JP5188847B2 - 加湿器エレメント用基材 - Google Patents

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Description

本発明は、不織繊維構造を有する加湿器エレメント用基材に関する。
一般の空調システムは、空気の温度とともに湿度をコントロールすることで快適な生活環境を作り出している。この加湿方法としては、水槽に溜められた水の中で超音波を発振することで水を気化させ、これを気流で送り出す水噴霧式、あるいは水槽内にヒーターを入れて直接加熱することにより蒸気を発生させる蒸気式、あるいは加湿材に水を含ませるとともにこの廻りに気流をあてて水分を気化させることで加湿する気化式などがある。
また、近年では、生活環境の変化や広い室内空間の確保を目的として空調機の小型化や各種加湿器の商品化により、加湿エレメントにも各種の複雑な形状が要求され、これらに対応できるよう成形性や形態安定性が必要になることがある。
これらの加湿方法のうち、気化式は、超音波発生や加熱のためのエネルギーを必要としないため消費電力が少なくて済む、また水中の不純物の放出もほとんど無いというメリットがある。加湿器エレメント用基材は、液体を吸収して一時的に保持(又は貯蔵)するとともに、保持した液体を放出する役割を必要とされ、一般的に、不織布やセラミックペーパーなどが使用されている。このような気化式加湿器の加湿エレメントとして、所定の繊維からなるシート材を波状に成形し、これを蜂の巣状に組み上げ、できた空洞部通気する事で加湿する加湿エレメントが提案されている(特許文献1)。また、ポリエステルやアクリル樹脂等の吸水性のある合成樹脂を用いた不織布からなる長方形のシートに多数の空隙を形成するとともに交互に折り曲げた加湿エレメントを用いた加湿器が提案されている(特許文献2)。しかし、これらの材料で構成された加湿器エレメント用基材は、通常薄い上に硬度が低すぎて、形態安定性が充分でないため、強度を確保するために折り曲げ加工などが必須となる。このため加湿エレメント全体が大きくなってしまい装置の小型化などのニーズに応えることが困難である。


特開2001−59635号公報 特開2008−08498号公報
従って、本発明の目的は、吸液性、保液性及び放湿性のバランスに優れ、かつ形態安定性も高い加湿器エレメント用基材を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、繊維が湿熱接着性繊維により接着された不織繊維構造を有する適度な吸水性と平衡水分率を有する加湿器エレメント用基材が、吸液性、保液性及び放湿性のバランスに優れ、かつ形態安定性も向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の加湿器エレメント用基材は、湿熱接着性を含み、かつ不織繊維構造を有する加湿器エレメント用基材であって、前記湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定されているとともに、600秒間で3cm以上の吸水性(バイレック法)と5%以下の平衡水分率、および飽和状態に水を吸収させたときの寸法膨潤率が0.0001〜4%を有する。
本発明では、繊維が湿熱接着性繊維により適度に接着された低密度の不織繊維構造を有するため、液体の吸液性、保液性及び放湿性のバランスに優れ、かつ形態安定性(適度な剛性)も保持できる。すなわち、湿熱接着性繊維は吸液性、保液性が高いにも拘わらず、液体の吸収による膨張率が低いので放湿性も高い。また、形態安定性が高いため、一定の剛性を有している。更に成形性が高く、例えば、二次成形などにより、大型の形状に加工したり、小型で複雑な形状に加工するのが容易である。
本発明の加湿器エレメント用基材は、湿熱接着性繊維の融着によって繊維が固定されているので、湿熱接着性繊維を含んだウェブを湿熱条件下で加熱することで湿熱接着性繊維の融点以下で融着できる。言い換えればより耐熱性の高い加湿器エレメント用基材を容易に製造できる。また湿熱条件では乾熱条件よりも高い熱量をウェブに与えることができるだけでなく、例えば熱プレスなどの方法に比べて熱がウェブの内部まで均等に行き渡るので、不織繊維構造の内部において、繊維を均一に融着でき、特に嵩高い不織繊維構造の形成において効果が顕著である。このため、機械的特性及び耐久性にも優れ、例えば、軽量かつ低密度であっても高い曲げ応力を有している。この加湿器エレメント用基材は、実質的に繊維のみで構成でき、ケミカルバインダーや特殊薬剤を添加する必要がないため、有害成分(ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物など)を発生させる成分を用いることなく、簡便に製造できる。
また、この加湿器エレメント用基材は、JIS−L1907に準じた吸水速度が10秒以下であり、吸水率が100質量%以上であり、吸水による寸法膨張率が4%以下であってもよい。前記湿熱接着性繊維はエチレン−ビニルアルコール系共重合体を含有していてもよい。本発明の加湿器エレメント用基材は、湿熱接着性繊維が面方向に沿って略平行に配向した板状成形体で構成されていてもよい。
本発明の加湿器エレメント用基材は、湿熱接着性繊維を含む繊維をウェブ化する工程と、生成した繊維ウェブを高温水蒸気で加熱処理して繊維を融着し、不織繊維構造を有する成形体を得る工程とを含む製造方法で製造することができる。
[加湿器エレメント用基材]
本発明の加湿器エレメント用基材は、湿熱接着性繊維を含み、かつ不織繊維構造を有している。特に、本発明の加湿器エレメント用基材は、前記湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された成形体で構成され、繊維構造に特有の高い吸液性及び保液性だけでなく、不織繊維構造を構成する繊維の配列と、この繊維同士の接着状態を所定の範囲とすることにより、通常の不織布では得られない「曲げ挙動(高い曲げ応力を有し、また最大曲げ応力を示す地点を過ぎてさらに曲げても応力を保持するとともに、応力を解除すると復元しようとする挙動)」と「軽量性」と「表面硬さ(表面に荷重をかけて厚み方向に力を付与しても容易に変形し難い特性)」とを兼ね備え、さらに折れ難く、加湿器エレメント用基材として重要な吸液性、保液性、放湿性及び形態保持性を同時に確保している。
このような加湿器エレメント用基材は、後述するように、前記湿熱接着性繊維を含むウェブに高温(過熱又は加熱)水蒸気を作用させて、湿熱接着性繊維の融点以下の温度で接着作用を発現し、繊維同士を部分的に接着させることにより得られる。すなわち、単繊維及び束状集束繊維同士を湿熱下、適度に小さな空隙を保持しながら、いわば「スクラム」を組むように点接着又は部分接着させて得られる。
(湿熱接着性繊維)
湿熱接着性繊維の含量は加湿器エレメント用基材の種類などに応じて、10〜100重量%の範囲から選択できる。硬質な加湿器エレメント用基材が必要な場合には、湿熱接着性繊維の割合が多い方が好ましく、80重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。湿熱接着性繊維の割合がこの範囲にあると、高い表面硬さと曲げ挙動を確保できる成形体が得られる。
