以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、本開示の実施の形態に従う送電装置が適用される電力伝送システムの全体構成図である。図1を参照して、この電力伝送システムは、送電装置10と、受電装置20とを備える。受電装置20は、たとえば、送電装置10から供給され蓄えられた電力を用いて走行可能な車両等に搭載される。
送電装置10は、力率改善(PFC(Power Factor Correction))回路210と、インバータ220と、フィルタ回路230と、送電部240とを含む。また、送電装置10は、電源ECU(Electronic Control Unit)250と、通信部260と、電圧センサ270と、電流センサ272,274とをさらに含む。
PFC回路210は、商用系統電源等の交流電源100から受ける電力を整流及び昇圧してインバータ220へ供給するとともに、入力電流を正弦波に近づけることで力率を改善する。このPFC回路210には、公知の種々のPFC回路を採用し得る。なお、PFC回路210に代えて、力率改善機能を有しない整流器を採用してもよい。
インバータ220は、電源ECU250によって制御され、PFC回路210から受ける直流電力を、所定の周波数(たとえば数十kHz)を有する送電電力(交流)に変換する。インバータ220は、電源ECU250からの制御信号に従ってスイッチング周波数を変更することにより、送電電力の周波数を調整することができる。インバータ220によって生成された送電電力は、フィルタ回路230を通じて送電部240へ供給される。インバータ220は、たとえば単相フルブリッジ回路によって構成される。
フィルタ回路230は、インバータ220と送電部240との間に設けられ、インバータ220から発生する高調波ノイズを抑制する。フィルタ回路230は、たとえば、インダクタ及びキャパシタを含むLCフィルタによって構成される。
送電部240は、インバータ220により生成される交流電力(送電電力)をインバータ220からフィルタ回路230を通じて受け、送電部240の周囲に生成される磁界を通じて受電装置20の受電部310へ非接触で送電する。送電部240は、受電部310へ非接触で送電するための共振回路を含む(図示せず)。共振回路は、コイルとキャパシタとによって構成され得るが、コイルのみで所望の共振状態が形成される場合には、キャパシタを設けなくてもよい。
電圧センサ270は、インバータ220の出力電圧Vを検出し、その検出値を電源ECU250へ出力する。電流センサ272は、インバータ220に流れる電流すなわちインバータ220の出力電流Iinvを検出し、その検出値を電源ECU250へ出力する。なお、電圧センサ270及び電流センサ272の検出値に基づいて、インバータ220から送電部240へ供給される送電電力を検出することができる。電流センサ274は、送電部240に流れる電流Isを検出し、その検出値を電源ECU250へ出力する。
電源ECU250は、CPU(Central Processing Unit)、処理プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、各種信号を入出力するための入出力ポート等を含み(いずれも図示せず)、上述の各センサ等からの信号を受けるとともに、送電装置10における各種機器の制御を実行する。たとえば、電源ECU250は、送電装置10から受電装置20への電力伝送が行なわれるときに、送電電力(交流)をインバータ220が生成するようにインバータ220のスイッチング制御を実行する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
この実施の形態に従う送電装置10では、電源ECU250により実行される主要な制御として、電源ECU250は、送電装置10から受電装置20への電力伝送の実行時に、送電電力を目標電力にするための制御(以下「送電電力制御」とも称する。)を実行する。具体的には、電源ECU250は、インバータ220の出力電圧のデューティ(duty)を調整することによって、送電電力を目標電力に制御する。
なお、インバータ220の出力電圧のデューティとは、出力電圧波形(矩形波)の周期に対する正(又は負)の電圧出力時間の比として定義される。インバータ220のスイッチング素子(オン/オフ期間比0.5)の動作タイミングを変化させることによって、インバータ出力電圧のデューティを最小値0から最大値0.5の間で調整することができる。
