JP6163287B2 - ゲルの製造方法 - Google Patents
ゲルの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6163287B2 JP6163287B2 JP2011188303A JP2011188303A JP6163287B2 JP 6163287 B2 JP6163287 B2 JP 6163287B2 JP 2011188303 A JP2011188303 A JP 2011188303A JP 2011188303 A JP2011188303 A JP 2011188303A JP 6163287 B2 JP6163287 B2 JP 6163287B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- gel
- cellulose
- monomer
- network structure
- solvent
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Polymerisation Methods In General (AREA)
- Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
Description
しかしながら、かかるゲル材料は一般的に強度がなく、微小な応力で構造が破壊されてしまうため、強度が必要とされる用途には不向きであった。近年、上述のような従来のゲル材料から強度を大幅に向上させた、様々なゲル材料が提唱されている。
これらのゲルは、伸び・強度共に従来のゲルに比べ高く、様々な応用・産業的利用が期待されている。
特にダブルネットワークゲルは、伸び・強度のバランスを設計することが自在であり、高透明である等の点で優れている。また、架橋剤の添加量を増やすことで、より高弾性、高強度のゲルが得られることが知られている。そのようなダブルネットワークゲルは例えば、特許文献3、4に提案されている。
特許文献4には、ダブルネットワークゲルを構成するポリマーとして、微生物により産生されたバクテリアセルロースを使用することが記載されている。しかしながら、バクテリアセルロースは容易に入手できず、調製することも容易でない。
前記電気的に中性な単量体(b1)がアクリルアミド又はアクリルアミド誘導体であることを特徴とするゲルの製造方法。
本発明によれば、第一の架橋された網目構造(A)をセルロースで構成したことにより、力学的強度が向上し、取り扱い性に優れるゲルが得られる。
またセルロースを使用することにより、従来のゲルの製造に用いられていた酸性基を含むモノマーや電荷を有するモノマーの使用量を低減することが可能であり、これによって、長期使用におけるゲルの加水分解による劣化や黄変を抑制し、金属に対する腐食性や処理時の環境への負荷および生態への負荷を低減することができる。
本発明のゲルは、ポリマーで構成された網目構造中に水もしくは有機溶媒を溶媒として取り込んでいるゲルである。
網目構造とは、ポリマー同士を化学的または物理的に架橋することにより、三次元に張り巡らされた網の目のような構造を意味する。該網目構造は、直鎖状または分岐状のポリマーの絡み合いからなるものとは異なり、網目内に溶媒を取り込むことができる。以下、ポリマー同士を化学的または物理的に架橋することにより得られる網目構造を、「架橋された網目構造」と記す。
第一の架橋された網目構造(A)は、セルロースが溶解しているセルロース溶液を、貧溶媒に浸漬して析出させた再生セルロースからなる。こうして得られる再生セルロースは、架橋されたセルロースで構成される網目構造を有する。
分子鎖(B)は、単量体(b)の重合反応により形成される分子鎖である。
本発明のゲルにおいて、第一の架橋された網目構造(A)と分子鎖(B)とで形成される構造は、相互侵入網目構造である。
相互侵入網目構造とは、分子鎖(B)が、架橋された網目構造(以下、第二の架橋された網目構造(B1)という。)を構成しており、第一の架橋された網目構造(A)と該第二の架橋された架橋された網目構造(B1)とが重なり合い、相互に絡み合っている構造を意味する。
有機溶媒は、常温で液体状態の有機物であればよく、例えば、メタノール、エタノール等の1価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミン類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸、酢酸エチル、酢酸ブチル、無水酢酸等が挙げられる。
本明細書において、ゲル中の固形分量は、ゲルを、温度100℃、圧力50mmHg(6.67kPa)以下で24時間乾燥してゲル中の溶媒を除去したときの、乾燥後質量で表わす。ゲル中に存在する溶媒の含有量[質量%](含水率をいうこともある。)は、かかる乾燥を行う前後におけるゲルの質量変化から下記式により得られる値である。
