JP2016215116A - 微生物担体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】湿熱融着性繊維の融着により繊維が固定された不織繊維構造体を含む微生物担体であって、湿熱融着性繊維がエチレン−ビニルアルコール系共重合体(a)を含む微生物担体。湿熱融着性繊維において、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(a)とは異なる繊維形成性重合体(b)を含んでいてもよく、鞘成分が主に前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体(a)を含み、芯成分が主に前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体(a)とは異なる前記繊維形成性重合体(b)を含む芯鞘型複合繊維であってもよい。
【選択図】なし
Description
本発明における湿熱融着性繊維は、少なくとも湿熱融着性樹脂を含む繊維で構成される。この湿熱融着性樹脂は、熱水や蒸気によって容易に実現可能な温度において、流動又は容易に変形して接着機能を発現可能であればよい。この湿熱融着性樹脂としては、たとえば熱水や蒸気(たとえば、80〜220℃、好ましくは80〜120℃、より好ましくは95〜100℃)で軟化して自己融着又は他の繊維に融着可能な熱可塑性樹脂、たとえば、セルロース系樹脂(メチルセルロースなどのC1−3アルキルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのヒドロキシC1−3アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシC1−3アルキルセルロース又はその塩などを含む樹脂)、ポリアルキレングリコール樹脂(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリC2−4アルキレンオキサイドなどを含む樹脂)、ポリビニル系樹脂(ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニルアルコール系重合体、ポリビニルアセタールなどを含む樹脂)、アクリル系重合体樹脂およびその塩[(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドなどのアクリル系単量体単位を含む重合体又はそのアルカリ金属塩などを含む樹脂]、変性ビニル系共重合体樹脂(イソブチレン、スチレン、エチレン、ビニルエーテルなどのビニル系単量体単位と、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物との共重合体又はその塩などを含む樹脂)、親水性の置換基を導入した重合体樹脂(スルホン酸基やカルボキシル基、ヒドロキシル基などを導入したポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン又はその塩などを含む樹脂)、脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸系樹脂など)などが挙げられる。さらに、ポリオレフィン系樹脂、全芳香族ポリエステル系樹脂、半芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー又はゴム(スチレン系エラストマーなど)などのうち、熱水で軟化して融着機能を発現可能な樹脂も湿熱融着性樹脂に含まれる。
このような湿熱融着性繊維または少なくとも湿熱融着性樹脂を含む複合繊維をウェブ化し、ついで繊維固定し、目的の不織繊維構造体(たとえば微生物担体)とする。ウェブ化は、公知の方法が採用できる。たとえば、スパンボンド法、メルトブロー法のような直接法を用いてもよいし、ステープル繊維を用いてカード法、エアレイ法などの乾式法を用いてもよい。ステープル繊維ウェブとしては、ランダムウェブ、セミランダムウェブ、パラレルウェブ、クロスラップウェブ等が好ましい。
この不織繊維構造体は、湿熱融着性繊維を含む繊維を用いたウェブに熱水や蒸気、たとえば飽和水蒸気または過熱水蒸気を作用させ、湿熱融着性樹脂の乾熱融点以下の温度にて繊維間を湿熱融着させることにより得られる。ウェブに作用させる熱水・蒸気の温度は、目的とする繊維融着が実現できれば特に限定はなく、使用する繊維の材質や形態により設定すればよいが、80〜220℃の範囲が好ましい。ウェブに作用させる熱水・蒸気のウェブとの接触時間は、必要な繊維接着率が得られる時間であれば特に限定はないが、0.00001秒〜10分の範囲が好ましい。
