JP2019085521A - ポリビニルアルコール系相互貫入型ゲル - Google Patents
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Abstract
Description
ポリビニルアルコールのハイドロゲルの最も古典的な製造方法として凍結融解法があるが、この方法では刺激硬化性を有しないため3Dプリンターに適用できず、さらに耐熱性が低いという課題があった。そこで、光又は熱により架橋し得るポリビニルアルコールのハイドロゲルとして、重合性基をペンダントしたポリビニルアルコールマクロマーが提案されている(特許文献1、2、4)。
一方、特許文献7に記載のゲル材料は、一段階で製造され、機械的強度に優れるものの、アクリルアミド系モノマーを用いる技術であるため光による刺激硬化性が低く、さらに残留モノマーによる毒性に懸念があり、例えば医療用途には適さない。
また、これまでに刺激硬化性を有するポリビニルアルコールマクロマーを含む相互貫入型ゲル技術は知られていない。
[1]第1のポリマーネットワーク及び第2のポリマーネットワークを含有するポリビニルアルコール系相互貫入型ゲルであって、
第1のポリマーネットワークが、ラジカル重合性基を有するポリビニルアルコール(1’)を架橋してなるポリビニルアルコール架橋体(1)であり、
第2のポリマーネットワークが、カルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’)を金属イオンにより架橋してなる水溶性ポリマー架橋体(2)である、ポリビニルアルコール系相互貫入型ゲル。
[2]前記ラジカル重合性基が、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基、ノルボルネニル基及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、前記[1]のポリビニルアルコール系相互貫入型ゲル。
[3]前記ラジカル重合性基の導入率が、前記ポリビニルアルコール(1’)の繰り返し単位に対して0.1〜10mol%である、前記[1]又は[2]のポリビニルアルコール系相互貫入型ゲル。
[4]前記水溶性ポリマー(2’)がアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、LMペクチン、カルボキシメチルデンプン及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、前記[1]〜[3]のいずれかのポリビニルアルコール系相互貫入型ゲル。
[5]第1のポリマーネットワークと第2のポリマーネットワークとの質量比〔第1のポリマーネットワーク/第2のポリマーネットワーク〕の値が、相互貫入型ゲル中、1000〜0.01である、前記[1]〜[4]のいずれかのポリビニルアルコール系相互貫入型ゲル。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「メタクリル」と「アクリル」との総称を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、「メタクリロイル」と「アクリロイル」との総称を意味する。
本発明のポリビニルアルコール(以下、「PVA」とも略称する)系相互貫入型ゲル(以下、「相互貫入型ゲル」とも略称する)は、第1のポリマーネットワーク及び第2のポリマーネットワークを含有するPVA系相互貫入型ゲルであって、第1のポリマーネットワークが、ラジカル重合性基を有するポリビニルアルコール(1’)(以下、「PVA(1’)」とも略称する)を架橋してなるポリビニルアルコール架橋体(1)(以下、「PVA架橋体(1)」とも略称する)であり、第2のポリマーネットワークが、カルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’)(以下、「水溶性ポリマー(2’)」とも略称する)を金属イオンにより架橋してなる水溶性ポリマー架橋体(2)(以下、「水溶性ポリマー架橋体(2)」とも略称する)である。
なお、本発明において「相互貫入型ゲル」とは、相互貫入型ポリマーネットワーク(Interpenetrating Polymer Network(IPN))構造を有するゲルを意味する。
ラジカル重合性基を有するPVA(1’)を架橋してなるPVA架橋体(1)を第1のポリマーネットワークとし、カルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’)を金属イオンにより架橋してなる水溶性ポリマー架橋体(2)を第2のポリマーネットワークとし、第1と第2のポリマーネットワークが分子鎖レベルで相互に絡み合った網目構造、すなわち相互貫入型ポリマーネットワーク(Interpenetrating Polymer Network(IPN))構造を形成することによって、機械的強度が向上する。
また、第1のポリマーネットワークは、マクロマーを硬化して形成されるため、モノマーを重合して形成される場合と比較して、ラジカル重合性基の導入率が低くても優れた刺激硬化性を維持できる。そのため、PVA本来の性質を維持し易く、高い生体適合性及び低毒性を示し、安全性を向上することができると考えられる。一方、第2のポリマーネットワークは、金属イオンの架橋により形成されるため、硬化操作そのものが簡便で、硬化速度が速い。また、相互貫入型ゲルに衝撃が加わると金属イオンによる架橋が切断され、衝撃エネルギーを吸収することができ、機械的強度が高くなると考えられる。
