JP6705144B2 - インキセット及び印刷物の製造方法 - Google Patents

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本発明は、前処理液とインクジェットインキからなるインキセットであって、記録媒体によらず、かつ高速・高記録解像度のインクジェット印刷において高画質な画像を得ることができるインキセットに関する。また本発明は、前記インキセットを使用して印刷物を製造する方法に関する。
インクジェット印刷は、インクジェットヘッドから吐出されたインクジェットインキの液滴を記録媒体に直接付与し、文字や画像を形成する記録方式である。オフセット印刷やグラビア印刷など従来の有版印刷に対し、製版が不要で可変印刷に対応できる、印刷装置の操作や調整が容易である、印刷時の騒音が小さいといった特徴を有しており、オフィスや家庭での使用をはじめとして、近年では産業用途においてもその需要を伸ばしている。
インクジェット印刷に用いられるインクジェットインキは、その組成によって溶剤型・水性型・UV硬化型などに分類される。一方で近年、ヒトや環境に対して有害である有機溶剤や感光性モノマーの使用を規制する動きも加速しており、これらの材料を使用する溶剤型インキやUV硬化型インキから水性型インキへの置換えを要望する声が高まっている。
水性(型)インクジェットインキは水を主成分とし、記録媒体に対する濡れ性や乾燥性を制御するためにグリセリンやグリコールなどの水溶性有機溶剤が添加される。また、これらの液体成分からなる水性インクジェットインキを用いて、文字や画像のパターンを記録媒体上に印刷(付与)すると、液体成分が記録媒体中に浸透、及び/または記録媒体上から蒸発することで乾燥し、前記記録媒体上に定着される。
一方、インクジェット印刷で使用される記録媒体としては、上質紙や再生紙のような浸透性の高いものから、コート紙やアート紙、プラスチックフィルムのような浸透性の低い(ない)ものまで種々存在する。インクジェット印刷の需要をさらに拡大するためにも、様々な記録媒体に対して適用できる水性インクジェットインキの開発は、当業者にとって大きな課題となっている。
上記課題に対する方策として、記録媒体に対する前処理液処理が知られている。一般に、水性インクジェットインキ用の前処理液として、前記インクジェットインキ中の液体成分を吸収し乾燥性を向上させる層(インキ受容層)を形成するもの(特許文献1〜4参照)と、色材や樹脂などインクジェットインキ中に含まれる固体成分を意図的に凝集させることで液滴間のにじみを防止し画質を向上させる層(インキ凝集層)を形成するもの(特許文献5〜6参照)の2種類が知られている。
しかしながらインキ受容層の場合、例えば一度に大量のインキを受容する際には、インキ受容層の膨潤に起因する記録媒体の波打ち・カール(丸まり)や、受容可能量の超過によるにじみが発生する。またインキ凝集層の場合、液体成分の受容能力に劣ることから、前記インキ凝集層上に一度に大量のインキが付与された際は、液体成分の乾燥に時間がかかることにより、印刷物の波打ちやにじみが発生する。
なお、特許文献5〜6に示した前処理液には別の問題も存在する。特許文献5には、カチオン性無機微粒子、水溶性有機溶剤、シロキサン系消泡剤、水を含む前処理液が開示されており、前記前処理液の表面張力がインクジェットインキの表面張力よりも小さいことが特徴とされている。しかしながらこの場合、前処理液が形成するインキ凝集層の表面エネルギーが低く、前処理液上に付与されたインクジェットインキが十分に濡れ広がることができないため、白抜けや白スジといった画像欠陥が発生してしまう。また特許文献6には、酸性化合物や含窒素ヘテロ環化合物を含有し、25℃におけるpHが0.5〜2.0である前処理液が開示されている。しかしながら強酸性を有する前処理液は、搭載される印刷装置や記録媒体にダメージを与えやすく、印刷適性の点で好ましいとはいえない。
一方上記問題を解決すべく、記録媒体上に構成の異なる複数の層を形成する手法も報告されている(特許文献7〜8参照)。この手法は、各々の層が有する欠点を補い合うことができることから、例えばインクジェットインキ専用紙を製造する際には好適といえる。しかしながら、任意の基材に対応すべく、前処理液の付与装置をインクジェット印刷装置に対しインラインで装備する際には、装置の大型化や複雑化を招くこととなるため、望ましい解決策とはいえない。
以上のように従来の技術では、使用する記録媒体によらず、かつ高速・高記録解像度のインクジェット印刷において、にじみ、色むら、白抜け、白スジといった画像欠陥がなく、また波打ちやカールを起こしていない、高画質な画像を得ることができるインキセットは存在しない状況であった。
特開2000−238422号公報 特開2000−335084号公報 特開2012−131108号公報 特開2009−241304号公報 特許第4963783号公報 特許第5371844号公報 特開2001−039011号公報 国際公開第2011/019052号
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、使用する記録媒体によらず、かつ高速・高記録解像度のインクジェット印刷において、にじみ、色むら、白抜け、白スジといった画像欠陥がなく、また波打ちやカールを起こしていない、高画質な画像を得ることができるインキセットを提供するものである。本発明はさらに、上記インキセットを使用して印刷物を製造するにあたり、上記課題の解決に有効な製造方法を提供するものである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の材料を含む前処理液とインクジェットインキとからなり、pHや平均二次粒子径が特定の範囲や関係を有するインクセットによって上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、カチオン性高分子化合物、界面活性剤、及び、水を含む前処理液と、顔料、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及び、水を含むインクジェットインキとからなるインキセットであって、
前記前処理液のpHが3〜7、かつ前記インクジェットインキのpHが7〜11であり、
前記カチオン性高分子化合物の含有量が、前処理液全量に対し10〜70重量%であり、
前記前処理液中の界面活性剤が、少なくともアセチレン系界面活性剤を含有し、
前記インクジェットインキの平均二次粒子径(体積基準)をD50I(nm)、前記前処理液と前記インクジェットインキを1:10の重量比で混合した液の平均二次粒子径(体積基準)をD50M(nm)としたとき、D50M/D50Iが2以上となることを特徴とする、インキセットに関する。
また本発明は、カチオン性高分子化合物、界面活性剤、及び、水を含む前処理液と、顔料、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及び、水を含むインクジェットインキとからなるインキセットであって、
前記前処理液のpHが3〜7、かつ前記インクジェットインキのpHが7〜11であり、
前記カチオン性高分子化合物の含有量が、前処理液全量に対し10〜70重量%であり、
前記前処理液中の界面活性剤が、少なくともシロキサン系界面活性剤を含有し(ただし、アセチレン系界面活性剤を含有する場合を除く)、かつ、前記インクジェットインキ中の界面活性剤が、少なくともシロキサン系界面活性剤を含有し、
前記インクジェットインキの平均二次粒子径(体積基準)をD50I(nm)、前記前処理液と前記インクジェットインキを1:10の重量比で混合した液の平均二次粒子径(体積基準)をD50M(nm)としたとき、D50M/D50Iが2以上となることを特徴とする、インキセットに関する。
また本発明は、前処理液の25℃における静的表面張力をSTP(mN/m)、インクジェットインキの25℃における静的表面張力をSTI(mN/m)としたとき、以下の(1)〜(2)式を満たすことを特徴とするインキセットに関する。
20 ≦ STI ≦ 35 (1)
0 ≦ (STP−STI) ≦ 50 (2)
また本発明は、前処理液の25℃における粘度が2mPa・s以上100mPa・s以下であることを特徴とするインキセットに関する。
また本発明は、前処理液が含有するカチオン性高分子化合物として、少なくともエピハロヒドリン変性樹脂を含有することを特徴とするインキセットに関する。
また本発明は、前処理液が含有するカチオン性高分子化合物が、前処理液中に溶解した状態で存在していることを特徴とするインキセットに関する。
また本発明は、インクジェットインキに含まれる水溶性有機溶剤が、1気圧下で沸点が180℃以上280℃以下であるグリコールエーテル系溶剤及び/またはアルキルポリオール系溶剤を2種以上含有することを特徴とするインキセットに関する。
また本発明は、インクジェットインキがさらにバインダー樹脂を含有し、バインダー樹脂はインクジェットインキ中に溶解及び/または分散された状態で存在していることを特徴とするインキセットに関する。
また本発明は、インクジェットインキがさらに顔料分散樹脂を含有することを特徴とするインキセットに関する。
また本発明は、上記のインキセットを用いるインクジェットインキ印刷物の製造方法であって、30m/分以上の速度で搬送される記録媒体上に前処理液を付与したのち、前記前処理液を付与した部分に、インクジェットインキを1パス印刷方式により付与することを特徴とする、インクジェットインキ印刷物の製造方法に関する。
また本発明は、記録媒体上への前処理液の付与量をAQP(mg/inch)、前記前処理液を付与した部分上へのインクジェットインキの付与量をAQI(mg/inch)としたとき、AQI/AQPが0.1以上10以下であることを特徴とするインクジェットインキ印刷物の製造方法に関する。
また本発明は、印刷物の記録解像度が600dpi以上であることを特徴とするインクジェットインキ印刷物の製造方法に関する。
また本発明は、前処理液を記録媒体上に付与したのち、インクジェットインキを付与する前に、前記記録媒体に熱エネルギーを作用させことを特徴とするインクジェットインキ印刷物の製造方法に関する。
また本発明は、記録媒体の、ブリストー法(J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87)により測定した水に対する吸収係数が、0ml/mmsec1/2以上0.6ml/mmsec1/2以下であることを特徴とするインクジェットインキ印刷物の製造方法に関する。
また本発明は、前処理液を記録媒体上に付与する手段がローラ方式であることを特徴とするインクジェットインキ印刷物の製造方法に関する。
本発明により、使用する記録媒体によらず、かつ高速・高記録解像度のインクジェット印刷において、にじみ、色むら、白抜け、白スジといった画像欠陥がなく、また波打ちやカールを起こしていない、高画質な画像を得ることができるインキセットの提供が可能となった。さらに、上記インキセットを使用して印刷物を製造するにあたり、上記課題の解決に有効な製造方法を提供できるようになった。
以下に、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される変形例も含まれる。
本発明のインキセットは、カチオン性高分子化合物、及び、水を含む前処理液と、顔料、水溶性有機溶剤、及び、水を含むインクジェットインキとからなり、pHや平均二次粒子径が特定の範囲や関係を有することを特徴とする。従来技術で説明したように、インクジェット印刷において、前処理液とインクジェットインキとを併用することは従来から行われているが、本発明では、特有の材料と特性を有する前処理液とインクジェットインキとを組み合わせることに、その特徴がある。以下に、その効果について説明する。
本発明の前処理液は、インクジェットインキを印刷する前に記録媒体上に付与されるものであり、前記記録媒体上にインキ凝集層を形成する。前処理液に含まれるカチオン性高分子化合物は、インクジェットインキ中に溶解及び/または分散された状態で存在する顔料や樹脂などの固体成分に対し、アニオン−カチオン間相互作用や吸着平衡移動を引き起こすことにより、溶解及び/または分散機能を低下させる。また、本発明の前処理液が乾燥する前にインクジェットインキを印刷することもでき、その場合はインクジェットインキと前処理液との混合により、前記固体成分の溶解平衡や吸着平衡が変化することにより、上記固体成分の溶解及び/または分散機能を低下させることができる。
本発明では、前処理液とインクジェットインキのpH範囲を規定している。前処理液のpHを弱酸性領域としているのは、前処理液中のカチオン性高分子化合物を安定化させるとともに、前処理液の付与装置や記録媒体へのダメージを抑えるためである。一方、インクジェットインキのpHを弱塩基性とすることにより、インクジェットインキに使用することができる固体成分の選択の幅を広げるとともに、インクジェットヘッドへのダメージを抑えることができる。さらに上記のように、前処理液とインクジェットインキの液性を逆にすることにより、両者が接触した際に、インクジェットインキ中の固体成分の溶解及び/または分散機能の低下を促進することができる。