ゲル中の溶媒の含有量=(乾燥前質量−乾燥後質量)/乾燥前質量×100
本発明において、ゲルが第一の架橋された網目構造(A)と分子鎖(B)と溶媒と必要であれば添加剤からなり、これらの他の成分を含まない場合、第一の架橋された網目構造(A)を有するゲル中の固形分質量を第一の架橋された網目構造(A)の質量とみなし、本発明のゲル中の固形分質量を、第一の架橋された網目構造(A)と分子鎖(B)と添加剤の合計とみなす。単量体(b)の重合反応により形成された分子鎖(B)の質量は下記式より得られる値である。
分子鎖(B)の質量=(本発明のゲルの乾燥後質量−第一の架橋された網目構造(A)を有するゲルの乾燥後質量)×(単量体(b)の質量/(単量体(b)の質量+添加剤の質量))
なお、乾燥後質量は、ゲルを温度100℃、圧力50 mmHg(6.67kPa)以下で24時間乾燥してゲル中の溶媒を除去したときの、乾燥後質量である。
本発明のゲルの製造方法は、セルロース原料(a)を溶剤(s)に溶解させてセルロース溶液を調製する工程と、該セルロース溶液を、セルロースの貧溶媒中に浸漬させて、第一の架橋された網目構造(A)を形成する工程と、前記第一の架橋された網目構造(A)に、重合性不飽和結合を有する単量体(b)を導入する工程と、該単量体(b)を重合させる工程を有する。
まず、セルロース原料(a)を溶剤(s)に溶解してセルロース溶液を調製する。
セルロース原料(a)は、セルロースと、原料由来または製造途中で生じる不純物とからなる組成物であり、公知のセルロース原料を適宜用いることができる。
セルロース原料(a)として、例えば、植物由来セルロース、動物由来セルロース(ホヤセルロース等)、再生セルロース等を使用できる。セルロース原料(a)中のセルロースは、溶剤(s)への溶解を妨げない範囲で化学修飾されたセルロースであってもよい。
セルロース原料(a)は、ゲルの強度を発現する水素結合性の点からセルロース純度が90%以上のものを用いることが好ましい。
セルロース原料(a)の形態は特に限定されず、粉状、糸状、紙状、フィルム状など種々の形態のものを用いることができる。
セルロース原料(a)の平均重合度は、セルロース溶液の粘度、および得られる再生セルロースゲルの良好な強度を発現しやすい点から、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、400以上が特に好ましい。また入手および取扱いが容易な点で、セルロース原料(a)の平均重合度は30000以下が好ましい。
本明細書におけるセルロース原料(a)の平均重合度の値は、公表値もしくは、公知のMark−Houwink−桜田の式等を用いて得られる値である。
これらのうちで苛性アルカリ/尿素水溶液が、入手の容易さ、低コスト、環境への負荷や生態への負荷が少ない点で好ましい。苛性アルカリ/尿素水溶液は、(i)苛性アルカリを2〜20質量%以上含み、かつ(ii)尿素又はチオ尿素を2〜40質量%含む水溶液がより好ましい。該(i)、(ii)の一方または両方を満たさない場合、苛性アルカリ/尿素水溶液のセルロース溶解性は大きく低下する。
該苛性アルカリとしては、セルロース溶液の貯蔵安定性、セルロースの溶解度等の点から、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。セルロース溶液の貯蔵安定性、セルロースの溶解度の点では水酸化リチウムがさらに好ましい。水酸化ナトリウムは、食品の処理にも使用されているものであり、環境や生態への負荷が特に少ない点で特に好ましい。
セルロースの融解が均一になりやすい点で、溶剤(s)にセルロース原料(a)を加え、攪拌しながら−20℃付近で冷却して完全に凍結させた後、冷蔵庫内(例えば10〜0℃)で徐々に融解させる方法を用いることが好ましい。
セルロース溶液におけるセルロース原料(a)の固形分濃度は、0.1〜30質量%が好ましく、0.2〜15質量%がより好ましい。上記範囲の下限値未満であるとセルロース溶液を貧溶媒中に浸漬した際に、セルロース同士がネットワーク構造を持つことが困難であり、架橋構造を形成しづらい。上限値を超えると溶液の粘度が高すぎる、低い分子量のセルロースしか溶解できない、セルロース溶液が均一にならない等の点から好ましくない。
セルロース溶液を貧溶媒に浸漬させる方法は特に限定されないが、セルロース溶液を任意の基材上に膜状に塗布した状態で貧溶媒に浸漬させる方法;キャスト法等が挙げられる。
こうして得られる再生セルロースゲルは、セルロース間の水素結合による物理架橋構造を有する。物理架橋は環境の変化に可逆的である点で、化学架橋と大きく異なる。また、物理架橋によって形成されるゲルは物理架橋ゲルと呼ばれ、高分子鎖同士が物理架橋して形成された網目構造(物理架橋網目構造という)を有するゲルである。