本発明の相互貫入型ゲルは、ラジカル重合性基を有するPVA(1’)(PVA(1’))を架橋してなるPVA架橋体(1)を第1のポリマーネットワークとして含有する。PVA架橋体(1)は、PVA鎖同士をラジカル重合性基由来の構造単位で架橋した架橋構造を有する。
PVA(1’)は、基材となるPVA鎖の側鎖や末端にラジカル重合性基を含有する。前記PVA鎖は、少なくともビニルアルコール単位を含有し、さらにビニルエステル単位を含有してもよい。前記PVA鎖を構成する全構造単位に対するビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の合計量は、50mol%超であり、好ましくは80mol%超、より好ましくは90mol%超、更に好ましくは95mol%超である。
なお、本発明における「ビニル基」には、エテニル基だけでなく、アリル基等の鎖式不飽和炭化水素基、ビニルオキシカルボニル基等のエチレンから水素原子を1つ除いた不飽和炭素結合を含む官能基をも含む。中でも、相互貫入型ゲルの刺激硬化性及び機械的強度を向上させる観点から、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基、ノルボルネニル基及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。また、反応性の観点からは、末端不飽和炭素結合を有する官能基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。また、相互貫入型ゲルの耐アルカリ性を向上させる観点からは、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基が好ましい。
前記ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル;安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステルなどが挙げられる。これらの1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。中でも、脂肪族ビニルエステルが好ましく、経済的な観点から酢酸ビニルがより好ましく、すなわち前記ポリビニルエステルは、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルであることが好ましい。
本明細書におけるPVAの重合度は、JIS K 6726:1994に準じて測定される重合度をいい、PVAを再度けん化し、精製した後に30℃の水中で測定した極限粘度から求めることができる。
また、原料PVAとして、後述する未硬化ゲル溶液の高粘度化を抑制し、該未硬化ゲル溶液の保存安定性を向上させる観点からは、好ましくは95mol%以下、より好ましくは90mol%以下であるPVAを用いてもよい。
本明細書におけるPVAのけん化度は、PVAを構成する、けん化によりビニルアルコール単位に変換されうる構造単位(例えば酢酸ビニル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(mol%)を意味し、JIS K 6726:1994に準じて測定することができる。
原料PVAの側鎖である水酸基に対しては、ラジカル重合性基含有化合物として、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸又はその誘導体を塩基存在下で、エステル化反応又はエステル交換反応させることにより、(メタ)アクリロイル基を導入できる。
また、原料PVAの側鎖である水酸基に対しては、ラジカル重合性基含有化合物として分子内にラジカル重合性基とグリシジル基とを含む化合物を、塩基存在下でエーテル化反応させる方法も挙げられる。分子内にラジカル重合性基とグリシジル基とを含む化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これにより、(メタ)アクリロイル基やアリル基を導入することができる。
また、原料PVAの1,3−ジオール基に対しては、ラジカル重合性基含有化合物として、例えばアクリルアルデヒド(アクロレイン)、メタクリルアルデヒド(メタクロレイン)、5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド、7−オクテナール、3−ビニルベンズアルデヒド、4−ビニルベンズアルデヒド等の分子内にラジカル重合性基とアルデヒド基とを含む化合物を酸触媒存在下でアセタール化反応させる方法も挙げられる。例えば、3−ビニルベンズアルデヒドや4−ビニルベンズアルデヒド等をアセタール化反応させることでビニルフェニル基を導入することができる。また、N−(2,2−ジメトキシエチル)(メタ)アクリルアミド等を反応させることで(メタ)アクリロイルアミノ基を導入することが可能である。原料PVAを用いてラジカル重合性基を導入する方法は例示された前記反応以外も用いることができ、2種以上の反応を組み合わせて使用してもよい。
カルボン酸変性PVAを構成する単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸無水物等及びその誘導体などが挙げられる。カルボン酸変性PVAは、例えばビニルエステル系単量体とα,β−不飽和カルボン酸無水物等又はその誘導体とを共重合し、その後けん化し、導入されたカルボキシル基に対して、例えばグリシジルメタクリレートを酸性条件で反応させることでエステル結合を生成させメタクリロイル基を導入できる。
また、アミノ変性PVAは、ビニルエステル系単量体とN−ビニルホルムアミド等とを共重合し、その後けん化し、導入されたアミノ基に対して、例えばアクリル酸無水物を塩基存在下でアミド化反応させることによりアクリロイルアミノ基を導入できる。また、前記アミノ変性PVAのアミノ基に対して例えばアジピン酸ジビニルをアミド化反応させることによりビニルオキシカルボニル基を導入できる。共重合変性PVAを経てラジカル重合性基を導入する方法は例示された前記反応以外も用いることができ、2種以上の反応を組み合わせて使用してもよい。
チオール−エン反応はビニル基とチオール基が1対1で反応するため、チオール基がビニル基に対して等モル以下となるように前記ポリチオールを添加することが好ましい。前記添加量の範囲であれば、相互貫入型ゲルの機械的強度等を制御する観点から、任意に前記ポリチオールの添加量を調整できる。チオール−エン反応による硬化はビニルオキシカルボニル基を有するPVA(1’)についても用いてもよい。
本発明の相互貫入型ゲルは、カルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’)を金属イオンにより架橋してなる水溶性ポリマー架橋体(2)を第2のポリマーネットワークとして含有する。水溶性ポリマー架橋体(2)は、カルボキシル基を有する水溶性ポリマー鎖同士を金属イオンで架橋した架橋構造を有する。本発明において「水溶性ポリマー」は、カルボキシル基を水酸化ナトリウムで100%中和し、25℃の水100gに溶解させたときの溶解量が0.1gを越えるポリマーを意味する。
第1のポリマーネットワークは、ラジカル重合反応により架橋が形成されるが、これと同じラジカル重合反応による架橋方法で第2のポリマーネットワークを形成しようとすると、第1のポリマーネットワークを形成させた後で第2のポリマーネットワークの原料を染み込ませる工程を要し、工程が煩雑になり、製造に長時間を要する。そこで、本発明では、第1のポリマーネットワークとは異なる金属イオンによる架橋方法で水溶性ポリマー(2’)を架橋し、第2のポリマーネットワークを形成することにより、第1のポリマーネットワークを形成する前であっても第2のポリマーネットワークの原料を予め混合しておくことができ、相互貫入型ゲルを製造する工程を大幅に簡略化することができる。
また、本発明の相互貫入型ゲルは水媒体にて製造することができるため、第2のポリマーネットワークを金属イオンにより架橋して形成することにより、水媒体中で非常に効率よく架橋反応が進行する。そのため、添加剤及び原料を過剰に使用する必要がなく、残存する添加剤や未反応の原料を除くためのゲル洗浄工程を要しない。
水溶性ポリマー(2’)の溶液粘度は目的に応じて自由に選択できるが、例えば水溶性ポリマー(2’)がアルギン酸ナトリウムの場合、その1質量%水溶液の粘度(20℃)は、相互貫入型ゲルの機械的強度を高くする観点からは、好ましくは10〜1,500mPa・s、より好ましくは30〜1,300mPa・s、更に好ましくは50〜1,000mPa・s、より更に好ましくは100〜700mPa・s、特に好ましくは200〜500mPa・sである。
本発明の相互貫入型ゲルは、さらに水不溶性の無機微粒子を含有してもよい。水不溶性の無機微粒子としては、例えば沈降シリカ、ゲル状シリカ、気相法シリカ、コロイダルシリカ等のシリカ;アルミナ、ヒドロキシアパタイト、ジルコニア、酸化亜鉛、チタン酸バリウム等のセラミック;ゼオライト、タルク、モンモリロナイト等の鉱物;硫酸カルシウム等の石膏;酸化カルシウム、酸化鉄等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;ケイソウ土、土壌、粘土、砂、砂利などが挙げられる。これらの無機微粒子は1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。水不溶性の無機微粒子を含有することで、ゲルにさらに高い機械物性や磁性などの機能を付与することができる。また、無機微粒子を含有する成形された相互貫入型ゲルを乾燥、さらに焼結等を行うことにより成形された無機焼結体を得ることもできる。
無機微粒子の含有量は、特に制限されず、相互貫入型ゲル中、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。さらに無機微粒子の添加効果を得る観点から、無機微粒子の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。
本発明の相互貫入型ゲル中の、溶媒の含有量は、相互貫入型ゲルの柔軟性が向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上である。そして、溶媒の含有量の上限は特に限定されないが、相互貫入型ゲルの機械的強度を向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。溶媒として水溶性有機溶媒を含む場合には、前記溶媒の含有量は水と水溶性有機溶媒との合計量である。
相互貫入型ゲル中の溶媒の含有量は、乾燥法を用いて測定することができる。具体的には試料を加熱して一定時間保ち、試料から溶媒を蒸発及び乾燥させ、加熱乾燥前後の試料質量の減少量を溶媒の含有量として求めることができる。
