JP2019154268A - 麺皮用添加剤、麺皮及び麺皮食品 - Google Patents
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Abstract
【課題】麺皮のかたさ及びなめらかさが向上するとともに、長時間の煮込み調理の前後における麺皮のかたさ、なめらかさ及び外観の低下を抑制する麺皮用添加剤、麺皮並びに麺皮食品を提供する。【解決手段】グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを含有する麺皮用添加剤、当該添加剤と穀粉とを含有する麺皮、並びに、具材と具材を包む当該麺皮とからなる麺皮食品である。【選択図】なし
Description
本発明は、麺皮用添加剤、麺皮及び麺皮を用いて作製される麺皮食品に関する。
小麦粉等の穀粉を原料とする麺皮により具材を包んでなる食品、例えば、餃子、ワンタン、小籠包、ラビオリ等が広く喫食されている。これらの食品に麺皮は、穀粉を食塩及び水等と混合し、圧延した面状の麺帯から所定の形状に切り出すことにより、作製される。麺皮の作製において、食感改善や品質維持等を目的として、原料の選択、原料配合の調整、作製方法の改良等に加えて、各種品質改良剤の開発が行われている。
特許文献1には、α−グルコシダーゼ及びグルコースオキシダーゼを原料穀粉に対して所定量用いる麺類の製造方法が記載されている。特許文献2には、水溶性エンドウ多糖類を含有する、茹で調理あるいは蒸し調理される麺皮包餡食品に用いる麺皮類が記載されている。特許文献3には、餃子およびワンタン等の皮類、麺類の小麦粉製品において、エンドウ蛋白質を含有するテクスチャーの改良された小麦粉製品が記載されている。
麺皮食品の調理方法としては、例えば茹でる、蒸す、焼く、揚げる等の方法が挙げられるが、それらに加えて、湯又はスープに浸した状態で一定時間加熱する、いわゆる煮込み調理によっても調理されることがある。ところが、麺皮食品を煮込み調理する場合、その調理時間が経過するにつれて、麺皮が軟化して食感が劣化するとともに、麺皮に破損や欠けが生じて具材が飛び出すことがあった。そのため、これらの食感及び外観の改善が、煮込み調理した麺皮食品を製品化するうえでの課題であった。
本発明の課題は、麺皮のかたさ及びなめらかさが向上するとともに、長時間の煮込み調理の前後における麺皮のかたさ、なめらかさ及び外観の低下を抑制する麺皮用添加剤、麺皮並びに麺皮食品を提供することにある。
本発明の麺皮用添加剤は、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを含有する。
本発明の麺皮は、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを含有する麺皮用添加剤と、穀粉と、を含有する。
本発明の麺皮食品は、具材と、具材を包む麺皮とからなり、麺皮は、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを含有する麺皮用添加剤と穀粉とを含有する。
好適な態様では、えんどうデンプンの添加量が穀粉の総量に対して0.5質量%以上20質量%以下である。他の好適な態様では、グルコースオキシダーゼの添加量が、穀粉の総量に対して0.00004質量%以上0.0013質量%以下であり、グルテンの添加量が、穀粉の総量に対して0.15質量%以上5質量%以下である。他の好適な態様では、穀粉が小麦粉である。他の好適な態様では、麺皮食品が餃子である。
本発明により、麺皮のかたさ及びなめらかさが向上するとともに、長時間の煮込み調理の前後における麺皮のかたさ、なめらかさ及び外観の低下を抑制する麺皮用添加剤、麺皮並びに麺皮食品を提供することができる。
以下、本発明に係る麺皮用添加剤、それを含有する麺皮並びに麺皮食品について、詳細に説明する。なお、本明細書における「%」との記載は、特に言及する場合を除き、「質量%」を意味する。
本発明に係る麺皮用添加剤(以下「本添加剤」とも記載)は、グルコースオキシダーゼ、グルテン、えんどうデンプンを少なくとも含有する。麺皮は、餃子、ワンタン、小龍包(包子)、春巻、シュウマイ、ラビオリ等の食品に用いられる麺生地であり、通常、主原料となる穀粉と、水及び必要に応じて副原料とを混合し、面状に圧延することにより作製される。本添加剤は、穀粉、水、食塩等の副原料とともに配合されて用いられる。
〔グルコースオキシダーゼ〕
