以下、本発明に係る対象物の移動装置の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。この実施形態においては、移動対象物が生体由来の細胞、特に細胞凝集塊である場合について説明する。なお、移動対象物は細胞凝集塊に限られるものではなく、小型の電子部品や機械部品、有機又は無機の破砕片や粒子、ペレット等であっても良い。
図1は、本発明の実施形態に係る細胞の移動装置1の外観を示す斜視図である。移動装置1は、装置本体10と、この装置本体10の各部の動作を制御するパーソナルコンピューターや制御ボード等からなる制御部15とを含む。装置本体10は、箱形のアウターカバー、すなわちフロントカバー101、サイドカバー102、トップカバー103及び図面には現れないリアカバーで覆われている。フロントカバー101の上部には開口部104が設けられ、この開口部104を通して、装置本体10の内部が露呈している。制御部15は、装置本体10に対して通信可能に接続されている。
図2は、移動装置1(装置本体10)の、前記アウターカバーを取り外した状態の斜視図、図3は、移動装置1の上面視の平面図である。移動装置1は、支持フレーム11、支持フレーム11によって支持される基台12、基台12に組み付けられる細胞移動ライン20、基台12の上方に配置されるヘッドユニット30及び照明ユニット40(照明部)、及び、基台12の下方に配置される撮像ユニット50(チップ撮像装置;対象物観察装置)を含む。
支持フレーム11は、基礎フレーム111と、一対のサイドフレーム112とを含む。基礎フレーム111は、X方向に長い直方体形状のフレーム組立体であり、矩形の下層フレーム枠111Aと、その上の上層フレーム枠111Bとを含む。上層フレーム枠111Bの上面には、撮像ユニット50をX方向に移動させるためのガイドレール113が備えられている。下層フレーム枠111Aの下面の四隅には、キャスターが取り付けられている。サイドフレーム112は、基礎フレーム111のX方向両端から、それぞれ上方向(Z方向)に突出しているフレーム枠である。2つのサイドフレーム112の上端縁で、基台12のX方向の両端が各々支持されている。
基台12は、所定の剛性を有し、透光性の材料で形成され、上面視において基礎フレーム111と略同じサイズの有する長方形の平板である。本実施形態では、基台12はガラスプレートである。基台12をガラスプレートのような透光性材料によって形成することで、基台12の下方に配置された撮像ユニット50にて、基台12の上面に配置された細胞移動ライン20の各部を、当該基台12を通して撮像することができる利点がある。なお、前記撮像に必要な部分だけをガラス窓とした板金プレートを、基台12として用いても良い。
基台12の上には、フレーム架台13が立設されている。フレーム架台13は、X方向に延びる平板である上フレーム131と、同じくX方向に延びる平板であって上フレーム131の下方に間隔を置いて配置された中フレーム132とを備える。上フレーム131の上面には、ヘッドユニット30をX方向(所定の移動経路)に沿って移動させるための上ガイドレール133が組み付けられている。また、中フレーム132の上面には、照明ユニット40をX方向に沿って移動させるための中ガイドレール134が組み付けられている。
細胞移動ライン20は、細胞含有液から所望の細胞凝集塊を抽出し、これを所定の容器へ移動させる一連の細胞移動工程の実施に必要なエレメントが、X方向に配列されてなる。細胞移動ライン20は、細胞含有液を貯留する対象物ストック部21(第3容器部)、分注チップストック部22、細胞含有液が分注され細胞凝集塊を選別するための細胞選別部23(第1容器部)、チップストック部24、チップ撮像部25、選別された細胞凝集塊を受け入れる細胞移載部26(第2容器部)、ブラックカバー載置部27及びチップ廃棄部28を備えている。これら各部の詳細は後述する。
ヘッドユニット30は、ユニット本体31、ヘッド部32、Xスライダ33及びYスライダ34を含む。図7は、ヘッド部32の斜視図である。ヘッド部32は、上下動が可能な複数のロッド部35、第1ノズル36及び第2ノズル37を備えている。ロッド部35は、上下動が可能なロッド351(図8参照)を含み、ヘッド部32のハウジングの下端面に突設されている。本実施形態では、8本のロッド部35がX方向に一列に配列されている例を示している。ロッド部35の本数は任意であり、またX−Y方向にマトリクス状に配列されていても良い。第1ノズル36及び第2ノズル37は、上下動が可能にユニット本体31に組み付けられている。第1ノズル36及び第2ノズル37の下端には開口部が備えられていると共に、前記開口部において吸引力及び吐出力を発生するためのピストン機構(後述)が第1ノズル36及び第2ノズル37の内部に備えられている。ユニット本体31の内部には、ロッド部35、第1ノズル36及び第2ノズル37を上下動させるための機構と、ロッド351及び前記ピストン機構を動作させるための機構を含むヘッド駆動装置162(図29参照)が内蔵されている。
Xスライダ33は、X方向に延びる上ガイドレール133に対して組み付けられている。上ガイドレール133には、ヘッドユニット駆動装置161(第1駆動機構)が付設されている。ヘッドユニット駆動装置161の動作によって、Xスライダ33は上ガイドレール133上をX方向に移動する。Yスライダ34は、Y方向の一端(前端)においてユニット本体31を支持している。Yスライダ34は、Xスライダ33の上面に配置されたYレール(図2には現れていない)に対して組み付けられている。前記Yレールに付設された図略の駆動装置が動作することで、Yスライダ34及びユニット本体31はY方向に移動する。つまり、ヘッド部32は、ユニット本体31が上ガイドレール133及び前記Yレールに沿って移動することで、X方向及びY方向に移動自在である。従って、ヘッド部32は、基台12の上方において、細胞移動ライン20上を所定の移動経路に沿って移動することができる。
照明ユニット40は、専ら細胞選別部23及び細胞移載部26を上方から照明するために、基台12の上方に移動可能に配置されている。前記照明は、細胞選別部23又は細胞移載部26に保持されている細胞凝集塊を撮像ユニット50にて撮像する際に、透過照明として使用される。照明ユニット40は、照明光を発する照明器41(光源)、Xスライダ42及びホルダー43を含む。照明器41は、Z方向に延びる円筒状の筐体と、該筐体内に配置された光源としてのハロゲンランプと、コレクターレンズ、リングスリット、開口絞り、コンデンサレンズなどの光学部品とを含む。ハロゲンランプに代えて、タングステンランプ、水銀ランプ、キセノンランプ、発光ダイオード(LED)等を使用することが可能である。
Xスライダ42は、X方向に延びる中ガイドレール134に対して組み付けられている。中ガイドレール134には、照明ユニット駆動装置163(第2駆動機構)が付設されている。照明ユニット駆動装置163の動作によって、Xスライダ42は中ガイドレール134上をX方向に移動する。ホルダー43は、照明器41を保持すると共に、図略の駆動装置によってXスライダ42に対してY方向に短距離だけ移動可能に組み付けられている。従って、照明器41は、基台12の上方において、X方向及びY方向に移動可能である。本実施形態では、照明器41は、X方向において細胞選別部23と細胞移載部26との間を移動することが可能であるが、細胞移動ライン20のX方向全長に亘って移動できる構成としても良い。
撮像ユニット50は、細胞選別部23及び細胞移載部26に保持されている細胞凝集塊を基台12の下方から撮像するために、基台12の下方に移動可能に配置されている。さらに、本実施形態では、撮像ユニット50は、チップ撮像部25においてシリンダチップ70(図4)のロッド部35への装着状態を観察するためにも用いられる。撮像ユニット50は、カメラ51(撮像部)、落射照明器52、Xスライダ53及びホルダー54を含む。
カメラ51は、CCDイメージセンサと、該CCDイメージセンサの受光面に光像を結像させる光学系とを含む。落射照明器52は、カメラ51の撮像対象物が光の透過体でない場合に用いられる光源であり、カメラ51の側方に配置されている。本実施形態では、前記細胞凝集塊を撮像する場合、照明ユニット40の照明器41が点灯された状態で、カメラ51は撮像動作を行う(透過照明)。一方、チップ撮像部25において前記チップを撮像する場合は、落射照明器52が点灯された状態で、カメラ51は撮像動作を行う(側射照明)。前記チップの撮像用に、専用の照明装置を撮像ユニット50に具備させても良い。
Xスライダ53は、X方向に延びる支持フレーム11のガイドレール113に対して組み付けられている。ガイドレール113には、撮像ユニット駆動装置164が付設されている。撮像ユニット駆動装置164(第3駆動機構)の動作によって、Xスライダ53はガイドレール113上をX方向に移動する。ホルダー54は、カメラ51及び落射照明器52を保持すると共に、図略の駆動装置によってXスライダ53に対してY方向に短距離だけ移動可能に組み付けられている。従って、カメラ51は、基台12の下方において、X方向及びY方向に移動可能である。本実施形態では、カメラ51は、X方向においてチップ撮像部25と細胞移載部26との間を移動可能である。しかし、チップの撮像を行わない他の実施形態では、カメラ51は、少なくとも細胞選別部23と細胞移載部26との間を移動可能であれば良い。
