JP7411502B2 - 原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 - Google Patents

原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7411502B2
JP7411502B2 JP2020088031A JP2020088031A JP7411502B2 JP 7411502 B2 JP7411502 B2 JP 7411502B2 JP 2020088031 A JP2020088031 A JP 2020088031A JP 2020088031 A JP2020088031 A JP 2020088031A JP 7411502 B2 JP7411502 B2 JP 7411502B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
decontamination
oxalic acid
carbon steel
aqueous solution
iron
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020088031A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021181953A (ja
Inventor
秀幸 細川
剛 伊藤
信之 太田
高史 大平
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi GE Nuclear Energy Ltd
Original Assignee
Hitachi GE Nuclear Energy Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi GE Nuclear Energy Ltd filed Critical Hitachi GE Nuclear Energy Ltd
Priority to JP2020088031A priority Critical patent/JP7411502B2/ja
Publication of JP2021181953A publication Critical patent/JP2021181953A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7411502B2 publication Critical patent/JP7411502B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E30/00Energy generation of nuclear origin
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E30/00Energy generation of nuclear origin
    • Y02E30/30Nuclear fission reactors

Landscapes

  • Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)

Description

本発明は、原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法に係り、特に、沸騰水型原子力プラントの放射性核種で汚染された炭素鋼部材の廃棄処理前の除染に適用するのに好適な原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法に関する。
例えば、沸騰水型原子力プラント(以下、BWRプラントという)は、原子炉圧力容器(RPVと称する)内に炉心を内蔵した原子炉を有する。再循環ポンプ(またはインターナルポンプ)によって炉心に供給された炉水は、炉心内に装荷された燃料集合体内の核燃料物質の核***で発生する熱によって加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、RPVからタービンに導かれ、タービンを回転させる。タービンから排出された蒸気は、復水器で凝縮され、水になる。この水は、給水として原子炉に供給される。給水は、RPV内での放射性腐食生成物の発生を抑制するため、給水配管に設けられたろ過脱塩装置で主として金属不純物が除去される。炉水とは、RPV内に存在する冷却水である。
放射性腐食生成物の元となる腐食生成物は、RPV及び再循環系配管等のBWRプラントの構成部材の炉水と接する表面で発生するため、主要な一次系の構成部材には腐食の少ないステンレス鋼及びニッケル基合金などの不銹鋼が使用されている。また、低合金鋼製のRPVは内面にステンレス鋼の肉盛りが施され、低合金鋼が、直接、炉水と接触することを防いでいる。さらには、炉水の一部を原子炉浄化系のろ過脱塩装置によって浄化し、炉水中に僅かに存在する金属不純物を積極的に除去している。
しかし、上述のような腐食対策を講じても、炉水中における極僅かな金属不純物の存在が避けられないため、一部の金属不純物が、金属酸化物として、燃料集合体に含まれる燃料棒の表面に付着する。燃料棒表面に付着した不純物(例えば、金属元素)は、燃料棒内の核燃料物質の核***により放出される中性子の照射によって原子核反応を起こし、コバルト60,コバルト58,クロム51,マンガン54等の放射性核種になる。
これらの放射性核種は、大部分が酸化物の形態で燃料棒表面に付着したままである。しかしながら、一部の放射性核種は、取り込まれている酸化物の溶解度に応じて炉水中にイオンとして溶出したり、クラッドと呼ばれる不溶性固体として炉水中に再放出されたりする。炉水に含まれる放射性物質は、RPVに連絡された原子炉浄化系によって取り除かれる。原子炉浄化系で除去されなかった放射性物質は炉水とともに再循環系などを循環している間に、原子力プラントの構成部材(例えば、配管)の炉水と接触する表面に蓄積される。その結果、構成部材の表面から放射線が放射され、定検作業時の従事者の放射線被ばくの原因となる。
その従事者の被ばく線量は、各人毎に規定値を超えないように管理されている。近年この規定値が引き下げられ、各人の被ばく線量を可能な限り低くする必要が生じている。
そこで、定検作業での被ばく線量が高いことが予想される場合は、配管に付着した放射性核種を溶解して除去する化学除染が実施される場合がある。例えば、特開2000-105295号公報では、シュウ酸及びヒドラジンを含む還元除染液による還元溶解、この還元溶解に用いた還元除染剤(シュウ酸)の分解、及び過マンガン酸カリウムによる酸化溶解を組み合わせた原子力発電プラントの化学除染方法が提案されている。
特開2003-90897号公報に記載された炭素鋼部材の化学除染方法では、シュウ酸水溶液及びギ酸水溶液が用いられる。ギ酸水溶液の替りにギ酸及び過酸化水素(またはオゾン)を含む水溶液を用いることも記載されている。この化学除染方法では、シュウ酸水溶液による原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染を行って炭素鋼部材表面に存在する放射性核種を含む酸化膜を除去し、この除染終了後に、シュウ酸を分解する。さらに、シュウ酸分解後に、ギ酸水溶液またはギ酸及び過酸化水素(またはオゾン)を含む水溶液を、酸化膜を除去した炭素鋼部材に接触させ、炭素鋼部材表面に残留したシュウ酸鉄を除去する。
特開2002-333498号公報には、有機酸(例えば、シュウ酸またはギ酸)及び過酸化水素を含む水溶液を用いて炭素鋼部材を除染する化学除染方法が提案されている。ギ酸及び過酸化水素を含む水溶液を用いた場合には、過酸化水素を含まないで有機酸単独の水溶液を用いた場合に比べて酸化皮膜の溶出速度が増大し、炭素鋼表面から放射性核種を短時間に除去することができる。
特開2015-28432号公報には、酸素を溶解させたシュウ酸水溶液を用いて原子力プラントの炭素鋼部材を除染する化学除染方法が提案されている。炭素鋼部材表面に形成されるシュウ酸鉄(II)が溶存酸素によって酸化されてシュウ酸鉄(III)錯体となって溶解するため、炭素鋼部材の還元除染に要する時間を短縮することができる。また、シュウ酸水溶液に酸素を溶解させているため、このシュウ酸水溶液を陽イオン交換樹脂に接触させても、陽イオン交換樹脂の劣化を抑制することができる。
特開2018-159647号公報に記載された化学除染方法では、シュウ酸水溶液を用いた還元除染により、原子力プラントの配管系内面に形成された金属酸化皮膜を溶解させ、3価の鉄イオンの発生源を減少させる。紫外線がシュウ酸水溶液に照射され、シュウ酸水溶液に含まれる3価の鉄イオンが2価の鉄イオンに還元される。還元により生成された、シュウ酸水溶液に含まれる2価の鉄イオンが、イオン交換樹脂に吸着されて除去される。
特開2000-105295号公報 特開2003-90897号公報 特開2002-333498号公報 特開2015-28432号公報 特開2018-159647号公報 特開2018-48831号公報
特開2000-105295号公報及び特開2004-286471号公報の化学除染では、ステンレス鋼製の構造部材が除染対象であり、還元除染液でこの構造部材の還元除染を行った場合には、還元除染液中の鉄濃度はシュウ酸鉄(II)が析出するほどには上昇しない。
しかし、除染対象が炭素鋼部材である場合には、除染によりシュウ酸水溶液の鉄濃度が上昇し、炭素鋼部材の母材、及び炭素鋼部材表面の酸化皮膜であるマグネタイトの溶解によって供給されるFe2+がシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸と錯体を形成し、シュウ酸鉄(II)二水和物として析出する可能性がある。このシュウ酸鉄(II)二水和物は、溶解度が低いため、Fe2+の主な発生源である炭素鋼部材の表面に析出する。Fe2+が酸化皮膜の表面に析出すると、シュウ酸による酸化皮膜の溶解が阻害され、酸化皮膜に含まれる放射性核種の溶解も抑制されるため、化学除染効率が低下するという問題が生じる。
特開2003-90897号公報では、シュウ酸水溶液による炭素鋼部材表面の還元除染により、前述のシュウ酸鉄(II)二水和物が炭素鋼部材表面に存在する未溶解の酸化皮膜の表面に析出する可能性がある。この場合には、その酸化皮膜の還元除染に要する時間が長くなる。炭素鋼部材表面の未溶解の酸化皮膜の表面に析出したシュウ酸鉄(II)二水和物はギ酸水溶液により除去できる。しかしながら、還元除染時において炭素鋼部材の表面に析出するシュウ酸鉄(II)二水和物の量が多くなるため、ギ酸水溶液によるシュウ酸鉄(II)二水和物の除去に長時間を要することになる。
特開2002-333498号公報に記載された化学除染方法は、還元除染剤である有機酸に過酸化水素を添加することにより炭素鋼部材表面の酸化皮膜の溶解力を向上させている。しかしながら、過酸化水素は陽イオン交換樹脂を劣化させるため、還元除染時において、過酸化水素を含むシュウ酸水溶液を陽イオン交換樹脂塔へ供給することができない。このため、還元除染により発生して還元除染液に含まれる放射性の溶解成分及び非放射性の溶解成分が除去できなくなる。
特開2015-28432号公報では、特開2002-333498号公報の問題を開所するために、シュウ酸水溶液に酸素を供給して酸素飽和のシュウ酸水溶液を生成し、これを用いて炭素鋼部材の還元除染を行っている。これにより、シュウ酸水溶液に溶解したFe2+がシュウ酸鉄(II)二水和物を生成する反応と、Fe2+と溶存酸素が反応してFe3+となる反応が競合すると共に、生成されたシュウ酸鉄(II)二水和物にも溶存酸素が作用してそれに含まれるFe2+をFe3+に酸化することにより、シュウ酸鉄(II)二水和物の蓄積が抑制され、シュウ酸鉄(II)二水和物の生成による除染効率の低下が抑制される。
炭素鋼部材の除染効率の改善を図るために、シュウ酸水溶液へのシュウ酸以外の有機酸の注入、または、シュウ酸水溶液への過酸化水素または酸素の注入が行われる。これらの注入によって、母材である炭素鋼部材及び炭素鋼部材表面の酸化皮膜の溶解が進む。これらの方法では、シュウ酸水溶液に溶出した鉄イオン及び放射性核種のイオンを、陽イオン交換樹脂に吸着させてシュウ酸水溶液から回収する。しかしながら、炭素鋼部材の還元除染では、溶出する放射性核種イオンに対して溶出する鉄イオンの量が多いため、陽イオン交換樹脂が多量に消費されることになる。特に、クリアランスを目指す還元除染では、炭素鋼部材側をより深く溶解する必要があり、溶出する鉄イオンの量が増加し、鉄イオンを吸着する陽イオン交換樹脂の量も必然的に増加する。
本発明の目的は、炭素鋼部材の還元除染を促進させ、陽イオン交換樹脂の使用量を低減できる原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、シュウ酸水溶液を用いて原子力プラントの炭素鋼部材の還元除染を実施し、その還元除染が実施されているときに、シュウ酸水溶液に酸化剤を注入し、その後、その還元除染を行ったシュウ酸水溶液に紫外線を照射してシュウ酸水溶液内でシュウ酸鉄(II)二水和物を析出させることにある。
還元除染液であるシュウ酸水溶液に酸化剤を注入するため、シュウ酸水溶液により還元除染された、原子力プラントの炭素鋼部材の表面に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物が、その酸化剤の作用によって溶解され、炭素鋼部材の表面から除去される。このため、シュウ酸水溶液による、炭素鋼部材の還元除染が促進される。さらに、還元除染を行ったシュウ酸水溶液に紫外線を照射してシュウ酸水溶液内でシュウ酸鉄(II)二水和物を析出させるので、シュウ酸水溶液に含まれる陽イオン(例えば、Fe2+)が減少し、陽イオン交換樹脂に吸着される陽イオンの量が減少する。このため、陽イオン交換樹脂の寿命が延び、陽イオン交換樹脂の使用量を低減することができる。
好ましくは、析出したシュウ酸鉄(II)二水和物をシュウ酸水溶液から除去することが望ましい。シュウ酸水溶液に含まれた放射性核種が析出したシュウ酸鉄(II)二水和物に取り込まれているため、シュウ酸鉄(II)二水和物をシュウ酸水溶液から除去することによって、シュウ酸鉄(II)二水和物に取り込まれた放射性核種も、シュウ酸鉄(II)二水和物と共にシュウ酸水溶液から除去される。この結果、シュウ酸水溶液に含まれる放射性核種の濃度が減少し、シュウ酸水溶液の線量が低下する。シュウ酸鉄(II)二水和物に取り込まれる放射性核種は実質的に陽イオンであるため、陽イオン交換樹脂に吸着される放射性核種のイオンの量も減少し、陽イオン交換樹脂の寿命がさらに伸び、陽イオン交換樹脂の使用量をさらに低減することができる。
