JP2019046570A - 膜電極接合体、燃料電池および膜電極接合体用電解質膜 - Google Patents

膜電極接合体、燃料電池および膜電極接合体用電解質膜 Download PDF

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Abstract

【課題】燃料電池の性能の低下やばらつきを抑制しつつ、薄型化が可能な膜電極接合体を提供する。【解決手段】電解質膜20の一方の面にアノード電極10、他方の面にカソード電極30が接合された膜電極接合体100であって、アノード電極10およびカソード電極30は、電解質膜20との重ね面の少なくとも一部の領域に形成され、触媒が担持された多孔質触媒層12、32と、電解質膜20との重ね面の反対面と多孔質触媒層12、32を連通するガス流路14、34と、を有し、電解質膜20は、多孔質触媒層12、32が凹部16、36を有する場合には凹部16、36に適合する凸部22を有する膜電極接合体。【選択図】図1B

Description

本発明は、膜電極接合体、燃料電池および膜電極接合体用電解質膜に関し、特に一体型の薄型構造を有する燃料電池に好適に用いられる膜電極接合体に関する。
近年、各種電気機器の携帯化、小型化及び高性能化に伴い、その電源となる小型電池の性能向上への要求が高まっている。また、これらの発展に伴って電池の更なる薄型化が要求されている。
小型化に適した電池としては、例えば、高分子電解質型の燃料電池が用いられており、各種研究開発が進められている。従来の高分子型燃料電池は、一般的に、燃料流路(セパレータ)、拡散層、触媒層、高分子型電解質膜、触媒層、拡散層、燃料流路(セパレータ)の7層構造を有するものが多い。また、従来の高分子型燃料電池では、炭素粉表面に微細な白金粒子を担持させた粉状の触媒が触媒層として用いられている。
しかし、この種の従来構造の燃料電池では、別工程で製造した触媒粉−電解質膜等、構成要素間の電気的接触抵抗を低減するため等の理由により、一対のセパレータで挟持された燃料電池を強い力で締め付ける必要がある。このため、燃料流路の強度確保の観点から従来の高分子型電池の薄型化にはおのずと限界があるといわれている。
一方、薄型化が可能で、かつ、高出力化も可能な燃料電池に用いられる構造体として、金属担持多孔質シリコンを用いた燃料電池用電極構造体が提案されている(特許文献1を参照)。
特開2007−119897号公報 特開2008−98070号公報
Kuriyama, Nariaki, et al. "Design and fabrication of MEMS-based monolithic fuel cells." Sensors and Actuators A: Physical 145 (2008): p.354-362. Esquivel, J. P., et al. "Fabrication and characterization of a passive silicon-based direct methanol fuel cell." Microsystem technologies 14.4-5 (2008): p.535-541. Esquivel, J. P., et al. "Towards a compact SU-8 micro-direct methanol fuel cell." Journal of Power Sources 195.24 (2010): p.8110-8115.
上記特許文献1に記載の金属担持多孔質シリコンを用いた燃料電池用電極構造体は、一方の面に多孔質層を有するシリコン基体をめっき液に浸漬し、シリコン基体の多孔質層に金属を析出させて触媒層を形成するものである。この電極構造体によれば、当該電極構造体で高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane)を挟みこむことによって厚さ300μm以下の燃料電池を構成することが可能である。
この金属担持多孔質シリコンの製造には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いることができる。MEMS技術とは、半導体集積回路などに使用される半導体製造プロセスや微細加工プロセスを利用し、機械的な機能と電気的な機能を合わせ持つ微小構造を製造する技術をいう。
一方、特許文献2に記載の膜電極接合体は、多孔質膜の細孔内に電解質ポリマーが充填された電解質膜を有し、その一方面にアノード電極、他方面にカソード電極が接合され、前記電極のうち少なくとも一方がMEMS技術を用いて形成されている。
ここで、特許文献1や特許文献2に記載の電極構造体を用いて燃料電池を作製するためには、高分子電解質膜と電極構造体を貼り合わせて接合する必要があるが、上記高分子電解質膜と電極構造体からなる膜電極接合体においては、次のような新規な課題があることが判明した。
すなわち、多孔質層を有するシリコン基体をめっき液に浸漬して多孔質触媒層を形成するに際し、形成された多孔質触媒層部分の少なくとも一部がシリコン基板面より数μmほど窪んでしまうことが分かった。そして、多孔質触媒層部分が窪んでしまうことにより、高分子電解質膜と電極構造体との間に空隙が生じやすくなる結果、これら部材間の密着性が低下してプロトン伝導が阻害され、高出力を得るための大面積化を図る上で、燃料電池の性能の低下やばらつきが引き起こされていることを見出した。
一方、堆積技術等により触媒層を形成する場合においては、触媒層がシリコン基板面から***する場合もあり(例えば、非特許文献1〜3参照)、この場合には、触媒層の***部以外の部分において、高分子電解質膜との間に空隙が生じやすくなるため上記と同様、あるいは***部が損傷する課題があることも見出した。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料電池の性能の低下やばらつきを抑制しつつ、薄型化が可能な膜電極接合体、燃料電池および膜電極接合体用電解質膜を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記電極構造体における多孔質触媒層に存在する凹部または凸部に適合した、凸部または凹部を有する電解質膜を採用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る膜電極接合体は、電解質膜の一方の面にアノード電極、他方の面にカソード電極が接合された膜電極接合体であって、
前記アノード電極および前記カソード電極のうち少なくとも一方は、前記電解質膜との重ね面の少なくとも一部の領域に形成され、触媒が担持された多孔質触媒層と、前記電解質膜との重ね面の反対面と前記多孔質触媒層を連通するガス流路と、を有し、
前記電解質膜は、前記多孔質触媒層が凹部を有する場合には前記凹部に適合する凸部を有し、前記多孔質触媒層が凸部を有する場合には前記凸部に適合する凹部を有することを特徴とする。
上記膜電極接合体における好ましい実施形態において、前記電解質膜は、多孔質高分子膜の孔内部に電解質ポリマーが充填されたものであることを特徴とする。
本発明に係る燃料電池は、上記膜電極接合体を用いたことを特徴とする。
本発明に係る膜電極接合体用電解質膜は、上記の膜電極接合体に用いられる電解質膜であって、前記電解質膜は、前記多孔質触媒層が凹部を有する場合には前記凹部に適合する凸部を有し、前記多孔質触媒層が凸部を有する場合には前記凸部に適合する凹部を有することを特徴とする。
上記膜電極接合体用電解質膜における好ましい実施形態において、前記電解質膜は、多孔質高分子膜の孔内部に電解質ポリマーが充填されたものであることを特徴とする。