本発明の微生物担体は本発明の不織繊維構造体を含んでいるため、微生物の固着性、流動性、形態保持性に優れる。特に本発明の不織繊維構造体内には、連続した小さな空隙が存在しているので、たとえば活性汚泥などの微生物が固着することができる。微生物担体に用いる不織繊維構造体の見かけ密度は、0.03〜0.3g/cm3が好ましく、より好ましくは、0.05〜0.20g/cm3であり、さらに好ましくは0.07〜0.15g/cm3である。見かけ密度が0.03g/cm3未満の場合は、空隙率が大きく微生物の固着は容易になるものの、湿熱融着による接着点の数が少なくなるため、不織繊維構造体は充分な接着強度を得ることが難しくなる。見かけ密度が0.3g/cm3を超えると、不織繊維構造体の接着強度は充分になるが、不織繊維構造体中の空隙の大きさが小さくなり不織繊維構造体への微生物の固着が難しくなる。
次に、本発明の微生物担体に用いる不織繊維構造体の製造法について説明する。すでに述べた方法により形成されたウェブは、ベルトコンベアにより次工程へ送られ、次いで蒸気流、たとえば飽和水蒸気または過熱水蒸気(高圧スチーム)流に晒されることで、不織繊維構造体が得られる。ここで使用するベルトコンベアは、基本的には加工に用いるウェブをその形態を乱すことなく運搬できるものであれば特に限定はないが、エンドレスコンベアが好適に用いられる。一般的な単独のベルトコンベアであってもよいし、必要に応じてもう一台のベルトコンベアを用意し、両コンベアの間にウェブを挟むようにして運搬する方法でもよい。このようにすることでウェブを処理する際に、処理に用いる水、蒸気またはコンベアの振動などの外力により運搬してきたウェブの形態が変形するのを抑える。また、処理後の構造体の見かけ密度や厚さをこのベルトの間隔を調整することにより制御することも可能となる。
JIS L1913に準じて測定した。
JIS L1913に準じて厚さを測定し、この値と(1)の方法で測定した目付とから見かけ密度を算出した。
JIS K7112に準拠して比重を測定した。
不織繊維構造体を平面に対して垂直(厚み方向)に切断する。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、この不織繊維構造体断面を100倍に拡大した写真を撮影し、そこに見出される繊維の終端面の数(以下、全繊維断面数と略称する。)に対して、2本以上の繊維が接着した繊維の断面数の割合を以下の式に基づいて百分率で表した。
繊維接着率(%)=(2本以上の繊維が接着した繊維の断面数)/(全繊維断面数)×100
繊維同士が接触する部分には、接着することなく接触している部分と、接着している部分とがある。不織繊維構造体を切断すると、単に接触している部分の繊維の終端面は分離し、単に接触している部分と、接着した部分とを判別することができた。なお、写真上の繊維の終端面の数はすべて計数した。全繊維断面数が100以下の場合は、観察する断面写真をさらに追加して、全繊維断面数が100を超えるようにした。
アンモニア態窒素及び亜硝酸態窒素を含有した嫌気性合成排液の入った500mLの遮光性容器に、5mm角に裁断した微生物担体50gと予め集積培養したアナモックス菌を入れ、溶液を35℃で保温した。遮光性容器内の合成排液の交換を、1日に1回の間隔で行った。1ヶ月後に、微生物担体を取り出した後に、カッターで微生物担体を2分割し、微生物担体中心部へのアナモックス菌の固着状態を目視で確認し、下記の2段階にて評価した。
A;微生物担体中央部までアナモックス菌の付着が形成されており、微生物担体が赤褐色になっている。
B;微生物担体中央部までアナモックス菌の付着が形成されていない。
5mm角に裁断した微生物担体50gを、5Lの水を入れたアクリル製の水槽(底面;20cm×20cm、高さ;30cm)に浸漬。水槽の下部よりエアーポンプ(「NPA−020」ニッソウ製)で0.5L/minの吐出量でばっ気し、微生物担体の流動状態を目視で確認し、下記の2段階にて評価した。
A;水面に浮かんでいる微生物担体や水槽の底に沈んでいる微生物担体が、10%未満。
B;水面に浮かんでいる微生物担体や水槽の底に沈んでいる微生物担体が、10%以上。