図4は、基台12の図示を省き、細胞移動ライン20の構成要素を抜き出して示す斜視図である。図4には、上述のヘッドユニット30、照明ユニット40及び撮像ユニット50の配置位置も模式的に付記している。細胞移動ライン20は、X方向の上流側(図4の左端側)から順に、分注チップストック部22、対象物ストック部21、チップストック部24、チップ撮像部25、細胞選別部23、ブラックカバー載置部27、細胞移載部26及びチップ廃棄部28が一列に配列されてなる。これらの各部は、位置決め部材12Sによって、基台12上の位置が定められている。
対象物ストック部21は、分注元となる、多量の細胞凝集塊(移動対象物;生体由来の細胞)が分散された細胞培養液(液体)を貯留する部位である。対象物ストック部21は、基台12上の所定位置に配置されたボックス211と、このボックス211で保持されたチューブ212(第3容器部)と、ボックス211上に載置された蓋部材213とを備える。ボックス211は、チューブ212の上端が突出する状態で、チューブ212を保持している。ボックス211は、基台12に設けられた矩形の開口にその上端縁が嵌め込まれる態様で、基台に対して組み付けられている。チューブ212は、上面が開口した円筒状容器であり、細胞凝集塊や夾雑物を含む細胞培養液を貯留する。蓋部材213は、チューブ212の開口を塞ぐための部材である。分注作業が実行されない期間、塵埃等がチューブ212内に進入しないよう、蓋部材213はチューブ212の開口部上に被せられる。
蓋部材213の移動は、第2ノズル37に装着される吸盤ヘッド38(図7)による蓋部材213の吸着及び吸着解除動作と、ヘッド部32の移動動作とによって実現される。具体的には、閉蓋時には、図4に示すように、チューブ212の左隣に配置されている蓋部材213の上にヘッド部32が移動されると共に、吸盤ヘッド38が下降され蓋部材213が吸着される。次いで、吸盤ヘッド38が上昇すると共に、ヘッド部32(吸盤ヘッド38)がチューブ212の上に移動される。そして、吸盤ヘッド38が下降されると共に蓋部材213の吸着が解除される。開蓋時には、上記と逆の動作が行われる。この動作は、以下に説明する、細胞移動ライン20の各部の蓋部材の移動動作に適用される。
分注チップストック部22は、複数個の分注チップ80を保管する部位である。図7及び図11(C)を参照して、分注チップ80は、細長いチューブ状の部材であり、第1ノズル36に嵌め込まれる上端部81と、細胞培養液を吸引及び吐出する開口を端縁に備えた下端部82と、両者の間に延在する中間部83とを含む。中間部83は、上端部81側から下端部82側に向けて、外径が徐々に縮小するテーパ形状を備えている。分注チップ80は、第1ノズル36に対して装着及び取り外しが可能である。既述の通り、第1ノズル36は吸引力及び吐出力を発生可能なノズルであり、分注チップ80は、前記吸引力が与えられることで細胞培養液を吸引する一方、前記吐出力を与えられることで吸引した細胞培養液を吐出する。
分注チップストック部22は、保持ボックス221と、ボックス蓋部材223とを備えている。保持ボックス221は、立設状態でマトリクス状に整列された分注チップ80を保持する。保持ボックス221の内部には、分注チップ80を整列保持するためのホルダー部材222が配置されている。分注チップ80は、その上端部81が保持ボックス221の上端面から上方に突出した状態で、保持ボックス221に保持されている。つまり、Z方向に移動する第1ノズル36に対して装着が容易に行い得る状態で、分注チップ80は、保持ボックス221に保持されている。ボックス蓋部材223は、保持ボックス221の上端面の上に被せられ、分注チップ80を覆い隠すための蓋部材である。
細胞選別部23は、細胞移動ライン20においてX方向のセンターポジションに配置され、各種サイズの細胞凝集塊や夾雑物を含む細胞培養液から、所望のサイズの細胞凝集塊を選別するための部位である。細胞選別部23は、ディッシュ60(第1容器部)、保持テーブル231及びテーブル蓋部材232を含む。ディッシュ60は、分注チップ80によって細胞凝集塊を含む細胞培養液が分注され、該細胞培養液を貯留することができる上面開口の容器である。保持テーブル231は、基台12の上に載置され、ディッシュ60を位置決めして保持する。テーブル蓋部材232は、ディッシュ60及び保持テーブル231の上面を覆い隠すための蓋部材である。なお、テーブル蓋部材232に代えて、ディッシュ60のみを覆う蓋部材を用いても良い。
図5は、ディッシュ60の斜視図である。ディッシュ60は、ウェルプレート61、シャーレ(schale)62及びカバー部材63を含む。ウェルプレート61は、所望のサイズの細胞凝集塊を担持させるための、上面視で正方形のプレートである。シャーレ62は、上面開口の底の浅い平皿であり、所望のサイズ以外の小さな細胞凝集塊や夾雑物を含む細胞培養液を回収するための容器である。ウェルプレート61は、シャーレ62の中央部の底面付近において保持される。カバー部材63は、シャーレ62の外径よりも大きい内径を有する筒部631と、この筒部631の上端を塞ぐ円板状の蓋部632とを含む、下面開口の部材である。カバー部材63は、シャーレ62の上面開口を蓋部632が覆うように、シャーレ62に被せられている。蓋部632には貫通孔633が穿孔されている。この貫通孔633を通して、シャーレ62のキャビティに液体(細胞培養液)を注液したり、シャーレ62から吸液したりすることが可能である。本実施形態では、ディッシュ60は、透光性の部材、例えば透明プラスチックや透明ガラスによって形成される。
蓋部632の中央には開口63Hが設けられている。開口63Hは、ウェルプレート61よりも大きい正方形の開口である。カバー部材63は、この開口63Hを区画する4つの辺からディッシュ60の円筒中心方向に向かうように延びる、各々下方に傾斜した4つの台形型の傾斜プレート64を含む。傾斜プレート64の各下端縁は、ウェルプレート61の各端辺付近にそれぞれ位置している。傾斜プレート64の下端付近には、帯状のメッシュ開口部65が設けられている。メッシュ開口部65は、傾斜プレート64を貫通する複数の孔からなり、シャーレ62のキャビティと4つの傾斜プレート64で区画される内部空間とを連通させている。メッシュ開口部65のメッシュサイズは、所望のサイズの細胞凝集塊は通過できず、所望のサイズ以外の小さな細胞凝集塊や夾雑物を通過させるサイズに選ばれている。
図6(A)は、ウェルプレート61の斜視図、図6(B)は、図5のVIA−VIA線断面図であって、ディッシュ60における細胞選別動作を説明するための断面図である。ウェルプレート61は、上面側に、細胞凝集塊を担持するための複数の凹部61Cを備えている。各凹部61Cは、半球状のキャビティを有しているが、その上端開口縁611は六角形である。複数の凹部61Cは、各々の上端開口縁611が隣接する態様で、ハニカム状に配列されている。図6(B)に示す通り、凹部61Cの曲率は、底部付近では比較的小さく、上端開口縁611付近では比較的大きい。従って、隣接する凹部61Cの上端開口縁611同士が接することにより形成される稜線部分は、鋭利な凸状先端部分によって形成されている。
各凹部61Cには、ウェルプレート61を上下方向に貫通する逃がし孔612が穿孔されている。逃がし孔612は、凹部61Cの中心部(最深部)に配置されている。逃がし孔612のサイズは、所望のサイズの細胞凝集塊は通過できず、所望のサイズ以外の小さな細胞凝集塊や夾雑物を通過させるサイズに選ばれている。各凹部61Cには、1個の細胞凝集塊を収容することが企図されている。ウェルプレート61の裏面とシャーレ62の内底面との間には所定高さの隙間が設けられている。
細胞選別動作が行われる際、細胞凝集塊Cを含まない細胞培養液Lmが、例えば貫通孔633を通してシャーレ62内に注液される。細胞培養液Lmの液位は、図6(B)に示す通り、ウェルプレート61及び傾斜プレート64のメッシュ開口部65を浸漬させる液位とされる。その後、抽出対象となる細胞凝集塊Cと、不可避的に混在する夾雑物Cxとを含む細胞培養液が、蓋部632の開口63Hから注入される。そうすると、所望のサイズの細胞凝集塊Cは、メッシュ開口部65を通過できないので、ウェルプレート61上に導かれる。一方、夾雑物Cxはメッシュ開口部65を通過し、シャーレ62に回収される(Cx1)。仮に、夾雑物Cxがメッシュ開口部65にトラップされず、ウェルプレート61の凹部61Cに入り込んだとしても、当該夾雑物Cxは逃がし孔612から落下し、シャーレ62に回収される(Cx2)。
以上の通りの細胞凝集塊Cと夾雑物Cxとの選別が行われるので、ウェルプレート61上には細胞凝集塊Cだけが残存するようになる。但し、一つの凹部61Cに複数の細胞凝集塊Cが担持されてしまう場合がある。このことが問題となる場合は、ウェルプレート61に振動を与える機構を、保持テーブル231に具備させることが望ましい。保持テーブル231にX方向及びY方向の水平振動を施与することで、一つの凹部61Cに重複して担持された細胞凝集塊Cを、他の凹部61Cに容易に移動させることができる。これには、凹部61Cの曲面が、底部付近では平坦に近いなだらかな曲面である一方、上端開口縁611付近では比較的急峻に湾曲した曲面であることも寄与している。既述の通り、ディッシュ60は透明な部材で形成され、且つ基台12も透光性であるので、凹部61Cに担持された状態の細胞凝集塊Cの画像を、照明器41の点灯下でカメラ51にて撮像することができる。
