(詳細な説明)
(1.定義)
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という冠詞は、1つ又は複数の冠詞の文法的対象を指す。例として、バイオマーカー(a biomarker)は、1つのバイオマーカー又は複数のバイオマーカーを指す。
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物を指す。対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、ウサギ、又はこれらのトランスジェニック種であることができる。対象は患者又は癌患者であることができる。
本明細書で使用される場合、「癌」又は「癌性」という用語は、調節されていない細胞成長を一般に特徴とする哺乳動物の生理的状態を指す。癌の例としては、血液癌(例えば、多発性骨髄腫、リンパ腫、及び白血病)、並びに固形腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「前悪性状態」という用語は、治療しないで放置すれば、癌を引き起こし得る、癌のリスクの増大と関連する状態を指す。前悪性状態は、侵攻性で侵襲的な段階に進行していない非侵襲性癌を指すこともできる。
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、及び「治療」という用語は、癌患者との関連において使用されるとき、癌の重症度を軽減するか、又は癌の進行を遅延もしくは減速させる行為を指し、これには、(a)癌の成長を阻害すること、又は癌の発生を停止させること、及び(b)癌の退行を引き起こすこと、又は癌の存在と関連する1以上の症状を遅延させもしくは最小化することが含まれる。
本明細書で使用される場合、「決定する」という用語は、任意の形態の測定を用いて、定量的にか又は定性的にかのいずれかで、物質の存在を評価することを指す。測定は、相対的又は絶対的であることができる。物質の存在を測定することは、物質の有無、又は物質の量を決定することを含むことができる。
本明細書で使用される場合、「投与する」、「投与すること」、又は「投与」という用語は、本明細書に記載の又はそうでなければ当技術分野で公知の方法によって、化合物又は医薬組成物を対象の身体に送達するか、又は送達されるようにする行為を指す。化合物又は医薬組成物を投与することは、患者の身体に送達されるべき化合物又は医薬組成物を処方することを含む。例示的な投与形態としては、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁剤などの経口剤形;静脈内(IV)、筋肉内(IM)、又は腹腔内(IP)などの注射用剤形;クリーム剤、ゼリー剤、散剤、又はパッチ剤を含む経皮剤形;口腔内剤形;吸入散剤、スプレー剤、懸濁剤、及び直腸坐剤が挙げられる。
本明細書で使用される場合、化合物の「治療有効量」という用語は、疾患又は障害との関連において使用されるとき、疾患もしくは障害の治療もしくは管理において治療的利益をもたらすのに、又は疾患もしくは障害と関連する1以上の症状を遅延させもしくは最小化するのに十分な量を指す。化合物の治療有効量とは、疾患又は障害の治療又は管理において治療的利益をもたらす、単独又は他の療法と組み合わせた、化合物の量を意味する。この用語は、療法全体を改善し、症状を軽減もしくは回避し、又は別の治療剤の治療効力を増強する量を包含する。この用語は、研究者、獣医、医師、又は臨床医によって探索されている、生体分子(例えば、タンパク質、酵素、RNA、もしくはDNA)、細胞、組織、システム、動物、又はヒトの生物学的又は医学的応答を十分に誘発する化合物の量も指す。
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、対象となる1以上の成分を含む材料又は材料の混合物を指す。対象由来の試料は、対象から得られた試料を指し、これには、インビボ又はインサイチュで取得、獲得、又は回収された生体組織又は生体液起源の試料が含まれる。試料は、前癌細胞もしくは前癌組織又は癌細胞もしくは癌組織を含む対象の領域から取得することができる。そのような試料は、哺乳動物から単離された器官、組織、画分、及び細胞であることができるが、これらに限定されない。例示的な試料としては、骨髄、全血、部分精製血、末梢血単核細胞(「PBMC」)、及び組織生検が挙げられる。例示的な試料としては、細胞溶解物、細胞培養物、細胞株、組織、口腔組織、消化管組織、器官、オルガネラ、生体液、血液試料、尿試料、皮膚試料なども挙げられる。
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」という用語は、個々の対象に存在するかもしくは存在しないかのいずれかであることができる遺伝子、又は存在するが、個々の対象で示差発現されることができる遺伝子を指す。対象由来の試料における、バイオマーカーの発現レベルを含む、バイオマーカーの存在は、特定の治療、例えば、FTI治療に対する対象の応答性を示すことができる。
本明細書で使用される場合、「発現する」又は「発現」という用語は、遺伝子との関連において使用されるとき、遺伝子によって運ばれる情報が表現型として現れるようになるプロセスを指し、これには、遺伝子からメッセンジャーRNA(mRNA)への転写、その後のmRNA分子からポリペプチド鎖への翻訳、及び最終的なタンパク質へのその会合が含まれる。
本明細書で使用される場合、「バイオマーカーのRNA産物」という用語は、バイオマーカーから転写されたRNA転写産物を指し、「バイオマーカーのタンパク質産物」という用語は、バイオマーカーのRNA産物から翻訳されたタンパク質又はポリペプチドを指す。
本明細書で使用される場合、バイオマーカーの「発現レベル」という用語は、例えば、バイオマーカーのRNA産物の量(バイオマーカーのRNAレベル)又はバイオマーカーのタンパク質産物の量(バイオマーカーのタンパク質レベル)などの、バイオマーカーの発現産物の量又は蓄積を指す。バイオマーカーが複数のアレルを有する遺伝子である場合、バイオマーカーの発現レベルは、別途規定されない限り、この遺伝子の存在する全てのアレルの発現産物の蓄積の総量を指す。
本明細書で使用される場合、「参照発現レベル」という用語は、対象由来の試料におけるバイオマーカーの発現レベルの有意性を決定するために使用することができる予め決定されたバイオマーカーの発現レベルを指す。バイオマーカーの参照発現レベルは、健康な個体由来の試料におけるバイオマーカーの発現レベルであることができる。バイオマーカーの参照発現レベルは、試料集団におけるバイオマーカーの発現レベル及び試料集団内の個体の治療に対する応答性の統計解析を通じて当業者により決定されるカットオフ値であることもできる。
本明細書で使用される場合、「応答性」又は「応答する」という用語は、治療との関連において使用されるとき、治療されている疾患の症状の軽減又は減少における治療の有効性を指す。例えば、FTI治療が、癌の成長を効果的に阻害するか、又は癌の発生を停止させ、癌の退行を引き起こし、もしくはこの患者における癌の存在と関連する1以上の症状を遅延させもしくは最小化する場合、癌患者はFTI治療に応答する。
特定の治療に対する癌患者の応答性は、完全応答又は部分応答として特徴付けることができる。「完全応答」又は「CR」は、以前に異常であったX線検査、骨髄、及び脳脊髄液(CSF)、又は異常な単クローン性タンパク質の測定値の正常化を伴う臨床的に検出可能な疾患の欠如を指す。「部分応答」又は「PR」は、新しい病変の非存在下における、全ての測定可能な腫瘍量(すなわち、対象に存在する悪性細胞の数、又は腫瘍塊の測定容積、又は異常な単クローン性タンパク質の量)の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%の減少を指す。
当業者であれば、治療に対するCR、PR、又は他のレベルの患者応答性を定義するために使用される臨床標準が癌の様々なタイプによって異なり得ることを理解するであろう。例えば、造血系の癌について、特定の治療に「応答する」患者は、完全応答(CR)、部分応答(PR)、又は血液学的改善(HI)を有する患者と定義することができる(Lancetらの文献、Blood 2:2(2006))。固形腫瘍について、特定の治療に「応答する」患者は、RECIST基準によって定義することができる(Therasseらの文献、「固形腫瘍における治療に対する応答を評価するための新しいガイドライン(New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors)」、JNCI 92(3):205-216(2000)を参照)。HIは、5%未満の任意の骨髄芽球数又は骨髄芽球の少なくとも半分の低下と定義することができる。他方、特定の治療に「応答しない」患者は、進行疾患(PD)又は安定疾患(SD)のいずれかを有する患者と定義することができる。進行疾患(PD)は、ベースラインからの骨髄もしくは循環芽球%の50%を上回る増加、又は循環芽球の(少なくとも2回連続での)新たな出現のいずれかと定義することができる。安定疾患(SD)は、CR基準も、PR基準も、HI基準も、PD基準も満たさない任意の応答と定義することができる。
本明細書で使用される場合、「可能性」という用語は、事象の確率を指す。条件が満たされたとき、対象は特定の治療に応答する「可能性がある」とは、対象が特定の治療に応答する確率が、条件が満たされないときよりも、条件が満たされているときに高いことを意味する。特定の治療に応答する確率は、条件を満たしていない対象と比較して、特定の条件を満たしている対象で、例えば、5%、10%、25%、50%、100%、200%、又はそれよりも高くなることができる。例えば、対象がHRAS突然変異のキャリアであるとき、癌患者はFTI治療に応答する「可能性がある」とは、対象がFTI治療に応答する確率が、HRAS突然変異のキャリアではない対象と比較して、HRAS突然変異のキャリアである対象で5%、10%、25%、50%、100%、200%、それよりも高いことを意味する。
Rasタンパク質は、細胞外シグナルからの生体情報を核へと伝達することにより増殖を調節するGTPアーゼである。哺乳動物細胞は、4つのRasタンパク質をコードする3つのras遺伝子を発現し、この4つのRasタンパク質は、HRAS、N-Ras、KA-Ras、及びKB-Rasである。KA-Ras及びKB-Rasは、一般に、K-Rasとも呼ばれる。Rasタンパク質は、活性のあるGTP結合状態か又は活性のないGDP結合状態かのいずれかで存在する。突然変異体RASタンパク質は、内因性GTPアーゼ活性の欠損及び/又はGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)による不活性化に対する耐性が原因で、GTP結合型の立体形状で蓄積する。構成的RASシグナル伝達は、GTP加水分解を妨げる突然変異によって媒介され、RASを恒久的に活性がある状態に固定する。さらに、RAS GTPアーゼは、その悪性形質転換活性に、ファルネシル化又はゲラニルゲラニル化の形での脂質翻訳後修飾を必要とする。3つのRAS種(HRAS、KRAS、NRAS)のうち、HRASは、ファルネシル化することができるが、ゲラニルゲラニル化することができないという点で独特である。結果として、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)は、HRASのファルネシル化を阻害し、その形質膜との会合を妨害し、下流のシグナル伝達経路を阻害し、腫瘍成長を阻害することが示されている(Berndtらの文献、Nature Reviews Cancer 11:775-91により論評されている)。Q22K HRAS突然変異は、生殖系列のHRAS突然変異によって引き起こされる発生及び腫瘍易罹患性障害である、コステロ症候群で認められており(Sheffieldらの文献、Ped Dev Pathology 18, 237-244, 2015)、腫瘍性形質転換を促進するその能力は立証されていないが、この突然変異はRASタンパク質にわたる極めて保存された領域内にあり、Q22K KRASはドライバー突然変異として立証されている(Tsukudaらの文献、Biochem Biophys Res Commun 2000; 278:653-58)。
ヒトHRASの例示的なアミノ酸配列及び対応するコード核酸配列(GENBANK: CR536579.1 GI:49168641)は、以下に提供されている:
Rasアイソフォームはファルネシル化される。ファルネシルトランスフェラーゼ(FTアーゼ)は、Rasタンパク質の翻訳後修飾において重要な役割を有する。Ras機能を妨害する方法は、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(「FTI」)によるFTアーゼ(15-炭素イソプレニル基をRasタンパク質にカップリングさせる酵素)の阻害である。FTIは、Rasを含む広範な標的タンパク質のファルネシル化を阻害する生物活性抗癌剤のクラスである。FTIは、FTアーゼの阻害を通じてRas活性化を遮断し、最終的に、細胞成長の停止をもたらす。したがって、FTIは癌の治療における効果的な治療剤であろうと予測された。
全ヒト癌の30パーセントが腫瘍形成によって活性化されたRasを発現する。全ヒト癌の30%で見られる突然変異型Rasの高い発生率のために、この経路は抗癌剤開発の魅力的な標的となっている。当初、構成的に活性のあるRAS経路をもたらすRas突然変異がFTIに対する患者応答のバイオマーカーとしての役割を果たし得ると予測されたが、これは、FTIがRAS形質転換細胞を阻害し得るという前臨床的証拠に基づくものであった(Raponiらの文献、Blood 111:2589-96(2008))。
本明細書で使用される場合、「HRAS突然変異」という用語は、HRAS遺伝子又はHRASタンパク質の活性化突然変異を指す。HRAS突然変異は、対応するHRASタンパク質の活性化をもたらすHRAS遺伝子のDNA配列中の遺伝子変化、又はその活性化をもたらすHRASタンパク質のアミノ酸配列の変化のいずれかを指すこともある。したがって、本明細書で使用される「HRAS突然変異」という用語は、HRASタンパク質の活性化をもたらさないHRAS遺伝子の変化も、その活性化をもたらさないHRASタンパク質配列の変化も含まない。したがって、本明細書で使用される「HRAS突然変異」を有さない試料又は対象は、HRASタンパク質の活性に影響を及ぼさないHRAS遺伝子の突然変異もしくはHRASタンパク質の活性を障害する突然変異を依然として有するか、又はその活性に影響を及ぼさないHRASタンパク質の突然変異もしくはその活性を障害する突然変異を依然として有することができる。試料又は対象は、複数コピーのHRAS遺伝子を有することができる。試料又は対象は、野生型HRASタンパク質と突然変異体HRASタンパク質の両方を有することもできる。本明細書で使用される場合、HRAS突然変異を有する試料又は対象は、1コピーの野生型HRAS遺伝子及び/又は野生型HRASタンパク質を有することもできる。本明細書で使用される「野生型HRASを有する」と決定される試料又は対象は、野生型HRAS遺伝子及び野生型HRASタンパク質のみを有し、HRAS突然変異を有さない試料又は対象を指す。
いくつかの実施態様において、HRAS突然変異としては、G12、G13、Q61、Q22、K117、及びA146からなる群から選択されるコドンにおける少なくとも1つの突然変異を挙げることができる。
(2.癌治療のためのファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤)
(2.1.ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤)
本明細書に提供されるのは、選択された癌患者又は選択された癌患者の集団でFTIを用いて頭頸部扁平上皮細胞癌を治療する方法である。代表的なFTIは、大雑把に2つのクラスに属する(Shenらの文献、Drug Disc. Today 20:2(2015))。第一のクラスのFTIは、ファルネシルジホスフェート(FPP)の基本的な骨格を有する。例えば、マロン酸基を有するFPP類似体(Ta)は、FPPと競合するFTIであると報告された(Duez, S.らの文献、Bioorg. Med. Chem. 18:543-556(2010))。さらに、酸性置換基とペプチジル鎖によって連結されたイミダゾール含有誘導体も二基質FTIとして合成された。この設計された二基質阻害剤はFPPよりも良好な親和性を有する。第二のクラスのFTIは、ペプチドミメティックス分子であり、これは、2つのグループ、すなわち、チオールFTIと非チオールFTIに分けることができる。チオールFTI、例えば、L-739749に関して、選択的ペプチドミメティックスFTIは、全身毒性を伴うことなく、ヌードマウスで強力な抗腫瘍活性を示す(Kohl, N.E.らの文献、PNAS 91:9141-9145(1994))。さらに、トリペプチジルFTIなどの、種々のチオール阻害剤も開発された(Lee, H-Y.らの文献、Bioorg. Med. Chem. Lett. 12:1599-1602(2002))。
非チオールFTIについては、それゆえ、結合部位で亜鉛イオンと接触するチオール基の代わりにするために、ヘテロ環が広く使用された。薬理活性基の構造に従って、非チオールFTIを3つのクラスに分けることができる。第一のクラスは、様々な単環式環を特徴とするものであり、これには、固形腫瘍及びリンパ腫に関する第I相臨床試験のFTIであるL-778123などがある。L-778123は結合して、CAAXペプチド部位に入り、ファルネシルトランスフェラーゼのCAAX基質と競合する。第二のクラスは、第III相試験のチピファルニブ及び第III相試験のBMS-214662に代表されるものであり、これらは、多様な単環式環及び二環式環から構成される(Harousseauらの文献、Blood 114:1166-1173(2009))。第三のクラスの代表的な阻害剤は、Ras依存的及びRas非依存的悪性腫瘍において活性があるロナファルニブであり、これは、癌腫、白血病、及び骨髄異形成症候群を治療するための第III相臨床試験に入った。ロナファルニブは、2つの6員芳香環と縮合した中心の7員環を含む、3環コアを有するFTIである。
したがって、本明細書に記載されるFTIは、数多くの形態を取ることができるが、癌及び増殖性疾患に関係があるとされるタンパク質のファルネシル化を妨害又は軽減するという不可欠な阻害機能を共有する。
多くのFTIが本開示の範囲内にあり、これには、その開示が引用により本明細書中に完全に組み込まれる、米国特許第5,976,851号;第5,972,984号;第5,972,966号;第5,968,965号;第5,968,952号;第6,187,786号;第6,169,096号;第6,037,350号;第6,177,432号;第5,965,578号;第5,965,539号;第5,958,939号;第5,939,557号;第5,936,097号;第5,891,889号;第5,889,053号;第5,880,140号;第5,872,135号;第5,869,682号;第5,861,529号;第5,859,015号;第5,856,439号;第5,856,326号;第5,852,010号;第5,843,941号;第5,807,852号;第5,780,492号;第5,773,455号;第5,767,274号;第5,756,528号;第5,750,567号;第5,721,236号;第5,700,806号;第5,661,161号;第5,602,098号;第5,585,359号;第5,578,629号;第5,534,537号;第5,532,359号;第5,523,430号;第5,504,212号;第5,491,164号;第5,420,245号;及び第5,238,922号に記載されているものが含まれる。
本開示の範囲内のFTIには、その開示が引用により本明細書中に完全に組み込まれる、Thomasらの文献、Biologics 1: 415-424(2007); Shenらの文献、Drug Disc. Today 20:2(2015); Appelsらの文献、The Oncologist10:565-578(2005)に記載されているものも含まれる。
いくつかの実施態様において、FTIには、WO-98/28303号に記載されている、アルグラビン(すなわち、1(R)-10-エポキシ-5(S),7(S)-グアイア-3(4),11(13)-ジエン-6,12-オリド(NuOncology Labs); WO-99/45912号に記載されている、ペリリルアルコール(Wisconsin Genetics);米国特許第5874442号に記載されている、SCH-66336(ロナファルニブ)、すなわち、(+)-(R)-4-[2-[4-(3,10-ジブロモ-8-クロロ-5,6-ジヒドロ-11H-ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2-b]ピリジン-11-イル)ピペリジン-1-イル]-2-オキソエチル]ピペリジン-l-カルボキサミド(Schering); WO-00/01691号に記載されている、L778123、すなわち、1-(3-クロロフェニル)-4-[1-(4-シアノベンジル)-5-イミダゾリルメチル]-2-ピペラジノン(Merck); WO-94/10138号に記載されている、L739749、すなわち、化合物2(S)-[2(S)-[2(R)-アミノ-3-メルカプト]プロピルアミノ-3(S)-メチル]-ペンチルオキシ-3-フェニルプロピオニル-メチオニンスルホン(Merck); FTI-277、すなわち、メチル{N-[2-フェニル-4-N [2(R)-アミノ-3-メカプトプロピル(mecaptopropyl)アミノ]ベンゾイル]}-メチオネート(Calbiochem); L744832、すなわち、2S)-2-[[(2S)-2-[(2S,3S)-2-[(2R)-2-アミノ-3-メルカプトプロピル]アミノ]-3-メチルペンチル]オキシ]-1-オキソ-3-フェニルプロピル]アミノ]-4-(メチルスルホニル)-ブタン酸 1-メチルエチルエステル(Biomol International L.P.); CP-609,754(Pfizer)、すなわち、(R)-6-[(4-クロロフェニル)-ヒドロキシル-(1-メチル-1-H-イミダゾール-5-イル)-メチル]-4-(3-エチニルフェニル)-1-メチル-2-(1H)-キノンリノン(quinonlinone)及び(R)-6-[(4-クロロフェニル)-ヒドロキシル-(3-メチル-3-H-イミダゾール-4-イル)-メチル]-4-(3-エチニルフェニル)-1-メチル-2-(1H)-キノリノン; R208176(Johnson & Johnson)、すなわち、JNJ-17305457、又は(R)-1-(4-クロロフェニル)-1-[5-(3-クロロフェニル)テトラゾロ[1,5-a]キナゾリン-7-イル]-1-(1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)メタンアミン; AZD3409(AstraZeneca)、すなわち、(S)-イソプロピル 2-(2-(4-フルオロフェネチル)-5-((((2S,4S)-4-(ニコチノイルチオ)ピロリジン-2-イル)メチル)アミノ)ベンズアミド)-4-(メチルチオ)ブタノエート; WO 97/30992号に記載されている、BMS 214662(Bristol-Myers Squibb)、すなわち、(R)-2,3,4,5-テトラヒドロ-1-(1H-イミダゾール-4-イルメチル)-3-(フェニルメチル)-4-(2-チエニルスルホニル)-1H-1,4-ベンゾジアザピン-7-カルボニトリル(Bristol Myers Squibb)、並びにWO-00/12498号及びWO-00/12499号に記載されているPfizer社の化合物(A)及び(B)が含まれる。
いくつかの実施態様において、FTIは、非ペプチド性の、いわゆる、「低分子」治療薬であり、例えば、以下のものを含む、キノリン又はキノリン誘導体である。
7-(3-クロロフェニル)-9-[(4-クロロフェニル)-1H-イミダゾール-1-イルメチル]-2,3-ジヒドロ-o-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-5-オン、
7-(3-クロロフェニル)-9-[(4-クロロフェニル)-1H-イミダゾール-1-イルメチル]-1,2-ジヒドロ-o-4H-ピロロ[3,2,1-ij]キノリン-4-オン、
8-[アミノ(4-クロロフェニル)(1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル),メチル]-6-(3-クロロフェニル)-1,2-ジヒドロ-4H-ピロロ[3,2,1-ij]キノリン-4-オン、及び
8-[アミノ(4-クロロフェニル)(1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)メチル]-6-(3-クロロフェニル)-2,3-ジヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-5-オン。
チピファルニブは非ペプチドミメティックスFTIである(Thomasらの文献、Biologics 1: 415-424(2007))。これは、化合物ライブラリースクリーニングから同定されたキノロンリードの最適化によって得られた4,6-二置換-1-メチルキノリン-2-オン誘導体((B)-6-[アミノ(4-クロロフェニル)(1-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)メチル]-4-(3-クロロフェニル)-1-メチル-2(1H)-キノリノン))である。チピファルニブは、FTアーゼのCAAXペプチド結合部位を競合的に阻害し、非常に強力でかつ極めて選択的なファルネシル化の阻害剤である。チピファルニブは、単剤療法としての管理しやすい安全性プロファイルを有し、かつヒトでかなり良好な忍容性を示す。
チピファルニブは、1-メチルイミダゾールのアニオンと6-(4-クロロベンゾイル)キノロン誘導体との縮合、その後の脱水によって合成される。キノロン中間体は、N-フェニル-3-(3-クロロフェニル)-2-プロペンアミドの環化と、アシル化と、酸化と、N-メチル化とにより、4工程で調製された。チピファルニブは、インビトロでのFTアーゼの強力な阻害剤であり、かつ種々の動物モデルで経***性がある。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、FTIもしくはFTIを有する医薬組成物を用いて対象の癌を治療するか又はFTI治療のために癌患者を選択する方法である。本明細書に提供される医薬組成物は、FTIの治療有効量及び医薬として許容し得る担体、希釈剤、又は賦形剤を含む。いくつかの実施態様において、FTIは、チピファルニブ;アルグラビン;ペリリルアルコール;ロナファルニブ(SCH-66336); L778123; L739749; FTI-277; L744832; R208176; BMS 214662; AZD3409;又はCP-609,754である。いくつかの実施態様において、FTIはチピファルニブである。
(2.2.製剤)
FTIは、好適な医薬調製物、例えば、経口投与用の液剤、懸濁剤、錠剤、分散錠、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤、もしくはエリキシル剤、又は眼科的投与もしくは非経口投与用の滅菌液剤もしくは懸濁剤、並びに経皮パッチ調製物及び乾燥粉末吸入剤へと製剤化することができる。通常、FTIは、当技術分野で周知の手法及び手順を用いて、医薬組成物へと製剤化される(例えば、Anselの文献、医薬剤形入門(Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms)、第7版、1999を参照)。
組成物中で、有効濃度のFTI及び医薬として許容し得る塩は、好適な医薬担体又はビヒクルと混合される。ある実施態様において、組成物中のFTIの濃度は、投与時に、血液癌及び固形腫瘍を含む癌の症状のうちの1つもしくは複数及び/又は該癌の進行を治療、予防、又は改善する量の送達に有効である。
組成物は、単一投薬量投与用に製剤化される。組成物を製剤化するために、FTIの重量画分を、選択されたビヒクル中で、治療される状態が軽減又は改善されるような有効濃度で溶解させ、懸濁させ、分散させ、又は別の形で混合する。本明細書に提供されるFTIの投与に好適な医薬担体又はビヒクルとしては、特定の投与様式に好適であることが当業者に知られている任意のそのような担体が挙げられる。
さらに、FTIは、組成物中の唯一の医薬活性成分として製剤化することができるか、又は他の活性成分と組み合わせることができる。腫瘍標的化リポソームなどの組織標的化リポソームを含む、リポソーム懸濁液も、医薬として許容し得る担体として好適であり得る。これらは、当業者に公知の方法に従って調製することができる。例えば、リポソーム製剤は、当技術分野で公知の通りに調製することができる。簡潔に説明すると、多層膜小胞(MLV)などのリポソームは、卵ホスファチジルコリン及び脳ホスファチジルセリン(7:3のモル比)をフラスコの内部でしっかりと乾燥させることにより形成させることができる。二価陽イオンを欠くリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の本明細書に提供されるFTIの溶液を添加し、脂質膜が分散するまでフラスコを振盪させる。得られる小胞を洗浄して、封入されていない化合物を除去し、遠心分離によりペレット化し、その後、PBSに再懸濁させる。
