルム(未延伸フィルム)を、少なくとも一軸方向に延伸した後、巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。
本発明の延伸多孔フィルムの製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって製造することができるが、少なくとも一軸方向に延伸されることが重要である。
ここで、「フィルム」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有する。フィルムとしては、平面状、チューブ状のいずれであってもよいが、生産性(原反シートの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という観点から、平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、押出機を用いて前記樹脂組成物を溶融し、ダイからフィルム状に押出し、冷却ロールや空冷、水冷にて冷却固化して得られるフィルム(未延伸フィルム)を、少なくとも一軸方向に延伸した後、巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。
また、前記未延伸フィルムを得る方法としては、本発明の延伸多孔フィルムを構成する組成物(Z)を混合した後、溶融混練させることが好ましい。具体的には、タンブラーミキサー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、リボンブレンダ―、スーパーミキサーなどの混合機で適当な時間混合した後、異方向二軸押出機、同方向二軸押出機などの押出機を使用し、組成物の均一な分散分配を促す。得られた樹脂組成物は、押出機の先端にTダイや丸ダイなどの口金を接続し、フィルム状に成型することができる。また、混練機の先端にストランドダイを接続し、ストランドカット、ダイカットなどの方法により一旦ペレット化した後、(場合によっては追加する組成物とともに)得られたペレットを単軸押出機などに導入し、押出機の先端にTダイや丸ダイなどの口金を接続し、フィルム状に成形することもできる。フィルム状に成形するにあたり、インフレーション成形、チューブラー成形、Tダイ成形などのフィルム成形方法が好ましい。押出温度は、180〜260℃程度が好ましく、より好ましくは190〜250℃である。押出温度やせん断の状態を最適化することにより、材料の分散状態を制御することも、下記記述するフィルムの種々の物理的特性、機械的特性を所望の値にするのに有効である。
本発明の延伸多孔フィルムは、前記未延伸フィルムを延伸することによって製造することができる。例えば、押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイや丸ダイから押出し、冷却ロールで冷却固化し、縦方向(フィルムの流れ方向、MD)へのロール延伸や、横方向(フィルムの流れ方向に対して垂直方向、TD)へのテンター延伸等により、少なくとも一軸方向に延伸される。また、縦方向に延伸した後、横方向に延伸してもよく、横方向に延伸した後、縦方向に延伸してもよい。また、同じ方向に2回以上延伸してもよい。さらには、縦方向に延伸した後、横方向に延伸し、さらに縦方向に延伸してもよい。また、同時二軸延伸機により縦方向、横方向に同時に延伸されてもよい。また、チューブラー成形により内圧によってチューブ状の未延伸フィルムを放射状に延伸されてもよい。さらには、インフレーション成形により得られたチューブ状の未延伸フィルムを折り畳んだ状態で延伸した後、折り畳まれたチューブ状の延伸多孔フィルムの耳を裁断し、2枚に分けてそれぞれ巻取を行ってもよく、折り畳んだ未延伸フィルムの耳を切断し、2枚の未延伸フィルムに分けた後、それぞれ延伸し、それぞれ巻取を行ってもよい。
本発明においては、少なくとも縦方向に1回延伸を行うことが好ましく、また、延伸ムラや通気性との兼ね合いにより、縦方向に2回以上延伸を行ってもよい。延伸温度は0℃〜90℃が好ましく、20℃〜70℃がより好ましい。また延伸倍率は、合計1.5倍〜6.0倍が好ましく、2.0倍〜5.0倍がより好ましい。延伸倍率が合計1.5倍以上とすることで、均一に延伸されて優れた外観を有する延伸多孔フィルムが得られる。一方、延伸倍率が合計6.0倍以下とすることで、フィルムの破断を抑制できる。
必要に応じて、諸物性の改良等を目的として、延伸後に50℃以上120℃以下の温度で熱処理や弛緩処理を行うことができる。ロール延伸により延伸を行う場合、延伸工程と巻取工程の間で、延伸後のフィルムを加熱したロール(アニールロール)に接触させることで熱処理を行うことができる。また、アニールロールにより加熱しながら、次に接触するロールの速度をアニールロール速度よりも遅くすることで、弛緩処理を行うことができる。また、これらの熱処理や弛緩処理は、未延伸フィルムの延伸を延伸し、延伸多孔フィルムを巻き取った後、別工程にて行うこともできる。熱処理や弛緩処理の温度が低すぎるとフィルムの収縮率が低減されにくく、また温度が高すぎるとロールに巻き付いたり、形成された微多孔が閉塞したりするおそれがある。そのため、50℃以上120℃以下の温度で熱処理や弛緩処理を行うことが好ましい。これらの熱処理、弛緩処理は複数回分割して実施されてもよい。
また、本発明の延伸多孔フィルムは、必要に応じて、スリット、コロナ処理、印刷、粘着剤の塗布、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工などを施すことができる。
4.用途
本発明の延伸多孔フィルムは、表裏を貫通する微細な多数形成され、優れた通気性を有しているので、紙おむつ、女性用生理用品などの衛生用品;作業服、ジャンパー、ジャケット、医療用衣服、化学防護服などの衣服;さらには、マスク、カバー、ドレープ、シーツ、ラップなどの通気性や透湿性を求められる用途に好適に利用することができる。
本発明の延伸多孔フィルムは、表裏を貫通する微細な多数形成され、優れた通気性を有しているので、紙おむつ、女性用生理用品などの衛生用品;作業服、ジャンパー、ジャケット、医療用衣服、化学防護服などの衣服;さらには、マスク、カバー、ドレープ、シーツ、ラップなどの通気性や透湿性を求められる用途に好適に利用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例に示す測定値及び評価は次のように行った。実施例では、フィルムの流れ方向を「縦」方向(又は、MD)、その直角方向を「横」方向(又は、TD)と記載する。