湿熱接着性繊維は、少なくとも湿熱接着性樹脂で構成されている。湿熱接着性樹脂は、高温水蒸気によって容易に実現可能な温度において、流動又は容易に変形して接着機能を発現可能であればよい。具体的には、熱水(例えば、80〜120℃、特に95〜100℃程度)で軟化して自己接着又は他の繊維に接着可能な熱可塑性樹脂、例えば、セルロース系樹脂(メチルセルロースなどのC1-3アルキルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのヒドロキシC1-3アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシC1-3アルキルセルロース又はその塩など)、ポリアルキレングリコール樹脂(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリC2-4アルキレンオキサイドなど)、ポリビニル系樹脂(ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニルアルコール系重合体、ポリビニルアセタールなど)、アクリル系共重合体およびそのアルカリ金属塩[(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドなどのアクリル系単量体で構成された単位を含む共重合体又はその塩など]、変性ビニル系共重合体(イソブチレン、スチレン、エチレン、ビニルエーテルなどのビニル系単量体と、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物との共重合体又はその塩など)、親水性の置換基を導入したポリマー(スルホン酸基やカルボキシル基、ヒドロキシル基などを導入したポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン又はその塩など)、脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸系樹脂など)などが挙げられる。さらに、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー又はゴム(スチレン系エラストマーなど)などのうち、熱水(高温水蒸気)の温度で軟化して接着機能を発現可能な樹脂も含まれる。
これらの湿熱接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。湿熱接着性樹脂は、通常、親水性又は水溶性高分子で構成される。これらの湿熱接着性樹脂のうち、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系重合体、ポリ乳酸などのポリ乳酸系樹脂、(メタ)アクリルアミド単位を含む(メタ)アクリル系共重合体、特に、エチレンやプロピレンなどのα−C2-10オレフィン単位を含むビニルアルコール系重合体、特に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が好ましい。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体において、エチレン単位の含有量(共重合割合)は、例えば、10〜60モル%、好ましくは20〜55モル%、さらに好ましくは30〜50モル%程度である。エチレン単位がこの範囲にあることにより、湿熱接着性を有するが、熱水溶解性はないという特異な性質が得られる。エチレン単位の割合が少なすぎると、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が、低温の蒸気(水)で容易に膨潤又はゲル化し、水に一度濡れただけで形態が変化し易い。一方、エチレン単位の割合が多すぎると、吸湿性が低下し、湿熱による繊維融着が発現し難くなるため、実用性のある強度の確保が困難となる。エチレン単位の割合が、特に30〜50モル%の範囲にあると、シート又は板状への加工性が特に優れる。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体におけるビニルアルコール単位のケン化度は、例えば、90〜99.99モル%程度であり、好ましくは95〜99.98モル%、さらに好ましくは96〜99.97モル%程度である。ケン化度が小さすぎると、熱安定性が低下し、熱分解やゲル化によって安定性が低下する。一方、ケン化度が大きすぎると、繊維自体の製造が困難となる。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度は、必要に応じて選択できるが、例えば、200〜2500、好ましくは300〜2000、さらに好ましくは400〜1500程度である。重合度がこの範囲にあると、紡糸性と湿熱接着性とのバランスに
優れる。
湿熱接着性繊維の横断面形状(繊維の長さ方向に垂直な断面形状)は、一般的な中実断面形状である丸型断面や異型断面[偏平状、楕円状、多角形状、3〜14葉状、T字状、H字状、V字状、ドッグボーン(I字状)など]に限定されず、中空断面状などであってもよい。湿熱接着性繊維は、少なくとも湿熱接着性樹脂を含む複数の樹脂で構成された複合繊維であってもよい。複合繊維は、湿熱接着性樹脂を少なくとも繊維表面の一部に有していればよいが、接着性の点から、湿熱接着性樹脂が表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して占めるのが好ましい。
湿熱接着性繊維が表面を占める複合繊維の横断面構造としては、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型又は多層貼合型、放射状貼合型、ランダム複合型などが挙げられる。これらの横断面構造のうち、接着性が高い構造である点から、湿熱接着性樹脂が全表面を長さ方向に連続して占める構造である芯鞘型構造(すなわち、鞘部が湿熱接着性樹脂で構成された芯鞘型構造)が好ましい。
複合繊維の場合、湿熱接着性樹脂同士を組み合わせてもよいが、非湿熱接着性樹脂と組み合わせてもよい。非湿熱接着性樹脂としては、非水溶性又は疎水性樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの非湿熱接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの非湿熱接着性樹脂のうち、耐熱性及び寸法安定性の点から、融点が湿熱接着性樹脂(特にエチレン−ビニルアルコール系共重合体)よりも高い樹脂、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、特に、耐熱性や繊維形成性などのバランスに優れる点から、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。
ポリエステル系樹脂としては、ポリC2−4アルキレンアリレート系樹脂などの芳香族ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、特に、PETなどのポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、エチレンテレフタレート単位の他に、他のジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など)やジオール(例えば、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど)で構成された単位を20モル%以下程度の割合で含んでいてもよい。
ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド12、ポリアミド6−12などの脂肪族ポリアミドおよびその共重合体、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから合成された半芳香族ポリアミドなどが好ましい。これらのポリアミド系樹脂にも、共重合可能な他の単位が含まれていてもよい。
湿熱接着性樹脂と非湿熱接着性樹脂(繊維形成性重合体)とで構成された複合繊維の場合、両者の割合(質量比)は、構造(例えば、芯鞘型構造)に応じて選択でき、湿熱接着性樹脂が表面に存在すれば特に限定されないが、例えば、湿熱接着性樹脂/非湿熱接着性樹脂=90/10〜10/90(例えば、60/40〜10/90)、好ましくは80/20〜15/85、さらに好ましくは60/40〜20/80程度である。湿熱接着性樹脂の割合が多すぎると、繊維の強度を確保し難く、湿熱接着性樹脂の割合が少なすぎると、繊維表面の長さ方向に連続して湿熱接着性樹脂を存在させるのが困難となり、湿熱接着性が低下する。この傾向は、湿熱接着性樹脂を非湿熱接着性繊維の表面にコートする場合
においても同様である。
湿熱接着性繊維の平均繊度は、用途に応じて、例えば、0.01〜100dtex程度の範囲から選択でき、好ましくは0.1〜50dtex、さらに好ましくは0.5〜30dtex(特に1〜10dtex)程度である。平均繊度がこの範囲にあると、繊維の強度と湿熱接着性の発現とのバランスに優れる。
湿熱接着性繊維の平均繊維長は、例えば、10〜100mm程度の範囲から選択でき、好ましくは20〜80mm、さらに好ましくは25〜75mm(特に35〜55mm)程度である。平均繊維長がこの範囲にあると、繊維が充分に絡み合うため、成形体の機械的強度が向上する。