FTIは、治療される患者に対する望ましくない副作用がなく、治療的に有用な効果を発揮するのに十分な量で、医薬として許容し得る担体中に含まれる。治療的有効濃度は、本明細書に記載されるインビトロ及びインビボ系で化合物を試験することにより実験的に決定し、その後、それからヒトに対する投薬量を推定することができる。
医薬組成物中のFTIの濃度は、FTIの吸収、組織分布、不活化、及び***速度、FTIの物理化学的特性、投薬スケジュール、並びに投与される量、並びに当業者に公知の他の因子によって決まる。例えば、送達される量は、造血系癌及び固形腫瘍を含む癌の症状のうちの1つ又は複数を改善するのに十分なものである。
ある実施態様において、治療的有効投薬量は、約0.1ng/mlから約50〜100μg/mlの血清濃度の活性成分を生じさせるべきである。一実施態様において、医薬組成物は、1日に体重1キログラム当たり約0.001mg〜約2000mgの投薬量の化合物を提供する。医薬投薬単位形態は、投薬単位形態当たり、約1mg〜約1000mg、ある実施態様において、約10〜約500mgの必須活性成分又は必須成分の組合せを提供するように調製される。
FTIは、一度に投与されてもよく、又は時間間隔を置いて投与されるいくつかのより小さい用量に分割されてもよい。正確な投薬量及び治療期間は、治療されている疾患の関数であり、公知の試験プロトコルを用いて実験的に、又はインビボもしくはインビトロの試験データからの推定によって決定することができることが理解される。濃度及び投薬量値は、緩和されるべき状態の重症度によっても異なり得ることに留意すべきである。任意の特定の対象について、具体的な投薬レジメンが個々の必要性及び組成物の投与を管理又は監督する人の専門的な判断に従って経時的に調整されるべきであること、並びに本明細書に示される濃度範囲が例示的なものであるに過ぎず、特許請求された組成物の範囲又は実施を限定することを意図するものではないことがさらに理解されるべきである。
したがって、本明細書に記載される化合物又はその医薬として許容し得る塩の1つ又は複数の有効濃度又は有効量を、全身、局所、又は局部投与用の好適な医薬担体又はビヒクルと混合して、医薬組成物を形成させる。化合物は、1以上の症状を改善するために、又はそれを治療するか、進行を遅延させるか、もしくは予防するために有効な量で含まれる。組成物中の活性化合物の濃度は、活性化合物の吸収、組織分布、不活化、***速度、投薬スケジュール、投与される量、特定の配合、及び当業者に公知の他の因子によって決まる。
組成物は、限定されないが、経口、非経口、直腸、局所、及び局部を含む、好適な経路によって投与されることが意図される。経口投与のために、カプセル剤、錠剤、懸濁剤、及び液剤を製剤化することができる。組成物は、液体、半液体、又は固体形態のものであり、各々の投与経路に好適な形で製剤化される。
非経口、皮内、皮下、又は局所用途のために使用される液剤又は懸濁剤は、以下の成分:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジメチルアセトアミド、又は他の合成溶媒;抗微生物剤、例えば、ベンジルアルコール及びメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸及び重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、及びリン酸塩;並びに張性の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロースのいずれかを含むことができる。非経口調製物は、アンプル、ペン、使い捨てシリンジ、又はガラス、プラスチック、もしくは他の好適な材料でできた単回もしくは複数回用量バイアルに封入することができる。
FTIが不十分な溶解性を示す場合、化合物を溶解させる方法を使用することができる。そのような方法は当業者に公知であり、これには、限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの共溶媒の使用、TWEEN(登録商標)などの界面活性剤の使用、又は水性重炭酸ナトリウムへの溶解が含まれる。
化合物を混合又は添加したとき、得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョンなどであることができる。得られる混合物の形態は、意図される投与様式及び選択される担体又はビヒクルへの化合物の溶解度を含む、いくつかの因子によって決まる。有効濃度は、治療される疾患、障害、又は疾病の症状を改善するのに十分なものであり、実験的に決定することができる。
好適な分量の化合物又はその医薬として許容し得る塩を含む、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、滅菌非経口液剤又は懸濁剤、及び経口液剤又は懸濁剤、並びに油水乳剤などの単位剤形でヒト及び動物に投与するための医薬組成物が提供される。医薬として治療活性のある化合物及びその塩を製剤化し、単位剤形又は複数剤形で投与する。本明細書で使用される単位用量形態は、ヒト及び動物対象に好適で、かつ当技術分野で知られているように個別包装された、物理的に分離した単位を指す。各々の単位用量は、所要の医薬担体、ビヒクル、又は希釈剤と関連した、所望の治療効果をもたらすのに十分な所定量の治療活性化合物を含む。単位用量形態の例としては、アンプル及びシリンジ及び個別包装された錠剤又はカプセル剤が挙げられる。単位用量形態は、その分数又は倍数単位で投与されてもよい。複数用量形態は、分離された単位用量形態で投与されるように単一の容器中に包装された複数の同一の単位剤形である。複数用量形態の例としては、バイアル、錠剤もしくはカプセル剤の瓶、又はパイント瓶もしくはガロン瓶が挙げられる。したがって、複数用量形態は、包装中で分離されていない複数の単位用量である。
持続放出調製物を調製することもできる。持続放出調製物の好適な例としては、本明細書に提供される化合物を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルム、又はマイクロカプセルの形態のものである。持続放出マトリックスの例としては、イオン泳動パッチ、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-ビニルアセテート、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成された注射用マイクロスフェア)、並びにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-ビニルアセテート及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは、100日を超える間の分子の放出を可能にするが、特定のハイドロゲルは、より短い期間、タンパク質を放出する。封入された化合物が長時間体内に留まる場合、それらは、37℃で水分に曝される結果として、変性又は凝集し、生物学的活性の喪失、及び場合によっては、その構造の変化が生じることがある。関与する作用機構に応じて、安定化のための合理的戦略を考案することができる。例えば、凝集機構が、チオ-ジスルフィド交換を介した分子間S-S結合形成であることが明らかになった場合、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥させること、水分含量を制御すること、適当な添加剤を使用すること、及び特定のポリマーマトリックス組成物を開発することにより達成することができる。
0.005%〜100%の範囲の活性成分を含み、残りは無毒な担体から構成される剤形又は組成物を調製してもよい。経口投与のために、医薬として許容し得る無毒な組成物は、例えば、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム、又はサッカリンナトリウムなどの通常利用される賦形剤のいずれかの組込みによって形成される。そのような組成物としては、液剤、懸濁剤、錠剤、カプセル剤、散剤、及び持続放出製剤、例えば、限定されないが、インプラント及びマイクロカプセル化送達系、並びに生体分解性、生体適合性ポリマー、例えば、コラーゲン、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などが挙げられる。これらの組成物の調製方法は当業者に公知である。企図される組成物は、約0.001%〜100%の活性成分、ある実施態様において、約0.1〜85%又は約75〜95%を含むことができる。
FTI又は医薬として許容し得る塩は、化合物を体内からの迅速な排除から保護する担体、例えば、時限放出製剤又はコーティングを用いて調製することができる。
組成物は、所望の特性の組合せを得るために、他の活性化合物を含むことができる。本明細書に提供される化合物、又は本明細書に記載されるその医薬として許容し得る塩は、上で言及されている疾患又は病状、例えば、酸化ストレスに関連する疾患のうちの1つ又は複数を治療するのに有用となるように、一般技術分野で公知の別の薬理物質と一緒に投与することもできる。
本明細書に提供されるラクトース非含有組成物は、当技術分野で周知でありかつ例えば、米国薬局方(USP) SP(XXI)/NF(XVI)に記載されている賦形剤を含むことができる。一般に、ラクトース非含有組成物は、活性成分、結合剤/充填剤、及び滑沢剤を、医薬として適合性がありかつ医薬として許容し得る量で含む。例示的なラクトース非含有剤形は、活性成分、微結晶性セルロース、アルファ化デンプン、及びステアリン酸マグネシウムを含む。
さらに包含されるのは、本明細書に提供される化合物を含む無水医薬組成物及び剤形である。例えば、水(例えば、5%)の添加は、有効期間又は経時的な製剤の安定性などの特徴を決定するために長期保存をシミュレートする手段として医薬分野で広く許容されている。例えば、Jens T. Carstensenの文献、薬物安定性:原理及び実践(Drug Stability: Principles & Practice)、第2版、Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80を参照されたい。実際、水及び熱は、一部の化合物の分解を加速する。したがって、製剤の製造、取扱い、包装、保存、輸送、及び使用時に、水分及び/又は湿気に曝されることが多いので、製剤に対する水の影響は極めて重大であり得る。
本明細書に提供される無水医薬組成物及び剤形は、無水成分又は低水分含有成分及び低水分条件又は低湿度条件を用いて調製することができる。製造、包装、及び/又は保存時に水分及び/又は湿気との相当な接触が予想される場合、ラクトースと第一級又は第二級アミンを含む少なくとも1つの活性成分とを含む医薬組成物及び剤形は無水である。
無水医薬組成物は、その無水の性質が維持されるように調製及び保存されるべきである。したがって、無水組成物は、それを好適な調剤キットに含めることができるように、水への曝露を防ぐことが知られている材料を用いて包装される。好適な包装の例としては、密閉されたホイル、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられるが、これらに限定されない。
経口医薬剤形は、固体、ゲル、又は液体のいずれかである。固体剤形は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、及びバルク粉末である。経口錠剤のタイプとしては、圧縮チュアブルロゼンジ剤及び圧縮チュアブル錠が挙げられ、これらは、腸溶性コーティングされていても、糖コーティングされていても、又はフィルムコーティングされていてもよい。カプセル剤は、硬質又は軟質のゼラチンカプセル剤であることができ、一方、顆粒剤及び散剤は、当業者に公知の他の成分と組み合わせた非発泡性又は発泡性形態で提供することができる。
ある実施態様において、製剤は、固体剤形、例えば、カプセル剤又は錠剤である。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分:結合剤;希釈剤;崩壊剤;滑沢剤;流動促進剤;甘味剤;及び香味剤のいずれか、又は同様の性質の化合物を含むことができる。
結合剤の例としては、微結晶性セルロース、トラガカントゴム、グルコース溶液、アラビアゴム粘液、ゼラチン溶液、スクロース、及びデンプン糊が挙げられる。滑沢剤としては、タルク、デンプン、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウム、石松子、及びステアリン酸が挙げられる。希釈剤としては、例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、カオリン、塩、マンニトール、及びリン酸二カルシウムが挙げられる。流動促進剤としては、コロイド状二酸化ケイ素が挙げられるが、これに限定されない。崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、ベントナイト、メチルセルロース、寒天、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。着色剤としては、例えば、認可認証された水溶性FD及びC色素のいずれか、これらの混合物;並びにアルミナ水和物に懸濁された水不溶性FD及びC色素が挙げられる。甘味剤としては、スクロース、ラクトース、マンニトール、及び人工甘味剤、例えば、サッカリン、並びに任意の数の噴霧乾燥香料が挙げられる。香味剤としては、植物、例えば、果実から抽出される天然香料、並びに心地良い感覚を生じさせる化合物、例えば、限定されないが、ペパーミント及びサリチル酸メチルの合成配合物が挙げられる。湿潤剤としては、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリル酸ジエチレングリコール、及びポリオキシエチレンラウラルエーテル(polyoxyethylene laural ether)が挙げられる。催吐性コーティングとしては、脂肪酸、脂肪、ワックス、シェラック、アンモニア化シェラック、及び酢酸フタル酸セルロースが挙げられる。フィルムコーティング剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、及び酢酸フタル酸セルロースが挙げられる。
投薬単位形態がカプセル剤である場合、それは、上記のタイプの材料に加えて、液体担体、例えば、脂肪油を含むことができる。さらに、投薬単位形態は、投薬単位の物理的形態を修飾する様々な他の材料、例えば、糖及び他の腸溶剤のコーティングを含むことができる。化合物は、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハース剤、スプリンクル剤、チューインガム剤などの成分として投与することもできる。シロップ剤は、活性化合物に加えて、甘味剤としてのスクロース、並びに特定の防腐剤、色素及び着色料、並びに香料を含むことができる。
錠剤中に含まれる医薬として許容し得る担体は、結合剤、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、及び湿潤剤である。腸溶性コート錠は、腸溶性コーティングが理由で、胃酸の作用に抵抗し、中性又はアルカリ性の腸の中で溶解又は崩壊する。糖衣錠は、医薬として許容し得る物質の様々な層が塗布されている圧縮錠である。フィルムコート錠は、ポリマー又は他の好適なコーティングでコーティングされている圧縮錠である。多重圧縮錠は、先に言及された医薬として許容し得る物質を利用して複数回の圧縮サイクルによって製造される圧縮錠である。着色剤を上記の剤形で使用することもできる。香味剤及び甘味剤は、圧縮錠、糖衣錠、多重圧縮錠、及びチュアブル錠で使用される。香味剤及び甘味剤は、チュアブル錠及びロゼンジ剤の形成において特に有用である。
液体経口剤形としては、水性液剤、乳剤、懸濁剤、非発泡性顆粒から再構成される液剤及び/又は懸濁剤、並びに発泡性顆粒から再構成される発泡性調製物が挙げられる。水性液剤としては、例えば、エリキシル剤及びシロップ剤が挙げられる。乳剤は、水中油型又は油中水型のいずれかである。
エリキシル剤は、透明で、甘い、水アルコール性調製物である。エリキシル剤で使用される医薬として許容し得る担体としては、溶媒が挙げられる。シロップ剤は、糖、例えば、スクロースの濃縮水溶液であり、防腐剤を含むことができる。乳剤は、一方の液体が、もう一方の液体の全体に小球の形態で分散している2相系である。乳剤で使用される医薬として許容し得る担体は、非水性液、乳化剤、及び防腐剤である。懸濁剤では、医薬として許容し得る懸濁化剤及び防腐剤が使用される。液体経口剤形へと再構成されることになる、非発泡性顆粒中で使用される医薬として許容し得る物質としては、希釈剤、甘味料、及び湿潤剤が挙げられる。液体経口剤形へと再構成されることになる、発泡性顆粒で使用される医薬として許容し得る物質としては、有機酸及び二酸化炭素源が挙げられる。着色剤及び香味剤は、上記の剤形の全てで使用される。
溶媒としては、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール、及びシロップが挙げられる。防腐剤の例としては、グリセリン、メチルパラベン及びプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、並びにアルコールが挙げられる。乳剤で利用される非水性液の例としては、鉱油及び綿実油が挙げられる。乳化剤の例としては、ゼラチン、アラビアゴム、トラガカントゴム、ベントナイト、及び界面活性剤、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンが挙げられる。懸濁化剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカントゴム、ビーガム、及びアラビアゴムが挙げられる。希釈剤としては、ラクトース及びスクロースが挙げられる。甘味剤としては、スクロース、シロップ、グリセリン、及び人口甘味剤、例えば、サッカリンが挙げられる。湿潤剤としては、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ジエチレングリコール、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。有機酸としては、クエン酸及び酒石酸が挙げられる。二酸化炭素源としては、重炭酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムが挙げられる。着色剤としては、認可認証された水溶性FD及びC色素のいずれか、並びにこれらの混合物が挙げられる。香味剤としては、植物、例えば、果実から抽出される天然香料、及び心地良い味覚を生じさせる化合物の合成配合物が挙げられる。
固体剤形については、例えば、炭酸プロピレン、植物油、又はトリグリセリド中の液剤及び懸濁剤をゼラチンカプセルに封入する。そのような液剤、並びにその調製及び封入は、米国特許第4,328,245号;第4,409,239号;及び第4,410,545号に開示されている。液体剤形については、例えば、ポリエチレングリコール中の液剤を、投与のために測定しやすいように、十分な分量の医薬として許容し得る液体担体、例えば、水で希釈することができる。
或いは、液体又は半固体経口製剤は、活性化合物又は塩を、植物油、グリコール、トリグリセリド、プロピレングリコールエステル(例えば、炭酸プロピレン)、及び他のそのような担体に溶解又は分散させ、これらの液剤又は懸濁剤を硬質又は軟質ゼラチンカプセル殻に封入することにより調製することができる。他の有用な製剤としては、本明細書に提供される化合物と、限定されないが、1,2-ジメトキシメタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテル(ここで、350、550、及び750は、ポリエチレングリコールのおおよその平均分子量を指す)を含む、ジアルキル化されたモノアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールと、1以上の抗酸化剤、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、ケファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、チオジプロピオン酸及びそのエステル、並びにジチオカルバメートとを含むものが挙げられるが、これらに限定されない。
他の製剤としては、医薬として許容し得るアセタールを含む、水性アルコール溶液が挙げられるが、これらに限定されない。これらの製剤で使用されるアルコールは、1以上の水酸基を有する任意の医薬として許容し得る水混和性溶媒であり、これには、プロピレングリコール及びエタノールが含まれるが、これらに限定されない。アセタールとしては、低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール、例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタールが挙げられるが、これらに限定されない。
全ての実施態様において、錠剤及びカプセル剤製剤は、活性成分の溶解を修飾し又は持続させるために、当業者によって知られているようにコーティングすることができる。したがって、例えば、それらは、従来の腸内消化性コーティング剤、例えば、サリチル酸フェニル、ワックス、及び酢酸フタル酸セルロースでコーティングすることができる。
一般に、皮下、筋肉内、又は静脈内のいずれかへの注射を特徴とする、非経口投与も本明細書に提供される。注射剤は、液体の液剤もしくは懸濁剤、注射前の液体への溶解もしくは懸濁に好適な固体形態としてか、又は乳剤としてかのいずれかの、従来の形態で調製することができる。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、又はエタノールである。さらに、望ましい場合、投与される医薬組成物は、微量の無毒な補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解促進剤、並びに例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、及びシクロデキストリンなどの、他のそのような薬剤を含むこともできる。一定レベルの投薬量が維持されるような、低速放出系又は持続放出系の埋め込みも本明細書において企図される。簡潔に説明すると、本明細書に提供される化合物は、固体内部マトリックス、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化又は非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、親水性ポリマー、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルのハイドロゲル、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、及び架橋部分加水分解ポリビニルアセテート中に分散しており、この固体内部マトリックスは、体液に不溶性である外部高分子膜、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルと塩化ビニリデンとエチレンとプロピレンとの塩化ビニルコポリマー、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、並びにエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーによって囲まれている。化合物は、放出速度制御段階で外部高分子膜から拡散する。そのような非経口組成物に含まれる活性化合物の割合は、その具体的な性質、並びに化合物の活性及び対象の必要性に大きく左右される。
組成物の非経口投与としては、静脈内、皮下、及び筋肉内投与が挙げられる。非経口投与用の調製物としては、すぐに注射可能な滅菌液剤、皮下注射錠を含む、使用直前に溶媒とすぐに組み合わせることができる滅菌乾燥可溶性生成物、例えば、凍結乾燥粉末、すぐに注射可能な滅菌懸濁剤、使用直前にビヒクルとすぐに組み合わせることができる滅菌乾燥不溶性生成物、及び滅菌乳剤が挙げられる。液剤は、水性又は非水性のいずれかであることができる。
静脈内投与される場合、好適な担体としては、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、並びに増粘剤及び可溶化剤、例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール、並びにこれらの混合物を含む溶液が挙げられる。
非経口調製物で使用される医薬として許容し得る担体としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗微生物剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局部麻酔薬、懸濁化剤及び分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤又はキレート剤、並びに他の医薬として許容し得る物質が挙げられる。
水性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース、及び乳酸加リンゲル注射液が挙げられる。非水性非経口ビヒクルとしては、植物起源の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、及びピーナッツ油が挙げられる。静菌濃度又は静真菌濃度の抗微生物剤を複数用量容器中に包装された非経口調製物に添加しなければならず、該抗微生物剤としては、フェノール又はクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、pヒドロキシ安息香酸メチルエステル及びpヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、並びに塩化ベンゼトニウムが挙げられる。等張剤としては、塩化ナトリウム及びデキストロースが挙げられる。緩衝剤としては、リン酸塩及びクエン酸塩が挙げられる。抗酸化剤としては、重硫酸ナトリウムが含まれる。局部麻酔薬としては、塩酸プロカインが挙げられる。懸濁化剤及び分散剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。乳化剤としては、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標) 80)が挙げられる。金属イオンの封鎖剤又はキレート剤としては、EDTAが挙げられる。医薬担体としては、水混和性ビヒクル用のエチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコール、並びにpH調整用の水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、又は乳酸も挙げられる。
FTIの濃度は、注射によって所望の薬理作用を生じさせる有効量が提供されるように調整される。当技術分野で公知であるように、正確な用量は、患者又は動物の年齢、重量、及び状態によって決まる。単位用量非経口調製物は、アンプル、バイアル、又は針付きシリンジに充填される。非経口投与用の調製物は全て、当技術分野で知られ、かつ実施されているように、滅菌されなければならない。
実例として、FTIを含む滅菌水性液剤の静脈内又は動脈内注入は、効果的な投与様式である。別の実施態様は、所望の薬理作用を生じさせるために必要に応じて注射される活性材料を含む滅菌された水性又は油性の液剤又は懸濁剤である。
注射剤は、局部及び全身投与用に設計される。通常、治療的有効投薬量は、治療される組織に対して、少なくとも約0.1%w/wから最大約90%w/w、又はそれを上回る濃度、例えば、1%w/wを上回る濃度の活性化合物を含むように製剤化される。活性成分は、一度に投与されてもよく、又は時間間隔を置いて投与されるいくつかのより小さい用量に分割されてもよい。正確な投薬量及び治療期間は、治療されている組織の関数であり、公知の試験プロトコルを用いて実験的に、又はインビボもしくはインビトロの試験データからの推定によって決定することができることが理解される。濃度及び投薬量値は、治療される個体の年齢によっても異なり得ることに留意すべきである。任意の特定の対象について、具体的な投薬レジメンが個々の必要性及び製剤の投与を管理又は監督する人の専門的な判断に応じて経時的に調整されるべきであること、並びに本明細書に示される濃度範囲が例示的なものであるに過ぎず、特許請求された製剤の範囲又は実施を限定することを意図するものではないことがさらに理解されるべきである。