この再生セルロースゲルを貧溶媒とは異なる他の溶媒(例えば水または有機溶媒)中に浸漬して、架橋された網目構造中に取り込んでいる貧溶媒を他の溶媒と溶媒交換してもよい。
例えば、セルロース溶液を貧溶媒中に浸漬して得られた再生セルロースゲルを、水に浸漬させて、該再生セルロースゲル中の貧溶媒を水で完全に溶媒交換することにより、再生セルロースヒドロゲルが得られる。
再生セルロースゲルの製造に用いた貧溶媒が、得ようとするゲル中のゲル溶媒と異なる場合には、該貧溶媒をゲル溶媒に溶媒置換することが好ましい。
セルロース原料(a)を用いて形成された第一の架橋された網目構造(A)に、重合性不飽和結合を有する単量体(b)を導入した後、単量体(b)を重合させることにより分子鎖(B)を形成する。
方法(1):単量体(b)を重合させる工程において、単量体(b)を重合させて分子鎖(B)を形成するとともに、架橋させることにより、前記第一の架橋された網目構造(A)中に第二の架橋された網目構造(B1)が形成され、相互侵入型網目構造のゲルが得られる。
電気的に中性な単量体(b1)として例えば、アクリルアミド誘導体(アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等)、メタクリルアミド誘導体(メタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン等)、アクリレート(ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレートエステル化物、ポリエチレングリコールモノアクリレート誘導体等)、メタクリレート(ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレートエステル化物、ポリエチレングリコールモノメタクリレート誘導体等)、アクリロニトリル、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、酢酸ビニル等の水溶性のものや、アルキル(メタ)アクリレート(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートエステル化物、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート誘導体、反応性官能基を有する(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等)等の水溶性に乏しいノニオン性単量体が挙げられるがこれに限定されない。
電気的に中性な単量体(b1)として、上記ノニオン性単量体であって、分子量300以下の単量体を用いることが好ましい。このような単量体を使用すると、第一の架橋された網目構造(A)中に充分な量の単量体(b)を導入することが容易になるほか、重合が容易であり、また分子量が上がりやすいため、高強度ゲルの作製が容易となる。
電気的に中性な単量体(b1)として、特にゲルに高い靭性(延性)を持たせる点でアクリルアミドが好ましい。
熱重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物、アゾ系開始剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、アルキルフェノン系開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系開始剤等の一般的な光重合開始剤が挙げられる。
なお、第一の架橋された網目構造(A)が不透明で充分に光を透過しない場合には、熱重合開始剤によるラジカル重合法が好ましい。また、温度によって挙動の変わる不飽和単量体を用いる場合には、光重合開始剤による光重合法が好ましい場合もある。
単量体(b)の重合により形成される分子鎖(B)を架橋させて第二の架橋された網目構造(B1)とする方法としては、化学結合による架橋方法、イオン結合による架橋方法、物理的架橋方法等が挙げられる。
具体的には、下記の架橋方法が挙げられる。特殊な設備を必要としない、製造工程が複雑にならない、操作が簡便である、網目構造を制御しやすい点から、方法(α)が好ましいが、これらを併用することも可能である。
(α)1分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ以上有する多官能不飽和単量体(c)を単量体(b)とともに用いて、重合と同時に架橋する方法。
(β)単量体(b)を重合させた後、放射線照射によって、単量体(b)の重合により形成された分子鎖(B)中にラジカルを発生させて架橋する方法。
(γ)単量体(b)を重合させた後、分子鎖(B)を構成する単量体(b)に由来する単位の側鎖の官能基同士を直接反応させる方法。
(δ)単量体(b)を重合させた後、分子鎖(B)を構成する単量体(b)に由来する単位の側鎖の官能基同士を架橋剤で架橋する方法。
