JP2019002825A - 化学除染方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】重水を用いる原子力発電プラントの化学除染において、重水への軽水の混入を低減する。【解決手段】重水を用いる原子力発電プラントにおける化学除染方法であって、その際に用いる薬剤が、通常の化学構造としては水素原子を含む物質である場合に、薬剤の代わりに、薬剤に含まれる水素原子のうち少なくとも一部を重水素原子に置き換えた重水素系薬剤を用いる。その際に用いるイオン交換樹脂についても、イオン交換樹脂に含まれる交換可能なイオン種として重水素イオン又は重水酸化物イオンを用いる。【選択図】図1

Description

本発明は、重水を用いる原子力発電プラントの構造部材の化学除染方法に関する。
カナダ型重水炉「CANDU」(登録商標)(CANada Deuterium Uranium)の原子炉本体は、横置圧力管型で、カランドリアと呼ばれる横置円筒シェル・チューブ構造の本体、多数の圧力管、反応度制御装置(制御棒等)等で構成される。
カランドリアを構成するカランドリアタンクの内部には、中性子減速材である重水が満たされており、カランドリアタンクの左右両管板をつないで水平に正方ピッチに配列されたカランドリア管の中に圧力管が収納され、この圧力管の中に燃料集合体が装荷されている。このカランドリア構造の採用により、中性子減速材と一次冷却材は完全に分離されている。カランドリア管及び圧力管の材料は、中性子吸収の少ない、それぞれジルカロイ−2及びジルコニウム・ニオブ合金が使用されている。カランドリア管と圧力管の間には、間隙を保持するためのスペーサが設けられ、熱絶縁のための炭酸ガスが充填されている。
燃料集合体からの発生熱を取り出す一次冷却材には重水を用い、この一次冷却材が流れる一次冷却系は、炉心の圧力管群を2群に分け、それぞれが独立の2ループとなっており、各ループは、蒸気発生器2基、一次冷却材ポンプ2基、及びこれらと圧力管群を結ぶ配管系により、圧力管内の一次冷却材の流れが隣接圧力管と互いに逆向きになるように接続されている。この方式の採用により、一次冷却系機器、配管の合理的配置ならびに重水装荷量の最小化が可能となり、同時に炉心の熱的バランスを適切なものとしている。
燃料集合体は、短尺燃料棒(長さ約50cm)を多層同心円状に配列し、その両端がエンド・サポート・プレートに溶接された構造である。燃料棒は、天然ウラン酸化物ペレットを薄肉のジルカロイ−4被覆管に封入したものである。
一次冷却系の構成材料としては、炭素鋼及びステンレス鋼に加え、蒸気発生器ではニッケル器合金が使われている。再循環ポンプによって炉心に供給された一次冷却水は、炉心内に装荷された燃料集合体内の核燃料物質の核***で発生する熱によって加熱され、再循環ポンプの駆動によって蒸気発生器へと送水される。蒸気発生器では、加熱された一次冷却水によって蒸気発生器の二次側の冷却水が加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、蒸気発生器からタービンに導かれ、タービンを回転させる。タービンから排出された蒸気は、復水器で凝縮され、水になる。この水は、給水として蒸気発生器の二次側の冷却水として供給される。一方、蒸気発生器で二次側の冷却水に熱を与えた一次冷却水は冷却され、再循環ポンプの駆動で炉心に供給されて再び加熱される。このように、一次冷却水は、再循環ポンプの駆動により炉心と蒸気発生器を循環する。
高温で循環する一次冷却水中には、構造材の腐食によって発生した腐食生成物が持ち込まれ、その一部が燃料集合体の表面に蓄積し、中性子の照射を受けて、原子核反応を起こし、コバルト60、コバルト58、クロム51、マンガン54等の放射性核種になる。これらの放射性核種は、大部分が酸化物の形態で燃料棒表面に付着したままである。
しかしながら、一部の放射性核種は、取り込まれている酸化物の溶解度に応じて炉水中にイオンとして溶出したり、クラッドと呼ばれる不溶性固体として炉水中に再放出されたりする。
炉水に含まれる放射性物質は、一次冷却系に連絡された原子炉水浄化系によって取り除かれる。原子炉水浄化系で除去されなかった放射性物質は、炉水とともに一次冷却系などを循環している間に、原子力プラントの構成部材(例えば、配管)の炉水と接触する表面に蓄積される。その結果、構成部材の表面から放射線が放射され、定検作業時の従事者の放射線被ばくの原因となる。
その従事者の被ばく線量は、各人毎に規定値を超えないように管理されている。近年、この規定値が引き下げられ、各人の被ばく線量を可能な限り低くする必要が生じている。
そこで、定検作業での被ばく線量が高いことが予想される場合は、配管に付着した放射性核種を溶解して除去する化学除染が実施される場合がある。
例えば、特許文献1には、EDTAとクエン酸とを含む水溶液による放射性核種を含む酸化物を溶解と、溶解液のカチオン交換樹脂への通液による再生と、混床イオン交換樹脂による薬剤の浄化と、によるCANDU(登録商標)炉等の化学除染方法が開示されている。
例えば、特許文献2には、シュウ酸及びヒドラジンを含む還元除染剤による還元溶解、この還元溶解に用いたシュウ酸及びヒドラジンの分解、及び過マンガン酸イオンによる酸化溶解を組み合わせた、原子力発電プラントの化学除染方法が開示されている。
特表2013−538336号公報 特開2000−105295号公報