グルコースオキシダーゼは、グルコース、酸素、水を基質としてグルコン酸と過酸化水素を生成する反応を触媒する酸化酵素である。この反応により生成された過酸化水素は、タンパク質中のSH基を酸化することでSS結合(ジスルフィド結合)生成を促進し、タンパク質中に架橋構造を形成するものと推定されている。グルコースオキシダーゼは微生物由来、植物由来のものなどが知られているが、上記の酵素活性を有する限り、いずれのものも使用される。また、本添加剤に使用されるグルコースオキシダーゼは、グルコースオキシダーゼの酵素活性を有し、本発明の効果を阻害しないものであれば、他の製剤との混合物であってもよい。例えば、グルコースオキシダーゼとカタラーゼとを混合してなる酵素製剤を使用してもよい。本添加剤に含まれるグルコースオキシダーゼの入手方法は特に制限されず、グルコースオキシダーゼまたは酵素製剤として市場で入手可能なものを使用すればよい。
グルコースオキシダーゼは、グルコース、酸素、水を基質としてグルコン酸と過酸化水素を生成する反応を触媒する酸化酵素である。この反応により生成された過酸化水素は、タンパク質中のSH基を酸化することでSS結合(ジスルフィド結合)生成を促進し、タンパク質中に架橋構造を形成するものと推定されている。グルコースオキシダーゼは微生物由来、植物由来のものなどが知られているが、上記の酵素活性を有する限り、いずれのものも使用される。また、本添加剤に使用されるグルコースオキシダーゼは、グルコースオキシダーゼの酵素活性を有し、本発明の効果を阻害しないものであれば、他の製剤との混合物であってもよい。例えば、グルコースオキシダーゼとカタラーゼとを混合してなる酵素製剤を使用してもよい。本添加剤に含まれるグルコースオキシダーゼの入手方法は特に制限されず、グルコースオキシダーゼまたは酵素製剤として市場で入手可能なものを使用すればよい。
グルコースオキシダーゼの含有量は、麺皮の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、穀粉の総量に対して0.00002%以上0.005%以下であればよく、0.000045%以上0.002%以下が好ましく、0.000045%以上0.0013%以下がより好ましい。或いは、グルコースオキシダーゼは、小麦粉等の穀粉1gに対してグルコースオキシダーゼの酵素活性が0.001U以上、より好ましくは0.002U以上500U以下となるように麺皮に添加されることが好ましい。グルコースオキシダーゼの含有量が少なすぎると、本添加剤の効果が十分得られないおそれがあり、グルコースオキシダーゼの含有量が多すぎると、麺皮がかたくなりすぎて食感が低下するおそれがある。
なお、グルコースオキシダーゼの酵素活性は、以下の方法で規定される。グルコースを基質として、酸素存在下でグルコースオキシダーゼを作用させることで過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素にアミノアンチピリン及びフェノール存在下でペルオキシダーゼを作用させることで生成したキノンイミン色素が呈する色調を、波長500nmで測定し、酵素活性を定量する。このとき、1分間に1μmolのグルコースを酸化するのに必要な酵素量を1U(ユニット)と規定する。
〔グルテン〕
グルテンは、小麦、ライ麦、トウモロコシ等の穀物に含まれる貯蔵タンパク質であり、従来麺類やパン類等の食品の製造に用いられている。本添加剤に含まれるグルテンとしては、例えば、小麦グルテン、コーングルテンを挙げることができ、特に小麦グルテンが好ましい。小麦グルテンの形態については特に限定されず、小麦粉から分離して得られる生グルテン、粉末状の活性グルテン、生グルテン又は活性グルテンを化学処理した後に乾燥、粉末化して得られる変性グルテン等のいずれを使用してもよい。本添加剤に含まれるグルテンの入手方法は特に制限されず、市場で入手可能なものを使用すればよい。
グルテンは、小麦、ライ麦、トウモロコシ等の穀物に含まれる貯蔵タンパク質であり、従来麺類やパン類等の食品の製造に用いられている。本添加剤に含まれるグルテンとしては、例えば、小麦グルテン、コーングルテンを挙げることができ、特に小麦グルテンが好ましい。小麦グルテンの形態については特に限定されず、小麦粉から分離して得られる生グルテン、粉末状の活性グルテン、生グルテン又は活性グルテンを化学処理した後に乾燥、粉末化して得られる変性グルテン等のいずれを使用してもよい。本添加剤に含まれるグルテンの入手方法は特に制限されず、市場で入手可能なものを使用すればよい。