図2は、インバータ220のスイッチング波形と出力電圧波形とを示した図である。図2を参照して、インバータ220は、電圧形のインバータであり、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」とも称する。)Q1〜Q4を含んで構成される。スイッチング素子Q1,Q3は、それぞれR相の上アーム及び下アームであり、スイッチング素子Q2,Q4は、それぞれS相の上アーム及び下アームである。なお、スイッチング素子Q1〜Q4の各々には、還流ダイオードが逆並列に接続される。
オン/オフ期間比0.5で動作するスイッチング素子Q1〜Q4を図示のようにオン/オフさせることにより、スイッチング周波数で変動する方形波の出力電圧Vが生成される。すなわち、インバータ220のスイッチング周波数を操作することにより、インバータ220によって生成される送電電力の周波数を調整することができる。
Tはインバータ220のスイッチング周期を示し、Tdは電圧Vの出力時間を示す。周期Tに対するTdの期間比が、インバータ220の出力電圧Vのデューティを示す。スイッチング素子Q1,Q3のオン/オフタイミングに対してスイッチング素子Q2,Q4のオン/オフタイミングを変化させることによって、インバータ220の出力電圧Vのデューティを調整することができる。なお、この図2では、一例としてデューティが0.25に調整されている場合が示されている。
再び図1を参照して、送電電力の目標電力は、たとえば受電装置20の受電状況に基づいて生成される。この実施の形態では、受電装置20において、受電電力の目標値と検出値との偏差に基づいて送電電力の目標電力が生成され、受電装置20から送電装置10へ送信される。
また、電源ECU250は、上述の送電電力制御を実行するとともに、送電電力が維持される下で、送電部240に含まれる送電コイル(後述)に流れる電流Isを最小にするための制御(以下「送電コイル電流制御」とも称する。)を実行する。詳細については後述するが、送電電力が維持される下で、送電コイルに流れる電流Isが小さいほど、送電部240(送電コイル)と受電部310(受電コイル)との間の電力伝送効率は高くなる。そこで、電源ECU250は、送電電力制御を実行しつつ、送電コイルに流れる電流Isが最小となるようにインバータ220の駆動周波数(インバータ220のスイッチング周波数であり、送電電力の周波数でもある。)を調整する。なお、電源ECU250は、インバータ220の駆動周波数すなわち送電電力の周波数を所定の周波数帯(規格等によって定められ得る。)において調整可能であり、この周波数帯を外れて周波数を調整することはしない。
さらに、電源ECU250は、送電電力の周波数を調整することによって、送電電力を最大にするための制御(以下「電力最大制御」とも称する。)を実行可能に構成される。この電力最大制御は、上記の送電コイル電流制御と選択的に動作し、送電電力が最大となるようにインバータ220の駆動周波数が調整される。
電源ECU250は、送電電力制御によってインバータ220の出力電圧Vのデューティが最大値(0.5)に調整されている場合には、送電電力の周波数を調整することによって上述の電力最大制御を実行する。そして、電力最大制御により送電電力が目標を超え、送電電力制御によってデューティが最大値よりも小さくなると、電源ECU250は、電力最大制御を送電コイル電流制御に切替える。電源ECU250によって実行される上記の各制御については、後ほど詳しく説明する。
通信部260は、受電装置20の通信部370と無線通信するように構成される。通信部260は、受電装置20から送信される送電電力の目標(目標電力)を受信するほか、電力伝送の開始/停止に関する情報を受電装置20とやり取りしたり、受電装置20の受電状況(受電電圧や受電電流、受電電力等)を受電装置20から受信したりする。
一方、受電装置20は、受電部310と、フィルタ回路320と、整流部330と、リレー回路340と、蓄電装置350とを含む。また、受電装置20は、充電ECU360と、通信部370と、電圧センサ380と、電流センサ382とをさらに含む。
受電部310は、送電装置10の送電部240から出力される電力(交流)を、磁界を通じて非接触で受電する。受電部310は、たとえば、送電部240から非接触で受電するための共振回路を含む(図示せず)。共振回路は、コイルとキャパシタとによって構成され得るが、コイルのみで所望の共振状態が形成される場合には、キャパシタを設けなくてもよい。