特許文献1では、酸化皮膜の溶解に使用したEDTA及びクエン酸は、混床イオン交換樹脂によって除染液から除去されるが、処理系統の規模が大きくなると除染液量も増え、浄化に使用する混床イオン交換樹脂の量も増加する。
特許文献2では、この混床イオン交換樹脂の量の増加に対して、水や二酸化炭素に分解可能な除染剤と分解方法を提供することにより、放射性廃棄物となる混床樹脂の使用量を削減している。
しかしながら、これらの方法はいずれも、重水炉に使用した場合、軽水による重水の希釈という課題が存在する。EDTAやクエン酸によって溶解した金属イオンは、カチオン交換樹脂によって除去されるが、その際、金属イオンの換わりにHがカチオン交換樹脂から循環水である重水の除染液中に放出される。一方、EDTAやクエン酸は、混床樹脂のアニオン交換樹脂によって除去され、換わりにOHがアニオン交換樹脂から循環水である重水の除染液中に放出される。このため、循環水として用いている重水がHやOHの軽水成分によって希釈されることになる。また、除染対象部が広がると薬剤の量も増えるので、薬剤の除去に使用する混床樹脂の量も増大し、放射性廃棄物量を増やすことになる。
特許文献2では、還元除染剤にシュウ酸及びヒドラジンを使うことにより、混床樹脂による薬剤の除去ではなく、触媒による分解で水と二酸化炭素、窒素に分解し、放射性廃棄物の発生量低減を行っている。しかしながら、分解生成物の水は軽水であり、分解に使用する薬剤である過酸化水素も軽水を含むため、こちらの方法でも循環水として用いている重水が軽水成分によって希釈されることになる。
一方で、重水炉では、重水の純度が厳密に管理されており、規定値を下回った場合、不純物である軽水成分を除去する必要がある。このため、重水炉の化学除染において重水を使って化学除染を行う場合は、軽水の混入を避ける必要がある。
本発明の目的は、重水を用いる原子力発電プラントの化学除染において、重水への軽水の混入量を低減することにある。
本発明の化学除染方法は、重水を用いる原子力発電プラントにおける化学除染をする際に用いる薬剤が、通常の化学構造としては水素原子を含む物質である場合に、薬剤の代わりに、薬剤に含まれる水素原子のうち少なくとも一部を重水素原子に置き換えた重水素系薬剤を用いる。
また、本発明の化学除染方法は、重水を用いる原子力発電プラントにおける化学除染をする際にイオン交換樹脂を用いる工程を含む方法であって、イオン交換樹脂に含まれる交換可能なイオン種は、重水素イオン又は重水酸化物イオンである。
本発明によれば、重水を用いる原子力発電プラントの化学除染において、重水への軽水の混入を抑制することができる。これにより、重水の純度の低下を抑制し、化学除染終了後に化学除染で使用した系統水としての重水から軽水を分離する浄化工程の負荷を低減することができる。
重水型原子力発電プラントの一次冷却系に本発明を適用する場合の一実施形態を示す全体系統構成図である。 図1の化学除染装置の詳細を示す構成図である。 実施例1の重水型原子力発電プラントの化学除染方法を示すフローチャートである。 実施例2の薬剤の合成手順を示すフロー図である。
本発明は、重水を用いる原子力発電プラント(原子力プラント)の構造部材の化学除染方法に関し、特に、重水の同位体純度の低下を抑制する化学除染方法に関する。
化学除染をする際に用いる薬剤は、通常の化学構造としては水素原子を含む物質である。
本発明は、化学除染で使用する薬剤やイオン交換樹脂を、重水を原料の一つとして用いて作製し、作製した重水素系薬剤を用いて化学除染を行うものである。特に、重水素系薬剤の製造は、重水炉等の原子炉を含む原子力発電プラントで使用している重水を用いるため、原子力発電プラント内でも行うことができ、通常は難しい重水の調達を容易に行うことが可能となり、重水素系薬剤を容易に得ることができる。これらの重水素系薬剤を原子力発電プラントにおける化学除染に用いることにより、化学除染における薬剤添加により重水が軽水で汚染されることを抑制することができる。
言い換えると、本発明は、通常の化学構造としては水素原子を含む薬剤の代わりに、薬剤に含まれる水素原子のうち少なくとも一部を重水素原子に置き換えた重水素系薬剤を用いる。これにより、原子力発電プラントで使用している重水に軽水が混入する量を低減することができる。
以下では、カナダ型重水炉を例として説明するが、本発明は、これに限定されるものではなく、重水を用いるすべての原子力プラントにおいて適用することができる。
カナダ型重水炉の一次冷却系の構成材料には、炭素鋼及びステンレス鋼が使用されている。使用条件下において、炭素鋼には鉄系の酸化皮膜が、ステンレス鋼には鉄系酸化皮膜の外層とクロム系酸化皮膜の内層とが形成される。
これらの酸化皮膜内には、放射性核種が取り込まれている。このため、化学除染では、薬剤を用いてこれらの酸化皮膜を溶解し、取り込まれている放射性核種を除去する。その際に使用する薬剤に水素イオン(H)や水酸化物イオン(OH)、結晶水(HO)が含まれていると、除染で使用する循環水の重水に軽水が混入することになる。このため、薬剤としては、水素(H)を重水素(Dすなわち(H))に置換したものを用いる。
具体的には、例えば還元除染剤としてシュウ酸及びヒドラジンを含む水溶液を用いる場合は、シュウ酸として(COOD)・2DOを、ヒドラジンとしてN・DOのDO希釈溶液を用いる。また、酸化除染剤としてはDMnOのDO希釈溶液を、カチオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂)としてはD型カチオン交換樹脂を、アニオン交換樹脂(陰イオン交換樹脂)としてはOD型アニオン交換樹脂を用いる。また、還元除染剤の分解には過酸化水素を用いるが、この過酸化水素もDをDOで希釈したものを使用する。これにより、化学除染による薬剤の添加で軽水が持ち込まれることがなくなるので、化学除染終了後に系統水として使用した重水について、軽水の分離除去工程が不要になる。