湿熱接着性繊維の捲縮率は、例えば、1〜50%、好ましくは3〜40%、さらに好ましくは5〜30%(特に10〜20%)程度である。また、捲縮数は、例えば、1〜100個/25mm、好ましくは5〜50個/25mm、さらに好ましくは10〜30個/25mm程度である。
(他の繊維)
加湿器エレメント用基材は、さらに非湿熱接着性繊維を含んでいてもよい。非湿熱接着性繊維としては、ポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維などの芳香族ポリエステル繊維など)、ポリアミド系繊維(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族ポリアミド系繊維、半芳香族ポリアミド系繊維、ポリフェニレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミドなどの芳香族ポリアミド系繊維など)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリC2-4オレフィン繊維など)、アクリル系繊維(アクリロニトリル−塩化ビニル共重合体などのアクリロニトリル単位を有するアクリロニトリル系繊維など)、ポリビニル系繊維(ポリビニルアセタール系繊維など)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体の繊維など)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体などの繊維)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、セルロース系繊維(例えば、レーヨン繊維、アセテート繊維など)
などが挙げられる。これらの非湿熱接着性繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの非湿熱接着性繊維は、加湿器エレメントの形態や使用方法などに応じて適宜選択して使用できる。吸水性などを重視する場合には、吸湿性の高い親水性繊維、例えば、ポリビニル系繊維やセルロース系繊維、特に、セルロース系繊維を使用するのが好ましい。セルロース系繊維には、天然繊維(木綿、羊毛、絹、麻など)、半合成繊維(トリアセテート繊維などのアセテート繊維など)、再生繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル(例えば、登録商標名:「テンセル」など)など)が含まれる。これらのセルロース系繊維のうち、例えば、レーヨンなどの半合成繊維が好適に使用でき、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含む湿熱接着性繊維と組み合わせると、湿熱接着性繊維との親和性が高いため、接着性が向上し、機械的特性の高い成形体が得られる。さらに、親水性繊維を用いると、例えば、水性液体に対する保液性、吸液性および放湿性は高くなる一方で、成形性や形態保持性が低下する傾向を有する。
一方、水性液体の放湿性を重視する場合には、吸湿性の低い疎水性繊維、例えば、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、特に、諸特性のバランスに優れるポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維など)を使用するのが好ましい。これらの疎水性繊維をエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む湿熱接着性繊維と組み合わせると、疎水性及び水性液体の排液性に優れた加湿器エレメント用基材が得られる。
非湿熱接着性繊維の平均繊度及び平均繊維長は、湿熱接着性繊維と同様である。
湿熱接着性繊維と非湿熱接着性繊維との割合(質量比)も、加湿器エレメント用基材の種類などに応じて、湿熱接着性繊維/非湿熱接着性繊維=10/90〜100/0(例えば、20/80〜100/0)の範囲から選択できる。硬質な成形体を製造する場合には、湿熱接着性繊維の割合が多い方が好ましく、両者の割合(質量比)は、湿熱接着性繊維/非湿熱接着性繊維=80/20〜100/0、好ましくは90/10〜100/0、さらに好ましくは95/5〜100/0程度である。湿熱接着性繊維の割合がこの範囲にあると、高い表面硬さと曲げ挙動を確保できる成形体が得られる。非湿熱接着性繊維の特性を利用した成形体を製造する場合には、両者の割合(質量比)は、湿熱接着性繊維/非湿熱接着性繊維=10/90〜99/1、好ましくは20/80〜90/10、さらに好ましくは30/70〜80/20程度である。
成形体(又は繊維)は、さらに、慣用の添加剤、例えば、安定剤(銅化合物などの熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤など)、分散剤、微粒子、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、成形体表面に担持されていてもよく、繊維中に含まれていてもよい。
(加湿器エレメント用基材の特性)
本発明の加湿器エレメント用基材は、前記繊維で構成されたウェブから得られる不織繊維構造を有しており、その形状は用途に応じて選択でき、断面円形又は楕円形状、多角形状であってもよいが、通常、シート状又は板状である。
さらに、加湿器エレメント用基材において、適度な剛性(形態安定性)を有するとともに、吸液性、保液性及び放湿性と軽量(低密度)性とをバランスよく備えた不織繊維構造を有するためには、前記不織繊維のウェブを構成する繊維の配列状態及び接着状態が適度に調整されている必要がある。すなわち、繊維ウェブを構成する繊維が、概ね繊維ウェブ(不織繊維)面に対して平行に配列しながら、お互いに交差するように配列させるのが望ましい。さらに、加湿器エレメント用基材を構成する成形体は、各繊維が交差した交点で融着しているのが好ましい。特に、高い形態安定性が要求される成形体は、交点以外の繊維が略平行に並んでいる部分において、数本〜数十本程度で束状に融着した束状融着繊維を形成していてもよい。これらの繊維が、単繊維同士の交点、束状繊維同士の交点、又は単繊維と束状繊維との交点において融着した構造を部分的に形成することにより、「スクラム」を組んだような構造(繊維が交点部で接着し、網目のように絡み合った構造、又は交点で繊維が接着し隣接する繊維を互いに拘束する構造)とし、目的とする曲げ挙動や表面硬度などを発現させることができる。本発明では、このような構造が、繊維ウェブの面方向及び厚み方向に沿って概ね均一に分布するような形態とするのが望ましい。
ここでいう「概ね繊維ウェブ面に対し平行に配列している」とは、局部的に多数の繊維が厚み方向に沿って配列している部分が繰り返し存在するようなことがない状態を示す。
より具体的には、成形体の繊維ウェブにおける任意の断面を顕微鏡観察した際に、繊維ウェブでの厚みの30%以上に亘り、厚み方向に連続して延びる繊維の存在割合(本数割合)が、その断面における全繊維に対して10%以下(特に5%以下)である状態をいう。
繊維を繊維ウェブ面に対して平行に配列するのは、厚み方向(ウェブ面に対して垂直な方向)に沿って配向している繊維が多く存在すると、周辺に繊維配列の乱れが生じて不織繊維内に必要以上に大きな空隙を生じ、成形体の曲げ強度や表面硬さが低減するためである。従って、できるだけこの空隙を少なくすることが好ましく、このために繊維を可能な限り繊維ウェブ面に対して平行に配列させるのが望ましい。なお、厚み方向に沿った繊維の存在を低減して空隙を減少させると液体保持性(保液性又は保液率)も低下するが、本発明では、後述するように、成形体の密度を低くし、平行に配向した繊維間の空隙を形成することにより液体保持性を確保している。
さらに、本発明では、繊維を繊維ウェブ面に対して平行に配向させることにより、吸液性及び放湿性に異方性を付与している。すなわち、本発明の加湿器エレメント用基材は、繊維が一定の配向性を有しているため、繊維の長さ方向に高い吸液性及び放湿性を有している。
