JP2019111770A - 水性前処理液、水性記録液セット、及び印刷物の製造方法 - Google Patents

水性前処理液、水性記録液セット、及び印刷物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、熱可塑性樹脂基材をはじめとした非吸収性基材に対する密着性に優れるとともに、にじみや混色といった画像欠陥がなく、耐擦性にも優れた印刷物が得られ、更には保存安定性や乾燥性にも優れる、水性前処理液、及び、前記水性前処理液と水性インクジェットインキとを含む水性記録液セットを提供することにある。【解決手段】水性インクジェットインキとともに用いられ、非吸収性基材に対して使用される水性前処理液であって、前記水性前処理液が、ポリアルキレンイミン(A)と、凝集剤(B)と、水とを含み、(B)が、金属塩及び/またはカチオン性高分子化合物を含み、(A)の配合量が、水性前処理液全量に対して0.3〜5.0質量%であり、(A)の配合量と、(B)の配合量との質量比が、(A):(B)=0.05:1〜1.5:1である、水性前処理液。【選択図】なし

Description

本発明は、水性前処理液、水性記録液セット、及び前記水性記録液セットを用いた印刷物の製造方法に関する。
デジタル印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷などの従来の有版印刷とは違い、製版フィルムや刷版を必要としないため、コスト削減や小ロット多品種対応が可能である。中でも、デジタル印刷の一種であるインクジェット印刷は、インクジェットヘッドのノズル(吐出口)からインキを吐出し、基材に付着させることで文字や画像を得るもので、印刷装置の小型化・単純化が可能であること、様々な種類の基材に印刷できることなど、多くの利点がある。現状、オフィス用途や家庭用途で広く用いられているだけでなく、産業用途での利用も進められている。
インクジェット印刷で用いられるインクジェットインキの中では、コスト面、環境面、作業者の安全面などから、水を主成分として含む水性インクジェットインキの需要が高い。従来、水性インクジェットインキ(以下「水性インキ」「インキ」ともいう)は、普通紙、専用紙(例えば、写真光沢紙)、上質紙、再生紙といった浸透・吸収性の高い基材に使用されることが多かったが、近年では、コート紙、アート紙、微塗工紙といった低吸収性の基材や、熱可塑性樹脂フィルム基材のような非吸収性基材に対して印刷を希望する声が高まっている。
しかし、特に非吸収性基材に対する印刷では、前記基材上に付着したインキ液滴が浸透によって乾燥しないため、液滴同士でにじみが発生しやすく、画像品質が損なわれやすい。また浸透を起こさないため、密着性や耐擦性を確保することが難しい。
上記課題を解決すべく、従来より、基材に対する前処理液処理が行われている。一般に、印刷物の画像品質を向上させるための、水性インクジェットインキ用前処理液として、前記水性インクジェットインキ中の液体成分を吸収し乾燥性を向上させる層(インキ受容層)を形成するもの(特許文献1〜2参照)と、色材や樹脂など水性インクジェットインキ中に含まれる固体成分を意図的に凝集させることで液滴間のにじみや色ムラを防止し画像品質を向上させる層(インキ凝集層)を形成するもの(特許文献3参照)の2種類が知られている。
しかしながら、インキ受容層の場合、例えば一度に大量のインキを付与する際には、インキの受容可能量超過によるにじみや混色、あるいは、受容層へのインキ成分の吸収による濃度低下が発生する恐れがある。また一般に、インキ受容層はインキ凝集層よりも膜厚を大きくする必要がある。膜厚が大きくなると、前処理液自身の乾燥性もまた低下し、乾燥性不良などの不具合が生じることが懸念される。特に非吸収性基材の場合、前処理液自身の浸透も起こらないことから、上記不具合が起こりやすいと考えられる。
また、インキ凝集層を使用した前処理液の例として、特許文献3には、多価金属塩、(カチオン化)ヒドロキシエチルセルロースを含有し、表面張力を規定した前処理液が記載されており、前記前処理液を使用することで、画像濃度が高く、ブリード(色の異なるインキ液滴同士が接触した際の、境界部分でのにじみや混色)がなく、耐擦性に優れた高品位の印刷物が得られるとされている。しかしながら、前記文献において、前処理液が実際に使用されているのは、低吸収性の基材であるコート紙のみであり、非吸収性の基材に対しては用いられていない。そこで本発明者らが、ポリオレフィンフィルムやナイロンフィルムに対して評価を行ったが、これら基材に対する密着性が不十分であることが判明した。
一方、印刷物の密着性を向上させるために前処理液を用いた例が、特許文献4に開示されている。前記文献には、環状エステル化合物を含むプラスチックフィルム用前処理液が記載されており、耐擦・傷性、密着性、耐水性に優れた印刷物が得られるとされている。しかしながら前記前処理液は、環状エステル化合物によって表面が溶解・湿潤しない、ポリオレフィンフィルムのような基材に対しては、上記特性が得られない可能性が高い。
以上のように、熱可塑性樹脂基材をはじめとした非吸収性基材に対する密着性に優れるとともに、にじみや混色といった画像欠陥がなく、耐擦性にも優れた印刷物が得られ、更には保存安定性や乾燥性にも優れる、水を主成分とする前処理液(以下、「水性前処理液」と呼ぶ)は、これまで存在しない状況であった。
特開2000−238422号公報 特開2000−335084号公報 特開2005−074655号公報 特開2006−281538号公報
本開示は、上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、熱可塑性樹脂基材をはじめとした非吸収性基材に対する密着性に優れるとともに、にじみや混色といった画像欠陥がなく、耐擦性にも優れた印刷物が得られ、更には保存安定性や乾燥性にも優れる、水性前処理液、及び、前記水性前処理液と水性インクジェットインキとを含む水性記録液セットを提供することにある。また上記に加え、鮮明性や視認性にも優れた印刷物が得られる、水性記録液セットを提供することにある。更に、上記効果を好適に発現できる、前記水性記録液セットを用いた印刷物の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決すべく、本発明者らが鋭意検討を進めた結果、特定の分子量を有するポリアルキレンイミンと凝集剤とを含み、その配合量を規定した水性前処理液によって、前記課題が好適に解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち本開示は、水性インクジェットインキとともに用いられ、非吸収性基材に対して使用される水性前処理液であって、
前記水性前処理液が、ポリアルキレンイミン(A)と、凝集剤(B)と、水とを含み、
前記ポリアルキレンイミン(A)の重量平均分子量が、1,000〜80,000であり、
前記凝集剤(B)が、金属塩及びカチオン性高分子化合物(ただし、前記カチオン性高分子化合物がポリアルキレンイミン(A)である場合を除く)からなる群から選ばれる1種以上を含み、
前記ポリアルキレンイミン(A)の配合量が、水性前処理液全量に対して0.3〜5質量%であり、
前記ポリアルキレンイミン(A)の配合量と、前記凝集剤(B)の配合量との質量比が、(A):(B)=0.05:1〜1.5:1である、水性前処理液に関する。
また本開示は、前記ポリアルキレンイミン(A)が、分岐構造を有し、かつ、重量平均分子量が10,000〜80,000であるポリアルキレンイミン(a−1)を含む、上記水性前処理液に関する。
また本開示は、前記凝集剤(B)が、アリルアミンに由来する構造単位、及び/または、ジアリルアミンに由来する構造単位を有するカチオン性高分子化合物を含む、上記水性前処理液に関する。
また本開示は、更に、有機溶剤(C)を含む、上記水性前処理液に関する。
また本開示は、前記有機溶剤(C)が、1気圧下における沸点が75〜210℃以上であり、かつ、分子構造中に水酸基を1個以上含む水溶性有機溶剤(c−1)を含む、上記水性前処理液に関する。
また本開示は、前記水性前処理液に含まれる平均粒子径(D50)が1μm以上である水不溶性粒子の量が、水性前処理液全量に対し1質量%以下である、上記水性前処理液に関する。
また本開示は、上記水性前処理液と、1種類以上の水性インクジェットインキとを含む、非吸収性基材に対するインクジェット印刷に使用される水性記録液セットであって、
前記水性インクジェットインキが、顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを含む水性記録液セットに関する。
また本開示は、前記水性インクジェットインキが、更に顔料分散用樹脂を含み、
前記顔料分散用樹脂を構成する単量体のうち、芳香環構造を有する単量体の量が、前記顔料分散用樹脂を構成する単量体全量に対し20〜90質量%である、上記水性記録液セットに関する。
また本開示は、前記水性インクジェットインキに含まれる、1気圧下における沸点が250℃以上である水溶性有機溶剤の量が、水性インクジェットインキ全量に対し5質量%以下である、上記水性記録液セットに関する。
また本開示は、 前記水性インクジェットインキが、ブラックインキと、ホワイトインキとを含む、上記水性記録液セットに関する。
また本開示は、上記水性記録液セットを非吸収性基材に付与してなる、印刷物の製造方法であって、
非吸収性基材に前記水性前処理液を付与する工程と、
前記非吸収性基材上の、前記水性前処理液を付与した部分に、前記水性インクジェットインキを、1パスインクジェット印刷により付与する工程と、
前記水性インクジェットインキが付与された、前記非吸収性基材を乾燥する工程とを含む、印刷物の製造方法に関する。
また本開示は、前記非吸収性基材が、熱可塑性樹脂基材である、上記印刷物の製造方法に関する。
また本開示は、非浸透性基材上に、上記前処理液からなる層を有する、前処理液が付与された基材に関する。
また本開示は、上記前処理液が付与された基材に、前記水性インクジェットインキを印刷した印刷物に関する。
本開示により、熱可塑性樹脂基材をはじめとした非吸収性基材に対する密着性に優れるとともに、にじみや混色といった画像欠陥がなく、耐擦性にも優れた印刷物が得られ、更には保存安定性や乾燥性にも優れる、水性前処理液、及び、前記水性前処理液と水性インクジェットインキとを含む水性記録液セットを提供することが可能となった。また上記に加え、鮮明性や視認性にも優れた印刷物が得られる、水性記録液セットを提供することが可能となった。更に、上記効果を好適に発現できる、前記水性記録液セットを用いた印刷物の製造方法を提供することが可能となった。
以下に、好ましい形態を上げて、本発明の実施形態(以下、単に「本実施形態」ともいう)である水性前処理液について説明する。
本実施形態の水性前処理液に含まれるポリアルキレンイミンは、1分子中に1〜3級アミノ基を多数有している。そしてこれらアミノ基が、フィルム基材を始めとした非吸収性基材に存在する官能基と水素結合を形成し、密着性が発現する。一方、ポリアルキレンイミンだけでは、後述する、水性インクジェットインキ中に存在する固形成分を凝集させる作用や、インキを増粘させる作用が不十分であり、にじみや混色といった画像欠陥を防ぐことができない。特に、非吸収性基材は水性インクジェットインキの浸透が起こらないため、上質紙や専用紙といった易吸収性基材や、コート紙やアート紙といった微吸収性基材と比べ、画像欠陥が発生しやすい。
一方、上記でも説明した通り、一般に、水性前処理液に凝集剤を併用することで、上記画像欠陥を抑制し、画像品質に優れた印刷物を得ることができる。これは、凝集剤である金属塩やカチオン性高分子化合物に由来するカチオン成分が、水性インクジェットインキ中に存在する、顔料や樹脂などの固体成分や、アニオン基を有する界面活性剤などその他の成分と作用し、前記固体成分の凝集や、前記その他の成分に起因するインキの増粘を引き起こすことによる。
しかしながら本発明者らが検討したところ、ただ単にポリアルキレンイミンと凝集剤とを併用した水性前処理液では、密着性と画像品質とを両立できず、更に保存安定性にも劣る水性前処理液となることが判明した。その理由として、ポリアルキレンイミン中のアミノ基と、凝集剤に由来するカチオン成分とが、水性前処理液中で共存することで、前記ポリアルキレンイミンによる水素結合の形成や、前記カチオン成分による凝集や増粘の発現を互いに阻害しあうことが考えられる。また詳細は不明であるものの、ポリアルキレンイミンと凝集剤の組み合わせは相溶性が悪いものが多く、両者を併用した水性前処理液の保存安定性も悪化しやすいと予想される。
そこで本発明者らが鋭意検討を続けた結果、ポリアルキレンイミン(A)の重量平均分子量や配合量を特定の範囲とした水性前処理液によって、上記課題が好適に解決できることを見出した。その機構は以下のように考えられる。
本実施形態の水性前処理液に用いられるポリアルキレンイミン(A)は、重量平均分子量が1,000〜80,000である。またその配合量は、水性前処理液全量に対して0.3〜5.0質量%であり、かつ、凝集剤(B)の配合量1に対して0.05〜1.5である。重量平均分子量を1,000以上とし、配合量を0.3質量%以上とすることで、アミノ基の量が十分確保され、非吸収性基材に対する密着性が好適に発現するとともに、印刷物の耐擦性も良好なものとなる。一方、重量平均分子量が80,000以下であるポリアルキレンイミン分子は、水性前処理液内をある程度自由に移動できると考えられる。そのため、水性前処理液が非吸収性基材に塗布されたのち、ポリアルキレンイミン分子が、前記水性前処理液により形成された層(前処理液層)の界面に移動し、非吸収性基材上の官能基と水素結合を形成する。その結果、凝集剤(B)が存在する中であっても、好適な密着性が発現すると考えられる。また、水性前処理液中で、ポリアルキレンイミン分子が偏りなく均一に存在するように移動することで、粘弾性特性の局所的な偏りがなくなり、非吸収性基材に対して均一な付与が可能となる。その結果、水性インクジェットインキで印刷した際の画像品質向上が可能となる。更に詳細は不明であるが、重量平均分子量が1,000〜80,000であるポリアルキレンイミン(A)は、凝集剤(B)との相溶性が良好であり、両者を併用した水性前処理液の保存安定性や乾燥性も向上させることができる。
加えて、ポリアルキレンイミン(A)の配合量を、5.0質量%以下、かつ、凝集剤(B)の配合量1に対して0.05〜1.5とすることで、前記ポリアルキレンイミン(A)による、凝集剤(B)の凝集・増粘の発現阻害を防止でき、にじみや混色といった画像欠陥のない、画像品質に優れた印刷物を得ることができる。
以上のように、非吸収性基材に対する密着性に優れるとともに、にじみや混色といった画像欠陥がなく、耐擦性にも優れた印刷物が得られ、保存安定性や乾燥性にも優れる水性前処理液を得るためには、単にポリアルキレンイミンと凝集剤とを併用するだけでは足らず、本開示にて規定した構成の採用が必須不可欠である。
続いて以下に、本実施形態の水性前処理液を構成する各成分について、詳細に説明する。
<ポリアルキレンイミン(A)>
本実施形態の水性前処理液は、重量平均分子量が1,000〜80,000であるポリアルキレンイミン(A)を含む。なお本明細書におけるポリアルキレンイミン(A)とは、エチレンイミン、プロピレンイミン、メチルエチレンイミン、ブチレンイミン、エチルエチレンイミン、ジメチルエチレンイミンなどの、炭素数2〜4のアルキレンイミンから選択される1種以上を重合させた樹脂である。上記の中でも、密着性向上や入手容易性などの点から、ポリエチレンイミンを選択することが好ましい。