本発明の相互貫入型ゲル中の、第1のポリマーネットワークと第2のポリマーネットワークとの合計含有量は、相互貫入型ゲルの機械的強度を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。相互貫入型ゲルの柔軟性が向上させる観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下である。
本発明の相互貫入型ゲルは、ラジカル重合性基を有するPVA(1’)を架橋してPVA架橋体(1)を得る第1のポリマーネットワークを形成する工程と、カルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’)を金属イオンにより架橋して水溶性ポリマー架橋体(2)を得る第2のポリマーネットワークを形成する工程とを含む製造方法により製造できる。
本発明の相互貫入型ゲルの製造において、第1のポリマーネットワークと第2のポリマーネットワークの形成順序に特に制限はなく、第1のポリマーネットワークを形成した後、第2のポリマーネットワークの形成してもよく、また、第2のポリマーネットワークを形成した後、第1のポリマーネットワークの形成してもよい。また、第1のポリマーネットワークと第2のポリマーネットワークとを同時に形成してもよい。「同時に成形する」とは、ラジカル重合性基を有するPVA(1’)の架橋と、金属イオンによるカルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’)の架橋とを同時に行うことを意味する。
前記未硬化ゲル溶液中の、PVA(1’)と水溶性ポリマー(2’)との質量比〔PVA(1’)/水溶性ポリマー(2’)〕の値は、第1及び第2のポリマーネットワークのいずれか一方の相互貫入型ゲル中の含有量が過度に低下することなく、相互貫入効果を十分に発揮する観点から、好ましくは1000〜0.01、より好ましくは500〜0.03、更に好ましくは100〜0.1、より更に好ましくは50〜1、特に好ましくは35〜3である。
前記未硬化ゲル溶液中の溶媒の含有量は、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。そして、該溶媒の含有量は、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、95質量%以下が更に好ましい。
熱ラジカル重合開始剤としては、熱によりラジカル重合を開始するものであれば特に制限はなく、ラジカル重合で一般的に用いられるアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤等が挙げられる。相互貫入型ゲルの透明性及び物性を向上させる観点から、気体を発生しない過酸化物系開始剤が好ましく、前記未硬化ゲル溶液が水系溶媒である観点から、水溶性の高い過酸化物系開始剤がより好ましい。具体的には、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられる。
また、還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤を用いてもよい。レドックス系開始剤であれば過酸化物系開始剤と還元剤の混合という刺激により第1のポリマーネットワークを形成し、硬化させることができる。レドックス系開始剤として組み合わせる還元剤としては公知の還元剤を用いることができるが、これらの中でも水溶性の高いN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウム等が好ましい。
前記未硬化ゲル溶液中の単量体の含有量は、相互貫入型ゲルの機械的強度を向上させる観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
前記未硬化ゲル溶液が光ラジカル重合開始剤を含む場合、光造形法の3Dプリンターによる造形の際の形状の精密性を確保する観点から、該未硬化ゲル溶液はさらに紫外線吸収剤等の光吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、水溶性を示すものであれば特に制限はなく、ケミプロ化成(株)社製「KEMISORB111」、「KEMISORB11S」(以上、商品名)、BASF社製「Tinuvin477−DW」、「UVA805」、「Tinuvin1130」(以上、商品名)等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤を含む未硬化ゲル溶液を硬化させる場合、未硬化ゲル溶液はさらに重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤としては水溶性を示すヒドロキノンやp−メトキシフェノールなどが挙げられるが、これ以外の重合禁止剤を用いてもよい。重合禁止剤を含有することにより未硬化ゲル溶液の保存安定性を高めることができる。
活性エネルギー線の照射により、ラジカル重合性基を有するPVA(1’)を架橋して第1のポリマーネットワークを形成する場合、照射処理に使用できる活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線等が挙げられ、好ましくは高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等の紫外線である。
活性エネルギー線の照射エネルギー量は、好ましくは0.1〜10,000mJ/cm2、より好ましくは1〜5,000mJ/cm2、更に好ましくは10〜2,000mJ/cm2である。