なお、ウェブをニードルパンチなどの手段で交絡させると、高密度な成形体の製造が容易となる。さらに、繊維を湿熱接着させる前に交絡させると、接着前の繊維の形態が保持されるため、厚みの大きい成形体の製造が容易となり、生産効率上有利となる。しかし、ニードルパンチなどによる繊維の交絡は、繊維を繊維ウェブ面に対して平行に配列させる点からは不利である。さらに、交絡によって成形体の密度が高まるため、低密度で軽量な成形体の製造は困難となる。従って、繊維を平行に配列させる点からは、繊維の交絡の程度を低減するか、交絡しないのが好ましい。
特に、成形体がシート状又は板状である場合に、成形体の厚み方向に荷重がかかった場合、大きな空隙部が存在すると、この空隙部が荷重により潰れて成形体表面が変形し易くなる。さらに、この荷重が成形体全面にかかると全体的に厚みが小さくなり易くなる。成形体自体を空隙のない樹脂充填物とすればこのような問題を回避できるが、保液性が低下する。
一方で、荷重による厚み方向への変形を小さくするために、繊維を細くし、より密に繊維を充填することが考えられるが、細い繊維のみで軽量性及び通気性を確保しようとすると、各々の繊維の剛性が低くなり、逆に曲げ応力が低下する。曲げ応力を確保するためには、繊維径をある程度太くすることが必要であるが、単純に太い繊維を混合したのでは、太い繊維同士の交点付近で、大きな空隙ができやすく、厚み方向へ変形し易くなる。
そこで、本発明の加湿器エレメント用基材は、低密度にするとともに、繊維の方向をウェブの面方向に沿って平行に並べ、分散させる(又は繊維方向をランダム方向に向ける)ことにより、繊維同士がお互いに交差し、その交点で接着することにより、小さな空隙を生じて保液性及び排液性を確保している。さらに、このような繊維構造が連続することにより、適度な表面硬さも確保している。
さらに、本発明の加湿器エレメント用基材において、吸液性、保液性、放湿性のバランスを高める上で不織繊維構造を構成する繊維が前記湿熱接着性繊維の融着により繊維接着率が、例えば、85%以下(例えば、1〜85%)、好ましくは3〜70%、さらに好ましくは5〜60%(特に10〜35%)程度で接着されている。本発明における繊維接着率は、後述する実施例に記載の方法で測定できるが、不織繊維断面における全繊維の断面数に対して、2本以上接着した繊維の断面数の割合を示す。従って、繊維接着率が低いことは、複数の繊維同士が融着する割合(集束して融着した繊維の割合)が少ないことを意味する。
本発明では、さらに、不織繊維構造を構成する繊維は、各々の繊維の接点で接着しているが、できるだけ少ない接点数で大きな曲げ応力を発現するためには、この接着点が、厚み方向に沿って、成形体表面から内部(中央)、そして裏面に至るまで、均一に分布しているのが好ましい。接着点が表面又は内部などに集中すると、優れた機械的特性及び成形性を確保するのが困難となるだけでなく、接着点の少ない部分における形態安定性が低下する。
従って、成形体の厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における繊維接着率がいずれも前記範囲にあるのが好ましい。さらに、各領域における繊維接着率の最大値に対する最小値の割合(最小値/最大値)(繊維接着率が最大の領域に対する最小の領域の比率)が、例えば、50%以上(例えば、50〜100%)、好ましくは55〜99%、さらに好ましくは60〜98%(特に70〜97%)程度である。本発明では、繊維接着率が、厚み方向において、このような均一性を有しているため、硬さや曲げ強度、耐折性や靱性において優れている。
なお、本発明において、「厚み方向に三等分した領域」とは、板状成形体の厚み方向に対して直交する方向にスライスして三等分した各領域のことを意味する。
このように、本発明の加湿器エレメント用基材では、湿熱接着性繊維による融着が均一に分散して点接着しているだけでなく、これらの点接着が短い融着点距離(例えば、数十〜数百μm)で緻密にネットワーク構造を張り巡らしている。このような構造により、本発明の液体保持材は、外力が作用しても、繊維構造が有する柔軟性により、歪みに対して追従性が高くなるとともに、微細に分散した繊維の各融着点に外力が分散して小さくなるため、高い耐折性や靱性を発現していると推定できる。これに対して、従来の多孔質成形体や発泡体などは、空孔の周囲が連続した界面を形成しているため、本発明の加湿器エレメント用基材に比べて、大きな面積で外力を受け止めることとなり、歪みが発生し易く、耐折性や靱性が低下すると推定できる。
本発明の加湿器エレメント用基材において、厚み方向の断面における単繊維(単繊維端面)の存在頻度は特に限定されず、例えば、その断面の任意の1mm2に存在する単繊維の存在頻度が平均100個/mm2以上(例えば、100〜300個/mm2程度)であってもよいが、特に、軽量性よりも機械的特性が要求される場合には、単繊維の存在頻度は、例えば、平均100個/mm2以下、好ましくは60個/mm2以下(例えば、1〜60個/mm2)、さらに好ましくは25個/mm2以下(例えば、3〜25個/mm2)であってもよい。単繊維の存在頻度が多すぎると、繊維の融着が少なく、成形体の強度が低下する。なお、単繊維の存在頻度が100個/mm2を超えると繊維の束状融着が少なくなるため、高い曲げ強度の確保が困難となる。さらに、板状成形体の場合、束状に融着された繊維が成形体の厚み方向に薄く、面方向(長さ方向又は幅方向)に幅広い形を有するのが好ましい。
なお、本発明では、前記単繊維の存在頻度は、次のようにして測定する。すなわち、成形体断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の中から選んだ1mm2に相当する範囲を観察し、単繊維断面の数を数える。写真の中から任意の数箇所(例えば、無作為に選択した10箇所)について同様に観察し、単繊維端面の単位面積当たりの平均値を単繊維の存在頻度とする。このとき、断面において、単繊維の状態である繊維の数を全て数える。すなわち、完全に単繊維の状態である繊維以外に、数本の繊維が融着した繊維であっても、断面において融着部分から離れて単繊維の状態にある繊維は単繊維として数える。
このような束状融着繊維を含む成形体は、吸液性、保液性及び放湿性と、曲げ強度及び表面硬さなどの剛性(形態安定性)と、軽量性とを適度にバランスさせるために、束状融着繊維の存在頻度が少なく、かつ各繊維(束状繊維及び/又は単繊維)の交点で高い頻度で接着しているのが好ましい。但し、繊維接着率が高すぎると、接着している点同士の距離が近接し過ぎて柔軟性が低下し、外部応力による歪みの解消が困難となる。このため、成形体は、繊維接着率が85%以下である必要がある。繊維接着率が高すぎないことにより、成形体内に細かな空隙による通路が確保でき、軽量性と保液性及び放湿性とを向上できる。また、空隙が広すぎず、適度な通路を形成することにより、液体に対する繊維の親和力と毛管現象とを発現させて吸液性も向上できる。従って、できるだけ少ない接点数で大きな曲げ応力、表面硬さ及び保液性及び放湿性を発現するためには、繊維接着率が成形体表面から内部(中央)、そして裏面に至るまで、厚み方向に沿って均一に分布しているのが好ましい。接着点が表面や内部などに集中すると、前述の曲げ応力や形態安定性に加えて、適度な空隙が形成できず、保液性及び放湿性を確保するのも困難となる。また、接着点が不均一であると、適度な大きさの空隙が得られず、空隙の小さい部分で液体の保持量が低下し、かつ空隙の大きな部分で液体の保持力が低下するため、保液性が低下する。
本発明の加湿器エレメント用基材は、靱性及び曲げ応力が高く、優れた曲げ挙動を示すことも特徴の一つである。本発明では、この曲げ挙動を表すため、JIS K7017「繊維強化プラスチック−曲げ特性の求め方」に準じて、サンプルを徐々に曲げたときに生ずるサンプルの反発力を測定し、最大応力(ピーク応力)を曲げ応力として表し、曲げ挙動の指標として用いた。すなわち、この曲げ応力が大きいほど硬い成形体であり、さらに測定対象物が破壊するまでの曲げ量(変位)が大きい程よく曲がる成形体である。
本発明の加湿器エレメント用基材は、少なくとも一方向(好ましくは全ての方向)における最大曲げ応力が0.05MPa以上(例えば、0.05〜100MPa)であり、好ましくは0.1〜30MPa、さらに好ましくは0.2〜20MPa程度であってもよい。この最大曲げ応力が小さすぎると、板状で使用したときに自重やわずかな荷重により簡単に折れ易い。また、最大曲げ応力が高すぎると、硬くなり過ぎて、応力のピークを過ぎて折り曲げると折れて破損し易くなる。なお、100MPaを超えるような硬さを得るためには、成形体の密度を高くすることが必要となり、軽量性及び保液性の確保が困難になる。
この曲げ量(変位)とそれによる曲げ応力との相関を見ると、最初、曲げ量の増加とともに応力も増加し、例えば、略直線的に増加する。本発明の加湿器エレメント用基材において、測定サンプルが固有の曲げ量に到達すると、その後は徐々に応力が低くなる。すなわち、曲げ量と応力とをグラフにすると、上に凸の放物線状にカーブを描く相関関係を示す。本発明の加湿器エレメント用基材は、最大曲げ応力(曲げ応力のピーク)を超えて、さらに曲げようとした場合においても、急激な応力降下を生じることなく、いわゆる「粘り(又は靱性)」を有することも特徴の一つである。本発明では、このような「粘り」を表す指標として、曲げ応力のピーク時の曲げ量(変位)を超えた状態において残っている曲げ応力を用いることができる。すなわち、本発明の加湿器エレメント用基材は、最大曲げ応力を示す曲げ量の1.5倍の変位まで曲げた時の応力(以下、「1.5倍変位応力」と称することがある)が、最大曲げ応力の1/5以上(例えば、1/5〜1)を維持していればよく、例えば、1/3以上(例えば、1/3〜9/10)、好ましくは2/5以上(例えば、2/5〜9/10)、さらに好ましくは3/5以上(例えば、3/5〜9/10)維持していてもよい。また、2倍変位応力が、最大曲げ応力の1/10以上(例えば、1/10〜1)、好ましくは3/10以上(例えば、3/10〜9/10)、さらに好ましくは5/10以上(例えば、5/10〜9/10)維持していてもよい。
本発明の加湿器エレメント用基材は、繊維間に生ずる空隙により高い軽量性を確保できる。また、これらの空隙は、独立した空隙ではなく連続しているため、高い通気性に加えて、高い放湿性を有している。このような構造は、樹脂を含浸する方法や、表面部分を密に接着させてフィルム状構造を形成する方法など、これまでの一般的な硬質化手法では製造することが極めて困難な構造である。
すなわち、本発明の加湿器エレメント用基材の見掛け密度は、用途に応じて、0.01〜0.3g/cm3程度の範囲から選択でき、形態安定性を保持しつつ、吸液性、保液性及び放湿性のバランスも保持する点から、例えば、0.03〜0.25g/cm3、好ましくは0.05〜0.20g/cm3、さらに好ましくは0.05〜0.15g/cm3(特に0.07〜0.13g/cm3)程度である。見かけ密度が低すぎると、保液性は向上するものの、表面硬さ、機械的特性、成形性が低下し、逆に高すぎると、吸液性や硬さなどの機械的特性は確保できるものの、保液性が低下する。なお、密度が低下すると、繊維が交絡し、交点で融着しただけの一般的な不織繊維構造に近くなり、一方、密度が高くなると、繊維が束状に融着し、多孔質成形体に近い構造となる。
加湿器エレメント用基材の目付は、例えば、50〜5000g/m2程度の範囲から選択でき、好ましくは100〜3000g/m2、さらに好ましくは150〜1000g/m2(特に200〜800g/m2)程度である。目付が小さすぎると、硬さや成形性を確保することが難しく、また、目付が大きすぎると、ウェブが厚すぎて湿熱加工において、高温水蒸気が充分にウェブ内部に入り込めず、厚み方向に均一な構造体とするのが困難になる。
本発明の加湿器エレメント用基材が、板状又はシート状である場合、その厚みは特に限定されないが、0.5〜500mm程度の範囲から選択でき、例えば、1〜100mm、好ましくは1.5〜50mm、さらに好ましくは2〜20mm程度である。厚みが薄すぎると、硬さの確保が難しくなり、厚すぎると、含まれた水分を放出する表面積の割合が低くなり、空気を加湿する効率が低下する。本発明の加湿器エレメント用基材は嵩高い構造を形成しても内部まで湿熱接着性繊維を均一に融着させることができるので、自立性の高い嵩高い加湿器エレメント用基材とできる。また本発明の加湿器エレメント用基材は成形性が高いので、複数枚重ねて、熱処理(例えば湿熱処理)することで、一層嵩高い構造を容易に作成できる。
本発明の加湿器エレメント用基材は、不織繊維構造を有しているため、通気性が高い。具体的にはフラジール形法による通気度が0.1cm3/(cm2・秒)以上[例えば、0.1〜300cm3/(cm2・秒)]、好ましくは0.5〜250cm3/(cm2・秒)[例えば、1〜250cm3/(cm2・秒)]、さらに好ましくは5〜200cm3/(cm2・秒)程度であり、通常、1〜100cm3/(cm2・秒)程度である。通気度が小さすぎると、放湿性が低下する。一方、通気度が大き過ぎると、放湿性は高くなるが、成形体内の繊維空隙が大きくなりすぎ、曲げ応力や吸液性、保液性が低下する。
本発明の加湿器エレメント用基材は、吸水速度が高く、吸液性及び放湿性に優れるとともに、保液性も高い。具体的には、加湿器エレメント用基材の吸水速度は、JIS L1907滴下法に準じた方法で、例えば、10秒以下、好ましくは5秒以下、さらに好ましくは1秒以下である。また、吸水率(保水率)は、JIS L1907に準じた方法で、例えば、100質量%以上、好ましくは200質量%以上(例えば、200〜5000質量%)、さらに好ましくは500質量%以上(例えば、500〜3000質量%)である。
更に加湿器エレメントとして使用する場合には、水を液面より上に吸い上げる吸水性(バイレック法)が有用である。この能力が大きいほど空気を加湿する際に、加湿器エレメントにおける空気との接触面積をより大きくする事が可能になるからである。本発明においては、より充分な吸水性を発現させるためには、吸水開始から600秒間でのこの値が3cm以上である事が必要であり、好ましくは4cm以上、より好ましくは5cm以上である。
一方で、本発明の加湿器エレメント用基材は、空気を加湿するための水分をより素早く確保するとともに、この水分をより素早く空気中に放出する事が必要である。すなわち、本発明の加湿器エレメントそのものは水を保持しようとする力が低い方が好ましい。この力は平衡水分率で表すことができ、その値は、5%以下である事が好ましく、より好ましくは4%以下、更に好ましくは3%以下である。
同様に、乾燥速度が大きい事からも水分を素早く放出する事が言える。
また、本発明の加湿器エレメント用基材は、形態安定性が高いため、水分を吸収しても体積の膨張が少ない。同時に、大きな変形を伴うような吸水性を有する基材は、良好な放湿性を発揮する事が困難であるため、このバランスが良好な範囲にあるようにする事が必要である。具体的には、充分に(飽和状態に)水を吸収させたときの寸法膨張率(例えば、板状成形体の場合、縦方向、横方向、厚み方向のそれぞれの寸法膨張率)が、例えば、4%以下(例えば、0.0001〜4%)、好ましくは0.001〜3.5%、さらに好ましくは0.01〜3%(特に0.1〜2%)程度である。
以上のような形態安定性、保水性、そして放湿性を有している事により、本発明の加湿器エレメント用基材をエレメントとして用いる場合、このエレメントを吸水部からフィン状に多数立上げ、その回りを空気が通過する事で空気を加湿する事が可能となる。また、大きな加湿能力が必要な場合は、このフィンを適度な間隔で平行に空気の通路に立ち上げる事で補う事ができる。したがって、従来の紙や不織布を用いる場合などのようにハニカム構造のような複雑な形状にすることなく、形態を保ちながら加湿する空気と接し、加湿する事が可能である。
[加湿器エレメント用基材の製造方法]
本発明の加湿器エレメント用基材の製造方法では、まず、前記湿熱接着性繊維を含む繊維をウェブ化する。ウェブの形成方法としては、慣用の方法、例えば、スパンボンド法、メルトブロ一法などの直接法、メルトブロー繊維やステープル繊維などを用いたカード法、エアレイ法などの乾式法などを利用できる。
これらの方法のうち、メルトブロー繊維やステープル繊維を用いたカード法、特にステープル繊維を用いたカード法が汎用される。ステープル繊維を用いて得られたウェブとしては、例えば、ランダムウェブ、セミランダムウェブ、パラレルウェブ、クロスラップウェブなどが挙げられる。これらのウェブのうち、束状融着繊維の割合を多くする場合には、セミランダムウェブ、パラレルウェブが好ましい。