またポリアルキレンイミン(A)は、未変性のポリアルキレンイミンであっても、既知の方法により変性を施したものであってもよく、両者を併用してもよい。変性の例として、アルキレンオキサイド、アルキルグリシジルエーテル、グリシジルアミン、エピハロヒドリンなどのエポキシ化合物(エポキシド);(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル化合物;無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸などの酸無水物;などによる変性を挙げることができる。なお本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及び/またはメタクリルを意味する。
更に、本実施形態の水性前処理液で利用できるポリアルキレンイミン(A)は、直鎖構造を有するものであっても、分岐構造を有するものであってもよく、両者を併用してもよい。直鎖構造を有するポリアルキレンイミン(A)を含む水性前処理液は、密着性が向上する。直鎖構造を有するポリアルキレンイミン(A)は、分子構造内に2級アミノ基のみを有しており、非吸収性基材に存在する官能基との水素結合が強まるためと考えられる。一方、分岐構造を有するポリアルキレンイミン(A)を含む水性前処理液は、画像品質や印刷物の耐擦性が向上する。詳細は不明であるが、分岐構造を有する、すなわち1〜3級アミノ基を有するポリアルキレンイミン(A)を用いることで、非吸収性基材に付与する際、前処理液層が均一になるためと考えられる。
特に本実施形態の場合は、密着性、画像品質、耐擦性の両立を実現できる観点から、ポリアルキレンイミン(A)が、分岐構造を有し、かつ、重量平均分子量が10,000〜80,000であるポリアルキレンイミン(a−1)を含むことが好ましい。中でも、密着性や耐擦性に優れた印刷物が得られる観点から、前記ポリアルキレンイミン(a−1)の含有量が、前記水性前処理液全量に対して0.35〜4.0質量%であることが好ましく、0.7〜3.5質量%であることがより好ましい。
また、上記特性をより好適に発現させる観点から、前記ポリアルキレンイミン(a−1)を、ポリアルキレンイミン(A)全量に対して50質量%以上含むことも好ましく、75質量%以上含むことがより好ましい。
ある好ましい実施形態では、密着性と画像品質との両立を図る観点から、前記ポリアルキレンイミン(A)中の3級アミノ基の量が、前記ポリアルキレンイミン(A)中のアミノ基全量に対して15〜35モル%であり、17.5〜32.5モル%であることがより好ましく、20〜30モル%であることが特に好ましい。なおポリアルキレンイミン(A)が2種類以上の化合物を含む場合、3級アミノ基や全アミノ基の量は、全てのポリアルキレンイミン(A)に基づいて算出するものとする。
ポリアルキレンイミン(A)の形態は、水溶性樹脂、エマルジョン、及び、両者の中間的形態であるディスパージョンのいずれであってもよい。中でも、水溶化(水性化)にあたって樹脂中に導入される極性基や親水基によって、非吸収性基材に対する密着性が更に向上することから、水溶性樹脂またはディスパージョンの形態であることが好ましい。
なお本明細書において「水溶性樹脂」とは、対象となる樹脂の、25℃・1質量%水溶液が、肉眼で見て透明であるものを指す。また、水溶性樹脂でないもののうち、25℃下において、UPA−EX150(マイクロトラック・ベル社製動的光散乱式粒子分布測定装置)を用い、水を分散媒として測定した平均粒子径が、50nm未満であるものを「ディスパージョン」、50nm以上であるものを「エマルジョン」と定義する。また本明細書における「平均粒子径」とは、体積基準でのメジアン径(D50)である。
本実施形態の水性前処理液で使用できるポリアルキレンイミン(A)は、合成品であっても市販品であってもよく、両者を併用しても良い。合成にあたっては、例えば特開平11−158271号明細書に記載の方法など、既知の方法を任意に利用できる。
一方、ポリアルキレンイミン(A)として利用できる市販品を例示すると、エポミン(登録商標)SP−012、018、200、HM−2000、P−1000、PP−061(日本触媒社製);リニアポリエチレンイミン(Mn2,500、5,000、10,000)、リニアポリエチレンイミン塩酸塩(Mn4,000、10,000、20,000)ブランチドポリエチレンイミン(Mn1,200、1,800)、ポリエチレンイミン80%エトキシ化溶液(Mw70,000)(アルドリッチ社製);ルパゾール(登録商標)G20、G35、G100、HF、PR8515、WF、PO100(BASF社製);DAB−Am−16、32、64(SyMO−Chem B.V.社製);分枝ポリエチレンイミン(Mw1,200、1,800、10,000、50,000〜100,000、70,000)、直鎖ポリエチレンイミン(Mw4,000、40,000)(ポリサイエンス社製)などとなる。
本実施形態のポリアルキレンイミン(A)の重量平均分子量は、1,000〜80,000である。また上記効果をより好適に発現させる観点から、前記重量平均分子量は、5,000〜80,000であることが好ましく、10,000〜75,000であることがより好ましい。なお、本明細書における「重量平均分子量」とは、TSKgel(登録商標)カラム(東ソー(株)社製)とRI検出器とを装備した、HLC−8120GPC(東ソー(株)社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ分析装置)を用い、THFを展開溶媒として測定した、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
また、ポリアルキレンイミン(A)の配合量は、水性前処理液全量に対して0.3〜5.0質量%である。配合量を0.3質量%以上とすることで、非吸収性基材に対する密着性が向上し、5.0質量%以下とすることで、画像品質に優れた印刷物が得られる。前記効果をより好適に発現させる観点から、ポリアルキレンイミン(A)の配合量は0.5〜4.0質量%であることが好ましく、0.7〜3.5質量%であることがより好ましい
更に、併用する凝集剤(B)の効果を阻害することなく、画像品質に優れた印刷物が得られ、かつ、前記凝集剤(B)との相溶性を好適なものとし、保存安定性や画像品質の一層の向上が図れる観点から、前記ポリアルキレンイミン(A)の配合量と、前記凝集剤(B)の配合量との質量比は(A):(B)=0.05:1〜1.5:1であり、0.07:1〜1:1であることがより好ましく、0.1:1〜0.8:1であることが特に好ましい。
<凝集剤(B)>
本実施形態の水性前処理液は、凝集剤(B)として、金属塩及びカチオン性高分子化合物(ただし、前記カチオン性高分子化合物がポリアルキレンイミン(A)である場合を除く)から選ばれる1種以上を含む。上記の通り、これら凝集剤(B)に由来するカチオン成分が、水性インクジェットインキ中の固体成分を凝集させる、及び/または、アニオン基を有する成分に起因する増粘を引き起こし、画像品質に優れた印刷物を得ることができる。
本実施形態の水性前処理液では、金属塩またはカチオン性高分子化合物のどちらかを選択して用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいが、ポリアルキレンイミン(A)との相溶性が良好であることで、密着性や耐擦性に優れた印刷物が得られ、かつ、保存安定性にも優れた水性前処理液となる点から、カチオン性高分子化合物を含むことが好ましい。
一実施形態において、本実施形態の水性前処理液で用いられる凝集剤(B)は、吸湿性が小さいことが好ましい。吸湿性が小さい凝集剤(B)を用いた場合、密着性や耐擦性に優れた印刷物が得られるだけでなく、印刷物を高湿環境下や長期で保管した場合であっても、大気中の水分を吸湿することがなく、長期にわたって優れた品質を保持できるためである。
なお、本明細書における「吸湿性が小さい凝集剤」とは、具体的には、下記方法によって測定される吸湿重量増加率が80質量%以下であるものを指す。まず、凝集剤を温度100℃、相対湿度75%RH以下の環境下で24時間保管する。なお市販品など、凝集剤が水溶液の状態でしか入手できない場合は、あらかじめ水を揮発除去したのち、100℃・75%RH以下の環境下に保管する。100℃・75%RH以下の環境下に保管したのち、凝集剤の重量を測定し(W1(g)とする)、続いて温度40℃、相対湿度80%RHの環境下で24時間保管する。40℃・80%RH環境下保管後、再度重量を測定し(W2(g)とする)、下記式(1)により吸湿重量増加率を算出する。
式(1):

吸湿重量増加率(質量%)=100×{(W2−W1)/W1}
本実施形態の水性前処理液を付与した基材を、高湿環境下で長期間保管した際であっても、密着性や画像品質に優れた印刷物が得られる観点から、凝集剤(B)の吸湿重量増加率は、80質量%以下であり、40質量%以下であることがより好ましい。
また上記の通り、本実施形態の水性前処理液における凝集剤(B)の配合量は、ポリアルキレンイミン(A)の配合量に基づいて決定される。
<金属塩>
凝集剤(B)として金属塩を選択する場合、水性インクジェットインキを凝集・増粘させられるものであれば、任意の材料を用いることができる。また、水性前処理液に対する溶解性や液中拡散性に優れるものや、ポリアルキレンイミン(A)との相溶性が良好であるものを選択することが好ましい。なお、金属塩は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、後述するカチオン性高分子化合物と併用してもよい。
本実施形態の水性前処理液において、金属塩は、金属イオンと前記金属イオンに結合する陰イオンとから構成されるものであれば、その種類は特に限定されない。その中でも、顔料と瞬時に相互作用することで、にじみや混色を抑制し、鮮明な画像を得ることができる点から、前記金属塩が多価金属塩を含有することが好ましい。また詳細は不明であるが、保存安定性に優れる水性前処理液が得られる点から、多価金属塩を構成する多価金属イオンが3価の陽イオン、特にアルミニウムイオンであることがより好ましい。
無機金属塩の具体例として、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、硝酸アルミニウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの無機金属塩の中でも、吸湿性や、水性インクジェットインキの凝集・増粘効果の点から、硫酸アルミニウム、及び/または硝酸アルミニウムを選択することが好ましい。
また有機金属塩の具体例として、パントテン酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、酢酸、乳酸などの有機酸の、アルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、亜鉛塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの有機酸の金属塩の中でも、吸湿性や、水性インクジェットインキの凝集・増粘効果の点から、乳酸及び/または酢酸の、アルミニウム塩またはカルシウム塩を選択することが好ましい。
上記の通り、本実施形態の水性前処理液における金属塩の配合量は、ポリアルキレンイミン(A)の配合量に基づいて決定される。ある実施形態では、金属塩の配合量が、水性前処理液全量に対し0.2〜20質量%であることが好ましく、0.5〜18質量%であることがより好ましく、1.0〜15質量%であることが特に好ましい。金属塩の配合量を上記範囲内に収めることで、にじみや混色を抑制しながらも、基材に対する水性前処理液の濡れ性を確保することができる。また、金属塩に起因する沸点上昇現象が過度に発生することなく、好適な乾燥性を発現できることや、保存安定性に優れた水性前処理液となることからも、好適である。
<カチオン性高分子化合物>
一方、凝集剤(B)としてカチオン性高分子化合物を選択する場合も、水性インクジェットインキを凝集・増粘させられるものであれば、任意の材料を用いてよく、水性前処理液に対する溶解性や液中拡散性に優れるものや、ポリアルキレンイミン(A)との相溶性が良好であるものを選択することが好ましい。なお本明細書における「凝集剤(B)」には、ポリアルキレンイミン(A)は含まれないものとする。また、カチオン性高分子化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、上記の金属塩と併用してもよい。
カチオン性高分子化合物に含まれるカチオン基の例として、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、尿素基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。またカチオン性高分子化合物中に上記カチオン基を導入するために使用される材料として、例えばビニルアミン、アリルアミン、メチルジアリルアミン、エチレンイミンなどのアミン化合物;アクリルアミド、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミドなどのアミド化合物;ジシアンジアミドなどのシアナミド化合物;エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、メチルエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなどのエピハロヒドリン化合物;ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾールなどの環状ビニル化合物;アミジン化合物;ピリジニウム塩化合物;イミダゾリウム塩化合物などを挙げることができる。
本実施形態の水性前処理液において、凝集剤(B)としてカチオン性高分子化合物を用いる場合、前記カチオン性高分子化合物が、アリルアミン構造単位、及び/または、ジアリルアミン構造単位を含む化合物を用いることが好ましく、少なくともジアリルアミン構造単位を含んでいることがより好ましい。上記の樹脂はいずれも強電解質であり、前処理液中における前記樹脂の溶解安定性が良好であるとともに、水性インクジェットインキの凝集・増粘能力や、ポリアルキレンイミン(A)との相溶化性に優れている。中でもジアリルアミン構造単位を含む樹脂は、特に優れた凝集・増粘能力を発揮し、非吸収性基材上で、にじみや混色がなく、かつ鮮明性や色再現性に優れた印刷物が得られるため好ましい。なお上記ジアリルアミン構造単位には、メチルジアリルアミン構造単位やジメチルジアリルアミン構造単位などの(ジ)アルキルジアリルアミン構造単位も含まれるものとする。
一方、ある実施形態においては、理由は定かではないものの、エピハロヒドリン構造単位を含む樹脂を使用した印刷物は耐水性に優れており、好適に選択される。なおエピハロヒドリン構造単位を含む樹脂として、エピハロヒドリン変性ポリアミン樹脂、エピハロヒドリン変性ポリアミド樹脂、エピハロヒドリン変性ポリアミドポリアミン樹脂、エピハロヒドリン−アミン共重合体などを挙げることができる。また入手容易性などの点から、エピハロヒドリンとして、エピクロロヒドリンまたはメチルエピクロロヒドリンが好適に選択される。