フィルタ回路320は、受電部310と整流部330との間に設けられ、受電部310による受電時に発生する高調波ノイズを抑制する。フィルタ回路320は、たとえば、インダクタ及びキャパシタを含むLCフィルタによって構成される。整流部330は、受電部310によって受電された交流電力を整流して蓄電装置350へ出力する。整流部330は、整流器とともに平滑用のキャパシタを含んで構成される。
蓄電装置350は、再充電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池を含んで構成される。蓄電装置350は、整流部330から出力される電力を蓄える。そして、蓄電装置350は、その蓄えられた電力を図示しない負荷駆動装置等へ供給する。なお、蓄電装置350として電気二重層キャパシタ等も採用可能である。
リレー回路340は、整流部330と蓄電装置350との間に設けられる。リレー回路340は、送電装置10による蓄電装置350の充電時にオン(導通状態)にされる。電圧センサ380は、整流部330の出力電圧(受電電圧)を検出し、その検出値を充電ECU360へ出力する。電流センサ382は、整流部330からの出力電流(受電電流)を検出し、その検出値を充電ECU360へ出力する。電圧センサ380及び電流センサ382の検出値に基づいて、受電部310による受電電力(蓄電装置350の充電電力に相当する。)を検出することができる。電圧センサ380及び電流センサ382は、受電部310と整流部330との間(たとえば、フィルタ回路320と整流部330との間)に設けてもよい。
充電ECU360は、CPU、ROM、RAM、入出力ポート等を含み(いずれも図示せず)、上記の各センサ等からの信号を受けるとともに、受電装置20における各種機器の制御を行なう。各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
充電ECU360により実行される主要な制御として、充電ECU360は、送電装置10からの受電中に、受電装置20における受電電力が所望の目標となるように、送電装置10における送電電力の目標(目標電力)を生成する。具体的には、充電ECU360は、受電電力の目標と検出値との偏差に基づいて、送電装置10における送電電力の目標を生成する。そして、充電ECU360は、生成された送電電力の目標(目標電力)を通信部370によって送電装置10へ送信する。
通信部370は、送電装置10の通信部260と無線通信するように構成される。通信部370は、充電ECU360において生成される送電電力の目標(目標電力)を送電装置10へ送信するほか、電力伝送の開始/停止に関する情報を送電装置10とやり取りしたり、受電装置20の受電状況(受電電圧や受電電流、受電電力等)を送電装置10へ送信したりする。
この電力伝送システムにおいては、送電装置10において、インバータ220からフィルタ回路230を通じて送電部240へ、交流の送電電力が供給される。送電部240及び受電部310の各々は、共振回路を含み、送電電力の周波数において共振するように設計されている。
インバータ220からフィルタ回路230を通じて送電部240へ交流の電力が供給されると、送電部240の共振回路を構成するコイルと、受電部310の共振回路を構成するコイルとの間に形成される磁界を通じて、送電部240から受電部310へエネルギー(電力)が移動する。受電部310へ移動したエネルギー(電力)は、フィルタ回路320及び整流部330を通じて蓄電装置350へ供給される。
図3は、図1に示した送電部240及び受電部310の構成を説明する回路図である。図3を参照して、送電部240は、送電コイル242と、キャパシタ244とを含む。キャパシタ244は、送電コイル242に直列に接続されて送電コイル242と共振回路を形成する。キャパシタ244は、送電部240の共振周波数を調整するために設けられる。送電コイル242及びキャパシタ244によって構成される共振回路の共振強度を示すQ値は、100以上であることが好ましい。なお、この回路図では、送電装置10において、インバータ220と送電部240との間のフィルタ回路230(図1)の図示は省略されている。
受電部310は、受電コイル312と、キャパシタ314とを含む。キャパシタ314は、受電コイル312に直列に接続されて受電コイル312と共振回路を形成する。キャパシタ314は、受電部310の共振周波数を調整するために設けられる。受電コイル312及びキャパシタ314によって構成される共振回路のQ値も、100以上であることが好ましい。