(ε)多価金属イオン(銅イオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン等)を用いて、イオン結合または配位結合によって架橋する方法。
架橋に用いる多官能不飽和単量体(c)としては、公知の架橋剤を用いることができ、例えば、下記に示すようなものが挙げられる。
これら多官能不飽和単量体(c)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
具体的には、溶媒に、単量体(b)等を溶解した単量体溶液を調製し、この単量体溶液中に第一の架橋された網目構造(A)を有するゲルを浸漬させ、溶媒置換によって、単量体(b)等をゲル中に吸収させる方法が好ましい。単量体溶液の溶媒は、得ようとするゲル中のゲル溶媒と同じであることが好ましい。
次いで、単量体(b)等が導入された第一の架橋された網目構造(A)に熱または光を与えることにより、単量体(b)を重合させ分子鎖(B)を形成する。該分子鎖(B)の架橋は、上述の方法を用いることができ、単量体(b)の重合と同時に行ってもよく、重合させた後に行ってもよい。
相互侵入型網目構造において、第一の架橋された網目構造(A)内のセルロースが有する反応性官能基と、単量体(b)とが反応して一部グラフト体等の重合体を形成していてもよく、
第一の架橋された網目構造(A)と第二の架橋された網目構造(B1)が、多官能不飽和単量体(c)によって一部架橋されていてもよく、
第一の架橋された網目構造(A)に単量体(b)が一部重合されて重合鎖が形成され、その重合鎖部分と第二の架橋された網目構造(B1)が、多官能不飽和単量体(c)によって一部架橋されていてもよく、
第一の架橋された網目構造(A)内のセルロースが有する反応性官能基と、第二の架橋された網目構造(B1)が、多官能不飽和単量体(c)によって一部架橋されていてもよく、相互侵入型網目構造の形態は多様に選択できる。
第一の架橋された網目構造(A)内のセルロースが有する反応性官能基とは、セルロース由来の水酸基、末端アルデヒド基等や、化学修飾されていているセルロース誘導体が有するカルボキシメチル基やヒドロキシエチル基等を意味する。
<試験方法>
[力学的強度の測定]
厚さ0.4mmに形成したゲルを、TOYOSEIKI社製、ダンベル金型(JIS−6251、3号)を用いてダンベル型に打ち抜き、試験片とした。
該試験片について、テンシロン万能試験機(型式 : RTC−1350A−PL)を使用し、JIS K 6251に基づいて引張試験を行い、破断応力[単位:MPa]および破断歪[単位:%]を測定した。測定条件は温度25℃で、相対湿度65%とした。
水酸化リチウム4.6g、尿素15g及び水80.4gを溶解させた水溶液100gに、粉末セルロース(製品名:CF11、whatman社製、コットンリンター由来、セルロース純度98%以上、平均重合度200)6.4gを加えた溶液を、容器に入れて密閉した。該容器を液体窒素に漬けて、攪拌しながら冷却し、該溶液が完全に凍結するまで攪拌を続けた。これを冷蔵庫(3〜7℃)に一晩放置することによって該溶液を完全に融解させ、セルロースが溶解した透明なセルロース溶液を得た。該セルロース溶液の少量をガラス板上に流延し、ガラス棒で引き伸ばすことによって厚さが均一な膜状に形成した後、濃度100質量%のメタノール水溶液に浸漬した。10分後、ゲル化したフィルムを水中に浸漬して洗浄し、第一の架橋された網目構造を有する、再生セルロースヒドロゲル(A−1)を得た。
再生セルロースヒドロゲル(A−1)について、含水率[単位:質量%]、全固形分(乾燥後質量)の含有量[単位:質量%]、力学的強度(破断応力および破断歪。以下、同様)を測定した。その結果を表1に示す(以下、同様)。
再生セルロースヒドロゲル(A−1)の全固形分の含有量(乾燥後質量)を、セルロースで構成された第一の架橋された網目構造(A)の含有量とみなす。
純水200gに、単量体(b)としてアクリルアミド(AAm)100g、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAAm)0.1g、および開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:dar1173、BASF社製)0.01gを加えて混合し、単量体溶液を調製した。
この単量体溶液に、合成例1で得られた再生セルロースヒドロゲル(A−1)を一昼夜浸漬し、溶媒置換によって単量体溶液をゲル中に吸収させた。
浸漬した再生セルロースヒドロゲル(A−1)を取り出し、ガラス板で上面から挟みこみ、ケミカルランプ(TOSHIBA社製、捕虫器用蛍光ランプ、20W、型番:FL20S・BL)を1時間照射して重合させることにより、相互侵入網目構造を有するゲル(PG−1)を得た。
ゲル(PG−1)について、含水率[単位:質量%]、全固形分(乾燥後質量)の含有量[単位:質量%]、力学的強度を測定した。