上記カチオン性高分子化合物は、既知の合成方法により合成品したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。なお、アリルアミン構造単位を含む市販品の具体例として、PAA−HCL−01、03、05、3L、10L;PAA−01、03、05、08、15、15C、25;PAA−1112、1112CL;PAA−U5000、U7030、AC5050A、N5000、N5050CL(ニットーボーメディカル社製)を挙げることができる。また、ジアリルアミン構造単位を含む市販品の具体例として、PAS−21、21CL;PAS−880;PAS−M−1、M−1L;PAS−M−1A;PAS−92、92A;PAS−H−1L、H−5L、H−10L;PAS−24;PAS−J−81、J−81L、J−41(ニットーボーメディカル社製);ユニセンスFPA100L、FPA101L、FPA102L、FPA1000L、FPA1001L、FPA1002L、FCA1000L、FCA1001L、FCA5000L、KCA100L、KCA101L(センカ社製)を挙げることができる。更に、アリルアミン構造単位及びジアリルアミン構造単位を含む市販品の具体例として、PAA−D11−HCL、D41−HCL、D19−HCL、D19A(ニットーボーメディカル社製)を挙げることができる。
一方、エピハロヒドリン構造単位を含む市販品の具体例としては、FL−14(SNF社製)、アラフィックス100、251S、255、255LOX(荒川化学社製)、DK−6810、6853、6885;WS−4010、4011、4020、4024、4027、4030(星光PMC社製)、パピオゲンP−105(センカ社製)、スミレーズレジン650(30)、675A、6615、SLX−1(田岡化学工業社製)、カチオマスターPD−1、7、30、A、PDT−2、PE−10、PE−30、DT−EH、EPA−SK01、TMHMDA−E(四日市合成社製)、ジェットフィックス36N、38A、5052(里田化工社製)が挙げられる。
上記の他にも、例えばポリアルキレンポリアミンポリアミドポリ尿素樹脂である、PA6634、6638、6640、6644、6646、6654、6702、6704(星光PMC社製)を使用できる。また、本実施形態の効果を損なわない範囲であれば、カチオン性高分子化合物として、ポリアルキレンイミン(A)ではないポリアルキレンイミン、すなわち、重量平均分子量が、1,000未満、及び/または、80,000以上であるポリアルキレンイミンを更に含んでもよい。このような化合物の具体例として、エポミン(登録商標)SP−003、006(日本触媒社製);ルパゾール(登録商標)FG、P、PS、PN50、SK、SC−61B(BASF社製);分枝ポリエチレンイミン(Mw600、750,000、2,000,000)、直鎖ポリエチレンイミン(Mw250,000)(ポリサイエンス社製)が挙げられる。
なお、凝集剤(B)としてカチオン性高分子化合物を用いる場合、その形態は、水溶性樹脂、エマルジョン、及び、両者の中間的形態であるディスパージョンのいずれであってもよいが、水性インクジェットインキの凝集・増粘能力や、ポリアルキレンイミン(A)との相溶化性に優れている点から、水溶性樹脂またはディスパージョンが好ましく選択される。
上記の通り、本実施形態の水性前処理液におけるカチオン性高分子化合物の配合量は、ポリアルキレンイミン(A)の配合量に基づいて決定される。ある実施形態では、カチオン性高分子化合物の配合量は、水性前処理液全量に対し、固形分換算で0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、1.5〜20質量%であることが特に好ましく、2〜15質量%であることが極めて好ましい。カチオン性高分子化合物の配合量を上記範囲内に収めることで、にじみや混色を抑制しながらも、ポリアルキレンイミン(A)との相溶性に優れ、長期保存した際の保存安定性に優れる前処理液を得ることができる。更に、水性前処理液の粘度を好適な範囲内に収められる点からも、好適である。
<有機溶剤(C)>
本実施形態の水性前処理液は、更に有機溶剤(C)を含んでもよい。有機溶剤(C)を併用することで、ポリアルキレンイミン(A)や凝集剤(B)の溶解性や、水性前処理液の乾燥性・濡れ性を好適なものに調整することができる。なお本実施形態の水性前処理液では、有機溶剤(C)は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の水性前処理液に使用できる有機溶剤(C)に特に制限はないが、水溶性の有機溶剤を含むことが好ましい。なお、本明細書において「水溶性(の)有機溶剤」とは、25℃で液体であり、かつ、25℃の水に対する溶解度が1質量%以上であるものを指す。
更に、本実施形態の水性前処理液に用いられる有機溶剤は、ポリアルキレンイミン(A)や凝集剤(B)との親和性がよく、前記水性前処理液の保存安定性が向上する観点から、分子構造中に水酸基を1個以上含む水溶性有機溶剤を使用することがより好ましく、非吸収性基材に対して均一な付与が実現でき、密着性や画像品質が特に向上する観点から、前記分子構造中に水酸基を1個以上含む水溶性有機溶剤として、1気圧下における沸点が75〜210℃である水溶性有機溶剤(c−1)を選択することが特に好ましい。なお本明細書における、1気圧下における沸点は、公知の方法、例えば示差熱分析(DTA)法や、示差走査熱量分析(DSC)法等によって測定される値である。
本実施形態の水性前処理液に好適に用いられる、分子構造中に水酸基を1個以上含む水溶性有機溶剤を例示すると、
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、などの1価アルコール類;
1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール#200、ポリエチレングリコール#400、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、などの2価アルコール(グリコール)類;
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノメチルエーテル、などのグリコールモノアルキルエーテル類;
グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジグリセリン、ポリグリセリン、などの鎖状ポリオール化合物;
を挙げることができる。上記でも説明した通り、上記に例示した水溶性有機溶剤の中でも、1気圧下における沸点が75〜210℃であるものが特に好適に選択される。
また、ある好ましい実施形態では、ポリアルキレンイミン(A)や凝集剤(B)との親和性に優れ、前記水性前処理液の保存安定性が向上するとともに、水性前処理液の濡れ性も良化できる観点から、上記で例示した化合物のうち、分子構造中に水酸基を1個または2個含む水溶性有機溶剤を選択することが好ましく、その中でも1価アルコール類を使用することが好ましい。
また、本実施形態の水性前処理液には、上記に例示したもの以外にも、
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールジアルキルエーテル類;
2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ε−カプロラクタム、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−エトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−2−エチルヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−オクトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−オクトキシプロピオンアミドなどの含窒素系溶剤;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどの複素環化合物、
などを使用することができる。
本実施形態の水性前処理液に含まれる有機溶剤の配合量の総量は、水性前処理液全量に対して1〜50質量%であることが好ましく、2〜40質量%であることがより好ましく、3〜30質量%であることが特に好ましい。有機溶剤の配合量を上記範囲内に収めることで、ポリアルキレンイミン(A)や凝集剤(B)の溶解性と、非吸収性基材に対する濡れ性とが両立した水性前処理液を得ることができるとともに、水性前処理液の印刷方法によらず、長期にわたって、印刷欠陥を起こすことなく安定した印刷が可能となる。
また有機溶剤として、水酸基を1個以上含む水溶性有機溶剤を使用する場合、その配合量は、前記有機溶剤全量に対して35〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましく、65〜100質量%であることが特に好ましい。配合量を上記範囲内に収めることで、水酸基を1個以上含む水溶性有機溶剤による効果が好適に発現されるためである。
また本実施形態の水性前処理液では、1気圧下における沸点が240℃以上である有機溶剤の含有量が、前記水性前処理液全量に対して10質量%未満であることが好ましい(0質量%でも良い)。沸点が240℃以上である有機溶剤を含まないか、含むとしてもその配合量を上記範囲内とすることで、画像品質に優れた印刷物が得られるとともに、水性前処理液の乾燥性が十分なものとなる。
更に上記と同様の理由により、1気圧下における沸点が240℃以上である有機溶剤の含有量が、前記水性前処理液全量に対して10質量%未満であることに加えて、1気圧下における沸点が220℃以上である有機溶剤の含有量が、前記水性前処理液全量に対して15質量%未満であることが好ましく、10質量%未満であることがより好ましい。
<界面活性剤>
本実施形態の水性前処理液は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤には、シロキサン系、アクリル系、フッ素系、アセチレンジオール系、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系などの種類があり、これらのうちいずれか1種を選択してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ある好ましい実施形態においては、非吸収性基材上における好適な濡れ性を付与することで、均一な前処理液層を形成し、密着性や画像品質に優れた印刷物を得ることができる観点から、上記のうち、アセチレンジオール系界面活性剤、及び/または、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を使用することが好ましい。
本実施形態の水性前処理液で使用される界面活性剤は、既知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。界面活性剤を市販品から選択する場合、例えばアセチレン系界面活性剤としてサーフィノール61、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、420、440、465、485、SE、SE−F、ダイノール604、607(エアープロダクツ社製)、オルフィンE1004、E1010、E1020、PD−001、PD−002W、PD−004、PD−005、EXP.4001、EXP.4200、EXP.4123、EXP.4300(日信化学工業社製)などを、
またポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤として、エマルゲンシリーズ(花王社製)、エマルミンシリーズ、サンノニックシリーズ、セドランシリーズ、ナロアクティーシリーズ(三洋化成工業社製)、ペグノールシリーズ(東邦化学工業社製)、ノニオンシリーズ、ユニルーブシリーズ、ユニセーフシリーズ(日油社製)などを挙げることができる。上記の界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の水性前処理液が界面活性剤を含む場合、その配合量、非吸収性基材上で均一な前処理液層を形成する観点から、水性前処理液全量に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。特に好ましくは0.1〜3質量%である。
<水>
上記の通り、本実施形態の水性前処理液は水を主成分として含む。なお、本明細書において「水を主成分として含む」とは、全ての構成成分のうち水の配合量が最も多いことを意味する。
本実施形態の水性前処理液に含まれる水の含有量は、水性前処理液全量に対し30〜95質量%の範囲であることが好ましく、40〜90質量%であることがより好ましく、50〜85質量%であることが更に好ましい。水によって、ポリアルキレンイミン(A)や凝集剤(B)、更には界面活性剤等の各種材料の相互溶解性が高まるため、水性前処理液の保存安定性向上には欠かせない材料である。
<pH調整剤>
本実施形態の水性前処理液は、pH調整剤を含むことができる。pH調整剤を使用することで、塗工装置に使用される部材へのダメージを抑制するとともに、経時でのpH変動を抑えて水性前処理液の性能を長期的に維持し、保存安定性を維持・向上させることができる。pH調整剤として使用できる材料に制限はなく、また1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。具体的に、水性前処理液を塩基性化させる場合には、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、などのアルカノールアミン;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などを使用することができる。また、水性前処理液を酸性化させる場合には、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、リン酸、ホウ酸、フマル酸、マロン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸などを使用することができる。
pH調整剤の配合量は、水性前処理液全量に対して0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜4.5質量%であることがより好ましい。pH調整剤の配合量を上記範囲内に収めることで、大気中の二酸化炭素の溶解など外部刺激によるpH変化が起きにくくなり、また、ポリアルキレンイミン(A)や凝集剤(B)の効果の発現を阻害することがない。
<着色剤>
ある好ましい実施形態において、本実施形態の水性前処理液は、顔料や染料などの着色剤を実質的に含まない。着色剤を含まず、実質的に透明な水性前処理液を用いることで、基材特有の色味や透明感を活かした印刷物を得ることができる。なお本明細書において「実質的に含まない」とは、本実施形態の効果発現を妨げる程度まで、当該材料を意図的に添加することを認めないことを表すものであり、例えば、不純物や副生成物としての意図せぬ混入まで排除するものではない。具体的には、前処理液全量に対し、当該材料を2.0質量%以上含まないことであり、好ましくは1.0質量%以上含まないことであり、より好ましくは0.5質量%以上含まないことであり、特に好ましくは0.1質量%以上含まないことである。