チップストック部24は、細胞選別部23の左隣に配置され、複数個のシリンダチップ70(チップの一例)を保持する部位である。シリンダチップ70は、図7に示すように細長いチューブ状の部材であり、ヘッド部32のロッド部35に対して装着及び取り外しが可能である。シリンダチップ70は、上述のウェルプレート61の凹部61Cに担持された細胞凝集塊を吸引し、ヘッド部32の移動に伴い該細胞凝集塊を運搬し、これを細胞移載部26へ吐出する機能を果たす。
チップストック部24は、保持ボックス241と、ボックス蓋部材243とを備えている。保持ボックス241は、立設状態でマトリクス状に整列されたシリンダチップ70を保持する。保持ボックス241の内部には、シリンダチップ70を整列保持するためのホルダー部材242が配置されている。シリンダチップ70は、その上端部分が保持ボックス241の上端面から上方に突出した状態で、保持ボックス241に保持されている。つまり、Z方向に移動するロッド部35に対して装着が容易に行い得る状態で、シリンダチップ70は、保持ボックス241に保持されている。ボックス蓋部材243は、保持ボックス241の上端面の上に被せられ、シリンダチップ70を覆い隠すための蓋部材である。
図8は、シリンダチップ70及びロッド部35の内部構造を示す断面図である。図8では、Z方向を表示しており、+Z方向が実際の装置では上側、−Z方向が下側となる。シリンダチップ70は、細胞凝集塊を吸引するための吸引経路となる管状通路71Pを内部に備えるシリンジ71と、管状通路71Pを画定するシリンジ71の内周壁と摺接しつつ管状通路71P内を進退移動するプランジャ72とを備える。
シリンジ71は、大径の円筒体からなるシリンジ基端部711と、細径で長尺の円筒体からなるシリンジ本体部712と、基端部711と本体部712とを繋ぐテーパ筒部713とを含む。管状通路71Pは、シリンジ本体部712に形成されている。シリンジ本体部712の先端には、吸引口71T(吐出口でもある)が設けられている。プランジャ72は、円筒体からなるプランジャ基端部721と、針状のプランジャ本体部722と、基端部721と本体部722とを繋ぐ半球部723とを含む。
シリンジ基端部711は、円筒型の中空部71Hを備えている。プランジャ基端部721の外径は、中空部71Hの内径よりも所定長だけ小さく設定されている。プランジャ本体部722の外径は、管状通路71Pの内径よりも僅かに小さく設定されている。また、テーパ筒部713の内周面の形状は、半球部723の外周面の曲面形状に合致している。プランジャ基端部721が中空部71H内に収容され、プランジャ本体部722がシリンジ本体部712の管状通路71Pに挿通される態様で、シリンジ71に対してプランジャ72が組み付けられている。
図8では、プランジャ本体部722がシリンジ本体部712に最も深く挿通されている状態、つまりプランジャ72が最も下降した状態を示している。このとき、テーパ筒部713のキャビティに、半球部723が完全に受容された状態となる。プランジャ本体部722の長さは、シリンジ本体部712よりもやや長く、図8の状態では、吸引口71Tから先端部724が突出している。また、シリンジ基端部711の内周面とプランジャ基端部721の外周面との間にはギャップが存在している。
プランジャ72は、図8の状態から、シリンジ71に対して+Z方向(上方向)へ移動することができる。所定長だけ+Z方向にプランジャ72が移動すると、プランジャ本体部722の先端部724は管状通路71Pの内部に没する。この際、吸引口71Tに吸引力を発生させ、該吸引口71Tの周囲の液体(本実施形態では細胞培養液)を管状通路71P内へ吸引することができる。この吸引の後、プランジャ72を−Z方向(下側)へ移動させると、前記管状通路71P内へ吸引された液体を吸引口71Tから吐出させることができる。
ロッド部35は、Z方向(上下方向)に移動可能な円柱状のロッド351と、このロッド351の周囲に配置されZ方向に移動可能な円筒状の移動筒352と、この移動筒352の周囲に配置された円筒状の固定筒353とを備えている。また、ロッド部35は、全体的にZ方向へ移動することが可能である。
プランジャ基端部721には、+Z方向の端面に開口を有する、円筒状の中空空間からなる装着孔72Hが備えられている。この装着孔72Hは、ロッド351の先端を圧入させるための孔であり、該圧入によってロッド351とプランジャ72とが一体的にZ方向へ移動できるようになる。移動筒352は、ロッド351とは独立してZ方向に移動可能である。移動筒352の−Z方向端面は、プランジャ基端部721の+Z方向端面と対向している。固定筒353は、シリンジ基端部711が圧入される筒であり、この圧入時にはシリンジ基端部711とプランジャ基端部721との間の前記ギャップに入り込む。
続いて、図9(A)〜(E)を参照して、シリンダチップ70による細胞凝集塊Cの吸引及び吐出動作を説明する。ここでは、シリンダチップ70にて、容器C1に貯留されている細胞培養液Lm1中に存在する細胞凝集塊Cを吸引し、容器C2に貯留されている細胞培養液Lm1中に当該細胞凝集塊Cを吐出する場合について説明する。本実施形態に当て嵌めれば、容器C1は細胞選別部23、容器C2は細胞移載部26に各々配置される容器である。
図9(A)に示すように、シリンダチップ70を吸引対象とする細胞凝集塊Cの真上に移動させる。プランジャ72がシリンジ71に対して相対的に上方(+Z方向)に移動しており、プランジャ本体部722の先端部724がシリンジ本体部712内に没入した状態であるときは、図9(B)に示すように、プランジャ72を最も下方(−Z方向)に移動させ、先端部724を吸引口71Tから突出させる。つまり、シリンジ本体部712の管状通路71P内に空気が存在しない状態とする。その後、図9(C)に示すように、シリンダチップ70を全体的に下降させ、吸引口71Tを容器C1の細胞培養液Lm1中に突入させる。このとき、なるべく吸引口71Tを細胞凝集塊Cに接近させる。
続いて、図9(D)に示すように、プランジャ72を所定高さだけ上方へ移動させる。この動作により、吸引口71Tには吸引力が発生し、細胞凝集塊Cと一部の細胞培養液Lmaとがシリンジ本体部712内に吸引される。この状態で、シリンダチップ70は全体的に上昇され、容器C2の配置位置まで移動される。そして、図9(E)に示すように、吸引口71Tが容器C2の細胞培養液Lm2中に突入するまで、シリンダチップ70が全体的に下降される。しかる後、所定高さ位置にあるプランジャ72を、先端部724が吸引口71Tから突出するまで下降させる。この下降動作により、細胞凝集塊Cは容器C2の細胞培養液Lm2中に吐出される。
図4に戻って、チップ撮像部25は、ロッド部35に装着されたシリンダチップ70の画像が撮像される位置を提供するピットである。チップ撮像部25の配置位置は、細胞選別部23とチップストック部24との間である。前記撮像を行うのは、本実施形態では撮像ユニット50(チップ撮像装置)である。従って、前記撮像が行われる際、撮像ユニット50のカメラ51は、チップ撮像部25の直下に移動され、落射照明器52の照明下において、各シリンダチップ70の画像を撮像する。シリンダチップ70の画像並びに撮像時における焦点位置情報に基づき、シリンダチップ70の吸引口71TのXYZ座標位置が求められる。当該座標位置と、予め定められた基準位置との差分から補正値が導出される。当該補正値は、ロッド部35(ヘッド部32)の移動制御の際の補正値として利用される。
細胞移載部26は、細胞移動ライン20においてX方向の下流側端部付近に配置され、細胞選別部23のディッシュ60から吸引された細胞凝集塊の移動先となる部位である。細胞移載部26は、マイクロプレート90(第2容器部)、保持テーブル261及びテーブル蓋部材262を含む。
マイクロプレート90は、上面が開口した多数の小さなウェル91が、マトリクス状に配列されたプレートである。マイクロプレート90は、透光性の部材、例えば透明プラスチックで形成されている。1のウェル91には、1の細胞凝集塊が収容される。従って、各ウェル91に収容された状態の細胞凝集塊を、カメラ51によって撮像することができる。また、ウェル91の配列ピッチは、一列に並んだロッド部35に装着されたシリンダチップ70群の配列ピッチと略同一に設定されている。これにより、一群のシリンダチップ70から同時にウェル91に細胞凝集塊を吐出させることが可能である。保持テーブル261は、基台12の上に載置され、マイクロプレート90を位置決めして保持する。テーブル蓋部材262は、マイクロプレート90及び保持テーブル261の上面を覆い隠すための蓋部材である。
ブラックカバー載置部27は、細胞移載部26に被せられる第1ブラックカバー271と、細胞選別部23に被せられる第2ブラックカバー272とが載置される部位である。このようなカバー対象を考慮して、ブラックカバー載置部27は、細胞選別部23と細胞移載部26との間に配置されている。第1、第2ブラックカバー271、272は、遮光された状態で、ディッシュ60又はマイクロプレート90に担持された細胞凝集塊を撮像する際に用いられる遮光体である。第1、第2ブラックカバー271、272は、保持テーブル231、261の外形サイズに合致した、下面開口のボックスである。例えば、細胞培養液に蛍光剤を添加し、細胞凝集塊を蛍光観察する際に、第1、第2ブラックカバー271、272は、保持テーブル231、261を覆い隠すように被せられる。