ゲル(PG−1)の全固形分の含有量(乾燥後質量)を、第一の架橋された網目構造(A)と分子鎖(B)の質量の合計とみなし、合成例1で得た再生セルロースヒドロゲル(A−1)の全固形分の含有量を第一の架橋された網目構造(A)の含有量とみなして、分子鎖(B)の含有量[単位:質量%]、および第一の架橋された網目構造(A)の質量を1とするときの分子鎖(B)の質量比[(B)/(A)]を算出した。
これらの結果を表1に示す(以下、同様)。
合成例1における粉末セルロースの質量を、6.4gから9.8gに変更した以外は同様の方法により、再生セルロースヒドロゲル(A−2)を得た。合成例1と同様に測定を行った。
<実施例2:相互侵入網目構造を有するゲル(PG−2)の製造>
実施例1における(A−1)のかわりに、再生セルロースヒドロゲル(A−2)を用いた以外は同様の方法により、相互侵入網目構造を有するゲル(PG−2)を得た。実施例1と同様に測定を行った。
合成例1における粉末セルロース6.4gを、無灰パルプ(Advantec社製、セルロース純度98%以上、平均重合度800)6.4gに変更した以外は同様の方法により、再生セルロースヒドロゲル(A−3)を得た。合成例1と同様に測定を行った。
<実施例3:相互侵入網目構造を有するゲル(PG−3−1)の製造>
実施例1における(A−1)のかわりに、再生セルロースヒドロゲル(A−3)を用いた以外は同様の方法により、相互侵入網目構造を有するゲル(PG−3−1)を得た。実施例1と同様に測定を行った。
実施例4は参考例である。
実施例3において、架橋剤であるMBAAmを使用しなかった以外は同様の方法により、セミ相互侵入網目構造を有するゲル(PG−3−2)を得た。実施例1と同様に測定を行った。
<実施例5:相互侵入網目構造を有するゲル(PG−4)の製造>
実施例3において、単量体(b)であるアクリルアミド(AAm)の使用量を100gから200gに変更した以外は同様の方法により、相互侵入網目構造を有するゲル(PG−4)を得た。実施例1と同様に測定を行った。
本例では、セルロースを用いない方法で第一の架橋された網目構造(A)を形成した。
すなわち、純水400gに、単量体として2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)100g、架橋剤としてMBAAm4g、開始剤として前記dar1173(製品名)0.1gを加えて混合し、AMPS水溶液を調製した。ガラス板上に円状のシリコン枠を貼り付け、その内側にAMPS水溶液を流し込み、上面からガラス板で液が漏れないように挟みこみ、ケミカルランプを1、5時間照射して重合させることにより第一の架橋された網目構造を有するゲル(B−1)を得た。
得られたゲル(B−1)を、実施例1で用いたのと同じ単量体溶液に一昼夜浸漬し、溶媒置換によって単量体溶液をゲル中に吸収させた。
浸漬したゲル(B−1)を取り出し、ガラス板で上面から挟みこみ、実施例1と同様にしてケミカルランプを1時間照射して重合させることにより、相互侵入網目構造を有するゲル(PB−1)を得た。
ゲル(PB−1)について、含水率[単位:質量%]、全固形分(乾燥後質量)の含有量[単位:質量%]、力学的強度を測定した。
比較例1においてAMPS水溶液の調製に用いた、架橋剤であるMBAAmの量を4gから6gに変更した以外は同様の方法により、相互侵入網目構造を有するゲル(PB−1)を得た。比較例1と同様に測定を行った。
実施例2では、実施例1に比べてゲル中のセルロース濃度を高くしたところ、破断応力が向上した。また(B)/(A)の質量比は小さくなり、破断伸びの値は低下した。
実施例3では、実施例1で使用した粉末セルロースよりもセルロースの平均重合度が高い無灰パルプを使用したことにより、破断応力および破断歪みが向上した。高重合度のセルロースを使用するほど、高強度なゲルが得られることがわかる。
参考例である実施例4では、分子鎖(B)が架橋していないセミ相互侵入網目構造としても、高強度なゲルが得られた。
実施例5では、実施例3よりも単量体(b)の使用量を多くして、(B)/(A)の質量比を高くしたところ、更に破断応力および破断歪みの値が向上した。よって、使用するセルロースの平均重合度を上げ、更にゲル中の単量体(b)の含有量を増やすことで、容易に高強度なゲルを得ることができる。
本発明のゲルは、第一の架橋された網目構造にセルロースを使用することにより、第一の網目構造を形成するのに重合する必要がなく、またバクテリアセルロースのような入手困難であるセルロース材料を用いる必要もなく、セルロースを溶解して再析出させるという簡単な手法を用いて高強度なゲルを実現できることを見出した。
また、比較例1及び比較例2で使用したAMPSに代表されるような電解質モノマーを