これらの重水素系薬剤については、化学除染で使用する量を市場で確保するのは難しい。そこで、重水炉で使用している重水を使ってこれらの薬剤を合成する方法について検討した。
重水炉で使用している重水は、炉心で中性子照射を受けて一部が核反応を起こしてトリチウムとなるため、放射性核種であるトリチウム水を含んでいる。このため、重水炉から搬出することが難しい場合がある。そのため、薬剤の合成はプラント内で行う。プラント内では複雑な反応装置を用いることができないため、反応段数の少ない反応が望ましい。例えば、シュウ酸(COOD)の合成には、シュウ酸カルシウムCa(COO)を原料に、重水素製の硫酸DSOに溶解させ、沈殿するCaSOと分離して、(COOD)の水溶液を得る。この反応は、次の化学反応式により表される。
Ca(COO) + DSO → (COOD) + CaSO
SOは、SOガスを原料に酸素で酸化してSOガスを生成させ、これを重水に吹き込むことで作製する。この反応は、次の化学反応式により表される。
2SO + O → 2SO
SO + DO → DSO
こうして得られた重水素製の硫酸DSOをNa型カチオン交換樹脂に用いてD型カチオン交換樹脂を得る。この反応は、次の化学反応式により表される。
Na型カチオン樹脂 + DSO → D型カチオン交換樹脂 + NaSO
こうして得られたD型カチオン交換樹脂に過マンガン酸カリウムを重水に溶解した水溶液を通水してD型の過マンガン酸を得る。この反応は、次の化学反応式により表される。
KMnO + D型カチオン交換樹脂 → DMnO + K型カチオン交換樹脂
過酸化水素については、ペルオキソ二硫酸ナトリウムを重水に溶解し、加水分解を経て重水素製の過酸化水素を得る。この反応は、次の化学反応式により表される。
Na + 2DO → 2NaDSO + D
生成物はNaDSOを含む水溶液であることから、Dを得るために蒸留を行う。
OD型アニオン交換樹脂については、まずNaODを合成する。酸化カルシウムCaOを重水に溶解させ重水素型の水酸化カルシウム(重水酸化カルシウム)を生成させ、その後、硫酸ナトリウムを加えると、硫酸カルシウムが沈殿し、重水素型の水酸化ナトリウム(重水酸化ナトリウム)の重水水溶液を得る。この反応は、次の化学反応式により表される。なお、「重水水溶液」とは、重水(DO)を溶媒とする溶液をいい、「重水溶液」とも呼ばれるものである。
CaO + DO → Ca(OD)
Ca(OD) + NaSO → NaOD + CaSO
こうして得られた重水素型の水酸化ナトリウムの水溶液をCl型アニオン交換樹脂に通水することで、OD型アニオン交換樹脂を得る。この反応は、次の化学反応式により表される。
Cl型アニオン樹脂 + NaOD → OD型アニオン樹脂 + NaCl
このようにして合成した重水素型の薬剤を用いて化学除染を行えば、系統水である重水に軽水が混入することを抑制できる。
以上の検討結果を反映した本発明の実施例について、以下に説明する。
カナダ型原子炉の一次冷却系構造部材の化学除染方法の実施例について説明する。
図1は、本実施例のカナダ型原子炉の概略構成を示したものである。
本図において、カナダ型原子炉100(カナダ型重水炉)は、燃料集合体101、制御棒、圧力管102、カランドリアタンク109、加圧器103、一次冷却系、一次冷却材の再循環ポンプ104、蒸気発生器105、タービン106、復水器107、給水ポンプ108、給水系等を備えている。なお、一次冷却材は、重水である。
燃料集合体101を構成する核燃料棒内には、核***性のU−235などを含む核燃料が装荷されている。核燃料は、熱中性子と原子核反応を起こして核***を生じる。
一次冷却材(重水)は、加圧器103によって加圧され、核燃料棒の外側で圧力管102の内部を流れている。一次冷却材は、原子核反応の際の反応熱によって加熱される。加熱された一次冷却材は、一次冷却系配管110に設置された再循環ポンプ104の駆動によって、蒸気発生器105に送水され、蒸気発生器105内の細管を流れる。細管の外側には、二次冷却水が流れている。二次冷却水は、一次冷却材と熱交換を行うことにより沸騰し、蒸気を発生する。
発生した蒸気は、タービン106へ導かれ、タービン106を駆動して発電機を駆動し、発電を行う。タービン106を駆動した蒸気は、復水器107で水に戻され、給水ポンプ108によって蒸気発生器105へ送水される。一方、蒸気発生器105の細管内を流れた一次冷却材は、二次冷却水に熱を与えることにより冷却され、温度が下がった一次冷却材は、再循環ポンプ104の駆動により、再び圧力管102へ送水される。
核燃料の核***においては、反応熱が発生すると共に、中性子が放出される。放出された中性子は、一次冷却材の重水とカランドリアタンク109内の減速材である重水とによって熱中性子に減速される。この熱中性子が核燃料中のU−235等と核反応を起こす際、U−235が核***を起こし、再び反応熱と中性子を放出するため、核***反応が持続する。
なお、一次冷却系配管110には、弁111が設置されている。弁111は、化学除染装置1を接続可能な構成を有している。
図2は、図1の化学除染装置の詳細を示す構成図である。