本発明に係る膜電極接合体用電解質膜の製造方法は、上記の膜電極接合体用電解質膜の製造方法であって、プラズマエッチングにより前記多孔質高分子膜に前記凹部または前記凸部を形成する工程と、前記凹部または前記凸部が形成された前記多孔質高分子膜に電解質ポリマーを充填する工程と、を有することを特徴とする。
上記膜電極接合体用電解質膜の製造方法における好ましい実施形態において、前記プラズマエッチングを行う際の温度として、110℃未満の温度でエッチングを行うことを特徴とする。
本発明に係る膜電極接合体の製造方法は、上記の膜電極接合体用電解質膜の製造方法を用いて電解質膜を製造する工程と、得られた前記電解質膜を前記アノード電極および前記カソード電極で挟み込みホットプレスする工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、上記電極構造体における多孔質触媒層に存在する凹部または凸部に適合した、凸部または凹部を有する電解質膜を採用することにより、高出力を得るための大面積化を図る上で、燃料電池の性能の低下やばらつきを抑制しつつ、薄型化が可能な膜電極接合体、燃料電池および膜電極接合体用電解質膜を提供することができる。
図1Aは、本発明の一実施形態に係る膜電極接合体の端面図である。 図1Bは、本発明の一実施形態に係る膜電極接合体の斜視図である。 図2Aは、実施例で作製した凸部を有する多孔質電解質膜の上面図である。 図2Bは、実施例で作製した凸部を有する多孔質電解質膜の正面図である。 図3は、実施例に係る燃料電池における、セル電圧、電流密度および出力密度特性を示すグラフである。 図4は、比較例に係る燃料電池における、セル電圧、電流密度および出力密度特性を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
<膜電極接合体の基本構成>
図1Aは、本発明の一実施形態に係る膜電極接合体の端面図であり、図1Bは、その斜視図である。本実施形態に係る膜電極接合体100は、電解質膜20の一方の面にアノード電極10、他方の面にカソード電極30が接合されて構成される。アノード電極10およびカソード電極30は、電解質膜20との重ね面の少なくとも一部の領域に触媒が担持された多孔質触媒層12、32を各々有している。また、アノード電極10およびカソード電極30は、燃料または酸化剤の流路となるための、電解質膜20との重ね面の反対面と多孔質触媒層12、32を連通する貫通孔であるガス流路14、34を各々有している。
また、アノード電極10およびカソード電極30における、電解質膜20との重ね面の反対面側には、発電された電気を集電するためのアノード側集電層18およびカソード側集電層38を各々有している。更に、多孔質触媒層12、32とアノード電極10またはカソード電極30との導通をより確実にするため、アノード電極10およびカソード電極30の電解質膜20との重ね面側には、多孔質触媒層12、32と接触するように集電体層19、39が形成されている。
上記膜電極接合体を用いた燃料電池の動作について説明する。アノード電極10に設けられたガス流路14に水素含有燃料が供給されると、水素含有燃料は多孔質触媒層12へ移動する。多孔質触媒層12に担持された白金などの触媒作用により、水素含有燃料中の水素分子は、電子と水素イオン(H)に分解される。この電子は、多孔質触媒層12から集電体層19、アノード電極10、アノード側集電層18を経由し、外部導線(図示せず)を介して、カソード側集電層38、カソード電極30、集電体層39、多孔質触媒層32を経由して、電流が流れる。
一方、多孔質触媒層12で生成した水素イオン(H)は、電解質膜20を介して多孔質触媒層32まで移動する。多孔質触媒層12で生成した水素イオン(H)は、カソード電極30に設けられたガス流路34より供給され、多孔質触媒層32へ移動した空気などの酸化剤中の酸素と、外部導線を介して移動してきた電子と結合して、水(HO)が生成される。
ところで、MEMS技術を適用した上記電極構造体(アノード電極10またはカソード電極30)は、従来の燃料電池では別々の部分として構成されるセパレータ、ガス拡散層、触媒層を1枚のシリコン基板に一体形成されるものである。これにより、各層間の電気的導通を確保するために締結する工程がなくなり、薄型化を実現している。また、シリコン基板上に燃料流路を形成しており、かつ、触媒層に用いる白金などは多孔質形状となっているので、ガス拡散層の役割も担っている。
詳細は後述するが、この一体化された電極構造体を製造するに当たり、シリコン基板に多孔質触媒層を形成する必要がある。この際、シリコン基板をフッ酸溶液中で陽極酸化処理を行うことで、多孔質シリコン層を形成する。その後、フッ酸を添加した白金めっき液に多孔質シリコン層を浸漬させ多孔質白金層に改質する。
この多孔質触媒層の形成において、本発明者らは、シリコンが白金に置換されることにより多孔質形状が収縮してしまい、形成された多孔質触媒層の少なくとも一部がシリコン基板面よりも数μmほど窪んでしまうことを見出した。
また、一体化された電極構造体を用いた燃料電池の実用化に向け、反応領域を拡大して出力を増大させようとした場合に、反応領域の拡大に伴い出力密度が激しくばらつき、性能が低下傾向にあることが分かった。本発明者らは、この性能低下の一因として、窪みが生じた多孔質触媒層と高分子電解質膜との間に空隙が生じやすくなる結果、これら部材間の密着性が低下してプロトン伝導が阻害されているものと考えた。
そこで本実施形態にかかる膜電極接合体100においては、電極構造体における多孔質触媒層12、32に存在する凹部16、36に適合する形の凸部22を有する電解質膜20を採用する。
これにより、たとえ多孔質触媒層12,32の一部に窪みが生じていたとしても、多孔質触媒層12、32の凹部16、36に適合して電解質膜20の凸部22が密着するため、多孔質触媒層12、32と電解質膜20との間の空隙を極力減らすことが可能となる。結果としてプロトン伝導性が良好となり、燃料電池の性能低下やばらつきを改善することができる。
なお、上記「適合する」とは、多孔質触媒層12、32の凹部16、36と電解質膜20の凸部22とは出来る限り隙間のないように重ね合わせることができるよう、電解質膜20の凸部22の表面形状が、多孔質触媒層12、32の凹部16、36の表面形状に倣っていることを示す。一方、多孔質触媒層12、32が凸部を有する場合には、電解質膜20の凹部の表面形状が、多孔質触媒層12、32の凹部の表面形状に倣っているという意味である。
<膜電極接合体の詳細>
次に、上記構成の膜電極接合体100における各構成要素につき詳細に説明する。
(電極)
本実施形態に係る膜電極接合体100のアノード電極10、カソード電極30(本明細書において、まとめて「電極」または「電極構造体」と呼ぶことがある。)は、電解質膜20との重ね面の少なくとも一部の領域に形成され、触媒が担持された多孔質触媒層12、32と、燃料または酸化剤の流路となるための、電解質膜20との重ね面の反対面と多孔質触媒層12、32を連通する貫通孔であるガス流路14、34を各々有する。そして、アノード電極10、カソード電極30は、上記MEMS技術を用いて形成されている。
これまで電極といえば、触媒層と拡散層が積層された二層構造を有しており、燃料や酸化剤を供給する流路を有するセパレータや、発電された電気を集電する集電体などは、別部材とされることが主流であった。
しかし、上記MEMS技術を用いることで、極めて微小な構造を作り込むことが可能である。このため、従来の電極、セパレータ、集電体などのような別部材として各部材を作製する必要性も小さくなってきている。すなわち、触媒機能および拡散機能のみならず、燃料や酸化剤の供給機能や集電機能をも取り込んだ形で、一体部材として電極を作製することが可能である。
なお、上記電極における多孔質触媒層12、32は、多孔質構造を有することで従来のガス拡散層としての機能を果たすだけでなく、白金などの触媒から構成されることから従来の触媒層としても機能も果たす。すなわち、多孔質触媒層12、32は、ガス拡散層兼触媒層として機能する。
ここで、多孔質触媒層12、32は、ガス流路14、34と接する面から電解質膜20と接する面まで貫通する貫通孔を多数有している。この多孔質層においては、少なくとも一部が上記貫通部分を有していれば、非貫通孔が存在していても構わない。
この場合、上記貫通孔は、多孔質層の表面に対してほぼ垂直に貫通していても良く、膜面に対して90°未満の角度で傾斜して貫通していても良い。また、蛇行、ジグザク状など、ランダムに貫通していても良い。
上記貫通孔の断面形状は、特に限定されるものではない。貫通孔の断面形状としては、円形、楕円形、多角形、これらが連接された形、これらの組み合わせなどを例示することができる。
上記多孔質触媒層12、32の空孔率の上限としては、高い機械的強度を確保し、触媒層の電気抵抗を低く保つなどの観点から、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、75%以下が更に好ましい。一方、上記多孔質触媒層12、32の空孔率の下限としては、燃料などの供給、触媒層形成プロセスなどの観点から、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。
なお、上記空孔率は、多孔質触媒層12、32の原材料(白金などによる改質する前の材料)が多孔質シリコンの場合、陽極酸化による多孔質化前後の重量測定、および、断面観察による多孔質層の体積計測から求めることができる。
多孔質触媒層12、32の孔部径の上限としては、燃料透過性などの観点から、100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。一方、多孔質触媒層12、32の孔部径の下限としては、触媒層形成プロセスなどの観点から、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましい。
なお、上記孔部径は、電子顕微鏡観察により求めることができる。
上記電極構成において、触媒は、多孔質触媒層12、32の孔部表面に担持されている。あるいは、触媒金属自体が多孔質触媒層12、32を形成している。
上記触媒は、比較的安価なめっき技術を用いることができる点、触媒が孔部から脱落し難い点などの観点から、めっきにより孔部表面に担持されていることが好ましい。
上記触媒は、多孔質触媒層12、32上の全域に分布していても良いし、多孔質触媒層12、32の電解質膜20側の表面からガス流路14、34側に向かって、多孔質触媒層12、32の厚さに満たない距離にわたって分布しているなどしていても構わない。
触媒含有量の上限としては、10mg/cm以下が好ましく、5mg/cm以下がより好ましい。触媒含有量が多すぎると、白金などの触媒の粒径が大きくなり、触媒の重量当たりの利用効率が低下しやすい。一方、粒径を小さいままにする場合は触媒層を厚くしなければならず、電解質膜から遠い場所における触媒利用率が低下してしまう傾向があるからである。一方、触媒含有量の下限としては、性能維持の観点から、0.001mg/cm以上が好ましく、0.01mg/cmがより好ましい。
上記電極構成において、集電体層19、39は、多孔質触媒層12、32を形成した面に形成される。電極に多孔質触媒層12、32を形成しただけでは、多孔質触媒層12、32とシリコン基板(アノード電極10、カソード電極30)との導通が不確実であるため、発電時に生じた電子を十分に取り出せない可能性がある。そこで、金などの導電性薄膜を成膜することにより導通を確実にすることが目的である。
このとき、多孔質触媒層12、32をすべて金などの薄膜で被覆してしまうと、燃料供給時に水素イオン(H)がアノードからカソードに移動する際に障害となってしまう可能性があるため、多孔質触媒層12、32の少なくとも一部の領域に薄膜を形成する。
本実施形態に係る電極の材料としては、例えば、チタン、ニッケル、それらの合金などの導体材料、シリコン、ゲルマニウム、セレンの単体にイオンをドープしたものやGaAs、GaP、InP、CdTe、ZnSe、SiCなどの化合物半導体にイオンドープしたものなどの半導体材料などを好適なものとして用いることができる。好ましくは、半導体材料を好適に用いることができる。
半導体材料の中では、半導体加工技術を応用できる点と、加工がしやすいなどの観点や化合物半導体は割れやすいなどの観点から、シリコンを最も好適なものとして用いることができる。
上記シリコンとして、例えばエッチング速度が比較的速いn型シリコンを好適に用いることができる。電気エネルギーのロスを小さくするなどの観点から、その抵抗率が好ましくは0.01Ω以下、より好ましくは、0.005Ω以下であるハイドープn型シリコンを最も好適に用いることができる。
上記触媒材料としては、白金、白金−ルテニウム合金、パラジウム、白金−コバルト合金、白金−鉄合金などの貴金属、貴金属合金を例示することができる。これらは1種でも良く、2種以上含まれていても良い。
なお、カソード電極用の触媒としては、白金などを好適に用いることができる。また、アノード電極用の触媒としては、一酸化炭素による触媒の被毒を軽減しやすい、白金−ルテニウム合金などを好適に用いることができる。
上記集電体層19、39用材料としては、銅、銀、金、白金、パラジウム、これらの合金、ステンレスなどを例示することができる。これらは1種でも良く、2種以上含まれていても良い。
電極の厚みは、特に限定されるものではなく、軽量化や電気抵抗などを考慮して適宜設定することができる。電極の厚みの上限としては、軽量化、小型化などに有利であるなどの観点から、1mm以下が好ましい。一方、電極の厚みの下限としては、過度に薄くなると、燃料などの流路を確保し難くなったり、MEMSプロセス時のハンドリングが悪くなるなどの観点から、0.05mm以上が好ましい。
多孔質触媒層12、32の厚みの上限としては、厚くなりすぎると、抵抗が大きく、電池性能が低下するなどの観点から、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましい。一方、多孔質触媒層12、32の厚みの下限としては、薄すぎると強度が保てず崩壊しやすくなるなどの観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましい。
集電体層19、39の厚みの上限としては、厚すぎるとめっき応力で破損しやすくなるなどの観点から、10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。一方、集電体層の厚みの下限としては、薄すぎると抵抗が発生するなどの観点から、10nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。
上記電極における燃料の流路となるガス流路14および酸化剤の流路となるガス流路34の流路形状は、燃料または酸化剤を供給することができるものであれば、特に限定されるものではない。図1Aおよび図1Bに示すような流路形状以外に、燃料電池セパレータに良く用いられるサーペンタイン形状(シングルサーペンタイン、マルチサーペンタイン形状など)や、渦巻形状に形成されたガス流路などであっても良い。
(電解質膜)
本実施形態に係る電解質膜20は、電極における多孔質触媒層12、32に存在する凹部16、36に適合する形の凸部22を有している。図1Aおよび図1Bに示す通り、本実施形態においては、電解質膜20の面内方向の中央部に円形状の凸部22が、電解質膜20の上下面それぞれに形成されている。
この凸部形状は、単に電解質膜20の表面に凸部22が形成されていれば良いものではなく、重ね合わされて接合される電極の多孔質触媒層12、32に生じた凹部16、36に適合する形を有することが重要である。また、電解質膜20の表面に微小な凹凸を設けることで、対向する電極との接触面積を増加させるものとは技術的思想が異なる。本構成を有することにより、上述の通り、多孔質触媒層12、32と電解質膜20との間の空隙を極力減らすことが可能となり、結果としてプロトン伝導性が良好となり、燃料電池の性能低下やばらつきを改善することができる。
なお、本実施形態においては多孔質触媒層12、32に凹部16、36が存在し、電解質膜に凸部22を形成したものを用いる場合を説明しているが、多孔質触媒層12、32の一部が盛り上がってしまうことにより多孔質触媒層12、32に凸部が存在する場合には、電解質膜20にはそれに適合する凹部を設けるものとする。
電解質膜20は、上記の凸部22を有するものであれば、例えばナフィオン(登録商標:デュポン社製)などの電解質膜単体から構成されるものであっても構わない。しかし、ナフィオン膜やこれと同等のフッ素系電解質膜は、アルコールや水を吸収して膨潤し、その表面積が増加しやすいという性質を有している。このため、多孔質触媒層12、32の凹部16、36に適合した形の凸部22を電解質膜20に設けた場合において、燃料電池の発電と停止の繰り返しにより電解質膜20が膨潤状態と乾燥状態に交互に曝され、その度に電解質膜20の表面積変化が生じる影響により、燃料電池の長期運転時には多孔質触媒層12、32と電解質膜20との間に空隙が生じてしまうおそれがある。また、MEMS技術により形成された電極が破損(劣化)してしまうおそれもある。
そこで、本実施形態の膜電極接合体100に用いる電解質膜20としては、上記凸部22を有する多孔質高分子膜の孔内部に電解質ポリマーが充填されたものであることが好ましい。この耐熱性や化学的安定性を有する多孔質基材マトリックスに電解質ポリマーを充填した電解質膜20によれば、多孔質基材が電解質膜20の強度を保持し、内部に充填する電解質ポリマーによって水素イオン伝導性を発現することができる。そして、数十〜数百nm以下の細孔に電解質が充填されているため、含水時における電解質膜20の膨潤が大きく抑制される。このため、多孔質触媒層12、32の凹部に適合した形の凸部22を有する電解質膜20として、多孔質高分子膜の孔内部に電解質ポリマーが充填されたものを用いれば、電解質膜20の膨潤を抑制することができ、結果として多孔質触媒層12、32の凹部16、36と電解質膜20の凸部22との密着性を損なわない。結果として、燃料電池のより長期的な運転が可能となる。
[多孔質高分子膜]
上記多孔質高分子膜としては、その内部に多数の微細空間(空孔)を有し、その微細空間が厚み方向一方面および他方面に連通しているポリオレフィン系膜が好適に用いられる。なお、凸部22を有する多孔質高分子膜は、後述する電解質膜の製造方法において、例えばプラズマエッチングにより製造され得るものであるが、この凸部22は、電極の多孔質触媒層12、32に対向してプロトン伝導を行う必要があるため、凸部22の表面の少なくとも一部は、その微細空間が厚み方向一方面および他方面に連通している必要がある。
ポリオレフィン系多孔質膜を構成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレンコポリマー、および、これらの混合物が挙げられる。ポリオレフィン系多孔質膜としては、好ましくは、耐久性の観点から、ポリエチレンを主成分として含有するポリエチレン系多孔質膜が挙げられる。
ポリオレフィン系多孔質膜は、ポリオレフィン系膜を延伸して多孔化された延伸多孔質膜であってもよく、ポリオレフィン系膜を未延伸の状態で多孔化された未延伸多孔質膜であってもよい。好ましくは、機械的強度の観点からは、延伸多孔質膜が挙げられる。延伸多孔質膜としては、一軸方向に延伸された一軸延伸多孔膜、互いに直交する二軸方向に延伸された二軸延伸多孔膜が挙げられる。好ましくは、強度のバランスから、二軸延伸多孔膜が挙げられる。
ポリオレフィン系多孔質膜は、単層のポリオレフィン系多孔質膜から構成されていてもよい。あるいは、複数のポリオレフィン系多孔質膜を有する多層多孔質膜、または、少なくとも1つのポリオレフィン系多孔質膜および他の多孔質膜を有する多層多孔質膜であってもよい。また、複数のポリオレフィンをブレンドした多孔質膜や、ポリオレフィンに無機物や耐熱性樹脂をブレンドした多孔質膜などを用いるのでもよい。
ポリオレフィン系多孔質膜の空孔率は、例えば、10%以上、好ましくは、20%以上であり、また、例えば、80%以下、好ましくは、70%以下である。空孔率は、10cm×10cmのポリオレフィン系多孔質膜からなる試料を用意し、その試料体積(cm)および質量(g)を測定し、「空孔率(%)=(1−質量/(樹脂密度×試料体積))×100」の式を用いて算出することができる。
ポリオレフィン系多孔質膜の透気度(ガーレー値)は、例えば、1000秒/100cc以下、好ましくは、500秒/100cc以下であり、また、例えば、10秒/100cc以上、好ましくは50秒/100cc以上である。透気度は、JIS−P8117に準拠した方法により測定することができる。
ポリオレフィン系多孔質膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
[電解質ポリマー]
上記電解質ポリマーとしては、主鎖および/または側鎖に1種または2種以上の電解質基を有するポリマー、酸、常温溶融塩などの電解質を含ませたポリマーなどを好適なものとして例示される。これらポリマーは1種または2種以上含まれていても良い。また、これらポリマーは必要に応じて架橋された架橋体であっても構わない。
また、電解質ポリマーは、孔部内に充填される前からポリマーとして存在するものであっても良いし、電解質ポリマーを生成可能なポリマー前駆体が孔部内に充填された後、重合、架橋などが行われて電解質ポリマーとされたものであっても良い。なお、電解質ポリマーの具体的な充填方法については、後記の電解質膜の製造方法にて説明する。
電解質ポリマーに含まれる電解質基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、ホスホン酸基、亜ホスホン酸基、カルボン酸基などの酸性基が例示される。これらは1種または2種以上含まれていても良い。これらのうち、高プロトン伝導性が得られやすいなどの観点から、スルホン酸基を好適に用いることができる。
電解質ポリマーとしては、ナフィオン(登録商標)などのパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマーなど、ポリマー骨格の全部または一部がフッ素化されたフッ素系ポリマーであって電解質基を有するもの;ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸など、ポリマー骨格にフッ素を含まない炭化水素系ポリマーであって電解質基を有するもの;電解質基を有するモノマー、電解質基に変換し得る官能基を有するモノマー、および、重合前後に電解質基を導入可能な部位を有するモノマー、これらの組み合わせなどからなる電解質モノマーを単量体単位として有するポリマーなどが例示される。これらは1種または2種以上含まれていても構わない。
電解質基を有するモノマーとしては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、ビニルホスホン酸、酸性リン酸基含有(メタ)アクリレートなどが例示される。なお、「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を、「(メタ)アリル」は「アリルおよび/またはメタリル」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。
上記重合前後に電解質基に変換し得る官能基を有するモノマーとしては、上記化合物の塩、無水物、エステルなどが例示される。使用するモノマーの酸残基が塩、無水物、エステルなどの誘導体となっている場合には、重合後にプロトン酸型にすることでプロトン伝導性を付与することができる。
上記重合前後に電解質基を導入可能な部位を有するモノマーとしては、スチレン、α―メチルスチレン、クロロメチルスチレン、t−ブチルスチレンなどのベンゼン環を有するモノマーが例示される。なお、これらに電解質基を導入する方法としては、クロロスルホン酸、濃硫酸、三酸化硫黄などのスルホン化剤でスルホン化する方法などが挙げられる。
これら電解質モノマーとしては、プロトン伝導性に優れるなどの観点から、スルホン酸基を有するビニル化合物、リン酸基を有するビニル化合物などが好ましく、より好ましくは、高い重合性を有するなどの観点から、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などである。
上記電解質ポリマーは、高イオン伝導性が得られるなどの観点から、実質的に、上記多孔質膜の孔部のほぼ全てに充填されていることが好ましい。ただし、多孔質膜が有する全ての孔部に電解質ポリマーが充填されていなければならないわけではなく、イオン伝導性、燃料の透過性などに悪影響を及ぼさない範囲内であれば、電解質ポリマーが充填されていない孔部が部分的に存在していても構わない。
<膜電極接合体の製造方法>
続いて、上記構成の膜電極接合体100の製造方法について詳細に説明する。
(電極の製造方法)
上記電極を製造するに当たっては、上述のMEMS技術を利用して行う。具体的には、シリコンウェハなどの一定の厚みを有する基板の一方面を、貫通しない深さでエッチングをしてガス流路14、34を形成する工程と、ガス流路14、34の底部から基板の反対面に至るまでの間を多孔質化してシリコン多孔質層を形成する工程と、シリコン多孔質層の孔内部に白金などの触媒を担持させる工程と、を有する方法が挙げられる。
上記電極形成方法におけるエッチングは、湿式エッチングであっても良いし、プラズマエッチングなどの乾式エッチングであっても良い。電極材料、流路形状などを考慮して適宜選択することができる。
基板の一部を多孔化する方法は、電極材料としてシリコンを用いた場合には、陽極酸化法などを挙げることができる。シリコン多孔質層の孔径や形状、層厚などは、使用するシリコン単結晶の抵抗率、陽極酸化時の電流密度、陽極酸化時間、陽極酸化液の液組成、濃度、液温などのパラメータを適宜調整することより、制御することが可能である。
陽極酸化時の電流密度の上限としては、電解研磨を生じ難くし、多孔化を促進させやすいなどの観点から、10000A/m以下が好ましく、5000A/m以下がより好ましく、2000A/m以下が更に好ましい。一方、陽極酸化時の電流密度の下限としては、空孔率が小さくなりすぎないなどの観点から、1A/m以上が好ましく、10A/m以上がより好ましい。
上記陽極酸化液としては、例えば、フッ酸、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウムなど、水、アルコールなどに溶解してフッ素イオンを生成する化合物を1種又は2種以上、水やアルコールなどの適当な溶媒に溶解した液を挙げることができる。なお、陽極酸化液におけるフッ素イオンの濃度は、通常、0.5mol/dm〜25mol/dm程度とすれば良い。
上記陽極酸化液の液温の上限としては、反応の均一性などの観点から、25℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。一方、上記陽極酸化液の液温の下限としては、反応速度の観点から、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
続いて、多孔質層の孔部内に触媒を担持させる方法としては、無電解めっき、電解めっきなどのめっき法、スパッタ法、金属コロイドの吸着などを挙げることができる。これらの方法のうち、孔部内に触媒を保持しやすい、比較的制御が容易で、安価な方法である、触媒担持方法として確立されているなどの観点から、めっき法が好適に用いられる。
めっき法に用いるめっき液は、担持させる触媒金属を構成元素として含む可溶性塩を1種または2種以上、水などの適当な溶媒に溶解させるなどして調製することができる。この際、多孔質層材料としてシリコンを用いた場合、無電解めっきを行う際には、めっき液中に、フッ酸などを用いてフッ素イオンを含有させることが好ましい。
シリコンよりもイオン化傾向が小さい白金などの触媒金属は、シリコンから出た電子を受け取り、還元されて自然析出し、めっきが進行する。しかし、めっき進行に伴い、孔部表面にめっき進行の障壁となる絶縁膜(酸化シリコン膜)が形成されることが考えられる。そのため、この絶縁膜の形成が、フッ素イオンの存在によって抑制され、めっきを進行させやすくなるためである。
上記めっき液の液温の上限としては、核成長などの観点から、25℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。一方、上記めっき液の液温の下限としては、反応速度の観点から、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましい。
次に、上記電極の製造方法における具体的な一例を説明する。
本実施形態に係る電極の製造方法として、例えば、(1)燃料流路のパターニング、(2)多孔質シリコン層の形成、(3)多孔質白金層の形成、(4)集電体(集電膜)の形成、(5)燃料流路の形成、の流れで電極を製造することができる。
より具体的な一例としては以下の手順で電極を作製することができる。
1.酸化膜付きのシリコンウェハから、ダイシングにより所定形状のチップを切り出す。
2.切り出したシリコンチップをフッ酸に浸漬させ、表面の酸化膜を除去する。
3.シリコンチップの片側に対し、真空蒸着よりCu薄膜を成膜する。
4.成膜したCu薄膜上に、ポジ型フォトレジストをスピンコートし、その後に所定時間ベークする。
5.チップの上にフォトマスクを被せて、その上から紫外線照射し、フォトリソグラフィを行う。その後チップに現像液を滴下し、所定時間で現像を行う。
6.FeCl(II)によりパターニングされた部分のCuを除去する。
7.アセトンによってフォトレジストを除去する。
8.燃料流路をパターニングした面の裏面をフッ酸溶液(水、エタノール、HF混合溶液)で浸漬し、電流を印加することにより陽極酸化を行う。これにより多孔質シリコン層を形成する。
9.多孔質シリコン部分を、フッ酸を添加した白金めっき液に浸漬させ、多孔質白金に改質する。
10.触媒層側の面にI型マスクを被せ、スパッタリングによりAu(集電体層)を成膜する。
11.Cuをエッチングマスクとして、プラズマエッチングによって燃料流路を形成する。この際、多孔質白金層がエッチングストップ層としての役割を果たす。
(電解質膜の製造方法)
本実施形態に係る電解質膜の製造方法として、多孔質高分子膜の孔内部に電解質ポリマーが充填されたものを製造する例について説明する。なお、本発明に係る電解質膜は、必ずしも多孔質高分子膜を有する必要はなく、例えば電解質ポリマー単体により形成される場合も含まれる。
[多孔質高分子膜の準備]
多孔質膜を得るための方法としては、その材質により異なるが、延伸による方法、造孔材を分散させた膜材料の溶液または溶融物を膜状に塗工し、溶剤を揮発除去したり、溶融状態の膜材料を冷却するなどして膜状にし、造孔材を除去して孔部とする方法、膜状に形成された膜材料に対して、パンチング、ドリリング、レーザー、化学的・物理的エッチングなどの加工手段を用いて孔部を形成する方法、孔部を転写可能な鋳型に高分子などの膜材料の融液を流し込んだ後、これを剥離することにより、膜面に孔部を転写する方法などを挙げることができる。
多孔質膜の材質が高分子である場合、最も一般的な方法は、延伸による方法である。すなわち、この方法では、高分子などの膜材料と液状または固体の造孔材とを溶融混合などの方法で混合し、造孔材を一旦微分散させておき、これをTダイなどから押し出しながら延伸し、洗浄などの方法によって造孔材を除去し、多孔質膜とする。
延伸方法としては、1軸延伸や2軸延伸などの方法がある。なお、延伸の比率や、造孔材の比率や種類、配合量、膜材料の種類などによって孔部の形状などを決定することができる。
上記多孔質膜が、疎水性の高分子材料から形成されている場合、この多孔質膜の表面のうち、少なくとも一方面は、親水処理されていても良い。親水性の高い電解質材料を孔部内に含浸させる場合に、多孔質膜が予め親水化されていれば、孔部内への含浸性が向上し、膜電極接合体の製造性を向上させることができるからである。
上記親水処理の方法としては、具体的には、例えば、界面活性剤処理、コロナ処理、スルホン化処理、親水性ポリマーのグラフト処理などを例示することができる。これら処理は、1または2以上併用しても良い。
[プラズマエッチングによる多孔質高分子膜の加工]
上記で準備された多孔質高分子膜に対し、電極に形成された多孔質触媒層の窪みに適合するよう、多孔質高分子膜の加工を行う。
多孔質高分子膜の加工方法としては、例えば、凸部を形成する場所以外の部分を加熱プレスする方法や、プラズマエッチングを行う方法、ケミカルエッチング、サンドブラストなど種々のものが考えられる。
ここで、多孔質触媒層に存在する凹部または凸部に適合する、電解質膜の凸部または凹部は、上記の[多孔質高分子膜]で説明したように、電極の多孔質触媒層に対向してプロトン伝導を行う必要があるため、その微細空間が厚み方向一方面および多方面に連通していることが要求される。
このため、電解質膜において多孔質触媒層に対向する面に凸部を設ける場合には、凸部を形成する場所以外の部分を熱プレスしたとしても、凸部表面の空孔は維持されるため特に問題はない。一方、電解質膜において多孔質触媒層に対向する面に凹部を設ける場合には、凹部を設ける部分に高温・高圧で熱プレスを行うと、凹部表面の空孔がつぶれてしまう結果、プロトン伝導を阻害する恐れがあるので、適用可能な凹部形成に限界がある。この場合には、処理後においても表面の空孔が保持されやすいプラズマエッチングを行うことが好ましい。
なお、プラズマエッチングは、ドライエッチングに分類される。ドライエッチングでは化学反応に加え、高エネルギーを持つイオンが試料表面に向かって衝突し、被加工物を弾き飛ばすスパッタ効果などの物理的な力も作用する。プラズマエッチングは、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)とも呼ばれる。
プラズマエッチングにより多孔質高分子膜に凸部または凹部を形成するに当たっては、凸部を形成する箇所にCuなどのマスクを施し、Cuなどのマスクで覆われていない部分のエッチングを行い、凹部を形成する。
上記プラズマエッチングを行う際の温度としては、110℃未満の温度でエッチングを行うことが好ましい。上記温度が110℃以上であると、多孔質高分子膜の温度上昇により、多孔質高分子膜が変形したり変色したりするおそれがある。
また、110℃未満の温度でエッチングを行うに当たっては、装置にもよるが例えば、出力100Wにおけるプラズマエッチングを行う際の時間として、1回あたりのエッチング時間を4分未満とすることが好ましい。更に、多孔質電解質膜を設置する台の内部に冷却水を通すなどして、多孔質電解質膜を冷却しながら加工を行うことが好ましい。また更に、多孔質高分子膜と台との間の冷却効果を高めるために、多孔質高分子膜と台との間に粘着テープや低蒸気圧油などを介することも好ましい。
[電解質ポリマーの充填]
上記多孔質高分子膜の孔部内に電解質ポリマーを充填する方法は、特に限定されるものではない。電解質ポリマーの溶液もしくは分散液または溶融状態の電解質ポリマーを孔部内に含浸させる方法、電解質ポリマーのポリマー前駆体の溶液もしくは分散液または溶融状態のポリマー前駆体を孔部内に含浸させた後、孔部内に含浸されたポリマー前駆体を重合したり、重合後に、電解質基に変換し得る官能基を電解質基に変換したりするなどして、電解質ポリマーを生成させる方法などを挙げることができる。
上記含浸方法としては、上記溶液などに多孔質高分子膜を浸漬する方法、上記溶液や溶融物を多孔質高分子膜に各種の塗工方法(ダイコート法、コンマコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、リバースコート法など)を用いて塗工する方法などを挙げることができる。これらは1種または2種以上併用しても構わない。
なお、上記含浸時には、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤(光重合開始剤、熱開始剤、レドックス系開始重合開始剤など)、硬化剤、界面活性剤などを1種または2種以上添加しても良い。
上記ポリマー前駆体を用いる場合、このポリマー前駆体には、上述した電解質モノマーが少なくとも1種以上含有される。さらに、必要に応じて架橋剤を含有させても良い。
この場合には、電解質ポリマーの生成時に架橋点を形成することができるので、電解質ポリマーの架橋体を形成しやすくなる。そのため、電解質膜の孔部内に充填された電解質ポリマーの不溶性および不融性が向上し、孔部から脱落し難くなる。
上記架橋剤としては、1分子中に重合可能な官能基を2個以上有する化合物、1分子中に重合性二重結合とその他の架橋反応が可能な官能基を合わせ持つ化合物などを挙げることができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記1分子中に重合可能な官能基を2個以上有する化合物としては、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−プロピレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ブチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルアミン、ジアリルオキシ酢酸塩などの架橋性モノマーを挙げることができる。
上記1分子中に重合性二重結合とその他の架橋反応が可能な官能基を合わせ持つ化合物としては、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどの架橋性モノマーを挙げることができる。これらは、重合性二重結合のラジカル重合を行った後で加熱して縮合反応などを起こさせて架橋するか、ラジカル重合と同時に加熱を行って同様の架橋反応を起こさせることができる。
なお、上記架橋剤は、炭素−炭素二重結合を有する化合物に限られず、重合反応速度はやや小さいものの、2官能以上のエポキシ化合物、ヒドロキシメチル基を有するフェニル基などを有する化合物なども使用することもできる。上記エポキシ化合物を用いる場合は、ポリマー中に含まれるカルボキシル基などの酸と反応することにより架橋点が形成される。