一方、従来技術で説明したように、インキ凝集層は水分の受容能力に劣ることから、一度にまたは短時間で大量のインクジェットインキが付与されると、インキ中の液体成分に由来する記録媒体の波打ちや、印刷物におけるにじみの悪化を招く。上記課題を解消すべく、本発明ではインクジェットインキの構成を好適なものとすることで、乾燥性や画質の改善・向上を図っている。具体的には、インクジェットインキに含まれる水溶性有機溶剤の種類や量を調整し乾燥性を制御することで、インキ凝集層上における速やかな乾燥を促し、記録媒体の波打ちや印刷物のにじみの発生を抑制することができる。
以上のように、記録媒体によらず、かつ高速・高記録解像度のインクジェット印刷において高画質な画像を得るためには、本発明の前処理液とインクジェットインキとの組み合わせが必須の要素となる。
一方で、本発明の構成を有する前処理液とインクジェットインキの全てが、上記の課題を解決できるわけではない。本発明者らは、上記課題を好適に解決できるインキセットであるかどうかを評価する手法として、前処理液とインクジェットインキとを一定の重量比率で混合したときの平均二次粒子径に着目し、これをインクジェットインキ単体における平均二次粒子径と比較する手法を見出した。すなわち、インクジェットインキの平均二次粒子径をD50I(nm)、前処理液とインクジェットインキを1:10の重量比で混合した液の平均二次粒子径をD50M(nm)としたとき、D50M/D50Iが2以上となる場合は、本発明のインキセットとして好適なものであると判断できることを突き止めた。
なお、上記の前処理液とインクジェットインキとの混合比は、後述の、印刷する際の両者の付与量比に基づくものである。
上記平均二次粒子径は常法により測定することができ、例えば粒度分布測定機(日機装株式会社製マイクロトラックUPA150)を用い、インクジェットインキや混合物をイオン交換水で200〜1000倍に希釈することで測定することができる。なお、平均二次粒子径は累積50パーセント径の値である。
続いて以下に、本発明の前処理液の構成要素について説明する。
<カチオン性高分子化合物>
本発明の前処理液は、カチオン性高分子化合物を含むことを特徴とする。カチオン性高分子化合物としては、上記の通りインクジェットインキ中の固体成分の溶解及び/または分散機能を低下できるものであれば限定されない。
カチオン性高分子化合物に含まれるカチオン基の例としては、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、−NHCONH基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。またカチオン性高分子化合物中に上記カチオン基を導入するために使用される材料として、例えばビニルアミン、アリルアミン、メチルジアリルアミン、エチレンイミンなどのアミン化合物;アクリルアミド、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミドなどのアミド化合物;ジシアンジアミドなどのシアナミド化合物;エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、メチルエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなどのエピハロヒドリン化合物;ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾールなどの環状ビニル化合物;アミジン化合物;ピリジニウム塩化合物;イミダゾリウム塩化合物などを挙げることができる。
本発明で使用されるカチオン性高分子化合物は、公知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。以下に市販品を例示すると、APC−810,815;D−6010,6020、6030、6040、6050、6060、6080、6310、DEC−50,53、56,65;FL−14、42,44LF、61、2099,2250,2273、2350、2550、2565、2599、2650、2850、2949、3050、3150、4340、4420、4440、4450、4520、4530、4535、4540、4620、4820;FQP−1264;RSL−18−22,4071H,4400,8391、8391H、HD70C,HF70D;WS−72(SNF社製)、アラフィックス100、251S、255、255LOX(荒川化学社製)、DK−6810、6853、6885;WS−4010、4011、4020、4024、4027、4030(星光PMC社製)、センカF−300;パピオゲンP−105、P−113、P−271、P−316;ピッチノールQG5A;ミリオゲンP−20(センカ社製)、パラロック410K101、410K111、420K308、420K300、460K313、460K318、470K308、480K300、490K300、490K309、500K30E、500K40E、59D、920AP500、975AP500、PD700、PD714L、PD714S、P600、(浅田化学社製)、スミレーズレジン650(30)、675A、6615、SLX−1(田岡化学工業社製)、EP−1137;MZ−477、480;NS−310X、625XC(高松油脂社製)、PAA−D11−HCL、D19−HCL,D41−HCL、D19A;PAA−HCL−03、05、3L、10L;PAA−1112CL、21CL、AC5050A、N5050CL、SA;PAS−A−1、5;PAS−H−1L、5L、10L;PAS−J−81、81L;PAS−M−1、1A、1L;PAS−21、21CL,22SA−40、24、92、92A、880、2201CL、2401(ニットーボーメディカル社製)、PP−17(明成化学社製);カチオマスターPD−1、7、30、A、PDT−2、PE−10、PE−30、DT−EH、EPA−SK01、TMHMDA−E(四日市合成社製)、ジェットフィックス36N、38A、5052(里田化工社製)などとなる。
本発明では、上記カチオン性高分子化合物として、少なくともエピハロヒドリン化合物が導入されたエピハロヒドリン変性樹脂を含有することが好ましい。エピハロヒドリン変性樹脂は、樹脂構造中に水酸基やアンモニウム基を含み、かつハロゲンアニオンを有するため、前処理液中における前記樹脂の溶解安定性が良好であるとともに、インクジェットインキ中の固体成分の溶解及び/または分散低下能力に優れている。また理由は定かではないが、エピハロヒドリン変性樹脂を使用した印刷物は耐水性に優れており、この点からも前記エピハロヒドリン変性樹脂が好適に選択される。なお入手容易性などの点から、エピハロヒドリンとしてはエピクロロヒドリンまたはメチルエピクロロヒドリンが好適に選択される。
エピハロヒドリン変性樹脂として、具体的にはエピハロヒドリン変性ポリアミン樹脂、エピハロヒドリン変性ポリアミド樹脂、エピハロヒドリン変性ポリアミドポリアミン樹脂、エピハロヒドリン−アミン共重合体などを挙げることができる。上記に例示したカチオン性高分子化合物の市販品のうち、エピハロヒドリン変性樹脂としては、FL−14(SNF社製)、アラフィックス100、251S、255、255LOX(荒川化学社製)、DK−6810、6853、6885;WS−4010、4011、4020、4024、4027、4030(星光PMC社製)、パピオゲンP−105(センカ社製)、スミレーズレジン650(30)、675A、6615、SLX−1(田岡化学工業社製)、カチオマスターPD−1、7、30、A、PDT−2、PE−10、PE−30、DT−EH、EPA−SK01、TMHMDA−E(四日市合成社製)、ジェットフィックス36N、38A、5052(里田化工社製)がある。
本発明のカチオン性高分子化合物は、前処理液中に溶解した状態で存在していても、樹脂微粒子として分散された状態で存在していてもよい。ただし、カチオン性高分子化合物が樹脂微粒子である場合は、前記樹脂微粒子の最低造膜温度(以下MFTとする)を考慮する必要がある。MFTとは、樹脂微粒子同士が融着し造膜するのに最低必要な温度のことであり、樹脂微粒子を使用した前処理液を記録媒体上で乾燥させる際、記録媒体をMFT以上の温度に加熱しないと、微粒子同士の融着が起こらずに造膜不良を起こしてしまう。一方、前処理液が後述の有機溶剤を含む場合、前記有機溶剤がMFTを下げる助剤として機能することがあり、MFTが常温以下に下がってしまうと、前処理液の印刷安定性が低下してしまう可能性がある。従って本発明のカチオン性高分子化合物は、前処理液中に溶解した状態で存在していることが好ましい。
本発明の前処理液における、上記カチオン性高分子化合物の配合量は、前処理液全量に対し固形分換算で10〜70重量%であることが好ましく、15〜60重量%であることがより好ましく、20〜50重量%であることが特に好ましい。カチオン性高分子化合物の配合量を上記範囲内に収めることで、前処理液の粘度を好適な範囲内に収めることができ、また長期保存した際の保存安定性に優れる前処理液を得ることができる。また、上記で例示したカチオン性高分子化合物を使用する場合、前処理液中の配合量を上記範囲内とすることで、前記前処理液とインクジェットインキとを1:10の重量比率で混合したときの平均二次粒子径を、インクジェットインキの平均二次粒子径に対し2倍以上とすることができる。
<界面活性剤>
本発明の前処理液は、表面張力を調整し、記録媒体上への濡れ性を向上させるため界面活性剤を使用することが好ましい。界面活性剤としては、アセチレン系、シロキサン系、アクリル系、フッ素系など用途に合わせて様々なものが知られているが、記録媒体上への濡れ性、後に付与されるインクジェットインキの濡れ広がり性、及び前処理液の印刷安定性とを両立させるためには、シロキサン系及び/またはアセチレン系の界面活性剤を使用することが好ましい。
本発明で使用される界面活性剤は、公知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。界面活性剤を市販品から選択する場合、例えばシロキサン系界面活性剤としてBY16−201、FZ−77、FZ−2104、FZ−2110、FZ−2162、F−2123、L−7001、L−7002、SF8427、SF8428、SH3749、SH8400、8032ADDITIVE、SH3773M(東レ・ダウコーニング社製)、Tegoglide410、Tegoglide432、Tegoglide435、Tegoglide440、Tegoglide450、Tegotwin4000、Tegotwin4100、Tegowet250、Tegowet260、Tegowet270、Tegowet280(エボニックデグサ社製)、SAG−002、SAG−503A(日信化学工業社製)、BYK−331、BYK−333、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−UV3500、BYK−UV3510(ビックケミー社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF355A、KF−615A、KF−640、KF−642、KF−643(信越化学工業社製)などを、またアセチレン系界面活性剤としてサーフィノール61、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、420、440、465、485、SE、SE−F(エアープロダクツ社製)、オルフィンE1004、E1010、E1020、PD−001、PD−002W、PD−004、PD−005、EXP.4001、EXP.4200、EXP.4123、EXP.4300(日信化学工業社製)などを挙げることができる。上記の界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の前処理液に含まれる界面活性剤の添加量は、前処理液全量に対して0.01重量%以上5.0重量%以下が好ましく、0.05重量%以上3.0重量%以下が特に好ましい。ただし界面活性剤の配合量は、後述するインクジェットインキの表面張力を考慮したうえで決定する必要がある。
本発明では、印刷物のにじみ、白抜けや白スジを防ぐ観点から、前処理液の表面張力はインクジェットインキの表面張力以上とすることが好ましい。ここで前処理液の表面張力がインクジェットインキの表面張力よりも小さい場合、前処理液を記録媒体に付与した際に界面活性剤が塗膜表面に大量に配向することで表面エネルギーが低下し、結果として後から印刷されるインクジェットインキの濡れ広がりが不十分となり、にじみ、白抜けや白スジが発生してしまう可能性があるため好ましくない。