(1)延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定
下記に示す実施例、比較例において、延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の未延伸フィルムを用いて、MD4mm、TD35mmに切り出された短冊状のサンプル片を用い、上述の方法に従い動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)を算出した。その後、−20℃においてtanδが0.100以上である場合は「○」と判定し、−20℃においてtanδが0.100未満となる場合は「×」と判定した。
さらに、20℃におけるE’(単位:×108Pa)、並びに、−30℃、−20℃、−10℃、0℃におけるtanδの値を表1に纏めた。
下記に示す実施例、比較例において、延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の未延伸フィルムを用いて、MD4mm、TD35mmに切り出された短冊状のサンプル片を用い、上述の方法に従い動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)を算出した。その後、−20℃においてtanδが0.100以上である場合は「○」と判定し、−20℃においてtanδが0.100未満となる場合は「×」と判定した。
さらに、20℃におけるE’(単位:×108Pa)、並びに、−30℃、−20℃、−10℃、0℃におけるtanδの値を表1に纏めた。
(2)延伸多孔フィルムの坪量
上記の方法に従い、延伸多孔フィルムの坪量を算出した。
上記の方法に従い、延伸多孔フィルムの坪量を算出した。
(3)延伸多孔フィルムの空孔率
上記の方法に従い、延伸多孔フィルムの空孔率を算出した。
上記の方法に従い、延伸多孔フィルムの空孔率を算出した。
(4)延伸多孔フィルムの透気度
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの透気度を算出した。透気度測定装置として、旭精工(株)社製 王研式透気度測定機EGO1−55型を用いた。
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの透気度を算出した。透気度測定装置として、旭精工(株)社製 王研式透気度測定機EGO1−55型を用いた。
(5)延伸多孔フィルムの透湿度
上記の方法に従い、延伸多孔フィルムの透湿度を算出した。
上記の方法に従い、延伸多孔フィルムの透湿度を算出した。
(6)延伸多孔フィルムの延伸方向の引張破断強度
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの延伸方向(本実施例、比較例ではMD)の引張破断強度を算出した。
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの延伸方向(本実施例、比較例ではMD)の引張破断強度を算出した。
(7)延伸多孔フィルムの延伸方向の引張破断伸び
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの延伸方向(本実施例、比較例ではMD)の引張破断伸びを算出した。
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの延伸方向(本実施例、比較例ではMD)の引張破断伸びを算出した。
(8)延伸多孔フィルムの全光線透過率
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの全光線透過率を算出した。
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの全光線透過率を算出した。
(9)延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)
下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔フィルムを、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、−40℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温後、1分間保持し、次に200℃から−40℃まで冷却速度10℃/分で降温後、1分間保持し、更に−40℃から200℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させたことで、再昇温過程における結晶融解ピーク面積から、延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出した。
下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔フィルムを、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、−40℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温後、1分間保持し、次に200℃から−40℃まで冷却速度10℃/分で降温後、1分間保持し、更に−40℃から200℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させたことで、再昇温過程における結晶融解ピーク面積から、延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出した。
(10)延伸多孔フィルムの柔軟性
下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔フィルムを、縦方向(MD)1000mm、横方向(TD)200mmに切り出し、手で触り、下記判断基準に従い、評価した。
○:フィルムに柔らかい風合いを感じる。
×:フィルムに硬さを感じる。
下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔フィルムを、縦方向(MD)1000mm、横方向(TD)200mmに切り出し、手で触り、下記判断基準に従い、評価した。
○:フィルムに柔らかい風合いを感じる。
×:フィルムに硬さを感じる。
(11)延伸多孔フィルムの不快音測定