上記ポリマー前駆体には、必要に応じて、上記電解質モノマーおよび上記架橋剤と共重合可能なモノマーを単独または両方で含有させても良い。この種のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、スチレン類、有機酸ビニル類、アリル化合物、メタリル化合物などを挙げることができる。これらは1種または2種以上含まれていても構わない。
上記ポリマー前駆体に含まれる電解質モノマーを重合させる方法は、特に限定されるものではなく、一般に知られる方法であれば、いずれの方法であっても使用することができる。このような重合方法としては、過酸化物、アゾ化合物などの熱開始剤、レドックス系重合開始剤を用いた熱重合、紫外線などの光の照射によりラジカルを発生する光重合開始剤を用いた光重合、電子線、放射線などによる重合などを挙げることができる。これらは1種または2種以上併用しても構わない。
上記電解質膜を作製する際、上記電解質ポリマーおよびポリマー前駆体は、そのもの自体が液体であって低粘度である場合には、そのまま多孔質高分子膜の孔部へ含浸させることができる。この場合、好ましい粘度としては、25℃において1〜10000mPa・s程度である。
これに対し、そのままでは多孔質高分子膜の孔部へ含浸させにくい場合には、電解質ポリマーおよびポリマー前駆体のうち少なくとも1種を、適当な溶媒に溶解させた溶液、または、適当な分散媒に分散させた分散液とするのが良い。この場合、好ましい粘度は、25℃において1〜10000mPa・s程度である。上記粘度は、B型粘度計にて測定される値である。
上記溶媒、分散媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族系有機溶剤、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系有機溶剤、クロロホルム、ジクロロエタンなどの塩素系溶剤、ジエチルエーテルなどのエーテル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤、水、アルコール類などを挙げることができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。これらのうち、水を主に含んでいることが、取扱い性や経済性などに優れるため好ましい。
上記溶液または分散液の濃度の上限としては、濃度が高いほど性能に優れるなどの観点から、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。一方、上記溶液または分散液の濃度の下限としては、濃度が低すぎると充填が不十分となり、回数を重ねないと充填がしにくくなり生産性が悪くなるなどの観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。
上記電解質膜を製造する際に、多孔質高分子膜の表面に電解質ポリマー層が形成された場合において、これを取り除く方法としては、樹脂繊維などからなるたわし、ブラシなどにより擦る方法、スクレーパーなどで掻き取る方法などを挙げることができる。上記方法は、水などにより湿らせた後、または、洗浄しながら行っても構わない。これらの方法は1種または2種以上併用しても良い。
(電解質膜と電極の接合)
続いて、電解質膜と電極(アノード電極、カソード電極)とを接合して膜電極接合体を形成する方法について説明する。電解質膜に電極を接合する方法としては、必ずしも必須ではないがイソプロパノールなどの溶剤に溶解した電解質材料を、電解質膜の表面および電極の多孔質層の表面の少なくとも一方に塗布した後、電解質膜をアノード電極およびカソード電極で挟み込み、ホットプレスなどにより加熱加圧する方法などを挙げることができる。
上記電解質材料としては、ナフィオン(登録商標)などのフッ素系電解質ポリマー、ポリスチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸エチレン共重合物、スルホン化ポリエーテルスルホンなどの炭化水素系ポリマーよりなるアイオノマーなどを挙げることができる。これらは1種または2種以上併用しても構わない。
上記加熱加圧時における加熱温度や加圧力は、上記多孔質高分子膜の材質や、溶剤に溶解する電解質材料の種類などを考慮して、適宜選択すれば良い。
一般的に、加熱温度や加圧力が過度に高くなると、多孔質高分子膜が変形したり、電極が破損しやすくなる傾向が見られる。一方、加熱温度や加圧力が過度に低くなると、接着性が低下する傾向が見られる。よって、電解質膜と電極との接合時には、これらに留意することが好ましい。
<燃料電池>
本実施形態に係る燃料電池は、上記で説明した膜電極接合体を用いて製造される。本実施形態に係る燃料電池において、上記膜電極接合体は、一つまたは2つ以上積層されていても構わない。本実施形態に係る燃料電池に供給する燃料としては、水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコールなどを適宜用いることができる。一方、本実施形態に係る燃料電池に供給する酸化剤としては、酸素、空気などを用いることができる。
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.電解質膜の準備
(実施例:凸部を有する電解質膜)
多孔質高分子膜として、東レ(株)製ポリエチレン微多孔膜(SETELA(登録商標)F30CT1:膜厚30μm、ガーレー透気度300秒/100cc、空孔率47%、突刺強度540gf)を用いて凸部を有する電解質膜を作製した。まずは、上記多孔質高分子膜の一方の面に対し、直径7.5mmのCu円板をマスクとして所定位置に被せ、酸素をエッチングガス(流量:10sccm)とする容量結合型RIE装置(SAMCO(株)製:RIE−10N)により出力100W、1回あたりのエッチング時間を4分未満となるように、2回に分けて累積時間として6分40秒のプラズマエッチングを実施した。1回目のエッチング終了後、エッチングガスを止め5分間の冷却を実施後、2回目のエッチングを実施した。
なお、事前の検討により、本実施例で使用する予定の電極として多孔質触媒層の窪み部分の最大深さが約4μmであることが分かっており、また、本実施例で使用する多孔質高分子膜をプラズマエッチングにより約4μm膜厚減少させるには、エッチングする累積時間として約6分40秒程度が適切であることが分かっていたため、上記の条件とした。
上記条件でプラズマエッチングされた多孔質高分子膜は、寸法変形や変質(不透明化)は特に観察されなかった。また、マイクロメーターにより、Cu円板でマスクされた直径7.5mmの外側が深さ4μmに膜厚減少していることを確認した。
続いて、上記多孔質高分子膜の他方の面に対しても同様にして、直径7.5mmの凸部を有し、その周囲の膜厚が4μmに減少するようにプラズマエッチングを実施した。上記により得られた凸部を有する多孔質高分子膜(異形多孔質高分子膜)の上面図を図2Aに、正面図を図2Bに示す。以上より、多孔質高分子膜の面内中央部に直径7,5mmの凸部を多孔質膜の両面に有し、その周囲が両面合わせて8μm膜厚減少した異形多孔質膜を作製した。
続いて、作製された異形多孔質膜にSDS(Sodium Dodecyl benzenesulfonate)水溶液で親水化処理を施した後、AMPS(2−Acrylamido−2−methylpropan Sulfonic Acid)とSDSの水溶液に架橋剤(N,N−Methylene bis acrylamide)とAAAPH(2,2‘−Azobis(2−methylpropionamidine)dihydrochloride)の水溶液を添加した溶液に低温浸漬した後、60℃で16時間静置し、水洗後、1M硫酸水溶液に浸漬し、プロトン型の異形電解質膜とした。