<水溶性有機溶剤>
本発明の前処理液には、さらに水溶性有機溶剤を含むことができる。有機溶剤を併用することで、前処理液の保湿・乾燥性や濡れ性をより好適なものに調整することができる。本発明の前処理液に使用できる水溶性有機溶剤として特に制限はないが、水やカチオン性高分子化合物との親和性や、カチオン性高分子化合物の溶解性の観点から、少なくとも分子構造中にヒドロキシル基を1個以上含む水溶性有機溶剤を使用することが好ましい。
本発明の前処理液に好適に用いられる水溶性有機溶剤を例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メトキシー1−ブタノール、3−メトキシー3−メチルー1−ブタノールなどの1価アルコール類、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジブチレングリコールなどの2価アルコール(グリコール)類、グリセリンなどの3価アルコール類を挙げることができる。上記例示化合物のうち、本発明では特にエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、3−メトキシー1−ブタノール、3−メトキシー3−メチルー1−ブタノールなどの1価アルコール類を使用することが好ましい。また上記の分子構造中にヒドロキシル基を1個以上含む水溶性有機溶剤は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
本発明の前処理液に含まれる、分子構造中にヒドロキシル基を1個以上含む水溶性有機溶剤の配合量としては、前処理液全量に対し0.1〜20重量%以下であることが好ましく、0.5〜10重量%であることがより好ましく、1〜5重量%であることが特に好ましい。水溶性有機溶剤の配合量を上記範囲内に収めることで、保湿性、乾燥性と濡れ性とが両立した前処理液を得ることができるとともに、前処理液の印刷方法によらず長期にわたり安定した印刷が可能となる。
本発明の前処理液では他にも、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールジアルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ε−カプロラクタム、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−エトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−2−エチルヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−オクトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−オクトキシプロピオンアミドなどの含窒素系溶剤、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどの複素環化合物などを使用することができる。上記の水溶性有機溶剤は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
本発明の前処理液に含まれる水溶性有機溶剤の配合量の総量としては、前処理液全量に対し0.5〜50重量%以下であることが好ましく、1〜45重量%であることがより好ましく、1.5〜40重量%であることが特に好ましい。水溶性有機溶剤の配合量を上記範囲内に収めることで、前処理液の保湿性、乾燥性、及び濡れ性を両立させることが可能となる。
<水>
本発明の前処理液に含まれる水の含有量としては、前処理液全量に対し10〜90重量%の範囲であることが好ましい。
<その他の材料>
上記の通り、本発明の前処理液はpHが3〜7の範囲であるが、pHを前記範囲内に収めるため、前処理液にpH調整剤を添加することができる。本発明では、pH調整能を有する材料を任意に選択することができ、塩基性化させる場合はジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などを、また酸性化させる場合は塩酸、硫酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、リン酸、ホウ酸、フマル酸、マロン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸などを使用することができる。
pH調整剤の配合量としては、前処理液全量に対し0.01〜5重量%であることが好ましく、0.05〜3重量%であることがより好ましい。ただし、pH調整剤を過剰に配合してしまうと、前処理液中のカチオン性高分子化合物の機能を阻害してしまう可能性があることから、前処理液のpHが上記の好適な範囲内に収まるように、配合量を調整する必要がある。
<その他の成分>
また本発明の前処理液は、所望の物性値とするために、必要に応じて消泡剤、防腐剤などの添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤を使用する場合、その配合量は前処理液全量に対して0.01重量%以上10重量%以下とすることが好ましい。
<前処理液の製造方法>
上記の成分からなる本発明の前処理液は、例えば、カチオン性高分子化合物、水、及び、必要に応じて界面活性剤、水溶性有機溶剤、pH調整剤や、上記で挙げたような適宜に選択される添加剤成分を加え、撹拌・混合したのち、必要に応じて濾過することで製造される。ただし本発明の前処理液の製造方法は上記に限定されるものではない。
なお撹拌・混合の際は、必要に応じて前記混合物を40〜100℃の範囲で加熱してもよい。ただしカチオン性高分子化合物として樹脂微粒子を使用する場合は、前記樹脂微粒子のMFT以下の温度で加熱することが好ましい。
また濾過を実施する際、フィルター開孔径は、粗大粒子やダストが除去できるものであれば特に制限されないが、好ましくは0.3〜10μm、より好ましくは0.5〜5μmである。また濾過を行う際は、フィルターは単独種を用いても、複数種を併用してもよい。
<前処理液の特性>
本発明の前処理液のpHは、カチオン性高分子化合物を液中で安定化させ、また前処理液の付与装置や記録媒体へのダメージを抑制するため、3〜7の範囲に設定される。また、より好ましいpH範囲は3.5〜6.5である。
なお、上記pHは公知の方法、例えば堀場製作所社製卓上型pHメータF−72にて、スタンダードToupH電極またはスリーブToupH電極を使用して測定することができる。
本発明の前処理液は、25℃における粘度を2〜100mPa・sに調整することが好ましい。上記粘度範囲を満たす前処理液であれば、後述の様々な印刷方法に対応させることができる。また、前処理液の印刷方法によらず優れた機能を発現させることができる観点から、前記前処理液の25℃における粘度は3〜80mPa・sであることがより好ましく、4〜60mPa・sであることが更に好ましく、5〜30mPa・sであることが最も好ましい。
本発明における前処理液の粘度は、前処理液の粘度に応じて、例えばE型粘度計(東機産業社製TVE25L型粘度計)やB型粘度計(東機産業社製TVB10形粘度計)を用いて測定することができる。
本発明の前処理液の25℃における表面張力は、20〜75mN/mであることが好ましく、22〜65mN/mであることがより好ましく、24〜55mN/mであることが特に好ましい。また上記の通り、前処理液の表面張力はインクジェットインキの表面張力以上であることが好ましい。
本発明における前処理液の表面張力は、例えば表面張力計(協和界面科学社製CBVP−Z)を用い、25℃環境下で白金プレート法によって測定することができる。
続いて以下に、本発明のインクジェットインキの構成要素について説明する。
<顔料>
本発明のインクジェットインキは、耐水性、耐光性、耐候性、耐ガス性などを有する観点から、色材として顔料を含む。本発明では、公知の有機顔料、無機顔料のいずれも使用することができる。これらの顔料は、インクジェットインキ全量に対して0.1重量%以上20重量%以下の範囲で含まれることが好ましく、0.5重量%以上15重量%以下の範囲で含まれることがより好ましく、1重量%以上10重量%以下の範囲で含まれることが特に好ましい。顔料の含有率を0.1重量%以上にすることで、1パス印刷であっても十分な発色性を得ることができる。また顔料の含有率を20重量%以下とすることで、インクジェットインキの粘度をインクジェット印刷に適した範囲に収めることができ、結果として長期の印字安定性を確保することができる。
本発明で使用することができるシアン有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66などが挙げられる。中でも発色性や耐光性に優れる点からC.I.ピグメントブルー15:3及び/または15:4から選択される1種以上が好ましい。
本発明で使用することができるマゼンタ有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、7、12、22、23、31、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、112、122、146、147、150、185、238、242、254、255、266、269、C.I.ピグメントバイオレッド19、23、29、30、37、40、43、50などが挙げられる。中でも発色性や耐光性に優れる点からC.I.ピグメントレッド122、150、185、266、269及び/またはC.I.ピグメントバイオレッド19からなる群から選択される1種以上が好ましい。
本発明で使用することができるイエロー有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー10、11、12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213などが挙げられる。なかでも発色性に優れる点からC.I.ピグメントイエロー13、14、74、120、180、185、213からなる群から選択される1種以上が好ましい。
本発明で使用することができるブラック有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ルモゲンブラック、アゾメチンアゾブラックなどが挙げられる。また、上記のシアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料や、下記のオレンジ顔料、グリーン顔料、ブラウン顔料などの有彩色顔料を複数使用し、ブラック顔料とすることもできる。
本発明のインクジェットインキにはオレンジ顔料、グリーン顔料、ブラウン顔料などの特色を使用することもできる。具体的には、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、 71、C.I.ピグメントグリーン7、36、43、58、ピグメントブラウン23、25、26などを挙げることができる。
本発明で使用される無機顔料としては特に限定されないが、例えば黒色顔料としてカーボンブラックや酸化鉄、白色顔料として酸化チタンを挙げることができる。
本発明で使用することができるカーボンブラック顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。中でも、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜50nm、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10重量%、pHが2〜10などの特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品として、例えばNo.25、30、33、40、44、45、52、850、900、950、960、970、980、1000、2200B、2300、2350、2600;MA7、MA8、MA77、MA100、MA230(三菱化学株式会社製)、RAVEN760UP、780UP、860UP、900P、1000P、1060UP、1080UP、1255(コロンビアンカーボン社製)、REGAL330R、400R、660R、MOGUL L(キャボット社製)、Nipex160IQ、170IQ、35、75;PrinteX30、35、40、45、55、75、80、85、90、95、300;SpecialBlack350、550;Nerox305、500、505、600、605(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)などがあり、いずれも好ましく使用することができる。