図2に示すように、化学除染装置1は、循環配管2と、pH調整剤注入装置12と、過酸化水素注入装置7と、サージタンク17と、循環ポンプ20、26と、フィルタ21と、分解装置25と、陽イオン交換樹脂塔23と、混床樹脂塔24と、ホッパ5と、を備えている。サージタンク17の内部には、加熱器19が設置されている。
循環配管2には、開閉弁27、循環ポンプ20、弁28、29、30、31、サージタンク17、循環ポンプ26、弁32及び開閉弁33が、上流よりこの順に設けられている。
弁28をバイパスして循環配管2に接続されている配管34には、弁35及びフィルタ21が設置されている。弁29をバイパスして循環配管2に接続されている配管36には、冷却器22及び弁37が設置されている。
また、両端が循環配管2に接続されて弁30をバイパスする配管38には、陽イオン交換樹脂塔23及び弁40が設置されている。両端が配管38に接続されて陽イオン交換樹脂塔23及び弁40をバイパスする配管39には、混床樹脂塔24及び弁41が設置されている。陽イオン交換樹脂塔23は、その内部に、重水素イオンで置換されたD型陽イオン交換樹脂を充填した樹脂層を有している。言い換えると、D型陽イオン交換樹脂に含まれる交換可能なイオン種は、重水素イオンである。
混床樹脂塔24は、その内部に、D型陽イオン交換樹脂と、重水素及び酸素を含む水酸化物イオン(重水酸化物イオン)で置換されたOD型陰イオン交換樹脂と、を充填した樹脂層を有している。言い換えると、OD型陰イオン交換樹脂に含まれる交換可能なイオン種は、重水酸化物イオンである。
弁31をバイパスして循環配管2に接続されている配管42には、弁43及び分解装置25が設置されている。分解装置25の内部には、例えば、ルテニウムを活性炭の表面に添着した活性炭触媒が充填されている。弁31と循環ポンプ26との間の循環配管2には、サージタンク17が設置されている。
pH調整剤注入装置12は、薬液タンク13、注入ポンプ14及び注入配管16を有する。注入配管16には、注入ポンプ14及び弁15が設けられている。薬液タンク13は、注入配管16によって循環配管2に接続されている。薬液タンク13には、pH調整剤であるヒドラジンが貯留されている。このヒドラジンは、水素原子を重水素原子に置換したNであり、このNが重水に溶解している。注入配管16と循環配管2との接続点と、開閉弁33との間の循環配管2には、pH計83が設置されている。
過酸化水素注入装置7は、薬液タンク8、注入ポンプ9及び注入配管44を有する。注入配管44には、注入ポンプ9及び弁45が設けられている。薬液タンク8は、注入配管44によって、分解装置25の上流の配管42に接続されている。薬液タンク8には、水素原子を重水素原子に置換した過酸化水素であるDを重水に溶解した溶液が貯留されている。
サージタンク17の上端部には、配管75が接続されている。配管75は、循環ポンプ26と弁32との間で循環配管2に接続されている。配管75には、弁3及びエゼクタ4が設置されている。エゼクタ4には、ホッパ5が接続されている。ホッパ5内には、重水素で置換した過マンガン酸の重水水溶液(DMnO酸化除染剤)、又は重水素で置換したシュウ酸((COOD)・2DO)の重水水溶液が投入されるようになっている。
た配管47の両端部が、pH計83と開閉弁33との間、及び開閉弁27と循環ポンプ20との間の循環配管2には、配管47が接続されている。配管47には、弁46が設けられている。
化学除染に使用する薬剤としては、廃棄物の量を低減するため、水及び二酸化炭素に分解できる有機酸、または無害な気体として放出可能で廃棄物を増やさないヒドラジンを用いている。分解装置25は、有機酸の一種であるシュウ酸、及びpH調整剤のヒドラジンを分解できるようになっている。
化学除染対象物である一次冷却系配管110の外側には、放射線検出器76が配置されている。放射線検出器76は、一次冷却系配管110から放出される放射線を検出し、放射線検出信号を出力する。
原子力発電プラントは、1つの運転サイクルの運転が終了した後に停止される。この運転停止後に、原子力発電プラントに対して定期検査が実施される。この定期検査が終了した後、原子力発電プラントが再度起動される。原子力発電プラントの運転停止後で定期検査での各機器の点検を実施する前に、原子力発電プラントの配管等に対する化学除染が実施される。
図3は、重水型原子力発電プラントの化学除染方法を示すフローチャートである。
本図に示す手順により実施される、実施例1のカナダ型原子力プラントの一次冷却系の化学除染方法を、以下に具体的に説明する。
1つの運転サイクルを終了したカナダ型原子力プラントにおいては、一次冷却系内の一次冷却材が流れる構造部材の接水面に、放射性核種を含む酸化皮膜が形成されている。この酸化皮膜は、化学除染により除去される。本実施例の化学除染方法は、カナダ型原子力発電プラントの一次冷却系の構造部材を対象に行うものであり、例えば一次冷却系配管110の内面から酸化皮膜を除去する処理である。化学除染では、図2に示す化学除染装置1が用いられる。
図3に示すように、初めに、運転が停止されたカナダ型原子力プラントの一次冷却系配管110に化学除染装置を接続する(ステップS1)。一次冷却系配管110は、化学除染対象物である。仮設設備である化学除染装置1の循環配管2の両端が、一次冷却系配管110に接続される。
つぎに、この循環配管2を一次冷却系配管110に接続する作業を具体的に説明する。
