JP2017141859A - 逆入力防止クラッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】係合子としてころを用いたロック式の逆入力防止クラッチにおいて、ころを押圧している弾性部材の固定部材との接触を防止する。【解決手段】出力側部材の一部である内輪3のカム面3bと固定部材の一部である外輪5の内周円筒面との間に形成される楔形空間12に、一対のころ9に挟まれる状態で組み込まれて、両端部で各ころ9を楔形空間12の狭小部へ押し込む弾性部材として板ばね10を用い、この板ばね10の両端部の先端側部分を伸縮方向の外側へ折り曲げて、ころ9のカム面3bに臨む側の半円筒面と係合する内側係合部10aを形成し、板ばね10のクラッチ径方向の外側への移動を規制することにより、入力側から出力側への回転伝達時に板ばね10に遠心力が作用しても、板ばね10が外輪5の内周円筒面に接触しないようにしたのである。【選択図】図4
Description
本発明は、入力トルクが加えられたときは入力側部材の回転を出力側部材に伝達し、逆入力トルクに対しては入力側部材が回転しないようにする逆入力防止クラッチに関する。
逆入力防止クラッチは、入力側部材に入力トルクが加えられたときは、その回転を出力側部材に伝達し、出力側部材に逆入力トルクが加えられたときは、入力側部材が回転しないようにするものである。この逆入力防止クラッチには、逆入力トルクに対して出力側部材をロックさせる方式(以下、この方式を「ロック式」と称する。)のものがある(例えば、特許文献1参照。)。
上記特許文献1に記載されたロック式の逆入力防止クラッチは、同一軸心のまわりに回転する入力側部材と出力側部材との間に、入力側部材の回転を僅かな角度遅れをもって出力側部材に伝達するトルク伝達手段を設け、内周側に円筒面を有する固定部材を出力側部材の径方向外側に配し、出力側部材の外周面に複数のカム面を設けて、固定部材の内周円筒面と出力側部材の各カム面との間に周方向で次第に狭小となる楔形空間を形成し、これらの各楔形空間に係合子となる一対のころとそのころを楔形空間の狭小部へ押し込む弾性部材(コイルばねまたは板ばね)を組み込むとともに、各楔形空間の周方向両側(ころを挟んで弾性部材と周方向で対向する位置)に入力側部材の柱部を挿入したものである。
この逆入力防止クラッチでは、各ころが弾性部材の弾力で楔形空間の狭小部に押し込まれているので、出力側部材に逆入力トルクが加えられても、回転方向後側のころが固定部材および出力側部材に係合することにより出力側部材がロックされ、入力側部材へ回転伝達しない。
一方、入力側部材に入力トルクが加えられたときは、入力側部材の柱部が回転方向後側のころを弾性部材の弾力に抗して楔形空間の広大部へ押し出すことにより、そのころと固定部材および出力側部材との係合が解除されて、出力側部材がロック状態から解放された後、トルク伝達手段によって入力側部材から出力側部材に回転が伝達されるようになる(このとき、回転方向後側のころは楔形空間の広大部に相対移動するので、固定部材および出力側部材と係合することはない)。
上記のように係合子としてころを用いたロック式の逆入力防止クラッチでは、入力側部材から出力側部材に回転伝達を行う際に、出力側部材の回転にともなって、出力側部材のカム面の径方向外側に配されているころと弾性部材も回転する。このため、出力側部材に伝達される回転が高速になると、出力側部材とともに回転するころや弾性部材に作用する遠心力が大きくなり、弾性部材がクラッチの径方向外側に移動して固定部材の内周円筒面に接触してしまうことがある。
そして、弾性部材が固定部材の内周円筒面に接触したまま回転し続けると、弾性部材の固定部材との接触部が摩耗し、弾性部材の折損等の不具合が生じやすくなる。また、弾性部材が折損すると、ころが楔形空間の狭小部へ押し込まれなくなるので、逆入力トルクを加えられたときに、出力側部材が固定部材とロックされず、出力側部材から入力側部材へ回転が伝達されてしまうという致命的な欠陥に至ることが懸念される。