(比較例:凸部を有さない平坦な電解質膜)
上記の多孔質高分子膜に対しプラズマエッチングを行わなかった以外は、実施例と同様にして、プロトン型の平坦電解質膜を準備した。
2.電極の作製
試料として、厚さ110±10μm、抵抗率0.001〜0.003Ωcm、(100)面を両面鏡面研磨した、酸化膜付きのn型シリコンウェハを準備した。なお、シリコン電極は、集電体としての機能を持たせるために抵抗率の低いものを用いている。
まず、酸化膜付きのシリコンウェハから、ダイシングにより15mm×15mmのチップを切り出した。切り出したシリコンチップを46%HFに90秒間浸漬させ、表面の酸化膜を除去した。
シリコンチップの片面に、真空蒸着法によりCu薄膜(厚さ:約100μm)を成膜した。次いで、そのCu薄膜の表面にフォトレジスト(東京応化工業(株)製、「OFPR−800LB」)を塗布し、レジスト膜(厚さ:50μm)を成膜した。
次いで、ウェハ中央部の1mm×4mmの領域に、マスク幅および開口幅がそれぞれ100μm、200μmピッチの直線形状の流路パターン(流路間隔は、凸部および凹部がそれぞれ100μm)を描いたフォトマスクを載置し、紫外線を照射して流路パターンを露光した後、現像することにより、レジストパターンを形成した。
更に、42度ボーメ(約48重量%)の塩化第二鉄溶液を用い、上記レジストパターンに沿ってCuを除去した後、アセトンを用いて、上記レジストパターンを除去した。これにより、上記シリコンウェハ表面にCuマスクパターンを形成した。
続いて、表面にCuマスクパターンが形成されたシリコンウェハの裏面側を、超純水とフッ酸(純度46質量%)とエタノールとを質量比5:3:2で混合した混合溶液に接触させた。そして、シリコンウェハを陽極として、液温10℃、電流密度70mA/mで390秒間、電流を印加して陽極酸化を行った。これにより、シリコンウェハの裏面から深さ約10μmの範囲に多孔質層を形成した。
次いで、上記多孔質層を、液温20℃のめっき液(1.0M HSO+20mM
PtCl+300mM HF)に浸漬し、めっき液をゆっくりと撹拌して、15分
間無電解めっきを行った。これにより、多孔質層の孔部内に白金触媒を担持させた。なお
、白金触媒形成後のシリコンウェハの断面をSEMにより観察したところ、白金触媒は、
多孔質層全体に亘って層状に堆積していた。また、白金触媒は、シリコンウェハの裏面か
ら深さ約7μmの範囲に主に堆積していた。
そして、形成された多孔質触媒層の表面にI型マスクを被せ、スパッタリングによりAuを成膜し、集電体層を形成した。
最後に、上記Cuマスクパターンを利用し、このパターンに沿ってシリコンをプラズマエッチングして反応領域(多孔質白金層と集電体層を形成した面の背面から、触媒層の多孔質白金層に到達するまでのガス流路)を形成した。なお、エッチング条件は、エッチング時間:約100分間、ガス流量:SF6:12sccm、O:5sccm、RF出力:50W、真空値:2.2〜2.8Paとした。これにより、各流路底部が多孔質層に接したガス流路を形成した。
以上により、白金触媒が担持された多孔質触媒層と、多孔質触媒層の一部に重なるように形成された集電体層と、多孔質触媒層表面側の反対面と多孔質触媒層を連通するガス流路を有する板状のシリコン電極を得た。
3.膜電極接合体の作製
上記で作製した凸部を有する異形電解質膜の両面に、それぞれ上記で作製した電極を接合した。まず、上記で作製した電極の多孔質触媒層面をイソプロパノールに浸漬した後、多孔質触媒層表面にナフィオン溶液(5%のNafion溶液:イソプロパノール=1:6)を塗布した。続いて、上記で作製した異形電解質膜を上記ナフィオン溶液に浸漬させた後、この電解質膜を2枚の電極で挟み、圧力0.24MPa、100℃で30分間ホットプレスした。これにより、その厚さが230μmである実施例に係る膜電極接合体を作製した。
また、上記で作製した平坦電解質膜についても同様にして、比較例に係る膜電極接合体を作製した。
4.発電試験
実施例に係る膜電極接合体および比較例に係る膜電極接合体の各々を用いた各燃料電池を、燃料となる水素および酸素を供給する流路が掘られたアルミニウム製治具の中にセットし、ばね圧をかけて電気的導通を確保した。また、上記燃料電池は、アノード側とカソード側を絶縁する必要があるため、マスキングテープを用いて金属の接触部を絶縁した。この燃料電池を恒温槽にセットした後、カソード電極の流路層に空気を、アノード電極の流路層に水素を流して、発電試験を行った。なお、運転条件は、水素流量10.0sccm、空気流量5.0sccm、恒温槽内温度40℃とした。
図3に、実施例に係る燃料電池における、セル電圧、電流密度および出力密度特性を示すグラフを、図4に、比較例に係る燃料電池における、セル電圧、電流密度および出力密度特性を示すグラフを示す。実施例に係る燃料電池においては、図3の結果に示す通り、最高出力密度1050mW/cmを得ることができた。一方、比較例に係る燃料電池においては、図4の結果に示す通り、最高出力密度180mW/cmであった。
10 アノード電極
12、32 多孔質触媒層
14、34 ガス流路
16、36 凹部
18 アノード側集電層
19、39 集電体層
20 電解質膜
22 凸部
30 カソード電極
38 カソード側集電層
100 膜電極接合体

Claims (8)

  1. 電解質膜の一方の面にアノード電極、他方の面にカソード電極が接合された膜電極接合体であって、
    前記アノード電極および前記カソード電極のうち少なくとも一方は、前記電解質膜との重ね面の少なくとも一部の領域に形成され、触媒が担持された多孔質触媒層と、前記電解質膜との重ね面の反対面と前記多孔質触媒層を連通するガス流路と、を有し、
    前記電解質膜は、前記多孔質触媒層が凹部を有する場合には前記凹部に適合する凸部を有し、前記多孔質触媒層が凸部を有する場合には前記凸部に適合する凹部を有することを特徴とする膜電極接合体。
  2. 前記電解質膜は、多孔質高分子膜の孔内部に電解質ポリマーが充填されたものであることを特徴とする請求項1に記載の膜電極接合体。
  3. 請求項1または2に記載の膜電極接合体を用いたことを特徴とする燃料電池。
  4. 請求項1または2に記載の膜電極接合体に用いられる電解質膜であって、
    前記電解質膜は、前記多孔質触媒層が凹部を有する場合には前記凹部に適合する凸部を有し、前記多孔質触媒層が凸部を有する場合には前記凸部に適合する凹部を有することを特徴とする膜電極接合体用電解質膜。
  5. 前記電解質膜は、多孔質高分子膜の孔内部に電解質ポリマーが充填されたものであることを特徴とする請求項4に記載の膜電極接合体用電解質膜。
  6. 請求項5に記載の膜電極接合体用電解質膜の製造方法であって、
    プラズマエッチングにより前記多孔質高分子膜に前記凹部または前記凸部を形成する工程と、
    前記凹部または前記凸部が形成された前記多孔質高分子膜に電解質ポリマーを充填する工程と、を有することを特徴とする膜電極接合体用電解質膜の製造方法。
  7. 前記プラズマエッチングを行う際の温度として、110℃未満の温度でエッチングを行うことを特徴とする請求項6に記載の膜電極接合体用電解質膜の製造方法。
  8. 請求項6または7に記載の膜電極接合体用電解質膜の製造方法を用いて電解質膜を製造する工程と、
    得られた前記電解質膜を前記アノード電極および前記カソード電極で挟み込みホットプレスする工程と、を有することを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
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