、第一の架橋された網目構造の形成に使用することなく、これに代えてセルロースを用いることで、ゲルの経時劣化や金属への腐食性が少なく、環境への負荷や生態への負荷も少ないゲルを得ることができる。よって、本発明のゲルは、近年求められている地球に優しいバイオベースポリマーとして幅広く展開することが可能である。
Claims (2)
- セルロース原料(a)を溶剤(s)に溶解させてセルロース溶液を調製する工程と、
該セルロース溶液を、セルロースに対する貧溶媒中に浸漬させて、第一の架橋された網目構造(A)を形成する工程と、
前記第一の架橋された網目構造(A)に、電気的に中性な単量体(b1)を含み、酸性基を含有する単量体を含まない重合性不飽和結合を有する単量体(b)及び架橋剤を導入する工程と、該単量体(b)を重合により架橋する工程を有することを特徴とするゲルの製造方法。 - 前記電気的に中性な単量体(b1)がアクリルアミド又はアクリルアミド誘導体である請求項1に記載のゲルの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011188303A JP6163287B2 (ja) | 2011-08-31 | 2011-08-31 | ゲルの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011188303A JP6163287B2 (ja) | 2011-08-31 | 2011-08-31 | ゲルの製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013049782A JP2013049782A (ja) | 2013-03-14 |
JP6163287B2 true JP6163287B2 (ja) | 2017-07-12 |
Family
ID=48012076
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2011188303A Expired - Fee Related JP6163287B2 (ja) | 2011-08-31 | 2011-08-31 | ゲルの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6163287B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5624201B1 (ja) * | 2013-12-05 | 2014-11-12 | 河村 良成 | 有機溶媒型つや消し塗料の作製法 |
CN112267167B (zh) * | 2020-10-14 | 2023-01-03 | 浙江理工大学 | 一种自愈性发光有机水凝胶纤维的制备方法 |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH07116248A (ja) * | 1993-10-20 | 1995-05-09 | Asahi Chem Ind Co Ltd | 改良された血液透析用再生セルロース膜及びその製造方法 |
WO2004112860A1 (ja) * | 2003-06-18 | 2004-12-29 | Hokkaido Technology Licensing Office Co., Ltd. | 細胞接着・増殖性材料 |
JP2009185248A (ja) * | 2008-02-08 | 2009-08-20 | Univ Of Tokyo | 固体成分として再生セルロース及び合成高分子を有する複合材料及びその製造方法 |
JP2011195655A (ja) * | 2010-03-18 | 2011-10-06 | Konica Minolta Holdings Inc | 繊維複合材料及びその製造方法 |
-
2011
- 2011-08-31 JP JP2011188303A patent/JP6163287B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2013049782A (ja) | 2013-03-14 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Li et al. | Dual ionically cross-linked double-network hydrogels with high strength, toughness, swelling resistance, and improved 3D printing processability | |
CN108047465B (zh) | 一种甲基丙烯酸酯明胶/壳聚糖互穿网络水凝胶、制备方法及应用 | |
WO2003093337A1 (fr) | Hydrogel a structure de reseau a semi-interpenetration et procede de production associe | |