熱により、ラジカル重合性基を有するPVA(1’)を架橋して第1のポリマーネットワークを形成する場合、温度100℃未満で加熱することが好ましい。加熱温度は、用いる熱ラジカル重合開始剤の種類により適宜調整することができ、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜80℃である。
カルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’)に金属イオンを作用させて、該水溶性ポリマー(2’)を架橋して第2のポリマーネットワークを形成する方法としては、前記未硬化ゲル溶液自体を金属イオン溶液中に浸漬する方法、前記未硬化ゲル溶液中のPVA(1’)を架橋して得た第1ポリマーネットワークを金属イオン溶液中に浸漬する方法、未硬化ゲル溶液自体又は前記未硬化ゲル溶液中のPVA(1’)を架橋して得た第1のポリマーネットワーク内部にて金属イオンを発生させる方法等が挙げられる。本明細書において「浸漬」とは、浸漬のほか、添加をも含む概念である。
浸漬に用いる金属イオン溶液の溶媒は、前記未硬化ゲル溶液が水系溶媒である観点から、水が好ましい。該金属イオン溶液中の金属イオンの濃度は、相互貫入型ゲルの機械的強度及びゲル化時間等により適宜調整することができるが、好ましくは0.005g/水100mL以上、より好ましくは0.01g/水100mL以上、更に好ましくは0.02g/水100mL以上である。そして、好ましくは30g/水100mL以下、より好ましくは10g/水100mL以下、更に好ましくは5g/水100mL以下、より更に好ましくは1g/水100mL以下である。
工程1−1:未硬化ゲル溶液中のPVA(1’)をラジカル重合反応により架橋してPVA架橋体(1)を得て第1のポリマーネットワークを形成する工程
工程1−2:工程1−1で得られた第1のポリマーネットワーク中に含まれるカルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’)を金属イオンにより架橋して水溶性ポリマー架橋体(2)を得て第2のポリマーネットワークを形成し、相互貫入型ゲルを得る工程
工程1−2は、製造容易性の観点から、工程1−1で得られた第1のポリマーネットワークを金属イオン溶液中に浸漬する方法又は工程1−1で得られた第1のポリマーネットワーク内部にて金属イオンを発生させる方法により、水溶性ポリマー(2’)を架橋して水溶性ポリマー架橋体(2)を得ることが好ましい。
工程2−1:未硬化ゲル溶液中の水溶性ポリマー(2’)を金属イオンにより架橋して水溶性ポリマー架橋体(2)を得て第2のポリマーネットワークを形成する工程
工程2−2:工程2−1で得られた第2のポリマーネットワーク中に含まれるPVA(1’)をラジカル重合反応により架橋してPVA架橋体(1)を得て第1のポリマーネットワークを形成し、相互貫入型ゲルを得る工程
工程2−1は、製造容易性の観点から、未硬化ゲル溶液を金属イオン溶液中に浸漬する方法又は未硬化ゲル溶液中で金属イオンを発生させる方法により、水溶性ポリマー(2’)を架橋して水溶性ポリマー架橋体(2)を得ることが好ましい。
材料押出堆積法の好ましい態様の1つとして、金属イオンを含むゼラチンゲル中に未硬化ゲル溶液を吐出することでカルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’)を架橋し第2のポリマーネットワークを形成した後、該第2のポリマーネットワークに含まれるラジカル重合性基を有するPVA(1’)を架橋して第1のポリマーネットワークを形成することもできる。この方法では三次元的な精密形状を安定して製造することが容易になる。
さらに光造形法の好ましい態様の1つとして、光ラジカル重合開始剤を含む未硬化ゲル溶液をバスタブ型の容器に入れ、まずラジカル重合性基を有するPVA(1’)の架橋により光造形することで所望の形状に成形した後、金属イオンを含むゼラチンゲル中に浸漬することにより金属イオンを作用させることでカルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’)を架橋し、形状が付与された本発明の相互貫入型ゲルを得ることができる。上記した全ての成形方法において、ラジカル重合性基を有するPVA(1’)の架橋と金属イオンによるカルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’)の架橋とが同時であってもよい。
本発明の相互貫入型ゲルの引張強度は、相互貫入型ゲル自体の自己支持性の観点から、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.08MPa以上、更に好ましくは0.1MPa以上、より更に好ましくは0.2MPa以上である。そして、生体類似の機械的特性の観点から、好ましくは500MPa以下、より好ましくは200MPa以下、更に好ましくは100MPa以下である。
本発明の相互貫入型ゲルの破断歪みは、相互貫入型ゲルの柔軟性の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは50%以上、より更に好ましくは100%以上、特に好ましくは300%以上である。そして、生体類似の機械的特性の観点から、好ましくは3000%以下、より好ましくは2000%以下、更に好ましくは1000%以下である。
初期弾性率、引張強度及び破断歪みは、実施例に記載の方法により測定される。
(原料ポリビニルアルコール)