チップ廃棄部28は、細胞移動ライン20においてX方向の最も下流側端部に配置され、上述の吸引及び吐出動作を終えた使用後のシリンダチップ70及び分注チップ80が廃棄される部位である。チップ廃棄部28は、使用後のシリンダチップ70及び分注チップ80を収容するための回収ボックス281を含む。前記廃棄の際、シリンダチップ70又は分注チップ80を装備したヘッド部32が回収ボックス281の開口部282上に移動され、シリンダチップ70又は分注チップ80のヘッド部32からの取り外し動作が実行される。この取り外し動作により、シリンダチップ70又は分注チップ80は、開口部282を通して回収ボックス281に落下する。
図10(A)及び(B)は、ロッド部35へのシリンダチップ70の着脱動作を説明するための、一部破断斜視図である。これらの図では、簡略化のためにシリンダチップ70のプランジャ72の記載を省いている。シリンダチップ70の装着時、ヘッド部32がチップストック部24上に移動され、1のシリンダチップ70に対して位置合わせられた1のロッド部35が降下される。このとき、図10(A)に示すように、ロッド351の下端面と固定筒353の下端面とは略面一に設定される一方で、これら下端面に対して移動筒352の下端面352Lは上方に没入した状態とされる。その没入長さは、プランジャ72のプランジャ基端部721のZ方向長さ以上の長さである。
上記の状態のロッド部35が下降することで、ロッド351はプランジャ基端部721の装着孔72H(図8)に圧入され、また、固定筒353はシリンジ基端部711の中空部71Hに圧入される。これにより、ロッド部35のシリンダチップ70への装着が完了する。この状態でロッド351だけを上下動させることで、プランジャ72をシリンジ71に対して進退移動させることができる。
シリンダチップ70の取り外し時、ヘッド部32がチップ廃棄部28上に移動される。そして、図10(B)に示すように、上方に退避していた移動筒352が下降される。これにより、移動筒352の下端面352Lによってプランジャ基端部721が下方に押圧され、プランジャ基端部721がロッド351から抜け出し始める。すると、プランジャ72の半球部723がシリンジ71のテーパ筒部713の内周面713Tを押圧するようになり、シリンジ71に対しても固定筒353から抜け出す押圧力が作用するようになる。移動筒352の下降がさらに進むと、ついにはシリンダチップ70はロッド部35から脱落し、回収ボックス281で受け取られる。
図11(A)〜(D)は、第1ノズル36への分注チップ80の着脱動作を説明するための斜視図である。第1ノズル36に対して、ガイドアーム361が付設されている。ガイドアーム361は、側方に開口し、第1ノズル36の外径よりも僅かに大きい開口幅を有するガイド凹部362を備えている。第1ノズル36は、ガイド凹部362のキャビティ内に収容された状態で上下方向に移動する。
分注チップ80の装着時、ヘッド部32が分注チップストック部22上に移動され、1の分注チップ80に対して位置合わせられた第1ノズル36が降下される。この降下により、図11(B)に示すように、第1ノズル36の下端36Lが分注チップ80の上端部81に嵌り込む。分注チップ80の上端部81より下方の中間部83は、先細りのテーパ形状を備えているため、第1ノズル36が所定長さだけ分注チップ80に嵌り込むと、両者は実質的に連結される。つまり、第1ノズル36のシリンダ空間と分注チップ80内のチューブ内空間とは密に連結される。従って、第1ノズル36が吸引力を発生させると、分注チップ80の下端部82の開口から液体を吸引することができる。一方、第1ノズル36が吐出力を発生させると、吸引した前記液体を下端部82の開口から吐出させることができる。
分注チップ80の取り外し時、ヘッド部32がチップ廃棄部28上に移動される。そして、図11(C)に示すように、分注チップ80が装着された状態の第1ノズル36が、上方に引き上げられる。第1ノズル36の引き上げがある程度進むと、ガイドアーム361の下端面と分注チップ80の上端縁とが干渉するようになる。前記干渉によって分注チップ80は徐々に第1ノズル36から外されて行き、最終的には分注チップ80は第1ノズル36から脱落し、回収ボックス281で受け取られる。
図12(A)及び(B)は、第2ノズル37及び吸盤ヘッド38の斜視図である。第2ノズル37は、シリンジパイプ371と、このシリンジパイプ371に収容され上下方向に進退移動するピストン372とを含む。図において、シリンジパイプ371の下端371L付近を破断して描いている。ピストン372の下端にはピストンヘッド373が取り付けられ、シリンジパイプ371の下端371Lにはクラッドパイプ37Aが取り付けられている。吸盤ヘッド38は、クラッドパイプ37Aの下端開口を塞ぐように、当該クラッドパイプ37Aに取り付けられている。但し、吸盤ヘッド38の中央部には吸引口が備えられており、前記吸引口を通してクラッドパイプ37Aの内部空間が外部に連通している。
第2ノズル37は、図12(A)〜図12(B)に示す通り、全体的に上下動することができる。また、ピストン372は、独立して上下動することができる。ピストン372の上下動に伴い、ピストンヘッド373のクラッドパイプ37A内を上下動する。この上下動に伴い、吸盤ヘッド38の前記吸引口には吸引力又は吐出力が発生する。つまり、ピストン372の上昇によってクラッドパイプ37A内が負圧となって吸引力が発生し、ピストン372の下降によって吐出力が発生する。
吸盤ヘッド38の使用例を説明する。例えば、第2ノズル37を細胞選別部23(図4)のテーブル蓋部材232の上に配置し、第2ノズル37を下降させて吸盤ヘッド38をテーブル蓋部材232の上面に当接させる。次いで、ピストン372を上昇させて吸引力を発生させ、テーブル蓋部材232を吸着させる。そして、第2ノズル37を上昇させると共に保持テーブル231の上まで移動させる。しかる後、第2ノズル37を下降させると共にピストン372を下降させて、前記吸着を解除させる。これにより、ディッシュ60がテーブル蓋部材232にて覆われる。他の蓋部材においても同様である。
図29は、移動装置1の制御部15の構成を示すブロック図である。制御部15は、主制御部151、軸制御部152(駆動制御部)、照明制御部153、カメラ制御部154、画像処理部155及び位置補正部156を機能的に備えている。主制御部151は、移動装置1の装置本体10における各種の制御を統合的に行う。ずなわち、主制御部151は、図4において模式的に示しているように、ヘッドユニット30(ヘッド部32)を細胞移動ライン20の各部へ向かうようXY方向に移動させ、シリンダチップ70又は分注チップ80の装着及び取り外しや、細胞培養液(細胞凝集塊)の吸引及び吐出動作等を行わせ、また、照明ユニット40(照明器41)及び撮像ユニット50(カメラ51)をX方向に移動させ、ディッシュ60又はマイクロプレート90に担持された細胞凝集塊、或いはロッド部35に装着されたシリンダチップ70の画像を撮像させる。
軸制御部152は、ヘッドユニット駆動装置161、ヘッド駆動装置162、照明ユニット駆動装置163及び撮像ユニット駆動装置164の動作を制御する。具体的には、ヘッドユニット駆動装置161の制御により、ヘッドユニット30のX−Y方向の移動が制御される。ヘッド駆動装置162の制御により、ロッド部35、第1ノズル36及び第2ノズル37の上下動、ロッド部35におけるロッド351他の昇降動作(吸引及び吐出動作)、第1ノズル36及び第2ノズル37における吸引及び吐出動作などが制御される。照明ユニット駆動装置163の制御により、照明ユニット40のX方向の移動が制御される。撮像ユニット駆動装置164の制御により、撮像ユニット50のX方向の移動が制御される。
照明制御部153は、照明器41の発光動作を制御する。具体的には、照明制御部153は、細胞選別部23又は細胞移載部26に保持されている細胞凝集塊を撮像ユニット50にて撮像する際に、透過照明を発生させるために照明器41を所定のルーチンで点灯及び消灯させる。
カメラ制御部154は、カメラ51の撮像動作を制御する。例えばカメラ制御部154は、上記撮像動作の際に、カメラ51のフォーカシング、シャッタータイミング、シャッター速度(露光量)などを制御する。
画像処理部155は、カメラ51により取得された画像に対して、シェーディング補正やホワイトバランス調整などの画像処理を施す。本実施形態では、細胞選別部23又は細胞移載部26において取得される細胞凝集塊の画像に前記画像処理を施し、モニター157に当該画像を表示させる。また、画像処理部155は、チップ撮像部25において取得されるシリンダチップ70の認識画像に対して公知の画像処理技術を適用して、ロッド部35に装着されたシリンダチップ70の吸引口71TのXY位置情報を求める。
位置補正部156は、画像処理部155により求められた吸引口71TのXY方向の位置情報と、及びカメラ制御部154のフォーカシング動作により定まる吸引口71TのZ方向の焦点位置情報(撮像の動作によって得られる情報)とから、ロッド部35に装着されたシリンダチップ70の吸引口71TのXYZ座標位置(シリンダチップの装着位置情報)を求める処理を行う。そして、位置補正部156は、前記XYZ座標位置と、予め定められた基準位置との差分から補正値を導出する。軸制御部152は、この補正値を参照して、ヘッドユニット駆動装置161及びヘッド駆動装置162を制御し、シリンダチップ70による吸引及び吐出動作を、正確な位置で実行させる。