FTIは、微粉化形態もしくは他の好適な形態で懸濁させることができるか、又はより溶けやすい活性産物を産生するようにもしくはプロドラッグを産生するように誘導体化することができる。得られる混合物の形態は、意図される投与様式及び選択される担体又はビヒクルへの化合物の溶解度を含む、いくつかの因子によって決まる。有効濃度は、疾病の症状を改善するのに十分なものであり、実験的に決定することができる。
溶液、エマルジョン、及び他の混合物としての投与用に再構成することができる凍結乾燥粉末も本明細書で対象となる。これらを固体又はゲルとして再構成し、製剤化することもできる。
滅菌凍結乾燥粉末は、本明細書に提供されるFTI又はその医薬として許容し得る塩を好適な溶媒に溶解させることにより調製される。該溶媒は、粉末又は該粉末から調製される再構成溶液の安定性又は他の薬理学的要素を改善する賦形剤を含むことができる。使用し得る賦形剤としては、デキストロース、ソルビタール(sorbital)、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、又は他の好適な薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。該溶媒は、緩衝剤、例えば、クエン酸塩、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム、又は一実施態様において、約中性pHの、当業者に公知の他のそのような緩衝剤を含むこともできる。その後の溶液の滅菌濾過と、それに続く、当業者に公知の標準条件下での凍結乾燥によって、所望の製剤が提供される。通常、得られる溶液は、凍結乾燥用のバイアルに分注される。各々のバイアルは、単回投薬量(限定されないが、10〜1000mgもしくは100〜500mgを含む)又は複数回投薬量の化合物を含む。凍結乾燥粉末は、適当な条件下、例えば、約4℃〜室温で保存することができる。
この凍結乾燥粉末を注射用水で再構成することにより、非経口投与で使用するための製剤が提供される。再構成のために、滅菌水又は他の好適な担体1mL当たり、約1〜50mg、約5〜35mg、又は約9〜30mgの凍結乾燥粉末が添加される。正確な量は、選択される化合物によって決まる。そのような量は、実験的に決定することができる。
局所混合物は、局部及び全身投与について記載されている通りに調製される。得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョンなどであることができ、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、乳剤、液剤、エリキシル剤、ローション剤、懸濁剤、チンキ剤、ペースト剤、フォーム剤、エアロゾル剤、灌注剤、スプレー剤、坐剤、包帯剤、経皮パッチ剤、又は局所投与に好適な任意の他の製剤として製剤化される。
FTI又はFTIを有する医薬組成物は、例えば、吸入による、局所適用のためのエアロゾル剤として製剤化することができる(例えば、炎症性疾患、特に、喘息の治療に有用なステロイドの送達のためのエアロゾル剤を記載している米国特許第4,044,126号、第4,414,209号、及び第4,364,923号を参照)。気道への投与のためのこれらの製剤は、ネブライザー用のエアロゾル剤もしくは液剤の形態のもの、又は単独のもしくはラクトースなどの不活性担体と組み合わせた、吹送用の超微細粉末としてのものであることができる。そのような場合、製剤の粒子は、50ミクロン未満又は10ミクロン未満の直径を有する。
FTI又はFTIを有する医薬組成物は、局部又は局所適用のために、例えば、ゲル剤、クリーム剤、及びローション剤の形態での、皮膚及び粘膜への、例えば、眼内への局所適用のために、並びに眼への適用のために又は嚢内もしくは髄腔内適用のために製剤化することができる。局所投与は、経皮送達のために、さらには眼もしくは粘膜への投与のために、又は吸入療法のために企図される。単独の又は他の医薬として許容し得る賦形剤と組み合わせた活性化合物の点鼻液を投与することもできる。これらの液剤、特に、眼科的使用を意図するものは、適当な塩とともに、pH約5〜7の0.01%〜10%等張溶液として製剤化することができる。
他の投与経路、例えば、経皮パッチ、及び直腸投与も本明細書において企図される。例えば、直腸投与用の医薬剤形は、全身作用を目的とした直腸坐剤、カプセル剤、及び錠剤である。本明細書で使用される直腸坐剤は、直腸に挿入するための固形物を意味し、これは、体温で融解又は軟化して、1以上の薬理活性成分又は治療活性成分を放出する。直腸坐剤で利用される医薬として許容し得る物質は、基剤又はビヒクル、及び融点を上昇させる薬剤である。基剤の例としては、ココアバター(カカオ脂)、グリセリン、ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、及び脂肪酸のモノグリセリドとジグリセリドとトリグリセリドの適切な混合物が挙げられる。様々な基剤の組合せを使用することができる。坐剤の融点を上昇させる薬剤としては、鯨蝋及びワックスが挙げられる。直腸坐剤は、圧縮法によるか又は成形によるかのいずれかで調製することができる。直腸坐剤の例示的な重量は、約2〜3グラムである。直腸投与用の錠剤及びカプセル剤は、経口投与用の製剤の場合と同じ医薬として許容し得る物質を用いて、かつ経口投与用の製剤の場合と同じ方法によって製造される。
本明細書に提供されるFTI又はFTIを有する医薬組成物は、制御放出手段によるか、又は当業者に周知である送達装置によって投与することができる。例としては、その各々が引用により本明細書中に組み込まれる、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;及び第4,008,719号、第5,674,533号、第5,059,595号、第5,591,767号、第5,120,548号、第5,073,543号、第5,639,476号、第5,354,556号、第5,639,480号、第5,733,566号、第5,739,108号、第5,891,474号、第5,922,356号、第5,972,891号、第5,980,945号、第5,993,855号、第6,045,830号、第6,087,324号、第6,113,943号、第6,197,350号、第6,248,363号、第6,264,970号、第6,267,981号、第6,376,461号、第6,419,961号、第6,589,548号、第6,613,358号、第6,699,500、並びに第6,740,634号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。そのような剤形を用いて、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、マイクロスフェア、又はこれらの組合せを所望の放出プロファイルを提供するために様々な割合で用いて、FTIの低速又は制御放出を提供することができる。本明細書に記載されているものを含む、当業者に公知の好適な制御放出製剤は、本明細書に提供される活性成分とともに使用するために容易に選択することができる。
制御放出医薬製品は全て、その非制御対応物によって達成されるものよりも薬物療法を改善するという共通の目的を有する。一実施態様において、医学的処置における最適に設計された制御放出調製物の使用は、疾病を最小限の量の時間で治癒させ又は制御するために最小限の薬物物質が利用されることを特徴とする。ある実施態様において、制御放出製剤の利点としては、薬物の活性の延長、投薬頻度の低下、及び患者の投薬遵守の向上が挙げられる。さらに、制御放出製剤を用いて、作用の開始時間又は他の特徴、例えば、薬物の血液レベルに影響を及ぼすことができ、したがって、副作用(例えば、有害作用)の発生に影響を及ぼすことができる。
大部分の制御放出製剤は、所望の治療効果を適切に生じる量の薬物(活性成分)を最初に放出し、かつ長期間にわたってこのレベルの治療効果を維持するために他の量の薬物を徐々にかつ連続的に放出するように設計される。この一定レベルの薬物を体内で維持するために、薬物は、代謝され、体から排出されつつある薬物の量を補う速度で剤形から放出されなければならない。活性成分の制御放出は、限定されないが、pH、温度、酵素、水、又は他の生理的条件もしくは化合物を含む、様々な条件によって刺激することができる。
ある実施態様において、FTIは、静脈内注入、埋め込み可能な浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、又は他の投与様式を用いて投与することができる。一実施態様において、ポンプを使用することができる(Seftonの文献、CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201(1987); Buchwaldらの文献、Surgery 88:507(1980); Saudekらの文献、N. Engl. J. Med. 321:574(1989)を参照)。別の実施態様において、ポリマー材料を使用することができる。また別の実施態様において、制御放出系を治療標的の近くに配置することができ、すなわち、そのため、全身用量のごく一部しか必要としない(例えば、Goodsonの文献、制御放出の医療応用(Medical Applications of Controlled Release)、第2巻、115〜138ページ(1984)を参照)。
いくつかの実施態様において、制御放出装置は、不適切な免疫活性化の部位又は腫瘍の近くで対象に導入される。他の制御放出系は、Langerによる総説(Science 249:1527-1533(1990))で論じられている。Fは、固体内部マトリックス、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化又は非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、親水性ポリマー、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルのハイドロゲル、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール及び架橋部分加水分解ポリビニルアセテート中に分散させることができ、この固体内部マトリックスは、体液に不溶性である外部高分子膜、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルと塩化ビニリデンとエチレンとプロピレンとの塩化ビニルコポリマー、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、並びにエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマーによって囲まれている。その後、活性成分は、放出速度制御段階で、外部高分子膜から拡散する。そのような非経口組成物に含まれる活性成分の割合は、その具体的な性質、及び対象の必要性に大きく左右される。
FTI又はFTIの医薬組成物は、包装材料と、血液癌及び固形腫瘍を含む癌の1以上の症状又は進行の治療、予防、又は改善のために使用される本明細書に提供される化合物又はその医薬として許容し得る塩と、該化合物又はその医薬として許容し得る塩が血液癌及び固形腫瘍を含む癌の1以上の症状又は進行の治療、予防、又は改善のために使用されることを示すラベルとを含む製品として包装することができる。
本明細書に提供される製品は包装材料を含む。医薬製品を包装する際に使用される包装材料は当業者に周知である。例えば、米国特許第5,323,907号、第5,052,558号、及び第5,033,252号を参照されたい。医薬包装材料の例としては、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、ペン、ボトル、並びに選択される製剤並びに意図される投与及び治療様式に好適な任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に提供される化合物及び組成物の幅広い製剤が企図される。
(2.3.投薬量)
いくつかの実施態様において、FTIを有する医薬組成物の治療有効量は、経口又は非経口投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブを活性成分として有する医薬組成物は、単一用量としてもしくは複数の用量に分割されて、1日当たり1〜最大1500mg/kgの量で、又はより具体的には、1日当たり10〜1200mg/kgの量で、経口投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブを活性成分として有する医薬組成物は、1日当たり100mg/kg、1日当たり200mg/kg、1日当たり300mg/kg、1日当たり400mg/kg、1日当たり500mg/kg、1日当たり600mg/kg、1日当たり700mg/kg、1日当たり800mg/kg、1日当たり900mg/kg、1日当たり1000mg/kg、1日当たり1100mg/kg、又は1日当たり1200mg/kgの量で経口投与される。いくつかの実施態様において、FTIはチピファルニブである。
いくつかの実施態様において、FTIは、1日当たり200〜1500mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、1日当たり200〜1200mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり200mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり300mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり400mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり500mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり600mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり700mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり800mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり900mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり1000mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり1100mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり1200mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり1300mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日当たり1400mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIはチピファルニブである。
いくつかの実施態様において、FTIは200〜1400mg b.i.d.(すなわち、1日2回)の用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは300〜1200mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは300〜900mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは600mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは700mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは800mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは900mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1000mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1100mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1200mg b.i.d.の用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIはチピファルニブである。
当業者であれば理解しているように、投薬量は、利用される剤形、患者の状態及び感受性、投与経路、並びに他の因子によって異なる。正確な投薬量は、治療を必要とする対象に関連する因子を考慮して、施術者により決定されることになる。投薬量及び投与は、活性成分の十分なレベルを提供するように、又は所望の効果を維持するように調整される。考慮することができる因子としては、病態の重症度、対象の全般的な健康、対象の年齢、体重、及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の組合せ、反応感受性、並びに療法に対する忍容性/応答が挙げられる。治療サイクル中であれば、日用量を変化させることができる。いくつかの実施態様において、開始用量を治療サイクル内で漸減させることができる。いくつかの実施態様において、開始用量を治療サイクル内で漸増させることができる。最終用量は、用量制限毒性の発生及び他の因子によって決まり得る。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり300mgの開始用量で投与し、1日当たり400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、又は1200mgの最大用量に上昇させる。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり400mgの開始用量で投与し、1日当たり500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、又は1200mgの最大用量に上昇させる。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり500mgの開始用量で投与し、1日当たり600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、又は1200mgの最大用量に上昇させる。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり600mgの開始用量で投与し、1日当たり700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、又は1200mgの最大用量に上昇させる。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり700mgの開始用量で投与し、1日当たり800mg、900mg、1000mg、1100mg、又は1200mgの最大用量に上昇させる。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり800mgの開始用量で投与し、1日当たり900mg、1000mg、1100mg、又は1200mgの最大用量に上昇させる。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり900mgの開始用量で投与し、1日当たり1000mg、1100mg、又は1200mgの最大用量に上昇させる。用量上昇は、一度に又は段階的に行うことができる。例えば、1日当たりの600mg開始用量を、4日間かけて1日当たり100mg増加させることによるか、又は2日間かけて1日当たり200mg増加させることによるか、又は一度に400mg増加させることにより、1日当たり1000mgの最終用量に上昇させることができる。いくつかの実施態様において、FTIはチピファルニブである。
いくつかの実施態様において、FTIを比較的高い開始用量で投与し、患者応答及び他の因子に応じてより低い用量に漸減させる。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり1200mgの開始用量で投与し、1日当たり1100mg、1000mg、900mg、800mg、700mg、600mg、500mg、400mg、又は300mgの最終用量に低下させる。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり1100mgの開始用量で投与し、1日当たり1000mg、900mg、800mg、700mg、600mg、500mg、400mg、又は300mgの最終用量に低下させる。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり1000mgの開始用量で投与し、1日当たり900mg、800mg、700mg、600mg、500mg、400mg、又は300mgの最終用量に低下させる。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり900mgの開始用量で投与し、1日当たり800mg、700mg、600mg、500mg、400mg、又は300mgの最終用量に低下させる。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり800mgの開始用量で投与し、1日当たり700mg、600mg、500mg、400mg、又は300mgの最終用量に低下させる。いくつかの実施態様において、FTIを1日当たり600mgの開始用量で投与し、1日当たり500mg、400mg、又は300mgの最終用量に低下させる。用量低下は、一度に又は段階的に行うことができる。いくつかの実施態様において、FTIはチピファルニブである。例えば、1日当たり900mgの開始用量を、3日間かけて1日当たり100mg減少させることによるか、又は一度に300mg減少させることにより、1日当たり600mgの最終用量に低下させることができる。
治療サイクルは、様々な長さを有することができる。いくつかの実施態様において、治療サイクルは、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、又は12カ月であることができる。いくつかの実施態様において、治療サイクルは4週間である。治療サイクルは、間欠的なスケジュールを有することができる。いくつかの実施態様において、2週間の治療サイクルは、5日間の投与と、それに続く、9日間の休止を有することができる。いくつかの実施態様において、2週間の治療サイクルは、6日間の投与と、それに続く、8日間の休止を有することができる。いくつかの実施態様において、2週間の治療サイクルは、7日間の投与と、それに続く、7日間の休止を有することができる。いくつかの実施態様において、2週間の治療サイクルは、8日間の投与と、それに続く、6日間の休止を有することができる。いくつかの実施態様において、2週間の治療サイクルは、9日間の投与と、それに続く、5日間の休止を有することができる。
いくつかの実施態様において、FTIは、反復4週サイクルの4週間のうち3週間、毎日投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、反復4週サイクルの隔週で(1週間服用、1週間休止)、毎日投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、反復4週サイクルの4週間のうち3週間、300mg b.i.d.の用量で、経口投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、反復4週サイクルの4週間のうち3週間、600mg b.i.d.の用量で、経口投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、反復4週サイクルの隔週で(1週間服用、1週間休止)、900mg b.i.d.の用量で、経口投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、隔週で(反復28日サイクルの1〜7及び15〜21日目に)、1200mg b.i.d.の用量で、経口投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、反復28日サイクルの1〜5及び15〜19日目に、1200mg b.i.d.の用量で、経口投与される。
いくつかの実施態様において、900mg b.i.d.のチピファルニブの隔週レジメンを採用することができる。このレジメンの下で、患者は、900mgの開始用量を、po、b.i.d.で、28日間の治療サイクルの1〜7及び15〜21日目に投与される。いくつかの実施態様において、患者は、2回の治療サイクルを受ける。いくつかの実施態様において、患者は、3回の治療サイクルを受ける。いくつかの実施態様において、患者は、4回の治療サイクルを受ける。いくつかの実施態様において、患者は、5回の治療サイクルを受ける。いくつかの実施態様において、患者は、6回の治療サイクルを受ける。いくつかの実施態様において、患者は、7回の治療サイクルを受ける。いくつかの実施態様において、患者は、8回の治療サイクルを受ける。いくつかの実施態様において、患者は、9回の治療サイクルを受ける。いくつかの実施態様において、患者は、10回の治療サイクルを受ける。いくつかの実施態様において、患者は、11回の治療サイクルを受ける。いくつかの実施態様において、患者は、12回の治療サイクルを受ける。いくつかの実施態様において、患者は、12回よりも多い治療サイクルを受ける。
管理不可能な毒性が存在しないとき、対象は、チピファルニブ治療を最大12カ月又はそれより長く受け続けることができる。対象が該治療を十分に忍容している場合、用量を1200mg b.i.d.に増加させることもできる。治療に関連する、治療により発現した毒性を制御するための段階的な300mg用量低下を含めることもできる。
いくつかの他の実施態様において、チピファルニブを、28日間の治療サイクルで、300mg b.i.d.の用量で、21日間毎日経口投与し、その後、1週間休止する(21日間スケジュール; Cheng DTらの文献、J Mol Diagn.(2015) 17(3):251-64)。いくつかの実施態様において、25〜1300mgの範囲の5日間のb.i.d.投与と、それに続く、9日間の休止を採用する(5日間スケジュール; Zujewski J., J Clin Oncol.,(2000) Feb;18(4):927-41)。いくつかの実施態様において、7日間のb.i.d.投与と、それに続く、7日間の休止を採用する(7日間スケジュール; Lara PN Jr.の文献、Anticancer Drugs.,(2005) 16(3):317-21; Kirschbaum MHの文献、Leukemia.,(2011) Oct;25(10):1543-7; Kurzrockの文献、Clin Cancer Res(2008), 14(2):509)。7日間スケジュールで、患者は、300mg b.i.d.の開始用量を投与され、300mgの用量を1800mg b.i.d.の最大計画用量にまで上昇させることができる。7日間スケジュールの研究において、患者は、28日サイクルの1〜7日目及び15〜21日目に、最大1600mg b.i.d.の用量で、チピファルニブをb.i.d.で投与されることもできる。
FTIは、1日2回の投与スケジュールとして投与されたとき、哺乳動物腫瘍の成長を阻害することができる。1日当たり1用量で1〜5日間のFTIの投与は、少なくとも21日まで持続する腫瘍成長の顕著な抑制をもたらすことができる。いくつかの実施態様において、FTIは、50〜400mg/kgの投薬量範囲で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、200mg/kgで投与される。特定のFTIについての投与レジメンも当技術分野で周知である(例えば、引用により本明細書中に完全に組み込まれる米国特許第6838467号)。例えば、化合物のアルグラビン(WO98/28303号)、ペリリルアルコール(WO 99/45712号)、SCH-66336(米国特許第5,874,442号)、L778123(WO 00/01691号)、2(S)-[2(S)-[2(R)-アミノ-3-メルカプト]プロピルアミノ-3(S)-メチル]-ペンチルオキシ-3-フェニルプロピオニル-メチオニンスルホン(WO94/10138号)、BMS 214662(WO 97/30992号)、AZD3409; Pfizer社の化合物A及びB(WO 00/12499号及びWO 00/12498号)の好適な投薬量は、引用により本明細書中に組み込まれている前述の特許明細書に示されているか、又は当業者に公知であるか、又は当業者によって容易に決定されることができる。