・PVA117:ポリビニルアルコール(商品名「PVA117」、重合度1700、けん化度約98〜99mol%、(株)クラレ製)
なお、原料PVAの重合度は、JIS K 6726:1994に準じて測定される。
(ラジカル重合性基含有化合物)
・メタクリル酸ビニル:東京化成工業(株)製
・5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド:東京化成工業(株)製
(カルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’))
・アルギン酸ナトリウム(NSPMR)(商品名「ダックアルギンNSPMR」、1質量%水溶液の粘度(温度:20℃)300〜400mPa・s、キッコーマンバイオケミファ(株)製)
・アルギン酸ナトリウム(NSPLLR)(商品名「ダックアルギンNSPLLR」、1質量%水溶液の粘度(温度:20℃)40〜50mPa・s、キッコーマンバイオケミファ(株)製)
(ラジカル重合開始剤)
・IRGACURE2959:1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(光ラジカル重合開始剤、商品名「IRGACURE2959」、BASFジャパン(株)製)
・α−ケトグルタル酸:(光ラジカル重合開始剤、和光純薬工業(株)製)
(金属イオン水溶液)
・塩化カルシウム水溶液:濃度1g塩化カルシウム/水100mL、和光純薬工業(株)製
(ポリチオール)
・2,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール:東京化成工業(株)製
(単量体)
・アクリルアミド(AAm):和光純薬工業(株)製
・N,N−ジメチルアクリルアミド(DAAm):和光純薬工業(株)製
・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS):和光純薬工業(株)製
(架橋剤)
・N,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA):和光純薬工業(株)製
[合成例1]
40g(単量体繰り返し単位:911mmol)のPVA117を1Lのジムロート冷却管を備えたセパラブルフラスコに入れ、350mLのDMSOを加えてメカニカルスターラーにて撹拌を開始した。ウオーターバスにより80℃まで昇温後、80℃で撹拌を4時間続けた。前記PVAが溶解したことを目視で確認した後、80℃で加熱撹拌しながらメタクリル酸ビニル1.2g(10.8mmol)を加え、さらに80℃で3時間撹拌した。放冷後、2Lのメタノール中に撹拌しながら反応溶液を注ぎいれた。撹拌を止め、1時間そのまま放置した。得られた固体を回収した後、さらに1Lのメタノールに1時間浸漬して洗浄した。この洗浄作業を合計3回行った。回収した固体を室温で一晩真空乾燥してメタクリロイル化PVA117を得た。該メタクリロイル化PVA117のラジカル重合性基(メタクリロイルオキシ基)の導入率はPVAの繰り返し単位に対して1.2mol%であった(以下、「MA−PVA117(1.2)」と略称する)。
合成例1において、表1に示すとおり、メタクリロイルオキシ基の導入率を変更した以外は合成例1と同様にして、メタクリロイル化PVAを製造した。
60g(単量体繰り返し単位:1.36mol)のPVA117を1Lのジムロート冷却管を備えたセパラブルフラスコに入れ、540mLのイオン交換水を加えてメカニカルスターラーにて撹拌を開始した。ウオーターバスにより80℃まで昇温後、80℃で撹拌を4時間続けた。前記PVAが溶解したことを目視で確認した後、40℃まで降温した。40℃で撹拌しながら5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド2.5g(20.5mmol)、10体積%硫酸水溶液22mLを加え、さらに40℃で4時間撹拌した。放冷後、1規定NaOH水溶液を80mL添加して中和し、分画分子量3,500の透析膜に入れて脱塩した(5Lのイオン交換水に対して4回実施)。2Lのメタノール中に撹拌しながら脱塩後の水溶液を注ぎいれ、1時間そのまま放置した。得られた固体を回収した後、さらに1Lのメタノールに1時間浸漬して洗浄した。回収した固体を室温で一晩真空乾燥してノルボルネン化PVA117を得た。該ノルボルネン化PVA117のラジカル重合性基(ノルボルネニル基)の導入率はPVAの繰り返し単位に対して1.3mol%であった(以下、「Nor−PVA117(1.3)」と略称する)。
PVA(1’)として10gのMA−PVA117(1.2)に90mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間撹拌しながら溶解した。室温まで冷却後、このMA−PVA水溶液に1gのアルギン酸ナトリウム(NSPMR)を加えて室温で3時間撹拌した。アルギン酸ナトリウムを含むMA−PVA水溶液に対して水溶性光ラジカル重合開始剤であるIRGACURE2959を0.1質量%となるように加えて溶解し、未硬化ゲル溶液を調製した。