カナダ型原子力プラントの運転停止後に、例えば、一次冷却系配管110に設置されている弁111のボンネットを開放して、化学除染装置1の循環配管2の一端を弁111内の入口側配管に接続する。続いて、化学除染装置1の循環配管2の他端を弁111内の出口側配管に接続する。これにより、仮設の化学除染装置1と一次冷却系を循環するループが形成される。
化学除染装置1が一次冷却系配管110に接続された後、循環配管2、サージタンク17及び一次冷却系に水を充填する。この水としては、運転中に一次冷却材として使用している重水を用いる。この水は、例えば、サージタンク17から注入する。
循環水の温度を調節する(ステップS2)。まず、開閉弁27、33を閉じた状態で、弁28、29、30、31、32、46を開き、他の弁を閉じた状態で、循環ポンプ20、26を起動して、サージタンク17内の水を循環配管2内で循環させる。つづいて、開閉弁27、33以外の弁の開閉を操作して、循環配管2につながる各配管のエア抜きを行う。エア抜き終了後、弁28、29、30、31、32、46以外の弁は閉じ、開閉弁27、33を開き、他の弁を閉じた状態で、循環ポンプ20、26の運転を継続する。そして、弁46を閉じ、サージタンク17内の重水を循環配管2及び一次冷却系配管110内で循環させる。そして、サージタンク17内に設置された加熱器19によって、循環配管2及び一次冷却系配管110内を循環する循環水を加熱し、循環水の温度を約90℃に調節する。
配管系の酸化除染を実施する(ステップS3)。弁3を開くことにより、ホッパ5内に投入されたDMnO酸化除染剤がエゼクタ4を通して配管75内に供給される。さらに、DMnO酸化除染剤は、配管75内を流れる水によりサージタンク17内に導かれる。DMnO酸化除染剤は、サージタンク17内で約90℃の重水に混合し、酸化除染液(DMnO重水溶液)となる。この酸化除染液は、循環ポンプ26で昇圧され、サージタンク17から循環配管2を経て一次冷却系配管110内に供給される。酸化除染液は、一次冷却系配管110を通して、再循環ポンプ104及び蒸気発生器105の冷却材接水部に形成されている酸化皮膜などの汚染物(放射性核種を含む。)を酸化して溶解する(酸化除染工程)。
シュウ酸を添加する(ステップS4)。酸化除染が終了した後、ホッパ5内には、重水素で置換したシュウ酸((COOD)・2DO)の重水水溶液が投入される。そして、エゼクタ4から配管75内を流れる酸化除染液に供給され、サージタンク17内に導かれる。このシュウ酸により、酸化除染液に含まれている過マンガン酸が分解される(酸化除染剤分解工程)。
重水素型のシュウ酸を使うことで、分解生成物として重水が生成され、軽水は生じない。この反応は、次の化学反応式により表される。
2MnO + 6D + (COOD)
→ 2Mn2+ + 8DO + 10CO
酸化除染剤分解工程の終了後に、酸化除染を行った一次冷却系配管110の接水部表面に対する還元除染が実施される。本実施例の化学除染方法における還元除染を以下に詳細に説明する。なお、還元除染液を生成するためのシュウ酸の添加(ステップS4)と、ステップS5、S6とは、還元除染工程に含まれる。
ステップS4において、ホッパ5内の重水素で置換したシュウ酸((COOD)・2DO)の配管75内への供給を継続すると、やがて過マンガン酸の赤色が消失し、シュウ酸水溶液(還元除染液)となる。
その後、pH調整剤であるヒドラジンを注入する(S5)。循環配管2を流れている90℃のシュウ酸水溶液に、pH調整剤である重水素で置換したヒドラジン(N)の重水水溶液が、pH調整剤注入装置12により注入される。具体的には、弁15を開き、注入ポンプ14を駆動する。この結果、薬液タンク13内のヒドラジンが注入配管16を通って循環配管2内に注入される。
ヒドラジンの注入により、90℃のシュウ酸水溶液のpHが2から3までの範囲内、例えば、2.5に調節される。シュウ酸水溶液のpHを2から3までの範囲内に調節することによって、一次冷却系配管110に含まれる炭素鋼製の配管の過度の溶解が抑制される。ヒドラジンの循環配管2への注入量は、pH計83で測定された循環配管2内を流れるシュウ酸水溶液のpH測定値に基づいて、このpH測定値が例えば2.5になるように、注入ポンプ14の回転速度(または弁15の開度)を制御することにより調節される。
循環ポンプ20、26が駆動されているため、90℃でpHが2.5のシュウ酸ヒドラジン水溶液が、化学除染対象物である一次冷却系配管110内に供給される。シュウ酸ヒドラジン水溶液のシュウ酸濃度は2000ppmである。このシュウ酸ヒドラジン水溶液が一次冷却系配管110の接水面に接触すると、一次冷却系配管110の接水面に付着している酸化皮膜に含まれる放射性核種を含む腐食生成物がシュウ酸によって溶解される。
その後、陽イオン交換樹脂塔への通水を行う。酸化除染剤分解工程が終了した後、弁40を開いて弁30の開度を調節する。これにより、一次冷却系配管110から循環配管2に排出されて戻されたシュウ酸ヒドラジン水溶液の一部が、重水素イオンで置換したD型陽イオン交換樹脂を含む陽イオン交換樹脂塔23に供給され、陽イオン交換樹脂塔23内のD型陽イオン交換樹脂と接触する。一次冷却系の還元除染によりシュウ酸ヒドラジン水溶液に溶出した放射性核種(例えば、Co−60)及びFe2+等の金属陽イオンは、陽イオン交換樹脂塔23内のD型陽イオン交換樹脂に吸着されて除去され、換わりにDイオンが除染溶液中に放出される。
陽イオン交換樹脂塔23で金属陽イオンが除去されたシュウ酸ヒドラジン水溶液は、弁30を通過したシュウ酸ヒドラジン水溶液と混合され、サージタンク17内に導かれる。