本発明によれば、炭素鋼部材表面における還元除染を促進させ、陽イオン交換樹脂の使用量を低減することができる。
本発明の好適な一実施例である、沸騰水型原子力プラントから発生する炭素鋼部材の廃材の除染に適用される実施例1の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法の手順を示すフローチャートである。 実施例1の化学除染方法を適用する炭素鋼部材の廃材が発生する沸騰水型原子力プラントの構成図である。 実施例1の化学除染方法に用いられる化学除染装置の構成図である。 炭素鋼部材表面におけるシュウ酸鉄(II)二水和物形成量に対する、シュウ酸水溶液から形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物へのCo-60の移行割合を調べた試験結果を示す説明図である。 シュウ酸水溶液のシュウ酸濃度に対する、シュウ酸鉄(II)二水和物及びFeのそれぞれから溶出する鉄の濃度を調べた試験結果を示す説明図である。 本発明の好適な他の実施例である、沸騰水型原子力プラントから発生する炭素鋼部材の廃材の除染に適用される実施例2の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法の手順を示すフローチャートである。 本発明の好適な他の実施例である、沸騰水型原子力プラントから発生する炭素鋼部材の廃材の除染に適用される実施例3の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法の手順を示すフローチャートである。 本発明の好適な他の実施例である、沸騰水型原子力プラントから発生する炭素鋼部材の廃材の除染に適用される実施例4の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法に用いられる化学除染装置の構成図である。 本発明の好適な他の実施例である、沸騰水型原子力プラントの炭素鋼部材、例えば、浄化系配管に適用される実施例5の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法の手順を示すフローチャートである。 実施例5の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を実施する際に用いられる化学除染装置を沸騰水型原子力発電プラントの浄化系配管に接続した状態を示す説明図である。 図10に示す化学除染装置の構成図である。
発明者らは、除染溶液に溶解した放射性核種イオン及び鉄イオンのそれぞれを除染溶液から分離する方法として、イオン交換樹脂を用いない方法について検討し、シュウ酸鉄(II)二水和物の析出反応の利用を考えた。
シュウ酸鉄(II)二水和物(Fe(C)・2HO)はシュウ酸を使用する除染で炭素鋼部材の表面に析出する。シュウ酸鉄(II)二水和物の析出により炭素鋼部材の除染効率が低下する。このため、炭素鋼部材の除染効率の向上を目的として炭素鋼部材表面に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物を溶解させるため、シュウ酸以外の有機酸がシュウ酸水溶液に注入され、または、Fe2+を酸化させてFe3+にする酸化剤がシュウ酸水溶液に注入される。溶解した放射性核種イオン及び鉄イオンは、陽イオン交換樹脂に吸着されることによって、シュウ酸水溶液から除去される。しかしながら、発明者らは、溶解したFe3+をFe2+に還元し、シュウ酸鉄(II)二水和物を炭素鋼部材表面に形成させて析出させ、分離できないかと考えた。
そこで、溶解した放射性核種イオンが析出するシュウ酸鉄(II)二水和物に取り込まれるかを確認するため、Co-60が添加されたシュウ酸水溶液に炭素鋼を浸漬させて炭素鋼表面に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物の形成量、及びその水溶液に含まれるCo-60のシュウ酸鉄(II)二水和物への移行割合をそれぞれ調べた。この結果を図4に示す。図4によれば、炭素鋼表面へのシュウ酸鉄(II)二水和物の形成に伴ってCo-60がシュウ酸水溶液から形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物に取り込まれて行くことが分かる。
なお、シュウ酸水溶液に含まれるCo-60の全てがシュウ酸水溶液から除去されていないのは、今回の試験条件では、シュウ酸鉄(II)二水和物の形成が炭素鋼表面で行われたため、炭素鋼表面がシュウ酸鉄(II)二水和物で被覆されることにより炭素鋼表面でのシュウ酸鉄(II)二水和物の形成が抑制されたためである。もし、シュウ酸鉄(II)二水和物の形成が継続されると、シュウ酸水溶液に含まれるCo-60は全て除去されると考えられる。
続いて、Fe3+をFe2+に還元することで、どの程度の溶解鉄がシュウ酸鉄(II)二水和物としてシュウ酸水溶液から除去されるかについて検討した。この検討を行うにあたり、まず、シュウ酸水溶液のシュウ酸濃度に対する、シュウ酸水溶液におけるFe及びシュウ酸鉄(II)二水和物のそれぞれの溶解度を調べた。これらの溶解度を調べる試験では、窒素パージをして遮光した90℃の水に、Feの粉末またはシュウ酸鉄(II)二水和物の粉末を添加し、その水の鉄濃度を測定した。測定後、その水にシュウ酸を添加し、1時間程度、その水に溶解させた後、水の一部をサンプリングしてFe濃度及びシュウ酸濃度のそれぞれを測定した。この作業を繰り返し、シュウ酸濃度と溶解鉄濃度の関係をFe及びシュウ酸鉄(II)二水和物のそれぞれについて調べた。
その結果を図5に示した。Feから溶解する、△で示すFe3+の濃度(鉄濃度)は、シュウ酸水溶液のシュウ酸濃度の増加と共に直線的に増加する。一方、シュウ酸鉄(II)二水和物から溶解する、〇で示すFe2+の濃度(鉄濃度)は、シュウ酸水溶液のシュウ酸濃度500ppm程度までは約50ppmまで増加し、更に、そのシュウ酸濃度を増加させてもシュウ酸濃度5500ppmで80ppmまでしか増加せず、シュウ酸濃度に対して飽和傾向を示した。シュウ酸濃度が約500ppm以上ではFeから溶解したFe3+の濃度の方が、シュウ酸鉄(II)二水和物から溶解したFe2+の濃度よりも大きくなっている。シュウ酸濃度500ppm以上におけるFe3+濃度とFe2+濃度の差分が、Fe3+をFe2+に還元した際に析出する鉄濃度に相当する。
例えば、シュウ酸濃度5500ppmのシュウ酸水溶液を用いた還元除染により、炭素鋼部材の表面に形成されたFe皮膜を溶解させ、この溶解によって溶出したFe3+を含むシュウ酸水溶液に紫外線を照射する。この紫外線照射によって、シュウ酸水溶液に含まれるFe3+をFe2+に還元すると、約1200ppm分の鉄がシュウ酸鉄(II)二水和物としてシュウ酸水溶液内に析出する。ここで、紫外線照射による、シュウ酸水溶液に含まれるFe3+のFe2+への還元反応は、(1)式及び(2)式で表される。
Figure 0007411502000001
Figure 0007411502000002
なお、(1)式の左辺(「→」の左側)に存在する「FeIII(C) 3-」は、シュウ酸鉄(III)錯体である。シュウ酸鉄(III)錯体は、上記したように、シュウ酸水溶液により炭素鋼部材の表面に形成されたFe皮膜を溶解するとき、下記に示す(3)式の反応によって生成される。
Fe + 3C → Fe3+ + 3HO + 3C 2-
→ Fe(III)(C) 3- + 3HO …(3)
シュウ酸水溶液に溶解したFe3+をFe2+の形態にすることによりシュウ酸水溶液内でFe2+濃度が飽和溶解度を越えた場合には、Fe2+がシュウ酸鉄(II)二水和物として析出する。その際、シュウ酸水溶液に溶解した放射性核種(例えば、Co-60)がシュウ酸鉄(II)二水和物に取り込まれるので、シュウ酸水溶液をイオン交換樹脂に接触させる前で、析出したシュウ酸鉄(II)二水和物を、フィルタ等の除去装置でシュウ酸水溶液から除去することにより、シュウ酸水溶液に含まれる鉄イオン及びCo-60等の放射性核種イオンのそれぞれを除去することができ、イオン交換樹脂の使用量も低減することができる。
以上の検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である、沸騰水型原子力プラントから発生する炭素鋼部材の廃材の除染に適用される実施例1の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、図1、図2及び図3を用いて説明する。その炭素鋼部材の廃材(例えば、炭素鋼製配管の廃材)は、沸騰水型原子力プラントの廃止措置、または、沸騰水型原子力プラントの炭素鋼部材の交換作業において、既設の炭素鋼部材の切断除去により発生する。
本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法が適用される炭素鋼部材の廃材が発生する沸騰水型原子力プラントの概略構成を、図2を用いて説明する。BWRプラント1は、原子炉2、タービン9、復水器10、再循環系、原子炉浄化系、残留熱除去系及び給水系等を備えている。原子炉格納容器72内に設置された原子炉2は、炉心4を内蔵する原子炉圧力容器(以下、RPVという)3を有し、RPV3内に複数のジェットポンプ5を設置している。複数の燃料集合体(図示せず)が炉心4に装荷されている。各燃料集合体は、核燃料物質で製造された複数の燃料ペレットを充填した複数の燃料棒を含んでいる。再循環系は再循環ポンプ7及びステンレス鋼製の再循環系配管6を有し、再循環ポンプ7が再循環系配管6に設置されている。
給水系は、復水器10とRPV3を連絡する給水配管11に、復水ポンプ12、復水浄化装置13、低圧給水加熱器14、給水ポンプ15及び高圧給水加熱器16を復水器10からRPV3に向かってこの順番に設置して構成される。復水浄化装置13をバイパスするバイパス配管19が給水配管11に接続される。
原子炉水浄化系は、再循環系配管6と給水配管11を連絡する浄化系配管20に、浄化系ポンプ21,再生熱交換器22,非再生熱交換器23及び浄化装置24を設置して構成される。浄化系配管20の一端が再循環ポンプ7より上流で再循環系配管6に接続され、浄化系配管20の他端が給水配管11に接続される。
残留熱除去系は、浄化系配管20とRPV3を連絡する残留熱除去系配管27に、ポンプ28及び非再生熱交換器29を設置して構成される。残留熱除去系配管27の一端は浄化系ポンプ21より上流で浄化系配管20に接続され、残留熱除去系配管27の他端はRPV3に接続される。
RPV3内の冷却水(炉水)は、再循環ポンプ7で昇圧され、再循環系配管6を通ってジェットポンプ5のノズル(図示せず)からジェットポンプ5のベルマウス(図示せず)内に噴出される。このノズルの周囲に存在する炉水も、ノズルから噴出される炉水の噴出流の作用により、ベルマウス内に吸引される。ジェットポンプ5から吐出された炉水は、炉心4に供給され、燃料棒内の核燃料物質の核***で発生する熱によって加熱される。加熱された炉水の一部が蒸気になる。この蒸気は、RPV3から主蒸気配管8を通ってタービン9に導かれ、タービン9を回転させる。タービン9に連結された発電機(図示せず)が回転され、電力が発生する。タービン9から排出された蒸気は、復水器10で凝縮され、水になる。
この水は、給水として、給水配管11を通りRPV3内に供給される。給水配管11を流れる給水は、復水ポンプ12で昇圧され、復水浄化装置13で不純物が除去され、給水ポンプ15でさらに昇圧され、低圧給水加熱器14及び高圧給水加熱器16で加熱される。抽気配管17で主蒸気配管8,タービン9から抽気された抽気蒸気が、低圧給水加熱器14及び高圧給水加熱器16にそれぞれ供給され、給水の加熱源となる。
再循環系配管6内を流れる炉水の一部は、浄化系ポンプ21の駆動によって浄化系配管20内に流入し、再生熱交換器22、非再生熱交換器23で冷却されて浄化装置24に導かれる。その炉水に含まれるよってイオン成分及びクラッド成分は浄化装置24によって除去される。浄化装置24から排出された、浄化された炉水は、再生熱交換器22で加熱されて給水配管11に導かれ、RPV3に供給される。
本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法に用いられる化学除染装置31の詳細な構成を、図3を用いて説明する。化学除染装置31は、除染槽32、循環ポンプ34、循環配管35、酸化剤注入装置39、紫外線照射装置47、フィルタ48、カチオン樹脂塔(陽イオン吸着装置)56及び混床樹脂塔61を備える。循環配管35の一端は除染槽32の底部に接続され、循環配管35の他端は、例えば、除染槽32の頂部に接続される。除染槽32及び循環配管35によって閉ループ(以下、第1閉ループという)が形成される。加熱器33が除染槽32に取り付けられる。
開閉弁36、循環ポンプ34、弁45及び37、及び開閉弁38が、この順番で上流から下流に向かって、循環配管35に設置されている。酸化剤注入装置39が、開閉弁38の下流で循環配管35に接続されている。本実施例で用いられる酸化剤注入装置39は、過酸化水素注入装置である。酸化剤注入装置39は、薬液タンク40、注入ポンプ41及び注入配管42を有する。弁43を有する注入配管42が、薬液タンク40と循環配管35を接続する。注入ポンプ41が注入配管42に設けられる。酸化剤である過酸化水素が薬液タンク40に充填されている。酸化剤としては、過酸化水素、酸素及びオゾンのいずれかが用いられる。
弁37をバイパスする配管59が、循環配管35に接続される。具体的には、配管59の一端が弁45と弁37の間で循環配管35に接続され、配管59の他端が弁37の下流で循環配管35に接続される。弁57及び58、及びカチオン樹脂塔56が、この順番で、配管59の上流から配管59の下流に向かって配管59に設置される。カチオン樹脂塔56は内部に陽イオン交換樹脂を充填している。弁37及び配管59をバイパスする配管64が、循環配管35に接続される。具体的には、配管64の一端が、循環配管35と配管59との2つの接続点のうち弁57側の接続点と、弁45との間で、循環配管35に接続される。配管64の他端が、配管59におけるその2つの接続点のうちカチオン樹脂塔56側の接続点と、開閉弁38との間で循環配管35に接続される。弁62、冷却器60、弁63及び混床樹脂塔61が、この順番で、配管64の上流から配管64の下流に向かって配管64に設置される。混床樹脂塔61は、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を充填している。配管65が配管59と配管64に接続される。配管65の一端は弁57と弁58の間で配管59に接続され、配管65の他端は冷却器60と弁63の間で配管64に接続される。弁37よりも上流側において、循環配管35と配管64の接続点は、循環配管35と配管59の接続点よりも上流に位置している。