延伸多孔フィルムの不快音測定は、測定場所を幅3m程度、長さ4m程度、高さ3m程度の個室内(外部の騒音の影響が少ない環境下)にて、リオン株式会社製、普通騒音計NL−42を用いて、周波数重み付け特性はA特性とし、時間重み付け特性はF特性として行った。
まず、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔フィルムを、縦方向(MD)400mm、横方向(TD)200mmに切り出し、縦方向中央で1度折り畳み、2つ折りに重ねあわせた。その後、重ねあわせた延伸多孔フィルムのTD両端部を挟持し、挟持したTD両端部間距離が100mmとなるように調整した。
さらに、挟持された延伸多孔フィルムと普通騒音計のマイク(集音部)との距離を100mmとなるように調整した後、挟持された延伸多孔フィルムのMD、及び、TDと垂直方向(厚み方向)に、挟持した端部を1秒間に3往復振動させることでフィルムを擦りあわせ、測定時間10秒間における時間平均サウンドレベル(LAeq)を測定し、下記判断基準に従い評価した。
尚、フィルムを振動させない状態(無動作状態)での測定時間10秒間における時間平均サウンドレベル(LAeq)は26dBであった。
◎:時間平均サウンドレベル(LAeq)が26dB以上35dB未満
○:時間平均サウンドレベル(LAeq)が35dB以上45dB未満
×:時間平均サウンドレベル(LAeq)が45dB以上
延伸多孔フィルムの不快音測定は、測定場所を幅3m程度、長さ4m程度、高さ3m程度の個室内(外部の騒音の影響が少ない環境下)にて、リオン株式会社製、普通騒音計NL−42を用いて、周波数重み付け特性はA特性とし、時間重み付け特性はF特性として行った。
まず、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔フィルムを、縦方向(MD)400mm、横方向(TD)200mmに切り出し、縦方向中央で1度折り畳み、2つ折りに重ねあわせた。その後、重ねあわせた延伸多孔フィルムのTD両端部を挟持し、挟持したTD両端部間距離が100mmとなるように調整した。
さらに、挟持された延伸多孔フィルムと普通騒音計のマイク(集音部)との距離を100mmとなるように調整した後、挟持された延伸多孔フィルムのMD、及び、TDと垂直方向(厚み方向)に、挟持した端部を1秒間に3往復振動させることでフィルムを擦りあわせ、測定時間10秒間における時間平均サウンドレベル(LAeq)を測定し、下記判断基準に従い評価した。
尚、フィルムを振動させない状態(無動作状態)での測定時間10秒間における時間平均サウンドレベル(LAeq)は26dBであった。
◎:時間平均サウンドレベル(LAeq)が26dB以上35dB未満
○:時間平均サウンドレベル(LAeq)が35dB以上45dB未満
×:時間平均サウンドレベル(LAeq)が45dB以上
(12)総合評価
上記(1)〜(11)に示す評価を鑑み、下記基準にて総合評価を行った。
A:柔軟性と風合いといった優れた触感を有するとともに、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制した通気性や透湿性を求められる用途に適したフィルムである。
B:柔軟性と風合いといった優れた触感を有し、通気性と透湿性に優れたフィルムであるが、不快な音の発生を感じるフィルムである。
C:通気性と透湿性に優れたフィルムであるが、柔軟性や風合いといった触感を感じられず、かつ、不快な音の発生を感じるフィルムである。
D:通気性と透湿性などの延伸多孔フィルムに求められる物性が不十分なフィルムである。
上記(1)〜(11)に示す評価を鑑み、下記基準にて総合評価を行った。
A:柔軟性と風合いといった優れた触感を有するとともに、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制した通気性や透湿性を求められる用途に適したフィルムである。
B:柔軟性と風合いといった優れた触感を有し、通気性と透湿性に優れたフィルムであるが、不快な音の発生を感じるフィルムである。
C:通気性と透湿性に優れたフィルムであるが、柔軟性や風合いといった触感を感じられず、かつ、不快な音の発生を感じるフィルムである。
D:通気性と透湿性などの延伸多孔フィルムに求められる物性が不十分なフィルムである。
各実施例、比較例で使用した原材料は下記の通りである。
<無機充填材(A)>
・備北粉化工業(株)社製、重質炭酸カルシウム「ライトンBS−0」(平均粒子径1.1μm、ステアリン酸表面処理品)。以下、「A−1」と略する。
<ポリエチレン系樹脂(B)>
・日本ポリエチレン(株)社製、直鎖状低密度ポリエチレン「ノバテックLL UF230」(密度0.921g/cm3、MFR1.0g/10分、融点121℃)。以下、「B−1」と略する。
・日本ポリエチレン(株)社製、分岐状低密度ポリエチレン「ノバテックLD LF441」(密度0.918g/cm3、MFR2.3g/10分、融点113℃)。以下、「B−2」と略する。
<軟質ポリオレフィン系樹脂(C)>
・日本ポリエチレン(株)社製、メタロセン系エチレン・(α−オレフィン)共重合体「カーネル KF360T」(密度0.898g/cm3、MFR3.5g/10分、融点90℃)。以下、「C−1」と略する。
<可塑剤(D)>
・ケイエフ・トレーディング(株)社製、硬化ひまし油「HCO−P3」。以下、「D−1」と略する。
・(株)ジェイ・プラス社製、液体ポリエステル系可塑剤「ダイヤサイザー D600」。以下、「D−2」と略する。
<酸化防止剤>
・BASFジャパン(株)社製、酸化防止剤「Irganox B225」。以下、「E−1」と略する。
<無機充填材(A)>
・備北粉化工業(株)社製、重質炭酸カルシウム「ライトンBS−0」(平均粒子径1.1μm、ステアリン酸表面処理品)。以下、「A−1」と略する。
<ポリエチレン系樹脂(B)>
・日本ポリエチレン(株)社製、直鎖状低密度ポリエチレン「ノバテックLL UF230」(密度0.921g/cm3、MFR1.0g/10分、融点121℃)。以下、「B−1」と略する。
・日本ポリエチレン(株)社製、分岐状低密度ポリエチレン「ノバテックLD LF441」(密度0.918g/cm3、MFR2.3g/10分、融点113℃)。以下、「B−2」と略する。
<軟質ポリオレフィン系樹脂(C)>
・日本ポリエチレン(株)社製、メタロセン系エチレン・(α−オレフィン)共重合体「カーネル KF360T」(密度0.898g/cm3、MFR3.5g/10分、融点90℃)。以下、「C−1」と略する。
<可塑剤(D)>