以下、本実施形態の移動装置1の動作を、図13〜図29に基づいて説明する。制御部15は、大別して分注動作(図13〜図17)と、細胞移動動作(図18〜図26)とを装置本体10に実行させる。前記分注動作において、制御部15は、順次、
[制御1]ヘッドユニット30を分注チップストック部22上に移動させ、第1ノズル36に分注チップ80を装着させる制御、
[制御2]ヘッドユニット30を対象物ストック部21上に移動させ、チューブ212に貯留された、細胞凝集塊を含む細胞培養液を所定の分注量だけ分注チップ80内に吸引させる制御、
[制御3]ヘッドユニット30を細胞選別部23上に移動させ、分注チップ80内の前記細胞培養液をディッシュ60に吐出させる制御、及び、
[制御4]ヘッドユニット30をチップ廃棄部28上に移動させ、使用済みの分注チップ80を第1ノズル36から取り外し、回収ボックス281内に廃棄させる制御、
を装置本体10に実行させる。
前記細胞移動動作において、制御部15は、順次、
[制御5]ヘッドユニット30をチップストック部24上に移動させ、ロッド部35にシリンダチップ70を装着させる制御(第1制御)、
[制御6]ヘッドユニット30を細胞選別部23上に移動させ、ディッシュ60に貯留された細胞凝集塊をシリンダチップ70内に吸引させる制御(第2制御)、
[制御7]ヘッドユニット30を細胞移載部26上に移動させ、シリンダチップ70内の細胞凝集塊をマイクロプレート90に吐出させる制御(第3制御)、及び、
[制御8]ヘッドユニット30をチップ廃棄部28上に移動させ、使用済みのシリンダチップ70をロッド部35から取り外し、回収ボックス281内に廃棄させる制御(第4制御)、
を装置本体10に実行させる。なお、蛍光撮影が行われる場合、制御部15は、
[制御9]ヘッドユニット30をブラックカバー載置部27上へ移動させ、例えば第1ブラックカバー271を吸着し、これを細胞移載部26に被せる制御、
を装置本体10に実行させる(図27、図28参照)。
以下、上記の動作を図13〜図29に基づき、具体的に説明する。これらの図では、上述のX方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向として説明する。また、これらの図では、ヘッドユニット30、照明ユニット40の照明器41、及び撮像ユニット50のカメラ51の位置を模式的に示している。ヘッドユニット30において、ヘッド部32のロッド部35及び第1ノズル36を、矢印で模式的に示している。さらに、ヘッドユニット30の左右方向における主移動経路が、点線で経路X1として示され、迂回移動経路が一点鎖線で経路X2として示されている。経路X1は、ディッシュ60やマイクロプレート90の真上を通る経路である。照明ユニット40及び撮像ユニット50も、概ね経路X1に沿って移動する。経路X2は、概ねテーブル蓋部材232、262の上を通る経路である。この経路X2は、ヘッドユニット30と照明ユニット40との干渉を回避するために専ら用意されている経路である。
先ず、図13〜図17、図29に基づいて、前記分注動作を説明する。なお、この分注動作が開示される前に、細胞移動ライン20の各種セッティング、例えばシリンダチップ70及び分注チップ80の補充、細胞凝集塊を含む細胞培養液のチューブ212への充填、マイクロプレート90への試薬の充填等が完了されている。また、照明器41及びカメラ51の光軸調整、光量調整、ヘッドユニット30の原点合わせ等の準備作業も完了されている。さらに、細胞移動ライン20の各部の蓋部材も外されている。
図13は、分注動作が開始される直前の状態を示している。ヘッドユニット30は、経路X1上において、分注チップストック部22上に位置している。照明器41はチップ廃棄部28の上方に、カメラ51は細胞選別部23の下方に位置している。このとき、ヘッドユニット30の第1ノズル36は、装着対象となる1の分注チップ80に対して位置合わせされている。
図14は、上記「制御1」が実行されている状態を示す図である。矢印A1で示すように、軸制御部152は、ヘッド駆動装置162を制御して、第1ノズル36をターゲットとなる分注チップ80に向けて降下させる。この降下により、第1ノズル36が所定長さだけ分注チップ80に嵌り込み、第1ノズル36に分注チップ80が装着される。このタイミングで、矢印A2で示すように、軸制御部152は、照明ユニット駆動装置163を制御して、照明器41を左方に移動させ、ブラックカバー載置部27の上方に停止させる。これは、後に行われる、分注チップ80をチップ廃棄部28に廃棄させる動作の際に、ヘッドユニット30と照明器41とが干渉しないように退避させる動作である。
図15は、上記「制御2」が実行されている状態を示す図である。図14の状態から、矢印B1で示すように、軸制御部152は、分注チップ80の装着された第1ノズル36を上昇させる。次いで、軸制御部152はヘッドユニット駆動装置161を制御して、矢印B2で示すように、ヘッドユニット30を右方に移動させ、対象物ストック部21上で停止させる。この停止位置は、第1ノズル36がチューブ212の上面開口の真上となる位置である。その後、矢印B3で示すように、第1ノズル36が降下される。この降下によって、分注チップ80の下端部82(図11(C))が、チューブ212に貯留されている細胞凝集塊を含む細胞培養液に浸漬される。そして、軸制御部152は、ヘッド駆動装置162を制御して、第1ノズル36に吸引力を発生させ、チューブ212内の細胞培養液を所定の分注量だけ分注チップ80に吸引させる。
図16は、上記「制御3」が実行されている状態を示す図である。先ず、図15の状態から、矢印C1で示すように、軸制御部152は、細胞培養液を吸引した分注チップ80付きの第1ノズル36を上昇させる。その後、ヘッドユニット30は細胞選別部23上に移動される。この移動の際に軸制御部152は、矢印C2、C3、C4で示すように、ヘッドユニット30を経路X1上から経路X2へ向かうように前方向に一旦移動させ、経路X2上を右方向に移動させた後、後方向に移動させるという移動経路を取る。これは、細胞培養液を吸引している分注チップ80からの液垂れに配慮したものである。つまり、ヘッドユニット30を、図15の状態から経路X1に沿ってそのまま右方へ移動させると、チップストック部24の上空を通過することになり、この際に未使用のシリンダチップ70に、分注チップ80の下端部82から細胞培養液が滴下してしまう懸念がある。上記のような移動経路をヘッドユニット30に取らせることで、前記液垂れの問題を解消することができる。なお、液垂れ自体を抑止するために、分注チップ80の下端開口を覆う開閉自在なカバー部材を、下端部82に付設することが望ましい。或いは、分注チップ80の内圧を制御する機構を設け、下端開口からの液垂れが生じないように前記内圧を制御するようにしても良い。
軸制御部152は、ヘッドユニット30を細胞選別部23の上に停止させると、矢印C5で示すように、第1ノズル36をディッシュ60に向けて降下させる。この降下にて、分注チップ80の下端部82がディッシュ60に対して所定位置まで接近する。しかる後、軸制御部152は、第1ノズル36に吐出力を発生させ、分注チップ80内の細胞培養液をディッシュ60に吐出させる。
以上のような分注動作は、通常は複数回繰り返される。一般に、チューブ212内の細胞培養液は、細胞凝集塊が滞留する底部付近の細胞懸濁部分と、その上の上澄み液部分とに分かれるようになる。一方、空のディッシュ60に細胞凝集塊を多く含む細胞懸濁液をいきなり吐出させると、ウェルプレート61に対する細胞凝集塊の分散性が悪くなる。そこで、先ずは前記上澄み液をディッシュ60に注ぎ、その後、前記細胞懸濁液を注ぐという手法を取ることが望ましい。つまり、ウェルプレート61を前記上澄み液に浸漬させた後に前記細胞懸濁液を注ぐことで、液流れによる細胞の変形を抑止でき、細胞凝集塊をウェルプレート61上に効率的に分散させることができる。
この手法を取る場合、1回目(乃至は複数回)の分注動作では、図15の矢印B3で示す第1ノズル36の降下動作において、降下度合いを浅くし、分注チップ80にチューブ212から前記上澄み液を吸引させる。分注チップ80内の上澄み液のディッシュ60への吐出は、開口63H又は貫通孔633(図5)の何れから行っても良い。上澄み液の吐出を終えると、軸制御部152は、ヘッドユニット30を矢印C2〜C4の逆経路で、対象物ストック部21まで移動させる。
引き続き、軸制御部152は、前記細胞懸濁液を吸引させるための動作を実行させる。この場合、矢印B3で示す第1ノズル36の降下動作において、その降下度合いを深くして分注チップ80の下端部をチューブ212の底部付近まで至らせる。そして、分注チップ80に前記細胞懸濁液を吸引させる。次に軸制御部152は、ヘッドユニット30を前記矢印C2〜C4の経路で移動させた後、分注チップ80から前記細胞懸濁液をディッシュ60へ吐出させる。細胞凝集塊をウェルプレート61に担持させる必要があるため、この吐出は開口63Hに対して行われる。なお、この吐出に際しては、ウェルプレート61の各凹部61Cに満遍なく細胞凝集塊が担持されるよう、分注チップ80から微少量ずつ前記細胞懸濁液を吐出させる、あるいはヘッドユニット30を微小揺動させることで分注チップ80を揺動させつつ吐出させる等の動作を行わせることが望ましい。