弁45をバイパスする紫外線照射系配管49の一端が、循環ポンプ34と弁45の間で循環配管35に接続される。また、その紫外線照射系配管49の他端が、循環配管35と配管64の、弁62側の接続点と弁45との間で循環配管35に接続される。弁50、紫外線照射装置47、フィルタ48及び弁51が、この順番で上流から下流に向かって紫外線照射系配管49に設置される。フィルタ48の替りに、サイクロンのような固液分離装置を用いてもよい。注入ポンプ41と弁43の間で注入配管42に接続される一端を有する配管54の他端が、弁50と紫外線照射装置47の間で紫外線照射系配管49に接続される。弁53が配管54に設けられる。フィルタ48及び弁51をバイパスする配管55の一端が紫外線照射装置47とフィルタ48の間で紫外線照射系配管49に接続され、配管55の他端が、弁45よりも下流側に存在する、循環配管35と紫外線照射系配管49の接続点と、循環配管35と配管64の、弁62側の接続点の間で、循環配管35に接続される。
BWRプラント1は、1サイクルの運転サイクルでの運転が終了した後に停止される。BWRプラント1の停止操作では、炉心4に装荷された燃料集合体内の核燃料物質で発生する崩壊熱及び残留熱を除去するために、残留熱除去系が稼働される。弁30を開いてポンプ28を駆動する。ポンプ28の駆動によりRPV3内の炉水が、再循環系配管6及び浄化系配管20を介して残留熱除去系配管27に流入する。残留熱除去系に導入された炉水は、非再生熱交換器29によって冷却され、残留熱除去系配管27及び給水配管11を経てRPV3に戻される。残留熱除去系による炉水の冷却が終了した後、BWRプラント1が停止される。
運転停止後に、BWRプラント1に対して定期検査が実施される。この定期検査が終了した後、BWRプラント1が再度起動される。この定期検査の期間中において、炉心4内の一部の燃料集合体が新燃料集合体と交換される。すなわち、炉心4内の一部の燃料集合体が、使用済燃料集合体としてRPV3から取り出され、燃焼度0GWd/tの新燃料集合体が炉心4に装荷される。
BWRプラント1の運転及び定期検査が繰り返され、やがて、BWRプラント1は廃止措置を迎えることになる。廃止措置では、廃止措置作業を行う作業員の被ばく抑制のため、BWRプラント1の構造物に対する除染が実施される場合がある。この除染後には、BWRプラント1の炉内機器及び配管が、除却のために解体される。解体された配管及び炉内機器に対しては、放射性廃棄物量を削減する目的でクリアランス除染が適用される。特に物量の多い炭素鋼部材の廃材についてのクリアランス除染が大多数を占めることになる。炭素鋼部材の廃材の例としては、例えば、炉水浄化系配管及び残留熱除去系配管の廃材がある。
炭素鋼部材の廃材のクリアランスを目的とした除染は、図1に示す手順により実施される。炭素鋼部材の廃材(以下、単に炭素鋼廃材という)を対象にした、実施例1の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、図1を用いて以下に具体的に説明する。
運転を経験したBWRプラント1では、RPV3内の炉水が流れる再循環系配管6及び浄化系配管20等の内面に、放射性核種を含む酸化皮膜が形成されており、この酸化皮膜が廃止措置の解体作業に伴う放射線被ばくを抑制する目的で化学除染により除去される。しかしながら、被ばく抑制目的の化学除染では母材の奥深くに取り込まれた放射性核種を除去できないため、そのままではクリアランス済みの廃材として取り扱うことはできない。クリアランスを可能にするためには炭素鋼部材の母材の奥深くに取り込まれた放射性核種を母材ごと溶解して除去する必要があり、そのためには母材表面を例えば20μm程度溶解する必要がある。
本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法は、BWRプラントの炭素鋼部材の廃材を対象に実施される。この化学除染方法により、炭素鋼製の配管(炭素鋼部材)である、例えば、浄化系配管20の廃材66の内面から酸化皮膜及び母材の表面が除去される。浄化系配管20の廃材66に対する化学除染では、前述の化学除染装置31(図3)が用いられる。
最初に、化学除染対象物である炭素鋼部材の廃材が化学除染装置の除染槽内に収納される(ステップS1)。廃止措置の対象となるBWRプラント1から、浄化系配管20が、所定の長さに切断されて取り外される。所定長さに切断された浄化系配管20の複数本の廃材66(炭素鋼廃材)が、例えば、ステンレス鋼製の金網の籠(図示せず)内に収納される。その廃材66を収納した複数の籠が、上方より、蓋(図示せず)が取り外された除染槽32内に収納される。除染槽32内には水が充填されているため、各浄化系配管20の廃材66が、籠内に収納された状態で、除染槽32内の水に浸漬される。所定本の浄化系配管20の廃材66が除染槽32内に収納された後、蓋が除染槽32の上端に取り付けられ、除染槽32が密封される。このとき、化学除染装置31の全ての弁は閉じられている。そして、開閉弁36,弁45及び37、及び開閉弁38を開いて循環ポンプ34を起動し、還元除染液となる水を除染槽32及び循環配管35を含む第1閉ループ内で循環させる。
その後、循環水を昇温させる(ステップS2)。循環水である前述の水を第1閉ループ内で循環させながら、その循環水を加熱器33により加熱する。この加熱によって、循環水の温度は、90℃までに昇温する。そして、循環水にシュウ酸を添加する(ステップS3)。上記の蓋に設けられた投入口を開放し、この投入口からシュウ酸を除染槽32内の循環水に添加する。添加されたシュウ酸は循環水に溶解し、還元除染液であるシュウ酸水溶液が除染槽32内で生成される。この90℃のシュウ酸水溶液は、循環ポンプ34で昇圧されて循環配管35を含む第1閉ループ内を循環し、除染槽32内の複数本の浄化系配管20の廃材66の内外面に接触する。シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸は、各浄化系配管20の廃材66の内面に形成された、放射性核種を含む酸化皮膜(Fe)を溶解し、やがて、浄化系配管20の廃材66の母材である炭素鋼の表面も溶解される。酸化皮膜に含まれた放射性核種及び鉄、及び廃材66の母材の鉄は、シュウ酸水溶液に溶出する。
還元除染液に酸化剤を注入する(ステップS4)。シュウ酸水溶液による酸化皮膜及び浄化系配管20の廃材66の母材内面の溶解により、Fe2+が生成される。浄化系配管20の廃材66の母材外面もシュウ酸により溶解される。そのFe2+はシュウ酸と反応して難溶性のシュウ酸鉄(II)二水和物を形成する。形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物で浄化系配管20の廃材66の母材の内外面が覆われてしまうと、シュウ酸水溶液による浄化系配管20の廃材66の溶解が進行しなくなり、浄化系配管20の廃材66の還元除染が抑制される。
この課題を解消するために、酸化剤、例えば、過酸化水素がシュウ酸水溶液に注入される。シュウ酸水溶液への過酸化水素の注入は、酸化剤注入装置39によって行われる。弁43を開いて注入ポンプ41を起動することにより、薬液タンク40に充填された過酸化水素が、注入配管42を通して循環配管35内を流れるシュウ酸水溶液に注入される。弁53は閉じている。注入された過酸化水素を含む90℃のシュウ酸水溶液は、除染槽32に供給され、除染槽32内の、各浄化系配管20の廃材66の内外面に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物と接触する。シュウ酸水溶液に含まれる過酸化水素によってそのシュウ酸鉄(II)二水和物のFe2+がFe3+に酸化されるため、シュウ酸鉄(II)二水和物が溶解する。シュウ酸鉄(II)二水和物の溶解により、各浄化系配管20の廃材66の母材の溶解が再び進行する。
炭素鋼部材の廃材を除染槽から取り出す(ステップS5)。シュウ酸水溶液の鉄濃度が、各浄化系配管20の廃材66の母材の溶解が進行して浄化系配管20の廃材66の表面に接触したシュウ酸水溶液の鉄濃度が、例えば、20μm溶解した状態の鉄濃度になったとき、循環ポンプ34を停止させ、除染槽32の蓋を開けて各浄化系配管20の廃材66を、ステップS4の工程で注入した過酸化水素を含むシュウ酸水溶液が存在する除染槽32から取り出す。浄化系配管20の廃材66を除染槽32から取り出す際においても、除染槽32内のシュウ酸水溶液が酸化剤(例えば、過酸化水素)を含んでいる理由は、シュウ酸鉄(II)二水和物がその浄化系配管20の廃材66に形成されることを防止するためである。
なお、除染槽32内の各廃材66の表面積(m)に上記の20μmを乗じて溶解する廃材66の体積を求め、これに廃材66の密度を乗じて溶解する廃材66の質量を算出し、算出された廃材66の質量をシュウ酸水溶液の液量(シュウ酸水溶液の流量に廃材66がシュウ酸水溶液に接触している時間を掛けて得られる値)で除することにより、廃材66の溶解によってシュウ酸水溶液内で増加する鉄濃度を求めることができる。求められたこの鉄濃度は、廃材66の表面に接触するシュウ酸水溶液の鉄濃度である。
除染槽32内に置かれた、複数の廃材66を収納した各籠を除染槽32から順番に取り出す際に、各浄化系配管20の廃材66は、例えば、純水(洗浄液)で洗浄し、その純水は除染槽32に回収される。すなわち、蓋が除染槽32の上端から取り外され、除染槽32内でシュウ酸水溶液に浸漬された、浄化系配管20の複数の廃材66を収納した籠が、順次、そのシュウ酸水溶液の液面よりも上方に引き上げられる。引き上げられた籠内の浄化系配管20の複数の廃材66は、除染槽32の真上で、除染槽32の真上に配置されたシャワーヘッドから噴出する純水により洗浄され、廃材66の表面に付着したシュウ酸水溶液及び放射性核種が洗い流される。洗い流したシュウ酸水溶液及び放射性核種が含まれる純水は、除染槽32内に落下する。
次に、還元除染液に紫外線を照射する(ステップS6)。再び、除染槽32の上端に蓋を取り付けて、除染槽32を封鎖する。弁45及び37を開いて循環ポンプ34を駆動する。除染槽32内のシュウ酸水溶液(還元除染液)は、循環配管35に流入し、弁45及び37、及び開閉弁38を通って除染槽32に戻される。このシュウ酸水溶液は、第1閉ループ内を循環する。シュウ酸水溶液がこの第1閉ループ内で所定時間循環した後、弁50及び51を開いて弁45を閉じる。このとき、弁52及び53は閉じている。
除染槽32から循環配管35に排出されたシュウ酸水溶液は、紫外線照射系配管49によって紫外線照射装置47及びフィルタ48に、順次、供給され、弁45の下流で循環配管35に戻される。シュウ酸水溶液が紫外線照射装置47を通過する際、そのシュウ酸水溶液は紫外線照射装置47から紫外線を照射される。
シュウ酸鉄(II)二水和物を生成し、形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物を除去する(ステップS7)。その紫外線照射により、前述の(1)式及び(2)式の反応が生じてシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸鉄(III)錯体(FeIII(C) 3-)からシュウ酸鉄(II)二水和物が形成される。この結果、シュウ酸水溶液におけるシュウ酸鉄(II)二水和物の濃度が増加し、シュウ酸鉄(II)二水和物がシュウ酸水溶液中に析出する。シュウ酸水溶液に含まれる放射性核種(例えば、Co-60)は、析出したシュウ酸鉄(II)二水和物に取り込まれる。放射性核種が含まれて析出したシュウ酸鉄(II)二水和物を含むシュウ酸水溶液がフィルタ48を通過する際に、そのシュウ酸鉄(II)二水和物がフィルタ48で除去される。析出したシュウ酸鉄(II)二水和物が除去されたシュウ酸水溶液は、フィルタ48から排出され、循環配管35を通って除染槽32に達する。紫外線の照射及び析出したシュウ酸鉄(II)二水和物の除去は、除染槽32、循環配管35及び紫外線照射系配管49を含む閉ループ(以下、第2閉ループという)内をシュウ酸水溶液が循環しながら行われる。前述の紫外線の照射及び析出したシュウ酸鉄(II)二水和物の除去によって、第2閉ループ内を循環するシュウ酸水溶液の鉄濃度が、図5に示すシュウ酸鉄(II)二水和物の飽和溶解度の鉄濃度まで低下する。このシュウ酸鉄(II)二水和物の飽和溶解度の鉄濃度は、シュウ酸水溶液における、〇印で示される各シュウ酸濃度に対する、縦軸の全鉄濃度(ppm)の値である。
還元除染剤(例えば、シュウ酸)を分解する(ステップS8)。析出したシュウ酸鉄(II)二水和物の除去による、還元除染液であるシュウ酸水溶液の鉄濃度の低下が終息した後、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の分解が開始される。ステップS7の工程においてシュウ酸鉄(II)二水和物が生成されるため、ステップS4の工程でシュウ酸水溶液に注入された過酸化水素(酸化剤)は、Fe2+との反応によって消滅する。このため、ステップS8の工程において、薬液タンク40内の過酸化水素を紫外線照射装置47の上流で紫外線照射系配管49に注入する必要がある。
まず、弁52を開いて弁51を閉じる。そして、弁43を閉じて弁53を開き、注入ポンプ41を駆動する。薬液タンク40内の過酸化水素が、注入配管42及び配管54を通って、弁50と紫外線照射装置47との間で紫外線照射系配管49に注入される。その過酸化水素は、具体的には、除染槽32から循環配管35を経て紫外線照射系配管49に到達したシュウ酸水溶液に、紫外線照射装置47の手前で注入される。
紫外線照射装置47からの紫外線が、Fe2+及び過酸化水素を含むシュウ酸水溶液に照射される。この紫外線照射により、シュウ酸水溶液に含まれるFe2+と過酸化水素が、(4)式で表されるフェントン反応を起こし、シュウ酸水溶液内でOHラジカルが生成される。生成されたOHラジカルが、(5)式で示すように、シュウ酸と反応し、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸を二酸化炭素に酸化分解する。
Figure 0007411502000003
Figure 0007411502000004