5mm角に裁断した微生物担体50gを、5Lの水を入れたアクリル製の水槽(底面;20cm×20cm、高さ;30cm)に浸漬。水槽の下部よりエアーポンプ(「NPA−020」ニッソウ製)で0.5L/minの吐出量でばっ気。1時間後に、微生物担体を取り出し、単体の形態変化を目視確認し、下記の2段階にて評価した。
A;繊維脱落や層間剥離などの形態損傷がない微生物担体が、90%以上。
B;繊維脱落や層間剥離などの形態損傷がない微生物担体が、90%未満。
湿熱性融着性繊維として、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール系共重合体(エチレン含有率44モル%、ケン化度98.4モル%、芯鞘比=50/50)である芯鞘型複合ステープル繊維(クラレ社製、「ソフィスタ」、3.3dtex、51mm長、捲縮数21個/インチ、捲縮率13.5%)を準備した。上記芯鞘型複合ステープル繊維を用いて、公知のカード法により目付約500g/m2のウェブを作製した。このウェブを、50メッシュ、幅500mmのステンレス製エンドレス金網を装備したベルトコンベアに移送した。なお、該ベルトコンベアの金網の上部には同じ金網が装備されており、それぞれが同じ速度で同方向に回転し、これら両金網の間隔を任意に調整可能なベルトコンベアを使用した。次いで、ベルトコンベアに備えられた蒸気噴射装置へウェブを導入し、該装置から0.4MPaの水蒸気をウェブに対し垂直に噴出して蒸気処理を施し、不織繊維構造体を得た。該蒸気噴射装置は、一方のコンベア内に、コンベアネットを介して水蒸気をウェブに向かって吹き付けるようにノズルが設置され、もう一方のコンベアにサクション装置が設置されていた。また、この噴射装置のウェブ進行方向下流側には、ノズルとサクション装置の配置が逆転した組合せである噴射装置がもう一つ設置されていた。なお、蒸気噴射ノズルの孔径は0.3mmであり、該ノズルがコンベア幅方向に沿って1mmピッチで1列に並べられたものを使用した。加工速度は3m/分であり、ノズルとサクション側のコンベアベルトとの距離は10mmとした。得られた不織繊維構造体をカッターで5mm角にカットし、微生物担体として性能評価をおこなった。得られた微生物担体は、微生物の固着性が良好であり、且つ流動性、形態保持性に優れたものであった。結果を表1に示す。
ウェブの目付を1,000g/m2にする以外は、実施例1と同様に、微生物担体を作成し、性能評価をおこなった。得られた微生物担体は、微生物の固着性が良好であり、且つ流動性、形態保持性に優れたものであった。結果を表1に示す。
ウェブの目付を2,500g/m2にする以外は、実施例1と同様に、微生物担体を作成し、性能評価をおこなった。得られた微生物担体は、微生物の固着性が良好であり、且つ流動性、形態保持性に優れたものであった。結果を表1に示す。
湿熱融着性繊維を70質量部、非湿熱融着性繊維を30質量部の比率にし、非湿熱融着性繊維として、ポリエステル繊維(東レ社製、「テトロンT471」1.7dTex、5mm)を使用する以外は、実施例2と同様に、微生物担体を作成し、性能評価をおこなった。得られた微生物担体は、微生物の固着性が良好であり、且つ流動性、形態保持性に優れたものであった。結果を表1に示す。
湿熱融着性繊維の芯成分にポリプロピレン(プライムポリマー社製、Y2005GP)を使用する以外は、実施例2と同様に、微生物担体を作成し、性能評価をおこなった。得られた微生物担体は、微生物の固着性が良好であり、且つ流動性、形態保持性に優れたものであった。結果を表1に示す。
ウェブの目付を200g/m2にする以外は、実施例1と同様に、微生物担体を作成し、性能評価をおこなった。得られた微生物担体は、微生物の固着性、流動性は良好であったものの、微生物担体の接着強度が充分でないために、繊維の脱落や剥離が多く、形態保持性が不良であった。結果を表1に示す。
ウェブの目付を6,000g/m2にする以外は、実施例1と同様に、微生物担体を作成し、性能評価をおこなった。得られた微生物担体は、不織繊維構造体の流動性、形態保持性は良好であったものの、微生物担体の繊維間の空隙が緻密になりすぎたため、微生物が充分に固着できなかった。結果を表1に示す。
ウェブを水流絡合(スパンレース法)により作成する以外は、実施例2と同様に、微生物担体を作成し、性能評価をおこなった。得られた微生物担体は、微生物の固着性、流動性は良好であった。しかし、繊維間に融着構造を有していないため、繊維の脱落や剥離が多く、微生物担体の形態保持性が不良であった。結果を表1に示す。