グルテンの含有量は、麺皮の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、穀粉の総量に対して0.01%以上15%以下であればよく、0.1%以上10%以下が好ましく、0.15%以上5%以下がより好ましい。グルテンの含有量が少なすぎると、本添加剤の効果が十分得られないおそれがあり、グルテンの含有量が多すぎると、麺皮の弾力が高すぎて食感が低下するおそれがある。また、グルコースオキシダーゼに対するグルテンの含有量の割合(質量比)は、麺皮の食感及び外観の向上の観点から、例えば、グルテン:グルコースオキシダーゼが、10:1以上2000:1以下であればよく、15:1以上1750:1以下であることが好ましい。
〔えんどうデンプン〕
えんどうデンプンは、えんどうの子実中に約50%程度含まれているデンプンを意味する。えんどう(Pisum sativum L.)は、マメ科の1〜2年草で、広く食用に供されている植物であり、その種類は特に問わない。デンプンは、α-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子であって、直鎖状の分子構造を有するアミロースと、分岐構造を有するアミロペクチンとで構成されている。えんどうデンプンの総量に対するアミロースの含有量(質量比)は、20%以上30%以下程度である。
えんどうデンプンは、えんどうの子実中に約50%程度含まれているデンプンを意味する。えんどう(Pisum sativum L.)は、マメ科の1〜2年草で、広く食用に供されている植物であり、その種類は特に問わない。デンプンは、α-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子であって、直鎖状の分子構造を有するアミロースと、分岐構造を有するアミロペクチンとで構成されている。えんどうデンプンの総量に対するアミロースの含有量(質量比)は、20%以上30%以下程度である。
えんどうデンプンは、えんどうを原料として常法に従って製造したものであれば、その製造方法は特に限定されない。一般的には、原料となる完熟したえんどうの子実を洗浄、乾燥し、外殻を取り除いた後、水を使用して繰り返し洗浄することにより、タンパク質、塩類、水溶性多糖類、食物繊維等を除去することで、本添加剤に使用されるえんどうデンプンが得られる。なお、特許文献2に記載の「水溶性エンドウ多糖類」は、えんどうの種子に含まれる澱粉画分を除去した繊維画分を水または熱水で抽出して製造されること、また、水溶性であり、且つ、構成糖としてガラクツロン酸、アラビノース及びガラクトースを含むことから、本添加剤に使用されるえんどうデンプンとは明らかに異なる化合物である。本添加剤に含まれるえんどうデンプンとしては、更に乾燥して粉末状としたものが好ましい。本添加剤に含まれるえんどうデンプンの入手方法は特に制限されず、市場で入手可能なものを使用すればよい。また、本添加剤に含まれるえんどうデンプンは、未加工(生デンプン)であってもよいし、公知の方法で加工された加工デンプンであってもよい。
えんどうデンプンの含有量は、麺皮の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、穀粉の総量に対して0.1%以上25%以下であればよく、0.5%以上20%以下が好ましい。えんどうデンプンの含有量が少なすぎると、本添加剤の効果が十分得られないおそれがあり、えんどうデンプンの含有量が多すぎると、麺皮の強度やしなやかさが低下するおそれがある。
本添加剤は、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンの組合せを含有するものであれば、その形態等は限定されず、粉末の形態であってもよいし、顆粒、粒状に造粒した顆粒の形態であってもよい。また、本添加剤を水に懸濁させた液状の形態であってもよい。本添加剤は、本発明の効果を損なわない限り、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプン以外に、賦形剤や上述のカタラーゼ等の他の成分を含有していてもよい。本添加剤は、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンのそれぞれを個別包装したものを組み合わせたセットであってもよい。