なお、Fe2+は、浄化系配管20の内面に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物を除去した際に、その飽和溶解度に相当するFe2+がシュウ酸水溶液中に残留することによって存在しているものである。このFe2+と注入された過酸化水素との(4)式に示す反応により生成されたOHラジカルにより、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸が分解され、シュウ酸水溶液のシュウ酸濃度が低下する。シュウ酸濃度の低下に伴ってシュウ酸水溶液に含まれる鉄イオンが水酸化鉄の形態でシュウ酸水溶液中に析出し始める。そこで、注入ポンプ41を停止して弁53を閉じて過酸化水素のシュウ酸水溶液への注入を停止し、シュウ酸分解後に残留するシュウ酸を含むシュウ酸水溶液に含まれる鉄イオンの浄化を始める。
カチオン樹脂塔に通水する(ステップS9)。弁57及び58を開いて弁37を閉じ、循環配管35、及び紫外線照射系配管49内を流れる水溶液を、配管59を通してカチオン樹脂塔56に供給する。このため、紫外線照射装置47による、Fe3+を含むシュウ酸水溶液への紫外線照射により、そのFe3+から生成されたFe2+が、カチオン樹脂塔56内に存在する陽イオン交換樹脂に吸着されてシュウ酸水溶液から除去される。水溶液が、除染槽32、循環配管35、紫外線照射系配管49及び配管59を含む閉ループ(以下、第3閉ループという)を循環している間、シュウ酸水溶液に含まれるFe2+がカチオン樹脂塔56によりが除去される。
シュウ酸水溶液を浄化する(ステップS10)。Fe2+がカチオン樹脂塔56で除去されてシュウ酸水溶液に含まれるFe2+が減少すると、そのシュウ酸水溶液に過酸化水素を注入しても(4)式の反応が生じなくなる。このため、加熱器33への通電を停止し、弁62及び63を開いて弁57及び58を閉じることにより、シュウ酸水溶液をカチオン樹脂塔56ではなく混床樹脂塔61に供給する。混床樹脂塔61に供給される前に、シュウ酸水溶液は、冷却器60で冷却されて温度が低下する。温度が所定の温度まで低下したシュウ酸水溶液に残留するシュウ酸、陽イオン及び陰イオンが、混床樹脂塔61内の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂に吸着されて除去される。このようにして、除染槽32、循環配管35及び紫外線照射系配管49等内に残留するシュウ酸水溶液の浄化が実施される。
廃液を処理する(ステップS11)。上記の浄化工程が終了した後、ポンプ(図示せず)を有する高圧ホース(図示せず)により循環配管35と廃液処理装置(図示せず)を接続する。浄化工程の終了後に、除染槽32、循環配管35及び紫外線照射系配管49等内に残留する、放射性廃液である水溶液は、そのポンプを駆動して循環配管35から高圧ホースを通して廃液処理装置(図示せず)に排出され、廃液処理装置で処理される。除染槽32、循環配管35及び紫外線照射系配管49等内の水溶液が排出された後、洗浄水を除染槽32、循環配管35及び紫外線照射系配管49等内に供給し、循環ポンプ34を駆動してこれらの配管内を洗浄する。洗浄終了後、除染槽32、循環配管35及び紫外線照射系配管49等内の洗浄水を、上記の廃液処理装置に排出する。
本実施例によれば、各浄化系配管20の廃材66の内外面に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物に、酸化剤、例えば、過酸化水素を含むシュウ酸水溶液を接触させることにより、シュウ酸鉄(II)二水和物に含まれるFe2+を過酸化水素によって酸化させてFe3+にし、そのシュウ酸鉄(II)二水和物がシュウ酸鉄(III)錯体としてシュウ酸水溶液中に溶解する。このため、形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物を各浄化系配管20の廃材66の内外面から除去し、シュウ酸水溶液による各浄化系配管20の廃材66の内外面の還元除染、特に、放射性核種を含む酸化皮膜が形成された各浄化系配管20の廃材66内面の還元除染を促進させることができる。
さらに、本実施例では、シュウ酸水溶液をイオン交換樹脂に接触させる前において、シュウ酸鉄(III)錯体を含むシュウ酸水溶液に紫外線を照射することにより、シュウ酸鉄(III)錯体からシュウ酸鉄(II)二水和物が生成される。シュウ酸水溶液におけるシュウ酸鉄(II)二水和物の濃度が増加し、シュウ酸鉄(II)二水和物が微粒子となってシュウ酸水溶液中に析出する。シュウ酸鉄(II)二水和物の析出によって、シュウ酸水溶液の陽イオン(例えば、Fe2+)濃度が減少し、陽イオン交換樹脂に吸着される陽イオンの量が減少する。このため、陽イオン交換樹脂の寿命が伸び、陽イオン交換樹脂の使用量を低減することができる。なお、析出したシュウ酸鉄(II)二水和物は、陽イオン交換樹脂に吸着されない。
シュウ酸水溶液に含まれた放射性核種が析出したシュウ酸鉄(II)二水和物に取り込まれているため、シュウ酸水溶液に含まれた、実質的に陽イオンである放射性核種が析出したシュウ酸鉄(II)二水和物と共にフィルタ48によって除去される。この結果、シュウ酸水溶液の放射性核種濃度が減少し、シュウ酸水溶液の線量を低下することができる。シュウ酸鉄(II)二水和物に取り込まれる放射性核種は実質的に陽イオンであるため、陽イオン交換樹脂に吸着される放射性核種のイオンの量も減少し、陽イオン交換樹脂の寿命が伸びる。このため、陽イオン交換樹脂の使用量をさらに低減することができる。
本実施例によれば、シュウ酸及び酸化剤の共存により浄化系配管20の廃材66の母材を深く(例えば、20μm)溶解することが可能となる。この溶解によりシュウ酸水溶液に溶出した溶解してきた鉄の大部分をイオン交換樹脂を使わずにシュウ酸水溶液から分離することが可能となり、イオン交換樹脂の廃棄物発生量を抑制することができる。
実施例1では、フィルタ48をカチオン樹脂塔56の上流側に配置して、析出したシュウ酸鉄(II)二水和物がフィルタ48で除去されたシュウ酸水溶液をカチオン樹脂塔56に供給している。カチオン樹脂塔56の上流側に配置されたフィルタ48によって除去される、析出したシュウ酸鉄(II)二水和物の量が多くなり、シュウ酸水溶液と共に、カチオン樹脂塔56に流入するシュウ酸鉄(II)二水和物が少なくなる。カチオン樹脂塔56に流入するシュウ酸水溶液に含まれる、Fe2+等の陽イオンの量も少ないため、カチオン樹脂塔56内で陽イオン交換樹脂に吸着される陽イオン(例えば、Fe2+、及び放射性核種の陽イオン等)の量が減少し、その陽イオン交換樹脂の寿命が伸びる。
このように、カチオン樹脂塔56の上流側にフィルタ48を配置するのではなく、フィルタ48をカチオン樹脂塔56の下流に配置してもよい。このフィルタ48は、例えば、カチオン樹脂塔56の下流であって配管64と循環配管35の接続点と開閉弁38との間で循環配管35に設置される。カチオン樹脂塔56の下流にフィルタ48を配置した場合でも、カチオン樹脂塔56の上流で析出してカチオン樹脂塔56に流入したシュウ酸鉄(II)二水和物が、カチオン樹脂塔56内の陽イオン交換樹脂に吸着されず、カチオン樹脂塔56の下流に存在するフィルタ48で除去されるため、その陽イオン交換樹脂に吸着される陽イオンの量が減少し、陽イオン交換樹脂の使用量が低減される。
しかしながら、カチオン樹脂塔56の下流にフィルタ48を配置した場合には、シュウ酸鉄(II)二水和物の微粒子及びFe2+を含むシュウ酸水溶液がカチオン樹脂塔56に供給されると、初めに、そのFe2+が、カチオン樹脂塔56内の陽イオン交換樹脂層における陽イオン交換樹脂のHとイオン交換されて陽イオン交換樹脂に補足され、シュウ酸水溶液から除去される。Fe2+が補足されることにより、陽イオン交換樹脂層内のその陽イオン交換樹脂の下流において、シュウ酸水溶液のFe2+濃度が低下する。すると、シュウ酸水溶液に含まれる微粒子のシュウ酸鉄(II)二水和物からシュウ酸水溶液にFe2+が供給される。このFe2+も、陽イオン交換樹脂層内でさらに下流側に存在する陽イオン交換樹脂のHとイオン交換され、この陽イオン交換樹脂に捕捉される。その陽イオン交換樹脂層において、シュウ酸水溶液に含まれるFe2+と陽イオン交換樹脂のHとのイオン交換、及びシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸鉄(II)二水和物からシュウ酸水溶液へのFe2+の供給が繰り返され、陽イオン交換樹脂層内の陽イオン交換樹脂のイオン交換容量が、陽イオン交換樹脂に吸着されるFe2+で消費される。このため、フィルタ48をカチオン樹脂塔56の下流に配置した場合には、フィルタ48をカチオン樹脂塔56の上流に配置した場合よりも、カチオン樹脂塔56内の陽イオン交換樹脂の使用量が増加する。このため、フィルタ48は、カチオン樹脂塔56の下流側よりも、カチオン樹脂塔56の上流側に配置することが望ましい。
なお、フィルタ48をカチオン樹脂塔56の下流に配置することによって、析出したシュウ酸鉄(II)二水和物を含むシュウ酸水溶液が、フィルタ48よりも前にカチオン樹脂塔56に流入する。析出したシュウ酸鉄(II)二水和物は、イオンではないため、カチオン樹脂塔56内の陽イオン交換樹脂には吸着されない。その析出したシュウ酸鉄(II)二水和物の一部は、カチオン樹脂塔56内の陽イオン交換樹脂層で捕捉され、シュウ酸水溶液から除去される可能性がある。析出したシュウ酸鉄(II)二水和物の大部分は、シュウ酸水溶液と共に、カチオン樹脂塔56内の陽イオン交換樹脂層を通過してカチオン樹脂塔56から排出される。カチオン樹脂塔56から排出されたシュウ酸水溶液に含まれた、析出したシュウ酸鉄(II)二水和物は、循環配管35に設置された、前述のフィルタ48によって除去される。
本実施例では、ステップS8の工程(還元除染剤(例えば、シュウ酸)の分解)で、「酸化剤の注入」及び「紫外線照射」によって、シュウ酸を分解している。「還元除染剤の分解」としては、触媒及び酸化剤を用いる方法が知られている(例えば、特開2018-48831号公報参照)。特開2018-48831号公報は、段落0078~段落0091に、炭素鋼製の浄化系配管に対して実施される、シュウ酸水溶液を用いた還元除染について説明している。シュウ酸水溶液による、浄化系配管の内面に形成された酸化皮膜の溶解によりシュウ酸水溶液において濃度が増加した放射性核種及びFe2+は、カチオン樹脂塔内で陽イオン交換樹脂に吸着されて除去される。カチオン樹脂塔内での放射性核種及びFe2+の除去が終了した後、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸は、分解装置内で触媒(例えば、ルテニウム)及び別途供給される過酸化水素の作用により分解される。シュウ酸の分解工程においても、分解装置から排出された、シュウ酸濃度が低下したシュウ酸水溶液が浄化系配管の内面と接触し、その内面にシュウ酸鉄(II)二水和物を形成する。このシュウ酸鉄(II)二水和物を溶解するために、分解装置への過酸化水素の供給量が増加される。シュウ酸水溶液中の増量した過酸化水素によって、浄化系配管の内面に形成されたそのシュウ酸鉄(II)二水和物はシュウ酸鉄(III)錯体になってシュウ酸水溶液に溶解する。シュウ酸鉄(III)錯体に含まれるFe3+が分解装置内で触媒に付着するため、触媒の、シュウ酸水溶液と接触する表面積が減少し、シュウ酸の分解率が低下する。
しかしながら、触媒を使用しない本実施例では、酸化剤(例えば、過酸化水素)が注入されたシュウ酸水溶液に紫外線を照射してシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸を分解するため、触媒へのFe3+の付着によるシュウ酸の分解率の低下といった問題が生じない。したがって、本実施例におけるシュウ酸の分解率は、触媒を用いた特開2018-48831号公報におけるシュウ酸の分解率よりも高くなる。
BWRプラント1の廃止措置により発生する炭素鋼部材の廃材だけでなく、BWRプラント1から取り外された炭素鋼部材の廃材に対しても、実施例1の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法が適用される。
BWRプラント1の運転停止期間における保守点検において、原子炉圧力容器3に連絡される或る炭素鋼製の配管(例えば、浄化系配管20)の一部が、損傷または減肉等の理由により補修が必要だと判断される場合がある。例えば、浄化系配管20の損傷箇所の補修作業では、浄化系配管20の、損傷部分を含むある範囲が切断して取り外され、浄化系配管20の取り外された部分に新たな配管が溶接で接続される。浄化系配管20から切断されて取り外された配管は、炭素鋼部材の廃材、すなわち、浄化系配管20の廃材66となる。この浄化系配管20の廃材66に対して、化学除染装置31を用い、実施例1におけるステップS1ないしS11の各工程が実施される。
さらに、BWRプラント1の運転停止期間における保守点検において、BWRプラント1における炭素鋼製の配管系に対して改造が実施される場合がある。この配管系の改造の例としては、運転を経験したBWRプラント1において、耐震補強の新たなサポートを設置するために炭素鋼製の配管系の設置ルートを変更する場合、及び被曝線源となる炭素鋼製の配管系の配管長を短縮する場合等が考えられる。配管系の設置ルートの変更及び配管系の配管長の短縮のそれぞれの場合も、設置ルートの変更前の配管系及び配管長の短縮前の配管系において取り外される配管の部分が生じる。それらの取り外された配管の部分は、炭素鋼部材の廃材、すなわち、炭素鋼製配管の廃材66となる。この炭素鋼製配管の廃材66に対して、化学除染装置31を用い、実施例1におけるステップS1ないしS11の各工程が実施される。
補修作業においてBWRプラント1から取り外された浄化系配管20の廃材66、及び配管系の設置ルートの変更及び配管系の配管長の短縮等によりBWRプラント1から取り外された炭素鋼製配管の廃材66等の炭素鋼部材の廃材に対しては、後述の実施例2ないし4の各実施例を適用することが可能である。
本発明の好適な他の実施例である、沸騰水型原子力プラントから発生する炭素鋼部材の廃材の除染に適用される実施例2の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、図6を用いて説明する。その炭素鋼部材の廃材(例えば、炭素鋼製配管の廃材)は、沸騰水型原子力プラントの廃止措置、または、沸騰水型原子力プラントの炭素鋼部材の交換作業において、既設の炭素鋼部材の切断除去により発生する。
本実施例の炭素鋼部材の化学除染方法に用いられる化学除染装置は、実施例1で用いられる化学除染装置31(図3参照)と同じである。
本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法は、実施例1の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法において、形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物の除去工程(ステップS7)と還元除染剤の分解工程(ステップS8)の間に、炭素鋼廃材の追加判定工程(ステップS12)を追加したものである。