そこで、本発明は、係合子としてころを用いたロック式の逆入力防止クラッチにおいて、ころを押圧している弾性部材の固定部材との接触を防止することを課題とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、同一軸心のまわりに回転する状態で配されている入力側部材および出力側部材と、前記出力側部材の径方向外側に配されている固定部材と、前記出力側部材に加えられる逆入力トルクに対して出力側部材と固定部材とをロックするロック手段と、前記入力側部材に加えられる入力トルクに対して前記ロック手段によるロック状態を解除するロック解除手段と、前記ロック手段によるロック状態が解除された状態のときに、前記入力側部材に加えられる入力トルクを前記出力側部材に伝達するトルク伝達手段とを備え、前記ロック手段は、前記固定部材の内周に円筒面が設けられ、前記出力側部材の外周に複数のカム面が設けられて、前記固定部材の内周円筒面と出力側部材の各カム面との間に周方向両側で次第に狭小となる楔形空間が形成されており、これらの各楔形空間に一対のころとその一対のころに挟まれて各ころを楔形空間の狭小部へ押し込む弾性部材とが組み込まれているものである逆入力防止クラッチにおいて、前記弾性部材が、その弾性部材を挟む前記一対のころの前記カム面に臨む側の半円筒面と係合する内側係合部を有し、径方向外側への移動を規制されている構成を採用した。
上記の構成によれば、入力トルクに対して入力側部材から出力側部材に回転伝達を行う際に、出力側部材の回転にともなって弾性部材に作用する遠心力が大きくなっても、弾性部材がその内側係合部でころと係合して、クラッチの径方向外側への移動を規制されるので、弾性部材の固定部材との接触およびそれによる弾性部材の折損等の不具合を防止することができる。
さらに、前記弾性部材が、その弾性部材を挟む前記一対のころの前記カム面に臨む側と反対側の半円筒面と係合する外側係合部を有し、径方向内側への移動を規制されている構成も採用すれば、弾性部材の出力側部材との接触も防止できるので、出力側部材が回転していないときに、弾性部材がロック状態とロック解除状態との間で弾性変形しても、出力側部材に対して摺動して損傷することがなくなる。
具体的には、前記弾性部材は、圧縮状態で前記一対のころの間に組み込まれて両端部で各ころを押圧する板ばねである場合、その両端部に前記内側係合部および外側係合部が形成されているものとすることができる。
また、前記弾性部材が、圧縮状態で前記一対のころの間に組み込まれて両端部で各ころを押圧するコイルばねである場合も、その両端部に前記内側係合部および外側係合部が形成されているものとすることができる。
本発明の逆入力防止クラッチは、上述したように、入力側部材から出力側部材に回転伝達を行う際に、弾性部材がその内側係合部でころと係合してクラッチの径方向外側への移動を規制され、固定部材と接触しないようにしたものであるから、弾性部材の折損等の不具合が生じにくく、長期間安定して使用することができる。
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この逆入力防止クラッチは、図1および図2に示すように、入力軸(入力側部材)1と、出力軸2と内輪3が一体形成された出力側部材4と、内輪3の径方向外側に配される外輪5が一体形成された二段円筒状のハウジング(固定部材)6と、ハウジング6の一端に取り付けられる押え蓋7と、内輪3と外輪5との間に挿入される複数の柱部8aを有する保持器8と、内輪3と外輪5との間に組み込まれる係合子としてのころ9および板ばね(弾性部材)10と、ハウジング6他端の小径部内周に嵌め込まれて出力軸2を回転自在に支持する軸受11とで構成されている。
前記ハウジング6は、一端のフランジの外周縁に複数の切欠き6aが形成されており、これらの切欠き6aに押え蓋7の外周縁に形成された爪7aを嵌め込んで折り曲げることにより、押え蓋7と一体化されている。そして、押え蓋7の外周から張り出す3つの舌状の張出部には取付孔7bが設けられており、これらの取付孔7bで押え蓋7とハウジング6が一体に図示省略した外部部材に固定されている。
前記入力軸1は、外周に二面幅(軸心と平行でかつ互いに平行な2つの係合面)が形成された係合部1aと、係合部1aの端面から突出する小径円筒部1bとを有し、その係合部1aの先端側部分が、前記内輪3の中央に設けられた係合穴3aに挿入され、小径円筒部1bが内輪3の係合穴3aの底から出力軸2の円形穴2aに嵌め込まれて、出力側部材4(出力軸2および内輪3)と同一軸心のまわりに回転するようになっている。ここで、内輪3の係合穴3aは、入力軸1を挿入したときに僅かな回転方向の隙間が生じるように形成され、これにより、入力軸1に加えられる入力トルクを僅かな角度遅れをもって出力側部材4に伝達するトルク伝達手段が構成されている。
また、入力軸1の係合部1aの軸方向中央側部分には、保持器8の円筒部8bが隙間なく嵌め込まれて、入力軸1と保持器8が一体回転するようになっている。そして、入力軸1はモータ等の駆動源(図示省略)から入力トルクを加えられ、出力軸2は外周に二面幅が形成された係合部2bに取り付けられる出力歯車等の回転伝達部材(図示省略)にトルクを出力するようになっている。