本添加剤の添加方法としては、麺皮の作製中に、各成分が均一に配合される方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、予め本添加剤を穀粉に混合してもよく、穀粉と混合する水(混捏水)の一部に本添加剤を分散させた後、当該分散液と穀粉とを混合してもよい。また、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを同時期に添加してもよいし、各成分をそれぞれ異なる時期に添加してもよい。
本添加剤の麺皮への含有量は、本添加剤の効果が得られる範囲内で、麺皮の種類等に応じて適宜選択すればよく、例えば、穀粉の総量に対して0.1%以上30%以下であればよく、0.8%以上26%以下が好ましい。本添加剤の含有量が少なすぎると、本添加剤の効果が十分発揮されないおそれがある。また、本添加剤の含有量が多すぎると、麺皮がかたくなり過ぎて食感が低下するおそれがある。
(穀粉)
本実施形態に係る麺皮は、本添加剤と、主原料としての穀粉とを含有する。穀粉としては、例えば、小麦粉;そば粉;米粉;とうもろこし粉;大麦、ライ麦、はと麦などの麦類の粉;大豆粉等の豆類の粉等が挙げられる。麺皮の種類により、これらの穀粉を単独、若しくは2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。本実施形態の麺皮としては、主原料として小麦粉を含有することが好ましい。小麦粉は、例えば薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、デュラム小麦粉等に分類され、これらは麺皮の種類に応じて適宜選択される。
本実施形態に係る麺皮は、本添加剤と、主原料としての穀粉とを含有する。穀粉としては、例えば、小麦粉;そば粉;米粉;とうもろこし粉;大麦、ライ麦、はと麦などの麦類の粉;大豆粉等の豆類の粉等が挙げられる。麺皮の種類により、これらの穀粉を単独、若しくは2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。本実施形態の麺皮としては、主原料として小麦粉を含有することが好ましい。小麦粉は、例えば薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、デュラム小麦粉等に分類され、これらは麺皮の種類に応じて適宜選択される。
麺皮における穀粉の含有量は、麺皮の種類等に応じて適宜選択すればよい。小麦粉等の穀粉並びに食塩及び本添加剤を含む副原料に対する穀粉の含有量が、例えば60%以上であればよく、85%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、小麦粉の含有量の上限は、副原料を含有し得る範囲であればよく、例えば99.5%以下であればよい。
(副原料等)
麺皮は、副原料として少なくとも食塩を含有する。食塩を麺皮に配合することによって、復元性や味等を良好にすることができる。麺皮における食塩の含有量は、麺皮の種類等に応じて適宜選択すればよい。食塩の含有量は、例えば、穀粉並びに食塩及び本添加剤を含む副原料の合計量に対して0.1%以上5%以下であればよい。
麺皮は、副原料として少なくとも食塩を含有する。食塩を麺皮に配合することによって、復元性や味等を良好にすることができる。麺皮における食塩の含有量は、麺皮の種類等に応じて適宜選択すればよい。食塩の含有量は、例えば、穀粉並びに食塩及び本添加剤を含む副原料の合計量に対して0.1%以上5%以下であればよい。
麺皮には、必要に応じて、本添加剤以外に、えんどうデンプンを除くデンプン、かんすい、卵、蛋白質、糖類(水溶性エンドウ多糖類を除く多糖類およびその誘導体を含む)、油脂類、着色料、調味料、着香料、呈味剤、乳化剤、界面活性剤等を配合してもよい。これらの成分は、本発明の効果を損なわない量で配合される。えんどうデンプン以外のデンプンは、食品の製造に一般に用いられるものであればよく、例えば、小麦粉デンプン、緑豆デンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、米デンプン、ワキシーコーンスターチ、甘蔗デンプン及びこれらの化工デンプン(例えば、デキストリン、α化デンプン、酸化デンプン等)が挙げられる。また、水溶性エンドウ多糖類を除く多糖類としては、増粘多糖類として食品の製造に用いられるものであればよく、例えば、キサンタンガム、グァーガム、アルギン酸、アルギン酸Na、アルギン酸エステル、タラガム等が挙げられる。