ペリリルアルコールに関して、薬剤は、150lbのヒト患者につき、1日当たり1〜4g投与することができる。好ましくは、150lbのヒト患者につき、1日当たり1〜2gである。SCH-66336は、通常、特定の用途に従って、約0.1mg〜100mg、より好ましくは、約1mg〜300mgの単位用量で投与することができる。化合物L778123及び1-(3-クロロフェニル)-4-[1-(4-シアノベンジル)-5-イミダゾリルメチル]-2-ピペラジノンは、ヒト患者に、1日当たり約0.1mg/kg体重〜約20mg/kg体重、好ましくは、1日当たり0.5mg/kg体重〜約10mg/kg体重の量で投与することができる。
Pfizer社の化合物A及びBは、単一又は分割(すなわち、複数)用量で、1日当たり約1.0mg〜約500mgまで、好ましくは、1日当たり約1〜約100mgの範囲の投薬量で投与することができる。治療的化合物は、通常、単一又は分割用量で、1日にkg体重当たり、約0.01〜約10mgの範囲の1日投薬量で投与する。BMS 214662は、単一用量で又は2〜4回の分割用量で、約0.05〜200mg/kg/日、好ましくは、100mg/kg/日未満の投薬量範囲で投与することができる。
(2.4.組合せ療法)
いくつかの実施態様において、FTI治療は、放射線療法(radiotherapy)、又は放射線療法(radiation therapy)と組み合わせて投与される。放射線療法には、γ線、X線、及び/又は腫瘍細胞への放射性同位体の有向送達の使用が含まれる。マイクロ波、プロトンビーム照射(米国特許第5,760,395号及び第4,870,287号;これらは全て引用により本明細書中に完全に組み込まれる)、並びにUV照射などの、他の形態のDNA損傷因子も企図される。これらの因子は全て、DNAに対する、DNAの前駆体に対する、DNAの複製及び修復に対する、並びに染色体の集合及び維持に対する広範囲の損傷に影響を及ぼす可能性が最も高い。
いくつかの実施態様において、照射に対して宿主の腫瘍を効果的に増感させるFTIを有する医薬組成物の治療有効量が投与される(引用により本明細書中に完全に組み込まれる、米国特許第6545020号)。照射は、電離放射線、特に、γ線であることができる。いくつかの実施態様において、γ線は、線形加速器によるか又は放射性核種によって放出される。放射性核種による腫瘍への照射は、外部から又は内部からであることができる。
照射はX線照射であることもできる。X線の被曝量範囲は、長期間(3〜4週間)に50〜200レントゲンの1日線量から2000〜6000レントゲンの単一線量の範囲である。放射性同位体の被曝量範囲はばらつきが大きく、同位体の半減期、放出される放射線の強さ及び種類、並びに腫瘍性細胞による取込みによって決まる。
いくつかの実施態様において、医薬組成物の投与は、腫瘍への照射より最大1カ月、特に、最大10日又は1週間前に開始する。さらに、腫瘍への照射を分割し、医薬組成物の投与を最初の照射期間と最後の照射期間のインターバルで維持する。
FTIの量、照射の線量、及び照射投与の中断は、腫瘍のタイプ、その場所、化学療法又は放射線療法に対する患者の反応などの一連のパラメータによって決まり、最終的には、各々の個々の症例において、医師及び放射線科医が決定するものである。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、第二の活性剤又はサポーティブケア療法の治療有効量を投与することをさらに含む。第二の活性剤は、化学療法剤であることができる。化学療法剤又は化学療法薬は、細胞内でのその活性の様式、例えば、それらが細胞周期に影響を及ぼすかどうかということ及びそれらがどの段階で細胞周期に影響を及ぼすかということによって分類することができる。或いは、薬剤は、DNAを直接架橋し、DNAにインターカレートし、又は核酸合成に影響を及ぼすことにより染色体及び有糸***異常を誘発するその能力に基づいて特徴付けることができる。
化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;エチレンイミン、並びにアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むメチラメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(とりわけ、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン; CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体のKW-2189及びCB1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;窒素マスタード、例えば、クロラムブシル、クロロナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、及びウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、とりわけ、カリケアマイシンγlI及びカリケアマイシンωI1);ダインマイシンAを含むダインマイシン;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラルナイシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラルナイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、及びトリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトン;抗副腎薬(抗副腎薬)、例えば、ミトタン及びトリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デホファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えば、メイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸; 2-エチルヒドラジド;プロカルバジン; PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン; 2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(とりわけ、T-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセル ゲムシタビン; 6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメトルヒルオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン(plicomycin)、ゲムシタビン、ナベルビン、トランス白金、並びに上記のもののいずれかの医薬として許容し得る塩、酸、又は誘導体が挙げられる。
第二の活性剤は、巨大分子(例えば、タンパク質)又は小分子(例えば、合成無機分子、有機金属分子、もしくは有機分子)であることができる。いくつかの実施態様において、第二の活性剤は、DNA低メチル化剤、癌抗原に特異的に結合する治療抗体、造血成長因子、サイトカイン、抗癌剤、抗生物質、COX-2阻害剤、免疫調整剤、抗胸腺細胞グロブリン、免疫抑制剤、コルチコステロイド、又はこれらの薬理活性のある突然変異体もしくは誘導体である。
いくつかの実施態様において、第二の活性剤は、DNA低メチル化剤、例えば、シチジン類似体(例えば、アザシチジン)又は5-アザデオキシシチジン(例えば、デシタビン)である。いくつかの実施態様において、第二の活性剤は、限定されないが、インダクション(Induction)、トポテカン、ハイドレア、POエトポシド、レナリドミド、LDAC、及びチオグアニンを含む、細胞減少剤である。いくつかの実施態様において、第二の活性剤は、ミトキサントロン、エトポシド、シタラビン、又はバルスポダールである。いくつかの実施態様において、第二の活性剤は、ミトキサントロン+バルスポダール、エトポシド+バルスポダール、又はシタラビン+バルスポダールである。いくつかの実施態様において、第二の活性剤は、イダルビシン、フルダラビン、トポテカン、又はara-Cである。いくつかの他の実施態様において、第二の活性剤は、イダルビシン+ara-C、フルダラビン+ara-C、ミトキサントロン+ara-C、又はトポテカン+ara-Cである。いくつかの実施態様において、第二の活性剤は、キニーネである。上で指定されている薬剤の他の組合せを使用することができ、投薬量は医師により決定されることができる。
いくつかの実施態様において、第二の活性剤は免疫療法剤である。いくつかの実施態様において、第二の活性剤は抗PD1抗体又は抗PDL1抗体である。
いくつかの実施態様において、FTIと組み合わせて使用される第二の活性剤又は第二の療法は、FTI治療の前に、それと同時に、又はその後に投与することができると想定される。いくつかの実施態様において、FTIと組み合わせて使用される第二の活性剤又は第二の療法は、FTI治療の前に投与することができる。いくつかの実施態様において、FTIと組み合わせて使用される第二の活性剤又は第二の療法は、FTI治療と同時に投与することができる。いくつかの実施態様において、FTIと組み合わせて使用される第二の活性剤又は第二の療法は、FTI治療の後に投与することができる。
FTI治療は骨髄移植と組み合わせて投与することもできる。いくつかの実施態様において、FTIは骨髄移植の前に投与される。他の実施態様において、FTIは骨髄移植の後に投与される。
(3. FTI治療のバイオマーカー)
本明細書に提供されるのは、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)による治療のための頭頸部扁平上皮細胞癌(SCCHN)及び肺扁平上皮細胞癌(肺SCC)患者の選択方法である。ファルネシルトランスフェラーゼ(FTアーゼ)は、Rasタンパク質の翻訳後修飾において重要な役割を有する。FTIは、Rasを含む広範な標的タンパク質のファルネシル化を阻害する生物活性抗癌薬のクラスである。Rasタンパク質は、細胞成長刺激シグナルの伝達において中心的な役割を果たし、ras遺伝子の突然変異は、このタンパク質の持続的な活性化をもたらし、最終的に、制御されない細胞増殖をもたらす。全ヒト癌の30パーセントで見られる突然変異型ras遺伝子の高い発生率のために、この経路は抗癌薬開発の魅力的な標的となっている。Ras機能を妨害する方法は、FTIによるFTアーゼ(15-炭素イソプレニル基をRasタンパク質にカップリングさせる酵素)の阻害である。FTIは、FTアーゼの阻害を通じてRas活性化を遮断し、最終的に、細胞成長の停止をもたらす。したがって、FTIは癌の治療における効果的な治療剤であろうと予測された。
しかしながら、ras突然変異とFTIに対する応答の間に相関がないことが過去の臨床研究で証明された(Karpらの文献、Blood 97:3361-3369(2001);及び米国特許公開第20070048782号))。いくつかの初期の臨床研究は高頻度のras突然変異を示す癌に焦点を当てたが、応答率はこれらの試験で期待外れなほどに低かった(Mesa Lancet Oncol 6:279-286(2006); Raoらの文献、J Clin Oncol 22:3950-3957(2004))。
FTIであるチピファルニブの初期の研究が、リスクが高くかつ過去に治療を受けていないAML患者(CTEP-20、第II相)、及び再燃性/不応性AMLを有するAML患者(INT-17、第II相)で実施された。ベストサポーティブケア(BSC)と比較したチピファルニブの第III相研究は、全生存の改善を示さなかった。複数の遺伝子/タンパク質がFTIの活性に関する文献で関連付けられており(AKAP13、mDIAなど)(Raponiらの文献、Clin Cancer Res. 13:2254-60(2007); Kamasaniらの文献、Cancer Biology & Therapy, 6:1418-1423(2007))、2つのAML研究(CTEP-20、INT-17)からの骨髄試料における遺伝子発現プロファイリングの解析により、2つの遺伝子: RASGRP1(T細胞シグナル伝達因子)及びAPTX(DNA修復タンパク質)の発現の比がAMLにおけるチピファルニブの活性の潜在的バイオマーカーとして同定された(Raponiらの文献、Blood. 111:2589-96(2008))。しかしながら、骨髄芽球におけるこの2つの遺伝子の比を組入れ基準として用いた後続の前向き研究は、AMLにおけるチピファルニブの顕著な臨床的利益を示さなかった(Lancetらの文献、Blood(ASH) 120: Abstract 1508(2012))。
本発明は、HRAS突然変異をFTI治療のより良好な予後と関連するバイオマーカーとして同定しており、新規の方法がFTI治療のための患者選択のために本明細書に提供されている。本出願で同定されたHRAS突然変異は、他の標準化学療法の薬剤の臨床的利益ではなく、FTI治療の臨床的利益と特異的に関連する。
本明細書に開示されるように、本方法を他の患者層別化アプローチとの関連で用いて、FTI治療に対する患者集団の応答率をさらに増大させることもできる。例えば、いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、以下でより詳細に記載されているように、HRAS遺伝子の突然変異状況を決定すること、及び患者をFTI治療のために選択することをさらに含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、ras遺伝子の突然変異状況を決定すること、並びに患者が野生型K-ras及び野生型N-rasとともにHRAS突然変異を有する場合、患者をFTI治療のために選択することをさらに含む。他の実施態様において、本明細書に提供される方法は、RASGRP1とAPTXの2つの遺伝子比をFTI治療のためのさらなる患者選択基準として用いることをさらに含むことができる(引用により本明細書中に完全に組み込まれる、米国特許第7,932,036号)。本明細書に記載の又はそうでなければ当技術分野で公知の方法を用いて、HRAS遺伝子などのras遺伝子の突然変異状況を決定することができる。いくつかの実施態様において、HRASなどのras遺伝子の突然変異状況は、NGSによって決定することができる。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、バイオマーカーの発現レベルを決定することを含む。いくつかの実施態様において、バイオマーカーの発現レベルは、バイオマーカーのタンパク質レベルであることができる。いくつかの実施態様において、バイオマーカーの発現レベルは、バイオマーカーのRNAレベルであることができる。遺伝子のタンパク質レベル又はRNAレベルを決定するための本明細書に記載の又はそうでなければ当技術分野で公知の任意の方法を本発明のバイオマーカーの発現レベルを決定するために使用することができる。
mRNAレベルを検出又は定量する例示的な方法としては、PCRベースの方法、ノーザンブロット、リボヌクレアーゼ保護アッセイなどが挙げられるが、これらに限定されない。mRNA配列(例えば、CRBNもしくはCAPなどのバイオマーカーのmRNA、又はその断片)を用いて、少なくとも部分的に相補的であるプローブを調製することができる。その後、プローブを用いて、例えば、PCRベースの方法、ノーザンブロッティング、ディップスティックアッセイなどの任意の好適なアッセイを用いて、試料中のmRNA配列を検出することができる。
試料中のmRNA発現の定量のための一般に使用される当技術分野で公知の方法としては、ノーザンブロッティング及びインサイチュハイブリダイゼーション(Parker及びBarnesの文献、Methods in Molecular Biology 106:247-283(1999)); RNアーゼ保護アッセイ(Hodの文献、Biotechniques 13:852-854(1992));並びにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Weisらの文献、Trends in Genetics 8:263-264(1992))が挙げられる。或いは、DNA二重鎖、RNA二重鎖、及びDNA-RNAハイブリッド二重鎖又はDNA-タンパク質二重鎖を含む、特異的な二重鎖を認識することができる抗体を利用してもよい。シークエンシングに基づく遺伝子発現解析の代表的な方法としては、遺伝子発現連続解析(SAGE)、及び大量並列シグナチャーシークエンシング(MPSS)による遺伝子発現解析が挙げられる。
感度が高くかつ柔軟性のある定量法はPCRである。PCR法の例は、文献中に見出すことができる。PCRアッセイの例は、引用により本明細書中に完全に組み込まれる米国特許第6,927,024号に見出すことができる。RT-PCR法の例は、引用により本明細書中に完全に組み込まれる米国特許第7,122,799号に見出すことができる。蛍光インサイチュPCRの方法は、引用により本明細書中に完全に組み込まれる米国特許第7,186,507号に記載されている。
しかしながら、他の核酸増幅プロトコル(すなわち、PCR以外のもの)も本明細書に記載される核酸分析法で使用し得ることに留意されたい。例えば、好適な増幅方法としては、リガーゼ連鎖反応(例えば、Wu及びWallaceの文献、Genomics 4:560-569, 1988を参照);鎖置換アッセイ(例えば、Walkerらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:392-396, 1992; 米国特許第5,455,166号を参照);並びに米国特許第5,437,990号;第5,409,818号;及び第5,399,491号に記載されている方法を含む、いくつかの転写ベースの増幅系;転写増幅系(TAS)(Kwohらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 1173-1177, 1989);並びに自己持続型配列複製(3SR)(Guatelliらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 1874-1878, 1990; WO 92/08800号)が挙げられる。或いは、プローブを検出可能なレベルに増幅する方法を使用することができ、これには、例えば、Q-レプリカーゼ増幅がある(Kramer及びLizardiの文献、Nature 339:401-402, 1989; Lomeliらの文献、Clin. Chem. 35: 1826-1831, 1989)。既知の増幅方法の概説は、例えば、Abramson及びMyersにより、Current Opinion in Biotechnology 4:41-47(1993)に提供されている。
mRNAは、出発組織試料から単離してもよい。一般的なmRNA抽出の方法は当技術分野で周知であり、Ausubelらの文献、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols of Molecular Biology)、John Wiley and Sons(1997)を含む、分子生物学の標準的な教科書に開示されている。特に、RNA単離は、メーカーの指示に従って、Qiagenなどの商業的メーカー製の精製キット、バッファーセット、及びプロテアーゼを用いて実施することができる。例えば、培養下の細胞由来の全RNAは、Qiagen RNeasyミニカラムを用いて単離することができる。他の市販のRNA単離キットとしては、MASTERPURE(登録商標)コンプリートDNA及びRNA精製キット(EPICENTRE(登録商標), Madison, Wis.)、及びパラフィンブロックRNA単離キット(Ambion社)が挙げられる。組織試料由来の全RNAは、RNA Stat-60(Tel-Test)を用いて単離することができる。腫瘍から調製されるRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心分離によって単離することができる。
いくつかの実施態様において、PCRによる遺伝子発現プロファイリングの第一工程は、RNA鋳型からcDNAへの逆転写であり、PCR反応におけるその指数関数的増幅がそれに続く。他の実施態様において、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)反応の組合せを、例えば、米国特許第5,310,652号;第5,322,770号;第5,561,058号;第5,641,864号;及び第5,693,517号に記載されている通りに使用することができる。一般的に使用される2つの逆転写酵素は、トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV-RT)とモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV-RT)である。逆転写工程は、通常、発現プロファイリングの状況及び目的に応じて、特異的プライマー、ランダムヘキサマー、又はオリゴ-dTプライマーを用いてプライミングされる。例えば、抽出されたRNAを、メーカーの指示に従って、GENEAMP(商標) RNA PCRキット(Perkin Elmer, Calif, USA)を用いて逆転写することができる。その後、得られたcDNAを次のPCR反応における鋳型として使用することができる。
いくつかの実施態様において、リアルタイム逆転写-PCR(qRT-PCR)をRNA標的の検出と定量の両方に使用することができる(Bustinらの文献、2005, Clin. Sci., 109:365-379)。qRT-PCRベースの方法の例は、例えば、引用により本明細書中に完全に組み込まれる米国特許第7,101,663号に見出すことができる。Applied Biosystems 7500などのリアルタイムPCR用の機器は市販されており、TaqMan Sequence Detectionケミストリーなどの試薬も同様である。
例えば、TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイをメーカーの指示に従って使用することができる。これらのキットは、ヒト、マウス、及びラットmRNA転写産物の迅速で信頼性のある検出及び定量のための予備調剤された遺伝子発現アッセイである。米国特許第5,210,015号;第5,487,972号;及び第5,804,375号;並びにHollandらの文献、1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280に記載されているようなTaqMan(登録商標)又は5'-ヌクレアーゼアッセイを使用することができる。TAQMAN(登録商標) PCRは、通常、Taq又はTthポリメラーゼの5'-ヌクレアーゼ活性を利用して、その標的アンプリコンに結合したハイブリダイゼーションプローブを加水分解するが、同等の5'ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素を使用することができる。2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、PCR反応に特有のアンプリコンを生成させる。第三のオリゴヌクレオチド、又はプローブを、2つのPCRプライマーの間にあるヌクレオチド配列を検出するために設計する。プローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素によって伸長可能ではなく、レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素で標識される。レポーター色素からのレーザー誘導放出はいずれも、2つの色素がプローブ上にあるときに互いに近くにある場合、クエンチング色素によってクエンチングされる。増幅反応中、Taq DNAポリメラーゼ酵素は鋳型依存的な形でプローブを切断する。得られたプローブ断片は溶液中で解離し、放出されたレポーター色素からのシグナルは、第二のフルオロフォアのクエンチング効果の影響を受けない。新しい分子が合成されるごとに1分子のレポーター色素が遊離し、クエンチングされなかったレポーター色素の検出によってデータの定量的解釈の基礎が提供される。
分解産物を検出するのに好適な任意の方法を5'ヌクレアーゼアッセイで使用することができる。多くの場合、検出プローブを2つの蛍光色素で標識し、そのうちの一方は、もう一方の色素の蛍光をクエンチングすることができる。プローブがハイブリダイズしていない状態にあるときにクエンチングが起こるように、及びDNAポリメラーゼの5'から3'へのエキソヌクレアーゼ活性によるプローブの切断が2つの色素の間で起こるように、色素をプローブに付着させる、好ましくは、一方を5'末端に付着させ、もう一方を内部部位に付着させる。
増幅は、色素と色素の間にあるプローブの切断をもたらし、クエンチングの消失と最初にクエンチングされた色素からの観測可能な蛍光の増加を同時に伴う。分解産物の蓄積は、反応蛍光の増加を測定することによりモニタリングされる。どちらも引用により本明細書中に組み込まれる米国特許第5,491,063号及び第5,571,673号は、増幅と同時に起こるプローブの分解を検出するための別の方法を記載している。5'-ヌクレアーゼアッセイデータは、頭文字でCt、すなわち、閾値サイクルとして表すことができる。上で論じられているように、蛍光値は全てのサイクルにおいて記録され、増幅反応でその時点まで増幅された産物の量を表す。蛍光シグナルが統計的に有意なものとして最初に記録される時点が閾値サイクル(Ct)である。
誤差と試料間のばらつきの効果とを最小化するために、PCRは、通常、内部標準を用いて実施される。理想的な内部標準は異なる組織間で一定のレベルで発現しており、実験的処理による影響を受けない。遺伝子発現のパターンを標準化するために最も頻繁に使用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子のグリセルアルデヒド-3-リン酸-デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びP-アクチンのmRNAである。
PCRプライマー及びプローブは、増幅されることになる遺伝子中に存在するイントロン配列に基づいて設計される。この実施態様において、プライマー/プローブ設計の第一の工程は、遺伝子内のイントロン配列の描写である。これは、Kent, W.(Genome Res. 12(4):656-64(2002))によって開発されたDNA BLATソフトウェアなどの、公開されているソフトウェアによるか、又はそのバリエーションを含むBLASTソフトウェアによって行うことができる。後続の工程は、十分に特徴付けられているPCRプライマー及びプローブ設計の方法に従う。
非特異的シグナルを回避するために、プライマー及びプローブを設計するときに、イントロン内の反復配列をマスクすることが重要となり得る。これは、反復エレメントのライブラリーに対してDNA配列をスクリーニングし、反復エレメントがマスクされているクエリー配列を返す、ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)からオンラインで利用可能なRepeat Maskerプログラムを使用することにより容易に達成することができる。その後、マスクされたイントロン配列を用いて、任意の市販されているか又はそうでなければ公開されているプライマー/プローブ設計パッケージ、例えば、Primer Express(Applied Biosystems); MGBアッセイ・バイ・デザイン(assay-by-design)(Applied Biosystems); Primer3(Rozen及びSkaletskyの文献(2000)、一般ユーザー向け及び生物学者プログラマー向けのWWW上のPrimer3(Primer3 on the WWW for general users and for biologist programmers): Krawetz S, Misener S(編)、バイオインフォマティクスの方法及びプロトコル:分子生物学の方法(Bioinformatics Methods and Protocols: Methods in Molecular Biology)、Humana Press, Totowa, N.J., pp 365-386)を用いて、プライマー及びプローブ配列を設計することができる。