実施例1と同様に、廃止措置の対象となるBWRプラント1から取り外された浄化系配管20が、所定の長さに切断されて除染槽32内に収納され(ステップS1)、除染槽32が蓋によって密封される。その後、実施例1で実施されるステップS2ないしステップS5の各工程が、本実施例でも実施される。ステップS3の工程では、シュウ酸鉄(II)二水和物として除去されたシュウ酸を補うため、蓋に設けられた投入口から除染槽32内にシュウ酸を供給する。ステップS4の工程において、酸化剤注入装置39から循環配管35内に過酸化水素が注入される。ステップS5の工程では、シュウ酸水溶液による還元除染が実施された浄化系配管20の廃材66が、除染槽32から取り出される。浄化系配管20の廃材66が除染槽32から取り出された後、除染槽32が蓋で密封される。
ステップS6の工程において、紫外線照射装置47からシュウ酸水溶液に紫外線を照射する。ステップS7において、紫外線照射により、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸鉄(III)錯体からシュウ酸鉄(II)二水和物が形成され、やがて、シュウ酸水溶液内でシュウ酸鉄(II)二水和物が析出する。析出されたシュウ酸鉄(II)二水和物は、フィルタ48によって除去される。
追加の炭素鋼廃材が存在する場合には、ステップS12の判定が「有り」となり、ステップS1で、除染槽32の蓋を取り外し追加の複数の浄化系配管20の廃材66が除染槽32内に収納される。その後、除染槽32が蓋で密封され、ステップS2ないしS7の各工程が、再度、実施される。追加の炭素鋼廃材が存在しない場合には、ステップS12の判定が「無し」となり、ステップS8ないしS11の各工程が実施される。
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例では、原子力プラントの廃止措置で発生した炭素鋼部材の廃材がなくなるまで、化学除染装置31を用いて、除染槽32内に炭素鋼部材の廃材(例えば、浄化系配管20の廃材66)を収納しながらその廃材に対する還元除染を継続することができる。このため、除染槽32内に収納した炭素鋼部材の廃材に対する還元除染に使用したシュウ酸を、次の、除染槽32内に新たに収納された炭素鋼部材の還元除染に再利用することができ、本実施例は、全体としてのシュウ酸の使用量を低減することができる。
本発明の好適な他の実施例である、沸騰水型原子力プラントから発生する炭素鋼部材の廃材の除染に適用される実施例3の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、図7を用いて説明する。その炭素鋼部材の廃材(例えば、浄化系配管20の廃材66)は、沸騰水型原子力プラントの廃止措置、または、沸騰水型原子力プラントの炭素鋼部材の交換作業において、既設の炭素鋼部材の切断除去により発生する。
本実施例の、化学除染装置31を用いた原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法では、実施例1と同様に、ステップS1ないしS4の各工程を実施する。ステップS4の工程が終了した後、実施例1で実施されるステップS6ないしS8の各工程を実施し、新たな工程であるステップS13及びS14の各工程を、順次、実施する。そして、ステップS14の工程を終了した後、前述のステップS9及びS10の各工程を実施し、さらに、前述のステップS5及びS11を実施する。本実施例では、ステップS4の工程(酸化剤の注入)が終了しても、浄化系配管20の廃材66は除染槽32内に収納されたままであり、この状態で、ステップS6ないしS8、S13、S14、S9及びS10の各工程が実施される。
ステップS8の工程(シュウ酸の分解)が終了した後に、ステップS13の工程(酸化剤の注入)が実施される。ステップS8の工程でのシュウ酸の分解が終了した後に、除染槽32内の各浄化系配管20の廃材66の表面に析出しているシュウ酸鉄(II)二水和物を除去するために、シュウ酸が分解されて除去されたシュウ酸水溶液に、ステップS4の工程と同様に、酸化剤注入装置39から過酸化水素を注入する。注入された過酸化水素により、シュウ酸鉄(II)二水和物のFe2+がFe3+に酸化され、シュウ酸鉄(II)二水和物がシュウ酸鉄(III)錯体としてシュウ酸水溶液に溶解する。
ステップS13の工程では、開閉弁36,45及び37、及び開閉弁38以外の全ての弁を閉じ、循環ポンプ34を駆動して除染槽32のシュウ酸水溶液を除染槽32及び循環配管35を含む閉ループ内で循環させる。弁43を開いて注入ポンプ41を駆動し、薬液タンク40内の過酸化水素を、循環配管35内を流れる90℃のシュウ酸水溶液に注入する。
シュウ酸鉄(III)錯体のFe3+は、加水分解を起こして水酸化鉄(III)を生成する。水酸化鉄(III)はシュウ酸水溶液中に析出し、析出した水酸化鉄(III)はフィルタ48で除去される(ステップS14)。このとき、フィルタ48にシュウ酸鉄(II)二水和物が付着していると、このシュウ酸鉄(II)二水和物からシュウ酸水溶液にFe2+が溶出する。このため、そのフィルタ48を新品のフィルタ48に交換する。
酸化剤の注入によって除染槽32内の各浄化系配管20の廃材66に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物が除去された後、除染槽32の蓋を取り外し、各浄化系配管20の廃材66を除染槽32から取り出す(ステップS5)。除染槽32からの浄化系配管20の廃材66の取出しが終了した後、除染槽32、及び循環配管35等内の残っている、放射性廃液となる水溶液を実施例1と同様に排出する(ステップS11)。
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。
本発明の好適な他の実施例である、沸騰水型原子力プラントから発生する炭素鋼部材の廃材の除染に適用される実施例4の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、図8を用いて説明する。その炭素鋼部材の廃材(例えば、浄化系配管20の廃材66)は、沸騰水型原子力プラントの廃止措置、または、沸騰水型原子力プラントの炭素鋼部材の交換作業において、既設の炭素鋼部材の切断除去により発生する。
本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法では、実施例1で実施されるステップS1ないしS11の各工程(図1参照)が実施される。本実施例の炭素鋼部材の化学除染方法に用いられる化学除染装置31Aを、図8を用いて説明する。
化学除染装置31Aは、化学除染装置31における酸化剤注入装置39の薬液タンク40と循環配管35の注入配管42による接続を取り止め、酸素注入装置67を設けた構成を有する。化学除染装置31Aの他の構成は化学除染装置31と同じである。ただし、化学除染装置31Aでは、酸化剤注入装置39の、薬液タンク40に接続された注入配管42は、弁50と紫外線照射装置47の間で紫外線照射系配管49に接続されている。
本実施例で用いる化学除染装置31Aは、酸化剤注入装置39として酸素注入装置67を備えている。酸素注入装置67は、酸素充填装置(例えば、酸素ボンベ)68、注入配管70及び散気管71を有する。散気管71は、除染槽32内で除染槽32の底面付近に配置される。散気管71には、酸素を噴出させる多数の噴出孔が形成される。酸素充填装置68と散気管71は、弁69を設けた注入配管70で接続されている。
化学除染装置31Aを用いた、本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、具体的に以下に説明する。
図1に示すステップS1ないしS3の各工程が、順次、実施される。次に実施される酸化剤の注入工程(ステップS4)では、酸化剤として、実施例1で用いた過酸化水素の替りに酸素が用いられる。酸素注入装置67の弁69を開いて酸素充填装置68内の酸素を注入配管70を通して散気管71に供給する。散気管71に達した酸素は、散気管71に形成された多数の噴出孔から、除染槽32内に充填されて複数の浄化系配管20の廃材66が浸漬されたシュウ酸水溶液内に噴射される。噴射された酸素は、除染槽32内のシュウ酸水溶液に溶解する。シュウ酸水溶液に溶解した酸素は、前述の過酸化水素と同様に、シュウ酸水溶液による還元除染で浄化系配管20の廃材66の表面に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物を溶解させる。その表面に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物が溶解して除去されると、シュウ酸水溶液による浄化系配管20の廃材の還元除染が促進される。
そして、ステップS5ないしS11の各工程が実施され、本実施例の炭素鋼部材の化学除染方法は終了する。
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
酸化剤注入装置39として酸素注入装置67の替りにオゾン注入装置を用いてもよい。オゾン注入装置は、酸素注入装置67において酸素充填装置68の替りにオゾン充填装置を備えた構成を有する。オゾン注入装置の他の構成は、酸素注入装置67と同じである。
オゾン注入装置を備えた化学除染装置(オゾン注入装置以外の構成は化学除染装置31と同じ)を用いて原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を実施する場合には、ステップS4において、弁69を開いてオゾン充填装置内のオゾンを注入配管70を通して散気管71に供給し、散気管71に形成された多数の噴出孔から除染槽32内のシュウ酸水溶液に噴射される。噴射されてシュウ酸水溶液に溶解したオゾンは、浄化系配管20の廃材の表面に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物を溶解させる。そのシュウ酸鉄(II)二水和物の溶解により、シュウ酸水溶液による浄化系配管20の廃材の還元除染が促進される。
本発明の好適な他の実施例である、実施例5の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法を、図9、図10及び図11を用いて説明する。本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法は、沸騰水型原子力発電プラント(BWRプラント)の、炭素鋼製の浄化系配管(炭素鋼部材)に適用される。
BWRプラント1の、例えば、浄化系配管20(図10参照)の化学除染に用いられる化学除染装置31Bの詳細な構成を、図11を用いて説明する。
化学除染装置31Bは、循環配管76、サージタンク90、加熱器33、循環ポンプ34及び34A、酸化剤注入装置39、冷却器60、カチオン樹脂塔56、混床樹脂塔61、エゼクタ86及びホッパ87を備える。
開閉弁36、循環ポンプ34、弁45,77及び78、サージタンク90、循環ポンプ34A、弁79及び開閉弁38が、上流よりこの順に循環配管76に設けられている。弁45をバイパスする紫外線照射系配管49が、循環配管76に接続される。弁50、紫外線照射装置47、フィルタ48及び弁51が、この順番で上流から下流に向かって紫外線照射系配管49に設置される。フィルタ48及び弁51をバイパスする配管55の一端が紫外線照射装置47とフィルタ48の間で紫外線照射系配管49に接続され、配管55の他端が、循環配管76の、弁45よりも下流側の部分と紫外線照射系配管49の接続点と、弁77よりも上流の、循環配管76と配管81の接続点の間で、循環配管76に接続される。
弁77をバイパスして両端が循環配管76に接続される配管81には、冷却器60及び弁80が設置される。両端が循環配管76に接続されて弁78をバイパスする配管83に、カチオン樹脂塔56及び弁82が設置される。両端が配管83に接続されてカチオン樹脂塔56及び弁82をバイパスする配管85に、混床樹脂塔61及び弁84が設置される。カチオン樹脂塔56は陽イオン交換樹脂を充填しており、混床樹脂塔61は陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を充填している。
サージタンク90が、循環配管76と配管83の接続点と循環ポンプ34Aの間で循環配管76に設置される。加熱器33がサージタンク90内に配置される。弁89及びエゼクタ86が設けられる配管88の一端が弁79と循環ポンプ34Aの間で循環配管76に接続され、さらに、配管88の他端がサージタンク90に接続される。シュウ酸(還元除染剤)をサージタンク90内に供給するためのホッパ87がエゼクタ86に設けられる。
酸化剤注入装置39の薬液タンク40が注入ポンプ41及び弁43を有する注入配管42の一端に接続され、注入配管42の他端は弁79と開閉弁38の間で循環配管76に接続される。過酸化水素が薬液タンク40内に充填される。弁53を有する配管54の一端が、注入ポンプ41と弁43の間で注入配管42に接続される。配管54の他端が、紫外線照射装置47と弁50の間で紫外線照射系配管49に接続される。
pH計50Aが注入配管42と循環配管76の接続点と開閉弁38の間で循環配管76に取り付けられる。弁46を設けた配管44の一端部が、pH計50Aと開閉弁38の間で循環配管76に接続される。配管44の他端部が、開閉弁36と循環ポンプ34の間で循環配管76に接続される。
BWRプラント1は、1サイクルの運転サイクルでの運転が終了した後に停止される。BWRプラント1の運転停止期間において、RPV3に連絡されてBWRプラント1が運転されているときにRPV3内の炉水(冷却水)が供給される浄化系配管20の内面に対して還元除染が実施される。BWRプラント1の運転停止期間における浄化系配管20に対する還元除染を、図9を用いて説明する。本実施例における浄化系配管20を対象とする、原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法では、図9に示されたステップS15,S2ないしS4,S16,S6ないしS11及びS17の各工程が実施される。
化学除染対象の炭素鋼製の配管系に、化学除染装置を接続する(ステップS1)。BWRプラント1の運転が停止されているときに、化学除染対象の、例えば、浄化系配管20に設置された弁73のボンネットを開放して再循環系配管6側を封鎖する。化学除染装置31Bの循環配管76の開閉弁38側の一端部が弁733のフランジに接続される。さらに、浄化系ポンプ21と再生熱交換器22の間で浄化系配管20に設置された弁74のボンネットを開放して再生熱交換器22側を封鎖する。循環配管76の開閉弁36側の他端部が、弁74のフランジに接続される。循環配管76の両端が浄化系配管20に接続され、浄化系配管20及び循環配管76を含む閉ループ(以下、第5閉ループという)が形成される。