麺皮の作製に使用される水の量は、麺皮の種類及び作製方法に応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。水の含有量は、例えば穀粉に対して20%以上50%以下であればよい。小麦粉を含む餃子用麺皮を作製する場合、小麦粉に対する水の含有量は30%以上45%以下であればよい。
本実施形態に係る麺皮は、従来公知の作製方法に準じて作製すればよい。例えば、まず主原料である穀粉に副原料及び本添加剤を含む品質改良剤を添加し、混練して麺生地を調製する。この麺生地を複合機により複数合わせる複合を行った後、圧延ロールによって圧延して薄く延ばして麺帯とする。次いで、得られた麺帯を金属型等で所定の形状に切り出すことにより、麺皮が作製される。麺皮の平面形状は、製造される麺皮食品に適するものであれば特に制限されず、例えば円形状又は矩形状等が挙げられる。
麺皮の厚さは、製造される麺皮食品の種類に適した厚さであれば特に制限されないが、例えば、麺皮の厚さが1.3mm以下であることが好ましく、1.1mm以下であることがより好ましい。麺皮の厚さが上記の範囲にあると、具材の食感及び味をより楽しむことができる。また、麺皮の厚さの下限は、具材の種類や量、或いは麺皮の大きさ等に応じて、麺皮食品の製造及び調理中に麺皮の破損が生じない範囲に設定すればよく、例えば0.7mm以上が好ましく、0.9mm以上がより好ましい。
麺皮食品は、例えば、本実施形態に係る麺皮を用いて、肉、魚介類、豆、乳製品、卵、野菜等からなる具材を包むことにより製造される。本実施形態に係る麺皮食品としては、例えば餃子、ワンタン、小龍包(包子)、春巻、シュウマイ、ラビオリ等が挙げられ、餃子、ワンタン及びラビオリが好ましく、餃子がより好ましい。
麺皮食品の製造方法は、本実施形態に係る麺皮を使用すること以外は特に制限されず、従来公知の製造方法に準じて製造すればよい。製造された麺皮食品は、茹でる、蒸す等の加熱調理を施した後、喫食される。麺皮食品を、調理の前後あるいは半調理された状態で冷凍又は冷蔵により保存してもよい。冷凍又は冷蔵により保存された麺皮食品は、喫食前に再度加熱調理される。
本発明者らは、鋭意検討の結果、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンの組合せを含有する組成物を添加剤として麺皮に配合することにより、麺皮にかたさ及びなめらかさを付与するとともに、湯又はスープ等の液中で長時間加熱調理した後の麺皮食品について、かたさ及びなめらかさの食感を改善し、且つ、麺皮の破れや欠け等の発生を抑えて外観を改善することを見出し、本発明を完成した。ここで「かたさ」とは、咀嚼する際に食物から返ってくる柔軟性の有無を問わない反発力として現れる食感であり、「なめらかさ」とは、麺皮食品を喫食した際の、表面にある麺皮のつるつるとした口あたりのよい食感を指す。これにより、鍋料理、おでん、スープ類等、加温により調理する煮込み料理の「具」として適用した場合であっても、長時間の煮込み調理によって生じ得る食感の低下を抑えるとともに、具材を包んだ麺皮の破損等が生じない麺皮食品、例えば餃子(水餃子)、ワンタン、ラビオリ等を製造することができる。本添加剤を麺皮に配合することにより付与されるこれら煮込み耐性の向上効果は、小麦粉等の穀粉中のデンプン及びタンパク質に対して、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンの相互作用が働くためであると考えられる。
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
本添加剤による麺皮の食感及び外観の改善効果を確認するため、本添加剤を配合する麺皮を作製、調理し、得られた麺皮について官能試験(食味及び外観)とかたさ測定試験を行った。
〔麺皮の作製方法〕
食塩7.0gと水280gとからなる食塩水に、強力粉700g、グルコースオキシダーゼとカタラーゼとを含有する酵素製剤0.02g、小麦グルテン3.5g、えんどうデンプン14gを混合した。酵素製剤、小麦グルテン及びえんどうデンプンはいずれも市販されているものを使用した。なお、酵素製剤0.02gにはグルコースオキシダーゼ0.0009g(活性30U相当)が含有されている。得られた混合物を卓上ミキサーで混合して生地を作製し、この生地を複合機により複合し、圧延して厚さ約1mmの麺帯を作製した。得られた麺帯を金属型により直径約90mmの円形にくりぬき、これを折り畳んで半円状に成形した。得られた麺皮をすみやかにスチームコンベクションオーブンに投入し、湿度100%RH、98℃の条件で15分間加熱した。加熱された麺皮をブラストチラーを用いて−20℃まで急速冷凍し、実施例1の麺皮を作製した。