PCRプライマー設計で考慮される因子としては、プライマー長、融解温度(Tm)、及びG/C含有量、特異性、相補的プライマー配列、並びに3'末端配列が挙げられる。一般に、最適なPCRプライマーは、通常、17〜30塩基長であり、約20〜80%、例えば、約50〜60%などのG+C塩基を含む。50〜80℃、例えば、約50〜70℃のTmが通常好ましい。PCRプライマー及びプローブ設計のさらなる指針については、例えば、その開示全体が引用により本明細書に明示的に組み込まれる、Dieffenbachらの文献、「PCRプライマー設計に関する一般的概念(General Concepts for PCR Primer Design)」: PCRプライマー、実験室マニュアル(PCR Primer, A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1995, pp. 133-155; Innis及びGelfandの文献、「PCRの最適化(Optimization of PCRs)」: PCRプロトコル、方法及び応用の手引書(PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications)、CRC Press, London, 1994, pp. 5-11;並びにPlasterer, T. N.の文献、プライマー選択:プライマー及びプローブ設計(Primerselect: Primer and Probe design)、Methods Mol. Biol. 70:520-527(1997)を参照されたい。
例示的なPCRプログラムは、例えば、50℃で2分間、95℃で10分間の後、95℃で15秒間、60℃で1分間を40サイクルである。特定のアンプリコンの蓄積と関連する蛍光シグナルが閾値(CTと呼ばれる)を超えるサイクル数を決定するために、データを、例えば、7500 Real-Time PCR System Sequence Detectionソフトウェアv1.3を用いて、比較CT相対定量計算法を用いて解析することができる。この方法を用いると、出力は、発現レベルの変化倍率として表される。いくつかの実施態様において、閾値レベルは、ソフトウェアによって自動的に決定されるように選択することができる。いくつかの実施態様において、閾値レベルは、ベースラインを超えるが、増幅曲線の指数関数的増殖領域内にあるように十分に低く設定される。
全トランスクリプトームショットガンシークエンシング(WTSS)とも呼ばれるRNA-Seqは、試料のRNA含有量に関する情報を取得するために、ハイスループットシークエンシング技術を用いてcDNAをシークエンシングすることを指す。RNA-Seqを記載している刊行物としては: Wangらの文献、Nature Reviews Genetics 10(1): 57-63(2009年1月); Ryanらの文献、BioTechniques 45(1): 81-94(2008);及びMaherらの文献、Nature 458(7234): 97-101(2009年1月)が挙げられ;これらは本明細書中に完全に組み込まれる。
示差遺伝子発現は、マイクロアレイ技法を用いて特定又は確認することもできる。この方法では、対象となるポリヌクレオチド配列(cDNA及びオリゴヌクレオチドを含む)をマイクロチップ基板にプレーティング又はアレイ化する。その後、アレイ化された配列を対象となる細胞又は組織由来の特異的DNAプローブとハイブリダイズさせる。
マイクロアレイ技法の一実施態様において、cDNAクローンのPCR増幅インサートを高密度アレイ中の基板に適用する。好ましくは、少なくとも10,000のヌクレオチド配列を基板に適用する。各々10,000エレメントでマイクロチップ上に固定されたマイクロアレイ化遺伝子は、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションに好適である。蛍光標識cDNAプローブは、対象となる組織から抽出されたRNAの逆転写による蛍光ヌクレオチドの取込みによって作製することができる。チップに適用された標識cDNAプローブは、アレイ上のDNAの各スポットに特異性を伴ってハイブリダイズする。非特異的に結合したプローブを除去するためのストリンジェントな洗浄の後、共焦点レーザー顕微鏡法によるか、又はCCDカメラなどの別の検出方法によって、チップをスキャンする。各々のアレイ化エレメントのハイブリダイゼーションの定量により、対応するmRNA存在量の評価が可能になる。二色蛍光の場合、2つのRNA供給源から作製された別々に標識されたcDNAプローブをペアとしてアレイにハイブリダイズさせる。各々の特定の遺伝子に対応する2つの供給源からの転写産物の相対存在量をこのように同時に決定する。ハイブリダイゼーションのスケールの小型化により、多数の遺伝子の発現パターンの簡便かつ迅速な評価が得られる。そのような方法は、1細胞当たり数コピーで発現される稀少な転写産物を検出するために、及び発現レベルの少なくとも約2倍の差異を再現性よく検出するために必要とされる感度を有することが示されている(Schenaらの文献、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(2): 106-149(1996))。マイクロアレイ解析は、メーカーのプロトコルに従って、例えば、Affymetrix GENCHIP(商標)技術、又はIncyteのマイクロアレイ技術を使用することにより、市販の装置によって実施することができる。
遺伝子発現連続解析(SAGE)は、各々の転写産物のための個々のハイブリダイゼーションプローブを提供する必要なく、多数の遺伝子転写産物の同時的かつ定量的解析を可能にする方法である。まず、タグが各々の転写産物内の固有の位置から得られることを条件として、転写産物を一意的に同定するのに十分な情報を含む短い配列タグ(約10〜14bp)を作製する。その後、多くの転写産物を1つに連結させて、長い連続分子を形成させ、シークエンシングして、複数のタグの正体を同時に明らかにすることができる。転写産物の任意の集団の発現パターンは、個々のタグの存在量を決定し、各々のタグに対応する遺伝子を同定することにより定量的に評価することができる。さらなる詳細については、例えば、Velculescuらの文献、Science 270:484-487(1995);及びVelculescuらの文献、Cell 88:243-51(1997)を参照されたい。
MassARRAY(Sequenom, San Diego, Calif.)技術は、検出のために質量分析(MS)を用いる自動化されたハイスループットな遺伝子発現解析法である。この方法に従って、RNAの単離、逆転写、及びPCR増幅の後、cDNAをプライマー伸長に供する。cDNAから得られたプライマー伸長産物を精製し、MALTI-TOF MS試料調製に必要とされる成分が予め充填されているチップアレイに分配する。得られた質量スペクトルのピーク面積を解析することにより、反応液中に存在する様々なcDNAを定量する。
mRNAレベルは、ハイブリダイゼーションに基づくアッセイによって測定することもできる。典型的なmRNAアッセイ方法は、1)表面に結合した対象プローブを得る工程; 2)特異的結合を提供するのに十分な条件下での、該表面に結合したプローブへのmRNAの集団のハイブリダイゼーションの工程、(3)ハイブリダイゼーションで結合しなかった核酸を除去するためのハイブリダイゼーション後の洗浄の工程;及び(4)ハイブリダイズしたmRNAの検出の工程を含むことができる。これらの工程の各々で使用される試薬及びその使用条件は、特定の用途によって異なり得る。
任意の好適なアッセイプラットフォームを用いて、試料中のmRNAレベルを決定することができる。例えば、アッセイは、ディップスティック、膜、チップ、ディスク、試験ストリップ、フィルター、マイクロスフェア、スライド、マルチウェルプレート、又は光ファイバーの形態であることができる。アッセイ系は、mRNAに対応する核酸を付着させる固体支持体を有することができる。該固体支持体は、例えば、プラスチック、シリコン、金属、樹脂、ガラス、膜、粒子、沈殿物、ゲル、ポリマー、シート、球体、多糖、キャピラリー、フィルム、プレート、又はスライドを有することができる。アッセイの構成要素を準備し、mRNAを検出するためのキットとして一緒に包装することができる。
望ましい場合、核酸を標識して、標識mRNAの集団を作製することができる。一般に、試料は、当技術分野で周知である方法(例えば、DNAリガーゼ、末端トランスフェラーゼを用いるもの、又はRNA骨格を標識することによるものなど;例えば、Ausubelらの文献、分子生物学のショートプロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)、第3版、Wiley & Sons 1995、及びSambrookらの文献、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第3版, 2001 Cold Spring Harbor, N.Y.を参照)を用いて標識することができる。いくつかの実施態様において、試料を蛍光標識で標識する。例示的な蛍光色素としては、キサンテン色素、フルオレセイン色素、ローダミン色素、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、6カルボキシフルオレセイン(FAM)、6カルボキシ-2',4',7',4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6カルボキシ4',5'ジクロロ2',7'ジメトキシフルオレセイン(JOE又はJ)、N,N,N',N'テトラメチル6カルボキシローダミン(TAMRA又はT)、6カルボキシXローダミン(ROX又はR)、5カルボキシローダミン6G(R6G5又はG5)、6カルボキシローダミン6G(R6G6又はG6)、及びローダミン110;シアニン色素、例えば、Cy3、Cy5、及びCy7色素; Alexa色素、例えば、Alexa-fluor-555;クマリン、ジエチルアミノクマリン、ウンベリフェロン;ベンズイミド色素、例えば、Hoechst 33258;フェナントリジン色素、例えば、Texas Red;エチジウム色素;アクリジン色素;カルバゾール色素;フェノキサジン色素;ポルフィリン色素;ポリメチン色素、BODIPY色素、キノリン色素、ピレン、フルオレセインクロロトリアジニル、R110、エオシン、JOE、R6G、テトラメチルローダミン、リサミン、ROX、ナフトフルオレセインなどが挙げられるが、これらに限定されない。
ハイブリダイゼーションは、好適なハイブリダイゼーション条件下で行なうことができ、該条件は、望ましい場合、ストリンジェンシーが異なっていてもよい。相補的結合メンバーの間で、すなわち、表面に結合した対象プローブと試料中の相補的mRNAとの間で、固体表面上にプローブ/標的複合体を生じさせるには、通常の条件で十分である。ある実施態様において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を利用することができる。
ハイブリダイゼーションは、通常、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で行なわれる。標準的なハイブリダイゼーション技法(例えば、プローブに対する試料中の標的mRNAの特異的結合を提供するのに十分な条件下にあるもの)は、Kallioniemiらの文献、Science 258:818-821(1992)、及びWO 93/18186号に記載されている。一般的技法のいくつかの手引書が入手可能であり、例えば、Tijssenの文献、核酸プローブによるハイブリダイゼーション(Hybridization with Nucleic Acid Probes)、第I部及び第II部(Elsevier, Amsterdam 1993)がある。インサイチュハイブリダイゼーションに好適な技法の説明については、Gallらの文献、Meth. Enzymol., 21:470-480(1981);及びAngererらの文献、遺伝子工学:原理及び方法(Genetic Engineering: Principles and Methods)(Setlow及びHollaender編)、第7巻、43-65頁(Plenum Press、New York 1985)を参照されたい。温度、塩濃度、ポリヌクレオチド濃度、ハイブリダイゼーション時間、洗浄条件のストリンジェンシーなどを含む適切な条件の選択は、試料の供給源、捕捉剤の実体、予想される相補性の程度などを含む実験設計によって決まり、当業者にとってのルーチンの実験の問題として決定され得る。当業者は、別の、しかし、同程度のハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件を用いて、同様のストリンジェンシーの条件を提供することができることを容易に認識するであろう。
mRNAハイブリダイゼーション手順の後に、通常、表面に結合したポリヌクレオチドを洗浄して、未結合の核酸を除去する。洗浄は、任意の好都合な洗浄プロトコルを用いて行なうことができ、その場合、洗浄条件は通常、上記のように、ストリンジェントである。その後、プローブに対する標的mRNAのハイブリダイゼーションを、標準的な技法を用いて検出する。
組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を評価又は検出する信頼性のある方法であることが示されている。免疫組織化学技法は、抗体を用いて、通常は発色法又は蛍光法によって、細胞抗原をインサイチュでプロービング及び可視化する。したがって、各々のマーカーに特異的な抗体又は抗血清、好ましくは、ポリクローナル抗血清、最も好ましくは、モノクローナル抗体を用いて発現を検出する。以下でさらに詳細に論じられるように、抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ハプテン標識、例えば、ビオチン、又は酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ)による抗体自体の直接的な標識によって検出することができる。或いは、非標識一次抗体を、一次抗体に特異的な抗血清、ポリクローナル抗血清、又はモノクローナル抗体を含む、標識二次抗体とともに使用する。免疫組織化学プロトコル及びキットは当技術分野で周知であり、かつ市販されている。スライド調製及びIHC処理の自動システムは市販されている。Ventana(登録商標) BenchMark XTシステムは、そのような自動システムの一例である。
標準的な免疫学的手順及び免疫アッセイ手順は、基礎免疫学及び臨床免疫学(Basic and Clinical Immunology)(Stites及びTerr編、第7版、1991)に見出すことができる。さらに、免疫アッセイは、酵素免疫アッセイ(Enzyme Immunoassay)(Maggio編、1980);並びにHarlow及びLaneの文献(上記)で広範に概説されているいくつかの構成のうちのいずれかで実施することができる。一般的な免疫アッセイの概説については、細胞生物学における方法:細胞生物学における抗体(Methods in Cell Biology: Antibodies in Cell Biology)、第37巻(Asai編、1993);基礎免疫学及び臨床免疫学(Basic and Clinical Immunology)(Stites及びTen編、第7版、1991)も参照されたい。
バイオマーカーのタンパク質レベルを検出するための一般に使用されるアッセイには、非競合的アッセイ、例えば、サンドイッチアッセイ、及び競合的アッセイが含まれる。通常、ELISAアッセイなどのアッセイを使用することができる。例えば、血液、血漿、血清、又は骨髄を含む、多種多様な組織及び試料をアッセイするためのELISAアッセイが当技術分野で公知である。
そのようなアッセイ形式を用いる広範な免疫アッセイ技法が利用可能であり、例えば、引用により本明細書中に完全に組み込まれる、米国特許第4,016,043号、第4,424,279号、及び第4,018,653号を参照されたい。これらは、非競合型の単一部位アッセイと二部位アッセイの両方又は「サンドイッチ」アッセイ及び従来的な競合的結合アッセイを含む。これらのアッセイは、標的バイオマーカーに対する標識抗体の直接的な結合も含む。サンドイッチアッセイは一般的に使用されるアッセイである。サンドイッチアッセイ技法のいくつかのバリエーションが存在する。例えば、典型的な前向きアッセイでは、非標識抗体を固体基板上に固定し、試験すべき試料をその結合分子と接触させる。抗体-抗原複合体の形成を可能にするのに十分な期間にわたる好適なインキュベーション期間の後、検出可能なシグナルを産生することができるレポーター分子で標識された、抗原に特異的な第二の抗体を添加し、別の抗体-抗原-標識抗体複合体の形成に十分な時間を考慮して、インキュベートする。全ての未反応材料を洗い流し、抗原の存在を、レポーター分子によって産生されるシグナルの観察により測定する。結果は、可視シグナルの単純な観察による定性的なものであってもよく、又は既知の量のバイオマーカーを含む対照試料と比較することにより定量されるものであってもよい。
前向きアッセイのバリエーションには、試料と標識抗体の両方が同時に結合抗体に添加される同時アッセイが含まれる。これらの技法は当業者に周知であり、これには、見てすぐに分かる任意のマイナーなバリエーションが含まれる。典型的な前向きサンドイッチアッセイでは、バイオマーカーに対する特異性を有する第一の抗体を共有結合的にか又は受動的にかのいずれかで固体表面に結合させる。固体表面はガラスであっても、ポリマーであってもよく、最も一般的に使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートのディスク、又は免疫アッセイを実施するのに好適な任意の他の表面の形態のものであってもよい。結合プロセスは当技術分野で周知であり、かつ通常、架橋、共有結合、又は物理的吸着からなり、ポリマー-抗体複合体を試験試料に備えて洗浄する。その後、試験すべき試料のアリコートを固相複合体に添加し、抗体中に存在する任意のサブユニットの結合を可能にするのに十分な期間(例えば、2〜40分、又はより好都合な場合、一晩)及び好適な条件下(例えば、室温〜40℃、例えば、25℃〜32℃(25℃と32℃を含む))でインキュベートする。インキュベーション期間の後、抗体サブユニット固相を洗浄し、乾燥させ、バイオマーカーの部分に特異的な第二の抗体とともにインキュベートする。第二の抗体は、第二の抗体と分子マーカーとの結合を示すために使用されるレポーター分子に連結されている。
いくつかの実施態様において、フローサイトメトリー(FACS)を用いて、バイオマーカーのタンパク質レベルを検出することができる。表面タンパク質は、特異的なバイオマーカーに対する抗体を用いて検出することができる。フローサイトメーターは、バイオマーカーの発現レベルを示す蛍光色素タグ化抗体の強度を検出及び報告する。非蛍光性の細胞質タンパク質も、透過処理した細胞を染色することにより観察することができる。染色剤は、特定の分子に結合することができる蛍光化合物、又は選択された分子に結合する蛍光色素タグ化抗体のいずれかであることができる。
代替法は、試料中の標的バイオマーカーを固定し、その後、固定された標的を特異的抗体に曝露させることを含み、該抗体は、レポーター分子で標識されていても、標識されていなくてもよい。標的の量及びレポーター分子シグナルの強度によっては、結合した標的が抗体による直接的な標識によって検出可能となる場合がある。或いは、第一の抗体に特異的な第二の標識抗体を標的-第一の抗体の複合体に曝露させて、標的-第一の抗体-第二の抗体の三成分複合体を形成させる。該複合体は、標識されたレポーター分子によって放出されるシグナルによって検出される。
酵素免疫アッセイの場合、酵素は、通常、グルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸塩によって、第二の抗体にコンジュゲートされる。しかしながら、容易に認識されるように、当業者にすぐに利用可能である、多種多様な異なるコンジュゲーション技法が存在する。一般的に使用される酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びアルカリホスファターゼが挙げられ、その他のものは、本明細書で論じられている。特定の酵素とともに使用される基質は、通常、対応する酵素によって加水分解されたときの、検出可能な色の変化の生成が理由で選ばれる。好適な酵素の例としては、アルカリホスファターゼ及びペルオキシダーゼが挙げられる。上で述べられた発色基質ではなく、蛍光産物を産出する蛍光基質を利用することも可能である。いかなる場合でも、酵素標識抗体を第一の抗体-分子マーカー複合体に添加し、結合させておき、その後、余分な試薬を洗い流す。その後、適当な基質を含む溶液を抗体-抗原-抗体の複合体に添加する。基質は、第二の抗体に連結された酵素と反応して、定性的な視覚的シグナルを生じ、これを、通常は分光学的に、さらに定量して、試料中に存在していたバイオマーカーの量を示すことができる。或いは、蛍光化合物、例えば、フルオレセイン及びローダミンを、その結合能力を変化させることなく、抗体に化学的にカップリングさせることができる。特定の波長の光による照射によって活性化されると、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸着し、状態を分子の興奮状態に誘導し、その後、光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色で光が放出される。EIAと同様に、蛍光標識抗体を第一の抗体-分子マーカー複合体に結合させておく。結合しなかった試薬を洗い落とした後、残りの三成分複合体を適当な波長の光に曝露させ、観察される蛍光は、対象となる分子マーカーの存在を示す。免疫蛍光技法とEIA技法はどちらも当技術分野で非常によく確立されており、本明細書で論じられている。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、これらのバイオマーカーのうちの2つ又はそれより多くのタンパク質レベルを決定することを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、これらのバイオマーカーのうちの3つ又はそれより多くのタンパク質レベルを決定することを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、これらのバイオマーカーのうちの4つ又はそれより多くのタンパク質レベルを決定することを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、これらのバイオマーカーのうちの5つのタンパク質レベルを決定することを含む。
(3.4.参照レベル及び参照比)
いくつかの実施態様において、バイオマーカーの参照発現レベル又は2つのバイオマーカーの発現レベル間の参照比は、患者の群の転帰、すなわち、FTI治療に対する患者の応答性、及び患者の群のバイオマーカーの発現レベル又はバイオマーカー間の発現レベルの比を含む、以前の臨床試験からのデータの統計解析に基づいて決定することができる。特定の治療に対する患者の応答性を予測するために、又は特定の治療のために患者を層別化するために使用されるときに1以上のバイオマーカーの参照レベル(又は「カットオフ値」と呼ばれる)を決定するための、いくつかの統計的方法が当技術分野で周知である。
本発明の1つの方法は、レスポンダーと非レスポンダーとを区別する本明細書で同定されたバイオマーカーの遺伝子発現プロファイルを解析して、1以上のバイオマーカーの参照発現レベルを決定することを含む。レスポンダーと非レスポンダーの比較は、マン・ホイットニーのU検定、χ二乗検定、又はフィッシャーの正確確率検定を用いて実施することができる。記述統計及び比較の解析は、SigmaStat Software(Systat Software社, San Jose, CA, USA)を用いて実施することができる。
いくつかの実施態様において、分類及び回帰木(CART)分析を採用して、参照レベルを決定することができる。CART分析は二元再帰分割アルゴリズムに基づくものであり、多重線形回帰などのより従来的な方法では明らかにならない可能性がある複合予測因子変数相互作用の発見を可能にする。二元再帰分割とは: 1)二元である、つまり、患者を2群に分ける効果がある、2つの考えられる転帰変数、すなわち、「レスポンダー」及び「非レスポンダー」が存在し; 2)再帰的である、つまり、分析を複数回実施することができ;かつ3)分割される、つまり、全データセットを部分に分けることができる、分析を指す。この分析は、性能の悪い予測因子変数を排除する能力も有する。分類木は、Salford Predictive Modeler v6.6(Salford Systems, San Diego, CA, USA)を用いて構築することができる。
本発明の物品は、自動的に読み取ることができる媒体、例えば、コンピュータ可読媒体(磁気、光学など)に縮小されたFTI治療に対する癌患者の応答性を予測するのに有用な遺伝子発現プロファイルの表示である。該物品は、そのような媒体中の遺伝子発現プロファイルを評価するための命令を含むこともできる。例えば、該物品は、上記のバイオマーカーの遺伝子発現プロファイルを比較するためのコンピュータ命令を有するCD-ROMを含むことができる。該物品は、遺伝子発現プロファイルがその中にデジタル記録されることもでき、そのため、該プロファイルを患者試料の遺伝子発現データと比較することができる。或いは、該プロファイルは、様々な表示形式で記録されることができる。上述の「OMNIVIZ」及び「TREE VIEW」コンピュータプログラムに組み込まれているものなどのクラスタリングアルゴリズムは、そのようなデータの可視化を最も良好に補助することができる。
受信者操作特性(ROC)分析を用いて、参照発現レベル、もしくは参照発現比を決定するか、又は個々の遺伝子及び/もしくは複数の遺伝子分類指標の全体の予測値を試験することができる。ROC解析の概説は、引用により本明細書中に完全に組み込まれる、Soreideの文献、J Clin Pathol 10.1136(2008)に見出すことができる。
高い感度と高い特異度の両方を保証するために、参照レベルをトレーニングセットのROC曲線から決定することができる。どのくらいのバイオマーカーが予測因子に含まれる必要があるかを決定するために、一個抜き交差検証(LOOCV)を使用することができる。遺伝子数の違いに基づく「抜き出された」試料の応答スコアを記録する。遺伝子数の違いを含む予測因子の性能を、誤分類エラー率、感度、特異度、2つの予測される群のカプラン・マイヤー曲線の分離を測定するp値に基づいて評価することができる。
Gemanら(2004)によって最初に導入されたトップスコアペア(TSP)アルゴリズムを使用することができる。基本的に、このアルゴリズムは、クラスC1〜C2間の試料において遺伝子iが遺伝子jよりも高い発現値を有する事象の頻度の絶対差(Dij)に基づいて、全ての遺伝子ペア(遺伝子i及びj)をランク付けするものである。複数のトップスコアペア(全てが同じDijを共有する)が存在する場合には、1つの遺伝子ペア内で一方のクラスから他方のクラスへと遺伝子の発現レベルの逆転が生じる度合いを測定する、二次的ランクスコアによる最上位のペアを選択する。全試料中、2倍を超える絶対Dijの頻度が最も高い最上位のペアを候補ペアとして選択することになる。その後、候補ペアを独立の試験データセットで試験することができる。一個抜き交差検証(LOOCV)をトレーニングデータセットで実施して、このアルゴリズムがどのように機能するかを評価することができる。予測因子の性能は、最大誤分類エラー率に基づいて評価することができる。統計解析は全てRを用いて行うことができる(R Development Core Team, 2006)。
参照レベルを決定するのに有用な方法及び統計手段の概説は、引用により本明細書中に完全に組み込まれる、James Westgard博士の文献、基本的な方法検証(Basic Methods Validation)、第3版(2008)に見出すことができる。第9章(「方法の報告可能範囲はどのように決定されるか」)及び第15章(「参照区間はどのように検証されるか」)に具体的に言及されている。
臨床的報告可能範囲(CRR)は、標本の希釈、濃度、又は直接的な分析測定範囲を拡大するために使用される他の事前処理を考慮して、方法が測定することができる分析物の値の範囲である。Westgard博士による基本的な方法の検証(Basic Methods Validation)で提供されているように、実施されるべき実験は「線形性実験」と呼ばれることが多いが、技術的には、2点校正が使用されている場合を除いて、方法が線形応答を提供する必要はない。この範囲は、方法の「線形範囲」、「分析範囲」、又は「作業範囲」と呼ぶこともできる。
報告可能範囲は、線形性グラフの検査によって評価される。その検査は、点の線形部分を通る最も真っ直ぐな線を手で引くこと、全ての点を通る点から点への線を引き、その後、最も真っ直ぐな線と比較すること、又は線形範囲にある点を通る回帰線をフィットさせることを含むことができる。分析法の直線性を評価するための臨床検査標準委員会(Clinical Laboratory Standards Institute)(CLSI)のEP-6プロトコルなどの、いくつかのガイドラインで推奨されるより複雑な統計計算がある。しかし、「目視」評価から、すなわち、一連のものの中で最も低い点にフィットする最も真っ直ぐな線を手で引くことにより、報告可能範囲を適切に決定することができるということが一般に認められている。臨床検査標準委員会(CLSI)は、最低少なくとも4つの、好ましくは5つの異なる濃度レベルを推奨している。特に、報告可能範囲の上限を最大化する必要がある場合は5つよりも多くを使用することができるが、5つのレベルが好都合であり、かつほとんどの場合、十分である。