なお、特に図示しないが、送電コイル242及び受電コイル312の構造は特に限定されない。たとえば、送電部240と受電部310とが正対する場合に、送電部240と受電部310とが並ぶ方向に沿う軸に巻回される渦巻形状やらせん形状のコイルを送電コイル242及び受電コイル312の各々に採用することができる。或いは、送電部240と受電部310とが正対する場合に、送電部240と受電部310とが並ぶ方向を法線方向とするフェライト板に電線を巻回して成るコイルを送電コイル242及び受電コイル312の各々に採用してもよい。
ここで、受電コイル312のインダクタンスはL2であり、キャパシタ314のキャパシタンスはC2であるものとする。電気負荷390は、受電部310以降のフィルタ回路320、整流部330及び蓄電装置350(図1)である。インピーダンス395は、電気負荷390の等価インピーダンスを示し、そのインピーダンス値はRLであるものとする。すなわち、インピーダンス395は、受電部310以降の負荷インピーダンスである(以下では、電気負荷390の等価インピーダンスRLを「負荷インピーダンスRL」とも称する。)。なお、この負荷インピーダンスRLは、電気負荷390の回路構成、電気負荷390が受ける電力(受電電力)、及び電気負荷390に含まれる蓄電装置350(図1)の電圧(電気負荷390の電圧は蓄電装置350によって拘束される。)から算出することができる。
このような回路構成において、送電コイル242と受電コイル312との間の電力伝送効率ηは、次式にて表される。
ここで、I1は送電コイル242に流れる電流(すなわち電流Is)を示し、I2は受電コイル312に流れる電流を示す。また、r1は送電コイル242の巻線抵抗を示し、r2は受電コイル312の巻線抵抗を示す。電気負荷390の電圧は、蓄電装置350(図1)によって拘束されるので、電力が維持される下では電流I2及び負荷インピーダンスRLは略一定となる。したがって、式(1)から、電力伝送効率ηは電流I1の2乗に反比例することが理解される。すなわち、送電コイル242に流れる電流I1が小さいほど電力伝送効率ηは高くなる。
そこで、この実施の形態に従う送電装置10では、送電電力が維持される下で送電コイル242に流れる電流Is(図1)を最小にする送電コイル電流制御が実行される。この送電コイル電流制御には、制御対象に振動信号を与えることにより制御量の極値を探索する極値探索制御が適用される。すなわち、制御の詳細については後述するが、電源ECU250は、極値探索制御を用いて、送電電力の周波数を振動させることによって、送電コイル242に流れる電流Isが最小となる周波数を探索する(以下、この極値探索制御(送電コイル電流制御)を「第1の極値探索制御」とも称する。)。
ここで、上述の送電電力制御によってインバータ220の出力電圧Vのデューティが最大値(0.5)に調整されている場合に上記の第1の極値探索制御(送電コイル電流制御)が実行されると、デューティが最大値(0.5)のまま送電電力が減少する方向に周波数が調整されて送電電力が低下してしまう場合がある(図4にて後述)。
そこで、この実施の形態に従う送電装置10では、電源ECU250は、送電電力制御によってインバータ220の出力電圧Vのデューティが最大値(0.5)に調整されている場合には、送電電力の周波数を調整することによって、送電電力を最大とする電力最大制御を実行する。
この電力最大制御についても、制御対象に振動信号を与えることにより制御量の極値を探索する極値探索制御が適用される。すなわち、制御の詳細については後述するが、電源ECU250は、送電電力の周波数を振動させることによって、送電電力が最大となる周波数を探索する(以下、この極値探索制御(電力最大制御)を「第2の極値探索制御」とも称する。)。
第2の極値探索制御によって送電電力が目標電力を超えると、送電電力制御によってインバータ220の出力電圧Vのデューティが最大値(0.5)よりも小さい値に調整される。送電電力制御によってデューティが最大値よりも小さい値に調整されると、電源ECU250は、第2の極値探索制御を上記の第1の極値探索制御に切替える。これにより、送電電力制御によって、デューティが最大値よりも小さい範囲において送電電力を目標電力に制御しつつ、第1の極値探索制御(送電コイル電流制御)によって、送電コイル242に流れる電流Isが最小となる周波数が探索される。このような制御によって、送電電力が低下するのを抑制しつつ、高い電力伝送効率を追求することができる。
図4は、インバータ220が起動してからの動作点の推移の一例を示した図である。なお、この図4では、インバータ220の起動時における送電電力Psの周波数(インバータ220のスイッチング周波数)が調整範囲下限の周波数f0である場合について説明される。