また、白色無機顔料として好適に用いられる酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型のいずれも使用することができるが、印刷物の隠蔽性を上げるためにもルチル型を用いるのが好ましい。また、塩素法、硫酸法などいずれの方法で製造したものでも良いが、塩素法にて製造された酸化チタンを使用した方が、白色度が高いことから好ましい。
本発明で使用することができる酸化チタンの顔料表面は、無機化合物及び/または有機化合物により処理したものを使用することが好ましい。無機化合物の例として、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン、チタンの化合物、及びこれらの水和酸化物を挙げることができる。また有機化合物の例として、多価アルコール、アルカノールアミンまたはその誘導体、高級脂肪酸またはその金属塩、有機金属化合物などを挙げることができるが、中でも多価アルコール、またはその誘導体は酸化チタン表面を高度に疎水化し、分散安定性を向上させることが可能であり、好ましく用いられる。
なお本発明では、印刷物の色相や発色性を好適な範囲に収めるため、上記の顔料を複数混合して用いることができる。例えば、カーボンブラック顔料を使用したブラックインキに対し、低印字率における色味を改善するため、シアン有機顔料、マゼンタ有機顔料、オレンジ有機顔料、ブラウン有機顔料から選択される1種以上の顔料を少量添加することができる。
<顔料分散樹脂>
上記顔料をインクジェットインキ中で安定的に分散保持する方法として、顔料分散樹脂を顔料表面に吸着させ分散する方法、水溶性及び/または水分散性の界面活性剤を顔料表面に吸着させ分散する方法、顔料表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し分散剤や界面活性剤なしでインキ中に分散する方法、自己分散性がある樹脂で顔料を被覆しマイクロカプセル化する方法などを挙げることができる。
本発明で用いられるインクジェットインキは、上記のうち顔料分散樹脂を用いる方法を選択することが好ましい。これは顔料分散樹脂のモノマー組成や分子量を選定・検討することにより、顔料に対する樹脂吸着能や顔料分散樹脂の電荷を容易に調整でき、結果として微細な顔料に対する分散安定性の付与や、前処理液による顔料の分散機能低下能力の制御が可能となるためである。
本発明で用いられる顔料分散樹脂の種類は特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂などを使用することができる。本発明では、材料選択性の大きさや合成の容易さの点で、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂を使用することが特に好ましい。なお本発明で用いられる顔料分散樹脂は、公知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。
本発明では、顔料分散樹脂に炭素数10〜36のアルキル基を導入することが好ましい。これは、アルキル基の炭素数を10〜36とすることにより、顔料分散体の低粘度化と更なる分散安定化、粘度安定化を実現できるためである。なおアルキル基の炭素数として、好ましくは炭素数12〜30であり、更に好ましくは炭素数18〜24である。またアルキル基は炭素数10〜36の範囲であれば、直鎖であっても分岐していてもいずれも使用することができるが、直鎖状のものが好ましい。直鎖のアルキル基としてはラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、セチル基(C16)、ステアリル基(C18)、アラキル基(C20)、ベヘニル基(C22)、リグノセリル基(C24)、セロトイル基(C26)、モンタニル基(C28)、メリッシル基(C30)、ドトリアコンタノイル基(C32)、テトラトリアコンタノイル基(C34)、ヘキサトリアコンタノイル基(C36)などが挙げられる。
本発明で用いられる顔料分散樹脂に含まれる炭素数10〜36のアルキル鎖を含有する単量体の共重合体中に含まれる含有量は、顔料分散体の低粘度化と印刷物の耐擦性や光沢性とを両立させる観点から5重量%〜60重量%であることが好ましく、10重量%〜55重量%であることがより好ましく、20重量%〜50重量%であることが特に好ましい。
また本発明では、顔料に対する吸着能を向上するとともに、前処理液と混合した際に速やかに顔料の分散機能を低下させることができることから、顔料分散樹脂に芳香族基を導入することが特に好ましい。これは、前処理液とインクジェットインキを混合した際、前処理液に含まれるカチオン性高分子化合物中のカチオン基と芳香族基を有する顔料分散樹脂との間にカチオン−π相互作用と言われる強固な分子間力が働き、両者が優先的に吸着するためである。芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、アニシル基などが挙げられる。中でもフェニル基、トリル基が分散安定性を十分に確保できる面から好ましい。
顔料の分散安定性と前処理液との吸着性能との両立の観点から、芳香環を含有する単量体の含有率は、顔料分散樹脂全量に対しは5〜65重量%であることが好ましく、10〜50重量%であることがより好ましい。
本発明の顔料分散樹脂は、インキへの溶解度を上げるため、樹脂中の酸基を塩基で中和してあることが好ましい。しかしながら過剰に塩基を投入してしまうと、前処理液中に含まれるカチオン成分が中和されてしまい、十分な効果を発揮することができないため、その添加量には注意を払う必要がある。塩基の添加量が過剰かどうかは、例えば顔料分散樹脂の10重量%水溶液を作製し、前記水溶液のpHを測定することにより確認することができる。本発明では、前処理液の機能を十分に発現させるために、前記水溶液のpHが7〜11であることが好ましく、7.5〜10.5であることがより好ましい。
本発明で用いられる、顔料分散樹脂を中和するための塩基としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などを挙げることができる。
本発明では顔料分散樹脂の酸価が50〜400mgKOH/gであることが好ましい。酸価を上記の範囲内に収めることで、顔料分散樹脂の水に対する溶解性を確保するとともに、顔料分散体の粘度を抑えることができるため好ましい。逆に、顔料分散樹脂の酸価が400mgKOH/gよりも大きい場合、顔料分散樹脂間での相互作用が強まることで粘度が高くなったり、前処理液の効果が不十分になってしまうため好ましくない。なお顔料分散樹脂の酸価として好ましくは100〜350mgKOH/gであり、更に好ましくは150〜300mgKOH/gである。
酸価は公知の装置、例えば京都電子工業株式会社製「電位差自動滴定装置AT−610」を用いて電位差滴定法により測定することができる。
顔料分散樹脂の分子量に関して、重量平均分子量が1,000以上100,000以下の範囲内であることが好ましく、5,000以上50,000以下の範囲であることがより好ましい。分子量が前記範囲であることにより、顔料が水中で安定的に分散し、また水性インキ組成物に適用した際の粘度調整などが行いやすい。重量平均分子量が1,000以下であると、インキ組成物中に添加されている溶剤に対し分散樹脂が溶解しやすいために、顔料に吸着した樹脂が脱離するため、分散安定性が著しく悪化してしまう。重量平均分子量が100,000以上であると、分散時粘度が高くなると共に、インクジェットヘッドからの吐出安定性が著しく悪化するため、印刷安定性が低下してしまう。
本発明における顔料分散樹脂の重量平均分子量は常法によって測定することができる。一例を挙げると、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量として測定することができる。
本発明の顔料と顔料分散樹脂との重量比率は2/1〜100/1であることが好ましい。顔料分散樹脂の比率を2/1〜100/1とすることで、顔料分散体の粘度を抑え、前記顔料分散体やインクジェットインキの粘度安定性・分散安定性が良化するとともに、前処理液と混合した際に速やかな分散機能の低下を引き起こすことができるため好ましい。顔料と顔料分散樹脂の比率としてより好ましくは20/9〜50/1、更に好ましくは5/2〜25/1であり、最も好ましくは20/7〜20/1である。
<水溶性有機溶剤>
本発明のインクジェットインキに使用される水溶性有機溶剤は、公知のものを任意に用いることができるが、1気圧下で沸点が180℃以上280℃以下であるグリコールエーテル系溶剤及び/またはアルキルポリオール系溶剤を2種以上含有することが好ましい。なお1気圧下における沸点は、183℃以上270℃以下の範囲内であることが好ましく、185℃以上250℃以下の範囲内であることがより好ましい。上記の沸点範囲を満たす水溶性有機溶剤を用いることにより、インクジェットインキの濡れ性と乾燥性を好適な範囲に制御することができ、前処理液と組み合わせた際にじみ、白抜けや白スジなどの画質欠陥を防止することができる。ここで1気圧下での沸点が180℃未満の場合は、インクジェットインキの乾燥性が高まりすぎることにより、インクジェットヘッドノズル上での目詰まりが発生したり、前処理液と併用したとしても白抜けなどの画像欠陥が発生することがあり好ましくない。逆に1気圧下での沸点が280℃以上であると、インクジェットインキの乾燥性が低下しすぎるため、前処理液と併用してもにじみなどの画像欠陥が発生することがあり好ましくない。
なお、本発明における1気圧下での沸点は、DSC(示差走査熱量分析)などの熱分析装置を用いることにより測定することができる。
本発明で好適に用いられる、1気圧下の沸点が180℃以上280℃以下であるグリコールエーテル系溶剤を例示すると、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテルなどのグリコールジアルキルエーテル類となる。
本発明では、優れた保湿性と乾燥性を両立することができる点で、上記グリコールエーテル系溶剤の中でも、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテルを選択することが好ましい。
また1気圧下の沸点が180℃以上280℃以下であるアルキルポリオール系溶剤としては、例えば1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコールなどを挙げることができる。
本発明では、優れた保湿性と乾燥性を両立することができる点で、上記アルキルポリオール系溶剤の中でも1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオールを選択することが好ましい。
本発明で用いられる、上記1気圧下で沸点が180℃以上280℃以下であるグリコールエーテル系溶剤及び/またはアルキルポリオール系溶剤の総量は、インクジェットインキ全量に対し5重量%以上50重量%以下であることが好ましい。また、インクジェットノズルからの吐出安定性と、前処理液と組み合わせたときに十分な濡れ広がり性と乾燥性を確保するという観点から、前記水溶性有機溶剤の総量が10重量%以上45重量%であることがより好ましく、15重量%以上40重量%以下であることが特に好ましい。水溶性有機溶剤の総量が5重量%を下回るとインクの保湿性が不足し、吐出安定性が損なわれる可能性がある。逆に水溶性有機溶剤の含有量の合計が65重量%よりも多い場合、インキの粘度が高くなりすぎてしまい、吐出安定性を損なう可能性があるため好ましくない。
本発明では、インクジェットインキの保湿性や濡れ性を調整するため、上記1気圧下で沸点が180℃以上280℃以下であるグリコールエーテル系溶剤及び/またはアルキルポリオール系溶剤以外の有機溶剤も、併用することができる。具体的には、前処理液で使用できる水溶性有機溶剤として上記に挙げた、1価アルコール類、3価アルコール類、含窒素系溶剤、複素環化合物などを使用することができる。またこれらの溶剤は単独で使用しても良いし、複数を混合して使用してもよい。
本発明のインクジェットインキにおける水溶性有機溶剤の総量は、インクジェットインキの保湿性、乾燥性、濡れ性を両立する観点から、インクジェットインキ全量に対し5重量%以上70重量%以下であることが好ましく、10重量%以上60重量%以下であることがより好ましく、15重量%以上50重量%以下であることが特に好ましい。
<バインダー樹脂>
本発明のインクジェットインキにはバインダー樹脂を加えることが好ましい。一般にインクジェットインキに使用されるバインダー樹脂としては、水溶性樹脂と樹脂微粒子が知られている。このうち樹脂微粒子は水溶性樹脂と比較して高分子量であること、また樹脂微粒子はインクジェットインキ粘度を低くすることができ、より多量の樹脂をインクジェットインキ中に配合することができることから、印刷物の耐性を高めるのに適している。樹脂微粒子として使用される樹脂の種類としては、アクリル系、スチレンアクリル系、ウレタン系、スチレンブタジエン系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系などが挙げられる。中でも、インキ組成物の安定性、印刷物の耐性の面を考慮するとアクリル系、スチレンアクリル系の樹脂微粒子が好ましく使用される。