前記外輪5の内周は円筒面となっており、内輪3の外周にはカム面3bが周方向に複数設けられ、外輪5の内周円筒面と内輪3の各カム面3bとの間に周方向両側で次第に狭小となる楔形空間12が形成されている。そして、これらの各楔形空間12には前記ころ9が一対ずつ組み込まれ、前記板ばね10がその一対のころ9に挟まれるように組み込まれて各ころ9を楔形空間12の狭小部へ押し込んでいる。これにより、出力側部材4に加えられる逆入力トルクに対して出力側部材4と固定部材の一部である外輪5とをロックするロック手段が構成されている。
また、前記各楔形空間12の周方向両側(ころ9を挟んで板ばね10と周方向で対向する位置)には、前記保持器8の柱部8aが挿入されている。これにより、入力軸1に入力トルクが加えられたときに、保持器8が入力軸1と一体に回転して、保持器8の柱部8aが一対のころ9のうちの回転方向後側のころ9を楔形空間12の広大部へ押し出して、前記ロック手段によるロック状態を解除するようになっている。すなわち、この保持器8が入力軸1に加えられる入力トルクに対してロック状態を解除するロック解除手段となっている。
前記板ばね10は、図2および図3に示すように、金属片を複数回折り曲げて形成したもので、圧縮状態で前記一対のころ9の間に組み込まれて両端部で各ころ9を押圧している。そして、その両端部は、先端側部分が伸縮方向の外側へ折り曲げられて、ころ9のカム面3bに臨む側の半円筒面と係合する内側係合部10aとなっており、中央側部分が伸縮方向の外側へ張り出すように湾曲して、ころ9のカム面3bに臨む側と反対側(外輪5の内周円筒面に臨む側)の半円筒面と係合する外側係合部10bとなっている。これにより、板ばね10はクラッチ径方向の外側および内側への移動を規制されている。
この逆入力防止クラッチは、上記の構成であり、各ころ9が板ばね10の弾力で楔形空間12の狭小部に押し込まれているので、出力軸2に逆入力トルクが加えられても、回転方向後側のころ9が固定部材の一部である外輪5および出力側部材4の一部である内輪3に係合することにより出力側部材4がロックされ、入力軸1へ回転伝達しない。
一方、入力軸1に入力トルクが加えられたときには、まず、図4(a)に示すように、入力軸1と一体に回転する保持器8の柱部8aが、回転方向後側のころ9を板ばね10の弾力に抗して楔形空間12の広大部へ押し出すことにより、そのころ9と外輪5および内輪3との係合が解除されて、出力側部材4がロック状態から解放される。そして、図4(b)に示すように、入力軸1がさらに回転して、その係合部1aと内輪3の係合穴3aとが係合すると、入力軸1の回転が内輪3を介して出力軸2に伝達されるようになる(このとき、回転方向前側のころ9は楔形空間12の広大部に相対移動するので、外輪5および内輪3と係合することはない)。
上記のように入力側から出力側へ回転が伝達されているときには、内輪3の回転にともなってころ9や板ばね10も回転し、ころ9や板ばね10に遠心力が作用するが、板ばね10はその内側係合部10aでころ9と係合してクラッチ径方向の外側への移動を規制されるので、出力側部材4に伝達される回転が高速になって板ばね10に作用する遠心力が大きくなっても、板ばね10が外輪5の内周円筒面に接触して折損等の不具合を生じることがない。また、板ばね10が外輪5に接触しないので、回転トルクの増大を防ぐこともできる。
さらに、入力軸1への入力トルクの供給が開始された直後や停止された直後には、出力側部材4が回転していない状態で板ばね10がロック状態とロック解除状態との間で伸縮するが、板ばね10は外側係合部10bでころ9と係合してクラッチ径方向の内側への移動を規制されているので、内輪3に対して摺動して損傷するおそれもない。
ここで、上述した図1乃至図4の例では、板ばね10をその両端部の先端が内輪3のカム面3bに向くように組み込んでいるが、これと逆に、図5に示すように、板ばね10をその両端部の先端が外輪5の内周円筒面に向くように組み込んでもよい。その場合は、板ばね10の両端部の先端側部分が外側係合部10b’、中央側部分が内側係合部10a’となって、図1乃至図4の例と同様の効果を得ることができる。
また、図6は図1乃至図4の例の板ばね10に代わる弾性部材としてコイルばね13を用いた変形例を示す。この変形例では、コイルばね13の両端部を伸縮方向外側に向かって凹状に折り曲げることにより、板ばね10のものと同様の作用をする内側係合部13aおよび外側係合部13bを形成して、板ばね10を用いた場合と同様の効果が得られるようにしている。
なお、上述した実施形態では、ころ9を楔形空間12の狭小部へ押し込む弾性部材として板ばね10またはコイルばね13を用いたが、弾性部材の種類および形状は実施形態のものに限らず、ころのクラッチ径方向の移動を規制できるようになっていればよい。