参照区間は、通常、慎重に定義された基準を満たす個体(参照試料群)から取得される標本をアッセイすることにより確定される。参照値の理論に関する国際臨床化学連合(International Federation of Clinical Chemistry)(IFCC)の専門家パネル及びCLSIのプロトコルなどのプロトコルは、慎重に選択された参照試料群を用いて参照区間を確定する包括的な体系的プロセスを詳しく記述している。これらのプロトコルは、通常、特徴付けされる必要がある各々の群(又は亜群)に対して、最低120の参照個体を必要とする。
CLSI承認ガイドラインC28-A2には、検査室が確定された参照区間の個々の検査室への移行を検証するための様々な方法が記載されており、これには、1.検査室が寄せられた情報を単に再検討し、参照区間が採用する検査室の患者集団及び試験方法に適用できることを主観的に検証する、ディヴァインジャッジメント; 2.実験的検証を、参照試料集団を代表する20人の個体由来の標本を回収及び解析することにより実施する、20個の試料の検証; 3.実験的検証を、参照試料集団を代表する60人の個体由来の標本を回収及び解析することにより実施し、2つの集団の平均及び標準偏差を比較する統計式を用いて、実際の参照区間を推定し、主張又は報告された区間と比較する、60個の試料の推定;並びに4.主張又は報告された参照区間を、観測された方法論的バイアス及び使用されている分析法の間で証明された数学的関係に基づいて調整又は修正することができる、比較法からの計算が含まれる。
当業者であれば、本明細書に開示されるバイオマーカーの参照発現レベル及び2つのバイオマーカー間の参照比を、本明細書に提供される1以上の方法又は当技術分野で公知の他の方法によって決定することができるということを理解しているであろう。
(5. FTI治療のバイオマーカーとしての突然変異体HRAS)
(5.1. HRAS突然変異状況)
HRASタンパク質は、成長因子刺激に応答した細胞***の調節に関与する。成長因子は、細胞の形質膜を貫通する細胞表面受容体に結合することにより作用する。ひとたび活性化されると、受容体は細胞質内のシグナル伝達事象を刺激する。この事象は、タンパク質及びセカンドメッセンジャーが細胞の外側から細胞核にシグナルを伝え、細胞に成長するか又は***するように指示するプロセスである。HRASは形質膜に局在し、多くのシグナル伝達経路における初期のプレイヤーである。HRASは、分子オン/オフスイッチとして作用し−ひとたびオンになると、それは、受容体のシグナルの伝播に必要なタンパク質を動員し、活性化させる。特定の腫瘍では、HRAS又はその上流エフェクターの突然変異によって、それが恒久的にオンにされ、腫瘍細胞成長を促進する下流の成長及び増殖シグナルの持続的な活性化をもたらす。FTIは、タンパク質のファルネシル化及びその後のHRASの膜局在化を阻害し、それにより、HRASをオフに切り替えることによって、これらのシグナル伝達経路に依存的である細胞の異常な成長及び増殖を妨げるように働く。
チピファルニブなどのFTIは、プレニル化として知られるタンパク質修飾の一種である、タンパク質のファルネシル化を妨げる。このファルネシル化は、他のタンパク質修飾とともに、HRASの膜局在化を可能にし、その場合、HRASは、癌のイニシエーション及び発生に関係があるとされる細胞外シグナルを受容及び伝達することができる。チピファルニブなどのFTIは、HRASのファルネシル化及びその後の膜局在化を阻止し、かつインビトロ及びインビボでの腫瘍形成的なHRAS促進性細胞形質転換を阻害することができる。K-ras及びN-rasは同じようにタンパク質のファルネシル化を利用するが、それらは、同じく膜局在化につながる関連するプレニル化経路を利用することもできる。その一方で、HRASの膜局在化は、タンパク質のファルネシル化のみに依存している。
本明細書に提供される方法によって治療されることになる頭頸部癌及び肺癌はHRAS突然変異を有する。本明細書に提供される又はそうでなければ当技術分野で公知の方法を用いて、HRAS遺伝子の突然変異状況を決定することができる。いくつかの実施態様において、HRAS遺伝子の突然変異状況は、NGSベースのアッセイによって決定することができる。いくつかの実施態様において、HRAS遺伝子の突然変異状況は、定量的PCRベースのアッセイ決定することができる。定量的PCRベースのアッセイは、既に開発され、かつFDAによってK-rasに対して承認されたPCRベースのアッセイと技術的に同様であることができる。いくつかの実施態様において、HRAS遺伝子の突然変異状況は、チピファルニブ治療などのFTI治療に対するコンパニオン診断の形で決定することができる。コンパニオン診断は、患者がチピファルニブ治療を受ける診療場所で、又は別の場所で実施することができる。
本明細書に提供されるのは、EGFR阻害剤不応性頭頸部扁平上皮細胞癌(SCCHN)を治療する方法であって、該SCCHNがHRAS突然変異を有し、該対象にファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)を投与することを含む、方法である。ある実施態様において、該HRAS突然変異は、G12、G13、Q61、Q22、K117、A146、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択されるコドンにおけるアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該SCCHNは、K-Ras突然変異もN-Ras突然変異も有さない。ある実施態様において、該SCCHNは、野生型K-Ras及び野生型N-Rasを有する。ある実施態様において、該SCCHNはHPV陰性である。ある実施態様において、該SCCHNはHPV陽性である。ある実施態様において、該SCCHNは進行期にあるか又は転移性である。ある実施態様において、該SCCHNは再発性SCCHNである。具体的な実施態様において、該SCCHNは気管のSCCHNである。具体的な実施態様において、該SCCHNは上顎のSCCHNである。具体的な実施態様において、該SCCHNは口腔のSCCHNである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はパニツムマブである。ある実施態様において、該FTIはチピファルニブである。ある実施態様において、該FTIは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象のSCCHNをFTIで治療する方法又はFTI治療のためにSCCHN患者を選択する方法であって、該SCCHNがEGFR阻害剤による治療に不応性である、方法である。いくつかの実施態様において、該SCCHNはHPV陰性である。いくつかの実施態様において、該SCCHNはHPV陽性である。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)SCCHNがEGFR阻害剤による治療に不応性であると決定すること、(b)SCCHN患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、及びその後、(c)チピファルニブの治療有効量を該患者に投与することを含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象のEGFR阻害剤抵抗性頭頸部扁平上皮細胞癌をFTIで治療する方法である。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はパニツムマブである。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤はパニツムマブである。ある実施態様において、該チピファルニブは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象のSCCHNをFTIで治療する方法又はFTI治療のためにSCCHN患者を選択する方法であって、該患者がEGFR阻害剤で一度も治療されたことがない、方法である。いくつかの実施態様において、該SCCHNはHPV陰性である。いくつかの実施態様において、該SCCHNはHPV陽性である。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)患者がEGFR阻害剤で一度も治療されたことがないと決定すること、(b)該SCCHN患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、並びにその後、(c)チピファルニブの治療有効量を該患者に投与すること及びEGFR阻害剤を投与しないことを含む。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はパニツムマブである。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤はパニツムマブである。ある実施態様において、該チピファルニブは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
本明細書に提供されるのは、EGFR阻害剤不応性肺扁平上皮細胞癌(肺SCC)を治療する方法であって、該肺SCCがHRAS突然変異を有し、該対象にファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)を投与することを含む、方法である。ある実施態様において、該HRAS突然変異は、G12、G13、Q61、Q22、K117、A146、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択されるコドンにおけるアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該肺SCCは、K-Ras突然変異もN-Ras突然変異も有さない。ある実施態様において、該肺SCCは、野生型K-Ras及び野生型N-Rasを有する。ある実施態様において、該肺SCCはHPV陰性である。ある実施態様において、該肺SCCはHPV陽性である。ある実施態様において、該肺SCCは進行期にあるか又は転移性である。ある実施態様において、該肺SCCは再発性肺SCCである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はパニツムマブである。ある実施態様において、該FTIはチピファルニブである。ある実施態様において、該FTIは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象の肺SCCをFTIで治療する方法又はFTI治療のために肺SCC患者を選択する方法であって、該肺SCCがEGFR阻害剤による治療に不応性である、方法である。いくつかの実施態様において、該肺SCCはHPV陰性である。いくつかの実施態様において、該肺SCCはHPV陽性である。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)該肺SCCがEGFR阻害剤による治療に不応性であると決定すること、(b)該肺SCC患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、及びその後、(c)チピファルニブの治療有効量を該患者に投与することを含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象のEGFR阻害剤抵抗性肺扁平上皮細胞癌をFTIで治療する方法である。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はパニツムマブである。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤はパニツムマブである。ある実施態様において、該チピファルニブは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象の肺SCCをFTIで治療する方法又はFTI治療のために肺SCC患者を選択する方法であって、該患者がEGFR阻害剤で一度も治療されたことがない、方法である。いくつかの実施態様において、該肺SCCはHPV陰性である。いくつかの実施態様において、該肺SCCはHPV陽性である。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)患者がEGFR阻害剤で一度も治療されたことがないと決定すること、(b)該肺SCC患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、並びにその後、(c)チピファルニブの治療有効量を該患者に投与すること及びEGFR阻害剤を投与しないことを含む。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はパニツムマブである。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤はパニツムマブである。ある実施態様において、該チピファルニブは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、該HRAS突然変異は、G12、G13、Q61、Q22、K117、及びA146からなる群から選択されるコドンにおける突然変異であることができる。いくつかの実施態様において、該HRAS突然変異は、G12R、G12V、G13C、G13R、Q61L、Q61R、Q22K、K117N、及びA146Pというアミノ置換からなる群から選択される突然変異であることができる。いくつかの実施態様において、該突然変異は、HRASタンパク質の活性化をもたらす別のコドンにおける突然変異であることができる。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、(a)対象由来の試料におけるK-Ras突然変異及びN-Ras突然変異の有無を決定すること、並びにその後、(b)該試料がK-Ras突然変異もN-Ras突然変異も有さない場合、FTIの治療有効量を該対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、本方法は、該試料が野生型K-Ras及び野生型N-Rasを有する場合、FTIの治療有効量を該対象に投与することを含む。ある実施態様において、該FTIは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、K-Ras突然変異はKA-Ras突然変異である。いくつかの実施態様において、K-Ras突然変異はKB-Ras突然変異である。いくつかの実施態様において、K-Ras突然変異は、KA-Ras突然変異とKB-Ras突然変異の組合せである。K-Ras突然変異は、KA-Ras、KB-Ras、又はその両方のG12、G13、及びQ61からなる群から選択されるコドンにおける突然変異を含むことができる。いくつかの実施態様において、KA-Ras突然変異は、アミノ酸置換G12C、G12D、G12A、G12V、G12S、G12F、G12R、G12N、G13C、G13D、G13R、G13S、G13N、Q61K、Q61H、Q61L、Q61P、Q61R、及びA146Vからなる群から選択される突然変異を含むことができる。いくつかの実施態様において、KB-Ras突然変異は、アミノ酸置換G12C、G12D、G12A、G12V、G12S、G12F、G12R、G12N、G13C、G13D、G13R、G13S、G13N、Q61K、Q61H、Q61L、Q61P、Q61R、及びA146Vからなる群から選択される突然変異を含むことができる。
いくつかの実施態様において、N-Ras突然変異は、G12、G13、G15、G60、及びQ61からなる群から選択されるコドンにおける少なくとも1つの突然変異を含むことができる。いくつかの実施態様において、N-Ras突然変異は、G12、G13、及びQ61からなる群から選択されるコドンにおける少なくとも1つの突然変異を含むことができる。いくつかの実施態様において、N-Ras突然変異は、G12C、G12D、G12F、G12S、G12A、G12V、G12R、G13C、G13R、G13A、G13D、G13V、G15W、G60E、Q61P、Q61L、Q61R、Q61K、Q61H、及びQ61Eというアミノ置換からなる群から選択されるコドンにおける少なくとも1つの突然変異を含むことができる。
いくつかの実施態様において、試料は、K-RasのG12、G13、及びQ61におけるアミノ酸置換を有さず、また、N-RasのG12、G13、及びQ61におけるアミノ酸置換を有さないと決定される。いくつかの実施態様において、試料は、K-Ras突然変異もN-Ras突然変異も有さないと決定される。いくつかの実施態様において、試料は、野生型K-Ras及び野生型N-Rasを有すると決定される。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、(a)対象由来の試料におけるHRAS突然変異、K-Ras突然変異、及びN-Ras突然変異の有無を決定すること、並びにその後、(b)該試料がHRAS突然変異を有するが、K-Ras突然変異もN-Ras突然変異も有さないと決定された場合、FTIの治療有効量を該対象に投与することを含む。該試料は腫瘍試料であることができる。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)該SCCHN患者がHRAS突然変異並びに野生型K-Ras及び野生型N-Rasを有すると決定すること、並びにその後、(b)FTIの治療有効量を該対象に投与することを含む。いくつかの実施態様において、FTIはチピファルニブである。ある実施態様において、該FTIは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象のSCCHNをFTIで治療する方法及びFTI治療のために癌患者を選択する方法である。また、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異状況に基づいて、対象の前悪性頭頸部疾患をFTIで治療する方法及びFTI治療のために前悪性頭頸部疾患を有する患者を選択する方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象のSCCHNをFTIで治療する方法又はFTI治療のためにSCCHN患者を選択する方法である。癌は、ヒトパピローマウイルスに関連するもの(HPV+もしくはHPV陽性)、又はHPVに関連しないもの(HPV-もしくはHPV陰性)であることができる。
本明細書に提供されるのは、患者由来の試料におけるHRAS突然変異の存在に基づいて、FTI治療に対するSCCHN患者の応答性を予測する方法、FTI治療のためにSCCHN患者集団を選択する方法、及び対象のSCCHNをFTIの治療有効量で治療する方法である。HRASの突然変異状況は、核酸又はタンパク質レベルで検出することができる。いくつかの実施態様において、該HRAS突然変異状況は、該試料から取得された核酸を解析することにより決定される。いくつかの実施態様において、該HRAS突然変異状況は、該試料から取得されたタンパク質を解析することにより決定される。
いくつかの実施態様において、本方法は、(a)該肺SCC患者がHRAS突然変異並びに野生型K-Ras及び野生型N-Rasを有すると決定すること、並びにその後、(b)FTIの治療有効量を該対象に投与することを含む。いくつかの実施態様において、FTIはチピファルニブである。ある実施態様において、該FTIは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象の肺SCCをFTIで治療する方法及びFTI治療のために癌患者を選択する方法である。また、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異状況に基づいて、対象の前悪性肺疾患をFTIで治療する方法及びFTI治療のために前悪性肺疾患を有する患者を選択する方法である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象の肺SCCをFTIで治療する方法又はFTI治療のために肺SCC患者を選択する方法である。癌は、ヒトパピローマウイルスに関連するもの(HPV+もしくはHPV陽性)、又はHPVに関連しないもの(HPV-もしくはHPV陰性)であることができる。
本明細書に提供されるのは、患者由来の試料におけるHRAS突然変異の存在に基づいて、FTI治療に対する肺SCCの応答性を予測する方法、FTI治療のために肺SCC患者集団を選択する方法、及び対象の肺SCCをFTIの治療有効量で治療する方法である。HRASの突然変異状況は、核酸又はタンパク質レベルで検出することができる。いくつかの実施態様において、該HRAS突然変異状況は、該試料から取得された核酸を解析することにより決定される。いくつかの実施態様において、該HRAS突然変異状況は、該試料から取得されたタンパク質を解析することにより決定される。
いくつかの実施態様において、HRAS突然変異状況は、試料から取得された核酸を解析することにより決定される。該核酸は、試験対象由来のmRNA又はゲノムDNA分子であることができる。核酸を解析することによりRas突然変異状況を決定する方法は、当技術分野で周知である。いくつかの実施態様において、本方法は、シークエンシング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、DNAマイクロアレイ、質量分析(MS)、単一ヌクレオチド多型(SNP)アッセイ、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)、又は制限断片長多型(RFLP)アッセイを含む。いくつかの実施態様において、Ras突然変異状況は、例えば、サンガーシークエンシング、次世代シークエンシング(NGS)を含む、標準的なシークエンシング法を用いて決定される。いくつかの実施態様において、Ras突然変異状況はMSを用いて決定される。
いくつかの実施態様において、HRAS突然変異状況は、試料から取得されたタンパク質を解析することにより決定される。突然変異型Ras H-タンパク質は、種々の免疫組織化学(IHC)手法、免疫ブロッティングアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、又は当技術分野で公知の他の免疫アッセイ法によって検出することができる。
当業者であれば理解しているように、Ras突然変異を解析するための本明細書に記載の又はそうでなければ当技術分野で公知の任意の方法を用いて、HRAS突然変異の有無を決定することができる。
(5.2.試料)
いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法は、対象由来の試料を取得することを含む。いくつかの実施態様において、試料は腫瘍試料である。いくつかの実施態様において、本方法において使用される試料は、生検(例えば、腫瘍生検)を含む。生検は、任意の器官又は組織、例えば、皮膚、肝臓、肺、心臓、結腸、腎臓、骨髄、歯、リンパ節、毛髪、脾臓、脳、***、又は他の器官に由来するものであることができる。当業者に公知の任意の生検技法、例えば、切開生検、非切開生検、コア生検、切除生検、摘出生検、又は微細針吸引生検を対象由来の試料を単離するために使用することができる。
本明細書に提供される方法において使用される試料は、対象由来の体液を含む。体液の非限定的な例としては、血液(例えば、末梢全血、末梢血)、血液血漿、骨髄、羊水、房水、胆汁、リンパ液、おりもの、血清、尿、脳及び脊髄を取り囲む脳脊髄液、骨関節を取り囲む滑液が挙げられる。
一実施態様において、試料は骨髄試料である。骨髄試料を取得する手順は当技術分野で周知であり、これには、限定されないが、骨髄生検及び骨髄穿刺が含まれる。骨髄は、流体部分とより中実な部分を有する。骨髄生検では、中実な部分の試料を採取する。骨髄穿刺では、流体部分の試料を採取する。骨髄生検と骨髄穿刺は同時に行われ、骨髄検査と呼ぶことができる。
いくつかの実施態様において、試料は血液試料である。血液試料は、例えば、Innisら編、PCRプロトコル(PCR Protocols)(Academic Press, 1990)に記載されている従来の技法を用いて取得することができる。白血球は、従来の技法又は市販のキット、例えば、RosetteSepキット(Stein Cell Technologies, Vancouver, Canada)を用いて、血液試料から分離することができる。白血球の亜集団、例えば、単核細胞、NK細胞、B細胞、T細胞、単球、顆粒球、又はリンパ球は、従来の技法、例えば、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotec, Auburn, California)又は蛍光活性化細胞選別(FACS)(Becton Dickinson, San Jose, California)を用いて、さらに単離することができる。
ある実施態様において、本明細書に提供される方法において使用される試料は、複数の細胞を含む。そのような細胞としては、任意のタイプの細胞、例えば、幹細胞、血液細胞(例えば、PBMC)、リンパ球、NK細胞、B細胞、T細胞、単球、顆粒球、免疫細胞、又は腫瘍もしくは癌細胞を挙げることができる。特定の細胞集団は、市販の抗体(例えば、Quest Diagnostic(San Juan Capistrano, Calif.); Dako(Denmark))の組合せを用いて取得することができる。
ある実施態様において、本明細書に提供される方法において使用される試料は、例えば、SCCHNを有する個体由来の罹患組織に由来するものである。いくつかの実施態様において、細胞は、腫瘍もしくは癌細胞又は腫瘍組織、例えば、腫瘍生検又は腫瘍外植片から取得することができる。ある実施態様において、本明細書に提供される方法で使用される細胞の数は、1細胞〜約109細胞の範囲であることができる。いくつかの実施態様において、本明細書に提供される方法で使用される細胞の数は、約1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、又は5×108個である。
対象から回収される細胞の数及び種類は、例えば、フローサイトメトリー、細胞選別、免疫細胞化学検査(例えば、組織特異的もしくは細胞マーカー特異的抗体による染色)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)などの標準的な細胞検出技法を用いて形態及び細胞表面マーカーの変化を測定することにより、光学顕微鏡もしくは共焦点顕微鏡法を用いて細胞の形態を調べることにより、並びに/又はPCR及び遺伝子発現プロファイリングなどの当技術分野で周知の技法を用いて遺伝子発現の変化を測定することによりモニタリングすることができる。これらの技法は、1以上の特定のマーカーについて陽性である細胞を特定するためにも使用することができる。蛍光活性化細胞選別(FACS)は、細胞を含む粒子を、該粒子の蛍光特性に基づいて分離するための周知の方法である(Kamarchの文献、1987, Methods Enzymol, 151:150-165)。個々の粒子中の蛍光部分のレーザーによる励起によってわずかな電荷が生じ、混合物からの正の粒子と負の粒子の電磁分離が可能となる。一実施態様において、細胞表面マーカー特異的抗体又はリガンドは、異なる蛍光標識で標識される。細胞はセルソーターに通して処理され、使用される抗体に結合するその能力に基づく細胞の分離が可能となる。FACSで選別された粒子を96ウェル又は384ウェルプレートの個々のウェルに直接堆積させて、分離及びクローニングを容易にすることができる。
ある実施態様において、細胞のサブセットが本明細書に提供される方法で使用される。細胞の特定の集団を選別及び単離する方法は当技術分野で周知であり、細胞のサイズ、形態、又は細胞内もしくは細胞外マーカーに基づくことができる。そのような方法としては、フローサイトメトリー、フローソーティング、FACS、磁気細胞選別などのビーズに基づく分離、サイズに基づく分離(例えば、ふるい、障害物のアレイ、又はフィルター)、マイクロフルイディクス装置での選別、抗体に基づく分離、沈降、親和性吸着、親和性抽出、密度勾配遠心分離、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションなどが挙げられるが、これらに限定されない。
(5.3.癌)