ウェブの融着方法をエアースルー法(温度140℃)にする以外は、実施例2と同様に、微生物担体を作成し、性能評価をおこなった。得られた微生物担体は、微生物の固着性、流動性は良好であったものの、エアースルーによるウェブ内への伝熱速度が遅いため、微生物担体内部の繊維間に融着構造が十分に構築できていないため、繊維の脱落や剥離が多く、微生物担体の形態保持性が不良であった。結果を表1に示す。
湿熱融着性繊維を50質量部、非湿熱融着性繊維を50質量部の繊維比率にし、非湿熱融着性繊維として、ポリエステル繊維(東レ社製、「テトロンT471」1.7dTex、5mm)を使用する以外は、実施例2と同様に、微生物担体を作成し、性能評価をおこなった。得られた微生物担体は、微生物の固着性、流動性は良好であったものの、微生物担体の接着強度が充分でないために、繊維の脱落や剥離が多く、微生物担体の形態保持性が不良であった。結果を表1に示す。
湿熱融着性繊維の芯成分にポリプロピレン(プライムポリマー社製、Y2005GP)、湿熱融着性繊維の鞘成分にポリエチレン(日本ポリエチレン社製、HE490)を使用し、ウェブの融着方法をエアースルー法(温度140℃)にする以外は、実施例2と同様に、微生物担体を作成し、性能評価をおこなった。得られた微生物担体は、微生物の固着性が良好であったものの、多くの微生物担体が水面に浮遊し有効な流動が行われなかった。また、エアースルーによる伝熱速度が遅く、微生物担体内部の繊維間に融着構造が十分に構築されていないため、繊維の脱落や剥離が多く、不織繊維構造体の形態保持性が不良であった。結果を表1に示す。
Claims (11)
- 湿熱融着性繊維の融着により繊維が固定された不織繊維構造体を含む微生物担体であって、前記湿熱融着性繊維がエチレン−ビニルアルコール系共重合体(a)を含み、繊維接着率が10%以上80%以下である、微生物担体。
- 前記湿熱融着性繊維を70質量%以上含む、請求項1に記載の微生物担体。
- 前記不織繊維構造体の見かけ密度が0.03g/cm3以上0.3g/cm3以下である、請求項1に記載の微生物担体。
- 前記不織繊維構造体の比重が1.0g/cm3以上である、請求項1に記載の微生物担体。
- 前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(a)を構成する単量体単位に対する前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(a)中のエチレン単位の含有率が5モル%以上60モル%以下である、請求項1に記載の微生物担体。
- 前記湿熱融着性繊維が前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体(a)とは異なる繊維形成性重合体(b)を含む、請求項1または請求項2に記載の微生物担体。
- 前記湿熱融着性繊維が、芯鞘型複合繊維であり、鞘成分が主に前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体(a)を含み、芯成分が主に前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体(a)とは異なる前記繊維形成性重合体(b)を含む、請求項6に記載の微生物担体。
- 前記湿熱融着性繊維において、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(a)と、前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体(a)とは異なる繊維形成性重合体(b)との質量比(a)/(b)が90/10〜10/90である、請求項6または請求項7に記載の微生物担体。
- 前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体(a)とは異なる前記繊維形成性重合体(b)が、ポリエステル系重合体である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の微生物担体。
- 前記ポリエステル系重合体がポリエチレンテレフタレートである、請求項9に記載の微生物担体。
- 流動床水処理に使用される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の微生物担体。
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