・ケイエフ・トレーディング(株)社製、硬化ひまし油「HCO−P3」。以下、「D−1」と略する。
・(株)ジェイ・プラス社製、液体ポリエステル系可塑剤「ダイヤサイザー D600」。以下、「D−2」と略する。
<酸化防止剤>
・BASFジャパン(株)社製、酸化防止剤「Irganox B225」。以下、「E−1」と略する。
<実施例1>
それぞれの原材料を表1に示す組成比率にて計量した後、ヘンシェルミキサーに投入し、5分間混合、分散させて、同方向二軸押出機を用いて、設定温度200℃にて溶融混練した後、同方向二軸押出機の先端に接続したTダイにて、樹脂組成物を押出し、50℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて厚さ30μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。
その後、得られた未延伸フィルムを、60℃に設定したロール(S)と60℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)−(T)ドロー比100%(延伸倍率2.0倍)、(T)−(U)ドロー比100%(延伸倍率2.0倍)を掛けてMDに合計4.0倍延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
それぞれの原材料を表1に示す組成比率にて計量した後、ヘンシェルミキサーに投入し、5分間混合、分散させて、同方向二軸押出機を用いて、設定温度200℃にて溶融混練した後、同方向二軸押出機の先端に接続したTダイにて、樹脂組成物を押出し、50℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて厚さ30μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。
その後、得られた未延伸フィルムを、60℃に設定したロール(S)と60℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)−(T)ドロー比100%(延伸倍率2.0倍)、(T)−(U)ドロー比100%(延伸倍率2.0倍)を掛けてMDに合計4.0倍延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
<実施例2>
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ30μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ30μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
<実施例3>
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ30μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ30μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
<実施例4>
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ50μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ50μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
<比較例1>
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ50μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ50μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
<比較例2>
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ50μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
原材料を表1に示す組成比率に変更した以外は、実施例1と同様の手法により、厚さ50μmの未延伸フィルムを採取した。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。その後、得られた未延伸フィルムを実施例1と同様の手法により延伸、熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
実施例1〜4で得られた延伸多孔フィルムは、透気特性や透湿特性に優れると共に、好適な引張破断強度、引張破断伸度、全光線透過率を有するフィルムであった。また、実施例1〜4で得られる延伸多孔フィルムをこすり合わせた際の時間平均サウンドレベル(LAeq)は低い値を示し、不快な音を感じることはなかった。
この結果は、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出されたtanδ、及び、延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)が本発明の規定する範囲を満たしているためと考えられる。具体的には、実施例1〜4の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出されたtanδが、−20℃において0.100以上となっているため、樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音が減衰し、不快音の抑制に寄与しているためと考えられる。また、実施例1〜4の延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g〜45J/gの範囲にあることから、外力を与えた時に反発して振動する結晶成分が少ないため、発生する音が小さくなったためと考えられる。
一方、比較例1、2で得られたフィルムは、本発明の規定するtanδ及び、結晶融解エンタルピー(ΔHm)を満たしていないため、不快音の抑制には不十分であり、時間平均サウンドレベル(LAeq)が高い値を示した。
すなわち、優れた触感と、フィルムが擦れ時に生じる不快音の抑制を両立するためには、前述のtanδ、及び、結晶融解エンタルピー(ΔHm)の両方が、本発明が規定する範囲を満たすことが重要であることが分かる。