本明細書に提供されるのは、EGFR阻害剤不応性頭頸部扁平上皮細胞癌(SCCHN)を治療する方法であって、該SCCHNがHRAS突然変異を有し、該対象にファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)を投与することを含む、方法である。ある実施態様において、該HRAS突然変異は、G12、G13、Q61、Q22、K117、A146、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択されるコドンにおけるアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該SCCHNは、K-Ras突然変異もN-Ras突然変異も有さない。ある実施態様において、該SCCHNは、野生型K-Ras及び野生型N-Rasを有する。ある実施態様において、該SCCHNはHPV陰性である。ある実施態様において、該SCCHNはHPV陽性である。ある実施態様において、該SCCHNは進行期にあるか又は転移性である。ある実施態様において、該SCCHNは再発性SCCHNである。具体的な実施態様において、該SCCHNは気管のSCCHNである。具体的な実施態様において、該SCCHNは上顎のSCCHNである。具体的な実施態様において、該SCCHNは口腔のSCCHNである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はパニツムマブである。ある実施態様において、該FTIはチピファルニブである。ある実施態様において、該FTIは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異を有する対象のEGFR阻害剤不応性SCCHNを治療する方法であって、該対象にFTIを投与することを含む、方法である。ある実施態様において、該HRAS突然変異は、G12、G13、Q61、Q22、K117、A146、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択されるコドンにおけるアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該SCCHNは、K-Ras突然変異もN-Ras突然変異も有さない。ある実施態様において、該SCCHNは、野生型K-Ras及び野生型N-Rasを有する。ある実施態様において、該SCCHNはHPV陰性である。ある実施態様において、該SCCHNはHPV陽性である。ある実施態様において、該SCCHNは進行期にあるか又は転移性である。ある実施態様において、該SCCHNは再発性SCCHNである。具体的な実施態様において、該SCCHNは気管のSCCHNである。具体的な実施態様において、該SCCHNは上顎のSCCHNである。具体的な実施態様において、該SCCHNは口腔のSCCHNである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はパニツムマブである。ある実施態様において、該FTIはチピファルニブである。ある実施態様において、該FTIは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象のSCCHNをFTIで治療する方法又はFTI治療のためにSCCHN患者を選択する方法である。いくつかの実施態様において、該SCCHNはHPV陰性である。いくつかの実施態様において、該SCCHNはHPV陽性である。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)HPV陰性SCCHN患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、及びその後、(b)チピファルニブの治療有効量を該患者に投与することを含む。ある実施態様において、該チピファルニブは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在及びEGFR阻害剤に対する抵抗性に基づいて、対象のSCCHNをFTIで治療する方法又はFTI治療のためにSCCHN患者を選択する方法である。いくつかの実施態様において、該SCCHNはHPV陰性である。いくつかの実施態様において、該SCCHNはHPV陽性である。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)HPV陰性SCCHN患者がHRAS突然変異を有し、かつEGFR阻害剤に抵抗性であると決定すること、及びその後、(b)チピファルニブの治療有効量を該患者に投与することを含む。ある実施態様において、該チピファルニブは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
頭頸部扁平上皮細胞癌(SCCHN)は世界中で6番目に多い癌であり、世界中で1年に約650,000件の症例及び200,000件の死亡があり、米国では1年に約54,000件の新しい症例がある。これは、中央アジアで最も多い癌でもある。
SCCHNには、2つの異なる原因と対応する腫瘍型がある。第一の亜型は、喫煙及びアルコール消費と関連しており、ヒトパピローマウイルスと無関係(HPV-又はHPV陰性)である。第二の亜型は、高リスクHPVの感染(HPV+又はHPV陽性)と関連している。第二の亜型は、主に、口腔咽頭癌に限定される。HPV+腫瘍は、良好な予後を有するはっきりと区別できる実体であり、特異な治療を必要とし得る。
SCCHN、特に、口腔咽頭癌の相当な割合がHPV感染によって生じる。高リスクのHPV亜型16は、SCCHNにおける全HPV+腫瘍の85%を占める。P16は、特に、中咽頭のSCCHNにおけるHPV感染の代用マーカーとして使用することができる。より正確なHPV検査が利用可能であり、それは、E6/E7検出に基づくものである(Liang Cらの文献、Cancer Res. 2012;72:5004-5013)。
HPV+ SCCHNは、HPV-SCCHNよりも顕著に低いEGFR発現レベルを示す。EGFR増幅は、HPV-SCCHNでのみ起こる。高いEGFR遺伝子コピー数及びタンパク質発現は、進行SCCHNの悪い臨床転帰と関連している。
現在、再発性/転移性SCCHNの第一選択の治療法としては、任意に抗EGFR抗体療法(例えば、セツキシマブ、パニツムマブ、アファチニブ)と組み合わせた、白金ベースのダブレット(例えば、シスプラチン/5-FU又はカルボプラチン/パクリタキセル)が挙げられる。第二選択の治療法としては、タキサン、メトトレキセート、及び/又はセツキシマブが挙げられる。抗EGFR抗体療法、例えば、セツキシマブ(キメラIgG1)又はパニツムマブを、化学療法(例えば、白金/5-FU、シスプラチン)とともに、又は放射線療法とともに、単剤として使用することができる。SCCHNにおける高いEGFR発現レベルにもかかわらず、セツキシマブの単剤応答率は、わずか13%、SD率は33%であり、現在、利用可能な予測的バイオマーカーは存在しない。
SCCHNの開発中の薬物としては、PI3K経路を標的とするもの: BKM120(ブパルリシブ)+セツキシマブ、BYL719+セツキシマブ、テムシロリムス+セツキシマブ、リゴセルチブ+セツキシマブ; MET経路を標的とするもの: チバンチニブ+セツキシマブ、フィクラツズマブ+セツキシマブ; EGFR/HER3経路を標的とするもの、アファチニブ+セツキシマブ±パクリタキセル、パトリツマブ; FGFR経路を標的とするもの: BGJ398; CDK4/6細胞周期経路を標的とするもの:パルボシクリブ、LEE011; RTKインヒビター:アンロチニブ及び化学療法:経口アザシチジンが挙げられる。SCCHNのごく最近の治療選択肢としては、抗PD1又は抗PDL1抗体などの免疫療法が挙げられる。
外科手術、放射線、化学放射線療法、及び導入化学療法を用いて、限局性及び局所領域性疾患について高い治癒率が達成されているが、再発性/転移性疾患の生存率は、依然として極めて低く、より良好な治療選択肢が必要である。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象のSCCHNをFTIで治療する方法又はFTI治療のためにSCCHN患者を選択する方法であって、該SCCHNがEGFR阻害剤による治療に不応性である、方法である。いくつかの実施態様において、該SCCHNはHPV陰性である。いくつかの実施態様において、該SCCHNはHPV陽性である。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)SCCHNがEGFR阻害剤による治療に不応性であると決定すること、(b)該SCCHN患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、及びその後、(c)チピファルニブの治療有効量を該患者に投与することを含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象のEGFR阻害剤抵抗性扁平上皮細胞癌をFTIで治療する方法である。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤はパニツムマブである。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤はパニツムマブである。いくつかの実施態様において、該患者は、EGFR阻害剤で治療されたことがあり、それにより、結果的に、疾患が進行した。ある実施態様において、該チピファルニブは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象のSCCHNをFTIで治療する方法又はFTI治療のためにSCCHN患者を選択する方法であって、該患者がEGFR阻害剤で一度も治療されたことがない、方法である。いくつかの実施態様において、該SCCHNはHPV陰性である。いくつかの実施態様において、該SCCHNはHPV陽性である。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)患者がEGFR阻害剤で一度も治療されたことがないと決定すること、(b)該SCCHN患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、並びにその後、(c)チピファルニブの治療有効量を該患者に投与すること及びEGFR阻害剤を投与しないことを含む。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤はパニツムマブである。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤はパニツムマブである。ある実施態様において、該チピファルニブは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
SCCHNが不応性であるEGFR阻害剤は、当技術分野で公知の任意のEGFR阻害剤であり得る。該EGFR阻害剤は、抗EGFR抗体又はその抗原結合性断片、例えば、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標); Bristol-Myers Squibb/Lilly)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標); Amgen)、又はザルツムマブ(Genmab)であり得る。該EGFR阻害剤は、低分子阻害剤でもあり得る。EGFR阻害剤の例としては、可逆的及び不可逆的阻害剤、例えば、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標); Genentech/Astellas Oncology)、AZD9291(AstraZeneca)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標); AstraZeneca)、イコチニブ(BPI-2009H; Beta Pharma)、ロシレチニブ(CO-1686、AVL-301; Clovis Oncology)、ポジオチニブ(NOV120101、HM781-36B; Hanmi Pharmaceuticals/Spectrum Pharmaceuticals)、アファチニブ(BIBW2292; Boehringer Ingelheim)、ペリチニブ(EKB-569; Wyeth Pharmaceuticals)、ASP8273(Astellas)、ルミネスピブ(AUY922; Vernalis/Novartis)、及びXL647(Exelixis)が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在及びEGFR阻害剤に対する抵抗性に基づいて、対象のSCCHNを治療する方法である。いくつかの実施態様において、該SCCHNは、HPV陰性SCCHNであることができる。いくつかの実施態様において、該SCCHNは、HPV陽性SCCHNであることができる。いくつかの実施態様において、該SCCHNは、再発性(relapsed)/再発性(recurrent)SCCHNであることができる。いくつかの実施態様において、該SCCHNは、転移性SCCHNであることができる。本明細書に提供される方法は、(a)対象由来の試料におけるHRAS突然変異の有無を決定すること、及びその後、(b)該試料がHRAS突然変異を有すると決定された場合、FTIの治療有効量を該対象に投与することを含む。本明細書に提供される方法は、(a)対象由来の試料におけるHRAS突然変異の有無を決定すること、(b)EGFR阻害剤に対する抵抗性を決定すること、及びその後、(c)該試料がHRAS突然変異を有し、かつEGFR阻害剤に抵抗性であると決定された場合、FTIの治療有効量を該対象に投与することを含む。該試料は腫瘍試料であることができる。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)SCCHN患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、及びその後、(b)FTIの治療有効量を該対象に投与することを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)SCCHN患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、及び(b)EGFR阻害剤に対する抵抗性を決定すること、及びその後、(c)FTIの治療有効量を該対象に投与することを含む。いくつかの実施態様において、FTIはチピファルニブである。ある実施態様において、該FTIは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
本明細書に提供されるのは、EGFR阻害剤不応性肺扁平上皮細胞癌(肺SCC)を治療する方法であって、該肺SCCがHRAS突然変異を有し、該対象にファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)を投与することを含む、方法である。ある実施態様において、該HRAS突然変異は、G12、G13、Q61、Q22、K117、A146、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択されるコドンにおけるアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該肺SCCは、K-Ras突然変異もN-Ras突然変異も有さない。ある実施態様において、該肺SCCは、野生型K-Ras及び野生型N-Rasを有する。ある実施態様において、該肺SCCはHPV陰性である。ある実施態様において、該肺SCCはHPV陽性である。ある実施態様において、該肺SCCは進行期にあるか又は転移性である。ある実施態様において、該肺SCCは再発性肺SCCである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はパニツムマブである。ある実施態様において、該FTIはチピファルニブである。ある実施態様において、該FTIは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異を有する対象のEGFR阻害剤不応性肺SCCを治療する方法であって、該対象にFTIを投与することを含む、方法である。ある実施態様において、該HRAS突然変異は、G12、G13、Q61、Q22、K117、A146、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択されるコドンにおけるアミノ酸置換を含む。ある実施態様において、該肺SCCは、K-Ras突然変異もN-Ras突然変異も有さない。ある実施態様において、該肺SCCは、野生型K-Ras及び野生型N-Rasを有する。ある実施態様において、該肺SCCはHPV陰性である。ある実施態様において、該肺SCCはHPV陽性である。ある実施態様において、該肺SCCは進行期にあるか又は転移性である。ある実施態様において、該肺SCCは再発性肺SCCである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。ある実施態様において、該EGFR阻害剤はパニツムマブである。ある実施態様において、該FTIはチピファルニブである。ある実施態様において、該FTIは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象の肺SCCをFTIで治療する方法又はFTI治療のために肺SCC患者を選択する方法である。いくつかの実施態様において、肺SCCはHPV陰性である。いくつかの実施態様において、該肺SCCはHPV陽性である。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)HPV陰性肺SCC患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、及びその後、(b)チピファルニブの治療有効量を該患者に投与することを含む。ある実施態様において、該チピファルニブは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在及びEGFR阻害剤に対する抵抗性に基づいて、対象の肺SCCをFTIで治療する方法又はFTI治療のために肺SCC患者を選択する方法である。いくつかの実施態様において、肺SCCはHPV陰性である。いくつかの実施態様において、該肺SCCはHPV陽性である。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)HPV陰性肺SCC患者がHRAS突然変異を有し、かつEGFR阻害剤に抵抗性であると決定すること、及びその後、(b)チピファルニブの治療有効量を該患者に投与することを含む。ある実施態様において、該チピファルニブは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象の肺SCCをFTIで治療する方法又はFTI治療のために肺SCC患者を選択する方法であって、該肺SCCがEGFR阻害剤による治療に不応性である、方法である。いくつかの実施態様において、肺SCCはHPV陰性である。いくつかの実施態様において、該肺SCCはHPV陽性である。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)肺SCCがEGFR阻害剤による治療に不応性であると決定すること、(b)該肺SCC患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、及びその後、(c)チピファルニブの治療有効量を該患者に投与することを含む。いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象のEGFR阻害剤抵抗性扁平上皮細胞癌をFTIで治療する方法である。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤はパニツムマブである。いくつかの実施態様において、該患者はEGFR阻害剤で治療されたことがあり、それにより、結果として、疾患が進行した。ある実施態様において、該チピファルニブは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象の肺SCCをFTIで治療する方法又はFTI治療のために肺SCC患者を選択する方法であって、該患者がEGFR阻害剤で一度も治療されたことがない、方法である。いくつかの実施態様において、肺SCCはHPV陰性である。いくつかの実施態様において、該肺SCCはHPV陽性である。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)患者がEGFR阻害剤で一度も治療されたことがないと決定すること、(b)該肺SCC患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、並びにその後、(c)チピファルニブの治療有効量を該患者に投与すること及びEGFR阻害剤を投与しないことを含む。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はセツキシマブである。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はエルロチニブである。いくつかの実施態様において、該EGFR阻害剤はゲフィチニブである。いくつかの実施態様において、EGFR阻害剤はパニツムマブである。ある実施態様において、該チピファルニブは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
肺SCCが不応性であるEGFR阻害剤は、当技術分野で公知の任意のEGFR阻害剤であり得る。該EGFR阻害剤は、抗EGFR抗体又はその抗原結合性断片、例えば、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標); Bristol-Myers Squibb/Lilly)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標); Amgen)、又はザルツムマブ(Genmab)であり得る。該EGFR阻害剤は、低分子阻害剤でもあり得る。EGFR阻害剤の例としては、可逆的及び不可逆的阻害剤、例えば、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標); Genentech/Astellas Oncology)、AZD9291(AstraZeneca)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標); AstraZeneca)、イコチニブ(BPI-2009H; Beta Pharma)、ロシレチニブ(CO-1686、AVL-301; Clovis Oncology)、ポジオチニブ(NOV120101、HM781-36B; Hanmi Pharmaceuticals/Spectrum Pharmaceuticals)、アファチニブ(BIBW2292; Boehringer Ingelheim)、ペリチニブ(EKB-569; Wyeth Pharmaceuticals)、ASP8273(Astellas)、ルミネスピブ(AUY922; Vernalis/Novartis)、及びXL647(Exelixis)が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在及びEGFR阻害剤に対する抵抗性に基づいて、対象の肺SCCを治療する方法である。いくつかの実施態様において、該肺SCCは、HPV陰性肺SCCであることができる。いくつかの実施態様において、該肺SCCは、HPV陽性肺SCCであることができる。いくつかの実施態様において、該肺SCCは、再発性(relapsed)/再発性(recurrent)肺SCCであることができる。いくつかの実施態様において、該肺SCCは、転移性肺SCCであることができる。本明細書に提供される方法は、(a)対象由来の試料におけるHRAS突然変異の有無を決定すること、及びその後、(b)該試料がHRAS突然変異を有すると決定された場合、FTIの治療有効量を該対象に投与することを含む。本明細書に提供される方法は、(a)対象由来の試料におけるHRAS突然変異の有無を決定すること、(b)EGFR阻害剤に対する抵抗性を決定すること、及びその後、(c)該試料がHRAS突然変異を有し、かつEGFR阻害剤に抵抗性であると決定された場合、FTIの治療有効量を該対象に投与することを含む。該試料は腫瘍試料であることができる。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)肺SCC患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、及びその後、(b)FTIの治療有効量を該対象に投与することを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)肺SCC患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、及び(b)EGFR阻害剤に対する抵抗性を決定すること、及びその後、(c)FTIの治療有効量を該対象に投与することを含む。いくつかの実施態様において、FTIはチピファルニブである。ある実施態様において、該FTIは、化学療法と組み合わせて投与される。ある実施態様において、該化学療法は、白金ベースの療法、タキサン、又はこれらの組合せを含む。
(5.4.例示的なFTI及び投薬量)
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象のSCCHNをチピファルニブで治療する方法又はチピファルニブ治療のためにSCCHN患者を選択する方法である。いくつかの実施態様において、本方法は、対象を、本明細書に記載の又はそうでなければ当技術分野で公知の別のFTIで治療することを含む。いくつかの実施態様において、FTIは、チピファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、ロナファルニブ(SCH-66336)、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、及びBMS-214662からなる群から選択される。
いくつかの実施態様において、FTIは、経口、非経口、経直腸、又は局所投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、経口投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは、経口、非経口、経直腸、又は局所投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは、経口投与される。
いくつかの実施態様において、FTIは1〜1000mg/kg体重の用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは1日2回投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、1日2回、200〜1200mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、1日2回、600mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、1日2回、900mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは1〜1000mg/kg体重の用量で投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは1日2回投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは、1日2回、200〜1200mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは、1日2回、600mgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは、1日2回、900mgの用量で投与される。
いくつかの実施態様において、FTIは治療サイクルで投与される。いくつかの実施態様において、FTIは隔週で投与される。いくつかの実施態様において、FTIは28日の治療サイクルの1〜7及び15〜21日目に投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、28日の治療サイクルの1〜7及び15〜21日目に、1日2回、900mgの用量で、経口投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは治療サイクルで投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは隔週で投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは、28日の治療サイクルの1〜7及び15〜21日目に投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは、28日の治療サイクルの1〜7及び15〜21日目に、1日2回、900mgの用量で、経口投与される。