CA2686927A1 (en) | Superporous hydrogels for heavy-duty applications | |
JP6884068B2 (ja) | 刺激硬化性ゲル | |
Rahmani et al. | Developing tough terpolymer hydrogel with outstanding swelling ability by hydrophobic association cross-linking | |
JPWO2009099210A1 (ja) | ハイドロゲルおよびその製造方法 | |
CN105199281A (zh) | 一种具备超高力学强度和化学稳定性的新型水凝胶 | |
JP2019510859A (ja) | ヒドロゲルを製造するための単一剤系又は多剤系組成物 | |
TW200744747A (en) | Nanogel contrast agents for optical molecular imaging | |
CN113801262A (zh) | 一种高强度凝胶及其制备方法 | |
JP6163287B2 (ja) | ゲルの製造方法 | |
Wang et al. | Facile preparation of low swelling, high strength, self-healing and pH-responsive hydrogels based on the triple-network structure | |
JP2011153174A (ja) | 有機無機複合ヒドロゲル及びその乾燥体並びにそれらの製造方法 | |
JP2009270032A (ja) | ハイドロゲルおよびその製造方法 | |
JP6414193B2 (ja) | 高分子ゲル及びその製造方法 | |
JP2019085521A (ja) | ポリビニルアルコール系相互貫入型ゲル | |
JP5556406B2 (ja) | ゲルおよびその製造方法 | |
JP2019112597A (ja) | 有機無機複合ヒドロゲル前駆体組成物、有機無機複合ヒドロゲル、有機無機複合ヒドロゲル接合物、及びその製造方法 | |
JP7251123B2 (ja) | 高分子ゲル製造用溶液、高分子ゲル、高分子ゲルの製造方法 | |
JP5723638B2 (ja) | 高分子架橋体および高分子架橋体の製造方法 | |
JP6618299B2 (ja) | ハイドロゲルの製造方法 | |
WO2019208576A1 (ja) | ハイドロゲル及びハイドロゲルの製造方法 | |
JP5644036B2 (ja) | ハイドロゲルおよびその製造方法 | |
KR102521317B1 (ko) | 메타크릴레이트가 결합된 알지네이트를 포함하는 하이드로겔 조성물 및 하이드로겔 제조방법 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20140811 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20150515 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20150519 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20150715 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20150825 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20151021 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20160105 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20160404 |
|
A911 | Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20160412 |
|
A912 | Removal of reconsideration by examiner before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912 Effective date: 20160506 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20170619 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6163287 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |