JP2017538447A - 解凍方法および装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、容器に入っている試料の解凍方法を提供し、本方法は、a)試料の体積および容器の種類のいずれか、またはその両方と、試料中の氷の割合と、場合によっては、試料容器の熱伝導度と、に応じた攪拌プログラムを計算するステップと、b)プログラムにしたがって試料を攪拌することにより、試料の少なくとも1つの領域を攪拌するステップと、c)試料の体積および/または試料の氷の割合の変化に応じて、試料の少なくとも1つの領域に適用される攪拌プログラムを変更するステップとを含む。本発明は、さらに、攪拌方法および試料の解凍方法における細胞の剪断を減少させる方法であって、試料容器が示差的に加熱される、方法を提供する。また、これらの方法で用いられる装置であって、弾性的な槽壁を含む、試料を解凍および/または冷却するための装置である、装置も提供される。

Description

本発明は、試料、特に生体物質を含有する試料を解凍する方法に関する。本発明は、さらに、試料、特に生体物質を含有する試料を解凍する装置に関する。
凍結保存は、医学、生物工学、および獣医学において生物試料を引き続き利用するために、その生存能を長期間維持するのに広く用いられる技術である。解凍時に高い生存能を得るためには、保護化合物(凍結保護剤)を添加した後、冷却速度を制御して試料を凍結する必要がある。凍結保護剤は、試料中の水に溶解し、結晶の形成時および結晶の解凍時に生物細胞材料に損傷を与え得る氷晶形成を防止するように働く。通常、凍結保存用の試料は、例えば次のような専用の凍結容器に入れられる。
a)直径が2〜4mm、長さが最大140mm、容量が0.2〜0.5mLの薄肉管である、ストロー型容器。
b)直径がより広く(直径約12mm)、容量が0.5〜5.0mLの短管である、ねじ蓋付き凍結バイアル。
c)容量が0.2〜50mLの範囲の密閉型凍結バイアル(アセプティック・テクノロジー社(Aseptic Technologies)のクリスタル・バイアル、クック・セル社(Cook Cell)のシール・バイアル、またはウエスト・ファーマ・ダイキョウ社(West Pharma Daikyo)が提供するこれらのバイアルなど)。
d)より大容量での凍結保存用に設計された、容量が5〜1000mLの軟質バッグ。
e)ロボット工学およびハイスループットスクリーニングに用いられるマルチウェルプレート、マトリクスチューブ、およびその他のSBSフォーマット。
全ての凍結容器の充填体積は、凍結する試料の量に応じて、ほぼ空の状態から満量まで様々であり得る。さらに、バイアル容器は、通常、充填後直立させて凍結させるが、これは、バイアル内における凍結物質と空気との界面の高さが、処理によって一様でないことを意味している。
凍結後、試料は通常低温で、一般には液体窒素の温度(−196℃)で保管されるが、用途によっては、より高い温度で保管することもあり得る。試料は、必要になると解凍されるが、当該技術分野においては通常、生存能を低下させる細胞の過熱が起こることなく、できるだけ速やかに解凍プロセスを行って、細胞の生存能を確保することが考慮される。現在の方法においては、解凍は、通常、37℃に維持された水浴中に試料を入れ、ほぼ全ての氷または水性成分が融解すると試料を取り出すことによって実現される。たいていの試料解凍法においては、最終的に熱伝導を利用し、試料容器の壁を通してエネルギーが送達されるが、IR照射および磁界/電界を用いて、試料にエネルギーを加える試みも行われている。
上述したように、通常は、緩やかな解凍速度は、細胞の回復に好ましくないと考えられる。細胞に損傷を与える機構の観点から、理論上最適な解凍方法は、低温保管温度から最終生成物温度(多くの場合4℃)まで、瞬時にかつ均一な温度上昇を実現することである。しかしながら、これは、実際には、物理的に不可能である。
生物試料を速やかに加温する際の主な潜在的物理的制約は、系の熱質量、凍結物質の溶融エンタルピー、ならびに容器の壁および液相または固相の試料の熱伝導度に関連する。大抵の系において、エネルギーは、容器の壁を加熱することによって生物試料に伝達される。加熱時間を最短にするには、熱を加える速度(すなわち出力エネルギー)を最大にしなくてはならない。壁を隔てた理想的な一次元定常状態熱伝導としては、以下の式を用いることができる。
ここで、Pは、加熱中の断面積Aを通って伝播される出力エネルギーであり、kは、壁の熱伝導度であり、dT/dxは、壁を隔てた温度勾配である。
この式は、凍結バイアルの場合、熱伝導による凍結容器への出力エネルギーの伝達を最大化するのに、直接制御可能な変数は1つのみ(温度勾配)であることを示している。凍結容器の壁の熱伝導度、その断面積、および厚さ(dx)は、すべて、凍結容器の製造業者によって定められている。したがって、凍結保存された物質に加える出力エネルギーを増大するためには、容器の外面温度を上昇させるか、内面温度を低下させるか、またはこれらを組み合わせるかのいずれかにより、容器壁を隔てた温度勾配(dT)を増大させる必要がある。
容器壁が、何らかの手段によって一定温度に維持される場合、結果として得られる解凍曲線は、通常、加温中に、3つの異なるステージを含む。このことは、図6において、壁温度が20℃である10重量%グリセロール溶液系の場合として示されている。加温の3つの異なるステージは、以下の通りである。
I.固体熱伝導:ガラス転移温度(10%グリセロール溶液の場合、約−45℃)未満で試料が維持される場合、系内に自由液体が存在しない。エネルギーは、容器壁を通して、固形の氷に伝達される。ここでは、氷は最初、非常に冷たく、したがって、dTの項は大きい。高い熱出力が系内に流入し、試料は急速に加温される。加温速度(系に加えられる出力エネルギー)は、この状態を通して、試料が加温されるにつれて指数的に減衰し、容器壁に対する温度勾配は低下する。
II.相転移:この領域では、エネルギーを加えることにより、物質の熱質量の加熱だけではなく、氷から液体への相転移の推進も行われなければならない。溶質が存在する場合、相転移は、ある明確な温度範囲にわたって起こり、これによって、氷の割合は、温度の関数となる。系がステージIからステージIIへと転移する温度は、凍結保護剤溶液の組成に依存する。相転移ステージの最初には、容器内の100%が固体の氷であり、このステージの最後には、容器内の100%が自由液体であって、この両極端の間では様々な割合で氷が存在する。系が加温されてdTがさらに減少するにつれて、系に入射する出力エネルギーは減衰する。
III.液体の加温:物質の融点を超えると、最終温度まで連続的に液体が加温される。自由液体の温度と容器壁の温度が等しくなるまで、入力される出力エネルギーは指数的に減少する。そして、加えられる出力エネルギーは、減衰してゼロとなる。
定常状態一次元熱伝導は、一次モデルであり、また主として相転移ステージのみに適用可能であるため、上述した系内で生じるエネルギー伝達を完全に説明するものではない。ステージIIIにおいては、自由液体の物質移動効果または対流効果によって、系内の熱エネルギーが容易に再分配され、これは、系に瞬時に入力される出力エネルギーに顕著な影響を及ぼすことができる。例えば、図8に示すように、凍結バイアル内に温度勾配が存在する場合、容器内の平均流体温度が、容器の側壁に直接接触している流体の温度よりも低いという状況が生じるであろう。
大量の液体に加え得る出力エネルギーは、容器壁を隔てた温度差に正比例する。液体が静止しており、また(図8の左図に示すように)流体内に大きな勾配が存在する場合、壁近くの流体は暖かく、これにより、流体の加熱エネルギーが減少する。流体の温度が、全ての箇所において平均流体温度と等しくなるように(図8右図)、流体がよく混合されている場合、容器壁を隔てた温度勾配が大きくなり、加えられる出力エネルギーが大きくなる。この場合、生成物は、より急速に解凍する。
図7は、図6の相転移ステージであるステージII中に起こることを示す。図7は、0.15 NaCL中に凍結保護剤であるグリセロールが存在する場合の氷の割合のグラフを示す(しかしながら、ジメチルスルホキシドやプロピレングリコールなどの他の凍結保護剤の場合も、同様の関係が存在する)。黒丸印付きの薄い線は、温度に対する氷の割合を示し、白丸印付きの濃い線は、温度に対するエンタルピーを示す。図7に示す例において、グラフ上、黒丸印付きの薄い線で示されるように、−12.5〜−2.5℃の温度帯では、約80%の氷が融解しており、−64℃(この溶液のガラス転移温度)〜−12.5℃の温度帯では、残り20%の氷が融解している。解凍時に最も損傷を与える温度帯は、最後の80%の氷の解凍に関連していると考えられており、図7に示す例においては、これは−12.5℃〜−2.5℃の間で起こっている。一方、氷画分のうち最初の20%の融解は、細胞の生存能に好ましくない影響を及ぼすことなく、比較的遅い加熱速度で行うことができる。
図5は、3mLの10%DMSOを入れて−100℃で凍結させたアセプティック・テクノロジー社製6mLバイアルと、10%DMSOを0.5mLまで満たして−100℃で凍結させたコーニング社(Corning)製バイアルとを、異なるバイアル壁温度において解凍するのに必要とした解凍時間を示すグラフである。このグラフは、解凍終了(氷が小粒となる)までの時間を、水浴によって加えられた外壁温度の関数として示している。グラフに示す結果から、壁の状態を向上させることによって、いかにより急速に生成物を解凍することができるかが明らかである。
しかしながら、生物試料を解凍する場合、容器内の物質の生物学的特質を考えると、公知のプロセスにおいて、通常、容器の外部温度は37℃を超えて加熱されず、したがって、内部の細胞材料または生体物質(この温度を超えた場合、損傷を受けることがある)に損傷を与える恐れはない。細胞療法における無菌的封じ込めのための梱包デザインの多くにおいて、梱包容器の壁は、環状オレフィン共重合体(COC)などの、比較的厚く、熱伝導に劣る物質から作られている。また、容器の形状は、内壁とバイアルの中心との間に長い経路長が存在するようになっている。このような解凍系の物理的性質により、解凍期間が比較的長くなる。例えば、37℃の水浴に容量が8mLのアセプティック・テクノロジー社製のバイアルを入れた場合は、解凍に約10分かかる。現在の解凍方法を用いる場合、これは、細胞の生存能の観点からは決して最適なものではない。
本発明の発明者らは、37℃で試料を解凍することを含む当該技術分野において開示されている解凍方法とは対照的に、試料をより速やかに解凍することができる新規の試料解凍方法を開発した。特に、発明者らは、試料が入った容器の内壁温度を37℃以下に保ちつつ、その外壁を37℃を越えて加熱することができることを発見した。したがって、試料にとって安全な内部温度を確保しつつ、温度を上昇させて加えることによって、より急速に試料を解凍することができる。これは、生物物質が、内部表面において、より低く、安全なピーク温度となることを確実にする、容器壁を隔てた温度低下によるものである。
発明者らは、このように、容器壁を隔てた温度低下を制御することができる試料解凍方法を開発した。本発明の特定の実施形態において、異なる領域の容器壁を隔てて、温度低下を示差的に(differentially)制御することができる。
したがって、本発明は、このように、容器の外部表面の異なる位置を標的とした加熱によって試料を解凍する方法の必要性について、また、生物物質が、試料領域の全域にわたってより低く、安全なピーク温度となることを確実にするために、容器壁を隔てた温度低下の正確な制御によって比較的速い解凍を実現することの必要性について、対処したものである。
発明者らは、さらに、加熱時間;試料中の氷の割合;氷画分の空間的な位置;またはこれらの任意の組み合わせに応じて、生物試料物質またはその領域に加えられる熱を標的とすることができる、本発明の試料(例えば、凍結生物試料)解凍方法に適用可能であり得る、装置を開発した。
解凍時間をさらに短縮するために、試料の攪拌が効果的であるということは、理解されよう。さらに、上述の方法によって、試料の解凍時間を短縮することができるが、容器壁を隔てて加えられる出力エネルギー/熱によって試料物質が加熱される場合、壁に近い物質は、試料内部の(すなわち、壁から最も離れている)物質よりも急速に加温され、これにより、系の加熱エネルギーが減少するということは、理解されよう。容器内の試料物質を攪拌することによって、この問題に対処することができる。特に、物質を攪拌することにより、物質の異なる部分を異なる時点で容器壁と接触させることが可能になり得、生成物がより急速に解凍することと、試料の特定の部分が、損傷を受けるほどの多くの熱を吸収するのを防止することとが確実となる。
容器内の液体成分を効率的に攪拌することは、非常に多くの要因に左右される。例えば、円筒状のウェル内に自由流体があるという簡単な場合では、効率的な混合は以下の式で表されることが知られている。
ここで、nは振動数、r0は振幅、σは表面張力、DWはウェルの直径、VFはマイクロプレートの充填体積、ρは流体の密度である。したがって、良好な混合を実現するために、外部制御可能な変数は、振動の振幅r0および振動数nのみである。
しかしながら、攪拌することによって試料の解凍時間を短縮することはできるが、試料を攪拌しすぎると、剪断による細胞損傷が生じ得る。この点について、振幅および振動数には、所与の形状に対して選択することができる下限および上限のどちらもが存在し、振動数および/または振幅が大きすぎると、容器内の内容物が非常に激しく扱われて細胞損傷(例えば、過剰な剪断によって)が引き起こされるほどに、試料を過剰に攪拌することになる場合があることが知られている。これによって、効率的な混合を実現するために、軌道に沿った振動において選択された振幅および振動数が限界点を規定している理想化された事例について、操作に幅ができ、その範囲内では、過剰の剪断が起こることなく良好な混合が行われ、その範囲外では、混合は良好でないか、または混合は起こらず、その一方で、剪断による過剰な細胞損傷が引き起こされる。完全な液相系を加熱する場合は、多くのヒーター/シェイカー系において実現されているように、良好な混合を実現するパラメータによって、操作系を調整することができる。しかしながら、固体から液体への相転移中には、容器内の異なる氷画分は、系内において、その形状が終始変化する。
上記式は、形状(マイクロウェルの例では、DW)が、良好な混合が起こる状況に対して、いかに直接的な影響を及ぼすかについて示している。容器内の自由液体組成物の形状に最適となるように、物理的な試料の攪拌を変化させるによって、自由液体組成物の攪拌を改良することができ、系に与えることができる熱出力を増加させ、細胞損傷を最小化しつつ解凍速度を大きくすることができる。この点について、発明者らは、氷の割合ならびに容器の種類、および/または試料体積に応じた試料の攪拌を行うことにより、攪拌しない解凍方法と比較して解凍時間を短縮しつつ、剪断による細胞損傷を最小化することができるということを発見した。
したがって、本発明の第1の態様によれば、試料の解凍方法が提供され、該試料は容器に入っており、該方法は、
a)i)該試料の体積および該容器の種類のいずれか、またはその両方、(ii)該試料中の氷の割合、および(iii)場合によっては、該試料容器の熱伝導度、に応じた攪拌プログラムを計算するステップと、
b)該プログラムにしたがって該試料を攪拌することにより、該試料の少なくとも1つの領域を攪拌するステップと、
c)該試料の体積および/または該試料中の氷の割合の変化に応じて、該試料の少なくとも1つの領域に適用される該攪拌プログラムを変更するステップと
を含む、方法である。
ステップb)およびステップc)は、1回以上、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、またはそれ以上繰り返されてもよい。繰り返しの回数は、例えば、試料の体積、および本方法の開始時点における試料の温度に依存し得る。さらに、繰り返しの回数は、試料の解凍に用いられる外部温度に依存し得る。特定の実施形態において、攪拌プログラムは、試料中の氷の割合の変化に応じて、および/または試料の体積の変化に応じて、連続的に変更され、かつ/または維持されてもよい。したがって、ステップb)およびステップc)は、同時に行われてもよいが、場合によっては、個別に順次行われてもよい。攪拌プログラムを「連続的に」変更することまたは改めることに関する言及は、攪拌プログラムを30秒以上毎、25秒以上毎、20秒以上毎、15秒以上毎、10秒以上毎、5秒以上毎、4秒以上毎、3秒以上毎、2秒以上毎、または1秒以上毎に変更することを意味する。攪拌を変更する間隔は、例えば、30秒以上毎、25秒以上毎、20秒以上毎、15秒以上毎、10秒以上毎、5秒以上毎、4秒以上毎、3秒以上毎、2秒以上毎、または1秒以上毎に攪拌を確認して変更するように、一定であってもよいし、プログラムを変更する間隔は、例えば、1秒以上、2秒以上、3秒以上、4秒以上、または5秒以上のうちのいずれか1つの間隔を区別なく用いるように、異なっていてもよい。あるいは、攪拌を変更する間隔は、試料の物性によって異なっていてもよく、例えば、試料中の氷の割合が特定の割合になった際、例えば、試料の氷の体積が99%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満になった際、あるいは、特に、氷が試料中の水の99%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満になった際に、攪拌が変更されてもよい。
特に、試料が氷を含まなくなるまで、あるいは氷が試料中の水の20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満になるまで、ステップが繰り返されるか、または攪拌プログラムを連続的に変更する。あるいは、試料の温度が所望の温度、例えば、2℃以上、3℃以上、4℃以上、5℃以上、10℃以上、20℃以上、30℃以上、または37℃以上に達するまで、ステップが繰り返されてもよい。
したがって、発明者らは、試料中の生体物質の剪断を最小化し、かつ/または解凍時間を短縮するためには、試料の体積および試料の凍結割合または氷の割合にしたがって、解凍する試料の攪拌量を変化させるべきであるということを見出した。この点について、水の100%が氷である試料(すなわち、別の観点では、試料は液体の水を有していない)では、攪拌は重要ではないので、攪拌を行ってもよいし、行わなくてもよい。特に、試料が固体である、すなわち、自由液体を含んでいない場合には、この通りである。水性成分のみを含む試料の場合、水の100%が氷であると、このような試料は固体であり得る。例えば、生物物質とともに凍結保護剤を含む試料の場合、ガラス化されると、すなわち、温度が凍結保護剤のガラス転移温度未満であると、完全に固体であり得る。したがって、この時点で行われている攪拌の量、種類、または振動数は、起こり得る剪断の程度、または試料の解凍時間にとって重要ではない。しかしながら、試料の解凍が始まり、試料中に少量の液体の水が存在する(例えば、水の1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、10%以上、15%以上、または20%以上が凍結していないかまたは液体の水であり、例えば水のうち1〜20%が液体の水である)と、激しい攪拌が望ましいであろう。試料において液体の水または非凍結画分が増加するにつれ(例えば、試料中の水の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上が液体の水である)、攪拌の量または振動数を少なくすることが望ましく、したがって、試料を激しく攪拌しないことが望ましいであろう。典型的には、激しく攪拌される試料は、例えば軌道回転によって、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または100%が液体の水である試料に適用される振動数よりも、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、10倍以上、50倍以上、または100倍以上高い振動数で攪拌される。「より激しくない攪拌」とは、液体の水が少量存在する、例えば、液体の水が1〜20%存在する試料に適用される攪拌よりも1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、10倍以上、または100倍以上低い攪拌のことをいう。
本方法は、ステップa)の前に、例えば、容器の種類および試料の体積のうちの1つまたはその両方を求めるステップをさらに含んでいてもよい。「容器の種類」とは、用いられる容器の種類のことであり、その例として、以下でさらに述べるようなもの、例えばバッグ、バイアルなどが挙げられる。あるいは、または、さらには、容器の種類とは、用いられる容器の容積のことであってもよい。この情報は、製造業者によって決定されていてもよいし、容器に入れ得る液体の量を測定することで求められてもよい。試料の体積は、光学的技術によって(可視波長およびIRなどの他の波長において)、または熱量測定法によって、求められてもよい。さらに、試料容器の熱伝導度を求めるステップが行われてもよい。当業者であれば、試料容器の熱伝導度を計算するのに用いることができる方法を知っており、例えば、公知の量のエネルギーを試料容器にパルス出力し、どのように反応するかを求めることができるであろう。その反応として、例えば、壁温度がどれだけ急速に上昇するか、また、温度がどれだけ急速に低下するかを測定することができ、ここで、温度低下が速いほど、熱伝導度が高い。
本発明の方法を行うためには、攪拌装置を用いることが望ましいであろう。特定の実施形態において、試料を、より具体的には試料が入った容器を、攪拌装置を含む試料解凍槽に入れてもよい。例えば、解凍槽は、軌道回転用の機構(攪拌装置)を有する加熱試料プレートであり得る。典型的には、攪拌の、例えば回転の、振動数および振幅の、どちらも制御することができる。
本発明の方法は、さらに、試料の体積および/または試料中の氷の割合を、好ましくは試料の攪拌ステップの間またはその後に、モニターするステップを含んでいてもよい。したがって、特定の実施形態において、本方法は
a)試料攪拌装置を含む試料解凍槽を備えるステップと、
b)試料を該解凍槽に導入するステップと、
c)場合によっては、該容器の熱伝導度を求めるステップと、
d)該容器の種類および該試料の体積のうちの1つまたはその両方を求めるステップと、
e)i)該容器中の該試料の体積および該容器の容積のいずれか、またはその両方、(ii)該試料中の氷の割合、および(iii)場合によっては、該容器の熱伝導度、に応じた攪拌プログラムを計算するステップと、
f)該プログラムにしたがって該攪拌装置を作動させることにより、該試料の少なくとも1つの領域を攪拌するステップと、
g)該試料の体積および/または該試料中の氷の割合をモニターするステップと、
h)該試料の体積および/または該試料中の氷の割合の変化に応じて、該試料の少なくとも1つの領域に適用される該攪拌プログラムを変更するステップと
を含む。
本実施形態において、ステップc)およびステップd)は、どのような順序で行われてもよく、ステップa)またはステップb)の前に行われてもよい。さらに、上述したように、ステップf)〜ステップh)は、例えば、1回以上、2回以上、3回以上、4回以上、または5回以上の回数繰り返されてもよく、特に、試料が解凍されるまで(すなわち、氷が残らなくなるまで、あるいは水の20%未満、10%未満、5%未満が氷であるか、または試料の20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満が氷となるまで)、または試料が所望の温度に達するまで、連続的に行われてもよい。さらに、ステップg)は、ステップf)の間またはその後に行われてもよい。特に、ステップg)およびステップh)は、ステップf)と同時に行われてもよい。
本明細書における「試料」なる語は、あらゆる種類の試料のことをいい、特に、生体物質を含む試料、例えば細胞試料を含む。例えば、試料は、バイオ医薬品;細胞材料;生体組織;生体器官もしくはその一部;核酸;またはポリペプチドもしくはアミノ酸、などの物質を含有していてもよい。ある実施形態において、試料は、食品を含有していてもよい。
試料は、さらに、凍害(例えば、氷晶形成が原因)から生体物質を保護するために用いられる物質である凍結保護剤を含有していてもよい。通常、凍結保護剤は、細胞内の溶質濃度を高くすることで機能し、好ましくは、細胞毒性がない(または最低限の毒性を有する)ものである。凍結保護剤は、試料中の生体物質のガラス転移温度を低下させて、氷晶を形成することなく物質をガラス化することを可能にし得る。凍結保護剤は、生体分子と水素結合を形成する水分子と取って代わり、それによって生体物質中の水分子と入れ替わってもよい。
本明細書における試料は、凍結保護剤の混合物を含有していてもよい、すなわち、凍結保護剤を1つ以上含有していてもよい。
典型的な凍結保護剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセロールなどのグリコール類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ならびにトレハロース、スクロースなどの糖類が挙げられ、これらは、上記の通り、単独で(すなわち、個々に)、または組み合わせて、用いることができる。
試料が凍結保護剤を含有する場合は、通常、試料の1〜30%、例えば、1〜20%または5〜15%を、凍結保護剤としてもよい。
本発明の方法において解凍される試料は、典型的には「凍結している」。「凍結」試料とは、通常、試料中の水の10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、または100%が氷の形態である試料のことをいう。別の観点では、凍結した試料は、液体の水を含有していなくてもよく、あるいは水の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、または5%未満が液体の水である。
したがって、凍結試料において、非凍結物質(液体の水)がいくらか存在していてもよい(したがって、凍結試料は、部分的に凍結した試料を含む)が、典型的には、試料の体積の90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、または5%未満が、非凍結物質または液体の水である。
「凍結」物質とは、通常、氷晶形成を生じる程度に十分低い温度に曝された物質のことをいう。したがって、「凍結」とは、液体の水の氷への相転移のことをいう。したがって、凍結試料は、少なくともいくらかの固体物質を含有することになる。
「非凍結」物質とは、通常、氷晶を含有しない物質のことである。
上述したように、凍結試料では、水性成分または水の100%が氷として存在していてもよい。試料が水性成分のみを含有している場合、水の100%が氷として存在していると、このような凍結試料は固体であり得る。しかしながら、本発明の一態様において、試料は、ガラス転移温度が通常は氷の融点未満である凍結保護材を1つ以上、さらに含有することができる。したがって、このような試料においては、水の100%が氷の形態で存在していたとしても、試料が凍結保護剤のガラス転移温度と氷の融点との間の温度である場合は、試料は完全に固体ではなく、例えば、氷および凍結濃縮された溶液の二相を有することがあり得る。水性成分および凍結保護剤などをどちらも含有する試料は、ガラス転移温度未満の温度では固体となる。当該技術分野において、ガラスを形成するプロセスは、ガラス化として知られている。
したがって、凍結試料は、水のうち上記規定された割合が氷として存在する限りにおいて、凍結保護剤を含有し、凍結保護剤のガラス転移温度より高いか、同じか、またはそれ以下である、試料を含む。
本明細書における「水」に関する言及は、液体の水としての水および氷としての水のどちらも含む。
本発明の特定の態様において、解凍方法に用いられる試料は、固体であってもよく、自由液体または非凍結物質を含有していない、すなわち、凍結保護剤が存在する場合は、ガラス転移温度未満であってもよいし、試料中に水性成分のみが存在する場合は、氷の融点未満であってもよい。
試料中の氷の割合とは、試料に含有されている水のうち、氷として存在しているものの割合である。したがって、氷の割合とは、氷として試料中に存在している水の%である。試料中の水の量とは、液体の水として存在している水および氷として存在している水の両方を合計した量である。
試料中の氷の量(すなわち、氷の割合)を求める方法で、当該技術分野において公知であるものは多く、当業者であれば、このような方法を用いて、本発明の方法における氷の量を計算することができるであろう。特に、熱量測定に基づく推論または光透過率により、直接温度測定値の関数として、氷の割合を求めることができる。特に、少なくとも1つの特定の温度において残っている氷の割合を前もって求めてある、特定の試料についての参照表を確認することによって、氷の割合を求め得る。したがって、試料温度の測定値を用いて、解凍中に残っている氷画分の量を直接示してもよい。さらに、試料に加えられたエネルギー量に基づいて、特定の試料についての参照表から、氷の割合を同様に求めることができる。ここで、ある量のエネルギーは、試料温度を特定の高さまで上昇させることが知られており、これは特定の氷の割合と関連がある。
ある実施形態において、本方法は、試料、例えば凍結保存された試料の初期温度を、−100℃以下、−90℃以下、−80℃以下、−70℃以下、−60℃以下、−50℃以下、または−40℃以下とすることを含んでいてもよい。試料の温度は、本発明の解凍方法を行っている間に上昇する。
本明細書における「解凍する」または「解凍」なる語は、氷を液体の水に変換するプロセスのことをいう。「解凍」なる語は、あるいは、「融解」と称することもできる。試料の解凍は、その融点で、または融点となる前、典型的にはガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)との間で起こる。
本発明の方法において計算される攪拌プログラムは、振動数および/または振幅(例えば、バイアルの軌道運動の場合は0.1〜10mmかつ0〜4000rpmであり、流体を圧縮するためのバッグ型容器の場合はバッグ厚さを直線的に押す(0〜20mm、典型的には6〜10mm、特に8mm)ことである)が特定のものであり、かつ/または期間が、例えば10秒以上、20秒以上、30秒以上、40秒以上、または50秒以上から1分以上、2分以上、3分以上、4分以上、5分以上、6分以上、7分以上、8分以上、9分以上、または10分以上などと特定のものである、特定の種類の攪拌(例えば、振動、振盪、かき混ぜ、回転、転動、圧縮、入れ替え、突き刺し、屈曲など)を選択することを含んでいてもよい。所与の試料に対して最初に選択される特定の攪拌プログラムは、最初に提供される試料によって、すなわち、試料中の氷の割合、ならびに容器の種類/容積および/または試料物質の体積(ならびに、場合によっては熱伝導度)によって決まる。あるいは、または、さらには、容器によって、例えばその容積および形状によって、必要とされる攪拌が規定される。特に、容器がバイアルまたはチューブである場合は、軌道的攪拌が採用され、容器がバッグである場合は圧縮、入れ替え、突き刺し、および/または屈曲が採用され得る。
上述したように、攪拌プログラムは、試料の解凍過程の間に変化してもよい。特に、試料が凍結している場合、例えば、水の100%が氷であるか、または液体の水がない場合には、容器に適した(例えば、種類、振動数など)攪拌を用いることができる。特に、試料が固体である、すなわち、水性試料については、水の100%が氷として存在し、凍結保護剤を含む試料については、試料の温度がガラス転移温度であるかまたはそれ未満である場合は、この通りである。したがって、この時点において、用いられる攪拌は、試料の剪断および/または解凍時間に好ましくない影響を及ぼすとは考えられない。この時点において、攪拌しないこともあり得る。試料が解凍し始め、氷の量が減少する(別の観点では、自由液体、例えば液体の水の量が増加する)につれて、攪拌の振動数、振幅、または量を増加させる。したがって、例えば、試料中に存在する液体の水の量が、水の合計量の1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、10%以上、15%以上、または20%以上になると、例えば、チューブ状容器またはバイアル容器の場合には、500rpm以上、1000rpm以上、2000rpm以上、3000rpm以上、または4000rpm以上で、試料を激しく攪拌してもよい。しかしながら、自由液体(水)の量が、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上の特定の量に達すると(または、凍結物質の量が特定の量まで減少すると)、攪拌の量または振動数を、例えば、チューブ状容器またはバイアル容器の場合には、1000rpm未満または500rpm未満に減少させることが望ましいであろう。このようなプログラムによって、細胞の生存能を確保するために解凍時間を短縮したまま、解凍プロセスの間、確実に生物物質の剪断を抑え得る。
したがって、上述したように、試料が解凍するにつれて、変化する氷の割合および試料の体積を考慮に入れるために、攪拌プログラムを変更する。上記のように、例えば、攪拌の種類、振動数、振幅、および/または時間などの、上述した攪拌プログラムの変数のうちのいずれか1つ以上を改めてもよい。
本明細書における「容器」は、試料を入れ得るどのような容器であってもよい。典型的には、容器は、試料を入れて凍結することができる容器であり、したがって、典型的には、容器は、例えば−196℃の温度(液体窒素の温度)などの低温で存在可能である。容器は、チューブ、バイアル、バッグ、プレート、ストロー、またはその他公知の、試料を入れることができる容器であってもよい。特に、容器は、ねじ蓋付き凍結バイアル、密閉型凍結バイアル、軟質バッグ、マルチウェルプレート、マトリクスチューブ、またはストローであり得る。容器は、どのような体積の試料を入れることができてもよく、本発明の方法は、容器の容積にかかわらずに用いることができる。しかしながら、本発明の特定の実施形態において、容器の容積は、50μL以上、100μL以上、0.2mL以上、0.3mL以上、0.4mL以上、0.5mL以上、1mL以上、2mL以上、5mL以上、10mL以上、50mL以上、100mL以上、500mL以上、または1000mL以上であってもよい。さらに、上述したように、容器の材料はどのようなものであってもよいが、好ましくは、低温(例えば、−196℃)で存在可能な材料でできたものである。容器の壁はどのような厚さであってもよく、例えば、0.5mm以上、1mm以上、2mm以上、3mm以上、または4mm以上の厚さであってもよい。特に、容器がバッグである場合、壁の厚さは、0.5mm未満、例えば、400μm未満、300μm未満、200μm未満、100μm未満、50μm未満、40μm未満、30μm未満、または20μm未満であってもよい。
容器には、どのような体積の試料を入れてもよく、その容積を試料で満たしてもよいし、満たさなくてもよい。したがって、容器は、部分的に満たされているだけであってもよい。この場合、試料は、容器の容積の1%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、または100%を占めていてもよい。
さらに、上述したように、試料の「少なくとも1つの領域」が攪拌されてもよい。したがって、本発明においては、試料の一部のみを攪拌でき、特定の攪拌ステップのいずれにおいても、試料全体を攪拌する必要はないであろう。この点について、試料の初期の攪拌は、試料の単一領域の攪拌、試料の複数領域(空間的に分けられていてもよいし、各領域の氷の割合にしたがって分けられていてもよい)の攪拌、または試料全体の攪拌を含んでいてもよい。したがって、試料は、空間的および/または時間的に、示差的に攪拌されてもよく、また、これは、氷の割合および/または試料の体積に応じて変化してもよい。この点について、特定の攪拌プログラムにおいて、試料の1つ以上の領域が攪拌されてもよく、上述の変数にしたがって求められた続く攪拌プログラムにおいて、試料の同じ領域または異なる領域が攪拌されてもよい。したがって、本方法において、試料の異なる領域が、異なる時点で攪拌を必要としてもよい。一実施形態において、特定の攪拌プログラムのいずれにおいても、試料の別々の領域の1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、50個以上、100個以上、200個以上、300個以上、500個以上、または1000個以上が攪拌されてもよい。
特に、容器が、バッグなどの軟質容器であって、バッグの別々の領域に圧力を加えることができる場合に、別々の領域での攪拌が行われ得る。上述したように、試料の少なくとも1つの領域で行われる攪拌の変更は、攪拌の振動数、振幅、または振動数および振幅の両方を変更することを含んでいてもよい。攪拌機は、少なくとも1つの攪拌装置を含んでいてもよく、容器の異なる領域に対して空間的に異なる攪拌を可能にするために、空間的に離れていてもよい2つ以上の攪拌装置が、解凍槽の周囲に、および/または解凍槽に沿って、存在していてもよい。上述したように、容器が軟質である場合、複数の攪拌機を用いて、解凍プロセスの同じ時点または異なる時点で、容器の異なる領域に圧力を加えてもよい。
ある実施形態において、本発明の方法で用いられ得る試料解凍槽は、攪拌ステップと同時に、または攪拌ステップとは別に、試料を加熱し得る試料加熱装置をさらに含んでいてもよい。特に、攪拌プログラムを計算するステップが、試料の体積および/または容器の種類、場合によっては、試料の熱伝導度および氷の割合に応じて加熱プログラムおよび攪拌プログラムの両方を計算することを含んでいてもよい場合には、試料を攪拌するステップは、さらに、加熱プログラムにしたがって試料を加熱し、試料の少なくとも1つの領域を加熱することを含んでいてもよく、また、攪拌プログラムを変更するステップは、試料の体積および/または試料中の氷の割合の変化に応じて、試料の少なくとも1つの領域に適用される加熱プログラムを変更することを含んでいてもよい。試料の加熱は、試料を解凍する間に、連続的に変化してもよい。
サンプルを加熱することは、試料の単一領域の加熱、試料の複数領域(空間的に分けられていてもよいし、異なる領域における試料中の氷の割合の違いによって分けられていてもよい)の加熱、または試料全体の加熱を含んでいてもよい。したがって、試料は、時間的および/または空間的に、示差的に加熱され得、また、これは、試料中の氷の割合および/または試料の体積に応じて変化し得る。この点について、試料の一領域が、特定の加熱プログラムにしたがって処理されてもよく、同じ領域、または異なる領域が、続く加熱プログラムにおいて加熱されてもよい。したがって、試料の異なる領域が、異なる時点で加熱を必要としてもよい。一実施形態において、特定の加熱プログラムのいずれにおいても、試料の別々の領域の1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、または10個以上が加熱されてもよい。
加熱装置は、伝熱装置などの加熱素子を少なくとも1つ、解凍槽の内壁内部に、または内壁に接続して含んでいてもよく、槽の周囲において、壁の周囲から横方向または放射状に、空間的に離れていてもよいか、または槽壁の鉛直方向上部に離れていてもよい複数の加熱素子が存在していてもよい。導電性の装置または電気抵抗性の装置の形態で、複数の伝熱装置が存在していてもよい。槽壁の鉛直方向上部の異なる位置に、例えば、電気抵抗性の加熱帯などの複数の伝熱装置が埋め込まれていてもよい。加熱帯は、環(完全に連結していてもよい)の形態であってもよく、波状または螺旋状の外形を有していてもよい。
上述したように、本発明の方法により、解凍プロセスの間、試料の、特に細胞試料などの生物試料の剪断を減少させることができる。この点について、別の観点では、本発明は、攪拌中の試料の剪断を減少させる方法をさらに提供するものであって、該方法は、
a)i)容器中の該試料の体積および容器の種類のいずれか、またはその両方、(ii)該試料中の氷の割合、および(iii)場合によっては、該容器の熱伝導度、に応じた攪拌プログラムを計算することと、
b)該プログラムにしたがって該試料を攪拌することにより、該試料の少なくとも1つの領域を攪拌することと、
c)該試料の体積および/または該試料の氷の割合の変化に応じて、該試料の少なくとも1つの領域に適用される該攪拌プログラムを変更することと
を含む、方法である。
この態様において、本方法は特に、試料の体積および/または容器の種類/容積に基づき、かつ氷の割合に基づいて、攪拌を計算し、かつ/または改めることがない方法、例えば連続的な攪拌プログラムが試料に適用される、すなわち、試料中の氷の割合の変化にかかわらず、同じ振動数で同じ種類の攪拌が試料に適用される方法と比較して、試料、特に細胞試料に対する剪断を、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上減少させる。
本明細書における「剪断」なる語は、攪拌の結果として、試料に起こる、特に試料中に含有される細胞材料に起こる、あらゆる損傷(特に、機械的損傷)のことをいう。特に、剪断とは、細胞の細胞膜の損傷のことをいい、これによって細胞が溶解してもよいし、しなくてもよい。したがって、細胞試料に起こり得る剪断量の減少は、細胞膜に起こる損傷の減少、および/または試料中で起こる細胞溶解の減少(例えば、細胞膜の損傷および/または細胞溶解における5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上の減少)に関連し得る。細胞の剪断量は、解凍された試料において細胞数を直接計数することによって求められてもよいし、あるいは、乳酸デヒドロゲナーゼなどの細胞内成分の放出を、標準的な比色アッセイを用いてモニターしてもよい。
好ましい実施形態において、さらに、本発明の方法によって、試料を攪拌しない方法、または氷の割合ならびに試料の体積、および/もしくは容器の種類/容積に基づいて試料を攪拌しない方法と比較すると、あるいは、加熱に関しては下記方法について、容器の外部表面のみが細胞損傷が起こらないことが予期される温度に曝される方法と比較すると、解凍時間が短縮され得る。特に、解凍時間は、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上、短縮され得る。
上述したように、発明者らは、試料の、特に生物試料の解凍時間を短縮し得るさらなる方法を発見した。この点について、発明者らは、試料が入った容器の外壁を、細胞損傷を引き起こすのに通常関係する温度よりも高い温度、例えば37℃よりも高い温度まで加熱しつつ、内壁の温度を、細胞損傷を引き起こす温度未満、例えば37℃未満に保つことができるということを発見した。このように、試料を、細胞損傷を引き起こすと考えられる温度に曝すことなく、解凍時間を短縮することができる。
この点について、本発明の第2の実施形態は、試料の解凍方法を提供するものであり、該試料は容器に入っており、該方法は、該容器の外壁の少なくとも1つの領域を、細胞損傷が起こり得る温度以上の温度まで加熱することを含み、該容器の内壁は、細胞損傷が起こり得る温度未満の温度である。
したがって、発明者らは、本態様において、容器の内部表面または内壁の温度を、容器の外部表面または外壁の温度よりも低くし得るということを発見した。容器の内部の温度と容器の外部との関係は、容器壁の厚さおよび容器を製造するのに用いた材料などの、いくつかの要因に依存し得る。さらに、容器内の試料の温度および/または体積は、容器の外壁と内壁との間の温度差に影響を及ぼし得る。
「細胞損傷が起こり得る温度以上の温度」についての言及は、それ以上の温度において、試料中の細胞のうち10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、0%以上、80%以上、または90%以上が損傷を受ける、例えば、生存不能となり、かつ/またはDNAおよび/もしくはタンパク質が損傷を受ける、温度のことをいう。別の観点では、このような試料は、より温度の低い試料、すなわち、細胞損傷が起こり得る温度以上の温度に曝されていない試料と比較して、生存不能な細胞および/またはDNAに損傷を受けた細胞が5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、または50%以上、増加し得る。細胞損傷を測定する方法は、当該技術分野において公知であり、細胞数を直接計数することと、細胞内成分の放出をモニター/測定することとを含む。
生物試料の場合、典型的には、その温度以上で細胞損傷が起こり得る温度は、37℃、例えば38℃であり、37℃を越える温度の試料、または37℃を越える温度に曝された試料は、通常、いくらかの細胞損傷を受ける。しかしながら、その温度以上で細胞損傷が起こり得る温度は、試料によって異なり得る。例えば、好熱性細菌の生物試料を、例えばヒトの組織よりもかなり高い温度で解凍することが可能であり得る。
一態様において、容器の外壁は、37℃以上、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、または70℃以上の温度まで加熱されてもよい。通常、容器壁が厚く、試料の温度が低いほど、容器内の試料に細胞損傷を引き起こすことなく容器の外壁を加熱するのに用いることができる温度は高くなる。
細胞損傷が起こり得る温度未満の温度についての言及は、試料中の細胞の10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満が損傷を受ける、例えば、それだけの細胞のDNA、タンパク質が損傷を受け、かつ/またはそれだけの細胞が生存不能となる、温度のことをいう。特に、試料は、その温度以上で細胞損傷が起こり得る温度に曝された試料と比較して、損傷を受けて存在する細胞の量(例えば、パーセンテージ)が50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上、少なくなり得る。
外壁が加熱される温度が、試料の解凍方法を行っている間に変化してもよいということは、当業者には理解されよう。典型的には、試料が解凍するにつれ(すなわち、内部の試料温度が上昇するにつれ)、温度を低下させて細胞損傷を防止する。
さらに、本態様において、容器の外壁の少なくとも1つの領域が、細胞損傷が起こり得る温度以上の温度まで加熱される。したがって、本発明の方法においては、容器全体を規定された温度で加熱する必要はない。それ故に、特に、1つ以上の領域、例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上の領域が、その温度以上で細胞損傷が起こり得る温度で加熱されてもよい。さらなる態様において、容器全体が加熱されてもよい。特定の実施形態において、対応する内壁領域が試料と接触していない外壁領域を、細胞損傷が起こり得る温度以上の温度に曝さない、例えば、細胞損傷が起こらない温度にのみ曝す一方で、対応する内壁領域が試料と接触している外壁領域を、細胞損傷が起こり得る温度以上の温度まで加熱することが望ましいであろう。
本態様に関連して、本発明は、さらに、容器に入っている試料の解凍方法を提供するものであり、該方法は、
対応する内壁領域が該試料と接触している該容器の外壁領域が、対応する内壁領域が試料と接触していない外壁領域よりも高い温度まで加熱されるように、該容器を加熱することを含む。
したがって、本実施形態によると、容器を示差的に加熱することができ、ここで、対応する内壁領域が試料と接触していない外壁領域と比較して、対応する内壁領域が試料と接触している容器の外壁(すなわち、外部壁)に、より高い温度を加える。特に、本方法において、容器を試料で部分的にのみ満たし、試料と接触していない内壁領域、例えば、容器中の試料よりも高い内壁領域の存在を確実にしてもよい。
容器の示差的な加熱は、以下で述べる本発明の装置、例えば、空間的に離れた複数の加熱素子を有するか、または試料容器を横方向もしくは鉛直方向に動かし、その容器の一部のみを装置内の加熱素子が生じる熱に曝す手段を有する装置を用いて、行われてもよい。したがって、以下で述べるように、容器の一部のみが装置内にあり、容器の一部は装置外にあるように、容器を装置に挿入することが可能であり得る。このように、装置内にある部分(例えば、好ましくは、試料と接触している部分)のみを加熱して、試料容器が示差的に加熱される。あるいは、一部のみが、装置内の加熱素子に曝されるように、本発明の装置内で容器を回転することが可能であり得る。
特に、試料容器を示差的に加熱することが可能であり、ここで、内壁領域および/または試料が細胞損傷が起こり得る温度に達することなく、対応する内壁領域が試料と接触している容器の外壁の一部に、細胞損傷を引き起こすのに通常は関係している温度を加えることができる。
したがって、試料の凍結特性(および容器壁を隔てた温度差)により、試料および/または試料と接触している内壁は、試料に細胞損傷を引き起こし得る温度未満の温度のまま確実に維持される。試料がいまだ凍結している場合、試料と接触している内壁が、細胞損傷を引き起こす温度以上の温度となる場合があり得る。この場合、好ましくは、試料自体は、細胞損傷を引き起こす温度以上の温度に達することがない。さらに、特定の実施形態において、試料と接触している内壁は、それに対応する外壁に加えられた温度の上昇にかかわらず、試料と接触していない内壁と同じ、または同程度の温度まで加熱され得る。
したがって、本発明は、好ましくは、容器に入っている試料の解凍方法を提供するものであり、該方法は、対応する内壁領域が試料と接触していない該容器の外壁領域を、細胞損傷が起こり得る温度未満の温度とする一方で、対応する内壁領域が試料と接触している該容器の外壁領域を、細胞損傷が起こり得る温度以上に加熱することを含む。本実施形態において、上述したように、試料と接触している内壁領域および接触していない(例えば、試料より高い)内壁領域は、同じまたは同等の温度であり得る。
外壁(区別なく外部壁ともいう)についての言及は、試料が入っている容器の外部表面のことをいう。外壁は、試料と間接的に接触していてもよいし、試料と間接的に接触していなくてもよい(間接的な接触とは、対応する内壁領域が試料と接触していること、または接触していないことをそれぞれ意味している)。内壁についての言及は、試料が入っている容器の内部表面のことをいう。内壁は、試料と接触していてもよいし、試料と接触していなくてもよい(例えば、試料より高い内壁(例えば部分的に満たされた容器中)は、試料と接触していない)。
外壁領域に対応する内壁領域についての言及は、容器の外部表面上の外壁領域と同じ箇所にある容器の内部表面上の内壁領域のことをいう。さらに、内壁領域に対応する外壁領域についての言及は、容器の内部表面上の内壁領域と同じ箇所にある容器の外部表面上の外壁領域のことをいう。
本方法で述べたように、試料と接触している内壁領域および試料と接触していない内壁領域は、同じまたは同等の温度であり得る。「同等の」温度とは、少なくとも、差が10℃以下、5℃以下、4℃以下、3℃以下、2℃以下、または1℃以下の温度のことをいう。したがって、試料と接触している内壁表面は、試料と接触してない内壁表面の温度との差が10℃未満(例えば、5℃、4℃、3℃、2℃、または1℃未満)の温度であってもよい。
対応する内壁領域が試料と接触している容器の外壁に加えられる熱は、試料が解凍するにつれ、したがって、試料の温度が上昇するにつれ、変更されてもよいということは、当業者には理解されよう。特に、対応する内壁領域が試料と接触している容器の外壁が加熱される温度は、試料が解凍するにつれ、低下してもよい。
したがって、この点について、本方法は、試料物質と接触している内壁領域の温度および試料と接触していない内壁領域(例えば、試料物質の高さより高い)の温度をモニターし、その異なる2つの領域の温度差の変化に応じて、試料容器の外壁領域の一方または両方に加える熱またはエネルギーを調整するステップを含んでいてもよい。あるいは、または、さらには、本ステップは、試料の温度をモニターし、対応する内壁領域が試料と接触している外壁領域に加える熱またはエネルギーを調整する、例えば、試料物質と接触している内壁領域の温度を低下させるために、加える熱を減少させることを含んでいてもよい。
本ステップは、また、試料物質の温度をモニターし、かつ/または氷の割合をモニターし、その割合の変化に応じて試料容器に加える熱またはエネルギーを調整することを含んでいてもよい。
本ステップは、2つの内壁領域間の温度差の変化、氷の割合の違いの変化、試料物質に接触している内壁領域の現在温度の変化、またはこれらの組み合わせに応じて、試料物質に接触している内壁領域の空間的に離れた範囲を示差的に加熱することを含んでいてもよい。
本ステップは、適切な手段を用いて、2つの内壁領域の温度をモニターし、かつ/または試料物質と接触している内壁の空間的に離れた範囲をモニターすることを含んでいてもよく、適切な手段は、
1)槽の内壁に埋め込まれた、または接続された1つ以上の温度センサーと、
2)槽の外部表面から発される赤外線放射を検出するように構成された、1つ以上の赤外線放射センサーと、
3)槽内の温度に焦点を当てる共焦点技術と、
4)容器の外壁の温度を測定し、この測定値を内壁温度を計算するために入力された出力エネルギーと共に用いることと、
5)試料物質の空間的に離れた部分からの赤外線放射を検出するように構成された1つ以上の赤外線放射センサーと、
から選択される。
本ステップは、2つの内壁領域および/または空間的に離れた内壁の領域、ならびに空間的および/または時間的に槽および/または試料の加熱を制御するのに用いられる生成データを連続的にモニターすることを含んでいてもよい。したがって、本ステップは、試料の加熱と同時に行われ得る。
試料は、本発明の第1態様で上述したように、生物試料物質であってもよい。
対応する内壁領域が試料と接触している容器の外壁領域は、最初に、試料に細胞損傷を引き起こすことが予期される温度以上の温度まで、例えば、50℃以上、60℃以上、または70℃以上の温度まで加熱されてもよく、対応する内壁領域が試料と接触していない外壁領域は、20℃〜40℃、例えば37℃付近の初期温度、または、それと同等の温度、例えば、少なくともその温度からの差が10℃以下、例えば、少なくとも5℃、4℃、3℃、2℃、または1℃以下である温度まで加熱されてもよい。特に、対応する内壁領域が試料と接触している外壁領域は、内壁の温度を20℃〜40℃の範囲内、特に37℃とする温度まで加熱されてもよい。しかしながら、試料の氷の割合が高い、例えば、試料の水の60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上が氷である、または別の観点では、水の40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満が液体の水である場合は、細胞損傷を引き起こすことなく、すなわち、試料のどの部分の温度も37℃より高く上昇することなく、内壁を37℃より高い温度まで加熱することができる。しかしながら、試料と接触している内壁を、37℃より高い温度まで、または細胞損傷が起こり得る温度より高い温度まで加熱する場合は、試料を攪拌することが好ましい。
上述したように、本発明の上記方法は、上昇させた温度、例えば、その温度以上では細胞損傷が起こることが予期される温度を、例えば、容器の外部表面の少なくとも1つの領域に加えることにより、試料の解凍時間が短縮され得る。したがって、別の観点では、本発明は、試料の解凍時間を短縮する方法を提供するものであり、該方法は、該試料が入っている容器の外部表面の少なくとも1つの領域を、該試料に細胞損傷を誘導することなく、細胞損傷が起こり得る温度以上の温度まで加熱することを含む。
解凍時間を「短縮する」ことは、細胞損傷が起こり得る温度未満まで容器の外部表面を加熱する方法と比較して、解凍時間を5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、40%以上、または50%以上短縮することを含んでいてもよい。
試料物質が、−30〜30℃などの規定の温度、例えば、−30〜20℃、−25〜20℃、−20〜10℃、−20〜5℃、−20〜0℃、または−20〜−10℃に達すると(あるいは、別の観点では、−20℃以上、−10℃以上、0℃以上、10℃以上、もしくは20℃以上、または30℃以上に達すると)、対応する内壁領域が試料と接触している外壁領域に加えられている熱またはエネルギーを減少させてもよい。特に、試料が−25〜0℃の範囲内、例えば、−20〜−10℃の範囲内に達すると、温度を低下させてもよい。試料物質の温度が所望の温度まで上昇するにつれて、加えられる熱またはエネルギーを減少させ続けてもよい。例えば、試料物質が37℃に達するまで、対応する内壁領域が試料と接触している外壁領域に加えられる熱またはエネルギーを減少させ続けてもよい。
上述した本発明の第2の態様の方法は、さらに、攪拌ステップを含んでいてもよく、特に、本発明の第1の態様の方法と組み合わせられてもよい。
本発明の第3の態様によると、試料解凍装置が提供され、該装置は、試料が入っている使用中の容器を保持するようにされた加熱槽と、対応する内壁領域が該試料と接触している該容器の外壁領域の少なくとも一部を、対応する内壁領域が該試料と接触していない外壁領域の少なくとも一部よりも高い温度まで加熱するように、保持されている該使用中の容器の異なる領域を示差的に加熱する手段を含む加熱装置とを含む。
したがって、第3の態様の装置は、上述の方法にしたがって、容器を示差的に加熱することができ、一定の内壁温度を、すなわち、試料と接触している内壁および試料と接触していない内壁の両方について、実現し得る。特に、本装置は、容器を示差的に加熱することにより、細胞損傷を引き起こすことなく、試料を解凍することができる内壁温度、特に、この点について可能な最大温度を実現可能であり得る。生物試料の場合に、容器を示差的に加熱することで、37℃またはそれと同等の温度の内壁温度を実現し得る。特に、本装置は、対応する内壁領域が試料と接触している外壁領域の少なくとも一部を、細胞損傷を引き起こすことが予期される温度まで加熱することができる。
上述したように、本装置は、対応する内壁領域が試料と接触している容器の外壁領域を、対応する内壁領域が試料と接触していない外壁領域よりも高い温度まで加熱することができる。「より高い温度」についての言及は、対応する内壁領域が試料と接触していない外壁領域と比較して、対応する内壁領域が試料と接触している外壁領域の温度が上昇していること、例えば、1℃以上、5℃以上、10℃以上、20℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上、温度が上昇していることをいう。本態様において、試料と接触していない外壁を加熱しないことは可能である。
加熱槽は、加熱装置が載置されている、または加熱装置が接続されている、槽壁を含み得る。
加熱装置は、槽壁上で空間的に離れた複数の加熱素子を含んでいてもよいし、単一の加熱素子を含んでいてもよい。加熱素子は、槽壁の鉛直方向上部に離れた加熱帯、槽壁の周囲に水平に離れた加熱細片、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。あるいは、または、さらには、加熱素子は、湾曲した部分を含んでいてもよいし、その形状が波状であってもよい。加熱素子は、槽壁の周囲において、連続した帯として存在していてもよいし、非連続的な帯として存在していてもよい。加熱素子は、電気抵抗性素子を含んでいてもよい。
加熱装置は、加熱槽に放射加熱を行うように構成された放射加熱源を含んでいてもよい。放射源は、赤外線加熱源を含んでいてもよい。保持された容器を空間的に示差的に加熱する手段は、特定の領域における槽壁を通した放射エネルギーの伝達を可能にするか、または防止するために、選択的に作動され得る複数のシャッターまたはウインドウを、槽壁に有していてもよい。これは、装置内で単一の加熱素子が用いられている場合に、特に有用である。放射加熱が採用された場合、放射熱源の焦点をバイアル上に合わせるか、または投影することにより、容器の空間的示差的な加熱を実現することができる。さらに、放射熱源のスペクトル制御を用いて、示差的な加熱を実現することができる。
加熱装置は、加熱された流体を槽壁の空間的に離れた部位に用いるように構成された加熱流体用導管を含んでいてもよい。加熱流体用導管は、槽壁に埋め込まれた導管を含んでいてもよいし、容器壁に接続されていてもよい。流体用導管は、選択的に開閉されて、加熱された流体を流すことを可能にする空間的に離れた一連の流体パイプを含んでいてもよい。
本発明の加熱装置は、試料容器を移動させて、試料の示差的な加熱を可能にする手段、例えば、試料容器を横方向または鉛直方向に移動させる手段を含んでいてもよい。この手段は、例えば試料容器の一部のみが、直接、加熱素子に曝されるように、もしくは加熱素子に隣接するように、試料容器を回転させる手段、または試料容器を装置内で(例えば、容器(試料が入っているか、または試料と接触している)の一部のみが装置内に存在するように)鉛直方向に移動させる手段を含んでいてもよい。
加熱装置は、槽壁に埋め込まれた、または槽壁に載置された、1つ以上の温度センサーを含んでいてもよいし、槽壁および/または保持された容器に入っている試料の異なる部位からの赤外線放射の変化を検出するように構成された赤外線放射センサーを含んでいてもよい。
また、装置は、保持された試料容器および/または試料容器中の試料物質の、時間的および/または空間的に示差的な攪拌を、開閉可能に提供し得る攪拌装置を含んでいてもよい。攪拌装置は、本発明の第1の態様または第2の態様のいずれかで説明したものであってもよく、試料容器、試料、またはこれらの部位に加えられる振動数および/または振幅を、試料の氷の割合、試料物質またはその部位の温度、保持された容器またはその領域の温度、あるいはこれらの組み合わせの変化に応じて変更するように構成されていてもよい。
装置は、第2の態様で説明された試料が入っている容器を保持し、第2の態様で説明されたように試料を解凍するために、本発明の第2の態様の方法で用いられ得る。
本発明の第4の態様によると、試料の解凍方法が提供され、該方法は、
a)第1の期間にわたり、Tgを越えるが、該試料の水の少なくとも70%が氷である温度まで該試料を加熱するステップと、
b)第2の期間にわたり、該試料の融点以上の温度まで該試料を加熱するステップと
を含み、
該第1の期間は、該第2の期間よりも長い。
本態様によると、発明者らは、細胞の生存能に影響を及ぼし得る細胞損傷を引き起こすという点に関して、解凍プロセスの間で最も好ましくない期間は、試料中の氷画分の最後の部分、例えば、氷画分の最後の70%を解凍する間に起こるということを発見した。通常、この最終解凍は、試料がそのTm以上に(例えば、水などの水性成分のTm以上に)加熱された際に起こる。最初の加熱段階の間(例えば、氷の最初の30%が解凍する)、細胞損傷は起こりにくく、したがって、細胞の生存能に影響を及ぼすことなく、比較的遅い速度でこの最初の解凍を行うことができる。通常、最初の解凍は、Tg以上、Tm未満である温度で行われる。
本明細書における「Tg」についての言及は、試料の、典型的には、凍結保護剤を含む試料の、ガラス−液体転移温度またはガラス転移温度のことをいう。ガラス転移温度は、凍結濃縮されたマトリクス(例えば、水、細胞、凍結保護剤などを含む試料)が、固化してガラスになる温度である。したがって、通常、ガラス転移温度未満に維持されている試料には、自由液体は存在せず、例えば、試料体積の10%未満、5%未満、または1%未満が自由液体である。周知の凍結保護剤のTgは、当該技術分野において公知であり、例えば、DMSOのTgは、−124℃である。
「Tm」についての言及は、試料の、例えば、試料中の水性成分、または凍結保護剤と水性成分との組み合わせの、融解温度のことをいう。凍結保護剤などの薬剤と水性成分との組み合わせのTmは、いずれかの成分のみの場合のTmとは異なり、例えば、いずれかのみの場合のTm未満であり得る。Tmは、試料中で、その温度以上だと固体から液体への相転移が引き起こされる温度である。
上述したように、TgとTmとの間の温度において、特に凍結保護剤がある場合には、試料中に2つの相が存在し得る。したがって、凍結濃縮された溶液とともに、氷の相が存在し得る。Tgにおいて、ガラスの形成が起こり得る。
第1の期間は、第2の期間の2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、または6倍以上長くてもよく、例えば、4〜6倍長くてもよい。ある実施形態において、ステップb)は、試料を−5〜5℃、−5〜3℃、−5〜2℃、−5〜1℃、または−3〜1℃まで加熱することを含む。
ある実施形態において、第2の期間は、15秒〜10分、20秒〜120秒、30秒〜120秒、1分〜10分、1分〜5分、および1分〜2分である。ある実施形態において、ステップb)は、抵抗性加熱素子を含む槽中の凍結生物試料を、−25℃未満の温度、例えば約−30℃まで加熱することを含む。
ある実施形態において、第1の期間は、5分〜30分、5分〜25分、5分〜20分、5分〜15分、または10分〜15分である。
生物試料を0〜5℃の温度、例えば、約4℃で維持するさらなるステップc)があってもよい。ステップc)は、第2の期間より短くてもよいし、第2の期間よりも長くてもよいが、好ましくは5〜15分、または5〜10分である、第3の期間にわたって試料を加熱することを含んでいてもよい。
ステップb)は、実質的に全ての水性成分が液体状になる(すなわち、全ての氷画分が液体の水になる)まで、試料を加熱することを含んでいてもよく、したがって、ステップb)は、試料の全ての水性成分の、固体から液体への相転移を引き起こすため、例えば、試料の水の70%以上、80%以上、90%以上、または95%以上が液体の水として存在するようになるまで、あるいは、別の観点では、水の30%未満、20%未満、10%未満、または5%未満が氷として存在するようになるまで、試料を加熱することを含んでいてもよい。
水性成分が凍結状態から液体に転移し始める温度は、溶媒、溶質等からなる組成物を含む、試料中の凍結試料物質の組成に依存するが、ある実施形態において、温度が−40℃以下、−35℃以下、−30℃以下、−20℃以下、または−15℃以下に達するように、ステップb)を行ってもよい。
全ての凍結水性成分を液体の水性成分に変化させるのに十分な期間、ステップb)を行ってもよい。
ステップa)で用いられる抵抗性加熱素子に加えられる熱またはエネルギーを、経時的に増加させることにより、試料の温度を徐々に上昇させることによって、ステップb)を行ってもよい。
生物試料は、ステップa)、ステップb)、およびステップc)のいずれか、またはその全てにおいて、攪拌されてもよく、また、攪拌の振動数および/または振動が、試料温度、経過した解凍時間、および本方法中のいずれかの時点における試料中の氷の割合の少なくとも1つに応じて変更されるように、攪拌が行われてもよい。
ある実施形態において、本方法は、ペルティエ素子を含む槽中の生物試料を解凍することを含み、該ペルティエ素子は、維持されている試料の温度に応じて、ステップa)およびステップb)において試料を加熱し、ステップc)において試料の加熱または冷却を行うように構成されている。
本発明の第4の態様の方法は、本発明の第1の態様の方法または本発明の第2の態様の方法と組み合わせてもよい。本発明の第4の態様の方法は、本発明の第3の態様の装置を用いることを含んでいてもよく、このように、凍結生物試料を容器に入れて、本発明の第3の態様の装置に入れ、その後、本発明の第4の態様の方法のステップa)、ステップb)、および場合によってはステップc)を行ってもよい。
本発明の方法の全てにおいて、解凍された試料、または実質的に解凍された試料は、解凍後の適切な温度および適切な条件で保管され得る。例えば、物質を、次に使用するまで、例えば10℃以下、5℃以下、または4℃以下の低温で保管することが望ましいであろう。あるいは、細胞培養の場合は、例えば、培地中、37℃で細胞または物質をインキュベートするのが好ましいであろう。
本発明の第5の態様によると、弾性的な槽壁を有する槽を含み、使用中に試料容器を保持するように構成され、該弾性的な槽壁に少なくとも1つの加熱素子および/または冷却素子が設けられている、試料解凍用または冷却用装置が提供され、該弾性的な槽壁は、使用中、保持された容器に付勢される第1の構成と、保持された容器から離れるように付勢される第2の構成との間を移動可能である。
弾性的な槽壁は、最初は、第1の構成または第2の構成であり、外的刺激または外的作動装置によって、構成間を移動させてもよい。
ある実施形態において、弾性的な槽壁は、最初は、第1の構成であり、容器の槽内への挿入を可能にするために、第2の構成へと移動させ、その後、壁は、第1の構成へと戻る。このような実施形態において、槽壁を吸引するか、または負圧を加えることにより、壁を、第1の構成から第2の構成へと移動させてもよい。例えば、真空を用いることができる。その後、容器への挿入後、壁は開放され、槽壁が実質的に容器と接触する第1の構成へと戻ってもよい。
他の実施形態において、弾性的な槽壁は、最初は、第2の構成であり、したがって、試料容器が槽内に挿入され得る。このような実施形態において、槽壁の外側に圧力を加えることにより、壁を第1の構成に移動させてもよく、ある実施形態においては、圧力は、実質的に槽壁の全体に加えられてもよい。
例えば、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上の、複数の加熱素子および/または冷却素子が槽壁の周囲で空間的に離れて存在していてもよい。あるいは、単一の加熱素子および/または冷却素子が存在していてもよい。少なくとも1つの加熱素子および/または冷却素子は、壁の中に埋め込まれていてもよいし、壁に接続されていてもよい。少なくとも1つの加熱素子および/または冷却素子は、槽壁の周囲に延びる帯を含んでいてもよく、各帯は、実施的に直線状であってもよいし、波状であってもよい。帯は、連続的であってもよいし、非連続的であってもよい。少なくとも1つの加熱素子および/または冷却素子は、抵抗性加熱素子であってもよい。冷却は、コールドシンクからの熱伝導によって実現されてもよい。特に、少なくとも1つの加熱素子および/または冷却素子は、ペルティエからの冷たさ(すなわち、低温)を伝導することが可能であり得る抵抗線であってもよい。電線を加熱することにより、冷却を制御してもよい。
少なくとも1つの加熱素子および/または冷却素子は、例えば、槽壁の周囲に一様に分布されるように、相互に間隔を空けていてもよい。装置は、試料を、示差的に加熱および/または冷却することが可能であってもよい。この点について、装置は、1つ以上の加熱素子および/または冷却素子から試料容器および/または試料を遮蔽するための1つ以上のシャッターまたはウインドウを含んでいてもよい。
槽は、外壁と弾性的な内壁とを含んでいてもよい。外壁および内壁は、その間に間隙または空隙が形成されるように、相互に離れていてもよい。
弾性的な槽壁は、例えば、ゴム、ラテックス、シリコーンなどを含み得るエラストマー材料から形成されていてもよい。本発明の第5の態様の装置は、本発明の第3の態様の装置と組み合わせられてもよい。本発明の第5の態様の装置は、本発明の第1の態様、第2の態様、および第4の態様のいずれかの方法で用いられてもよい。さらには、および/または、あるいは、第5の態様の装置を用いて冷却(すなわち、試料の温度を低下)してもよい。冷却または温度の低下とは、1℃以上、5℃以上、10℃以上、または20℃以上の低下のことをいう。特に、装置は、試料を凍結させる、すなわち、非凍結物質を凍結物質に変換することが可能であってもよく、例えば、装置を用いて、飲料などの液体の試料を凍結することができる。
本願において、「水性成分」なる語は、水を意味する。
発明の詳細な説明
以下、本発明をより明確に理解するために、添付の図面を参照し、単なる例示として、実施形態について説明する。
図1は、本発明の第3の態様および第5の態様の試料解凍用および/または冷却用装置と、その上部の生物試料容器を示し; 図2aおよび図2bは、試料容器が挿入された、図1の生物試料解凍用および/または冷却用装置の断面図を示し; 図3は、凍結生物試料容器が挿入された、本発明の試料解凍装置の第2実施形態を示し; 図4aおよび図4bは、図2a中、四角で囲んだ部位の断面図であって、異なる加熱/解凍状況における、試料容器壁を隔てた熱勾配を示し; 図5は、凍結保存された試料について、外壁温度に対する解凍速度を示すグラフであり; 図6は、凍結保存された試料の、一定温度における3つの異なる解凍ステージを示すグラフであり; 図7は、グリセロール(10%w/w)の0.15m NaCL溶液について、氷の割合の平衡曲線(薄い線)およびエンタルピー曲線(濃い線)を示し; 図8は、液体内部の温度分布を示し、a)は内部に温度勾配がある場合(左図)、b)は液体内部の温度分布が一様である場合(右図)を示す。
図1、図2a、および図2bは、本発明の第3の態様および第5の態様の試料解凍用および/または冷却用装置の実施形態を示す。装置10は、空隙16によって分離されている加熱用または冷却用内部槽14を囲む外部槽12を含む。外部槽12および加熱用または冷却用内部槽14は、断面が実質的に円筒形であり、それらを分離している空隙16を有する入れ子型の容器を形成する。加熱用または冷却用内部槽は、外部槽12に結合し、空隙16を密閉する槽結合縁22を含む。外部槽12は、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの柔軟性のないプラスチック材料で構成される。加熱用または冷却用内部槽14は、スチレン−ブタジエン共重合体などの弾性材料で構成される柔軟性膜形態の内部槽壁18を含む。内部槽壁18は、槽壁18に埋め込まれ、その周囲を波状または螺旋状に延びる4つの加熱用または冷却用帯20a〜20dの形態で、4つの加熱用または冷却用装置を含む。各加熱用または冷却用帯は、隣り合う加熱用または冷却用帯20a〜20dから間隔を空けている。加熱帯20a〜20dは、作動時に槽壁18に熱エネルギーを加える抵抗性加熱素子を含む。
弾性的内部槽壁18は、柔軟であり、空気真空ポンプ(図示せず)に接続された空隙16によって加えられる負圧または陽圧によって可動である。
以下、図1、図2a、および図2bを参照して、装置10の使用について説明する。図1に示すように、バイアル2の形態の試料容器を、内部加熱容器14に挿入する。バイアル2は、凍結細胞または凍結生体組織物質と、0.15wt%のNaCLを含有するグリセロールを含む凍結された凍結保存剤とからなる凍結試料物質8を保持するバイアル壁4を含む。試料物質8はバイアル2を部分的に満たし、バイアル壁4は、キャップ6で密閉されている。
内部加熱容器14にバイアル2を入れるために、バイアル2を槽壁18内に挿入可能となるように、槽壁18の直径がバイアル2の直径よりも実質的に小さい第1の静止位置から、槽壁18の直径がバイアル2の直径よりも実質的に大きい第2の開放位置へと、内部槽壁18を付勢する。第1の位置から第2の位置への移動は、内壁18を外側に向けて膨らませるために、空隙16を部分真空にすることで実現される。バイアル2が槽壁18に挿入されると、部分真空は解除され、槽壁18は第1の静止位置に戻り、図2aおよび図2bに示すように、バイアル2の形状と一致して、接触する。膜状の内壁18は、バイアル壁4の広い領域に密着して、その形状と一致する。図2aおよび図2bに示す実施形態において、試料8は、加熱帯20cおよび20dを含む内壁領域のみが、試料8と接触するバイアル壁4に接触するような大きさである。したがって、内壁18の加熱帯20aおよび20bは、試料8の高さよりも高く、試料8の高さよりも高いバイアル壁4の領域に接触する。
バイアル2が、内壁18中の正しい位置にある場合、試料8は、本発明の第1の態様、第2の態様、および第4の態様の方法の実施形態である以下の方法で解凍される。
最初に、試料8の温度を測定し、試料8の体積およびバイアル4の容積も測定し、各加熱素子20a〜20dを初期加熱プログラムにしたがって作動させる。初期加熱プログラムは、試料8の高さよりも高い加熱素子20aおよび20bを、37℃に設定する一方、加熱素子20cおよび20dを、最初は70℃に設定する。このように、バイアル壁4に接触し、ひいては試料8と接触する内壁領域18に存在する、加熱帯20cおよび20dによって、試料8の高さよりも高い領域と比べて、内部加熱容器14の内壁18の領域、バイアル2の壁4からの試料8へのより高い熱/エネルギー伝達が、確実に引き起こされる。
初期プログラムが作動した後、試料8を攪拌し、試料8のどの部位も長期にわたってバイアル壁4と接触しないようにバイアル2中の試料を確実に動かすために、装置10も攪拌される。
初期プログラムが進行し、試料8が解凍し始めると、試料8において温度および氷の割合が測定され、それに応じて加熱プログラムが調整される。
図4bは、図2aの点線の四角で仕切られた領域を拡大した、初期加熱プログラムの終了時点の等温線を示す。図4bから分かるように、試料と接触しているバイアル壁4の部位における、槽壁18およびバイアル壁4を通した試料8への示差的な出力エネルギーおよび熱の伝達により、試料8の高さより高い領域における、槽壁18およびバイアル壁4を通した熱および出力エネルギー熱の伝達と比較して、壁を通した熱およびエネルギーの流れによって温度勾配が生じ、バイアル内壁の温度がどちらの領域においても37℃に維持される。これは、熱伝導による速やかな解凍において可能な、最適な条件である。
図4aは、加熱帯20b、20c、および20dのそれぞれが、試料8と接触している領域および試料8よりも高い領域のどちらにおいても、バイアル壁4を隔てて、一定かつ均一な熱伝達を行う場合を示し、ここで、加熱帯20b、20c、および20dは、37℃に設定されている。加熱帯20b〜20dのそれぞれを37℃に設定することにより、試料8を急速に解凍している場合の、図4bに示す同じ時間段階における最適な内壁18の温度およびバイアル壁4の温度よりも低くなり、試料8と接触するバイアル2の断面を隔てた温度勾配により、バイアルの内壁温度がさらに低くなる(図2aに示す構成では、10℃)ことが分かる。
さらに、内壁18が単一の固定温度まで加熱される場合は、バイアル壁4は、試料8(ヒートシンクとして働く)よりも高い内壁18の温度に達する。試料が攪拌される場合(これは、通常、全ての凍結解凍プロセスにおいて必要とされる)、試料8は外部温度であるバイアル壁4の部位と接触する。この外部温度が37℃よりも高い場合、細胞材料に損傷を及ぼすことがある。
解凍が進行するにつれ、試料8に損傷を及ぼさないように、内部壁18の全体温度を最大で37℃まで低下させることが重要である。閉ループ制御下において、加熱プログラムは、以下の方法を1つ以上採用することによって、これを実現してもよい。
a)解凍前の容器中の氷の高さを推測または把握すること;
b)解凍プロセスにおいて、バイアル壁4の温度に応じて加熱帯20a〜20dに加えられる出力エネルギーをモニターすること;
c)通常は、試料8の全体温度が速やかに上昇した際に起こる、試料8中の氷画分の完全解凍(相転移エンタルピーを乗り越える)を確定すること。
ある実施形態において、試料8は、解凍プロセスにおける様々な時点で、液体の水性成分(または解凍された固体成分)中の凍結物質領域が離れるように解凍する。このような場合も、凍結物質と接触していないバイアル壁4の部位に加えられる以上の熱/エネルギーを用いて、凍結物質と隣接し接触しているバイアル壁4の部位を対象にした加熱を可能にすることが有利である。このような場合、加熱プログラムは、凍結物質領域の存在を、例えば、氷の割合を測定することによってモニターし、加熱帯20a〜20dのいずれかまたはその全てを選択的に作動させて、バイアル壁4が試料8の凍結物質と接触している領域において、内壁18およびバイアル壁4を隔てて加えられる熱エネルギーを増加または減少させることができる。
図1、図2a、および図2bに示す実施形態は、加熱素子として抵抗性の加熱帯20a〜20dを用いて、バイアル壁4と物理的に接触し、バイアル壁4に熱を伝達するが、他の加熱素子、例えば、加熱帯20a〜20dの代わりに赤外線加熱素子を用いたバイアル4の放射加熱(例えば、赤外線加熱)、または加熱帯20a〜20dの代わりに加熱流体用導管を用いたバイアル4の加熱などを用いてもよい。このような実施形態において、加熱(例えば、試料8の特定領域の加熱)の空間的制御は、放射熱源の遮蔽、開放、もしくは合焦/投影、および/または放射熱源のスペクトル制御を用いて、あるいは、加熱流体の実施形態の場合は、流体の異なる温度帯または内壁18の周囲の流れを遮蔽することで、実現され得る。
図1、図2a、および図2bには示されていないが、装置10は、試料8、バイアル壁4、および内壁18の温度をモニターする部品もいくつか含んでいる。これらの部品は、内壁18中に埋め込まれた熱センサーまたは温度センサーであってもよいし、内壁18に埋め込まれ、バイアル4の表面または試料8自体からの赤外線放射を検出するように構成されている赤外線センサーであってもよい。前記測定の空間分解能は、いずれも、内壁18中で物理的に分離されている複数のセンサーを用いて実現され、これらセンサーは、単一の部品として、加熱帯20a〜20dまたは同等の加熱素子と組み合わされてもよい。
内壁18の領域および試料8と隣接しているバイアル壁4の領域が、試料8の高さよりも高い内壁18およびバイアル壁4の領域と同じ温度、すなわち37℃に達すると、加熱帯20a〜20dは、その温度を維持するように設定されてもよい。あるいは、試料8がいったん完全に解凍すると、加熱帯20a〜20dを37℃に設定してもよい。
試料8がいったん完全に解凍すると、バイアル2は、必要に応じて装置10から取り出されてもよい。
図3は、本発明の第1の態様または第3の態様の方法のいずれか1つで用いられる、本発明の解凍装置の第2実施形態を示す。本装置は、図1、図2a、および図2bに示す実施形態の装置と同様のものであるが、攪拌手段122a、122bを含んでいる。図3に示す実施形態は、通常は断面が円形で、バイアル114の形態の試料容器を保持するように構成されている内部槽113を含む装置110を含んでいる。内部槽113は、図1、図2a、および図2bに示す実施形態と同様の方法で、内部槽113の壁112の周囲に延びる、加熱帯120a、120b、120c、および120dの形態の、空間的に離れた4つの加熱素子を含む。加熱帯120a、120b、120c、および120dは、図1、図2a、および図2bに示す実施形態について説明した通りである。バイアル114は、バイアル壁116および密閉キャップ118を含む。バイアルには、凍結物質119の試料を入れ、図3に示す実施形態においては、加熱帯120aおよび120bは、試料119の高さよりも高いところに位置し、加熱帯120cおよび120dは、試料119に隣接するバイアル壁116と接触する内壁112に位置している。上述したように、内部槽113は、槽112中に位置する攪拌機122aおよび122bの形態の攪拌手段を2つ含む。攪拌機122aは、内部槽113の底に位置し、攪拌機122bは、内壁112の側面の周囲に位置している。
以下、図3を参照して、装置110の使用について説明する。
試料119への熱出力の伝達を最適化するために、内壁112およびバイアル壁116に加えられる壁温度ならびに行われる攪拌が、氷の割合(試料119における凍結物質の非凍結物質に対する比)に応じて変更される方法で、試料119を解凍する。例えば、熱量測定に基づく推論、光透過率、または攪拌条件の変化の測定により、直接温度測定値の関数として、氷の割合を得ることができる。
解凍の開始時点において、バイアル114は、内部槽113に挿入され、攪拌機122aおよび122bを作動させることにより、試料119全体の攪拌が行われる。攪拌の振動数および振幅は、氷の割合、試料119の温度、槽113の容積、試料119の体積などの上記パラメータのいずれかに応じて、制御され得る。さらに、試料119の異なる領域の、空間的に異なる攪拌が、攪拌機122aまたは122bのいずれかを別々に作動させることにより、行われ得る。例えば、試料119の下方領域を攪拌する必要があるが、上方領域は攪拌する必要がない場合、槽113の底の攪拌機122aは下方領域を攪拌し続ける一方で、攪拌機122bを停止することができる。同様に、試料119の異なる領域における攪拌を細かく調整するために、攪拌機122aおよび122bを示差的に制御して、同時に、または異なる時点において、異なる振動数および/または振動で攪拌を行うことができる。
図3に示す実施形態において、最初の攪拌の前に、試料119および槽113の以下のパラメータ、すなわち、バイアル114の種類および熱伝導度、試料119の体積、試料119の初期温度、および試料119の組成を決定する。これらのパラメータがいったん決定されると、バイアル114の容積、試料の体積、試料119(最初は100%が凍結物質であろう)の氷の割合、およびバイアル114の熱伝導度に応じて、初期攪拌プログラムが計算される。解凍中、試料の体積および試料の氷の割合をモニターし、攪拌プログラムを試料の体積および試料の氷の割合の変化に応じて変更して、試料119およびその領域に対して、可変的な攪拌(空間的に可変的な攪拌、または変化する振動数および振動)を行う。
さらに、試料119の解凍は、加熱帯120a〜120dを用いた内壁112およびバイアル壁116を隔てた熱/エネルギーによって実現される。初期の加熱は、試料119を、ガラス転移温度(Tg)より高く、試料のいずれかの水性成分の融点よりも低い温度まで、約2分間加熱することによって引き起こされる。本実施形態において、生体物質とグリセロール/NaCL凍結保護剤とを含有する凍結試料119は、−100℃未満(液体窒素に保管されている場合は−196℃)であり得る低温保管温度から、氷画分の約20%が融解する約−30℃の温度まで加温される。これは、40℃に設定された加熱帯120a〜120dの全てを用いて、約40℃の温度で試料119を速やかに加熱することによって実現される。この加熱期間の終了時点において、凍結試料119の加熱を遅くし、水性成分の大部分がその相を固体から液体に変化させる約−2〜−3℃の温度に試料119が達するまで、約15分の第2の期間にわたり、加熱を維持する。試料119がいったん完全に融解すると、過熱させないことが重要となるので、加熱帯120a〜120dのスイッチを切り、攪拌を停止し、必要に応じて、バイアル114を装置110から取り出すことができる。しかしながら、本実施形態においては、凍結生体物質および水性成分のどちらもが完全に解凍する約4℃の温度に試料119が達するまで、第3の期間、加熱を維持する。この第3の期間は、約5〜10分間である。3つの解凍段階および解凍期間のそれぞれにおいて、試料119の攪拌は、前述の攪拌プログラムにしたがって維持される。