この結果は、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出されたtanδ、及び、延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)が本発明の規定する範囲を満たしているためと考えられる。具体的には、実施例1〜4の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出されたtanδが、−20℃において0.100以上となっているため、樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音が減衰し、不快音の抑制に寄与しているためと考えられる。また、実施例1〜4の延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g〜45J/gの範囲にあることから、外力を与えた時に反発して振動する結晶成分が少ないため、発生する音が小さくなったためと考えられる。
一方、比較例1、2で得られたフィルムは、本発明の規定するtanδ及び、結晶融解エンタルピー(ΔHm)を満たしていないため、不快音の抑制には不十分であり、時間平均サウンドレベル(LAeq)が高い値を示した。
すなわち、優れた触感と、フィルムが擦れ時に生じる不快音の抑制を両立するためには、前述のtanδ、及び、結晶融解エンタルピー(ΔHm)の両方が、本発明が規定する範囲を満たすことが重要であることが分かる。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う延伸多孔フィルムもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明の延伸多孔フィルムは、柔軟性と風合いといった優れた触感を有するとともに、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制し、通気性、透湿性および強度にも優れる。従って、延伸多孔フィルムを用いた、紙おむつ、女性用生理用品などの衛生用品;作業服、ジャンパー、ジャケット、医療用衣服、化学防護服などの衣服;さらには、マスク、カバー、ドレープ、シーツ、ラップなどの通気性や透湿性を求められる用途に好適に利用することができる。
Claims (10)
- 熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなる延伸多孔フィルムであって、
該樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が−20℃において0.100以上であり、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g〜45J/gである延伸多孔フィルム。 - 前記樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)が、20℃において8.0×108Pa以下である請求項1に記載の延伸多孔フィルム。
- 空孔率が25%〜80%である請求項1または2に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の延伸多孔フィルム。
- 前記ポリオレフィン系樹脂の密度が0.850g/cm3以上0.940g/cm3以下である請求項4に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記ポリオレフィン系樹脂として、密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下のポリエチレン系樹脂(B)、及び、密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満の軟質ポリオレフィン系樹脂(C)をそれぞれ有する請求項4または5に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記無機充填材(A)、前記ポリエチレン系樹脂(B)、及び、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の混合組成比が(A)/(B)/(C)=50質量%〜75質量%/1質量%〜25質量%/5質量%〜49質量%(ただし、(A)と(B)と(C)の合計質量%を100質量%とする。)である請求項6に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記樹脂組成物(Z)中に、可塑剤(D)を0.1質量%〜8.0質量%含む請求項1〜7のいずれかに記載の延伸多孔フィルム。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の延伸多孔フィルムを用いた衛生用品。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の延伸多孔フィルムを用いた衣服。
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JP2018046414A JP2019156989A (ja) | 2018-03-14 | 2018-03-14 | 延伸多孔フィルム |
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Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPH11116714A (ja) * | 1997-10-17 | 1999-04-27 | Tokuyama Corp | 多孔性フィルム |
JP2002003662A (ja) * | 2000-06-16 | 2002-01-09 | Japan Polyolefins Co Ltd | ポリエチレン樹脂組成物、そのフィルム、多孔フィルム、成形体、および多孔フィルムの製造方法 |
JP2017105031A (ja) * | 2015-12-08 | 2017-06-15 | 三菱樹脂株式会社 | 透湿性積層体 |
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-
2018
- 2018-03-14 JP JP2018046414A patent/JP2019156989A/ja active Pending
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