一方、別の好ましい実施形態では、本実施形態の水性前処理液は、着色剤として、白色顔料を含む。白色の水性前処理液を、有色及び/または透明な基材に対して用いることで、鮮明性や視認性に優れた印刷物を得ることができる。本実施形態の水性前処理液が白色顔料を含む場合、前記白色顔料として、従来より既知の材料を任意に用いることができる。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなどの無機酸化物;チタン酸ストロンチウム、硫酸バリウムなどの水不溶性無機塩;中空樹脂粒子、非中空樹脂粒子などの水分散性樹脂粒子(エマルジョン);などが使用可能である。
<その他材料>
また本実施形態の水性前処理液は、所望の物性値とするために、必要に応じて消泡剤、増粘剤、防腐剤などの添加剤を適宜使用できる。これらの添加剤を使用する場合、その配合量は、水性前処理液全量に対して0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.01〜3質量%とすることが更に好ましい。過剰に配合してしまうと、前処理液中の凝集剤の機能を阻害してしまう可能性があることから、添加量は上記範囲にすることが好ましい。
また、本実施形態の水性前処理液は、重合性単量体を実質的に含まないことが好ましい。
<水性前処理液の物性>
本実施形態の水性前処理液が、平均粒子径(D50)が1μm以上である水不溶性粒子を含む場合、その含有量が、前記水性前処理液全量に対して1質量%以下であることが好ましい。平均粒子径が1μm以上である水不溶性粒子の配合量を制限することで、長期にわたって、水性前処理液の保存安定性が好適なものとなる。また、水性前処理液中でのポリアルキレンイミン(A)の移動が阻害されないため、密着性も向上する。なお水不溶性粒子の平均粒子径は、上記ポリアルキレンイミン(A)のエマルジョン・ディスパージョンの平均粒子径と同様の方法で測定できる。
本明細書において「水不溶性」とは、25℃の水に対する溶解度が1質量%未満であるものを指す。平均粒子径が1μm以上である水不溶性粒子の具体例として、前記粒子径条件を満たす、有機顔料、無機酸化物、水不溶性無機塩、水分散性樹脂粒子(エマルジョン)が挙げられる。なお、ポリアルキレンイミン(A)、凝集剤(B)、着色剤などの上記で説明した材料であっても、平均粒子径が1μm以上であるものは、上記の水不溶性粒子に該当するものとする。
本実施形態の水性前処理液は、25℃における粘度が5〜200mPa・sであることが好ましく、5〜180mPa・sであることがより好ましく、10〜160mPa・sであることが更に好ましく、15〜140mPa・sであることが特に好ましい。上記粘度範囲を満たす水性前処理液は、基材に対して均一に塗布できるため、画像品質や密着性に優れた印刷物となる。なお水性前処理液の粘度は、処理液の粘度に応じて、例えばE型粘度計(東機産業社製TVE25L型粘度計)やB型粘度計(東機産業社製TVB10形粘度計)を用いて測定することができる。
本実施形態の水性前処理液の静的表面張力は、非吸収性基材上における好適な濡れ性を付与し、均一な前処理液層を形成することで、画像品質に優れた印刷物を得るという観点から、20〜45mN/mであることが好ましく、22〜40mN/mであることがより好ましく、25〜35mN/mであることが特に好ましい。なお、本明細書における静的表面張力は、25℃環境下における、Wilhelmy法(プレート法、垂直板法)に基づく値であり、例えば、自動表面張力計DY−300(協和界面科学社製)と白金プレートとを用いて測定することができる。
<水性前処理液の製造方法>
上記の成分からなる本実施形態の水性前処理液は、例えば、ポリアルキレンイミン(A)、凝集剤(B)、及び、必要に応じて、有機溶剤、界面活性剤、pH調整剤、着色剤や、上記で挙げたような適宜に選択される添加剤成分を加え、撹拌・混合したのち、必要に応じて濾過することで製造される。ただし、水性前処理液の製造方法は上記に限定されるものではない。例えば着色剤として白色顔料を使用する場合、あらかじめ、前記白色顔料と水とを含む白色顔料分散液を作製したのち、ポリアルキレンイミン(A)や凝集剤(B)と混合してもよい。
なお撹拌・混合の際は、必要に応じて前記混合物を40〜100℃の範囲で加熱してもよい。ただしポリアルキレンイミン(A)としてエマルジョンやディスパージョンを使用する場合は、その最低造膜温度(MFT)以下の温度で加熱することが好ましい。
<水性記録液セット>
本実施形態の水性前処理液は、1種類以上の水性インクジェットインキ(以下、「水性インキ」や「インキ」ともいう)と組み合わせ、水性記録液セットの形態で使用できる。以下に、本実施形態の水性記録液セットを構成する水性インクジェットインキ(以下、単に「本実施形態の水性インクジェットインキ(水性インキ、インキ)」ともいう)の構成要素について説明する。
<顔料>
本実施形態の水性インクジェットインキは、耐ブロッキング性、耐水性、耐光性、耐候性、耐ガス性などを有する観点から、色材として顔料を含む。前記顔料として、既知の有機顔料、無機顔料のいずれも使用することができる。これらの顔料は、水性インキ全量に対して2〜20質量%の範囲で含まれることが好ましく、2.5〜15質量%の範囲で含まれることがより好ましく、3〜10質量%の範囲で含まれることが特に好ましい。またホワイトインキの場合、顔料の含有量は、前記ホワイトインキ全量に対して3〜40質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましく、7〜30質量%であることが特に好ましい。顔料の含有量を2質量%以上(ホワイトインキの場合は3質量%以上)にすることで、十分な発色性や鮮明性を有する印刷物が得られる。また顔料の含有量を20質量%以下(ホワイトインキの場合は40質量%以下)とすることで、水性インキの粘度を、インクジェット印刷に適した範囲に収められるとともに、前記水性インキの保存安定性も良好となり、結果として長期にわたって吐出安定性を確保できる。
本実施形態の水性インキで使用することができるシアン有機顔料として、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66などが挙げられる。中でも発色性や耐光性に優れる点から、C.I.ピグメントブルー15:3、及び15:4からなる群から選択される1種以上が好ましい。
また、マゼンタ有機顔料として、例えば、C.I.ピグメントレッド5、7、12、22、23、31、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、112、122、146、147、150、185、202、209、238、242、254、255、266、269、282、C.I.ピグメントバイオレッド19、23、29、30、37、40、43、50などが使用できる。中でも発色性や耐光性に優れる点から、C.I.ピグメントレッド122、150、166、185、202、209、266、269、282、及びC.I.ピグメントバイオレッド19からなる群から選択される1種以上が好ましい。
なお発色性を更に高める観点で、マゼンタ有機顔料として、キナクリドン顔料を含む固溶体顔料を用いることも好ましい。具体的には、C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントバイオレッド19とを含む固溶体顔料、C.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレッド19とを含む固溶体顔料、C.I.ピグメントレッド209とC.I.ピグメントバイオレッド19とを含む固溶体顔料、C.I.ピグメントレッド282とC.I.ピグメントバイオレッド19とを含む固溶体顔料、C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントレッド150とを含む固溶体顔料、C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントレッド185とを含む固溶体顔料、C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントレッド269とを含む固溶体顔料などを挙げることができる。
また、イエロー有機顔料として、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213などが使用できる。中でも発色性に優れる点からC.I.ピグメントイエロー12、13、14、74、120、180、185、及び213からなる群から選択される1種以上が好ましい。
また、ブラック有機顔料として、例えば、アニリンブラック、ルモゲンブラック、アゾメチンアゾブラックなどが使用できる。なお、上記のシアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料や、下記のオレンジ顔料、グリーン顔料、ブラウン顔料などの有彩色顔料を複数混合使用し、ブラック顔料とすることもできる。
本実施形態の水性インクジェットインキには、オレンジ顔料、グリーン顔料、ブラウン顔料などの特色顔料を使用することもできる。具体的には、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、 71、C.I.ピグメントグリーン7、36、43、58、ピグメントブラウン23、25、26などが挙げられる。
本実施形態の水性インクジェットインキで使用できる無機顔料には特に限定がなく、例えば黒色顔料としてカーボンブラックや酸化鉄、白色顔料として酸化チタンを用いることができる。
本実施形態の水性インキで使用できるカーボンブラックとして、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラックが挙げられる。中でも、これらのカーボンブラックのうち、一次粒子径が11〜50nm、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10質量%、pHが2〜10であるものが好適である。このような特性を有する市販品として、例えばNo.25、30、33、40、44、45、52、850、900、950、960、970、980、1000、2200B、2300、2350、2600;MA7、MA8、MA77、MA100、MA230(三菱化学(株)製)、RAVEN760UP、780UP、860UP、900P、1000P、1060UP、1080UP、1255(ビルラカーボン社製)、REGAL330R、400R、660R、MOGUL L(キャボット社製)、Nipex160IQ、170IQ、35、75;PrinteX30、35、40、45、55、75、80、85、90、95、300;SpecialBlack350、550;Nerox305、500、505、600、605(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)などが挙げられ、いずれも好ましく使用することができる。
また、白色顔料として好適に用いられる酸化チタンとして、アナターゼ型、ルチル型のいずれも使用することができるが、印刷物の隠蔽性を上げるためにもルチル型を用いるのが好ましい。また、塩素法、硫酸法などいずれの方法で製造したものを選択してもよいが、白色度が高いことから、塩素法にて製造された酸化チタンが好ましく使用される。
また、本実施形態の水性インクジェットインキで使用される酸化チタンは、無機化合物及び/または有機化合物によって表面処理されたものであることが好ましい。無機化合物の例として、シリコン(Si)、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン、チタンの化合物、及びこれらの水和酸化物を挙げることができる。また有機化合物の例として、多価アルコール、アルカノールアミンまたはその誘導体、高級脂肪酸またはその金属塩、有機金属化合物などを挙げることができる。これらの中でも、多価アルコールまたはその誘導体は、酸化チタン表面を高度に疎水化し、インキの保存安定性を向上できるため、好ましく用いられる。
なお本実施形態の水性インクジェットインキでは、印刷物の色相や発色性を好適な範囲に収めるため、上記の顔料を複数混合して用いることができる。例えば、カーボンブラック顔料を使用したブラックインキに対し、低印字率における色味を改善するため、シアン有機顔料、バイオレッド有機顔料、マゼンタ有機顔料、オレンジ有機顔料、ブラウン有機顔料から選択される1種以上の顔料を少量添加してもよい。
<顔料分散用樹脂>
顔料を水性インキ中で安定的に分散保持する方法として、(1)水溶性顔料分散樹脂を顔料表面に吸着させ分散する方法、(2)水溶性及び/または水分散性の界面活性剤を顔料表面に吸着させ分散する方法、(3)顔料表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、分散樹脂や界面活性剤なしでインキ中に分散する方法(自己分散顔料)、(4)水不溶性樹脂で顔料を被覆し、必要に応じて更に別の水溶性顔料分散樹脂や界面活性剤を用いてインキ中に分散させる方法などを挙げることができる。
本実施形態で用いられる水性インキでは、上記のうち(1)または(4)の方法、すなわち、顔料分散用樹脂を用いる方法が選択され、かつ、前記顔料分散用樹脂が、芳香環構造を有する単量体を、前記顔料分散用樹脂を構成する単量体全量に対し20〜90質量%含むことが好適である。これは、顔料分散用樹脂中に含まれる芳香環と、水性前処理液に含まれる凝集剤(B)とが形成するπ−カチオン相互作用による密着性・画像品質の向上や、水溶性有機溶剤を含む水性インクジェットインキにおける保存安定性の確保・向上を目的としたものである。なお本明細書において「顔料分散用樹脂」とは、上記(1)や(4)の方法において用いられる水溶性顔料分散樹脂や、上記(4)の方法において用いられる水不溶性樹脂を総称する用語として定義される。また「水不溶性樹脂」とは、対象となる樹脂の、25℃・1質量%水溶液が、肉眼で見て透明でないものを指す。
本実施形態の水性インキでは、上記の中でも、(1)の水溶性顔料分散樹脂を用いる方法を選択することが特に好ましい。これは、樹脂を構成する単量体組成や分子量を選定・検討することにより、顔料に対する樹脂吸着能や顔料分散樹脂の電荷を容易に調整でき、結果としてインキの保存安定性の向上や、本実施形態の水性前処理液による顔料凝集能力の制御が可能となるためである。
上記顔料分散用樹脂の種類は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン(メタ)アクリル樹脂、(無水)マレイン酸樹脂、スチレン(無水)マレイン酸樹脂、オレフィン(無水)マレイン酸樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂(多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体)などを使用することができる。中でも、芳香環構造を有する単量体を含む材料選択性の大きさや合成の容易さの点で、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂を使用することが特に好ましい。また上記の顔料分散用樹脂は、既知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。