90℃でpH2.5のシュウ酸ヒドラジン水溶液は、一次冷却系配管110及び循環配管2で形成される閉ループ内を循環しながら一次冷却系配管110の接水面の還元除染に供される。還元除染が実施されている間、シュウ酸ヒドラジン水溶液の一部が陽イオン交換樹脂塔23に導かれ、シュウ酸ヒドラジン水溶液に含まれる金属陽イオンが陽イオン交換樹脂塔23で除去される。
化学除染対象物である一次冷却系配管110の外側に配置された放射線検出器76が、化学除染対象物である一次冷却系配管110から放出される放射線を検出し、放射線検出信号を出力する。この放射線検出信号に基づいて一次冷却系配管110の線量率を求める(ステップS6)。
放射性核種の除去によって線量率の低下傾向が継続する間は、還元除染を継続する。低下傾向が収まったところで、次のステップである線量率目標判定と除染とを繰り返す工程管理に移行する(ステップS7)。低下傾向の終了は、例えば線量率の低下速度が前の1h(1時間)に比べて1/10以下になった時点とする。線量率の低下速度が前の1hの低下速度に比べて1/10になったところで、線量が目標まで下がっておらず、なお且つ化学除染の繰り返し回数が設定値以下の場合は、ステップS3に戻り、酸化除染から繰り返す。繰り返し後のステップS7の線量測定で目標線量以下になっている場合、又は化学除染の繰り返し回数が設定値に到達した場合は、次の還元除染剤分解工程(ステップS8)に移行する。
還元除染剤分解工程(ステップS8)では、弁40を開き、弁30を閉じ、還元除染液を陽イオン交換樹脂塔23に通水する。陽イオン交換樹脂塔23を出た循環水は、分解装置25へ導かれる。弁45を開き、注入ポンプ9を起動し、薬液タンク8から重水素で置換された過酸化水素(D)の重水溶液を分解装置25の直前(上流側)で循環水に注入する。分解装置25では、循環水に残っているシュウ酸及びヒドラジンが過酸化水素と反応し、分解される。この反応は、次の化学反応式により表される。
(COOD) + D → 2CO + 2D
+ 2D → N + 4D
この反応は、分解装置25に充填した触媒の作用により促進される。
分解生成物であるCO及びNは、気相へ抜けるため、放射性廃棄物にはならない。また、DOは、循環水と同じ成分であり、軽水を含まないので、カナダ型原子炉の冷却材として使用できる。ヒドラジンは、シュウ酸よりも早く分解される。シュウ酸濃度が10ppmに低下したとき、シュウ酸の分解が終了する。シュウ酸の分解が終了した後、注入ポンプ9を停止し、弁45を閉じて、薬液タンク8から分解装置25への過酸化水素の供給を停止する。さらに、弁31を全開にし、弁43を閉じる。
浄化を実施する(ステップS9)。シュウ酸及びヒドラジンの分解後、加熱器19への通電を停止し、加熱器19による循環水の加熱を停止する。そして、弁35、37、41を開き、弁28、29、30を閉じる。循環配管2から循環ポンプ20に流入した循環水は、配管34を通ってフィルタ21に供給される。フィルタ21で循環水に含まれる微細な固形物が除去される。
フィルタ21から排出された循環水は、冷却器22で冷却され、循環水の温度が、例えば、60℃まで低下する。60℃になった循環水は、混床樹脂塔24に供給される。混床樹脂塔24には、D型のカチオン交換樹脂及びOD型のアニオン交換樹脂が充填されている。混床樹脂塔24は、循環水に含まれる不純物(陰イオン等)、及び残っているシュウ酸を除去する。混床樹脂塔24から排出された水溶液は、導電率が低下する。この水溶液のシュウ酸濃度及びヒドラジン濃度を分析し、それぞれの濃度が所定値より下がったことを確認した後、循環ポンプ20、26を停止する。これにより、浄化工程が終了する。
浄化工程終了後に一次冷却系配管110を含む除染系統内に残留する重水は、カナダ型原子力発電プラントの一次冷却水として再使用する。化学除染装置1を一次冷却系から取り外すため、弁111回りの一次冷却材を移送した後、化学除染装置1の循環配管2を取り外す。その後、弁111を復旧する。一方、化学除染装置1に残留している循環水は、一次冷却材の補給水として使用するため、プラントの重水タンクへ移送する。これにより、本実施例における一次冷却系の化学除染が終了する。そして、定期検査終了後にカナダ型原子力発電プラントが起動される。
本発明によれば、カナダ型原子力発電プラントの化学除染に使用する薬剤について、水素原子を重水素原子に置き換えた薬剤を用いるため、一次冷却材の重水純度の低下を抑制できる。このため、除染の循環水として使用した重水は、薬剤成分を浄化した後、重水成分の濃縮(軽水成分の除去)をすることなしに、原子力プラント運転に際しての一次冷却材として使用できる。
カナダ型原子力プラントの一次冷却系の化学除染において、水素原子を重水素原子に置換した薬剤を、カナダ型原子力発電プラントで使用している重水を用いて合成する実施例について説明する。
化学除染で使用する薬剤の量は、通常、数十キログラムから数百キログラムに及ぶため、重水素製の化学除染剤を合成するには、同規模の重水が必要になる。しかしながら、この規模の重水の入手は、通常は困難である。
重水型原子炉であるカナダ型原子力発電プラントでは、重水を減速材及び冷却材として使用しているため、重水の入手は容易である。そこで、この重水を用いて化学除染に使用する薬剤を合成すればよい。ただし、重水炉で使用した重水は、中性子の照射を受けているため、トリチウムが含まれている。このため、プラント外へ持ち出すことが困難な場合がある。