ただし、インクジェットインキ中のバインダー樹脂が樹脂微粒子である場合は、前記樹脂微粒子のMFTを考慮する必要がある。MFTの低い樹脂微粒子を使用した場合、インクジェットインキ中に添加される水溶性有機溶剤によって樹脂微粒子のMFTがさらに低下し、室温であっても樹脂微粒子が融着や凝集を起こす結果、インクジェットヘッドノズルの目詰まりが発生することがあるためである。前記問題を回避するためには、樹脂微粒子を構成する単量体を調整することにより、前記樹脂微粒子のMFTを60℃以上にすることが好ましい。
なお上記MFTは、例えばテスター産業社製MFTテスターによって測定することができる。具体的には、フィルム上にWET膜厚300μmとなるように樹脂微粒子の25重量%水溶液を塗工したのち、温度勾配をかけた状態で上記テスター上に静置し、乾燥後に白い析出物が生じた領域と透明な樹脂膜が形成された領域との境界の温度をMFTとする。
しかしインクジェットプリンターのメンテナンス性能を考慮すれば、本発明ではバインダー樹脂が水溶性樹脂であることがより好ましい。水溶性樹脂としては、重量平均分子量が10,000以上50,000以下の範囲内であることが好ましく、20,000以上40,000以下の範囲内であることがより好ましい。重量平均分子量が10,000以下では、印刷物の塗膜耐性が著しく低下するため好ましくなく、重量平均分子量が50,000以上では、インクジェットヘッドからの吐出安定性が著しく低下するためである。
また、バインダー樹脂に水溶性樹脂を選択する際には酸価も重要であり、酸価が10〜80mgKOH/gであることが好ましく、酸価が20〜50mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が10mgKOH/g以下では、インクジェットインキが固化してしまうと再度溶解することが難しいため、樹脂微粒子同様インクジェットヘッドノズル上での目詰まりが発生し、印刷安定性が著しく低下するため、好ましくない。また酸価が80mgKOH/g以上であると、インクジェットインキが固化しても再度溶解することが可能であるものの、印刷物塗膜の耐水性が著しく悪化するため好ましくない。
前記のバインダー樹脂の、インクジェットインキ全量中における含有量は、固形分でインクジェットインキ全量の1重量%以上20重量%以下の範囲であり、より好ましくは2重量%以上15重量%以下の範囲であり、特に好ましくは3重量%以上10重量%以下の範囲である。
<界面活性剤>
本発明のインクジェットインキは、表面張力を調整し画質を向上させる目的で界面活性剤を使用することが好ましい。一方で、表面張力が低すぎるとインクジェットヘッドのノズル面がインクジェットインキで濡れてしまい、吐出安定性を損なうことから、界面活性剤の種類と量の選択は非常に重要である。最適な濡れ性の確保と、インクジェットノズルからの安定吐出の実現という観点から、シロキサン系、アセチレン系、フッ素系の界面活性剤を使用することが好ましく、シロキサン系、アセチレン系の界面活性剤を使用することが特に好ましい。界面活性剤添加量としては、インクジェットインク全量に対して、0.01重量%以上5.0重量%以下が好ましく、0.05重量%以上3.0重量%以下が更に好ましい。
また、インクジェットインキが蒸発する過程における濡れ性の制御や、耐擦性や耐溶剤性などの印刷物品質の向上の点で、界面活性剤の分子量も重要である。界面活性剤分子量としては重量平均分子量で1,000以上7,000以下であることが好ましく、1,500以上5,000以下の範囲内であることがより好ましい。1,000以下では印刷基材に対する濡れを制御する効果が小さく、7,000以上では基材に対する濡れは改善するものの、インクジェットインキの保存安定性が悪化するためである。
本発明で使用される界面活性剤は、公知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。界面活性剤を市販品から選択する場合、例えばシロキサン系界面活性剤やアセチレン系界面活性剤としては、前処理液で使用できる界面活性剤として上記に挙げたもの、またフッ素系界面活性剤としては、ZonylTBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、Capstone FS−30、FS−31(DuPont社)、PF−151N、PF−154N(オムノバ社製)などを挙げることができる。上記の界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
インクジェットインキに使用する界面活性剤と前処理液に使用する界面活性剤は、同じでも異なっていてもよいが、前処理液とインクジェットインキとのなじみやすさの点から、同じものを用いることが好ましい。また各々異なる界面活性剤を使用する際は、上記のとおり、両者の表面張力に注意したうえで配合量を決定したほうがよい。
<水>
本発明のインクジェットインキに含まれる水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
本発明で使用することができる水の含有量としては、インキの全重量の20〜90重量%の範囲であることが好ましい。
<その他の成分>
また本発明のインクジェットインキは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、消泡剤、防腐剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤などの添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量の例としては、インキの全重量に対して、0.01重量%以上10重量%以下が好適である。
なお、本発明のインクジェットインキは重合性モノマーを実質的に含有しないことが好ましい。ここで「実質的に含有しない」とは意図的に添加しないことを表すものであり、インクジェットインキを製造・保管する際の微量の混入または発生を除外するものではない。
<インクジェットインキセット>
本発明のインクジェットインキは単色で使用してもよいが、用途に合わせて複数の色を組み合わせたインクジェットインキセットとして使用することもできる。組み合わせは特に限定されないが、シアン、イエロー、マゼンタの3色を使用することでフルカラーの画像を得ることができる。また、ブラックインキを追加することで黒色感を向上させ、文字などの視認性を上げることができる。さらにオレンジ、グリーンなどの色を追加することで色再現性を向上させることも可能である。白色以外の印刷媒体へ印刷を行う際にはホワイトインキを併用することで鮮明な画像を得ることができる。
<インクジェットインキの製造方法>
上記したような成分からなる本発明のインクジェットインキは、例えば、以下のプロセスを経て製造される。ただし本発明のインクジェットインキの製造方法は以下に限定されるものではない。
(1)顔料分散体の製造
まず顔料分散樹脂と水とが混合された水性媒体に顔料を添加し、混合攪拌した後、分散機を用いて分散処理を行う。この後、必要に応じて遠心分離や濾過を行い、顔料分散体を得る。
なお分散処理の前に、プレミキシングを行うのが効果的である。プレミキシングは、少なくとも顔料分散樹脂と水とが混合された水性媒体に顔料を加えて行えばよい。このようなプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することができるため、好ましい。
顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機ならいかなるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル及びナノマイザーなどが挙げられる。上記の中でもビーズミルが好ましく使用され、具体的にはスーパーミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミルなどの商品名で市販されている。
顔料のプレミキシング及び分散処理において、顔料分散剤は水のみに分散した場合であっても、有機溶剤と水の混合溶媒に分散した場合であっても良い。
顔料分散体の粒度分布を制御する方法として、上記に挙げた分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの材質を変更すること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、撹拌部材(アジテータ)の形状を変更すること、分散処理時間を長くすること、分散処理後フィルタや遠心分離機などで分級すること、及びこれらの手法の組み合わせが挙げられる。本発明において顔料を好適な粒度範囲に収めるためには、上記分散機の粉砕メディアの直径を0.1〜3mmとすることが好ましい。また粉砕メディアの材質として、ガラス、ジルコン、ジルコニア、チタニアが好ましく用いられる。
(2)インクジェットインキの調整
次いで、上記顔料分散液に、水溶性有機溶剤、水、及び必要に応じて上記で挙げたバインダー樹脂、界面活性剤やその他の添加剤を加え、撹拌・混合する。
なお、必要に応じて前記混合物を40〜100℃の範囲で加熱しながら撹拌・混合してもよい。ただしバインダー樹脂として樹脂微粒子を使用する際は、加熱温度は前記樹脂微粒子のMFT以下とすることが好ましい。
(3)粗大粒子の除去
上記混合物に含まれる粗大粒子を、濾過分離、遠心分離などの手法により除去し、インクジェットインキとする。濾過分離の方法としては、公知の方法を適宜用いることができる。またフィルター開孔径は、粗大粒子、ダストが除去できるものであれば、特に制限されないが、好ましくは0.3〜5μm、より好ましくは0.5〜3μmである。また濾過を行う際は、フィルターは単独種を用いても、複数種を併用してもよい。
<インクジェットインキの特性>
本発明のインクジェットインキは、25℃における粘度を3〜20mPa・sに調整することが好ましい。この粘度領域であれば、特に通常の4〜10KHzの周波数を有するヘッドから10〜70KHzの高周波数のヘッドにおいても安定した吐出特性を示す。特に、25℃における粘度を4〜10mPa・sとすることで、600dpi以上の設計解像度を有するインクジェットヘッドに対して用いても、安定的に吐出させることができる。
本発明におけるインクジェットインキの25℃における粘度は常法により測定することができる。具体的にはE型粘度計(東機産業社製TVE25L型粘度計)を用い、インキ1mLを使用して測定することができる。
本発明のインクジェットインキは、優れた発色性を有する印刷物を得るために、顔料の平均二次粒子径(D50)を40nm〜500nmとすることが好ましく、より好ましくは50nm〜400nmであり、特に好ましくは60nm〜300nmである。平均二次粒子径を上記好適な範囲内に収めるためには、上記のように顔料分散処理工程を制御すればよい。
<印刷物の製造方法>
本発明の前処理液とインクジェットインキからなるインキセットを用いて印刷物を製造する方法として、30m/分以上の速度で搬送される記録媒体上に前処理液を付与したのち、前記前処理液を付与した部分に、インクジェットインキを1パス印刷方式により付与する方法が好ましく用いられる。
「1パス印刷方式」とは、停止している記録媒体に対しインクジェットヘッドを一度だけ走査させる、または固定されたインクジェットヘッドの下部に記録媒体を一度だけ通過させる印刷方法であり、印字されたインキの上に再度インキが印字されることがない。1パス印刷方式は、従来のインクジェットヘッドを複数回走査するインクジェット印刷方式(マルチパス印刷方式)に比べて走査回数が少なく、印刷速度を上げることができることから、印刷速度が要求される産業用途に好適とされる。特に近年活発に検討されている、オフセット印刷やグラビア印刷の代替としてのインクジェット印刷を実現するにあたっては、本方式の採用は必須といえる。
一方で、インクジェット印刷をオフセット印刷やグラビア印刷の代替とするためには様々な課題を解決しなければならない。印刷速度に関しては、従来の印刷方式からの代替を図るためには最低でも30m/分以上の高速印刷に対応する必要がある。また印刷物ににじみ、色むらや白抜けといった画像欠陥がないことは言うまでもないが、さらに600dpi以上の高い記録解像度において高品質の画像が得られることが必須とされる。「記録解像度」はdpi(DotsPerInch)の単位で表されるものであり、1インチあたりに付与されるインクジェットインキ液滴の数を表す。なお本明細書中における「記録解像度」は、記録媒体の搬送方向における記録解像度、及び前記記録媒体面内で搬送方向に対し垂直方向(以下、記録幅方向とする)における記録解像度の両方を指すものとする。