図17は、上記「制御4」が実行されている状態を示す図である。軸制御部152は、図16の状態から分注チップ80付きの第1ノズル36を上昇させた後、ヘッドユニット30をチップ廃棄部28上に移動させる。この移動の際、矢印D1で示すように、軸制御部152は、ヘッドユニット30を経路X1上から経路X2へ向かうように前方向に移動させ、次いで、矢印D2で示すように経路X2上を右方向に移動させる。ヘッドユニット30がチップ廃棄部28上で停止させた後、先に図11(A)〜(D)に基づいて説明した手順で、軸制御部152は、ヘッド駆動装置162を制御して、分注チップ80が第1ノズル36から取り外し、回収ボックス281内に廃棄させる。
本実施形態では、上述の分注チップ80の廃棄を行う前に、ウェルプレート61上における細胞凝集塊の担持状況を確認する検査ステップが実行される。この検査ステップは、カメラ51にてディッシュ60(ウェルプレート61)を撮像する工程を含む。このため、矢印D3で示すように、軸制御部152は、照明器41を左方に移動させる。そして、照明制御部153及びカメラ制御部154の制御下で、照明器41による透過照明の下、カメラ51でウェルプレート61が撮像される。そして、画像処理部155により撮影画像に対する画像処理が実行され、その画像に基づいて、各凹部61Cに所望の通り細胞凝集塊が良好に担持されているか否かが確認される。良好な担持状態が確認されたら、上述の分注チップ80の廃棄が実行される。担持状態が不良であったなら、再度の前記細胞懸濁液の分注、或いはディッシュ60に振動を与える等の手段が取られる。
続いて、図18〜図26、図29に基づいて、前記細胞移動動作を説明する。図18は、上記「制御4」の、分注チップ80の廃棄処理後のヘッドユニット30の移動状況を示す図である。軸制御部152は、ヘッドユニット駆動装置161を制御して、ヘッドユニット30を、矢印E1で示すように、チップ廃棄部28からチップストック部24まで、経路X2上を右方に移動させる。その後、軸制御部152は、ヘッドユニット30を経路X2から経路X1へ向かうように後方向に移動させ、シリンダチップ70の群の上空で待機させる。
続いて、カメラ51によるディッシュ60(ウェルプレート61)の撮像が実行される。図19は、この撮像が行われている状態を示している。この撮像は、所定の条件(大きさ、形状等)を満たす細胞凝集塊が、ウェルプレート61のどの位置に存在するか(どの凹部61Cに担持されているか)を確認するためのプロセスである。なお、上述した「制御4」の検査ステップにおいて、所定の条件を満たす細胞凝集塊の位置が特定されている場合は、ここでの撮像動作を省くことができる。
図20は、上記「制御5」が実行されている状態を示す図である。ヘッドユニット30は、保持ボックス241の上で停止している。このとき、ヘッド部32が備える複数のロッド部35のうち、最も右端のロッド部35Aが、予め定められた1のシリンダチップ70に対して位置決めされた状態で、ヘッドユニット30は停止している。シリンダチップ70のホルダー部材242内での配列ピッチは、ロッド部35の配列ピッチにマッチした配列とされており、ロッド部35Aと前記1のシリンダチップ70との位置決めが為されると、他のロッド部35も、各々対向するシリンダチップ70との位置決めが為された状態となる。一方、照明器41は、矢印F1で示すように右方に移動され、細胞移載部26上で待機する。また、カメラ51は、矢印F2で示すように左方に僅かに移動され、シリンダチップ70の認識画像の撮像のため、チップ撮像部25の直下で待機する。
その後、軸制御部152は、ヘッド駆動装置162を制御して、矢印F3で示すように、ヘッド部32の全てのロッド部35が一斉に下降させる。この動作により、各ロッド部35にシリンダチップ70がそれぞれ装着される。この装着動作は、先に図10(A)に基づいて説明した通りである。もちろん、ロッド部35を一斉に下降させず、右端のロッド部35Aから順に、1つずつシリンダチップ70を装着させるようにしても良い。
図21は、チップ撮像部25において、ロッド部35に装着されたシリンダチップ70の撮像が行われている状態を示している。ここでは、各シリンダチップ70のロッド部35への装着状態が検知され、位置補正部156によって、シリンダチップ70の吸引口71TのXYZ座標位置(ロッド351の先端のXYZ座標に対する補正値)が求められる。軸制御部152は、図20の状態から、先ず矢印G1で示すように、シリンダチップ70が各々装着されたロッド部35を一斉に上昇させる。その後、軸制御部152は、ヘッドユニット30を、矢印G2で示すように僅かに右方に移動させ、右端のロッド部35Aがチップ撮像部25と対向する位置で停止させる。そして、カメラ制御部154は、カメラ51にシリンダチップ70の画像を撮像させる。このとき、照明制御部153は、シリンダチップ70の照明用に落射照明器52を点灯させる。
上記の撮像動作により、シリンダチップ70の吸引口71TのXYZ座標位置が求められる。Z座標位置は、吸引口71Tの焦点位置情報から求められる。具体的には、シリンダチップ70を撮影可能範囲まで下降させた後、ロッド部35Aを一定ピッチ、例えば10μmずつ下降させ(矢印G3)、その度にカメラ51でシリンダチップ70の撮像を行わせる。この際、プランジャ72の先端部724(図8)と、吸引口71Tとが揃うように、プランジャ本体部722がシリンダ本体部712に深く挿通された状態とされる。これは、当該状態が細胞凝集塊の吸引を開始する状態であり、プランジャ本体部722の挿通状態によって、吸引口71Tの位置ズレが生じるからである。これらの撮像で得られた複数枚の画像のうち、最もコントラストが高い画像を合焦画像として選択し、当該合焦画像が得られたときの焦点位置情報から吸引口71TのZ座標位置が求められる。また、前記合焦画像に対する画像処理によって、吸引口71TのXY座標位置が求められる。上述の通り、前記XYZ座標位置と、予め定められた基準位置との差分から、ロッド351の先端に対するズレを示す補正値が導出され、図略の記憶部に該補正値がロッド部35Aの識別符号に関連付けて格納される。続いて、軸制御部152は、ヘッドユニット30を右方に微動させ、ロッド部35Aの左隣のロッド部に装着されたシリンダチップ70をチップ撮像部25に対向させる。そして、当該シリンダチップ70について、上記と同様な撮像動作及び補正値導出動作が行われる。以下、残りのシリンダチップ70についても同様な動作が行われる。
図22は、上記「制御6」が実行されている状態を示す図である。シリンダチップ70内への細胞凝集塊の吸引は、1本のロッド部35毎に行われる。図21の状態から、矢印H1で示すように、軸制御部152は、ヘッドユニット30をチップ撮像部25から細胞選別部23上に移動させ、右端のロッド部35Aがディッシュ60の所定位置と対向する位置で停止させる。この所定位置とは、上記の図17若しくは図19におけるディッシュ60の撮像と、その後の画像処理によって得られた、吸引ターゲットとなる細胞凝集塊が収容されたウェルプレート61の凹部61Cの上空位置である。
その後、軸制御部152は、矢印H2で示すように、ロッド部35Aがディッシュ60に向けて下降させる。そして、図9(A)〜(D)に基づき説明した手法にて、吸引ターゲットとなる細胞凝集塊が、細胞培養液と共にシリンダチップ70内に吸引される。しかる後、ロッド部35Aは上昇される。以降、残りのロッド部35について、一本ずつ所望の凹部61Cに対して位置決めされ、上述の下降、吸引及び上昇動作が順次行われる。これらの動作の際に、矢印H3で示すように、軸制御部152は、撮像ユニット駆動装置164を制御して、カメラ51を右方に移動させ、細胞移載部26の直下で待機させる。このとき、マイクロプレート90に既に細胞凝集塊が担持されている場合に、カメラ制御部154が、カメラ51にマイクロプレート90の撮像を行わせるシーケンスを組み入れても良い。
図23は、上記「制御7」が実行されている状態を示す図である。「制御7」の実行に当たり軸制御部152は、ヘッドユニット30を細胞選別部23上から細胞移載部26上に移動させる一方、照明器41を細胞移載部26上から細胞選別部23上に移動させる。具体的には軸制御部152は、矢印I1、I2、I3で示すように、ヘッドユニット30を経路X1上から経路X2へ向かうように前方向に一旦移動させ、経路X2上を右方向に移動させた後、後方向に移動させて細胞移載部26上で停止させる。また、軸制御部152は、矢印I5で示すように、照明器41を経路X1に沿って左方に移動させ、細胞選別部23上で停止させる。このように、共に基台12の上方に配置されているヘッドユニット30と照明器41とが、互いに入れ違いになるように移動されるので、両者を干渉させることなく、また、一方が他方の移動待ちとなるという問題も生じない。
その後、軸制御部152は、ヘッド駆動装置162を制御して、ヘッド部32のロッド部35をマイクロプレート90に向けて一斉に下降させる(矢印I4)。そして、図9(E)に基づいて説明した手法にて、各シリンダチップ70内の細胞凝集塊を、一斉にマイクロプレート90に吐出させる。勿論、一斉ではなく、シリンダチップ70の一本ずつから、順次細胞凝集塊を吐出させるようにしても良い。