図4を参照して、横軸は送電電力Psの周波数fを示し、縦軸はインバータ220の出力電圧Vのデューティを示す。実線で示される線PL1〜PL3の各々は、送電電力Psの等高線を示す。線PL2によって示される送電電力Psは、線PL3によって示される送電電力Psよりも大きく、線PL1によって示される送電電力Psは、線PL2によって示される送電電力Psよりも大きい。図から分かるように、ある送電電力Psを実現するデューティは、周波数依存性を示す。なお、線PL2は、送電電力Psの目標電力Psrを示しているものとする。
点線で示される線IL1〜IL3の各々は、送電コイル242に流れる電流Isの等高線を示す。線IL2によって示される電流Isは、線IL1によって示される電流Isよりも小さく、線IL3によって示される電流Isは、線IL2によって示される電流Isよりも小さい。
インバータ220の起動直後は、送電電力Psと目標電力Psrとの乖離が大きいので、送電電力制御によってインバータ出力電圧のデューティが急上昇する。デューティが最大値(0.5)に到達した後は、送電電力Psが目標電力Psrよりも小さい限りは、送電電力制御によってデューティが最大値(0.5)に調整された状態で周波数制御が実行される。
送電電力制御によってデューティが最大値(0.5)に調整されている場合に(動作領域A1)、仮に、送電コイル242に流れる電流Isが最小となる周波数を探索する第1の極値探索制御(送電コイル電流制御)が実行されると、送電電力制御によってデューティが最大値(0.5)に張り付いた状態で、周波数fは低下方向に調整される。なお、この例では、周波数fは、調整範囲下限の周波数f0から調整されるので、デューティが最大値(0.5)に達した後、周波数fが上昇しないこととなる。このままでは、送電電力Psは目標電力(線PL2)に到達しない。
そこで、この実施の形態では、デューティが最大値(0.5)に調整されている場合には(動作領域A1)、送電電力Psが最大となる周波数を探索する第2の極値探索制御(電力最大制御)が実行される。これにより、送電電力制御によってデューティが最大値(0.5)に張り付いた状態で、周波数fは上昇方向(電力増大方向)に調整される。
そして、送電電力Psが目標電力(線PL2)に達し(点P1)、さらに送電電力Psが目標電力を超過するまで周波数fが上昇すると、送電電力制御によってデューティが最大値(0.5)よりも小さい値に調整される(動作領域A2)。デューティが最大値(0.5)よりも小さくなると、周波数制御は、第2の極値探索制御(電力最大制御)から第1の極値探索制御(送電コイル電流制御)に切替わる。これにより、動作点は、送電電力制御及び第1の極値探索制御によって、線PL2の近傍を推移しながら電流Isが最小となる点P2に調整される(動作領域A3)。
図5は、電源ECU250により実行される送電電力制御、第1の極値探索制御(送電コイル電流制御)、及び第2の極値探索制御(電力最大制御)の制御ブロック図である。図5を参照して、電源ECU250は、送電電力制御を実行する第1の制御部400と、第1及び第2の極値探索制御を選択的に実行する第2の制御部500とを含む。
第1の制御部400は、減算部410と、コントローラ420とを含む。減算部410は、送電電力の目標を示す目標電力Psrから送電電力Psの検出値を減算し、その演算値をコントローラ420へ出力する。送電電力Psの検出値は、たとえば、図1に示した電圧センサ270及び電流センサ272の検出値に基づいて算出される。目標電力Psrは、たとえば、受電装置20の受電状況に基づいて受電装置20において生成され、受電装置20から送電装置10へ送信される。
コントローラ420は、目標電力Psrと送電電力Psとの偏差に基づいて、インバータ出力電圧のデューティ指令値を生成する。コントローラ420は、たとえば、目標電力Psrと送電電力Psとの偏差(減算部410の出力)を入力とするPI制御(比例積分制御)を実行することによって操作量を算出し、その算出された操作量をデューティ指令値とする。なお、コントローラ420は、デューティ指令値が最大値(0.5)に達しているか否かを第2の制御部500のコントローラ550,590へ通知する。
第2の制御部500は、振動信号生成部510と、ハイパスフィルタ(HPF(High Pass Filter))520,560と、乗算部530,570と、ローパスフィルタ(LPF(Low Pass Filter))540,580と、コントローラ550,590と、加算部600とを含む。