また、実施形態では、両端部に内側係合部と外側係合部の両方を有する弾性部材を用いたが、両端部に内側係合部のみを有する弾性部材を用いることもできる。
1 入力軸(入力側部材)
1a 係合部
2 出力軸
3 内輪
3a 係合穴
3b カム面
4 出力側部材
5 外輪
6 ハウジング(固定部材)
7 押え蓋
8 保持器
8a 柱部
9 ころ
10 板ばね(弾性部材)
10a、10a’ 内側係合部
10b、10b’ 外側係合部
12 楔形空間
13 コイルばね(弾性部材)
13a 内側係合部
13b 外側係合部
1a 係合部
2 出力軸
3 内輪
3a 係合穴
3b カム面
4 出力側部材
5 外輪
6 ハウジング(固定部材)
7 押え蓋
8 保持器
8a 柱部
9 ころ
10 板ばね(弾性部材)
10a、10a’ 内側係合部
10b、10b’ 外側係合部
12 楔形空間
13 コイルばね(弾性部材)
13a 内側係合部
13b 外側係合部
Claims (4)
- 同一軸心のまわりに回転する状態で配されている入力側部材および出力側部材と、前記出力側部材の径方向外側に配されている固定部材と、前記出力側部材に加えられる逆入力トルクに対して出力側部材と固定部材とをロックするロック手段と、前記入力側部材に加えられる入力トルクに対して前記ロック手段によるロック状態を解除するロック解除手段と、前記ロック手段によるロック状態が解除された状態のときに、前記入力側部材に加えられる入力トルクを前記出力側部材に伝達するトルク伝達手段とを備え、
前記ロック手段は、前記固定部材の内周に円筒面が設けられ、前記出力側部材の外周に複数のカム面が設けられて、前記固定部材の内周円筒面と出力側部材の各カム面との間に周方向両側で次第に狭小となる楔形空間が形成されており、これらの各楔形空間に一対のころとその一対のころに挟まれて各ころを楔形空間の狭小部へ押し込む弾性部材とが組み込まれているものである逆入力防止クラッチにおいて、
前記弾性部材が、その弾性部材を挟む前記一対のころの前記カム面に臨む側の半円筒面と係合する内側係合部を有し、径方向外側への移動を規制されていることを特徴とする逆入力防止クラッチ。 - 前記弾性部材が、その弾性部材を挟む前記一対のころの前記カム面に臨む側と反対側の半円筒面と係合する外側係合部を有し、径方向内側への移動を規制されていることを特徴とする請求項1に記載の逆入力防止クラッチ。
- 前記弾性部材が、圧縮状態で前記一対のころの間に組み込まれて両端部で各ころを押圧する板ばねであり、その両端部に前記内側係合部および外側係合部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の逆入力防止クラッチ。
- 前記弾性部材が、圧縮状態で前記一対のころの間に組み込まれて両端部で各ころを押圧するコイルばねであり、その両端部に前記内側係合部および外側係合部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の逆入力防止クラッチ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016021978A JP2017141859A (ja) | 2016-02-08 | 2016-02-08 | 逆入力防止クラッチ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2016021978A JP2017141859A (ja) | 2016-02-08 | 2016-02-08 | 逆入力防止クラッチ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2017141859A true JP2017141859A (ja) | 2017-08-17 |
Family
ID=59628413
Family Applications (1)
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JP2016021978A Pending JP2017141859A (ja) | 2016-02-08 | 2016-02-08 | 逆入力防止クラッチ |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2017141859A (ja) |
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2016
- 2016-02-08 JP JP2016021978A patent/JP2017141859A/ja active Pending
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