食塩7.0gと水280gとからなる食塩水に、強力粉700g、グルコースオキシダーゼとカタラーゼとを含有する酵素製剤0.02g、小麦グルテン3.5g、えんどうデンプン14gを混合した。酵素製剤、小麦グルテン及びえんどうデンプンはいずれも市販されているものを使用した。なお、酵素製剤0.02gにはグルコースオキシダーゼ0.0009g(活性30U相当)が含有されている。得られた混合物を卓上ミキサーで混合して生地を作製し、この生地を複合機により複合し、圧延して厚さ約1mmの麺帯を作製した。得られた麺帯を金属型により直径約90mmの円形にくりぬき、これを折り畳んで半円状に成形した。得られた麺皮をすみやかにスチームコンベクションオーブンに投入し、湿度100%RH、98℃の条件で15分間加熱した。加熱された麺皮をブラストチラーを用いて−20℃まで急速冷凍し、実施例1の麺皮を作製した。
実施例2として、半円状に成形した麺皮について、作製した麺皮を袋に入れて密閉し、4℃で24時間静置する期間を経た後、スチームコンベクションオーブンを用いて加熱したこと以外は、実施例1の作製方法に従って、実施例2の麺皮を作製した。
下記表1に示す組成となるように、各成分の含有量を調整すること以外は、実施例1の麺皮の作製方法と同様にして、参考例、実施例3〜4及び比較例1〜4の麺皮を作製した。参考例では、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンのいずれも添加していない。比較例1では、えんどうデンプンを添加せずに麺皮を作製し、比較例2では、グルコースオキシダーゼ及びグルテンを添加せずに麺皮を作製した。また、比較例3では、えんどうデンプンに換えてタピオカデンプン(酢酸にて加工された加工デンプン)を添加して麺皮を作製し、比較例4では、えんどうデンプンに換えて馬鈴薯デンプン(ヒドロキシプロピル化リン酸にて架橋された加工デンプン)を添加して麺皮を作製した。
上記方法で作製された各実施例、各比較例及び参考例に係る凍結状態の麺皮を50℃の湯に入れ、湯温を50℃に維持することにより、麺皮の加熱調理(煮込み調理)を行った。煮込み調理を30分間、4時間及び8時間行ったそれぞれの試験サンプルについて、下記の官能試験及びかたさ測定試験を実施した。
〔官能試験〕
上記の各試験サンプルについて、4名の専門パネラーにより、食味評価及び外観評価を行った。各パネラーは、1個の試験サンプルを喫食し、かたさ及びなめらかさを、以下の4段階の評価基準で評価した。また、喫食する際に試験サンプルの外観を観察し、以下の4段階の評価基準で外観を評価した。表2〜表4に、各官能試験の評価結果として、専門パネラー4名の平均点を示す。
(かたさ)3点:しっかりとかたさを感じる、2点:かたさを感じる、1点:かたさをわずかに感じる、0点:軟らかく、かたさを感じない。
(なめらかさ)3点:しっかりとなめらかさを感じる、2点:なめらかさを感じる、1点:なめらかさをわずかに感じる、0点:ざらざらした感触があり、なめらかさを感じない。
(外観)3点:表面に光沢があり、凹凸が見られず、美味しそうな外観である。製品として申し分ない、2点:表面に細かな凹凸が見られるが、製品として問題ない、1点:製品として許容できるが、表面に光沢が無く、表面に凹凸が見られ、好ましくない、0点:破れや欠けが生じており、製品として不適合である。
上記の各試験サンプルについて、4名の専門パネラーにより、食味評価及び外観評価を行った。各パネラーは、1個の試験サンプルを喫食し、かたさ及びなめらかさを、以下の4段階の評価基準で評価した。また、喫食する際に試験サンプルの外観を観察し、以下の4段階の評価基準で外観を評価した。表2〜表4に、各官能試験の評価結果として、専門パネラー4名の平均点を示す。
(かたさ)3点:しっかりとかたさを感じる、2点:かたさを感じる、1点:かたさをわずかに感じる、0点:軟らかく、かたさを感じない。
(なめらかさ)3点:しっかりとなめらかさを感じる、2点:なめらかさを感じる、1点:なめらかさをわずかに感じる、0点:ざらざらした感触があり、なめらかさを感じない。
(外観)3点:表面に光沢があり、凹凸が見られず、美味しそうな外観である。製品として申し分ない、2点:表面に細かな凹凸が見られるが、製品として問題ない、1点:製品として許容できるが、表面に光沢が無く、表面に凹凸が見られ、好ましくない、0点:破れや欠けが生じており、製品として不適合である。