上記の通り、本実施形態の水性インキで用いられる顔料分散用樹脂は、芳香環構造を有する単量体を20〜90質量%含むことが好ましいが、その量は、顔料分散用樹脂全量に対し、20〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることが特に好ましい。芳香環構造の量を上記範囲に収めることで、π−カチオン相互作用を利用した密着性・画像品質向上の効果や、沸点の低い水溶性有機溶剤を含む水性インキにおける保存安定性の確保・向上の効果が好適なものとなる。
一実施形態において、顔料分散用樹脂は、芳香環構造に加えて炭素数10〜36のアルキル基を含むことが好ましい。アルキル基の炭素数を10〜36とすることにより、顔料分散液の低粘度化と更なる画像品質向上、保存安定性向上を実現できるためである。なおアルキル基の炭素数として、水性インキ中の水溶性有機溶剤との相溶性が好適化し、印刷物の乾燥性が良化する観点から、好ましくは炭素数12〜30であり、更に好ましくは炭素数18〜24である。またアルキル基は炭素数10〜36の範囲であれば、直鎖であっても分岐していてもよいが、直鎖状のものが好ましい。直鎖のアルキル基としてはラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、セチル基(C16)、ステアリル基(C18)、アラキル基(C20)、ベヘニル基(C22)、リグノセリル基(C24)、セロトイル基(C26)、モンタニル基(C28)、メリッシル基(C30)、ドトリアコンタノイル基(C32)、テトラトリアコンタノイル基(C34)、ヘキサトリアコンタノイル基(C36)などが挙げられる。
炭素数10〜36のアルキル鎖を含有する単量体の、顔料分散用樹脂中に含まれる含有量は、顔料分散液の低粘度化と印刷物の耐擦性、乾燥性、耐ブロッキング性や光沢性とを両立させる観点から5〜60質量%であることが好ましく、15〜55質量%であることがより好ましく、25〜50質量%であることが特に好ましい。
また一実施形態において、顔料分散用樹脂が、芳香環構造に加えて、アルキレンオキサイド基を含むことも好適である。アルキレンオキサイド基を導入することで、前記顔料分散用樹脂の親水・疎水性を任意に調整し、水性インキの保存安定性を向上できるとともに、前記アルキレンオキサイド基が、前処理液層中のポリアルキレンイミン(A)や非吸収性基材と水素結合を引き起こし、印刷物の密着性が特段に向上する。上記機能を好適に発現させるため、顔料分散用樹脂として水溶性顔料分散樹脂を用いる場合、前記アルキレンオキサイド基としてエチレンオキサイド基を選択することが好ましい。同様に、上記顔料分散用樹脂として水不溶性樹脂を用いる場合、前記アルキレンオキサイド基としてプロピレンオキサイド基を選択することが好ましい。
アルキレンオキサイド基を有する単量体の、顔料分散用樹脂中に含まれる含有量は、顔料分散液の低粘度化、水性インキの保存安定性、印刷物の密着性を両立させる観点から、5〜40質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが特に好ましい。
なお、顔料を水性インキ中で安定的に分散保持する方法として、上記(1)の方法を選択する、すなわち、上記顔料分散用樹脂として水溶性顔料分散樹脂を用いる場合、インキへの溶解度を上げるため、前記顔料分散用樹脂中の酸基を塩基で中和することが好ましい。しかしながら過剰に塩基を投入してしまうと、水性前処理液中にカチオン成分が含まれている場合、カチオン成分が中和されてしまい、十分な効果を発揮することができないため、その添加量には注意を払う必要がある。塩基の添加量が過剰かどうかは、例えば顔料分散用樹脂の10質量%水溶液を作製し、前記水溶液のpHを測定することにより確認することができる。中でも、水性前処理液の機能を十分に発現させるために、前記水溶液のpHが7〜11.5であることが好ましく、7.5〜11であることがより好ましい。
上記の、顔料分散用樹脂を中和するための塩基としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などを挙げることができる。
顔料をインキ中で安定的に分散保持する方法として、上記(1)の方法を選択する、すなわち、上記顔料分散用樹脂として水溶性顔料分散樹脂を用いる場合、その酸価が30〜375mgKOH/gであることが好ましい。酸価を上記の範囲内に収めることで、顔料分散樹脂の水に対する溶解性が確保できるうえ、顔料分散樹脂間での相互作用が好適なものとなることで、顔料分散液の粘度を抑えることができるためである。酸価が30mgKOH/g以上であれば、水に対する溶解性が良好となり、顔料分散液の粘度を抑えることができ、400mgKOH/g以下であれば、水性インキの保存安定性が優れる。顔料分散樹脂の酸価は、65〜340mgKOH/gであることがより好ましく、更に好ましくは、100〜300mgKOH/gであり、特に好ましくは135〜270mgKOH/gである。
一方、上記(4)の方法を選択する、すなわち、上記顔料分散用樹脂として水不溶性樹脂を用いる場合、その酸価は0〜100mgKOH/gであることが好ましく、5〜90mgKOH/gであることがより好ましく、更に好ましくは、10〜80mgKOH/gである。酸価を上記の範囲内に収めることで、耐ブロッキング性や耐擦性に優れた印刷物が得られるためである。なお、顔料分散用樹脂の酸価は、前記顔料分散用樹脂1g中に含まれる酸を中和するために必要となる水酸化カリウム(KOH)のmg数であり、エタノール/トルエン混合溶媒中で、KOH溶液にて滴定した値である。前記測定は、例えば京都電子工業株式会社製「電位差自動滴定装置AT−610」を用いて行うことができる。
また顔料分散用樹脂の分子量は、重量平均分子量が1,000以上300,000以下の範囲内であることが好ましく、5,000以上200,000以下の範囲であることがより好ましい。重量平均分子量が前記範囲であることにより、顔料が水中で安定的に分散することで水性インキの保存安定性が向上し、また、前記水性インキに使用した際の粘度調整などが行いやすい。重量平均分子量が1,000以上であると、水性インキ中に添加されている水溶性有機溶剤に対して顔料分散樹脂が溶解しにくいために、顔料に対しての分散樹脂の吸着が強くなり、インキの保存安定性が向上する。重量平均分子量が300,000以下であると、分散時の粘度が低く抑えられるだけでなく、インクジェットヘッドからの吐出安定性が良好となり、長期にわたって安定な印刷が可能になる。なお顔料分散用樹脂の重量平均分子量は、ポリアルキレンイミン(A)の場合と同様にして測定できる。
本実施形態において、顔料分散用樹脂の配合量は、顔料に対して2〜60質量%であることが好ましい。顔料分散用樹脂の配合量を、顔料に対して2〜60質量%とすることで、顔料分散液の粘度を抑え、前記顔料分散液や水性インキの保存安定性・分散安定性が良化するとともに、本実施形態の水性前処理液と混合した際に、速やかに凝集が引き起こる。顔料と顔料分散用樹脂の比率としてより好ましくは4〜55質量%、更に好ましくは5〜50質量%である。
<水溶性有機溶剤>
本実施形態の水性インクジェットインキは、水溶性有機溶剤を含む。また、1気圧下における沸点が250℃以上である水溶性有機溶剤の量が、水性インクジェットインキ全量に対し5質量%以下(0質量%でもよい)であることが好ましい。高沸点の水溶性有機溶剤量を5質量%以下にすることで、水性インクジェットインキの乾燥性、吐出安定性が良好になる上に、水性前処理液と組み合わせた際、にじみなどの画質欠陥がなく、耐ブロッキング性も良好な水性インキが得られる。また画像品質や耐ブロッキング性を更に向上させる観点から、1気圧下における沸点が250℃以上である水溶性有機溶剤の量は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい(いずれも、0質量%であってもよい)。
また同様の理由により、1気圧下における沸点が220℃以上である水溶性有機溶媒の量が、水性インキ全量に対し5質量%以下(0質量%でもよい)であることが好ましく、2質量%以下(0質量%でもよい)であることが特に好ましい。なお上記1気圧下における沸点が220℃以上である水溶性有機溶剤の量は、1気圧下で沸点が250℃以上である水溶性有機溶剤も含めて算出するものとする。
一実施形態において、水性インクジェットインキに含まれる水溶性有機溶剤の、1気圧下における加重沸点平均値は、145〜215℃であることが好ましく、150〜200℃であることがより好ましく、155〜190℃であることが特に好ましい。水溶性有機溶剤の加重沸点平均値を上記範囲に収めることで、本実施形態の水性前処理液と組み合わせたときに、高速印刷であっても高画質な画像を得ることができるとともに、吐出安定性も優れたものとなる。なお、上記加重沸点平均の算出には、上記の1気圧下で沸点が250℃以上である水溶性有機溶剤や沸点が220℃以上である水溶性有機溶剤も含めるものとする。また、上記1気圧下における加重沸点平均値は、それぞれの水溶性有機溶剤について算出した、1気圧下での沸点と、全水溶性有機溶剤に対する質量割合との乗算値を、足し合わせることで得られる値である。
なお、上記の1気圧下での沸点は、DSC(示差走査熱量分析)などの熱分析装置を用いることにより測定することができる。
本実施形態の水性インクジェットインキで用いられる、水溶性有機溶剤の総量は、水性インクジェットインキ全量に対し3〜40質量%であることが好ましい。更に、ノズルからの吐出安定性と、水性前処理液と組み合わせたときに十分な濡れ性と乾燥性を確保し、密着性や画像品質に優れた印刷物を得るという観点から、5〜35質量%であることがより好ましく、8〜30質量%以下であることが特に好ましい。水溶性有機溶剤の総量を3質量%以上にすることでインキの保湿性が良好となり、吐出安定性に優れたインキとなる。また水溶性有機溶剤の含有量を40質量%以下にすることで、乾燥性が良好なインキが得られ、画像品質に優れた印刷物となる。なお、顔料分散用樹脂や、後述するバインダー樹脂、界面活性剤などの材料成分との相溶性、親和性の観点から、グリコールエーテル系溶剤及び/またはアルキルポリオール系溶剤を含有することが好ましい。
好適に用いられる、1気圧下の沸点が250℃未満であるグリコールエーテル系溶剤を例示すると、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノメチルエーテル、などのグリコールモノアルキルエーテル類;
ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、などのグリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
特に、優れた保湿性と乾燥性を両立することができる点で、上記グリコールエーテル系溶剤の中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテルを選択することが好ましい。
また、1気圧下の沸点が250℃未満であるアルキルポリオール系溶剤としては、例えば1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、などを挙げることができる。
中でも、優れた保湿性と乾燥性を両立することができる点で、上記アルキルポリオール系溶剤の中でも1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールを選択することが好ましい。
<バインダー樹脂>
本実施形態の水性インクジェットインキはバインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂の形態は、水溶性樹脂、エマルジョン、及び、両者の中間的形態であるディスパージョンのいずれであってもよく、水性インクジェットインキや印刷物に要求される特性に応じて、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。例えばエマルジョンやディスパージョンは、水性インクジェットインキの粘度を低くすることができ、より多量の樹脂を配合することができることから、印刷物の耐性を高めるのに適している。また、バインダー樹脂として水溶性樹脂を使用した水性インクジェットインキは、吐出安定性や、本実施形態の水性前処理液と組み合わせた際の印刷物の画像品質に優れる。
またバインダー樹脂の種類に関しても、(メタ)アクリル樹脂、スチレン(メタ)アクリル樹脂、(無水)マレイン酸樹脂、スチレン(無水)マレイン酸樹脂、オレフィン(無水)マレイン酸樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂などを、いずれも好適に使用できる。中でも、水性インクジェットインキの保存安定性や、本実施形態の水性前処理液と組み合わせた際の、印刷物の密着性や耐擦性の観点から、(メタ)アクリル樹脂、スチレン(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましく使用される。
なお、バインダー樹脂としてエマルジョンを使用する場合、吐出安定性を好適なものとする観点から、前記エマルジョンを構成する単量体の種類や配合比を調整することにより、最低造膜温度(MFT)を50℃以上にすることが好ましい。
なお、上記MFTは、例えばテスター産業社製MFTテスターによって測定することができる。具体的には、フィルム上にWET膜厚300μmとなるように樹脂微粒子の25質量%水溶液を塗工したのち、温度勾配をかけた状態で上記テスター上に静置し、乾燥後に白い析出物が生じた領域と透明な樹脂膜が形成された領域との境界の温度をMFTとする。
また、バインダー樹脂として水溶性樹脂およびディスパージョンを使用する場合、水性インクジェットインキの吐出安定性と印刷物の耐擦性とを両立する観点から、その重量平均分子量を5,000〜80,000の範囲とすることが好ましく、8,000〜60,000の範囲とすることがより好ましく、10,000〜50,000の範囲とすることが特に好ましい。また同様の理由により、水溶性樹脂およびディスパージョンの酸価が5〜80mgKOH/gであることが好ましく、酸価が10〜50mgKOH/gであることがより好ましい。
前記バインダー樹脂の、水性インクジェットインキ全量中における含有量は、固形分換算で水性インクジェットインキ全量の1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜15質量%であり、特に好ましくは3〜10質量%である。
<界面活性剤>