次に、得られた繊維ウェブは、ベルトコンベアにより次工程へ送られ、次いで過熱又は高温蒸気(高圧スチーム)流に晒されることにより、不織繊維構造を有する成形体が得られる。すなわち、ベルトコンベアで運搬された繊維ウェブは、前記蒸気噴射装置のノズルから噴出される高速高温水蒸気流の中を通過する際、吹き付けられた高温水蒸気により、湿熱接着性繊維が融着し、繊維同士(湿熱接着性繊維同士、又は湿熱接着性繊維と他の繊維)が三次元的に接着される。特に、本発明における繊維ウェブは通気性を有しているため、高温水蒸気が内部にまで浸透し、略均一な融着状態を有する成形体を得ることができる。
使用するベルトコンベアは、基本的には加工に用いる繊維ウェブを目的の密度に圧縮しつつ高温水蒸気処理することができれば、特に限定されるものではなく、エンドレスコンベアが好適に用いられる。尚、一般的な単独のベルトコンベアであってもよく、必要に応じて2台のベルトコンベアを組み合わせて、両ベルト間にウェブを挟むようにして運搬してもよい。このように運搬することにより、繊維ウェブを処理する際に、処理に用いる水、高温水蒸気、コンベアの振動などの外力により運搬してきた繊維ウェブの形態が変形するのを抑制できる。また、処理後の不織繊維の密度や厚みをこのベルトの間隔を調整することにより制御することも可能となる。
繊維ウェブに水蒸気を供給するためには、慣用の水蒸気噴射装置が用いられる。この水蒸気噴射装置としては、所望の圧力と量で、ウェブ全幅に亘り概ね均一に水蒸気を吹き付け可能な装置が好ましい。2台のベルトコンベアを組み合わせた場合、一方のコンベア内に装着され、通水性のコンベアベルト、又はコンベアの上に載置されたコンベアネットを通してウェブに水蒸気を供給する。他方のコンベアには、サクションボックスを装着してもよい。サクションボックスによって、繊維ウェブを通過した過剰の水蒸気を吸引排出できる。また、繊維ウェブの表及び裏の両側を一度に水蒸気処理するために、さらに前記水蒸気噴射装置が装着されているコンベアとは反対側のコンベアにおいて、前記水蒸気噴射
装置が装着されている部位よりも下流部のコンベア内に別の水蒸気噴射装置を設置してもよい。下流部の水蒸気噴射装置及びサクションボックスがない場合、繊維ウェブの表と裏を水蒸気処理したい場合は、一度処理した繊維ウェブの表裏を反転させて再度処理装置内を通過させることで代用してもよい。
コンベアに用いるエンドレスベルトは、繊維ウェブの運搬や高温水蒸気処理の妨げにならなければ、特に限定されない。ただし、高温水蒸気処理をした場合、その条件により繊維ウェブの表面にベルトの表面形状が転写される場合があるので、用途に応じて適宜選択するのが好ましい。特に、表面の平坦な成形体を得たい場合には、メッシュの細かいネットを使用すればよい。なお、90メッシュ程度が上限であり、概ね90メッシュより粗いネット(例えば、10〜50メッシュ程度のネット)が好ましい。これ以上のメッシュの細かなネットは、通気性が低く、水蒸気が通過し難くなる。メッシュベルトの材質は、水蒸気処理に対する耐熱性などの観点より、金属、耐熱処理したポリエステル系樹脂、ポリ
フェニレンサルファイド系樹脂、ポリアリレート系樹脂(全芳香族系ポリエステル系樹脂)、芳香族ポリアミド系樹脂などの耐熱性樹脂などが好ましい。
水蒸気噴射装置から噴射される高温水蒸気は、気流であるため、水流絡合処理やニードルパンチ処理とは異なり、被処理体である繊維ウェブ中の繊維を大きく移動させることなく繊維ウェブ内部へ進入する。この繊維ウェブ中への水蒸気流の進入作用及び湿熱作用によって、水蒸気流が繊維ウェブ内に存在する各繊維の表面を湿熱状態で効率的に覆い、均一な熱接着が可能になると考えられる。また、この処理は高速気流下で極めて短時間に行われるため、水蒸気の繊維表面への熱伝導は充分であるが、繊維内部への熱伝導が充分になされる前に処理が終了してしまい、そのため高温水蒸気の圧力や熱により、処理される繊維ウェブ全体がつぶれたり、その厚みが損なわれるような変形も起こりにくい。その結
果、繊維ウェブに大きな変形が生じることなく、表面及び厚み方向における接着の程度が概ね均一になるように湿熱接着が完了する。また、乾熱処理に比べて、不織繊維構造内部に対して充分に熱を伝導できるため、表面及び厚み方向における融着の程度が概ね均一になる。
さらに、表面硬さや曲げ強度の高い成形体を得る場合には、ウェブに高温水蒸気を供給して処理する際に、処理されるウェブを、コンベアベルト又はローラーの間で、目的の見かけ密度(例えば、0.3〜1g/cm3程度)に圧縮した状態で高温水蒸気に晒すのが重要である。特に、相対的に高密度の成形体を得ようとする場合には、高温水蒸気で処理する際に、十分な圧力で繊維ウェブを圧縮する必要がある。さらに、ローラー間又はコンベア間に適度なクリアランスを確保することで、目的の厚みや密度に調整することも可能である。コンベアの場合には、一気にウェブを圧縮することが困難なので、ベルトの張力をできるだけ高く設定し、蒸気処理地点の上流から徐々にクリアランスを狭めていくのが好ましい。さらに、蒸気圧力、処理速度を調整することにより所望の曲げ硬さ、表面硬度、軽量性、通気度を有する成形体に加工する。
このとき、硬度を上げたい場合には、ウェブを挟んでノズルと反対側のエンドレスベルトの裏側をステンレス板などにし、蒸気が通過できない構造とすれば、被処理体であるウェブを通過した蒸気がここで反射するので、蒸気の保温効果によってより強固に接着される。逆に、軽度の接着が必要な場合には、サクションボックスを配置し、余分な水蒸気を室外へ排出してもよい。
高温水蒸気を噴射するためのノズルは、所定のオリフィスが幅方向に連続的に並んだプレートやダイスを用い、これを供給される繊維ウェブの幅方向にオリフィスが並ぶように配置すればよい。オリフィス列は一列以上あればよく、複数列が並行した配列であってもよい。また、一列のオリフィス列を有するノズルダイを複数台並列に設置してもよい。
プレートにオリフィスを開けたタイプのノズルを使用する場合、プレートの厚みは、0.5〜1mm程度であってもよい。オリフィスの径やピッチに関しては、目的とする繊維固定が可能な条件であれば特に制限はないが、オリフィスの直径は、通常、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm、さらに好ましくは0.2〜0.5mm程度である。オリフィスのピッチは、通常、0.5〜3mm、好ましくは1〜2.5mm、さらに好ましくは1〜1.5mm程度である。オリフィスの径が小さすぎると、ノズルの加工精度が低くなり、加工が困難になるという設備的な問題点と、目詰まりを起こしやすくなるという運転上の問題点が生じ易い。逆に、大きすぎると、水蒸気噴射力が低下する。一方、ピッチが小さすぎると、ノズル孔が密になりすぎるため、ノズル自体の強度が低下する。一方、ピッチが大きすぎると、高温水蒸気がウェブに充分に当たらないケースが生じるため、ウェブ強度が低下する。
高温水蒸気についても、目的とする繊維の固定が実現できれば特に限定はなく、使用する繊維の材質や形態により設定すればよいが、圧力は、例えば、0.1〜2MPa、好ましくは0.2〜1.5MPa、さらに好ましくは0.3〜1MPa程度である。水蒸気の圧力が高すぎたり、強すぎる場合には、ウェブを形成する繊維が必要以上に動いて地合の乱れを生じたり、繊維が溶融しすぎて部分的に繊維形状を保持できなくなる可能性がある。また、圧力が弱すぎると、繊維の融着に必要な熱量をウェブに与えることができなくなったり、水蒸気がウェブを貫通できず、厚み方向に繊維融着斑を生ずる場合がある。また、ノズルからの水蒸気の均一な噴出の制御が困難になる場合がある。
高温水蒸気の温度は、例えば、70〜150℃、好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃程度である。高温水蒸気の処理速度は、例えば、200m/分以下、好ましくは0.1〜100m/分、さらに好ましくは1〜50m/分程度である。