その後、実施例1と同様に、ステップS2ないしS4の各工程が実施される。ステップS2では、開閉弁36、弁45,77,78及び79及び開閉弁38を開いて循環ポンプ34及び34Aを駆動し、水を第5閉ループ内で循環させる。加熱器33でサージタンク90内の水を加熱し、その第5閉ループ内を循環する水の温度を90℃まで上昇させる。弁89を開いて循環配管76内を流れる水の一部を配管88内に導いてサージタンク90に供給する。
ステップS3では、ホッパ87内にシュウ酸を投入し、このシュウ酸をエゼクタ86の作用により配管88内を流れる90の水に供給する。シュウ酸を含む水がサージタンク90内に流入し、シュウ酸がサージタンク90内で水に溶解する。シュウ酸の溶解によって、サージタンク90内で90のシュウ酸水溶液(還元除染液)がサージタンク90内で生成される。このシュウ酸水溶液が浄化系配管20の内面と接触し、その内面に対して還元除染が実施される。この還元除染によって、浄化系配管20の内面に形成された、放射性核種を含む酸化皮膜が溶解され、浄化系配管20の内面から除去される。
還元除染液に酸化剤を注入する(ステップS4)。実施例1と同様に、弁53を閉じた状態で弁43を開け、注入ポンプを駆動する。薬液タンク40内の過酸化水素が、注入配管42を通って循環配管76内を流れるシュウ酸水溶液に注入される。過酸化水素を含む90℃のシュウ酸水溶液は、循環配管76から浄化系配管20内に供給される。シュウ酸水溶液に含まれる過酸化水素は、浄化系配管20の内面に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物を溶解する。シュウ酸鉄(II)二水和物の溶解に伴い、シュウ酸水溶液による浄化系配管20の内面の還元除染が促進される。
シュウ酸水溶液による浄化系配管20の内面への還元除染により、浄化系配管20の内面に形成された酸化皮膜の溶解に伴ってこの酸化皮膜に含まれていたC0-60等の放射性核種も、浄化系配管20内を流れるシュウ酸水溶液全体に拡散する。浄化系配管20の外部に配置された後述の放射線検出器75は、浄化系配管20から放射される放射線を測定するが、主に、放射線検出器75から一番近い浄化系配管20の内面の線量率を測定することになる。放射性核種がシュウ酸水溶液内に拡散すると、シュウ酸水溶液内における放射性核種の濃度は均一になる。還元除染による浄化系配管20内面の線量率が低減され、放射性核種の上記した拡散により放射線検出器75に近い浄化系配管20内面付近におけるシュウ酸水溶液の放射性核種濃度は低減され、そして、シュウ酸水溶液内の、放射線検出器75から遠い位置に存在する放射性核種からの放射線はシュウ酸水溶液に含まれる水で遮へいされるため、放射線検出器75で検出されたその線量率が低減される。
還元除染液に紫外線を照射する(ステップS6)。放射線検出器75で検出された、浄化系配管20の還元除染対象部の線量率が設定線量率以下に低減したとき、弁50及び51を開いて弁45を閉じる。このとき、弁52及び53は閉じている。浄化系配管20から循環配管76に戻されたシュウ酸水溶液は、紫外線照射系配管49によって紫外線照射装置47に導かれる。紫外線照射装置47から放出される紫外線がそのシュウ酸水溶液に照射される。
シュウ酸鉄(II)二水和物を生成し、形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物を除去する(ステップS7)。その紫外線照射により、実施例1と同様に、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸鉄(III)錯体から、放射性核種が取り込まれたシュウ酸鉄(II)二水和物が生成される。シュウ酸水溶液のシュウ酸鉄(II)二水和物濃度の増加によりシュウ酸水溶液中に析出し、放射性核種を含むシュウ酸鉄(II)二水和物がフィルタ48で除去される。シュウ酸鉄(II)二水和物濃度が低下したシュウ酸水溶液は、フィルタ48から排出され、循環配管76によって浄化系配管20に供給される。紫外線の照射及び析出したシュウ酸鉄(II)二水和物の除去は、浄化系配管20、循環配管76及び紫外線照射系配管49を含む閉ループ(以下、第6閉ループという)内をシュウ酸水溶液が循環しながら行われる。この第6閉ループ内を循環するシュウ酸水溶液の鉄濃度は、前述のシュウ酸鉄(II)二水和物の飽和溶解度の鉄濃度まで低下する。
化学除染装置31Bを用いた本実施例における炭素鋼部材の化学除染方法では、RPV3に連絡された系統配管、例えば、浄化系配管20の内面に対して還元除染が実施される。その還元除染の目的は、炭素鋼製の浄化系配管20の内面に形成されている、Co-60等の放射性核種を含む酸化皮膜を、シュウ酸水溶液により溶解して浄化系配管20の内面から除去することである。シュウ酸水溶液を用いて浄化系配管20の内面を還元除染すると、浄化系配管20が炭素鋼製であるが故に、シュウ酸鉄(II)二水和物が浄化系配管20の内面に形成され、この内面がシュウ酸鉄(II)二水和物で覆われる。その内面へのシュウ酸鉄(II)二水和物の形成は、シュウ酸水溶液による、浄化系配管20の内面の還元除染の停滞をもたらし、浄化系配管20の線量率の低下が抑制される。
このため、ステップS4の工程で酸化剤、例えば、過酸化水素を注入し、この過酸化水素を含むシュウ酸水溶液を浄化系配管20の内面に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物に接触させてこのシュウ酸鉄(II)二水和物を溶解して除去することにより、浄化系配管20の内面の還元除染が促進され、浄化系配管20の線量率が低減される。浄化系配管20の還元除染対象部の線量率が設定線量率以下に低減し、浄化系配管20の還元除染の目的が達成した後に、「シュウ酸水溶液への紫外線の照射」(ステップS6の工程)及び「シュウ酸鉄(II)二水和物の生成及び除去」(ステップS7の工程)が実施される。
還元除染剤(例えば、シュウ酸)を分解する(ステップS8)。シュウ酸水溶液の鉄濃度の低下が終息した後、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の分解が開始される。まず、弁52を開いて弁51を閉じ、弁43を閉じて弁53を開き、注入ポンプ41を駆動する。薬液タンク40内の過酸化水素が、注入配管42及び配管54を通って紫外線照射系配管49に注入される。その過酸化水素は、浄化系配管20から循環配管76を経て紫外線照射系配管49に到達したシュウ酸水溶液に注入される。
紫外線照射装置47からの紫外線が、Fe2+及び過酸化水素を含むシュウ酸水溶液に照射される。この結果、シュウ酸水溶液に含まれるFe2+と過酸化水素が、(3)式で表されるフェントン反応を起こし、シュウ酸水溶液内でOHラジカルが生成される。生成されたOHラジカルが、(4)式で示すように、シュウ酸と反応し、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸を二酸化炭素に酸化分解する。
上記したように、生成されたOHラジカルにより、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸が分解され、シュウ酸水溶液のシュウ酸濃度が低下する。シュウ酸濃度の低下に伴ってシュウ酸水溶液に含まれる鉄イオンが水酸化鉄の形態でシュウ酸水溶液中に析出し始めるため、シュウ酸水溶液への過酸化水素の注入を停止する。
カチオン樹脂塔に通水する(ステップS9)。弁82を開いて弁78の開度を減少させ、紫外線照射系配管49及び循環配管76内を流れる水溶液を、配管83を通してカチオン樹脂塔56に供給する。このため、紫外線照射装置47による紫外線照射で生成されたFe2+が、カチオン樹脂塔56内の陽イオン交換樹脂に吸着されてシュウ酸水溶液から除去される。水溶液が、浄化系配管20、循環配管76及び紫外線照射系配管49を含む閉ループ(以下、第7閉ループという)を循環している間、そのFe2+がカチオン樹脂塔56によりが除去される。
シュウ酸水溶液を浄化する(ステップS10)。シュウ酸水溶液に過酸化水素を注入しても(3)式の反応が生じなくなったとき、加熱器33への通電を停止する。そして、弁84を開いて弁82を閉じることにより、シュウ酸水溶液を混床樹脂塔61に供給する。弁80を開いて弁77の開度を減少させ、混床樹脂塔61に供給される前に、シュウ酸水溶液は、冷却器60で冷却されて温度が低下する。温度が所定の温度まで低下したシュウ酸水溶液に残留するシュウ酸、陽イオン及び陰イオンが、混床樹脂塔61内の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂に吸着されて除去される。このようにして、第7閉ループ等内に残留するシュウ酸水溶液の浄化が実施される。
廃液を処理する(ステップS11)。上記の浄化工程が終了した後、ポンプ(図示せず)を有する高圧ホース(図示せず)により循環配管76と廃液処理装置(図示せず)を接続する。浄化工程の終了後に、第7閉ループ内に存在する、放射性廃液である水溶液は、そのポンプを駆動して循環配管76から高圧ホースを通して廃液処理装置(図示せず)に排出され、廃液処理装置で処理される。第7閉ループ等内の水溶液が排出された後、洗浄水を第7閉ループ等内に供給し、循環ポンプ34を駆動してこれらの配管内を洗浄する。洗浄終了後、第7閉ループ等内の洗浄水を、上記の廃液処理装置に排出する。
化学除染装置を配管系から除去する(ステップS17)。ステップS11の工程が終了した後、化学除染装置31Bが浄化系配管20から取り外され、浄化系配管20が復旧される。浄化系配管20が復旧された後、BWRプラント1が起動され、次の運転サイクルにおけるBWRプラント1の運転が行われる。
本実施例によれば、浄化系配管20の内面に形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物に、酸化剤、例えば、過酸化水素を含むシュウ酸水溶液を接触させることにより、シュウ酸鉄(II)二水和物に含まれるFe2+を過酸化水素によって酸化させてFe3+にし、そのシュウ酸鉄(II)二水和物がシュウ酸鉄(III)錯体としてシュウ酸水溶液中に溶解する。このため、形成されたシュウ酸鉄(II)二水和物を浄化系配管20の内面から除去し、シュウ酸水溶液による浄化系配管20の内面の還元除染、特に、放射性核種を含む酸化皮膜が形成された浄化系配管20の内面の還元除染を促進させることができる。
さらに、本実施例では、シュウ酸水溶液をイオン交換樹脂に接触させる前において、シュウ酸鉄(III)錯体を含むシュウ酸水溶液に紫外線を照射することにより、シュウ酸鉄(III)錯体からシュウ酸鉄(II)二水和物が生成される。シュウ酸水溶液におけるシュウ酸鉄(II)二水和物の濃度が増加し、シュウ酸鉄(II)二水和物がシュウ酸水溶液中に析出する。シュウ酸鉄(II)二水和物の析出によって、シュウ酸水溶液の陽イオン(例えば、Fe2+)濃度が減少し、陽イオン交換樹脂に吸着される陽イオンの量が減少する。このため、陽イオン交換樹脂の寿命が延び、陽イオン交換樹脂の使用量を低減することができる。
シュウ酸水溶液に含まれた放射性核種が析出したシュウ酸鉄(II)二水和物に取り込まれているため、シュウ酸水溶液に含まれた、実質的に陽イオンである放射性核種が析出したシュウ酸鉄(II)二水和物と共にフィルタ48によって除去される。この結果、シュウ酸水溶液の放射性核種濃度が減少し、シュウ酸水溶液の線量を低下することができる。シュウ酸鉄(II)二水和物に取り込まれる放射性核種は実質的に陽イオンであるため、陽イオン交換樹脂に吸着される放射性核種のイオンの量も減少し、陽イオン交換樹脂の寿命が伸びる。このため、陽イオン交換樹脂の使用量をさらに低減することができる。
本実施例によれば、シュウ酸及び酸化剤の共存により浄化系配管20の母材を深く(例えば、20μm)溶解することが可能となる。この溶解によりシュウ酸水溶液に溶出した溶解してきた鉄の大部分をイオン交換樹脂を使わずにシュウ酸水溶液から分離することが可能となり、イオン交換樹脂の廃棄物発生量を抑制することができる。
本実施例は、浄化系配管20以外の炭素鋼部材である残留熱除去系配管27等に適用してもよい。
本実施例でも、実施例1と同様に、フィルタ48をカチオン樹脂塔56の下流に配置してもよい。このフィルタ48は、例えば、配管83と循環配管76の接続点とサージタンク90の間で循環配管76に設置される。
実施例5で用いられる化学除染装置31Bでは、酸化剤注入装置39として酸素注入装置67を用いてもよい。化学除染装置31Bで酸素注入装置67を用いる場合には、散気管71が不要である。化学除染装置31Bで用いる酸素注入装置67は、酸素充填装置(例えば、酸素ボンベ)68及び注入配管70を有する。弁69を設けた注入配管70の一端は酸素充填装置68に接続され、その注入配管70の他端は弁79と開閉弁38の間で循環配管76に接続される。紫外線照射装置47と弁50の間で紫外線照射系配管49に一端が接続される、弁53を有する配管54の他端が、酸素充填装置68と弁69の間で注入配管70に接続される。
実施例5のステップS4では、弁69が開けられて弁53が閉じられた状態で、酸素充填装置68から循環配管76にガス状の酸素が注入される。実施例5のステップS8では、弁53が開けられて弁69が閉じられた状態で、酸素充填装置68から紫外線照射系配管49にその酸素が注入される。なお、酸素注入装置67を、オゾン充填装置を有するオゾン注入装置とし、オゾン充填装置内のオゾンを循環配管76または紫外線照射系配管49に注入してもよい。
本実施例の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法において、ステップS8の工程(シュウ酸の分解)とステップS9の工程(カチオン樹脂塔への通水)の間で(図9参照)、実施例3で実施される工程、すなわち、ステップS13の工程(酸化剤の注入)及びステップS14の工程(水酸化鉄の除去)をこの順に実施してもよい。
1…BWRプラント、3…原子炉圧力容器、4…炉心、6…再循環系配管、9…タービン、11…給水配管、20…浄化系配管、31,31A,31B…化学除染装置、32…除染槽、33…加熱器、35,44,76…循環配管、39…酸化剤注入装置、40…薬液タンク、47…紫外線照射装置、48…フィルタ、49…紫外線照射系配管、56…カチオン樹脂塔、60…冷却器、61…混床樹脂塔、90…サージタンク。