上記の通り、インクジェット印刷において高速印刷を実現するためには、1パス印刷方式の採用は必須である。一方、一度の走査で印刷を完了させるために、インクジェットヘッドノズルから一度に吐出されるインキ液滴量(ドロップボリューム)は、同じ画像をマルチパス印刷方式で印刷する場合に比べて多くなる。従来技術でも説明したとおり、水を構成成分として含み、記録媒体への浸透及び/または液体成分の蒸発により画像を定着させるインクジェットインキの場合、ドロップボリュームの増加はインクジェットインキの裏抜けや乾燥不良を招き、また記録媒体によってインクジェットインキの浸透性が異なることから、記録媒体によらず高品質の画像を得ることは極めて難しい状況であった。
本発明では、これまでに説明した、カチオン性高分子化合物、及び水を含む前処理液と、顔料、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクジェットインキとからなり、pHや平均二次粒子径が特定の範囲や関係を有するインキセットを用いることで、上記課題の解決を図っている。すなわち、インクジェットインキを印刷する前に記録媒体上に前処理液を付与し、前記記録媒体上にインキ凝集層を形成することで、記録媒体種の差による影響を排除している。また、前記インキ凝集層に適したインクジェットインキを使用することで、固体成分の速やかな凝集と液体成分の乾燥を実現できる。以上のように、本発明のインキセットを用いることで、記録媒体によらず高速かつ高記録解像度のインクジェット印刷において高品質な画像を得ることが可能となる。
以下に、本発明のインキセットを用いた印刷物の製造方法について説明する。
<前処理液の付与方法>
本発明では、インクジェットインキを印刷する前に、30m/分以上の速度で搬送される記録媒体上に前処理液が付与される。記録媒体上への前処理液の付与方法として、インクジェット印刷のように記録媒体に対して非接触で印刷する方式と、記録媒体に対し前処理液を当接させて印刷する方式のどちらを採用してもよい。
近年、ヘッド内ヒーターの採用、ヘッド内流路やノズル構造の最適化などにより、25℃における粘度が100mPa・s程度の液体組成物であっても吐出可能なインクジェットヘッドが開発されている。本発明の前処理液の25℃における好適な粘度範囲は2〜100mPa・sであり、インクジェット印刷であっても前記前処理液を問題なく印刷することができる。なお前処理液の付与方法としてインクジェット印刷を採用する場合、非印字部において記録媒体固有の風合いを残すことができる観点から、インクジェットインキを付与する部分にのみ、前記前処理液を付与することが好ましい。
一方、インクジェットヘッドを構成する部材へのダメージ防止や、インクジェット印刷適性確保の観点から、前処理液の付与方法としてインクジェット印刷を使用する場合、使用するインクジェットヘッドによっては、前記前処理液を構成する材料の種類や量に制約がかかることがある。そこで本発明では、記録媒体に対し前処理液を当接させる印刷方式が好ましく用いられる。前処理液を当接させる印刷方式としては、従来より公知のものを任意に選択することができるが、装置の単純性、均一塗工性、作業効率、経済性などの観点から、ローラ形式を採用することが好ましい。なお「ローラ形式」とは、回転するロールにあらかじめ前処理液を付与したのち、記録媒体に前記前処理液を転写する印刷形式を指す。本発明において好ましく用いられるローラ形式の塗工機としては、例えばオフセットグラビアコーター、グラビアコーター、ドクターコーター、バーコーター、ブレードコーター、フレキソコーター、ロールコーターなどがある。
本発明における、記録媒体上への前処理液の塗工膜厚は、WET膜厚で0.2〜10μmであることが好ましく、0.3〜8.5μmであることがより好ましく、0.4〜7μmであることが特に好ましい。塗工膜厚を上記範囲内とすることで、前処理液が付与されインクジェットインキが付与されない部分においても、記録媒体本来の風合いを損なわない。なお前処理液の塗工膜厚は、後述するインクジェットインキの付与量も加味して決定することが好ましい。
<前処理液付与後の熱エネルギー作用>
本発明では、前処理液を記録媒体に付与したのち、インクジェットインキを付与する前に、前記記録媒体に熱エネルギーを作用させ、記録媒体上の前処理液を乾燥させることが好ましい。また特に、インクジェットインキを付与する前に前処理液を完全に乾燥させる、すなわち、前記前処理液の液体成分を完全に除去された状態とすることが好ましい。前処理液が完全に乾燥する前にインクジェットインキが付与されると、インクジェットインキ中の固体成分の溶解及び/または分散機能の低下を一層促進できる一方で、記録媒体上の液体成分が過剰となり、インクジェット印刷後に作用させる熱エネルギーが不十分である場合、記録媒体の波打ちやにじみなどの画像欠陥が発生する可能性がある。
本発明で用いられる熱エネルギーの作用方法に特に制限はなく、例えば加熱乾燥法、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、マイクロ波乾燥法、ドラム乾燥法などを挙げることができる。上記の乾燥法は単独で用いても、複数を併用してもよい。例えば加熱乾燥法と熱風乾燥法を併用することで、それぞれを単独で使用したときよりも素早く、前処理液を乾燥させることができる。
本発明では、記録媒体へのダメージや前処理液中の液体成分の突沸を防止する観点から、上記のうち加熱乾燥法を採用する場合は乾燥温度を35〜100℃とすることが、また熱風乾燥法を採用する場合は熱風温度を50〜250℃とすることが好ましい。また同様の観点から、赤外線乾燥法を採用する場合は、赤外線照射に用いる赤外線の全出力の積算値の50%以上が、700nm以上1500nm以下の波長領域に存在することが好ましい。
<前処理液付与・乾燥装置>
本発明の前処理液付与・乾燥装置は、後述するインクジェット印刷装置に対し、インラインあるいはオフラインで装備されるが、印刷時の利便性の点から、インラインで装備されることが好ましい。
<インクジェットインキの付与方法>
上記で説明したとおり、インクジェットインキは記録媒体に対し1パス印刷方式により付与される。なお1パス印刷方式としては、上記のように、停止している記録媒体に対しインクジェットヘッドを一度だけ走査させる方法と、固定されたインクジェットヘッドの下部に記録媒体を一度だけ通過させる方法の2種類があるが、インクジェットヘッドを走査させる場合、前記インクジェットヘッドの動きを加味して吐出タイミングを調整する必要があり、着弾位置のずれが生じやすいことから、本発明では、インクジェットヘッドを固定し記録媒体を走査する方法が好ましく用いられる。その際、記録媒体の搬送速度は30m/分以上とすることが好ましい。特に、前処理液の付与装置をインクジェット印刷装置に対しインラインで設置する場合、前記前処理液の付与装置からインクジェット印刷装置までが連続的に配置され、前処理液が付与された記録媒体がそのままインクジェット印刷部へ搬送されてくることが好ましい。
また上記でも説明したように、本発明のインキセットを用いることで、高速かつ600dpi以上の記録解像度であっても高品質の画像を製造することができるが、オフセット印刷やグラビア印刷と同等の画質を有する印刷物を提供できる点から、印刷物の記録解像度は1200dpi以上であることが特に好ましい。
<インクジェットヘッド>
1パス印刷方式として、固定されたインクジェットヘッドの下部に記録媒体を一度だけ通過させる方法を採用する場合、記録幅方向における記録解像度は、インクジェットヘッドの設計解像度によって決定される。上記の通り、本発明では記録幅方向の記録解像度も600dpi以上であることが好ましいことから、必然的に、インクジェットヘッドの設計解像度としても600dpi以上であることが好ましい。インクジェットヘッドの設計解像度が600dpi以上であれば、1色につき1個のインクジェットヘッドで印刷することができるため、装置の小型化や経済性の観点で好ましい。なお600dpiよりも低い設計解像度のインクジェットヘッドを使用する場合は、1色につき複数のインクジェットヘッドを記録媒体の搬送方向に並べて使用することで、1パス印刷であっても記録幅方向における記録解像度として600dpi以上を実現することができる。
また、記録媒体の搬送方向における印刷解像度は、インクジェットヘッドの設計解像度だけでなく、前記インクジェットヘッドの駆動周波数と印刷速度に依存し、例えば印刷速度を1/2にする、または駆動周波数を2倍にすることで、搬送方向における記録解像度は2倍になる。インクジェットヘッドの設計上、30m/分以上の印刷速度において、搬送方向における印刷解像度として600dpi以上を達成できない場合は、1色につき複数のインクジェットヘッドを記録媒体の搬送方向に並べて使用することで、印刷速度と印刷解像度を両立させることができる。
本発明のインクジェット1パス印刷における、インクジェットインキのドロップボリュームは、前記インクジェットヘッドの性能によるところが大きいが、高品質の画像を実現するため1〜30pLの範囲であることが好ましい。また高品質の画像を得るために、ドロップボリュームを変化させることができる階調仕様のインクジェットヘッドを使用することが特に好ましい。
<インクジェットインキ付与後の熱エネルギー作用>
前処理液が付与された記録媒体上にインクジェットインキを付与したあと、前記インクジェットインキ、及び未乾燥の前処理液を乾燥させるため、前記記録媒体に熱エネルギーを作用させることが好ましい。本発明で好ましく用いられる熱エネルギーの作用方法や条件は、上記の前処理液の乾燥に使用されるものと同様である。
<インクジェットインキ乾燥装置>
インクジェットインキ乾燥装置は、インクジェット印刷装置に対しインラインあるいはオフラインで装備されるが、印刷時の利便性などの点から、インラインで装備されることが好ましい。また本発明では、にじみや色むら、記録媒体のカールなどを防止するため、熱エネルギーは印刷後30秒以内に付与することが好ましく、20秒以内に付与することがより好ましく、10秒以内に付与することが特に好ましい。
<前処理液及びインクジェットインキの付与量>
本発明では、前処理液の付与量に対するインクジェットインキの付与量の比を0.1以上10以下とすることが好ましい。なお付与量の比としてより好ましくは0.5以上9以下であり、特に好ましくは1以上8以下である。付与量の比を上記範囲に収めることにより、前処理液量が過剰となることで起こる白抜けや、インクジェットインキ量が過剰となり前処理液の効果が不十分となることで起こるにじみや色むらが起こることなく、高品質の画像を得ることができる。
<印刷速度>
上記のように、本発明のインキセットを用いて印刷物を製造する場合、その印刷速度は30m/分以上であることが好ましく、50m/分以上であることがより好ましく、75m/分以上であることが特に好ましい。
<記録媒体>
本発明のインキセットを用いて印刷する際、使用する記録媒体としては公知のものを任意に用いることができ、例えば上質紙、再生紙、コート紙、アート紙、キャスト紙、微塗工紙、合成紙の様な紙基材や、ポリ塩化ビニルシート、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムの様なプラスチック基材などが使用できる。上記の基材は印刷媒体の表面が滑らかであっても、凹凸のついたものであっても良いし、透明、半透明、不透明のいずれであっても良い。また、これらの印刷媒体の2種以上を互いに張り合わせたものでも良い。更に印字面の反対側に剥離粘着層などを設けても良く、また印字後、印字面に粘着層などを設けても良い。また本発明で用いられる記録媒体の形状は、ロール状でも枚葉状でもよい。
本発明では、前処理液の機能を十分に発現させるために、記録媒体として、ブリストー法(J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87)により測定した、水に対する吸収係数が0ml/mmsec1/2以上0.6ml/mmsec1/2以下であるものが好適に使用される。なお、水に対する吸収係数が0ml/mmsec1/2以上0.3ml/mmsec1/2以下である記録媒体が好ましく選択され、0ml/mmsec1/2以上0.2ml/mmsec1/2以下である記録媒体が特に好ましく選択される。これまでにも説明したとおり、記録媒体はその種類によって浸透性が大きく異なるが、本発明のインキセットは、浸透性の著しく小さい記録媒体に対し、特に好適に使用される。
なお上記の吸収係数は、例えば熊谷理機工業社製自動走査吸液計を用いることで測定することができる。具体的には上記装置と水を使用し、接触時間100〜1000ミリ秒の間で得られた水の吸液量(ml/m)と接触時間の平方根(msec1/2)の関係図から、最小二乗法により求められる直線の勾配を吸収係数とする。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「重量部」、「重量%」を表す。