次いで、2mm厚のスペーサーを挟み込んだガラス板間にこの溶液を流し込み、(株)ジーエス・ユアサコーポレーション製メタルハライドランプを用いて145mW/cm2にて30秒(照射エネルギー量:1,200mJ/cm2)のUV光(波長365nm)を照射した。硬化したゲルをガラス板から取り出し、塩化カルシウム水溶液(1g塩化カルシウム/水100mL)に30分浸漬し、本発明の相互貫入型ゲルを得た。該相互貫入型ゲルは当該条件でも十分に硬化し、強靭なゲルであった。得られた相互貫入型ゲルを用いて、機械的強度の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1で調製した未硬化ゲル溶液を2mmの厚みとなるようにトレーに入れ、トレー中の該未硬化ゲル溶液層の上面から塩化カルシウム水溶液(1g塩化カルシウム/水100mL)を噴霧して未硬化ゲル溶液全体を硬化させた。その後、(株)ジーエス・ユアサコーポレーション製メタルハライドランプを用いて145mW/cm2にて30秒(照射エネルギー量:1,200mJ/cm2)のUV光を照射し、相互貫入型ゲルを得た。該相互貫入型ゲルは当該条件でも十分に硬化し、強靭なゲルであった。得られた相互貫入型ゲルを用いて、機械的強度の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1において、MA−PVA117(1.2)に代えてMA−PVA117(0.6)を使用した以外は実施例1と同様の方法により、相互貫入型ゲルを得た。該相互貫入型ゲルは当該条件でも十分に硬化し、強靭なゲルであった。得られた相互貫入型ゲルを用いて、機械的強度の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1において、MA−PVA117(1.2)に代えてMA−PVA117(0.3)を使用した以外は実施例1と同様の方法により、相互貫入型ゲルを得た。該相互貫入型ゲルは当該条件でも十分に硬化し、強靭なゲルであった。得られた相互貫入型ゲルを用いて、機械的強度の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1において、アルギン酸ナトリウム(NSPMR)に代えてアルギン酸ナトリウム(NSPLLR)を使用した以外は実施例1と同様の方法により、相互貫入型ゲルを得た。該相互貫入型ゲルは当該条件でも十分に硬化し、強靭なゲルであった。得られた相互貫入型ゲルを用いて、機械的強度の評価を行った。結果を表2に示す。
PVA(1’)として10gのMA−PVA117(1.2)に90mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間撹拌しながら溶解した。室温まで冷却後、このMA−PVA水溶液に2gのアルギン酸ナトリウム(NSPLLR)を加えて室温で3時間撹拌した。アルギン酸を含むMA−PVA水溶液に対してIRGACURE2959を0.1質量%となるように加えて溶解し、未硬化ゲル溶液を調製した。この溶液を実施例1と同じ条件で硬化させて、相互貫入型ゲルを得た。該相互貫入型ゲルは当該条件でも十分に硬化し、強靭なゲルであった。得られた相互貫入型ゲルを用いて、機械的強度の評価を行った。結果を表2に示す。
PVA(1’)として10gのNor−PVA117(1.3)に90mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間撹拌しながら溶解した。室温まで冷却後、このNor−PVA水溶液に1gのアルギン酸ナトリウム(NSPMR)を加えて室温で3時間撹拌した。さらにポリチオールとして3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオールを0.48g加えて撹拌した。この溶液に対してIRGACURE2959を0.1質量%となるように加えて溶解し、未硬化ゲル溶液を調製した。この溶液を実施例1と同じ条件で硬化させて、相互貫入型ゲルを得た。該相互貫入型ゲルは当該条件でも十分に硬化し、強靭なゲルを得た。得られた相互貫入型ゲルを用いて、機械的強度の評価を行った。結果を表2に示す。
PVA(1’)として10gのMA−PVA117(1.2)に90mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間撹拌しながら溶解した。室温まで冷却後、これにIRGACURE2959を0.1質量%となるように加えて溶解し、未硬化ゲル溶液を調製した。この溶液を実施例1と同じ条件にて硬化させ、ゲルを得た。該ゲルは、アルギン酸ナトリウムを含まない未硬化ゲル溶液を硬化させて得られたため、金属イオンによる架橋により形成される第2のポリマーネットワークは含有しない。得られたゲルを用いて、機械的強度の評価を行った。結果を表2に示す。
比較例1において、MA−PVA117(0.6)を使用した以外は比較例1と同様にしてゲルを得た。
比較例1において、MA−PVA117(0.3)を使用した以外は比較例1と同様にしてゲルを得た。
14gのアクリルアミド(AAm)を86mLのイオン交換水に対し、架橋剤としてAAmに対して0.06質量%のN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)と、1.7gのアルギン酸ナトリウム(NSPMR)を加えて室温で撹拌し溶解した。この溶液に対してIRGACURE2959を0.1質量%となるように加えて溶解し、未硬化ゲル溶液を調製した。この溶液を実施例1と同じ条件で硬化させたが、ゲルが得られなかった。そのため、機械的強度の評価は行なわなかった。