本実施形態の水性インキは、表面張力を調整し画像品質を向上させる目的で界面活性剤を使用することが好ましい。一方で、表面張力が低すぎるとインクジェットヘッドのノズル面が水性インキで濡れてしまい、吐出安定性を損なうことから、界面活性剤の種類と量の選択は非常に重要である。基材に対する濡れ性の確保と、ノズルからの吐出安定性の最適化という観点から、シロキサン系、アセチレンジオール系、フッ素系、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系の界面活性剤を使用することが好ましく、シロキサン系、アセチレンジオール系の界面活性剤を使用することが特に好ましい。界面活性剤の添加量としては、水性インキ全量に対して、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.05〜3.0質量%が更に好ましい。
本実施形態の水性インキで使用される界面活性剤は、既知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。界面活性剤を市販品から選択する場合、例えばアセチレンジオール系界面活性剤やポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤は、水性前処理液で使用できる界面活性剤として上記に挙げたものが好適に選択できる。またシロキサン系界面活性剤としては、BY16−201、FZ−77、FZ−2104、FZ−2110、FZ−2162、F−2123、L−7001、L−7002、SF8427、SF8428、SH3749、SH8400、8032ADDITIVE、SH3773M(東レ・ダウコーニング社製)、Tegoglide410、Tegoglide432、Tegoglide435、Tegoglide440、Tegoglide450、Tegotwin4000、Tegotwin4100、Tegowet250、Tegowet260、Tegowet270、Tegowet280(エボニックデグサ社製)、SAG−002、SAG−503A(日信化学工業社製)、BYK−331、BYK−333、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−UV3500、BYK−UV3510(ビックケミー社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF355A、KF−615A、KF−640、KF−642、KF−643(信越化学工業社製)などを、
フッ素系界面活性剤としては、ZonylTBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、Capstone FS−30、FS−31(DuPont社)、PF−151N、PF−154N(オムノバ社製)などを使用できる。なお、上記の界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水性インキに使用する界面活性剤と前処理液に使用する界面活性剤は、同じでも異なっていてもよい。各々異なる界面活性剤を使用する際は、両者の表面張力に注意したうえで配合量を決定することが好ましい。
<水>
本実施形態の水性インキに含まれる水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
本実施形態の水性インキに使用することができる水の含有量としては、インキの全質量の20〜90質量%の範囲であることが好ましい。
<その他の成分>
本実施形態の水性インキは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするためにpH調整剤を添加することができ、pH調整能を有する材料を任意に選択することができる。塩基性化させる場合は、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などを使用することができる。また酸性化させる場合は塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、リン酸、ホウ酸、フマル酸、マロン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸などを使用することができる。上記のpH調整剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤の配合量は、水性インクジェットインキ全量に対し0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましく、0.2〜1.5質量%であることが最も好ましい。上記範囲内に収めることで、空気中の二酸化炭素の溶解などによるpH変化を起こすことなく、また、水性前処理液と水性インキとが接触した際に、凝集剤(B)による凝集効果を阻害することなく、本発明の効果を好適に発現させることができるため、好ましい。
また本実施形態の水性インキは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、消泡剤、防腐剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤などの添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量の例としては、インキの全質量に対して、0.01〜5質量%が好適である。
なお、本実施形態の水性インキは、水性前処理液と同様、重合性単量体を実質的に含有しないことが好ましい。
<水性インクジェットインキのセット>
本実施形態の水性インクジェットインキは単色で使用してもよいが、用途に合わせて複数の色を組み合わせた水性インクジェットインキのセットとして使用することもできる。組み合わせは特に限定されないが、シアン、イエロー、マゼンタの3色を使用することでフルカラーの画像を得ることができる。また、ブラックインキを追加することで黒色感を向上させ、文字などの視認性を上げることができる。更にオレンジ、グリーンなどの色を追加することで色再現性を向上させることも可能である。非吸収性基材の一例であるフィルム基材では、透明フィルムに対して、ホワイトインキの印刷を行うことで、鮮明な画像を得ることができ、特にブラックインキで印刷された文字などの鮮明性や視認性を上げることができるため、好ましく組み合わされる。
<水性インクジェットインキの製造方法>
上記した成分を含む、本実施形態の水性インクジェットインキは、例えば、以下のプロセスを経て製造される。ただし本実施形態の水性インクジェットインキの製造方法は以下に限定されるものではない。
(1)顔料分散液の製造
顔料分散用樹脂として、水溶性顔料分散樹脂を用いる場合、前記水溶性顔料分散樹脂と水と、必要に応じて水溶性有機溶剤とを混合・攪拌し、水溶性顔料分散樹脂混合液を作製する。前記水溶性顔料分散樹脂混合液に、顔料を添加し、混合・攪拌(プレミキシング)した後、分散機を用いて分散処理を行う。その後、必要に応じて遠心分離、濾過や、固形分濃度の調整を行い、顔料分散液を得る。
また、水不溶性樹脂により被覆された顔料の分散液を製造する場合、あらかじめ、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に水不溶性樹脂を溶解させ、必要に応じて前記水不溶性樹脂を中和した、水不溶性樹脂溶液を作製する。前記水不溶性樹脂溶液に、顔料と、水とを添加し、混合・撹拌(プレミキシング)した後、分散機を用いて分散処理を行う。その後、減圧蒸留により前記有機溶媒を留去し、必要に応じて、遠心分離、濾過や、固形分濃度の調整を行い、顔料分散液を得る。
顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機ならいかなるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル及びナノマイザーなどが挙げられる。上記の中でもビーズミルが好ましく使用され、具体的にはスーパーミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミルなどの商品名で市販されている。
顔料分散液の粒度分布を制御する方法として、上記に挙げた分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの材質を変更すること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、撹拌部材(アジテータ)の形状を変更すること、分散処理時間を長くすること、分散処理後フィルターや遠心分離機などで分級すること、及びこれらの手法の組み合わせが挙げられる。顔料を好適な粒度範囲に収めるためには、上記分散機の粉砕メディアの直径を0.1〜3mmとすることが好ましい。また粉砕メディアの材質として、ガラス、ジルコン、ジルコニア、チタニアが好ましく用いられる。
(2)水性インクジェットインキの調製
次いで、上記顔料分散液に、水溶性有機溶剤、水、及び必要に応じて上記で挙げたバインダー樹脂、界面活性剤やその他の添加剤を加え、撹拌・混合する。なお、必要に応じて前記混合物を40〜100℃の範囲で加熱しながら撹拌・混合してもよい。
(3)粗大粒子の除去
上記混合物に含まれる粗大粒子を、濾過分離、遠心分離などの手法により除去し、水性インクジェットインキとする。濾過分離の方法としては、既知の方法を適宜用いることができる。またフィルター開孔径は、粗大粒子、ダストが除去できるものであれば、特に制限されないが、好ましくは0.3〜5μm、より好ましくは0.5〜3μmである。また濾過を行う際は、フィルターは単独種を用いても、複数種を併用してもよい。
<水性インクジェットインキの特性>
本実施形態の水性インクジェットインキは、25℃における粘度を3〜20mPa・sに調整することが好ましい。この粘度領域であれば、特に通常の4〜10KHzの周波数を有するインクジェットヘッドから10〜70KHzの高周波数のインクジェットヘッドにおいても安定した吐出特性を示す。特に、25℃における粘度を4〜10mPa・sとすることで、600dpi以上の設計解像度を有するインクジェットヘッドに対して用いても、安定的に吐出させることができる。
なお、上記粘度は常法により測定することができる。具体的にはE型粘度計(東機産業社製TVE25L型粘度計)を用い、インキ1mLを使用して測定することができる。
また、安定的に吐出できる水性インクジェットインキにするとともに、本実施形態の水性前処理液と組み合わせた際、密着性や画像品質に優れた印刷物が得られる点から、本実施形態の水性インクジェットインキは、25℃における静的表面張力が18〜35mN/mであることが好ましく、19〜32mN/mであることがより好ましく、20〜28mN/mであることが特に好ましい。また印刷物のにじみや混色を防ぎ、画像品質に特段に優れた印刷物が得られる観点から、水溶性有機溶剤や界面活性剤の種類・量を調整することで、本実施形態の水性インキの表面張力を、水性前処理液の表面張力以下とすることが好ましい。なお、本実施形態における静的表面張力は、例えば表面張力計(協和界面科学社製CBVP−Z)を用い、25℃環境下で白金プレート法によって測定することができる。
また上記と同様の理由から、本実施形態の水性インクジェットインキは、25℃・10msecにおける動的表面張力が25〜40mN/mであることが好ましく、28〜38mN/mであることがより好ましく、30〜36mN/mであることが特に好ましい。なお、本実施形態における動的表面張力は、Kruss社製バブルプレッシャー動的表面張力計BP100を用いて、25℃環境下で最大泡圧法によって測定することができる。
本実施形態の水性インクジェットインキは、優れた発色性を有する印刷物を得るために、顔料の平均二次粒子径(D50)を40nm〜500nmとすることが好ましく、より好ましくは50nm〜400nmであり、特に好ましくは60nm〜300nmである。平均二次粒子径を上記好適な範囲内に収めるためには、上記のように顔料分散処理工程を制御すればよい。
<印刷物の製造方法>
本実施形態の水性前処理液と、上記水性インクジェットインキとを組み合わせた、水性記録液セットの実施形態で印刷物を製造する方法として、非吸収性基材に前記水性前処理液を付与する工程と、前記非吸収性基材上の、前記水性前処理液を付与した部分に、前記水性インクジェットインキを、1パスインクジェット印刷により付与する工程と、前記水性インクジェットインキが付与された、前記非吸収性基材を乾燥する工程とを含む方法が好ましく用いられる。なお上記の工程は、この順番に実施することが好ましい。
本明細書において「1パスインクジェット印刷」とは、停止している基材に対しインクジェットヘッドを一度だけ走査させる、または、固定されたインクジェットヘッドの下部に基材を一度だけ通過させて印刷する方法であり、印字されたインキの上に再度インキが印字されることがない。ただし、インクジェットヘッドを走査させる場合、前記インクジェットヘッドの動きを加味して吐出タイミングを調整する必要があり、着弾位置のずれが生じやすい。そのため、本実施形態の水性インキを印刷する際は、固定されたインクジェットヘッドの下部に基材を通過させる方法が好ましく用いられる。
以下に、本実施形態の水性記録液セットを用いた印刷物の製造方法について説明する。
<前処理液の付与方法>
本実施形態の水性記録液セットを用いて印刷物を製造する際、好適には、水性インクジェットインキを印刷する前に、非吸収性基材上に前処理液が付与される。その付与方法として、インクジェット印刷のように基材に対して非接触で印刷する方式と、基材に対し前処理液を当接させて印刷する方式のどちらを採用してもよい。また、前処理液の付与方法として、前処理液を当接させる印刷方式を選択する場合、オフセットグラビアコーター、グラビアコーター、ドクターコーター、バーコーター、ブレードコーター、フレキソコーター、ロールコーターなどのローラ形式が好適に使用できる。
<前処理液付与後の乾燥方法>
本実施形態の水性記録液セットでは、水性前処理液を非吸収性基材に付与したのち、前記非吸収性基材を乾燥させ、前記基材上の水性前処理液を乾燥させたのち、水性インクジェットインキを付与してもよいし、前記基材上の水性前処理液が完全に乾燥する前に、水性インクジェットインキを付与してもよい。一実施形態において、水性インクジェットインキを付与する前に水性前処理液を完全に乾燥させる、すなわち、前記水性前処理液の液体成分を完全に除去された状態とすることが好ましい。前処理液が完全に乾燥した後で水性インクジェットインキを付与することで、後から着弾する水性インクジェットインキが乾燥不良を起こすことなく、耐擦性に優れた印刷物が得られるためである。
本実施形態の水性前処理液の印刷で用いられる乾燥方法に特に制限はなく、例えば加熱乾燥法、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、マイクロ波乾燥法、ドラム乾燥法など、従来既知の方法を挙げることができる。上記の乾燥法は単独で用いても、複数を併用してもよいが、非吸収性基材へのダメージを軽減し効率よく乾燥させるため、熱風乾燥法を用いることが好ましい。また、基材へのダメージや水性前処理液中の液体成分の突沸を防止する観点から、加熱乾燥法を採用する場合は乾燥温度を35〜100℃とすることが、また熱風乾燥法を採用する場合は熱風温度を50〜150℃とすることが好ましい。
<水性インクジェットインキの付与方法>
水性インクジェットインキは、非吸収性基材上の水性前処理液を付与した部分に、1パスインクジェット印刷により付与される方式が好ましい。なお、前記1パスインクジェット印刷で用いるインクジェットヘッドの設計解像度は、画像品質に優れた画像が得られる点から、600dpi(DotsPerInch)以上であることが好ましく、720dpi以上であることがより好ましい。