いくつかの実施態様において、FTIは、少なくとも3サイクルの間、投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、少なくとも6サイクルの間、投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、最大12サイクルの間、投与される。いくつかの実施態様において、FTIは、少なくとも3サイクルの間、28日の治療サイクルの1〜7及び15〜21日目に、1日2回、900mgの用量で、経口投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは、少なくとも3サイクルの間、投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは、少なくとも6サイクルの間、投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは、最大12サイクルの間、投与される。いくつかの実施態様において、チピファルニブは、少なくとも3サイクルの間、28日の治療サイクルの1〜7及び15〜21日目に、1日2回、900mgの用量で、経口投与される。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて、対象のSCCHNをチピファルニブで治療する方法である。いくつかの実施態様において、該SCCHNは、HPV陰性SCCHNであることができる。いくつかの実施態様において、該SCCHNは、HPV陽性SCCHNであることができる。いくつかの実施態様において、該SCCHNは、再発性(relapsed)/再発性(recurrent)SCCHNであることができる。いくつかの実施態様において、該SCCHNは、転移性SCCHNであることができる。本明細書に提供される方法は、(a)対象由来の試料におけるHRAS突然変異の有無を決定すること、及びその後、(b)該試料がHRAS突然変異を有すると決定された場合、チピファルニブの治療有効量を該対象に投与することを含む。該試料は腫瘍試料であることができる。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)SCCHN患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、及びその後、(b)チピファルニブの治療有効量を該対象に投与することを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、該対象に、本明細書に記載の又はそうでなければ当技術分野で公知の別のFTIを投与することを含む。いくつかの実施態様において、FTIは、チピファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、ロナファルニブ(SCH-66336)、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、及びBMS-214662からなる群から選択される。
いくつかの実施態様において、本方法は、(a)SCCHN患者がEGFR阻害剤に抵抗性であり、かつHRAS突然変異を有すると決定すること、及びその後、(b)チピファルニブを該対象に投与することを含み、ここで、該チピファルニブは、28日の治療サイクルの1〜7及び15〜21日目に、1日2回、900mgの用量で、経口投与される。いくつかの実施態様において、該SCCHN患者は、再発性/不応性SCCHNを有する。いくつかの実施態様において、該SCCHN患者は、HPV陰性SCCHNを有する。いくつかの実施態様において、該SCCHN患者は、HPV陽性SCCHNを有する。
いくつかの実施態様において、本方法は、第二の療法を、HRAS突然変異を有するSCCHNを有する患者に投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、第二の療法は、化学療法、例えば、シスプラチン、5-FU、カルボプラチン、パクリタキセル、又は白金ベースのダブレット(例えば、シスプラチン/5-FU又はカルボプラチン/パクリタキセル)である。いくつかの実施態様において、第二の療法は、タキサン及び/又はメトトレキセートである。いくつかの実施態様において、第二の療法は放射線療法である。いくつかの実施態様において、第二の療法としては、PI3K経路を標的とするもの: BKM120(ブパルリシブ)、BYL719、テムシロリムス、リゴセルチブ; MET経路を標的とするもの:チバンチニブ、フィクラツズマブ; HER3経路を標的とするもの、パトリツマブ; FGFR経路を標的とするもの: BGJ398; CDK4/6-細胞周期経路を標的とするもの:パルボシクリブ、LEE011; RTK阻害剤:アンロチニブ、及び化学療法:経口アザシチジンが挙げられる。いくつかの実施態様において、第二の療法は、免疫療法、例えば、抗PD1又は抗PDL1抗体である。いくつかの実施態様において、第二の療法はタキサンである。
いくつかの実施態様において、本明細書に提供されるのは、HRAS突然変異の存在に基づいて対象の肺SCCをチピファルニブで治療する方法である。いくつかの実施態様において、該肺SCCは、HPV陰性肺SCCであることができる。いくつかの実施態様において、該肺SCCは、HPV陽性肺SCCであることができる。いくつかの実施態様において、該肺SCCは、再発性(relapsed)/再発性(recurrent)肺SCCであることができる。いくつかの実施態様において、該肺SCCは、転移性肺SCCであることができる。本明細書に提供される方法は、(a)対象由来の試料におけるHRAS突然変異の有無を決定すること、及びその後、(b)該試料がHRAS突然変異を有すると決定された場合、チピファルニブの治療有効量を該対象に投与することを含む。該試料は腫瘍試料であることができる。いくつかの実施態様において、本方法は、(a)肺SCC患者がHRAS突然変異を有すると決定すること、及びその後、(b)チピファルニブの治療有効量を該対象に投与することを含む。いくつかの実施態様において、本方法は、該対象に、本明細書に記載の又はそうでなければ当技術分野で公知の別のFTIを投与することを含む。いくつかの実施態様において、該FTIは、チピファルニブ、アルグラビン、ペリリルアルコール、ロナファルニブ(SCH-66336)、L778123、L739749、FTI-277、L744832、CP-609,754、R208176、AZD3409、及びBMS-214662からなる群から選択される。
いくつかの実施態様において、本方法は、(a)肺SCC患者がEGFR阻害剤に抵抗性であり、かつHRAS突然変異を有すると決定すること、及びその後、(b)チピファルニブを該対象に投与することを含み、ここで、該チピファルニブは、28日の治療サイクルの1〜7及び15〜21日目に、1日2回、900mgの用量で、経口投与される。いくつかの実施態様において、該肺SCC患者は、再発性/不応性肺SCCを有する。いくつかの実施態様において、該肺SCC患者は、HPV陰性肺SCCを有する。いくつかの実施態様において、該肺SCC患者は、HPV陽性肺SCCを有する。
いくつかの実施態様において、本方法は、第二の療法を、HRAS突然変異を有する肺SCCを有する患者に投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、第二の療法は、化学療法、例えば、シスプラチン、5-FU、カルボプラチン、パクリタキセル、又は白金ベースのダブレット(例えば、シスプラチン/5-FUもしくはカルボプラチン/パクリタキセル)である。いくつかの実施態様において、第二の療法は、タキサン及び/又はメトトレキセートである。いくつかの実施態様において、第二の療法は、放射線療法である。いくつかの実施態様において、第二の療法としては、PI3K経路を標的とするもの: BKM120(ブパルリシブ)、BYL719、テムシロリムス、リゴセルチブ; MET経路を標的とするもの:チバンチニブ、フィクラツズマブ; HER3経路を標的とするもの、パトリツマブ; FGFR経路を標的とするもの: BGJ398; CDK4/6-細胞周期経路を標的とするもの:パルボシクリブ、LEE011; RTK阻害剤:アンロチニブ、及び化学療法:経口アザシチジンが挙げられる。いくつかの実施態様において、第二の療法は、免疫療法、例えば、抗PD1又は抗PDL1抗体である。いくつかの実施態様において、第二の療法はタキサンである。
(6.実施例)
本発明の様々な実施態様の活性に実質的には影響を及ぼさない修飾も本明細書に提供される本発明の定義の範囲内に提供されることが理解される。したがって、以下の実施例は、本発明を限定することではなく、それを例示することを意図する。本明細書に引用される参考文献は全て、引用により完全に組み込まれる。
(実施例I)
(HRAS突然変異に基づいて層別化された固形腫瘍患者におけるチピファルニブ臨床試験)
既知のHRAS突然変異を有する局所進行性切除不能もしくは転移性、再発性、及び/又は不応性の非血液学的悪性腫瘍の治療においてチピファルニブを使用するために、第2相臨床試験を開始した。第二の目的には、該悪性腫瘍の安全性及び忍容性が含まれる。第一の探索的目的は、該悪性腫瘍におけるチピファルニブの無増悪生存期間(PFS)及び奏功期間(DOR)に関して抗腫瘍活性を探索することである。第二の探索的目的は、記録保管用の生検を収集すること及びこれらの生検をチピファルニブ活性に潜在的に関連のある組織バイオマーカーの検出のために解析することの実現可能性を探索することである。
臨床試験設計は、各々18人の患者の2つのコホートを登録することを含む。コホート1は、甲状腺の組織学的検査とは独立に、HRAS突然変異を有する悪性甲状腺腫瘍を有する対象を登録する。コホート2は、第一段階では、適格性基準を満たす甲状腺癌以外の非血液学的HRAS突然変異体腫瘍を有する任意の対象、第二段階では、頭頸部扁平上皮細胞癌(SCCHN/HNSCC)を有する任意の対象を登録する。コホート2の第一段階で認められた抗腫瘍活性に基づいて、コホート2の第二段階での登録を、HRAS突然変異のみを有するSCCHNの対象に制限するように、プロトコルを修正した。
本臨床試験は、第一段階が11人の評価可能な患者を含み、第二段階が7人の追加の評価可能な患者を含む、2つの段階を含むように設計され、第一段階のコホートで1つの客観的応答が認められるか又は客観的応答が全く認められない場合、コホートは、第二段階に進まなかった。18人の対象のうち、少なくとも4人の応答がコホートで認められた場合、臨床試験は陽性とみなされる。主要エンドポイントは客観的応答率であり、腫瘍応答評価は、固形腫瘍における応答評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)のバージョン1.1基準に従って実施される(応答の確認が要求される)。
このプロトコルに従って、チピファルニブを、28日サイクルの隔週で(1〜7日目及び15〜21日目に)、7日間、1日2回(b.i.d.)、900mgの開始用量で、食物とともに経口的に、登録された患者に投与する。管理不可能な毒性が存在しない場合、対象は、疾患進行及び管理不可能な毒性の非存在下で、チピファルニブ治療を最大12カ月受け続けることができる。治療は、治験責任医師及び治験依頼者の合意があれば、12カ月を超えて継続することができる。対象が900mgの用量レベルで用量制限毒性を経験していない場合、治験責任医師の裁量によって、チピファルニブの用量を1200mg b.i.d.に増加させることができる。
腫瘍評価は、スクリーニング時に、並びに最初の6カ月間は約8週間毎に(第2、第4、第6サイクル)、及びその後、第2サイクルの終了時から疾患進行まで12週間毎に(第9、第12、第15サイクルなど)実施される。
チピファルニブと関係があるとみなされ、かつ14日以上持続する重篤な有害事象(SAE)又はグレード2以上の治療により発現した有害事象(TEAE)を発症する対象は用量漸増を受けない。治療に関連する、治療により発現した毒性を制御するための段階的な300mg用量低下も許容される。
チピファルニブと関係があるとみなされ、かつ14日以上持続する重篤な有害事象(SAE)又はグレード2以上の治療により発現した有害事象(TEAE)を発症する対象は用量漸増を受けない。治療に関連する、治療により発現した毒性を制御するための段階的な300mg用量低下も許容される。
(試験評価:)
スクリーニング。スクリーニング手順の一部として、全ての試験対象は、以下を受ける:インフォームドコンセント用紙(ICF)の完成、組入れ/除外基準の評価、腫瘍HRAS状況情報の収集、事前の最後の抗癌療法に対する応答の結果及び持続期間を含む病歴、体重及びバイタルサインを含む人間ドック(complete physical examination)、併用薬の使用、有害事象評価、12誘導ECG、ECOGパフォーマンスステータス、血液検査と化学検査と凝固と尿検査とを含む標準的な実験室検査、妊娠の可能性がある女性の妊娠検査、並びにベースライン腫瘍イメージング。治験責任医師によって対象になるとみなされた場合、血清腫瘍負荷マーカーもこの時点で収集することができる。分化した甲状腺癌についてはチログロブリン及び抗チログロブリン抗体の収集、並びに甲状腺髄様癌についてはカルシトニン及びCEAの収集が推奨される。
治療相。各々の治療サイクルで1日目(+/-2日)に実施されるべき評価には:症状に基づく身体検査、12誘導ECG(第1サイクルのみ)、ECOGパフォーマンスステータス、標準的な実験室検査、妊娠の可能性がある女性の妊娠検査、並びに併用薬及び有害事象の評価が含まれる。腫瘍イメージングは、最初の6カ月間は約8週間毎に(第2、第4、第6サイクル)、及びその後、第2サイクルの終了時(22日目+/-5日)から疾患進行の兆候まで12週間毎に(第9、第12、第15サイクルなど)、又は治験責任医師によって必要とみなされた場合はより頻繁に、繰り返されることになる。試料がスクリーニング手順中に先に収集された場合、血清腫瘍負荷マーカーの評価用の血液試料も、腫瘍イメージング評価と同じ時点で収集されることになる。
治療診療の終了。治療診療の終了は、治験治療の最後の投与から約30日以内か、又は任意の他の抗癌療法の開始直前かの、どちらか最初に来る方に行われる。対象には、人間ドック、ECOGパフォーマンスステータス、12誘導ECG、標準的な実験室検査、妊娠の可能性がある女性の妊娠検査、並びに併用薬及び有害事象の評価が行われる。さらなる安全性追跡調査は、治療に関連する有害事象からの回復がないときに予定される。
追加の追跡調査。腫瘍イメージング及び血清腫瘍負荷マーカー用の試料の評価は、最初の6カ月は約8週間の間隔で(第2、第4、第6サイクル)、及びその後、疾患進行の兆候まで12週間毎に(第9、第12、第15サイクルなど)継続して繰り返される。疾患進行時には、生存及び他の抗癌治療の使用について、死亡か、又は対象の試験コホートの増加が終了してから12カ月後かのいずれかまで12週間毎に、対象に連絡が取られる。
(実施例II)
(セツキシマブ治療の失敗後のHRAS突然変異を有する扁平上皮頭頸部癌におけるチピファルニブによる客観的応答)
頭頸部扁平上皮細胞癌(SCCHN)の診断を有する3人の対象を実施例Iの探索的非盲検第2相試験に登録した。対象1は、事前のパクリタキセル、カルボプラチン、及びセツキシマブ療法後の局所再発時にチピファルニブ試験に参加した、鼻腔円筒細胞癌/移行細胞癌及び二次原発として気管のSCCHNの診断を有する77歳の白人男性である。この対象についての化学療法を伴うセツキシマブ療法の最も良好な応答は、疾患安定化であった。対象2は、上顎SCCの診断並びに二次原発としての口腔SCCHNと肺転移とを有する21歳の白人男性である。対象3は、口腔SCCHNを有する59歳の白人男性である。対象2及び3は、それぞれ、単独の又は化学療法と組み合わせたセツキシマブ療法を受け、対象2は、短期進行(2サイクル)、その後、疾患進行を有し、対象3は、疾患進行という最も良好な応答を有した。次世代腫瘍シークエンシングは、対象1の腫瘍におけるQ22K HRAS突然変異の存在並びに対象2及び3におけるQ61K HRAS突然変異の存在を明らかにした。CASP8突然変異も、TP53突然変異も、PIK3CA突然変異も見出されなかった。対象2の腫瘍は、MAPK1 E322K突然変異、並びにABL1、NOTCH3、RET、及びROS1における点突然変異も保有している。これらの対象のHPV状況は未決定である。
第2相チピファルニブ試験の一部として、対象は、28日の治療サイクルの1〜7及び15〜21日目に、po、bidで毎日、900mgの開始用量で、チピファルニブによる治療を受けた。対象1は、11サイクルの間、900mg bidによる治療を受け、この時点で、NCI CTCAE 4.03グレード2の末梢神経障害が発症したため、そのチピファルニブの用量を600mg bidに低下させた。対象1は、治療を継続しており、現在、1年にわたって試験を行っている。対象2は、600mg bidに、その後、グレード2の末梢神経障害が原因で、第1サイクルの間、300mg bidに用量を低下させ、第7サイクルでの病状悪化/対象の脱落まで、さらに6サイクルの間、治療を継続した。対象3は、900mg bidの用量で8サイクルの治療を受け、試験を継続した。これらの対象で認められた他の毒性は、チピファルニブについて以前に報告された全体的な安全性プロファイルと一致した(Mesa. Expert Rev Anticancer Ther. 2006;6:313-90)。
腫瘍評価は、対象スクリーニング時、並びに最初の6カ月間は約8週間毎に(第2、第4、第6サイクル)、及びその後、第2サイクルの終了時から疾患進行まで12週間毎に(第9、第12、第15サイクルなど)実施した。追加の腫瘍評価は、治験責任医師によって又は客観的応答の確認のために必要とみなされた場合、実施することができた。対象1と対象3はどちらも、RECIST 1.1基準による検証済みの客観的部分応答を経験した。応答は、それぞれ、6及び2サイクルの治療の後に、基準を満たした。対象2は、8%のわずかな退縮を伴う疾患安定化を経験した。対象2の試験中の最後の腫瘍スキャンは、疾患進行についてのイメージング基準を満たさなかったが、この人は、病状悪化のために、7カ月の疾患安定化の後で試験から離れた。ベースライン時及び第4サイクル、22日目の患者1における腫瘍応答のCTスキャンは、図1A〜Bに示されている。
まとめると、本明細書に報告されているのは、チピファルニブ療法による有意義な臨床的利益を受けた進行性HRAS突然変異体SCCHNを有する3人の対象の転帰である。HRASは、SCCHNにおいて、特に、口腔腫瘍及びHPV陰性である腫瘍において、他のRAS種よりも大きな役割を果たすことが知られている(Saranathらの文献、Br J Cancer. 1991;63:573-578; Andersonらの文献、 J Otolaryngol. 1992;21:321-326; Andersonらの文献、Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 1994;120:755-760)。全体として、SCCHN癌の約5%、ただし、16%までがHPV陰性口腔癌で報告されている(Nat Commun. 2013;4:2873)。癌ゲノムアトラスネットワーク(Cancer Genome Atlas Network)によるSCCHNの最近の包括的ゲノム特徴解析(Nature 517, 576-582, 2015)により、CASP8、NOTCH1、及びTP53の不活化突然変異と連動したHRAS又はPIK3CAの活性化突然変異と併せて、稀にしか起こらないコピー数変化を有する口腔腫瘍の亜群の存在が明らかになった。このグループによると、野生型TP53と突然変異体HRAS及び/又はCASP8の3遺伝子群は、腫瘍形成への代替経路を構成し得る。
セツキシマブは、現在、化学療法もしくは放射線と組み合わせたSCCHNの最前線の治療としての使用又は白金ベースの療法の失敗後の単剤治療としてのセカンドライン設定における使用のために承認されている。RAS遺伝子状況によるSCCHNでの使用のための制限も推奨も存在しない。本発明者らの研究において、対象1は、その最後の事前の抗癌レジメン(化学療法とセツキシマブの組合せ)に対して安定疾患という最も良好な応答を有していたが、対象2及び3は、それぞれ、事前のセツキシマブ単剤療法又は化学療法と組み合わせたセツキシマブに不応性であった。興味深いことに、対象2及び3は、Q61Kホットスポット突然変異を保有する口腔腫瘍を有していたが、対象1は、珍しいQ22K突然変異を有していた。セツキシマブ治療に対する転帰の差が組織像又はHRAS突然変異型に一部関連し得るかどうかは不明である。
チピファルニブは、強力かつ選択的なFTIである。固形腫瘍の単剤療法としてのこの薬剤の第II相及び第III相試験は期待外れであったが、ある有望な活性が骨髄異形成症候群及び急性骨髄性白血病を有する患者で認められた(Mesa. Expert Rev Anticancer Ther. 2006;6:313-90)。同様に、白金ベースの療法後の患者の再発性SCCHNにおけるロナファルニブという別のFTIの先行研究は、客観的応答がなかったため、中間解析で打ち切られた(Hanrahanらの文献、Am J Clin Oncol. 2009;32:274-9)。本発明者らの結果は、腫瘍HRAS突然変異がチピファルニブ療法から利益を受けることができるSCCHN患者の特定に寄与し得るという仮説を強く支持する。HRAS突然変異は、標準治療のセツキシマブに基づく療法による治療に対する一次抵抗性又は獲得抵抗性も促進し得る。これらの仮説のさらなる検討が正当化される。
(実施例III)
(HRAS突然変異体ヒト頭頸部扁平上皮細胞癌の患者由来異種移植モデルでチピファルニブを用いて実施された有効性実験)
(実験方法及び手順)
選択された初代ヒト頭頸部癌組織が接種されたストックマウス由来の腫瘍断片を採取し、BALB/cヌードマウスへの接種に使用した。-26日目に、腫瘍を発生させるために、各々のマウスの右の脇腹に、初代ヒト頭頸部癌モデルHN1420断片(R4P5、直径2〜4mm)を皮下接種した。HN1420は、A146P HRAS突然変異及び野生型TP53を有し、かつセツキシマブに抵抗性である。平均腫瘍サイズが0日目に約224mm3に達したとき、マウスを群に分けた。マウスを、その腫瘍サイズに応じて、2つの実験群に無作為に割り当てた。各々の群は、ケージ当たり3匹のマウスで、3匹のマウスからなっていた。この日を0日目と表した。試験品を、表1に示される所定のレジメンに従って、1日2回(BID)×21のスケジュールで、1日目から21日目まで、腫瘍担持マウスに投与した。
表1.試験デザイン
注: N: 1群当たりの動物数。BID投与間隔は6〜8時間隔てた。
腫瘍サイズを、毎週2回、キャリパーを用いて、2次元で測定した。体積は、式: TV=0.5a×b2(式中、a及びbは、それぞれ、腫瘍の長径及び短径である)を用いて、mm3で表されている。その後、腫瘍サイズを、下記のように、腫瘍成長阻害(TGI)及びT/Cの計算に使用する。
腫瘍成長阻害、%TGI=(1-(Ti-T0)/(Vi-V0))*100; Tiは測定日の治療群の平均腫瘍体積とし; T0は1日目の治療群の平均腫瘍体積とし; Viは測定日の対照群の平均腫瘍体積とし; V0は1日目の対照群の腫瘍体積とする。
T/C値(%)は、治療に対する腫瘍応答の指標であり、一般に使用される抗腫瘍活性エンドポイントの1つであり; T及びCは、所与の日における、それぞれ、治療群及び対照群の平均腫瘍体積である。
平均及び平均の標準誤差(SEM)を含む簡易統計が各々の時点での各々の群の腫瘍体積について提供される。試験終了時の群間の腫瘍体積の差の統計解析を独立試料t-検定を用いて実施した。データは全て、SPSS 16.0を用いて解析した。P<0.05を統計的に有意であるとみなした。
(結果のまとめ及び考察)
チピファルニブ(R115777)の有効性を、雌BALB/cヌードマウスにおけるHUPRIME(登録商標)頭頸部癌異種移植モデルHN1420の処置において評価した。
第1群(ビヒクル、p.o.、BID×21)及び第2群(チピファルニブ、80mg/kg、p.o.、BID×21)において、最終用量の1週間後の試験終了時の体重変化は、それぞれ、6.95%及び1.12%であった(図示せず)。試験中、動物の死亡も、有意な体重減少も、投薬中止もなかった。したがって、試験化合物のチピファルニブは、HN1420腫瘍担持マウスで十分に忍容された。
表2に示されているように、腫瘍サイズは、ビヒクル処置動物において速やかに増加し、1週間後に約650mm3の平均に達し、2週間以内に1000mm3を超え、試験の終了までに1700mm3を超えた。対照的に、チピファルニブを受けている動物の腫瘍は、最初の2週間は基本的に変化しないままであり、4週間の実験の過程で、サイズが平均150mm3だけ増加した。
表2 様々な処置群におけるHN1420腫瘍サイズ
注:データは平均±SEMとして表されている。
図2に示されているように、ビヒクル処置マウスの平均腫瘍サイズは、21日目に、1494.1mm3に達した。腫瘍体積の安定化は、チピファルニブ処置マウスにおいて、99%のTGI及び16%のT/Cで達成された(P<0.001)。処置後の様々な時点での様々な群における腫瘍サイズの結果は、表3に示されている。
表3。HUPRIME(登録商標)頭頸部癌異種移植モデルHN1420の処置におけるチピファルニブの抗腫瘍活性
注: a.平均±SEM; b.独立試料t-検定によってビヒクルと比較したもの
まとめると、チピファルニブ(R115777)は、この試験において、初代HUPRIME(登録商標)頭頸部癌異種移植モデルHN1420に対する有意な抗腫瘍活性をもたらした。
(実施例IV)
(HRAS突然変異体肺扁平上皮細胞癌の患者由来異種移植モデルでチピファルニブを用いて実施された有効性実験)
(実験方法及び手順)
選択された初代ヒトNSCLC組織が接種されたストックマウス由来の腫瘍断片を採取し、BALB/cヌードマウスへの接種に使用した。腫瘍を発生させるために、各々のマウスの右の脇腹に、初代ヒトNSCLCモデルLU1513断片(R4P6、直径2〜4mm)を皮下接種した。LU1513は、Q61K HRAS突然変異及びV216M TP53突然変異を有し、かつセツキシマブに抵抗性である。平均腫瘍サイズが55日後に約212mm3に達したとき、マウスを群に分けた。マウスを、その腫瘍サイズに応じて、2つの実験群に無作為に割り当てた。各々の群は、ケージ当たり3匹のマウスで、3匹のマウスからなっていた。この日を0日目と表した。試験品を、HN1420モデルにも使用され、かつ上の表1に示されている所定のレジメンに従って、1日2回(BID)×21のスケジュールで、1日目から21日目まで、腫瘍担持マウスに投与した。腫瘍サイズを、毎週2回、キャリパーを用いて、2次元で測定した。体積は、式: TV=0.5a×b2(式中、a及びbは、それぞれ、腫瘍の長径及び短径である)を用いて、mm3で表されている。その後、腫瘍サイズを、上の実施例IIIに記載されているように、TGI、T/Cの計算に使用する。統計解析を実施し、HN1420モデルの場合と同様に解釈した。
(結果のまとめ及び考察)
チピファルニブ(R115777)の有効性を、雌BALB/cヌードマウスにおけるHUPRIME(登録商標) NSCLC異種移植モデルLU1513の処置において評価した。
第1群(ビヒクル、p.o.、BID×21)及び第2群(チピファルニブ、80mg/kg、p.o.、BID×21)において、試験終了時の体重変化は、それぞれ、-5.13%及び-0.54%であった(図3)。試験中、動物の死亡も、有意な体重減少も、投薬中止もなかった。したがって、試験化合物のチピファルニブは、LU1513腫瘍担持マウスで十分に忍容された。
表4に示されているように、腫瘍サイズは、ビヒクル処置動物において非常に速やかに増加し、1週間後に約375mm3の平均に達し、2週間以内に500mm3を超え、試験の終了までに1000mm3を超えた。対照的に、チピファルニブを受けている動物の腫瘍は、実験の過程のどの時点でもほとんど成長せず;実際、28日後に、平均腫瘍サイズは、1日目よりもわずかに小さかった。個々の腫瘍担持動物の中で、1つの腫瘍は、サイズが多少増加し、1つは変化がないままであり、3分の1は、約75%退縮した。
注:データは平均±SEMとして表されている。
図2に示されているように、ビヒクル処置マウスの平均腫瘍サイズは、試験終了時に、1058.26mm3に達した。腫瘍体積の安定化は、チピファルニブ処置マウスにおいて、101%のTGI及び18%のT/Cで達成された(P=0.007)。処置後の様々な時点での様々な群における腫瘍サイズの結果は、表5に示されている。
表5。HUPRIME(登録商標) NSCLC異種移植モデルLU1513の処置におけるチピファルニブの抗腫瘍活性
注: a.平均±SEM; b.独立試料t-検定によってビヒクルと比較したもの
まとめると、試験化合物のチピファルニブ(R115777)は、この試験において、初代HUPRIME(登録商標) NSCLC異種移植モデルLU1513に対する有意な抗腫瘍活性をもたらした。