14gのアクリルアミド(AAm)を86mLのイオン交換水に対し、架橋剤としてAAmに対して0.06質量%のN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)と、1.7gのアルギン酸ナトリウム(NSPMR)を加えて室温で撹拌し溶解した。さらにポリチオールとして3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオールを0.48g加えて撹拌した。この溶液に対してIRGACURE2959を0.1質量%となるように加えて溶解し、未硬化ゲル溶液を調製した。この溶液を実施例1と同様に硬化させ、ゲルを得た。得られたゲルを用いて、機械的強度の評価を行った。結果を表2に示す。
特許文献7を参考に相互貫入型ゲルを以下のように作製した。
1mol/Lの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、0.04mol/LのN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)、及び光ラジカル重合開始剤として0.001mol/Lのα−ケトグルタル酸を含む水溶液100mLにUV光を7時間照射して重合を行い、架橋度4mol%のポリAMPSゲル(PAMPSゲル)を得た。得られたPAMPSゲルを熱乾燥機に1日入れて乾燥させ、乳鉢に入れて粉砕することでPAMPSゲルの微粒子を得た。
一方、1mol/LのN,N−ジメチルアクリルアミド(DAAm)と、架橋剤としてDAAmに対して0.01mol%のMBAAと、モノマー溶液に対して0.1質量%のIRGACURE2959とを含むモノマー溶液を調製した。
前記PAMPSゲルの微粒子と前記モノマー溶液との質量比(PAMPSゲルの微粒子:モノマー溶液)が1:30となるような量で、前記モノマー溶液に、前記PAMPSゲルの微粒子を投入した。この溶液を実施例1と同じUV光の照射条件で硬化させたが、強靭なゲルが得られなかった。そのため、機械的強度の評価は行なわなかった。
実施例1〜7で得られた相互貫入型ゲル及び比較例1〜3及び5で得られたゲルの機械的強度を次の手順により引張試験を行い、初期弾性率、引張強度及び破断歪みを測定した。
特開2015−004059号公報に記載された方法に従って、JIS K−6251−3規格のダンベルカッターを用いて、2mm厚で作成した各ゲルシートから試験片を切り出した。食紅を使用して試験片に標点を2つ付け、ノギスでその標点間距離を測定した。マイクロメータを使用して、試験片の幅と厚みを測定した。イーストン社製引張試験機(5566型)に試験片をセットして、画像データを取得しながら試験を行った。得られた画像データから、応力と歪みの相関図を作成し、初期弾性率、引張強度及び破断歪みの数値を得た。結果を表2に示す。
表2中の各表記は以下のとおりである。
*1:工程Aは第1ポリマーネットワークを形成する工程であり、工程Bは第2ポリマーネットワークを形成する工程である。
*2:重合性単量体としてアクリルアミド類と、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)を用いて第1のポリマーネットワークを形成した。
*3:特許文献7を参考に相互貫入型ゲルを作製した。
*4:全体が硬化していない(ゲルとして取り扱えない)ため機械的強度の評価を行わなかった。
比較例1〜3は、いずれも相互貫入型ゲルを形成していないため、実施例1〜7と比べて初期弾性率及び引張強度が低く、機械的強度が劣る。
比較例4〜5は、重合性単量体を重合してゲルの形成を試みた。しかしながら、刺激硬化性のPVAマクロマーを用いていないため、硬化が不十分であり、また、硬化したとしても、実施例1〜7と比べて初期弾性率及び引張強度が低く、機械的強度が劣る。
比較例6は、モノマーを重合するため硬化性に劣り、実施例1と同じUV光の照射条件では硬化が不十分であった。
Claims (5)
- 第1のポリマーネットワーク及び第2のポリマーネットワークを含有するポリビニルアルコール系相互貫入型ゲルであって、
第1のポリマーネットワークが、ラジカル重合性基を有するポリビニルアルコール(1’)を架橋してなるポリビニルアルコール架橋体(1)であり、
第2のポリマーネットワークが、カルボキシル基を有する水溶性ポリマー(2’)を金属イオンにより架橋してなる水溶性ポリマー架橋体(2)である、ポリビニルアルコール系相互貫入型ゲル。 - 前記ラジカル重合性基が、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基、ノルボルネニル基及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリビニルアルコール系相互貫入型ゲル。
- 前記ラジカル重合性基の導入率が、前記ポリビニルアルコール(1’)の繰り返し単位に対して0.1〜10mol%である、請求項1又は2に記載のポリビニルアルコール系相互貫入型ゲル。
- 前記水溶性ポリマー(2’)がアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、LMペクチン、カルボキシメチルデンプン及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリビニルアルコール系相互貫入型ゲル。
- 第1のポリマーネットワークと第2のポリマーネットワークとの質量比〔第1のポリマーネットワーク/第2のポリマーネットワーク〕の値が、相互貫入型ゲル中、1000〜0.01である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリビニルアルコール系相互貫入型ゲル。
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