そこで、化学除染で使用する薬剤の合成を原子力発電プラント内で行うことを検討した。合成する薬剤としては、シュウ酸、過マンガン酸及び過酸化水素を選定した。また、イオン交換樹脂についても、重水素型のD型カチオン交換樹脂、及び重水素原子に置換した水酸化物イオン型のOD型アニオン交換樹脂をプラント内で作製する。
図4は、重水炉プラントの重水を用いる薬剤の合成手順を示すフロー図である。
薬剤の合成を原子力発電プラント内で行うため、反応はできるだけ単純で複雑な装置を要しないものが望ましい。そこで、D型カチオン交換樹脂を造るために使う無機酸として硫酸DSOを選び、D型カチオン交換樹脂を使って過マンガン酸DMnOを作り、DSOを使ってシュウ酸(COOD)を合成する手順とした。OD型アニオン交換樹脂については、酸化カルシウムCaOとDOから重水素型の水酸化カルシウムCa(OD)水溶液を得て、この水溶液に硫酸ナトリウムを溶解させてNaODの水溶液を得て、このNaOD水溶液をCl型アニオン交換樹脂に通水してOD型アニオン交換樹脂を得る。過酸化水素については、ペルオキソ二硫酸カリウムKを重水に溶解してDを得る手順とした。
薬剤準備について、更に具体的な手順を述べる。
硫酸DSOについては、二酸化硫黄ガスSOと酸素を原料として準備し、触媒を充填した接触塔に流通させることで三酸化イオウとし、これを重水に吹き込むことで、硫酸DSOを得る。
シュウ酸(COOD)については、無水のシュウ酸カルシウムCa(COO)と、合成したDSOとを原料とする。Ca(COO)を重水に溶解した水溶液にDSOを添加する。CaSOが沈殿するので、溶液を分離すると、(COOD)の重水水溶液を得ることができる。この(COOD)重水水溶液を還元除染剤として使用する。
過マンガン酸DMnOについては、Na型カチオン交換樹脂にDSO重水水溶液を通水してD型カチオン交換樹脂を準備する。続いて、このD型カチオン交換樹脂に過マンガン酸カリウムの重水水溶液を通水することで、DMnOの重水水溶液を得ることができる。これを酸化除染材として使用する。なお、D型カチオン交換樹脂については、この工程で準備しておき、化学除染装置1の陽イオン交換樹脂塔23及び混床樹脂塔24のカチオン交換樹脂として使用する。
OD型アニオン交換樹脂については、はじめに、酸化カルシウムCaOを重水に溶解させて、水酸化カルシウムCa(OD)の重水水溶液を得る。水溶液を分離した後、この水溶液に硫酸ナトリウムを溶解させると、硫酸カルシウムが沈殿し、水酸化ナトリウムNaODの重水水溶液を得る。この水酸化ナトリウムNaOD重水水溶液をCl型アニオン交換樹脂に通水することで、OD型アニオン交換樹脂を得る。このOD型アニオン交換樹脂を混床樹脂塔24に充填する。
過酸化水素については、ペルオキソ二硫酸カリウムを重水に溶解させる。すると、過酸化水素Dと硫酸カリウムKSOの混合重水水溶液が得られる。そこから過酸化水素を分離するため、この混合溶液を原料として蒸留を行うと、Dの重水水溶液を分離できる。これを化学除染の還元除染剤分解工程の薬剤として使用する。
ヒドラジンについては、Nの合成反応が複雑であるため、原子力発電プラント内でこの合成反応を行うのは難しい。そこで、ヒドラジンに起因する軽水持込量を低減する方法として、ヒドラジンに付随する抱水を除去する方法を考えた。
入手が容易なヒドラジンの形態は、N・HOの水溶液である。これは、付随するHOを取り除くと反応性が激しくなり、取り扱いが厳しくなる。このため、抱水ヒドラジンとして取り扱う方が容易であることによる。このN・HOの水溶液から軽水成分を取り除く方法を検討した。
・HOの水溶液をカチオン交換樹脂に通水すると、カチオン樹脂のカチオン吸着部分にN を吸着した樹脂が得られる。これにDSOの重水水溶液を通水すると、イオン交換によってN 及びDSOを含む重水水溶液が得られる。これを蒸留することで、N・DOを得ることができる。
このようにして準備した、水素原子を重水素原子に置換した薬剤を、実施例1の薬剤として使用することで、薬剤に起因する重水の軽水混入を低減できる。これにより、化学除染終了後の軽水分離のための重水浄化工程の負荷を低減できる。
1:化学除染装置、2:循環配管、4:エゼクタ、5:ホッパ、8、13:薬液タンク、9、14:注入ポンプ、16、44:注入配管、7:過酸化水素注入装置、12:pH調整剤注入装置、17:サージタンク、19:加熱器、20、26:循環ポンプ、21:フィルタ、22:冷却器、23:陽イオン交換樹脂塔、24:混床樹脂塔、25:分解装置、76:放射線検出器、100:カナダ型原子炉、101:燃料集合体、102:圧力管、103:加圧器、104:再循環ポンプ、105:蒸気発生器、106:タービン、107:復水器、108:給水ポンプ、109:カランドリアタンク、110:一次冷却系配管、111:弁。

Claims (17)

  1. 重水を用いる原子力発電プラントにおける化学除染をする際に用いる薬剤が、通常の化学構造としては水素原子を含む物質である場合に、前記薬剤の代わりに、前記薬剤に含まれる水素原子のうち少なくとも一部を重水素原子に置き換えた重水素系薬剤を用いる、化学除染方法。
  2. 請求項1記載の化学除染方法であって、
    前記薬剤は、過マンガン酸、シュウ酸、ヒドラジン及び過酸化水素のうち1種類以上である、化学除染方法。
  3. 請求項2記載の化学除染方法であって、
    前記重水素系薬剤は、重水に溶解した状態で用いる、化学除染方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の化学除染方法であって、