振動信号生成部510と、HPF520と、乗算部530と、LPF540と、コントローラ550とによって、第1の極値探索制御(送電コイル電流制御)が構成される。また、振動信号生成部510と、HPF560と、乗算部570と、LPF580と、コントローラ590とによって、第2の極値探索制御(電力最大制御)が構成される。
振動信号生成部510は、振幅が十分小さく、かつ低周波数の振動信号を生成する。第1の極値探索制御では、このような振動信号を用いることによって、送電電力の周波数fについて、送電コイル242に流れる電流Isが最小となる周波数への移行が監視される。第2の極値探索制御では、この振動信号を用いることによって、送電電力の周波数fについて、送電電力Psが最大となる周波数への移行が監視される。
第1の極値探索制御について、HPF520は、送電コイル242に流れる電流Isの検出値を受け、電流Isの直流成分を除去した信号を出力する。このHPF520は、振動信号生成部510により生成される振動信号に基づいて送電電力の周波数fを振動させたときの電流Isの傾き(微分係数)を抽出するものである。
乗算部530は、HPF520から出力される信号(電流Isの微分係数)に、振動信号生成部510により生成される振動信号を乗算し、振動信号と電流Isとの相関係数を算出する。この相関係数は、周波数fを変化させたときの電流Isの増減方向を示すものである。
LPF540は、乗算部530によって演算された相関係数の直流成分を抽出する。このLPF540の出力は、送電コイル242に流れる電流Isが最小となる周波数へ周波数fを移行させるための周波数fの操作方向(増減方向)を示す。なお、このLPF540は、省略することも可能である。
コントローラ550は、LPF540の出力に基づいて、電流Isが最小となる周波数へ周波数fを移行させるための周波数fの操作量(変更量)を算出する。コントローラ550は、たとえば、LPF540の出力信号を入力とするI制御(積分制御)を実行することによって、周波数fの操作量を算出する。
ここで、コントローラ550は、第1の制御部400のコントローラ420から、デューティ指令値が最大値(0.5)に達しているか否かの通知を受ける。そして、デューティ指令値が最大値(0.5)に達していない場合に、コントローラ550は、算出された周波数fの操作量を加算部600へ出力する。一方、デューティ指令値が最大値(0.5)に達している場合には、コントローラ550は、周波数fの操作量を0として出力する。この場合は、後述のように、第2の極値探索制御のコントローラ590によって算出された周波数fの操作量が加算部600へ出力される。
一方、第2の極値探索制御について、HPF560は、送電電力Psの検出値を受け、送電電力Psの直流成分を除去した信号を出力する。このHPF560は、振動信号生成部510により生成される振動信号に基づいて送電電力の周波数fを振動させたときの送電電力Psの傾き(微分係数)を抽出するものである。
乗算部570は、HPF560から出力される信号(送電電力Psの微分係数)に、振動信号生成部510により生成される振動信号を乗算し、振動信号と送電電力Psとの相関係数を算出する。この相関係数は、周波数fを変化させたときの送電電力Psの増減方向を示すものである。
LPF580は、乗算部570によって演算された相関係数の直流成分を抽出する。このLPF580の出力は、送電電力Psが最大となる周波数へ周波数fを移行させるための周波数fの操作方向(増減方向)を示す。なお、このLPF580は、省略することも可能である。
コントローラ590は、LPF580の出力に基づいて、送電電力Psが最大となる周波数へ周波数fを移行させるための周波数fの操作量(変更量)を算出する。コントローラ590は、たとえば、LPF580の出力信号を入力とするI制御(積分制御)を実行することによって、周波数fの操作量を算出する。
ここで、コントローラ590は、第1の制御部400のコントローラ420から、デューティ指令値が最大値(0.5)に達しているか否かの通知を受ける。そして、デューティ指令値が最大値(0.5)に達している場合に、コントローラ590は、算出された周波数fの操作量を加算部600へ出力する。一方、デューティ指令値が最大値(0.5)に達していない場合には、コントローラ590は、周波数fの操作量を0として出力する。この場合は、上述のように、第1の極値探索制御のコントローラ550によって算出された周波数fの操作量が加算部600へ出力される。