Claims (15)

  1. 子力プラントの炭素鋼部材にシュウ酸水溶液を供給し、前記炭素鋼部材の表面の還元除染をする還元除染工程と
    前記還元除染工程中に、前記シュウ酸水溶液に酸化剤を注入し、還元除染対象である前記炭素鋼部材に前記酸化剤を接触させる酸化剤注入工程と、
    前記還元除染工程、前記還元除染に用いた前記シュウ酸水溶液を含む還元除染液に紫外線を照射して前記還元除染液内でシュウ酸鉄(II)二水和物を析出させる紫外線照射工程と、を有することを特徴とする原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  2. 前記紫外線照射工程後に、析出した前記シュウ酸鉄(II)二水和物を前記還元除染液から除去するシュウ酸鉄(II)二水和物除去工程を更に有する、請求項1に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  3. 前記紫外線照射工程後に、前記紫外線が照射された前記還元除染液に含まれる陽イオンを除去する陽イオン除去工程を更に有する、請求項1に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  4. 前記紫外線照射工程後に、析出した前記シュウ酸鉄(II)二水和物を前記還元除染液から除去するシュウ酸鉄(II)二水和物除去工程と、
    前記シュウ酸鉄(II)二水和物除去工程後に、前記紫外線が照射された前記還元除染液に含まれる陽イオンを除去する陽イオン除去工程と、を更に有する、請求項に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  5. 前記紫外線照射工程後に、前記紫外線が照射された前記還元除染液に含まれる陽イオンを除去する陽イオン除去工程と、
    前記陽イオン除去工程後に、析出した前記シュウ酸鉄(II)二水和物を前記還元除染液から除去するシュウ酸鉄(II)二水和物除去工程と、を更に有する、請求項に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  6. 出した前記シュウ酸鉄(II)二水和物の一部が、前記陽イオン除去工程で除去される請求項5に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  7. 記シュウ酸鉄(II)二水和物除工程、前記還元除染液に前記酸化剤を注入する第二の酸化剤注入工程と
    前記酸化剤を含む前記還元除染液に前記紫外線を照射し、前記還元除染液に含まれるシュウ酸を分解するシュウ酸分解工程と、を有する、請求項2または4に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  8. 前記シュウ酸分工程、前記炭素鋼部材に酸化剤水溶液を接触させて前記酸化剤水溶液に含まれる酸化剤により前記炭素鋼部材の表面に形成された前記シュウ酸鉄(II)二水和物を前記酸化剤水溶液に溶解させる請求項7に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  9. 前記炭素鋼部材であって前記原子力プラントから取り外されたものである炭素鋼廃材に対して実施される、請求項1に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  10. 前記紫外線照射工程後に、析出した前記シュウ酸鉄(II)二水和物を前記還元除染液から除去するシュウ酸鉄(II)二水和物除去工程と、
    前記還元除染工程前に、前記炭素鋼廃材除染槽内に収納する炭素鋼部材収納工程と、を更に有し
    前記還元除染工程は、前記炭素鋼廃材が前記除染槽内の前記シュウ酸水溶液に浸漬された状態で実施され、
    前記シュウ酸鉄(II)二水和物除去工程で、前記シュウ酸水溶液を含む前記還元除染液内で析出した前記シュウ酸鉄(II)二水和物は、前記除染槽から排出された前記還元除染液から除去される請求項9に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  11. 前記還元除染工程後に、前記酸化剤が前記シュウ酸水溶液に含まれているときに前記還元除染が終了した前記炭素鋼廃材を前記除染槽から外部に取り出す炭素鋼廃材取り出し工程を更に有する、請求項10に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  12. 記炭素鋼廃材取り出し工程、別の前記炭素鋼廃材を前記除染槽内に収納し、前記除染槽内の別の前記炭素鋼廃材に対して、前記シュウ酸鉄(II)二水和物が除去された前記シュウ酸水溶液を接触させて前記還元除染を実施する請求項11に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  13. 原子力プラントの原子炉圧力容器に連絡される、前記原子力プラントの炭素鋼部材である第1配管に、前記第1配管とは別の第2配管を接続する配管接続工程と
    前記第2配管から前記第1配管にシュウ酸水溶液を供給して前記シュウ酸水溶液により前記第1配管の内面に対して還元除染を実施する還元除染工程と
    前記還元除染工程中に、前記第2配管により供給される前記シュウ酸水溶液に酸化剤を注入し、還元除染対象である前記第1配管の内面に前記酸化剤を接触させる酸化剤注入工程と、
    前記還元除染工程、前記還元除染を行った前記シュウ酸水溶液を含む還元除染液に紫外線を照射して前記還元除染液内でシュウ酸鉄(II)二水和物を析出させる紫外線照射工程と、を有することを特徴とする原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  14. 前記シュウ酸水溶液を含む前記還元除染液は、前記第1配管及び前記第2配管を含む閉ループ内で循環される請求項13に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
  15. 前記紫外線照射工程後に、析出した前記シュウ酸鉄(II)二水和物を前記還元除染液から除去するシュウ酸鉄(II)二水和物除去工程と、を更に有する、請求項13または14に記載の原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法。
JP2020088031A 2020-05-20 2020-05-20 原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法 Active JP7411502B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020088031A JP7411502B2 (ja) 2020-05-20 2020-05-20 原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020088031A JP7411502B2 (ja) 2020-05-20 2020-05-20 原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021181953A JP2021181953A (ja) 2021-11-25
JP7411502B2 true JP7411502B2 (ja) 2024-01-11