なお、照明器41を移動させるタイミングで、軸制御部152は、矢印I6で示すように、カメラ51も細胞選別部23の直下に移動させる。これにより、細胞移載部26においてシリンダチップ70による吐出動作が実行されている傍らで、細胞選別部23に収容されている(残存している)細胞凝集塊を、カメラ51によって撮像させることが可能となる。従って、タクトタイムのさらなる短縮に貢献することができる。
図24は、上記「制御8」が実行されている状態を示す図である。軸制御部152は、図23の状態からシリンダチップ70付きのロッド部35を上昇させた後、矢印J1で示すように、ヘッドユニット30をチップ廃棄部28上に移動させる。この移動の際、ヘッドユニット30は経路X1上から経路X2へ向かうように前方向に移動し、次いで、チップ廃棄部28が配置されている経路X2上を右方向に移動する。ヘッドユニット30がチップ廃棄部28上で停止させた後、軸制御部152は、ヘッド駆動装置162を制御して、先に図10(B)に基づいて説明した手法で、シリンダチップ70をロッド部35から取り外し、回収ボックス281内に廃棄させる。なお、シリンダチップ70からマイクロプレート90へ細胞凝集塊を吐出させる際、シリンダチップ70に薬品等が付着しない場合は、必ずしもこの廃棄を吐出の度に実行しなくとも良い。また、マイクロプレート90への細胞凝集塊の担持状況を画像で確認した後に、シリンダチップ70の前記廃棄を行うようにしても良い。
上記のシリンダチップ70の廃棄が行われているタイミングで、軸制御部152は、照明ユニット駆動装置163を制御して、矢印J2で示すように、照明器41を細胞選別部23上から細胞移載部26上に移動させる。また、軸制御部152は、撮像ユニット駆動装置164を制御して、矢印J3で示すように、カメラ51を細胞選別部23下から細胞移載部26下に移動させる。
図25は、次のサイクルの細胞移動動作のための上記「制御5」が実行されている状態を示す図である。軸制御部152は、矢印K1で示すように、チップ廃棄部28上のヘッドユニット30を、経路X2に沿って左方向に移動させ、さらに矢印K2で示すように、経路X2上から経路X1へ向かうように後方向に移動させ、チップストック部24のシリンダチップ70上に停止させる。そして、軸制御部152は、ロッド部35を一斉に下降させ(矢印K3)、次の吸引動作を行うシリンダチップ70をロッド部35に装着させる。
上記のシリンダチップ70の装着動作と並行して、図23で示した細胞凝集塊の吐出の成否を確認するために、マイクロプレート90の撮像が行われる。照明制御部153及びカメラ制御部154の制御下で、照明器41が透過照明を発し、カメラ51がマイクロプレート90の画像を撮像する。撮影された画像は、画像処理部155にて画像処理が施され、モニター157に表示される。吐出ターゲットとしたマイクロプレート90のウェル91に、細胞凝集塊が担持されていれば、吐出は成功である。ウェル91に細胞凝集塊が担持されていない場合、再度そのウェル91が吐出ターゲットとされる。
図26は、次のサイクルの細胞移動動作のための、シリンダチップ70の撮像が行われている状態を示している。軸制御部152は、矢印L1で示すように、ヘッドユニット30を右方に移動させてチップ撮像部25に位置させる。また、軸制御部152は、矢印L3で示すように、カメラ51をチップ撮像部25の直下まで移動させる。続いて軸制御部152は、新たなシリンダチップ70が装着されたロッド部35を1本ずつ下降させる。これは、先に図21に基づき説明した動作を同じである。これにより、シリンダチップ70の吸引口71TのXYZ座標位置が特定される。
以降、先に図22〜図26に基づき説明した動作が繰り返される。すなわち、主制御部151は、上述の「制御5」〜「制御8」を繰り返し実行させる。この繰り返しは、マイクロプレート90の全てのウェル91に、細胞凝集塊が担持されるまで行われる。但し、保持ボックス241内のシリンダチップ70がエンプティになった場合、主制御部151は、装置本体10を停止させると共に、シリンダチップ70の補給を求めるメッセージをモニター157に表示させる。また、主制御部151は、全てのウェル91に細胞凝集塊が担持されたことが確認されたら、装置本体10を停止させると共に、移動完了を示すメッセージをモニター157に表示させる。
続いて、図27〜図29に基づいて、蛍光撮影が行われる場合の追加的な動作について説明する。図27及び図28は、上記「制御9」が実行されている状態を示す図である。ここでは、ヘッドユニット30に第2ノズル37及び吸盤ヘッド38を付記している。軸制御部152は、ヘッドユニット30をブラックカバー載置部27上に移動させ、ヘッド駆動装置162を制御して、吸盤ヘッド38を第1ブラックカバー271に向けて下降させる。吸盤ヘッド38が第1ブラックカバー271の上面に当接すると、軸制御部152は、第2ノズル37に吸引力を発生させ、第1ブラックカバー271を吸盤ヘッド38に吸着させる。
その後、軸制御部152は、矢印M1で示すように吸盤ヘッド38を上昇させ、続いて矢印M2で示すように、ヘッドユニット30を右方に移動させる。軸制御部152は、ヘッドユニット30を細胞移載部26上で停止させ、矢印M3で示すように、吸盤ヘッド38を下降させる。これにより、図28に示すように、マイクロプレート90が第1ブラックカバー271で覆われた状態となる。その後、軸制御部152は、第2ノズル37の吸引力を停止させ、吸盤ヘッド38による第1ブラックカバー271の吸着を解除させる。この状態で、カメラ制御部154は、カメラ51に、マイクロプレート90に担持されている細胞凝集塊の蛍光観察を実行させる。この際、撮像ユニット50に搭載されている図略の蛍光照明が点灯される。観察後、上記と逆の手順で、第1ブラックカバー271はブラックカバー載置部27に戻される。
上記の蛍光観察動作は、例えば、図25に示した透過照明下での細胞凝集塊の撮像の後に、引き続いて実行させることができる。ここでは、第1ブラックカバー271がマイクロプレート90に被せられる例を示したが、第2ブラックカバー272をディッシュ60に被せるルーチンを追加しても良い。
以上説明した通りの本実施形態の移動装置1によれば、シリンダチップ70のロッド部35への装着、シリンダチップ70によるディッシュ60からの細胞凝集塊の吸引、当該細胞凝集塊のマイクロプレート90への吐出、及び、チップ廃棄部28へのシリンダチップ70の廃棄までの一連の作業を、制御部15による制御下で自動化することができる。従って、細胞凝集塊の移動作業効率を格段に高めることができる。
また、上記一連の作業において、ヘッドユニット30は経路X1又は経路X2上を左方から右方の一方向に移動するものであり、このような移動経路上に、チップストック部24、細胞選別部23、細胞移載部26及びチップ廃棄部28の順に、左方から右方に向けて基台12に組み付けられている。これは、上述の一連の作業におけるヘッドユニット30の移動量を最小限に抑制できるレイアウトであり、従ってタクトタイムを短縮することができる。
なお、上述の細胞移動ライン20のレイアウトは一例であり、種々のレイアウト変更が可能である。図30〜図32に、変形例に係る細胞移動ラインのレイアウトを示す。図30の細胞移動ライン20Aは、対象物ストック部21に細胞選別部23を隣接させ、分注チップストック部22及びチップストック部24が、対象物ストック部21の左隣に配置されている点で、図4の細胞移動ライン20とは異なる。細胞移動ライン20Aのレイアウトは、シリンダチップ70の交換頻度が少ない場合に適したレイアウトであり、当該レイアウトによれば、分注チップ80からチップストック部24への液垂れの問題が生じない利点もある。
図31に示す細胞移動ライン20Bは、分注チップストック部22がチップストック部24に並列に配置されている点で、図4の細胞移動ライン20とは異なる。つまり、分注チップストック部22も、細胞選別部23に隣接させたレイアウトである。細胞移動ライン20Bのレイアウトは、分注チップ80の交換頻度が高い場合に有利なレイアウトである。
図32に示す細胞移動ライン20Cは、第1ブラックカバー271が細胞移載部26の手前に、第2ブラックカバー272が細胞選別部23の手前に、それぞれ配置されている点で、図4の細胞移動ライン20とは異なる。細胞移動ライン20Cのレイアウトによれば、ブラックカバー載置部27の幅の分だけレインの左右幅を縮小できるので、ヘッドユニット30の移動距離を短縮できる利点がある。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一の局面に係る対象物の移動装置は、基台と、上下動が可能なロッドを備え、前記基台の上方において所定の移動経路に沿って移動するヘッド部と、上面が開口し、移動対象物を貯留する第1容器部と、上面が開口し、前記移動対象物を受け入れる第2容器部と、前記ロッドに対して装着され、前記ロッドの上下動により前記移動対象物の吸引と吸引した前記移動対象物の吐出とを行うチップと、前記第1容器部及び前記第2容器部の少なくとも一方と、前記ロッドに装着された前記チップとを撮像可能であって、前記基台の下方において移動可能な撮像部と、前記ロッドの上下動及び前記ヘッド部の移動動作と、前記撮像部の移動動作とを制御する制御部と、を備え、前記制御部が行う制御は、前記ヘッド部を前記第1容器部上に移動させ、前記第1容器部に貯留された前記移動対象物を前記チップ内に吸引させる第1制御、前記ヘッド部を前記第2容器部上に移動させ、前記チップ内の前記移動対象物を前記第2容器部に吐出させる第2制御、及び、前記撮像部を、前記第1容器部及び前記第2容器部の少なくとも一方を撮像する第1位置と、前記ロッドに装着された前記チップを撮像する第2位置との間で移動させる第3制御、を含む。