<前処理液1の製造例>
下記記載の材料を攪拌しながら1時間混合し、pHが5.0±0.5になるようにトリエタノールアミンで調整したのち、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、前処理液1を得た。
・DK−6810 55部
(星光PMC社製エピクロロヒドリン変性ポリアミン樹脂、固形分55%)
・2−プロパノール 4部
・サーフィノール465(エアープロダクツ社製アセチレン系界面活性剤)0.1部
・プロキセルGXL 0.05部
(防腐剤、アーチケミカルズ社製1,2−ベンゾイソチアゾール−3−オン溶液)
・イオン交換水 40.85部
<前処理液2〜27の製造例>
下表1に記載の材料を使用し、トリエタノールアミンまたは塩酸でpHを調整した以外は、前処理液1と同様の方法により、前処理液2〜24を得た。ただし表1中には、pH調整に使用したトリエタノールアミンまたは塩酸については記載していない。
Figure 0006705144


Figure 0006705144


なお、表1に記載された材料は、以下の通りである。
・DK−6885:星光PMC社製エピクロロヒドリン変性ポリアミン樹脂、固形分70%
・カチオマスターPD−7:四日市合成社製エピクロロヒドリン変性ポリアミン樹脂、固形分50%
・アラフィックス255:荒川化学社製エピクロロヒドリン変性ポリアミドポリアミン樹脂、固形分25%
・PAS−H−1L:ニットーボーメディカル社製ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体、固形分28%
・パラロック490K300:浅田化学社製アクリル酸エステル・アクリルアミド共重合体
・EP−1137:高松油脂社製カチオン高分子エマルジョン(固形分20%)
・EtOH:エタノール
・iPrOH:2−プロパノール
・MB:3−メトキシブタノール
・MMB:3−メトキシ−3−メチルブタノール
・1,2−PD:1,2−プロパンジオール
・1,2−BuD:1,2−ブタンジオール
・EDG:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
・サーフィノール104:エアープロダクツ社製アセチレン系界面活性剤
・TegoWet280:エボニックデグサ社製シロキサン系界面活性剤
・BYK−333:ビックケミー社製シロキサン系界面活性剤
・ZonylFS−300:DuPont社製フッ素系界面活性剤
<顔料分散樹脂1の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱し、重合性単量体としてアクリル酸50部、ラウリルメタクリレート50部、及び重合開始剤であるV−601(和光純薬製)6部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、分散樹脂1の溶液を得た。さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部を添加し中和したのち、水を100部添加し水性化した。その後、100℃以上に加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去し、固形分が30%になるように調整した。これより、顔料分散樹脂1の固形分50%の水性化溶液を得た。上記顔料分散樹脂1の水性化溶液(固形分30%)のpHを、堀場製作所社製卓上型pHメータF−72を用いて測定したところ、8.1であった。また東ソー社製HLC−8120GPCを用い、上記に示した方法で顔料分散樹脂の重量平均分子量を測定したところ、15,000であった。
<顔料分散樹脂2の製造例>
重合性単量体としてスチレン40部、アクリル酸30部、ベヘニルアクリレート30部を用いる以外は、顔料分散樹脂1と同様の方法を用いることで、顔料分散樹脂2の固形分30%の水性化溶液を得た。上記顔料分散樹脂2の水性化溶液(固形分30%)のpHは9.7、顔料分散樹脂2の重量平均分子量は22,500であった。
<ブラック顔料分散液1の製造例>
カーボンブラックとしてオリオンエンジニアドカーボンズ社製PrinteX85を20部、顔料分散樹脂1の水性化溶液(固形分30%)を20部、水60部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、ブラック顔料分散液1を得た。
<ブラック顔料分散液2の製造例>
顔料分散樹脂として顔料分散樹脂2の水性化溶液(固形分30%)を用いる以外は、ブラック顔料分散液1と同様の方法を用いることで、ブラック顔料分散液2を得た。
〈水溶性樹脂ワニスの製造例〉
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ジョンクリル819(BASF社製アクリル樹脂、重量平均分子量14,500、酸価75mgKOH/g)を20部、ジメチルアミノエタノール2.38部、水77.62部を添加し、水溶化した。この混合溶液1gをサンプリングし、180℃20分加熱乾燥し、固形分濃度を測定した。得られた固形分濃度をもとに、作製した水溶性樹脂ワニスの不揮発分が20%になるように水を加えることで、固形分濃度20%の水溶性樹脂ワニスを得た。
<インクジェットインキ1の製造例>
下記記載の材料をディスパーで撹拌を行いながら混合容器へ順次投入し、十分に均一になるまで撹拌した。その後、pHが8.0±0.5になるようにトリエタノールアミンで調整したのち、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、インクジェットインキ1を得た。
・ブラック顔料分散液1 30部
・ジョンクリル538 13部
(BASF社製アクリル樹脂エマルジョン、固形分46%)
・1,2−プロパンジオール 10部
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル 10部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 5部
・サーフィノール465 0.2部
・プロキセルGXL 0.05部
・イオン交換水 31.75部
<インクジェットインキ2〜10の製造例>
下表2に記載の材料を使用し、トリエタノールアミンまたは塩酸でpHを調整した以外は、インクジェットインキ1と同様の方法により、インクジェットインキ2〜7を得た。ただし表2中には、pH調整に使用したトリエタノールアミンまたは塩酸については記載していない。
Figure 0006705144


なお表2に記載された材料のうち、表1に記載のない材料は以下の通りである。
・CaboJet200:キャボット社製自己分散型カーボンブラック水溶液、固形分20%
・1,2−PenD:1,2−ペンタンジオール
・1,5−PenD:1,5−ペンタンジオール
・1,2−HexD:1,2−ヘキサンジオール
・iPDG:ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル
・BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
・MFG:プロピレングリコールモノメチルエーテル
・TEG:トリエチレングリコール
<前処理液を付与した記録媒体(CP1、3〜19)の製造例>
上記で作成した前処理液1、3〜19を、印刷試験機イージープルーフ(松尾産業株式会社製)を用い、OKトップコート+紙(王子製紙株式会社製)に均一に塗布した。このとき、ローラとして線数140線/インチのセラミックローラを用い、塗工速度を調整することで、WET塗布量が6.0±0.3cm3/m2になるようにした。前処理液を塗布したのち、OKトップコート+紙を50℃のエアオーブンにて3分間乾燥させることで、前処理液を付与した記録媒体(CP1、3〜19)を製造した。
<前処理液を付与した記録媒体(CP7B〜8B、7C〜8C)の製造例>
また前処理液7、8については、ローラとして線数400線/インチのセラミックローラを用い、塗工速度を調整することでWET塗布量を1.8±0.2cm3/m2としたもの(CP7B、CP8B)、及びローラとして線数800線/インチのセラミックローラを用い、塗工速度を調整することでWET塗布量を0.6±0.1cm3/m2としたもの(CP7C、CP8C)も作成し、評価に使用した。
<実施例1〜90、比較例1〜20>
記録媒体を搬送できるコンベヤの上部にインクジェットヘッドKJ4B−QA(京セラ社製)を設置し、インクジェットインキを充填した。なお上記インクジェットヘッドは設計解像度が600dpi、最大駆動周波数が30kHzであり、前記最大駆動周波数かつ印刷速度75m/分で印刷したとき、記録媒体搬送方向における記録解像度が600dpiとなる。
次いで、コンベヤ上に前処理液を付与した記録媒体を固定したのち、前記コンベヤを一定速度で駆動させ、前記インクジェットヘッドの設置部を通過する際に、インクジェットインキをドロップボリューム12pLで吐出し、記録幅方向における記録解像度600dpi、印字率100%のベタ印刷を行った。印刷後、10秒以内に前記印刷物を50℃エアオーブンに入れ3分間乾燥させることで、ベタ印刷物を作成した。なお、下表3に示す3種類の印刷条件で印刷を実施し、記録媒体搬送方向における記録解像度や印刷速度を変えたベタ印刷物を作成した。
Figure 0006705144

なお上記で評価した、記録媒体とインクジェットインキとの組み合わせは、下表4〜5に示す通りである。
<実施例91〜92>
記録媒体を搬送できるコンベヤの上部に京セラ社製インクジェットヘッドKJ4B−QAを、2個搬送方向に並べて設置し、上流側のインクジェットヘッドに前処理液8を、下流側のインクジェットヘッドにインクジェットインキ1または7を充填した。次いで前記コ
ンベヤ上に、OKトップコート+紙(王子製紙株式会社製)を固定したのち、コンベヤを30m/分の速度で駆動させた。前記30m/分の速度で搬送される記録媒体上に、前記上流側のインクジェットヘッドより前処理液6を吐出し、前処理液のみ印字率100%でベタ印刷を行った。印刷後10秒以内に前記印刷物を50℃エアオーブンに入れ3分間乾燥させることで、前処理液を付与した記録媒体(CP8D)を製造した。なお前記インクジェットヘッドの駆動条件を駆動周波数12kHz、ドロップボリューム12pLとし、記録媒体搬送方向における記録解像度を600dpiとした。
次いで、コンベヤ上に前処理液を付与した記録媒体CP8Dを固定したのち、前記コンベヤを一定速度で駆動させ、前記インクジェットヘッドの設置部を通過する際に、インクジェットインキをドロップボリューム12pLで吐出し、記録幅方向における記録解像度600dpi、印字率100%のベタ印刷を行った。印刷後、10秒以内に前記印刷物を50℃エアオーブンに入れ3分間乾燥させることで、ベタ印刷物を作成した。なお、上表3に示す3種類の印刷条件で印刷を実施し、記録媒体搬送方向における記録解像度や印刷速度を変えたベタ印刷物を作成した。
<実施例93〜94>
上記実施例91〜92で使用した印刷装置を使用し、コンベヤ上にOKトップコート+紙(王子製紙株式会社製)を固定したのち、コンベヤを一定速度で駆動させた。前記一定速度で搬送される記録媒体上に、前記上流側のインクジェットヘッドより前処理液8を、また下流側のインクジェットヘッドよりインクジェットインキをそれぞれドロップボリューム12pL、印字率100%で吐出し、未乾燥の前処理液6上にインクジェットインキが付与されたベタ画像を作成した。印刷後、10秒以内に前記印刷物を50℃エアオーブンに入れ5分間乾燥させることで、ベタ印刷物を作成した。なおどちらのインクジェットヘッドも、上表3に示す3種類の印刷条件で印刷を実施し、記録媒体搬送方向における記録解像度や印刷速度を変えたベタ印刷物を作成した。
なお上記で評価した、記録媒体とインクジェットインキとの組み合わせは、下表6に示す通りである。
<インクジェットインキと前処理液とを混合したときの平均二次粒子径の変化率の評価>
上記実施例1〜94、及び比較例1〜20で組み合わせた前処理液とインクジェットインキについて、以下の方法で混合時の平均二次粒子径の変化率の評価を行った。インクジェットインキの平均二次粒子径を、日機装株式会社製マイクロトラックUPA150を用いて測定し、D50I(nm)とした。続いて、インクジェットインキ10gと前処理液1gとを、表4〜6に記載した組み合わせにて混合したのち、インキの場合と同様に平均二次粒子径を測定し、D50M(nm)とした。このときD50M/D50Iを計算し、インクジェットインキと前処理液とを混合したときの平均二次粒子径の変化率を評価した。表4〜6に得られた評価結果を示す。なお、表に記載された記号の意味は以下の通りである。また比較例14〜20については前処理液を使用していないため、評価を実施していない。