<水性インクジェットインキ印刷後の乾燥方法>
水性インクジェットインキを印刷したあと、前記水性インキ、及び未乾燥の前処理液を乾燥させるため、前記水性インクジェットインキが付与された非吸収性基材を乾燥する工程を含むことが好ましい。なお好適に用いられる乾燥方法は、上記前処理液の場合と同様である。
<水性前処理液、及び水性インクジェットインキの付与量>
本実施形態の水性記録液セットを印刷する際、非吸収性基材に対する本実施形態の水性前処理液の塗布量は、1〜25g/m2であることが好ましい。塗布量を上記範囲に収めることで、混色にじみを抑えるとともに、塗布後の前処理液層の乾燥性が良好なものとなり、塗工装置内部への付着や、印刷物を重ねた際のブロッキングを防止し、タック感(べたつき)がなく、また耐擦性に優れた印刷物を得ることができる。
また本実施形態の水性記録液セットを印刷する際は、水性前処理液の付与量に対する水性インクジェットインキの付与量の比を0.1以上10以下とすることが好ましい。なお付与量の比としてより好ましくは0.5以上9以下であり、特に好ましくは1以上8以下である。付与量の比を上記範囲に収めることにより、水性前処理液量が過剰となることで起こる基材の風合いの変化や、水性インクジェットインキ量が過剰となり前処理液の効果が不十分となることで起こる、画像品質の悪化を防ぐことができる。
<非吸収性基材>
本実施形態の水性記録液セットを用いて印刷する際、非吸収性基材として、従来から既知のものを任意に用いることができる。例えば、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルムの様な熱可塑性樹脂基材や、アルミニウム箔の様な金属基材などが使用できる。上記の基材は印刷媒体の表面が滑らかであっても、凹凸のついたものであっても良いし、透明、半透明、不透明のいずれであっても良い。また、これらの基材の2種以上を互いに張り合わせたものでも良い。更に印字面の反対側に剥離粘着層などを設けても良く、また印字後、印字面に粘着層などを設けても良い。また本実施形態のインキセットの印刷で用いられる基材の形状は、ロール状でも枚葉状でもよい。
中でも、本実施形態の水性前処理液の機能を十分に発現させるために、前記非吸収性基材が熱可塑性樹脂基材であることが好ましく、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルムであることが特に好ましい。
また、本実施形態の前処理液を均一に塗布することで画像品質を向上させ、また、密着性を特段に向上させるため、上記に例示した非吸収性基材に対し、コロナ処理やプラズマ処理といった表面改質方法を施すことも好ましい。
<コーティング処理>
本実施形態の水性記録液セットを用いて作製した印刷物は、必要に応じて、印刷面をコーティング処理することができる。前記コーティング処理の具体例として、コーティング用組成物の塗工・印刷や、ドライラミネート法、無溶剤ラミネート法、押出しラミネート法などによるラミネート加工などが挙げられ、いずれを選択してもよいし、複数を組み合わせても良い。
なお、コーティング用組成物を塗工・印刷することによって印刷物にコーティング処理を施す場合、その塗工・印刷方法として、インクジェット印刷のように基材に対して非接触で印刷する方式と、基材に対し前記コーティング用組成物を当接させて印刷する方式のどちらを採用してもよい。また、コーティング用組成物を基材に対して非接触で印刷する方式を選択する場合、前記コーティング用組成物として、本実施形態の水性インクジェットインキから顔料を除外した、実質的に着色剤成分を含まないインキ(クリアインキ)を使用することが好適である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施形態である水性前処理液、及び水性インクジェットインキを含む水性記録液セットを更に具体的に説明する。なお、以下の記載において「部」及び「%」とあるものは、特に断らない限り、それぞれ「質量部」、「質量%」を表す。
<1.水性前処理液の製造>
実施例1〜67、比較例1〜14
<(1−1)酸化チタン分散液の製造例>
下記材料を、攪拌機を備えた混合容器内に投入し、1時間混合・攪拌(プレミキシング)した。その後、直径1mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて本分散を行うことで、酸化チタン分散液(顔料濃度50%)を得た。
・タイペークCR−50−2 50部
・BYK−190(固形分40%) 15部
・イソプロパノール 5部
・イオン交換水 30部
なお上記製造例において、タイペークCR−50−2は、石原産業社製酸化チタンであり、BYK−190は、ビックケミー社製スチレンマレイン酸樹脂水溶液である。
<(1−2)水性前処理液1の製造例>
下記材料を、攪拌機を備えた混合容器内に投入し、室温(25℃)にて1時間混合したのち、50℃に加温し、更に1時間混合した。その後、混合物を室温まで冷却したのち、孔径1μmのメンブランフィルターにて濾過を行うことで、水性前処理液1を得た。
・エポミンSP−200 0.5部
・PAA−HCL−3L(固形分50%) 5部
・エタノール 5部
・イオン交換水 89.5部
なお上記製造例において、エポミンSP−012は、日本触媒社製ポリエチレンイミン(分岐構造を有し、重量平均分子量1,200)であり、PAA−HCL−3Lは、ニットーボーメディカル社製ポリアリルアミン(重量平均分子量15,000)である。
<(1−3)水性前処理液2〜67の製造例>
表1に記載の材料を使用する以外は、水性前処理液1と同様の方法により、水性前処理液2〜67を製造した。
Figure 2019111770

Figure 2019111770
Figure 2019111770
Figure 2019111770
なお、表1に記載された材料の略称及び詳細は、表2に示す通りである。
Figure 2019111770

<凝集剤(B)の吸湿重量増加率の測定>
なお表2には、凝集剤(B)として使用した材料の吸湿重量増加率を、以下基準に基づいて示した。ここで吸湿重量増加率は、上記に記載した方法で測定した、40℃・80%RH環境下に24時間保管した凝集剤(B)の重量増加率である。
A:吸湿重量増加率が40質量%以下であった
B:吸湿重量増加率が40質量%より大きく80質量%以下であった
C:吸湿重量増加率が80質量%より大きかった
<2.水性インクジェットインキの製造>
<(2−1)顔料分散用樹脂1の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール95部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱し、重合性単量体としてスチレン35部、アクリル酸40部、ベヘニルメタクリレート25部、及び重合開始剤であるV−601(和光純薬製)6部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、更に110℃で1時間反応を続けて、顔料分散用樹脂1の溶液を得た。更に、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノールを添加して完全に中和したのち、水を100部添加し水性化した。その後、100℃以上に加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去し、固形分が30%になるように調整することで、顔料分散用樹脂1の水性化溶液(固形分30%)を得た。なお、上記に示した方法で測定した顔料分散用樹脂1の酸価は250mgKOH/g、重量平均分子量は13,000であった。
<(2−2)顔料分散用樹脂2〜6の水性化溶液の製造例>
下記表3に示したように、重合性単量体の種類や量を変更した以外は、顔料分散用樹脂1の場合と同様にして、顔料分散用樹脂2〜6の水性化溶液(固形分30%)を得た。
<(2−3)顔料分散用樹脂7〜8のメチルエチルケトン溶液の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルエチルケトン95部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱し、重合性単量体としてスチレン70部、アクリル酸5部、メチルメタクリレート10部、ポリプロピレングリコールメタクリレート(日油社製ブレンマーPP−500)15部、及び重合開始剤であるV−65(和光純薬製)3.5部の混合物を3時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、80℃で1時間反応させた後、V−65(和光純薬製)0.7部を添加し、更に80℃で4時間反応を続けて、顔料分散用樹脂7の溶液を得た。その後、メチルエチルケトン25部を加え、反応系を常温まで冷却したのち、反応容器から混合溶液を取り出し、固形分が30%になるようにメチルエチルケトンで調整することで、顔料分散用樹脂7のメチルエチルケトン溶液(固形分30%)を得た。なお、上記に示した方法で測定した顔料分散用樹脂7の酸価は30mgKOH/g、重量平均分子量は25,500であった。
また、下記表3に示したように、重合性単量体の種類や量を変更した以外は、顔料分散用樹脂7の場合と同様にして、顔料分散用樹脂8のメチルエチルケトン溶液(固形分30%)を得た。
Figure 2019111770
なお表3において、「PE−350」は、日油社製ブレンマーPE−350(ポリエチレングリコールメタクリレート)であり、「PP−500」は、日油社製ブレンマーPP−500(ポリプロピレングリコールメタクリレート)である。
<(2−4)顔料分散液1C、1M、1Y、1Kの製造例>
トーヨーカラー社製LIONOL BLUE 7358G(C.I.ピグメントブルー15:3)を20部、顔料分散用樹脂1の水性化溶液(固形分30%)を20部、水60部を混合し、攪拌機でプレミキシングした後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて本分散を行い、顔料分散液1Cを得た。また上記C.I.ピグメントブルー15:3を、以下に示す顔料にそれぞれ置き換える以外は顔料分散液1Cと同様にして、顔料分散液1M、1Y、1Kを得た。
・Magenta:DIC社製FASTGEN SUPER MAGENTA RG
(C.I.ピグメントレッド122)
・Yellow:トーヨーカラー社製LIONOL YELLOW TT1405G
(C.I.ピグメントイエロー14)
・Black:オリオンエンジニアドカーボンズ社製PrinteX85
(カーボンブラック)
<(2−5)顔料分散液2〜6(C、M、Y、K)の製造例>
顔料分散用樹脂として顔料分散用樹脂2〜6の水性化溶液(固形分30%)を使用する以外は、顔料分散液1C、1M、1Y、1Kと同様の方法を用いることで、顔料分散液2〜6(それぞれC、M、Y、K)を得た。
<(2−6)顔料分散液7C、7M、7Y、7Kの製造例>
攪拌器を備えた混合容器に、顔料分散用樹脂7のメチルエチルケトン溶液(固形分30%)33.3部を加えたのち、攪拌しながら、水50部と、ジメチルアミノエタノール0.45部とを添加し、更に30分間撹拌した。その後更に、トーヨーカラー社製LIONOL BLUE 7358G(C.I.ピグメントブルー15:3)を20部加え、よく攪拌(プレミキシング)した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて本分散を行った。次いで、得られた分散液を取り出し、水を15部加えたのち、エバポレータを用いて、メチルエチルケトンを減圧留去した。その後、顔料濃度が20%になるように水で調整することで、顔料分散液7Cを得た。また上記C.I.ピグメントブルー15:3を、顔料分散液1M、1Y、1Kの製造で使用した上記顔料にそれぞれ置き換える以外は顔料分散液7Cと同様にして、顔料分散液7M、7Y、7Kを得た。
<(2−7)顔料分散液8C、8M、8Y、8Kの製造例>
顔料分散用樹脂として顔料分散用樹脂8のメチルエチルケトン溶液(固形分30%)を使用する以外は、顔料分散液7C、7M、7Y、7Kと同様の方法を用いることで、顔料分散液8C、8M、8Y、8Kを得た。
<(2−8)顔料分散液1Wの製造例>
石原産業社製タイペークCR−90−2(酸化チタン)を40部、顔料分散用樹脂1の水性化溶液(固形分30%)を20部、水40部を混合し、攪拌機でプレミキシングした後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて本分散を行い、顔料分散液1W(顔料濃度40%)を得た。
<(2−9)水性インクジェットインキのセット1(CMYK)の製造例>
下記材料を、攪拌機を備えた混合容器内に順次投入し、十分に均一になるまで撹拌した。その後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、インクジェットヘッド詰まりの原因となる粗大粒子を除去することで、水性インクジェットシアンインキ1を得た。また顔料分散液1Cの代わりに、顔料分散液1M、1Y、1Kをそれぞれ使用することにより、シアン(C)、マゼンタ(M)イエロー(Y)、ブラック(K)の4色からなる水性インクジェットインキのセット1を得た:
・顔料分散液1C 25部
・ジョンクリル8211(固形分44%) 10部
・1,2−ブタンジオール 20部
・Tegowet280 1部
・プロキセルGXL 0.05部
・イオン交換水 43.95部
なお上記製造例において、ジョンクリル8211は、BASF製アクリル樹脂エマルジョン(MFT57℃、固形分44%)であり、Tegowet280は、エボニックジャパン社製シロキサン系界面活性剤である。
<(2−10)インクジェットインキのセット2〜27(CMYK)の製造例>
下記表4に記載の材料を使用する以外はインクジェットインキのセット1と同様の方法
により、シアン(C)、マゼンタ(M)イエロー(Y)、ブラック(K)の4色からなるインクジェットインキのセット2〜27を得た。
Figure 2019111770
Figure 2019111770

なお表4において、インクジェットインキのセット9における、下記に示すCabojetの配合量は、C、M、Yは50質量%、Kは25質量%であり、イオン交換水の配合量は、C、M、Yは18.95質量%、Kは43.95質量%である。また、表4に記載された材料のうち、表1〜3や上記に記載のない材料の略称及び詳細は、以下の通りである。
・CaboJet:
Cyan:Cabojet250C(キャボット社製自己分散型シアン顔料水溶 液、顔料濃度10%)、
Magenta:Cabojet265M(キャボット社製自己分散型マゼンタ 顔料水溶液、顔料濃度10%)、
Yellow:(Cabojet270)キャボット社製自己分散型イエロー顔 料水溶液、顔料濃度10%)、
Black:Cabojet200(キャボット社製自己分散型カーボンブラッ ク水溶液、顔料濃度20%)
・1,2−BD:1,2−ブタンジオール(沸点193℃)
・1,3−PD:1,3−プロパンジオール(沸点214℃)
・1,2−HD:1,2−ヘキサンジオール(沸点224℃)