    前記重水素系薬剤は、前記原子力発電プラントで用いている前記重水を用いて製造する、化学除染方法。
  5. 請求項4記載の化学除染方法であって、
    前記重水素系薬剤は、前記原子力発電プラント内で製造する、化学除染方法。
  6. 重水を用いる原子力発電プラントにおける化学除染をする際にイオン交換樹脂を用いる工程を含む方法であって、
    前記イオン交換樹脂に含まれる交換可能なイオン種は、重水素イオン又は重水酸化物イオンである、化学除染方法。
  7. 請求項6記載の化学除染方法であって、
    前記重水素イオン又は前記重水酸化物イオンを含む前記イオン交換樹脂である重水素型イオン交換樹脂は、前記原子力発電プラントで用いている前記重水を用いて製造する、化学除染方法。
  8. 請求項7記載の化学除染方法であって、
    前記重水素型イオン交換樹脂は、前記原子力発電プラント内で製造する、化学除染方法。
  9. 請求項1記載の化学除染方法であって、
    前記重水素系薬剤の一つは、重水素原子を含むシュウ酸である重水素系シュウ酸であり、
    前記重水素系シュウ酸の重水水溶液は、二酸化硫黄、酸素及び重水を原料として、重水素原子を含む硫酸である重水素系硫酸の重水水溶液を製造し、前記重水素系硫酸の重水水溶液及び無水シュウ酸塩を原料として製造することにより得、化学除染に用いる、化学除染方法。
  10. 請求項6記載の化学除染方法であって、
    前記重水素イオンを含む前記イオン交換樹脂である重水素型カチオン交換樹脂は、二酸化硫黄、酸素及び重水を原料として、重水素原子を含む硫酸である重水素系硫酸の重水水溶液を製造し、前記重水素系硫酸の重水水溶液をカチオン交換樹脂に通すことにより製造する、化学除染方法。
  11. 請求項10記載の化学除染方法であって、
    前記重水素型カチオン交換樹脂に過マンガン酸カリウムの重水水溶液を通すことにより、重水素原子を含む過マンガン酸である重水素系過マンガン酸の重水水溶液を製造し、前記重水素系過マンガン酸の重水水溶液を化学除染に用いる、化学除染方法。
  12. 請求項6記載の化学除染方法であって、
    前記重水素イオンを含む前記イオン交換樹脂である重水素型カチオン交換樹脂は、化学除染装置の構成要素であるカチオン交換樹脂塔及び混床樹脂塔のうち少なくとも一つの材料として用いる、化学除染方法。
  13. 請求項6記載の化学除染方法であって、
    前記重水酸化物イオンを含む前記イオン交換樹脂である重水素型アニオン交換樹脂は、酸化カルシウムを重水に溶解して、重水素原子を含む水酸化カルシウムである重水素系水酸化カルシウムの重水水溶液を製造し、前記重水素系水酸化カルシウムの重水水溶液に硫酸ナトリウムを溶解して、重水素原子を含む水酸化ナトリウムである重水素系水酸化ナトリウムの重水水溶液を製造し、前記重水素系水酸化ナトリウムの重水水溶液をアニオン交換樹脂に通すことにより製造する、化学除染方法。
  14. 請求項13記載の化学除染方法であって、
    前記重水素型アニオン交換樹脂は、化学除染装置の構成要素である混床樹脂塔の材料として用いる、化学除染方法。
  15. 請求項1記載の化学除染方法であって、
    前記重水素系薬剤の一つは、重水素原子を含む過酸化水素である重水素系過酸化水素であり、
    前記重水素系過酸化水素の重水水溶液は、ペルオキソ二硫酸塩を重水に溶解して、前記重水素系過酸化水素の重水水溶液を含む溶液を製造し、この溶液を蒸留することにより前記重水素系過酸化水素の重水水溶液を分離することにより得、化学除染に用いた還元剤を分解するための酸化剤として用いる、化学除染方法。
  16. 請求項5記載の化学除染方法であって、
    さらに、前記化学除染をする際にイオン交換樹脂を用いる工程を含み、
    前記イオン交換樹脂に含まれる交換可能なイオン種は、重水素イオンであり、
    二酸化硫黄、酸素及び重水を原料として、重水素原子を含む硫酸である重水素系硫酸の重水水溶液を製造し、
    前記重水素系硫酸の重水水溶液をカチオン交換樹脂に通すことにより、前記重水素イオンを含む前記イオン交換樹脂である重水素型カチオン交換樹脂を製造し、
    前記重水素型カチオン交換樹脂に過マンガン酸カリウムの重水水溶液を通すことにより、重水素原子を含む過マンガン酸である重水素系過マンガン酸の重水水溶液を製造し、
    前記重水素系硫酸の重水水溶液及び無水シュウ酸塩を原料として、重水素原子を含むシュウ酸である重水素系シュウ酸の重水水溶液を製造し、
    前記重水素系過マンガン酸及び前記重水素系シュウ酸を用いて前記化学除染を行う、化学除染方法。
  17. 請求項1記載の化学除染方法であって、
    酸化除染工程と、還元除染工程と、を含み、
    前記還元除染工程で用いるpH調整剤は、ヒドラジンであり、
    前記ヒドラジンは、通常の化学構造として水素原子を含むものであって重水を抱水とするものであり、
    前記ヒドラジンの水溶液をカチオン交換樹脂に通してヒドラジン飽和のカチオン交換樹脂を製造し、このヒドラジン飽和のカチオン交換樹脂に、重水素原子を含む硫酸である重水素系硫酸の重水水溶液を通して得られた流出液を蒸留することにより得られたヒドラジンの重水水溶液を前記pH調整剤として用いる、化学除染方法。
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