上記の対象物の移動装置において、前記制御部は、前記撮像部による前記チップの前記撮像の動作によって得られる情報に基づいて、前記チップの装着位置情報を求める位置補正部を含むことが望ましい。
この場合、前記チップは、前記移動対象物の吸引及び吐出のための吸引口を備え、前記位置補正部は、前記撮像部が取得した前記チップの画像に対する画像処理で得られる前記吸引口の水平方向の位置情報と、前記撮像部のフォーカシング動作により定まる前記吸引口の上下方向の焦点位置情報とから、前記吸引口の座標位置を求めることが望ましい。
上記の対象物の移動装置において、前記制御部は、前記第3制御によって前記撮像部を前記第2位置へ移動させた後、前記ロッドに装着された前記チップを上下方向に所定のピッチで移動させ、その移動の度に前記撮像部に前記チップの画像を撮像させることが望ましい。
この場合、前記制御部は、前記移動の度に撮像された複数枚の画像のうち、最もコントラストが高い画像を合焦画像として選択し、当該合焦画像が得られたときの焦点位置情報に基づいて、前記チップの座標位置を求めることが望ましい。
上記の移動装置において、さらに、前記チップを、前記ロッドに対して装着可能な状態で複数個保持するチップストック部と、前記第2位置に配置され、前記ロッドに装着された前記チップを撮像する位置を提供するチップ撮像部と、を備え、前記第2位置は、前記チップストック部と前記第1容器部との間であることが望ましい。
本発明の他の局面に係る対象物の移動装置は、基台と、上下動が可能なロッドを備え、前記基台の上方において所定の移動経路に沿って移動するヘッド部と、上面が開口し、移動対象物を貯留する第1容器部と、上面が開口し、前記移動対象物を受け入れる第2容器部と、前記ロッドに対して装着及び取り外しが可能であり、前記ロッドの上下動により前記移動対象物の吸引と吸引した前記移動対象物の吐出とを行うチップを、前記ロッドに対して装着可能な状態で複数個保持するチップストック部と、前記移動対象物の前記吸引及び吐出を終え、前記ロッドから取り外された前記チップを回収するチップ廃棄部と、前記ロッドの上下動及び前記ヘッド部の移動動作を制御する制御部と、を備え、前記第1容器部、前記第2容器部、前記チップストック部及び前記チップ廃棄部は、前記ヘッド部の移動経路に沿うように前記基台に対して組み付けられ、前記制御部が行う制御は、順次行われる、前記ヘッド部を前記チップストック部上に移動させ、前記ロッドに前記チップを装着させる第1制御、前記ヘッド部を前記第1容器部上に移動させ、前記第1容器部に貯留された前記移動対象物を前記チップ内に吸引させる第2制御、前記ヘッド部を前記第2容器部上に移動させ、前記チップ内の前記移動対象物を前記第2容器部に吐出させる第3制御、及び、前記ヘッド部を前記チップ廃棄部上に移動させ、前記チップを前記ロッドから取り外し、前記チップ廃棄部に廃棄させる第4制御、を含む。
上記構成によれば、チップのロッドへの装着、チップによる第1容器部からの移動対象物の吸引、移動対象物の第2容器部への吐出、及び、チップ廃棄部へのチップの廃棄までの一連の作業を、制御部による制御下で自動化することができる。従って、移動対象物の移動作業効率を格段に高めることができる。
上記の移動装置において、前記移動経路は、一方向に向かうものであり、前記一方向の上流側から下流側に向けて、前記チップストック部、前記第1容器部、前記第2容器部及び前記チップ廃棄部の順に、これらが前記基台に組み付けられていることが望ましい。
この構成によれば、上述の一連の作業におけるヘッドの移動量を最小限に抑制できるレイアウトとなるので、タクトタイムを短縮することができる。
上記の移動装置において、前記第1制御の後、前記ロッドに装着された前記チップを撮像するチップ撮像装置をさらに備え、前記制御部は、前記撮像の動作によって得られる情報に基づいて、前記チップの装着位置情報を求める位置補正部を含むことが望ましい。
この構成によれば、チップ撮像装置の撮像結果からチップのロッドへの装着状態を把握し、装着ズレが生じている場合には、位置補正部により位置補正データ(装着位置情報)を求めることができる。従って、前記吸引若しくは前記吐出の際におけるチップの位置決めを、高精度に行わせることができる。
上記の移動装置において、前記基台、前記第1容器部及び前記第2容器部は透光性の部材で形成され、前記対象物の移動装置は、さらに、光源を有し、前記基台の上方において、少なくとも前記第1容器部と前記第2容器部との間を移動可能に配置され、前記第1容器部又は前記第2容器部を照明する照明部と、撮像部を有し、前記基台の下方において、少なくとも前記第1容器部と前記第2容器部との間を移動可能に配置され、前記照明部で照明された前記第1容器部又は前記第2容器部の画像を取得する対象物観察装置と、を備えることが望ましい。
この構成によれば、照明部による照明下において、基台の下方から対象物観察装置によって、第1容器部又は第2容器部の画像を撮像することができる。従って、第1容器部又は第2容器部に収容された状態の移動対象物の観察画像を撮像することが可能となる。
この場合、上記移動装置は、前記ヘッド部を移動させる第1駆動機構と、前記照明部を移動させる第2駆動機構と、をさらに備え、前記制御部は、前記第1駆動機構及び第2駆動機構の動作を制御する駆動制御部を備え、前記駆動制御部は、前記第2制御において、前記第1駆動機構により前記ヘッド部を前記第1容器部上に配置する一方、前記第2駆動機構により前記照明部を前記第2容器部上に配置し、前記第3制御において、前記第1駆動機構により前記ヘッド部を前記第1容器部上から前記第2容器部上に移動させる一方、前記第2駆動機構により前記照明部を前記第2容器部上から前記第1容器部上に移動させることが望ましい。
この構成によれば、共に基台の上方に配置されている前記ヘッド部と前記照明部とが、互いに入れ違いになるように移動される。従って、両者を干渉させることなく、また、一方が他方の移動待ちとなるという問題も生じさせることなく、上記第1〜第4制御を実行させることができる。
上記の移動装置において、前記対象物観察装置を移動させる第3駆動機構をさらに備え、前記駆動制御部は、前記第3駆動機構の動作も制御するものであって、前記駆動制御部は、前記第2制御において、前記第3駆動機構により前記対象物観察装置を前記第2容器部下に配置し、前記第3制御において、前記第3駆動機構により前記対象物観察装置を前記第2容器部下から前記第1容器部下に移動させることが望ましい。
この構成によれば、第1容器部においてチップによる吸引動作が実行されている傍らで、第2容器部に収容されている移動対象物を、若しくは、第2容器部においてチップによる吐出動作が実行されている傍らで、第1容器部に収容されている移動対象物を、それぞれ対象物観察装置によって撮像させることができる。従って、当該構成は、タクトタイムのさらなる短縮に貢献することができる。
上記の移動装置において、前記基台上に載置され、前記第1容器部又は前記第2容器部を上方から覆い隠すことが可能なブラックカバーをさらに備え、前記ヘッド部は、前記ブラックカバーの吸着と、該吸着の解除とが可能な吸盤ヘッドをさらに備えることが望ましい。
この構成によれば、吸盤ヘッド付きのヘッド部により、必要時に第1容器部又は第2容器部をブラックカバーで覆い隠すことができる。従って、当該移動装置に、例えば移動対象物の蛍光観察等を用意に実行できる機能を付与することができる。
上記の移動装置において、前記移動対象物は、液体中に分散されており、上面が開口し、前記移動対象物を含む液体を貯留する第3容器部と、前記ヘッド部に備えられ、吸引力及び吐出力を発生可能なノズルと、前記ノズルに対して装着及び取り外しが可能であり、前記吸引力が与えられることで前記移動対象物を含む液体を吸引する一方、前記吐出力を与えられることで吸引した前記液体を吐出する分注チップを、前記ノズルに対して装着可能な状態で複数個保持する分注チップストック部と、をさらに備え、前記制御部は、前記第1制御の前に、順次、前記ヘッド部を前記分注チップストック部上に移動させ、前記ノズルに前記分注チップを装着させる制御と、前記ヘッド部を前記第3容器部上に移動させ、前記第3容器部に貯留された前記移動対象物を含む液体を所定の分注量だけ前記分注チップ内に吸引させる制御と、前記ヘッド部を前記第1容器部上に移動させ、前記分注チップ内の前記液体を前記第1容器部に吐出させる制御と、前記ヘッド部を前記チップ廃棄部上に移動させ、前記分注チップを前記ノズルから取り外し、前記チップ廃棄部に廃棄させる制御と、を行うことが望ましい。
この構成によれば、移動対象物の分散液体を、第3容器から第1容器へ分注するための一連の作業を自動化することができる。すなわち、分注チップのノズルへの装着、分注チップによる第3容器からの前記分散液体の吸引、前記分散液体の第2容器部への吐出、及び、チップ廃棄部への分注チップの廃棄までの一連の作業を、制御部による制御下で自動化することができる。
上記の移動装置において、前記対象物が、生体由来の細胞であることが望ましい。とりわけ、前記対象物が、生体由来の細胞凝集塊であることが望ましい。
以上の通り、本発明によれば、対象物を、一の容器から他の容器へ移動させる移動装置において、作業効率の良い前記移動を実現させることができる。