必要であれば、コンベアベルトに所定の凹凸柄や文字、絵などを付与しておき、これらを転写させることで得られる成形体に意匠性を付与することも可能である。また、他の資材と積層して積層体を形成してもよく、成形加工により所望の形態(円柱状、四角柱状、球状、楕円体状などの各種形状)に加工してもよい。特に、本発明では、硬質で形態安定性に優れるため、吸液性、保液性、放湿性などの液体の吸放出に関する特性を損なうことなく、各種形状に加工できる。
このようにして繊維ウェブの繊維を部分的に湿熱接着した後、得られる不織繊維構造を有する成形体に水分が残留する場合があるので、必要に応じてウェブを乾燥してもよい。乾燥に関しては、乾燥用加熱体に接触した成形体の表面が、乾燥の熱により繊維が溶融して繊維形態が消失しないことが必要であり、繊維形態が維持できる限り、慣用の方法を利用できる。例えば、不織布の乾燥に使用されるシリンダー乾燥機やテンターのような大型の乾燥設備を使用してもよいが、残留している水分は微量であり、比較的軽度な乾燥手段により乾燥可能なレベルである場合が多いため、遠赤外線照射、マイクロ波照射、電子線照射などの非接触法や熱風を吹き付けたり、通過させる方法などが好ましい。
さらに、成形体は、前述のように、湿熱接着性繊維を高温水蒸気により接着させて得られるが、部分的に(湿熱接着により得られた成形体同士の接着など)、他の慣用の方法、例えば、部分的な熱圧融着(熱エンボス加工など)、機械的圧縮(ニードルパンチなど)などの処理方法により接着されていてもよい。
なお、湿熱接着性繊維は、繊維ウェブを熱湯に漬すことでも融着するが、このような方法では繊維接着率の制御が困難であり、また繊維接着率の均一性が高い成形体を得るのが困難である。その原因は、繊維ウェブ中に必然的に含まれる空気の影響で位置によって湿熱接着性が異なること、この空気が繊維ウェブの外に押し出されることによる構造への影響、湿熱接着させた繊維ウェブを熱湯中から取り出すときの引き取りローラーによる繊維内部の微細構造の変形や取り出した繊維ウェブ中に含まれる熱湯の重さによる上下方向の微細構造の変形の違いなどであると推定できる。
本発明の加湿器エレメント用基材は、吸液性、保液性及び放湿性と形態安定性とのバランスに優れるため、従来のエレメントのようにその形態を保つとともにその表面積を大きく保つためにハニカム構造を代表とするような複雑な加工を必要とせず、オフィスや住宅などの家屋、車両などに利用できる。
具体的には、本発明の加湿器エレメント用基材は、速やかな吸液速度、高い吸液性及び保液性、迅速な放湿性を兼ね備える。また、適度な硬度を有しているため、成形性に優れるとともに、比較的小型の成形体では、高い形態安定性を有している。従って、本発明の加湿器エレメント用基材は、小型で複雑な構造を要求される加湿器にも適している。
さらに、本発明の加湿器エレメント用基材は、水分の吸収性、保持性及び放出性のバランスに優れる点から、家屋、車両などにおいての用途にも適している。中でも、高い吸水性、保水性及び排水性を有する点から、捕集した水分を滞留させることなく、速やかに放湿する必要のある加湿器にも適している。
このような加湿器エレメント用基材の形状は、備え付ける収納庫(収納室)の部位や部材の形状に応じて選択でき、例えば、板状(平板状、湾曲板状、屈曲板状など)、円筒状などである。これらのうち、加湿器エレメント用基材は、通常、収納庫の内壁(側壁、天井、床など)付近に配設することが多いため、その形状は、通常、板状である。加湿器エレメント用基材を収納庫の側壁に配設する場合、繊維の配向性を考慮して、加湿器エレメント用基材の面方向が側壁の面方向と平行するように、収納庫の側壁に沿って配設するのが好ましい。このように加湿器エレメント用基材を配設することにより、板面で捕集した水分を収納庫の側壁に沿った方向に排液することができる。なお、加湿器エレメント用基材が比較的大きな板状成形体の場合、必要に応じて、金属やプラスチックなどで構成された枠体や板状体などの補強部材と組み合わせてもよい。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例における各物性値は、以下に示す方法により測定した。なお、実施例中の「%」はことわりのない限り、質量基準である。
(1)目付(g/m2
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
(2)厚み(mm)、見掛け密度(g/cm3
JISL1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて厚みを測定し、この値と目付けの値とから見かけ密度を算出した。
(3)捲縮数
JIS L1015「化学繊維ステープル試験方法」(8.12.1)に準じて評価した。
(4)通気度
JIS L1096に準じ、フラジール形法にて測定した。
(5)繊維接着率
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、成形体断面を100倍に拡大した写真を撮影した。撮影した成形体の厚み方向における断面写真を厚み方向に三等分し、三等分した各領域(表面、内部(中央)、裏面)において、そこに見出せる繊維切断面(繊維端面)の数に対して繊維同士が接着している切断面の数の割合を求めた。各領域に見出せる全繊維断面数のうち、2本以上の繊維が接着した状態の断面の数の占める割合を以下の式に基づいて百分率で表わした。なお、繊維同士が接触する部分には、融着することなく単に接触している部分と、融着により接着している部分とがある。但し、顕微鏡撮影のために成形体を切断することにより、成形体の切断面においては、各繊維が有する応力によって、単に接触している繊維同士は分離する。従って、断面写真において、接触している繊維同士は、接着していると判断できる。

繊維接着率(%)=(2本以上接着した繊維の断面数)/(全繊維断面数)×100

但し、各写真について、断面の見える繊維は全て計数し、繊維断面数100以下の場合は、観察する写真を追加して全繊維断面数が100を超えるようにした。なお、三等分した各領域についてそれぞれ繊維接着率を求め、その最大値と最小値との割合から厚み方向における均一性を算出した。
(6)曲げ応力
JIS K7017に記載の方法のうちA法(3点曲げ法)に準じて測定した。このとき、測定サンプルは25mm幅×80mm長のサンプルを用い、支点間距離を50mmとし、試験速度を2mm/分として測定を行った。本発明では、この測定結果チャートにおける最大応力(ピーク応力)を最大曲げ応力とした。なお、曲げ応力の測定は、MD方向およびCD方向について測定した。ここで、MD方向とは、測定サンプルの長辺に対しウェブ流れ方向(MD)が平行となるように測定サンプルを採取した状態をいい、一方、CD方向とは、測定サンプルの長辺に対しウェブ幅方向(CD)が平行となるように測定サンプルを採取した状態をいう。
(7)1.5倍変位応力
曲げ応力の測定において、最大曲げ応力(ピーク応力)を示す曲げ量(変位)を超え、さらにその変位の1.5倍の変位まで曲げつづけた時の応力を、それぞれ1.5倍変位応力とした。
(8)吸水速度(ウィッキング法)
JIS−L1907「繊維製品の吸水性試験法」に準じて、吸水速度を測定した。サンプル上に、0.05g/滴の水滴を10mmの高さから1滴滴下し、その水滴がサンプルに吸い込まれるまでの時間を測定した。
(9)吸水性(バイレック法)
JIS−L1907「繊維製品の吸水性試験法」に準じて、吸水性を測定した。測定は、10秒、30秒、60秒、300秒、600秒と測定した。
(10)保水率(吸水率)
JIS L1907「吸水率」に準じて測定した。5cm×5cm角サイズのサンプルを調製し、質量(成形体質量)を測定する。このサンプルを水中に30秒間沈めておき、その後引き上げて、空気中に1つの角を上にした状態で1分間吊して表面の水を切った後、質量(吸水後質量)を測定し、以下の式に基づいて算出した。

吸水率=(吸水後質量−成形体質量)/成形体質量×100 (質量%)
(11)吸水時膨張率
サンプルを保水率試験と同じサイズにカットし、同じ条件下で24時間放置した後に、MD方向、CD方向、厚み方向について、標準状態下寸法(L1)をそれぞれ測定し、このサンプルを完全に覆うことのできる量の蒸留水中に5分間浸漬した後、これを引き上げ、1分間、垂直に吊り下げる事により水切りした後、同様に試料の長さ方向、幅方向そして厚みについて吸水後の寸法(L2)を測定し、次式に従い寸法変化率を算出した。各測定値は、5サンプルについて測定した値の平均値を用いた。