官能試験の結果、表2に示す通り、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンの組合せを含む本添加剤を用いて作製された実施例1〜4の麺皮は、かたさ、なめらかさ及び外観がいずれも良好であった。さらに、煮込み調理を4時間又は8時間行った実施例1〜4の麺皮は、本添加剤を含まない比較例1〜4の麺皮に比較して、そのかたさ、なめらかさ及び外観が優れることが明らかとなった。例えば、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンのいずれかを含まない比較例1〜4の麺皮では、8時間の煮込み調理を行った後の評価結果は、かたさが0〜1.3、なめらかさが0.3〜0.8、外観が0〜1.8であった。それに対して、本添加剤を用いた実施例1〜4の麺皮では、8時間の煮込み調理後であっても、かたさが1.5〜1.8、なめらかさが2.8〜3、外観が2.8〜3と、食感及び外観の低下が格段に抑制されており、特になめらかさと外観については、作製当初のレベルがほぼ維持されていた。
〔かたさ測定試験〕
上記煮込み調理を行った各試験サンプルについて、クリープメータ(REHONER II、型式名「RE2−33005C」、株式会社山電製)により、測定温度20℃、直径3mmの円柱形プランジャー使用、測定速度10mm/秒、圧縮率66.7%の条件にて、かたさ測定試験を行った。表5及び図1にかたさ測定試験の結果を示す。なお、表5に示す保持率とは、30分間煮込み調理後の試験サンプルの測定値に対する、4時間又は8時間煮込み調理後の試験サンプルの測定値の比率(百分率)である。
上記煮込み調理を行った各試験サンプルについて、クリープメータ(REHONER II、型式名「RE2−33005C」、株式会社山電製)により、測定温度20℃、直径3mmの円柱形プランジャー使用、測定速度10mm/秒、圧縮率66.7%の条件にて、かたさ測定試験を行った。表5及び図1にかたさ測定試験の結果を示す。なお、表5に示す保持率とは、30分間煮込み調理後の試験サンプルの測定値に対する、4時間又は8時間煮込み調理後の試験サンプルの測定値の比率(百分率)である。
かたさ測定試験の結果、表5及び図1に示すように、本添加剤を用いた実施例1〜4では、煮込み調理を長時間行った後であっても、麺皮のかたさの低下が抑制されていることが明らかとなった。例えば、煮込み調理を8時間行った後の保持率で比較すると、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンのいずれかを含まない比較例1〜4では最高でも約40%(比較例3)であるのに対して、本添加剤を用いた実施例1〜4の麺皮では、かたさ測定値の低下が最低でも約45%(実施例1)に抑えられた。
このように、官能試験及びかたさ測定試験の結果、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを含む本添加剤を用いることにより、麺皮のかたさ及びなめらかさが向上するとともに、長時間の煮込み調理の前後における麺皮のかたさ、なめらかさ及び外観の低下が抑制されることがわかった。
Claims (7)
- 穀粉と、グルコースオキシダーゼ、グルテン及びえんどうデンプンを含有する、麺皮用添加剤。
- 請求項1に記載の添加剤と穀粉とを含有する、麺皮。
- 前記えんどうデンプンの含有量が前記穀粉の総量に対して0.5質量%以上20質量%以下である、請求項2に記載の麺皮。
- 前記グルコースオキシダーゼの含有量が、前記穀粉の総量に対して0.00004質量%以上0.0013質量%以下であり、且つ、
前記グルテンの含有量が、前記穀粉の総量に対して0.15質量%以上5質量%以下である、
請求項2または3に記載の麺皮。 - 前記穀粉が小麦粉である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の麺皮。
- 具材と、前記具材を包む請求項2〜5のいずれか一項に記載の麺皮とからなる、麺皮食品。
- 餃子である、請求項6に記載の麺皮食品。
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JP2018042128A JP2019154268A (ja) | 2018-03-08 | 2018-03-08 | 麺皮用添加剤、麺皮及び麺皮食品 |
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