・TEGmEE:トリエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点256℃)
・プロキセルGXL:アーチケミカルズ社製1,2−ベンゾイソチアゾール−3−オ ン溶液(防腐剤)
なお、表4や後述する表5には、各インキに含まれる水溶性有機溶剤の、1気圧下における加重沸点平均値(℃)や、1気圧下における沸点が250℃(または220℃)以上である水溶性有機溶剤の量(質量%)についても、併せて記載した。
<(2−11)水性インクジェットホワイトインキ1〜11の製造例>
下記表5に記載の材料を使用する以外はインクジェットシアンインキ1と同様の方法により、水性インクジェットホワイトインキ1〜11を得た。
Figure 2019111770
実施例61〜146、比較例8〜14
<水性前処理液を付与したフィルム基材の作製例>
松尾産業社製KコントロールコーターK202、ワイヤーバーNo.0を用い、下記フィルム基材に、上記で作成した水性前処理液をウェット膜厚4.0±0.2μmで塗布したのち、前記水性前処理液を塗布したフィルム基材を、70℃のエアオーブンに投入し3分間乾燥させることで、水性前処理液を付与したフィルム基材を作製した。
<評価に使用したフィルム基材>
・OPP:三井化学東セロ社製2軸延伸ポリプロピレンフィルム「OPU−1」(厚 さ20μm)
・PET:東レ社製ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーT60」(厚さ 25μm)
<印刷物の作製例>
基材を搬送できるコンベヤの上部にインクジェットヘッドKJ4B−QA(京セラ社製、設計解像度600dpi)を設置し、上記で製造した水性インクジェットインキのセットを、上流側からK、C、M、Yの順番に充填した。次いで、前記コンベヤ上に、上記で作製した、水性前処理液を付与したフィルム基材を固定したのち、前記コンベヤを一定速度で駆動させ、前記インクジェットヘッドの設置部を通過する際に、インクジェットインキをそれぞれドロップボリューム10pLで吐出し、下記画像を印刷した。印刷後速やかに、前記印刷物を70℃エアオーブンに投入し5分間乾燥させることで、印刷物を作成した。
なおコンベヤ駆動速度は、30m/分または50m/分の2条件とし、それぞれで印刷を行った。また印刷画像として、5cm×5cmの印字率100%ベタパッチが、CMYKの順番で隣接した画像(以下、「ベタパッチ画像」と呼ぶ)と、総印字率(各色の印字率の合計)を40〜320%まで連続的に変化させた4色(CMYK)画像(以下、「グラデーション画像」と呼ぶ。なお、各総印字率における、各色の印字率は同一である)との2種類を準備し、それぞれの印刷物を作製した。
表6に示した、水性前処理液と水性インクジェットインキのセットとの組み合わせで、上記印刷物を作製した。この印刷物、または、水性前処理液そのものを使用し、下記の評価1〜5を行った。また評価結果は、表6に示した通りであった。
<評価1:密着性の評価>
上記方法に基づき、30m/分のコンベヤ駆動速度条件で作成した、ベタパッチ画像印刷物を使用した。前記画像印刷物の表面にニチバン社製セロハンテープ(幅18mm)をしっかり貼りつけたのち、前記セロハンテープの先端を持ち、90度の角度を保ちながら剥がした。そして剥がした後の印刷物の表面やセロハンテープ面を目視で確認することで、密着性を評価した。評価基準は以下の通りであり、2点以上を実使用上可能領域とした。なお、OPPフィルム基材への印刷物、及び、PETフィルム基材への印刷物の両方について、密着性を評価した。また表6には、評価を行った4色のうち、最も評価結果が悪かった色について記載した。
5:セロハンテープの密着面に対する剥離が見られなかった
4:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が10%未満であった
3:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が10%以上20%未満であった
2:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が20%以上30%未満であった
1:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が30%以上であった
<評価2:画像品質の評価>
上記方法に基づき、30m/分または50m/分のコンベヤ駆動速度条件で作成した、OPPフィルム基材に対するグラデーション画像印刷物を使用した。前記画像印刷物のドット形状を、光学顕微鏡を用いて200倍で観察することで、画像品質(にじみ、混色)の評価を行った。評価基準は以下の通りであり、2点以上を実使用上可能領域とした。
5:いずれの総印字率においてもドットが独立しており、にじみや混色が見られなか った
4:総印字率280%以下の部分においてドットが独立しており、にじみや混色が見 られなかった
3:総印字率240%以下の部分においてドットが独立しており、にじみや混色が見 られなかった
2:総印字率200%以下の部分においてドットが独立しており、にじみや混色が見 られなかった
1:総印字率200%以下の部分において、にじみや混色が見られた
<評価3:耐擦性の評価>
上記方法に基づき、30m/分のコンベヤ駆動速度条件で作成した、OPPフィルム基材に対するベタパッチ画像印刷物を使用した。200gの荷重をかけながら、前記画像印刷物を綿布で10回擦ったのち、印刷物の表面や綿布を目視で確認することで、耐擦性を評価した。評価基準は以下の通りであり、2点以上を実使用上可能領域とした。また表6には、評価を行った4色のうち、最も評価結果が悪かった色について記載した。
4:擦った後の印刷物表面に変化はなく、また綿布への色移りもほとんど見られなか った
3:擦った後の印刷物表面に変化はなかったが、綿布への色移りが見られた
2:擦った後の印刷物表面に傷が見られ、また綿布への色移りが見られた
1:擦った後の印刷物表面において、フィルム基材が露出している箇所が存在した
<評価4:乾燥性の評価>
上記の印刷物の作製例と同様にして、30m/分のコンベヤ駆動速度条件で、水性前処理液を付与したOPPフィルム基材にベタパッチ画像を印刷した。印刷後速やかに、印刷物を70℃エアオーブンに投入したのち、1分ごとに前記印刷物をエアオーブンより取り出し、表面を指で擦り状態を目視観察することで、乾燥性の評価を行った。評価基準は以下の通りであり、2点以上を実使用上可能領域とした。
4:乾燥時間1分で印刷物が乾燥し、指で擦ってもインキが付着しなかった
3:エアオーブン投入から1分後には指にインキが付着したが、2分後は付着しなか った
2:エアオーブン投入から2分後には指にインキが付着したが、3分後は付着しなか った
1:エアオーブン投入から3分後の印刷物でも、指にインキが付着した
<評価5:水性前処理液の保存安定性の評価>
上記で製造した水性前処理液について、E型粘度計(東機産業社製TVE−20L)を用いて、25℃環境下で粘度を測定したのち、密閉容器に入れ、70℃に設定した恒温機内に静置保存した。1週間ごとに前記密閉容器を取り出し、上記と同様にして経時後の粘度を測定し、経時前後での粘度変化率を算出することで、水性前処理液の保存安定性の評価を行った。評価基準は以下の通りであり、2点以上を実使用上可能領域とした。
4:3週間保存後の粘度変化率が±5%未満であった
3:2週間保存後の粘度変化率が±5%未満であったが、3週間保存後の粘度変化率 が±5%以上であった
2:1週間保存後の粘度変化率が±5%未満であったが、2週間保存後の粘度変化率 が±5%以上であった
1:1週間保存後の粘度変化率が±5%以上であった
Figure 2019111770
Figure 2019111770
なお表6中、実施例121〜146の評価5(水性前処理液の保存安定性評価)の結果については、水性前処理液41の保存安定性を実施例41にて評価済みであるため、記載を省略した。
実施例147〜159
また、表7に示した、水性前処理液、水性インクジェットブラックインキ(水性インクジェットインキのセットのうちブラック色のもの)、水性インクジェットホワイトインキの組み合わせについては、以下に示す方法により、鮮明・視認性の評価も実施した。評価結果は、表7に示した通りであった。
<評価6:鮮明・視認性の評価>
基材を搬送できるコンベヤの上部にインクジェットヘッドKJ4B−QAを設置し、表7に示した水性インクジェットブラックインキ(Kインキ)及び水性インクジェットホワイトインキ(Wインキ)を、前記表7に記載した色が上流側になるようにして充填した。ただし実施例99では、Wインキは使用せずに、Kインキのみを用いた。次いで、前記コンベヤ上に、表7に示した、水性前処理液を付与したフィルム基材を固定したのち、前記コンベヤを30m/分の速度で駆動させ、前記インクジェットヘッドの設置部を通過する際に、上記水性インクジェットインキをそれぞれ吐出した。その際、Kインキについては、平仮名と漢字の混ざった4ポイント及び6ポイントのMS明朝体からなる文字画像を、またWインキについては、印字率100%の白ベタ画像を印刷した。また、下流側に充填したインキによる画像が、上流側に充填したインキによる画像の上に重なるように印刷した。そして、印刷後速やかに、前記印刷物を70℃エアオーブンに投入し5分間乾燥させることで、文字・白ベタ印刷物を作成した。
得られた文字・白ベタ印刷物を、表7に記載した観察面から目視で観察し、鮮明・視認性を評価した。評価基準は以下の通りであり、2点以上を実使用上可能領域とした。
4:4ポイント及び6ポイントの文字がいずれも鮮明で、明瞭に判読できた。
3:4ポイントの文字がやや鮮明性に劣るものの十分に判読でき、また6ポイントの 文字は鮮明で、明瞭に判読できた。
2:4ポイントの文字は鮮明性に劣り判読できなかった。一方6ポイントの文字はや や鮮明性に劣るものの、十分に判読できた。
1:4ポイント、6ポイントの文字がいずれも鮮明性に劣り、判読できなかった。
Figure 2019111770
なお表7中、観察面を「裏」としたものは、フィルム基材側から印刷物を観察したことを表し、「表」としたものは、印刷層側から印刷物を観察したことを表す。
比較例8は、重量平均分子量が1,000未満であるポリアルキレンイミンを含む水性前処理液の例であり、OPPフィルムやPETフィルムに対する密着性に劣る結果であった。逆に比較例9は、重量平均分子量が80,000より大きいポリアルキレンイミンを含む水性前処理液の例であり、前記フィルムに対する密着性は良好であるが、画像品質に劣る結果となった。ポリアルキレンイミンの重量平均分子量が大きすぎるため、水性前処理液中に均一に存在できなくなり、フィルムに対して水性前処理液を均一に付与できなかったものと考えられる。また比較例10は、凝集剤(B)を含まない水性前処理液の例であり、やはり画像品質に劣る結果となった。
一方比較例11〜12は、ポリアルキレンイミン(A)の配合量が、水性前処理液全量に対して0.3〜5.0質量%ではない例であり、いずれもOPPフィルムに対する密着性に劣る結果であった。また比較例13〜14は、凝集剤(B)の配合量に対するポリアルキレンイミン(A)の配合量の質量比が、0.05〜1.5ではない例であり、前記質量比を0.05未満とした比較例13では密着性が、1.5より多くした比較例14では画像品質が劣っていた。これらの結果は、ポリアルキレン(A)や凝集剤(B)の配合量を、本発明にて規定した範囲内に収めた水性前処理液によって初めて、印刷物の密着性と画像品質との両立が可能となり、更には前記印刷物の耐擦性や、保存安定性や乾燥性にも優れた水性前処理液が得られることを示すものである。

Claims (14)

  1. 水性インクジェットインキとともに用いられ、非吸収性基材に対して使用される水性前処理液であって、
    前記水性前処理液が、ポリアルキレンイミン(A)と、凝集剤(B)と、水とを含み、
    前記ポリアルキレンイミン(A)の重量平均分子量が、1,000〜80,000であり、
    前記凝集剤(B)が、金属塩及びカチオン性高分子化合物(ただし、前記カチオン性高分子化合物がポリアルキレンイミン(A)である場合を除く)からなる群から選ばれる1種以上を含み、
    前記ポリアルキレンイミン(A)の配合量が、水性前処理液全量に対して0.3〜5質量%であり、
    前記ポリアルキレンイミン(A)の配合量と、前記凝集剤(B)の配合量との質量比が、(A):(B)=0.05:1〜1.5:1である、水性前処理液。
  2. 前記ポリアルキレンイミン(A)が、分岐構造を有し、かつ、重量平均分子量が10,000〜80,000であるポリアルキレンイミン(a−1)を含む、請求項1に記載の水性前処理液。
  3. 前記凝集剤(B)が、アリルアミンに由来する構造単位、及び/または、ジアリルアミンに由来する構造単位を有するカチオン性高分子化合物を含む、請求項1または2に記載の水性前処理液。
  4. 更に、有機溶剤(C)を含む、請求項1〜3いずれかに記載の水性前処理液。
  5. 前記有機溶剤(C)が、1気圧下における沸点が75〜210℃以上であり、かつ、分子構造中に水酸基を1個以上含む水溶性有機溶剤(c−1)を含む、請求項4に記載の水性前処理液。
  6. 前記水性前処理液に含まれる平均粒子径(D50)が1μm以上である水不溶性粒子の量が、水性前処理液全量に対し1質量%以下である、請求項1〜5いずれかに記載の水性前処理液。
  7. 請求項1〜6いずれかに記載の水性前処理液と、1種類以上の水性インクジェットインキとを含む、非吸収性基材に対するインクジェット印刷に使用される水性記録液セットであって、
    前記水性インクジェットインキが、顔料と、水溶性有機溶剤と、水とを含む水性記録液セット。
  8. 前記水性インクジェットインキが、更に顔料分散用樹脂を含み、
    前記顔料分散用樹脂を構成する単量体のうち、芳香環構造を有する単量体の量が、前記顔料分散用樹脂を構成する単量体全量に対し20〜90質量%である、請求項7に記載の水性記録液セット。
  9. 前記水性インクジェットインキに含まれる、1気圧下における沸点が250℃以上である水溶性有機溶剤の量が、水性インクジェットインキ全量に対し5質量%以下である、請求項7または8に記載の水性記録液セット。
  10. 前記水性インクジェットインキが、ブラックインキと、ホワイトインキとを含む、請求項7〜9いずれかに記載の水性記録液セット。
  11. 請求項7〜10いずれかに記載の水性記録液セットを非吸収性基材に付与してなる、印刷物の製造方法であって、
    非吸収性基材に前記水性前処理液を付与する工程と、
    前記非吸収性基材上の、前記水性前処理液を付与した部分に、前記水性インクジェットインキを、1パスインクジェット印刷により付与する工程と、
    前記水性インクジェットインキが付与された、前記非吸収性基材を乾燥する工程とを含む、印刷物の製造方法。
  12. 前記非吸収性基材が、熱可塑性樹脂基材である、請求項11記載の印刷物の製造方法。
  13. 非浸透性基材上に、請求項1〜6いずれかに記載の前処理液からなる層を有する、前処理液が付与された基材。
  14. 請求項13記載の前処理液が付与された基材に、前記水性インクジェットインキで印刷された印刷物。
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