○:D50M/D50Iが2以上
×:D50M/D50Iが2未満
<ベタ印刷物の評価>
上記実施例1〜99、比較例1〜13で作成した、コンベヤ駆動条件の異なるベタ印刷物について、下記評価を行った。得られた評価結果は表4〜6に示す。
Figure 0006705144


Figure 0006705144


Figure 0006705144


<境界にじみの評価>
ベタ印刷部と非画像部との境界部分のにじみを目視観察し、境界にじみの評価を行った。評価結果は以下の通りとし、△以上を境界にじみ良好とした。
◎:表3に示した3種類の印刷条件の全てで、ベタ印刷部と非画像部との境界ににじみが見られなかった。
○:表3に示した3種類の印刷条件のうち、印刷条件A、及びBまたはCでは、ベタ印刷部と非画像部との境界ににじみが見られなかったが、残りの印刷条件ではにじみが見られた。
△:表3に示した3種類の印刷条件のうち印刷条件Aでは、ベタ印刷部と非画像部との境界ににじみが見られなかったが、印刷条件B及びCではにじみが見られた。
×:表3に示した3種類の印刷条件の全てで、ベタ印刷部と非画像部との境界ににじみが見られた。
<色むらの評価>
ベタ印刷部における色むらの程度を目視観察し、色むらの評価を行った。評価結果は以下の通りとし、△以上を色むら良好とした。
◎:表3に示した3種類の印刷条件の全てで、色むらが見られなかった。
○:表3に示した3種類の印刷条件のうち、印刷条件A、及びBまたはCでは色むらが見られなかったが、残りの印刷条件で色むらが見られた。
△:表3に示した3種類の印刷条件のうち印刷条件Aでは色むらが見られなかったが、印刷条件B及びCで色むらが見られた。
×:表3に示した3種類の印刷条件の全てで色むらが見られた。
<白抜け・白スジの評価>
ベタ印刷部における白抜けや白スジの発生具合を目視観察し、白抜け・白スジの評価を行った。評価結果は以下の通りとし、△以上を白抜け・白スジ良好とした。
◎:表3に示した3種類の印刷条件の全てで、白抜けや白スジが見られなかった。
○:表3に示した3種類の印刷条件のうち、印刷条件A、及びBまたはCでは白抜けや白スジが見られなかったが、残りの印刷条件で白抜けや白スジが見られた。
△:表3に示した3種類の印刷条件のうち印刷条件Aでは白抜けや白スジが見られなかったが、印刷条件B及びCで白抜けや白スジが見られた。
×:表3に示した3種類の印刷条件の全てで白抜けや白スジが見られた。
<波打ち・カールの評価>
ベタ印刷部における記録媒体の波打ちやカールの発生具合を目視観察し、波打ち・カールの評価を行った。評価結果は以下の通りとし、△以上を波打ち・カール良好とした。
◎:表3に示した3種類の印刷条件の全てで、波打ちやカールが見られなかった。
○:表3に示した3種類の印刷条件のうち、印刷条件A、及びBまたはCでは波打ちやカールが見られなかったが、残りの印刷条件で波打ちやカールが見られた。
△:表3に示した3種類の印刷条件のうち印刷条件Aでは波打ちやカールが見られなかったが、印刷条件B及びCで波打ちやカールが見られた。
×:表3に示した3種類の印刷条件の全てで波打ちやカールが見られた。
<印刷物の乾燥性の評価>
ベタ印刷部を綿棒で10往復こすり、印刷物の乾燥性の評価を行った。評価結果は以下の通りとし、○以上を印刷物の乾燥性良好とした。
◎:表3に示した3種類の印刷条件の全てで、綿棒にインクが全く付着しなかった。
○:表3に示した3種類の印刷条件のうち、印刷条件A及びBでは綿棒にインクが全く付着しなかったが、印刷条件Cでは綿棒にインクの付着が見られた。
△:表3に示した3種類の印刷条件のうち印刷条件Aでは綿棒にインクが全く付着しなかったが、印刷条件B及びCでは綿棒にインクの付着が見られた。
×:表3に示した3種類の印刷条件の全てで綿棒にインクの付着が見られた。
<実施例95〜113、比較例21〜22>
前処理液1〜3、7、11〜27について下記の評価を行った。得られた評価結果は表7に示す。
Figure 0006705144


Figure 0006705144


<前処理液の塗工適性評価>
視認性向上のため、前処理液10gにKayafectRedPLiquid(日本化薬社製染料)を0.1g添加し、よく混合し溶解させた。前記染料を添加した前処理液を、印刷試験機イージープルーフ(松尾産業株式会社製)を用い、OKトップコート+紙(王子製紙株式会社製)に均一に塗布した。このとき、ローラとして線数140線/インチのセラミックローラを用い、塗工速度を調整することで、WET塗布量が6.0±0.3cm3/m2になるようにした。前処理液を塗布したのち、OKトップコート+紙を50℃のエアオーブンにて3分間乾燥させることで、染料を添加した前処理液を付与した記録媒体を作成した。前記染料を添加した前処理液を付与した記録媒体を連続で10枚作成し、各記録媒体における色むらの程度を目視観察することで、前処理液の塗工適性を評価した。評価結果は以下の通りとし、△以上を前処理液の塗工適性が良好とした。
○:10枚全てでまったく色むらが見られなかった。
△:10枚のうち1〜2枚で色むらが見られた。
×:10枚のうち3枚以上で色むらが見られた。
<前処理液の粘度安定性の評価>
前処理液の粘度を、E型粘度計(東機産業社製TVE25L)を用いて、25℃下で測定した。この前処理液を70℃の恒温機に保存し、経時促進させた後、経時前後での前処理液の粘度変化を評価した。評価基準は以下の通りとし、△以上を粘度安定性良好とした。
○:4週間保存後の粘度変化率が±5%未満
△:2週間保存後の粘度変化率が±5%未満
×:2週間保存後の粘度変化率が±5%以上
<実施例114〜120、比較例23〜25>
インクジェットインキ1〜10について下記の評価を行った。得られた評価結果は表8に示す。
Figure 0006705144


<吐出安定性の評価>
インクジェットヘッドKJ4B−QA、またはKJ4B−Z(京セラ社製)を搭載したインクジェット吐出装置を準備し、インクジェットインキを充填した。なお、インクジェットヘッドKJ4B−Zは設計解像度が1200dpi、最大駆動周波数が64kHzであり、前記最大駆動周波数かつ印刷速度80m/分で印刷したとき、記録媒体搬送方向における記録解像度が1200dpiとなる。
次いで、KJ4B−QAを使用した場合はドロップボリューム5pL及び駆動周波数30kHz、KJ4B−Zを使用した場合はドロップボリューム2pL及び駆動周波数64kHzの条件で、2時間連続で吐出を行ったあと、ノズルチェックパターンを印字してノズル抜け本数をカウントすることで、吐出安定性の評価を行った。評価基準は以下の通りとし、△以上を吐出安定性良好とした。
○:印刷開始後2時間後のノズルチェックパターンにおいてノズル抜けが全くなかった
△:印刷開始後2時間後のノズルチェックパターンにおいてノズル抜けが1〜9本
×:印刷開始後2時間後のノズルチェックパターンにおいてノズル抜けが10本以上
<インキの分散安定性の評価>
インクジェットインキの平均二次粒子径を、日機装株式会社製マイクロトラックUPA150を用いて測定した。このインキを70℃の恒温機に保存し、経時促進させた後、経時前後でのインキの平均二次粒子径の変化を評価した。評価基準は以下の通りとし、△以上を保存安定性良好とした。
◎:4週間保存後の平均粒子径変化率が±50nm未満
○:2週間保存後の平均粒子径変化率が±50nm未満
△:1週間保存後の平均粒子径変化率が±50nm未満
×:1週間保存後の平均粒子径変化率が±50nm以上
本発明のインキセット及び印刷物の製造方法は、記録媒体によらず高画質な画像を得ることができるものであり、特に高速・高記録解像度のインクジェット印刷において、好適に利用することができる。

Claims (15)

  1. カチオン性高分子化合物、界面活性剤、及び、水を含む前処理液と、顔料、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及び、水を含むインクジェットインキとからなるインキセットであって、
    前記前処理液のpHが3〜7、かつ前記インクジェットインキのpHが7〜11であり、
    前記カチオン性高分子化合物の含有量が、前処理液全量に対し10〜70重量%であり、
    前記前処理液中の界面活性剤が、少なくともアセチレン系界面活性剤を含有し、
    前記インクジェットインキの平均二次粒子径(体積基準)をD50I(nm)、前記前処理液と前記インクジェットインキを1:10の重量比で混合した液の平均二次粒子径(体積基準)をD50M(nm)としたとき、D50M/D50Iが2以上となることを特徴とする、インキセット。
  2. カチオン性高分子化合物、界面活性剤、及び、水を含む前処理液と、顔料、水溶性有機溶剤、界面活性剤、及び、水を含むインクジェットインキとからなるインキセットであって、
    前記前処理液のpHが3〜7、かつ前記インクジェットインキのpHが7〜11であり、
    前記カチオン性高分子化合物の含有量が、前処理液全量に対し10〜70重量%であり、
    前記前処理液中の界面活性剤が、少なくともシロキサン系界面活性剤を含有し(ただし、アセチレン系界面活性剤を含有する場合を除く)、かつ、前記インクジェットインキ中の界面活性剤が、少なくともシロキサン系界面活性剤を含有し、
    前記インクジェットインキの平均二次粒子径(体積基準)をD50I(nm)、前記前処理液と前記インクジェットインキを1:10の重量比で混合した液の平均二次粒子径(体積基準)をD50M(nm)としたとき、D50M/D50Iが2以上となることを特徴とする、インキセット。
  3. 前処理液の25℃における静的表面張力をSTP(mN/m)、インクジェットインキの25℃における静的表面張力をSTI(mN/m)としたとき、以下の(1)〜(2)式を満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載のインキセット。
    20 ≦ STI ≦ 35 (1)
    0 ≦ (STP−STI) ≦ 50 (2)
  4. 前処理液の25℃における粘度が2mPa・s以上100mPa・s以下であることを特徴とする、請求項1〜3いずれかに記載のインキセット。
  5. カチオン性高分子化合物として、少なくともエピハロヒドリン変性樹脂を含有することを特徴とする、請求項1〜4いずれかに記載のインキセット。
  6. カチオン性高分子化合物が、前処理液中に溶解した状態で存在していることを特徴とする、請求項1〜5いずれかに記載のインキセット。
  7. インクジェットインキに含まれる水溶性有機溶剤が、1気圧下で沸点が180℃以上280℃以下であるグリコールエーテル系溶剤及び/またはアルキルポリオール系溶剤を2種以上含有することを特徴とする、請求項1〜6いずれかに記載のインキセット。
  8. インクジェットインキが、さらにバインダー樹脂を含有し、バインダー樹脂はインクジェットインキ中に溶解及び/または分散された状態で存在していることを特徴とする、請求項1〜7いずれかに記載のインキセット。
  9. インクジェットインキが、さらに顔料分散樹脂を含有することを特徴とする、請求項1〜8いずれかに記載のインキセット。
  10. 請求項1〜9いずれかに記載のインキセットを用いるインクジェットインキ印刷物の製造方法であって、30m/分以上の速度で搬送される記録媒体上に前処理液を付与したのち、前記前処理液を付与した部分に、インクジェットインキを1パス印刷方式により付与することを特徴とする、インクジェットインキ印刷物の製造方法。
  11. 記録媒体上への前処理液の付与量をAQP(mg/inch2)、前記前処理液を付与した部分上へのインクジェットインキの付与量をAQI(mg/inch2)としたとき、AQI/AQPが0.1以上10以下であることを特徴とする、請求項10記載のインクジェットインキ印刷物の製造方法。
  12. 印刷物の記録解像度が600dpi以上であることを特徴とする、請求項10または11に記載のインクジェットインキ印刷物の製造方法。
  13. 前処理液を記録媒体上に付与したのち、インクジェットインキを付与する前に、前記記録媒体に熱エネルギーを作用させることを特徴とする、請求項10〜12いずれかに記載のインクジェットインキ印刷物の製造方法。
  14. 記録媒体の、ブリストー法(J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87)により測定した、水に対する吸収係数が、0ml/m2msec1/2以上0.6ml/m2msec1/2以下であることを特徴とする、請求項10〜13いずれかに記載のインクジェットインキ印刷物の製造方法。
  15. 前処理液を記録媒体上に付与する手段がローラ方式であることを特徴とする、請求項10〜14いずれかに記載のインクジェットインキ印刷物の製造方法。
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