図1〜図4で説明される実施形態において、試料119は、0.15wt%の塩化ナトリウムを含有するグリセロールを含む凍結保護剤中の凍結細胞材料である。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはプロピレングリコールなどの他の凍結保護剤が用いられ得る。グリセロール/NaCLを用いる実施形態において、氷画分の約80%が、−12.5〜−2.5℃の温度帯で融解し、氷の残り20%は、−64℃(この凍結保護剤溶液のTg)〜12.5℃の温度帯で融解する。解凍時に最も損傷を与える温度帯は、−12.5〜−2.5℃で起こる氷画分の最後の80%の解凍に関連している。したがって、氷画分の最初の20%の融解は、細胞の生存能に好ましくない影響を及ぼすことなく、比較的遅い加熱速度で行うことができる。
装置110は、加熱帯120a〜120dの代わりにペルティエ素子を用いて、解凍時に試料を加熱することと、解凍後に試料を冷却して、試料119を取り出すことが望まれるまで約4℃の温度で維持することの両方を行うことにより、解凍後の試料温度を積極的に制御する機構を含むようにすることができる。
上記実施形態の説明は、単なる例示である。添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変更を行うことが可能である。

Claims (38)

  1. 試料の解凍方法であって、前記試料は容器に入っており、前記方法は、前記容器の外壁の少なくとも1つの領域を、細胞損傷が起こる温度以上の温度まで加熱することを含み、前記容器の内壁は、細胞損傷が起こる温度未満の温度である、方法。
  2. 試料の解凍方法であって、前記試料は容器に入っており、前記方法は、対応する内壁領域が前記試料と接触している前記容器の外壁領域が、対応する内壁領域が前記試料と接触していない外壁領域よりも高い温度まで加熱されるように、前記容器を加熱することを含む、方法。
  3. 前記対応する内壁領域が前記試料と接触している前記容器の外壁領域を、細胞損傷が起こる温度まで加熱し、前記対応する内壁領域が前記試料と接触していない前記容器の外壁領域は、細胞損傷が起こる温度未満の温度である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記試料と接触している前記内壁領域の温度と、前記試料と接触していない前記内壁領域の温度とをモニターするステップと、前記2つの領域の温度の変化に応じて、前記試料容器の対応する外壁領域の1つまたは両方に加えられる熱またはエネルギーを調整するステップとをさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
  5. さらなるステップが、前記試料の温度および/または前記試料中の氷の割合をモニターすることと、前記対応する内壁領域が試料物質と接触している外壁領域に加えられる熱またはエネルギーを調整することとを含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記容器の内壁は、細胞損傷が起こる温度未満の温度である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記細胞損傷が起こる温度は、37℃より高い温度であり、かつ/または前記細胞損傷が起こる温度未満の温度は、37℃以下の温度である、請求項1および請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記対応する内壁領域が前記試料と接触している外壁領域を、50℃以上、60℃以上、または70℃以上の温度まで加熱し、前記対応する内壁領域が前記試料と接触していない外壁領域を、20〜40℃の温度まで加熱する、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 試料の解凍方法であって、前記方法は、
    a)第1の期間にわたり、Tgを越えるが、前記試料の水の少なくとも70%が氷である温度まで前記試料を加熱するステップと、
    b)第2の期間にわたり、前記試料の融点以上の温度まで前記試料を加熱するステップと
    を含み、
    前記第1の期間は、前記第2の期間よりも長い、方法。
  10. 前記第1の期間は、前記第2の期間の2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、または6倍以上長い、請求項9に記載の方法。
  11. ステップb)は、前記試料を−5〜5℃、−5〜3℃、−5〜2℃、−5〜1℃、または−3〜1℃まで加熱することを含む、請求項9または10に記載の方法。
  12. 前記第2の期間は、15秒〜10分であり、かつ/または前記第1の期間は、5分〜30分である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記生物試料を0〜5℃の温度、例えば、約4℃の温度で維持するさらなるステップc)を含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記試料を、請求項15〜24のいずれか1項に記載の方法にしたがって攪拌する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 試料の解凍方法であって、前記試料は容器に入っており、前記方法は、
    a)i)前記試料の体積および前記容器の種類のいずれか、またはその両方、ii)前記試料中の氷の割合、および、場合によっては、iii)前記試料容器の熱伝導度、に応じた攪拌プログラムを計算するステップと、
    b)前記プログラムにしたがって前記試料を攪拌することにより、前記試料の少なくとも1つの領域を攪拌するステップと、
    c)前記試料の体積および/または前記試料中の氷の割合の変化に応じて、前記試料の少なくとも1つの領域に適用される前記攪拌プログラムを変更するステップと、
    を含む、方法。
  16. ステップb)およびステップc)は、少なくとも1回繰り返されるか、またはステップb)およびステップc)は、連続的に行われる、請求項15に記載の方法。
  17. 前記方法は、ステップb)を行っている間、またはステップb)に続いて行われる、試料の体積および/または試料の氷の割合をモニターするステップを含む、請求項15または16に記載の方法。
  18. 前記方法は、ステップa)の前に、前記容器の種類および/または前記試料物質の体積を求めるステップを含み、かつ、場合によっては、前記試料容器の熱伝導度を求めることを含む、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記試料の攪拌が、前記試料の単一領域の攪拌、前記試料の複数領域の攪拌、または前記試料全体の攪拌を含む、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. ステップc)において、前記試料の少なくとも1つの領域で行われる攪拌の変更は、前記攪拌の振動数、振幅、または振動数および振幅の両方を変更することを含む、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 前記試料は加熱される、請求項15〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 前記試料の体積および前記氷の割合に応じた加熱・攪拌プログラムを計算し、前記試料を、前記加熱プログラムにしたがって加熱することにより、前記試料の少なくとも1つの領域を加熱し、前記試料の体積および/または前記試料中の氷の割合の変化に応じて、前記試料の少なくとも1つの領域に対して前記加熱プログラムを変更する、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。
  23. 容器に入っている試料の攪拌中の剪断を減少させる方法であって、前記方法は、
    a)i)前記容器中の試料の体積および前記容器の種類のいずれか、またはその両方、ii)前記試料中の氷の割合、およびiii)場合によっては、前記容器の熱伝導度、に応じた攪拌プログラムを計算することと、
    b)前記プログラムにしたがって前記試料を攪拌することにより、前記試料の少なくとも1つの領域を攪拌することと、
    c)前記試料の体積および/または前記試料の氷の割合の変化に応じて、前記試料の少なくとも1つの領域に適用される前記攪拌プログラムを変更することと
    を含む、方法。
  24. 前記試料は、バイオ医薬品、細胞材料、生体組織、生体器官もしくはその一部、核酸、タンパク質、ポリペプチド、および/またはアミノ酸を含む生物試料である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
  25. 試料解凍装置であって、使用中の試料容器を保持するように適合された加熱槽と、対応する内壁領域が前記試料と接触している前記容器の外壁領域の少なくとも一部を、対応する内壁領域が前記試料と接触していない外壁領域の少なくとも一部よりも高い温度まで加熱するように、かつ/または前記試料物質と接触している前記容器壁のみが加熱されるように、保持されている前記使用中の試料容器の異なる領域を示差的に加熱する手段を含む加熱装置とを含む装置。
  26. 前記加熱槽は、前記加熱装置が載置されている、または前記加熱装置が接続されている、槽壁を含む、請求項25に記載の装置。
  27. 前記加熱装置は、前記槽壁上で空間的に離れた複数の加熱素子を含む、請求項25または26に記載の装置。
  28. 前記加熱装置は、前記槽壁に埋め込まれた、または前記槽壁に載置された、1つ以上の温度センサーを含み、かつ/または前記槽壁および/または保持された容器に入っている前記試料の異なる部位からの赤外線放射の変化を検出するように構成された赤外線放射センサーを含む、請求項25〜27のいずれか1項に記載の装置。
  29. 前記装置は、保持された試料容器および/または試料容器中の試料物質の、時間的および/または空間的に示差的な攪拌を、実行可能に提供する攪拌装置も含む、請求項25〜28のいずれか1項に記載の装置。
  30. 前記攪拌装置は、前記試料容器、試料、またはこれらの部位に加えられる振動数および/または振幅を、前記試料の氷の割合、前記試料物質またはその部位の温度、保持された容器またはその領域の温度、あるいはこれらの組み合わせの変化に応じて変更するように構成されている、請求項25〜29のいずれか1項に記載の装置。
  31. 試料解凍用または冷却用装置であって、前記装置は、弾性的な槽壁を有する槽を含み、使用中に試料容器を保持するように構成され、前記弾性的な槽壁に少なくとも1つの加熱素子および/または冷却素子が設けられている、装置であり、前記弾性的な槽壁は、使用中、保持された容器に付勢される第1の構成と、保持された容器から離れるように付勢される第2の構成との間を移動可能である、装置。
  32. 前記弾性的な槽壁は、最初は、前記第1の構成または前記第2の構成であり、外的刺激または外的作動装置によって、構成間を移動する、請求項31に記載の装置。
  33. 前記弾性的な槽壁は、最初は、前記第1の構成であり、容器の前記槽内への挿入を可能にするために、前記第2の構成へと移動させ、その後、前記壁は、前記第1の構成へと戻る、請求項31または32に記載の装置。
  34. 前記弾性的な槽壁は、最初は、前記第2の構成である、請求項31または32に記載の装置。
  35. 前記槽壁の周囲で空間的に離れている、複数の加熱素子および/または冷却素子を含む、請求項31〜34のいずれか1項に記載の装置。
  36. 前記槽は、外壁と、弾性的な内部槽壁の形態の弾性的な槽壁とを含む、請求項31〜35のいずれか1項に記載の装置。
  37. 前記外壁および弾性的な槽壁は、その間に間隙または空隙が形成されるように、相互に離れている、請求項31〜36のいずれか1項に記載の装置。
  38. 前記弾性的な槽壁は、エラストマー材料から形成されている、請求項31〜37のいずれか1項に記載の装置。
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