そして、加算部600は、コントローラ550,590の出力と、振動信号生成部510によって生成される振動信号とを加算し、その演算値を最終的な周波数fの操作量とする。
このように、第2の制御部500では、インバータ220の出力電圧Vのデューティが最大値(0.5)に達しているか否かによって第1及び第2の極値探索制御が選択的に動作する。具体的には、デューティが最大値(0.5)に達していなければ、第1の極値探索制御(送電コイル電流制御)が動作し、デューティが最大値(0.5)に達している場合には、第2の極値探索制御(電力最大制御)が動作する。これにより、送電電力Psが目標電力Psrに到達していないにも拘わらず送電電力Psが低下するのを回避することができる。
図6は、電源ECU250により実行される極値探索制御(周波数制御)の処理手順を説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートに示される処理は、所定時間毎又は所定条件の成立時にメインルーチンから呼び出されて実行される。
図6を参照して、電源ECU250は、インバータ220の出力電圧Vのデューティが常時最大値(0.5)であるか否かを判定する(ステップS10)。具体的には、電源ECU250は、極値探索制御において送電電力Psの周波数を振動させるところ、周波数を振動させてもデューティが最大値(0.5)から変化しなければ、デューティが常時最大値(0.5)であるものと判定する。
デューティが常時最大値(0.5)であると判定された場合には(ステップS10においてYES)、電源ECU250は、送電電力Psが最大となる周波数を探索する第2の極値探索制御を実行する(ステップS20)。
ステップS10においてデューティが常時最大値(0.5)ではないと判定された場合には(ステップS10においてNO)、電源ECU250は、デューティが常時最大値(0.5)よりも小さいか否かを判定する(ステップS30)。具体的には、電源ECU250は、周波数を振動させた場合にデューティが最大値(0.5)に達しなければ、デューティが常時最大値(0.5)よりも小さいものと判定する。
そして、デューティが常時最大値(0.5)よりも小さいと判定された場合には(ステップS30においてYES)、電源ECU250は、送電コイル242に流れる電流Isが最小となる周波数を探索する第1の極値探索制御を実行する(ステップS40)。
一方、ステップS30においてデューティが常時最大値(0.5)よりも小さい値ではないと判定された場合には(ステップS30においてNO)、電源ECU250は、デューティが減少する方向に送電電力の周波数fを操作する(ステップS50)。すなわち、デューティが常時最大値(0.5)ではなく、かつ、常時最大値(0.5)よりも小さい値でもない場合とは、周波数の振動に応じて、送電電力制御によりデューティが最大値と最大値よりも小さい値との間を振動する場合であり、この場合は、送電電力Psが目標電力Psrに到達したことを意味する(図4の点P1)。したがって、この場合には、デューティが減少する方向に周波数fが操作される。これにより、デューティは、常時最大値(0.5)よりも小さい状態となり、第2の極値探索制御が実行されることとなる。
以上のように、この実施の形態においては、送電電力制御によってインバータ220の出力電圧Vのデューティが最大値(0.5)に調整されている場合には、送電電力Psが最大となる周波数を探索する第2の極値探索制御が実行される。これにより、送電電力制御によってデューティが最大値(0.5)に調整されている状態で送電電力Psが減少する方向に周波数fが調整されるのを回避することができる。そして、送電電力Psが目標電力Psrを超えると、デューティが最大値(0.5)よりも小さい値に調整され、これにより、送電コイル242に流れる電流Isが最小となる周波数を探索する第1の極値探索制御が実行される。このように、この実施の形態によれば、送電電力Psが低下するのを抑制することができる。
なお、上記の実施の形態では、送電電力制御を実行する第1の制御部400のコントローラ420は、PI制御を実行するものとしたが、PI制御に代えて、I制御やP制御(比例制御)を実行するようにしてもよい。
また、上記においては、極値探索制御を実行する第2の制御部500のコントローラ550,590は、I制御を実行するものとしたが、I制御に代えて、応答速度の向上を見込めるPI制御やP制御を実行するようにしてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。