寸法変化率=[(L2)−(L1)]/(L1)×100 (%)
(12)初期乾燥速度
サンプルを10cm角の大きさにカットし、このサンプルを標準状態(20±2℃、65±4%RH)の環境下で24時間放置したサンプルを、大量の蒸留水中に30分間浸漬後、ピンセットで試料を取り出し、1分間空中に保持し、余分な水分を除去した。この試料について速やかに重量(wt)を測定し、速やかに40℃、65RH%に設定した恒温恒湿槽に入れた。この試料を恒温恒湿槽中に3時間静置した後に重量を測定した。この時、1時間あたりの平均重量減少を初期乾燥速度とした。

初期乾燥速度=(wt−w1)/3 (g/hr)
(13)放湿量
サンプルを5cm幅×20cm長にカットし、このサンプルをサンプルの厚さの2倍以上に水を入れたバットに1分間浸漬した後、空中に1分間吊った状態で余計な水分をおとした。このサンプルの重量を測定(wa)した。そしてこのサンプルを、水の高さ7cmとなる様に水を入れた300mlのビーカーに水に浸かる高さが5cmとなる様に吊り下げた。このサンプルの水面からの高さ5cmのところにドライヤー(ナショナル社製、EH602型、ヒーター容量600W)の熱風を10分間あてた。この時の熱風は、サンプル表面で風速12〜15m/分、74〜76℃であった。この後、サンプルの重量を測定した(wb)。これらの値から、放湿率を以下の式で算出した。

放湿率=(wa−wb)/wa×100(%)
(14)平衡水分率
サンプルを10cm角の大きさにカットし、このサンプルをかく標準状態(20±2℃、65±4%RH)の環境下で24時間放置したサンプルの重量を測定(wc)した。このサンプルを熱風乾燥機内で140℃、8時間処理する事で乾燥し、乾燥重量を測定(wd)した。これらの値から、下式の通り、平衡水分率を計算した。

平衡水分率(%)=(wc−wd)/wd×100 (%)
(15)形態保持性
不織繊維試料を5mm角の立方体形状にカットし、50cm3の水を入れた三角フラスコ(100cm3)に投入した。このフラスコを振とう器(ヤマト科学(株)製、「MK160型」)に装着し、振幅30mmの旋回方式にて60rpmの速度で30分間振とうさせた。振とう後、形態変化及び形態保持性状態を目視で観察し、以下の基準に従って3段階評価した。
◎:ほぼ処理前の形状を保持している。
○:大きく欠落した部分は見られないが、形態の変形が見られる。
×:欠落部分の発生が見られる。
実施例1
湿熱接着性繊維として、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含有量44モル%、ケン化度98.4モル%)である芯鞘型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「ソフィスタ」、繊度2.2dtex、繊維長51mm、芯鞘質量比=50/50、捲縮数21個/25mm、捲縮率13.5%)を準備した。
この芯鞘型複合ステープル繊維を用いて、カード法により目付約100g/m2のカードウェブを作製し、このウェブを3枚重ねて合計目付約300g/m2のカードウェブとした。このカードウェブを、50メッシュ、幅500mmのステンレス製エンドレスネットを装備したベルトコンベアに移送した。尚、このベルトコンベアの金網の上部には同じ金網を有するベルトコンベアが装備されており、それぞれが同じ速度で同方向に回転し、これら両金網の間隔を任意に調整可能なベルトコンベアを使用した。
次いで、下側コンベアに備えられた水蒸気噴射装置ヘカードウェブを導入し、この装置から0.4MPaの高温水蒸気をカードウェブの厚み方向に向けて通過するように(垂直に)噴出して水蒸気処理を施し、不織繊維構造を有する成形体を得た。この水蒸気噴射装置は、下側のコンベア内に、コンベアネットを介して高温水蒸気をウェブに向かって吹き付けるようにノズルが設置され、上側のコンベアにサクション装置が設置されていた。また、この噴射装置のウェブ進行方向における下流側には、ノズルとサクション装置との配置が逆転した組合せである噴射装置がもう一台設置されており、ウェブの表裏両面に対して蒸気処理を施した。
なお、水蒸気噴射ノズルの孔径は0.3mmであり、ノズルがコンベアの幅方向に沿って1mmピッチで1列に並べられた蒸気噴射装置を使用した。加工速度は3m/分であり、ノズル側とサクション側の上下コンベアベルト間の間隔(距離)は2.5mmとした。ノズルはコンベアベルトの裏側にベルトとほぼ接するように配置した。
得られた成形体は、ボード状の形態を有していた。これをベルトコンベアの流れ方向(MD方向)647mm、幅方向(CD方向)400mmに切断し、本発明の加湿器エレメント用基材を得た。また得られた加湿器エレメント用基材から評価用サンプルを切り出した。評価結果を表1に示す。
実施例2
芯鞘型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「ソフィスタ」)とレーヨン繊維(繊度1.4dtex、繊維長44mm)とを60/40(質量比)の割合で混綿して目付約100g/mのカードウェブを作製し、これを5枚重ねするとともに、ノズル側とサクション側の上下コンベアベルト間の間隔(距離)を5mmとする以外は実施例1と同様にして加湿器エレメント用基材を製造した。得られた加湿器エレメント用基材の評価結果を表1に示す。
実施例3
実施例1と同じカードウェブ(目付約100g/m)を5枚重ねにするとともに、ノズル側とサクション側の上下コンベアベルト間の間隔(距離)を5mmとする以外は実施例1と同様にして加湿器エレメント用基材を製造した。得られた加湿器エレメント用基材の評価結果を表1に示す。
比較例1
実施例2で用いたレーヨン繊維100%からなるウェブ(目付約100g/m)を用い、このウェブを4枚重ねした状態で0.3mmΦ、1mmピッチのノズル孔から8MPaの圧力で噴出する水流を当てて一体化した後、アクリル系バインダー樹脂(日本カーバイト社製)を、その表及び裏各々約40g/m塗布することで繊維を固定した親水性不織布からなる加湿器エレメント用基材を得た。評価結果を表1に示す。
Figure 0005188847
表1の結果から明らかなように、実施例の加湿器エレメント用基材は、繊維の接着率が厚み方向で均一であり、曲げ応力が高く、形態安定性に優れるとともに、吸水特性も優れている。特に、実施例1の加湿器エレメント用基材は、比較的、各種特性のバランスに優れている。
なお、実施例2の加湿器エレメント用基材では、レーヨン繊維の混合により、繊維融着点が減少している。また、コンベア間隔を広くし、低密度の成形体を製造している。従って、密度が低くかつ繊維接着率が低いため、曲げ強度及び形態保持性が低下している。一方、低密度構造で、かつレーヨンを含むため、吸水速度は速い。しかし、繊維密度が低く、毛管現象の発現レベルが低いためか、バイレック法による吸上げ試験値はやや低下している。
一方、吸水膨張率はセルロース繊維の膨潤や形態変化の影響でやや大となる。また乾燥速度はレーヨンが乾燥しにくく、低速となる。
実施例3の加湿器エレメント用基材では、目付を高くするとともに、コンベア間隔を広くし、低密度の成形体を製造した。これらは曲げ強度及び形態保持性が高く、吸水による膨張もほとんどない。
一方、通気度及び吸水速度はやや低下する。しかし、繊維接着率が高いため、毛細管現象
が生じやすく、水は繊維を伝わって比較的容易に吸い上げられる。
比較例1の加湿器エレメント用基材では、湿熱接着性繊維を使用していないため、得られた基材は非常に柔らかく、ボード状の形状を保持していなかった。また、吸水速度は速かったが、吸水による膨張が大きい。

Claims (1)

  1. 湿熱接着性を含み、かつ不織繊維構造を有する加湿器エレメント用基材であって、前記湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定されているとともに、600秒間で3cm以上の吸水性(バイレック法)と5%以下の平衡水分率、および飽和状態に水を吸収させたときの寸法膨潤率が0.0001〜4%を有する加湿器エレメント用基材。
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