Family

ID=78606422

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020088031A Active JP7411502B2 (ja) 2020-05-20 2020-05-20 原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7411502B2 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000105295A (ja) 1998-09-29 2000-04-11 Hitachi Ltd 化学除染方法及びその装置
JP2002529719A (ja) 1998-11-10 2002-09-10 シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト 構造部材の表面の除染方法
JP2015028432A (ja) 2013-07-30 2015-02-12 日立Geニュークリア・エナジー株式会社 原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法
JP2016080508A (ja) 2014-10-16 2016-05-16 三菱重工業株式会社 除染処理システム及び除染廃水の分解方法
WO2017076431A1 (en) 2015-11-03 2017-05-11 Areva Gmbh Method of decontaminating metal surfaces in a heavy water cooled and moderated nuclear reactor
JP2018159647A (ja) 2017-03-23 2018-10-11 日立Geニュークリア・エナジー株式会社 化学除染装置及び化学除染方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000105295A (ja) 1998-09-29 2000-04-11 Hitachi Ltd 化学除染方法及びその装置
JP2002529719A (ja) 1998-11-10 2002-09-10 シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト 構造部材の表面の除染方法
JP2015028432A (ja) 2013-07-30 2015-02-12 日立Geニュークリア・エナジー株式会社 原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法
JP2016080508A (ja) 2014-10-16 2016-05-16 三菱重工業株式会社 除染処理システム及び除染廃水の分解方法
WO2017076431A1 (en) 2015-11-03 2017-05-11 Areva Gmbh Method of decontaminating metal surfaces in a heavy water cooled and moderated nuclear reactor
JP2018159647A (ja) 2017-03-23 2018-10-11 日立Geニュークリア・エナジー株式会社 化学除染装置及び化学除染方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021181953A (ja) 2021-11-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6134617B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法
US20140037037A1 (en) Method of Depositing Noble Metal on Structure Member of Nuclear Plant
US20090316852A1 (en) Method for suppressing deposit of radionuclide onto structure member composing nuclear power plant and ferrite film formation apparatus
JP6620081B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属の付着方法及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法
JP6619717B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属の付着方法及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法
JP6552892B2 (ja) 原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法
US8821973B2 (en) Method of forming Fe3-xCrxO4 (O<X≦0.1) film on structural member in a plant
JP5500958B2 (ja) 原子力部材へのフェライト皮膜形成方法、応力腐食割れの進展抑制方法及びフェライト成膜装置
JP6751044B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属の付着方法、及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法
JP7411502B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法
JP6059106B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法
JP2009210307A (ja) 原子力プラント構成部材への放射性核種の付着抑制方法及びフェライト皮膜形成装置
JP6322493B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種付着抑制方法
JP2019158808A (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属の付着方法及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法
JP7344132B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属付着方法及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法
JP2017138139A (ja) 化学除染方法並びに化学除染装置及びこれを用いる原子力プラント
JP7475171B2 (ja) 化学除染方法および化学除染装置
JP6751010B2 (ja) 放射性物質付着抑制皮膜の形成方法
JP7495887B2 (ja) 化学除染方法及び化学除染装置
TWI814091B (zh) 化學除汙方法
JP7446180B2 (ja) 原子力プラントの化学除染方法
JP7142587B2 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属付着方法及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法
JP2023161666A (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材の化学除染方法
JP2023037387A (ja) 化学除染方法および化学除染装置
WO2019102768A1 (ja) 原子力プラントの炭素鋼部材への貴金属の付着方法及び原子力プラントの炭素鋼部材への放射性核種の付着抑制方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230206

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20231018

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20231024

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20231124

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20231219

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231225

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7411502

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150