JP2016169293A - ポリ乳酸系樹脂組成物およびそれからなるシート状成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境負荷を低減が可能であり、透明性、耐熱性に優れた成形体を得ることが可能で、成形加工性にも優れたポリ乳酸系樹脂組成物及び前記ポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形体の提供。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂(A)と特定の有機アミド化合物(B)とアジピン酸エステル系可塑剤(C)とを含有する樹脂組成物。ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、有機アミド化合物(B)を0.1〜2質量部、アジピン酸エステル系可塑剤(C)を0.1〜2質量部含有し、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の割合が80質量%以上であるポリ乳酸系樹脂組成物。有機アミド化合物(B)とアジピン酸エステル系可塑剤(C)の合計含有量が、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、2.5質量部以下であり、有機アミド化合物(B)の含有量をb、アジピン酸エステル系可塑剤(C)の含有量をcとした時に、0.3<c/b<1.5の範囲であるポリ乳酸系樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】ポリ乳酸樹脂(A)と特定の有機アミド化合物(B)とアジピン酸エステル系可塑剤(C)とを含有する樹脂組成物。ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、有機アミド化合物(B)を0.1〜2質量部、アジピン酸エステル系可塑剤(C)を0.1〜2質量部含有し、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の割合が80質量%以上であるポリ乳酸系樹脂組成物。有機アミド化合物(B)とアジピン酸エステル系可塑剤(C)の合計含有量が、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、2.5質量部以下であり、有機アミド化合物(B)の含有量をb、アジピン酸エステル系可塑剤(C)の含有量をcとした時に、0.3<c/b<1.5の範囲であるポリ乳酸系樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、特定の可塑剤と結晶核剤を含有することにより、透明性と耐熱性に優れるポリ乳酸系樹脂組成物、該ポリ乳酸系樹脂組成物より得られるシート状成形体に関するものである。
ポリ乳酸樹脂は、結晶化を十分進行させることにより耐熱性が向上するため、広い用途に適用可能となる。しかしながら、ポリ乳酸樹脂を単独で用いると、一般的に結晶化速度は遅い場合がある。このため、ポリ乳酸樹脂を溶融させて結晶を完全に溶解させた後、押出成形に付してシートを製造し、該シートを通常のロール冷却に付した場合において、このシートを熱成形しても成形工程中にポリ乳酸樹脂の結晶化が十分に進まない場合がある。その結果、得られた成形品はポリ乳酸樹脂のガラス転移温度である57℃以上になると熱変形してしまい、耐熱性に劣るものとなる。
そこで、ポリ乳酸樹脂から得られたシートからなる成形体に耐熱性を付与することを目的として、熱処理を行うことや、延伸配向を行うこと、若しくは熱処理と延伸配向を併用することで結晶化を促進させる方法が検討されている。
ポリ乳酸樹脂の結晶化を促進するために熱処理を行う方法として、ポリ乳酸樹脂にタルクなどの結晶核剤を添加して結晶化速度の速いシートを製造し、このシートを、加熱された金型により短時間に成形させる製造方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、この場合は透明性に劣るものであり、成形前のシートにおいても透明性が低い。しかも、成形を行う場合に、樹脂成分がポリ乳酸樹脂単独であれば加工性が良好であるが、耐衝撃性などを向上させることを目的として他の生分解性樹脂を配合すると、成形サイクルが極端に長く(例えば、数倍の長さ)なり、実用的な加工性が得られない場合がある。
また、脂肪族ポリエステルに、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸エステルなどの透明核剤を添加して樹脂組成物を得、この樹脂組成物から得られたシートを、成形時または成形後に熱処理する方法が知られている(引用文献2)。しかしながら、この場合は、成形前のシートは透明性が高いものの、成形後は結晶化により透明性が低下する場合がある。しかも昇温時の結晶化速度が十分ではなく結晶化に必要な熱処理時間が長いため、実用性に劣るという問題があった。
また、ポリ乳酸樹脂にポリ乳酸系共重合ポリマーを添加し、成形サイクル時間の加熱により結晶化させ、透明性および耐熱性に優れたシートを製造する方法が知られている(特許文献3)また、ポリ乳酸系ポリマーに結晶化促進剤や有機結晶核剤を添加して結晶の大きさを制御することにより、加熱処理で結晶化させて透明性および耐熱性に優れたシートを製造する方法が知られている(特許文献4)。しかしながら、これらの場合においては、透明性には優れているものの結晶化速度が十分ではないため、短時間の熱処理では十分に結晶化されず耐熱性に劣るという問題点がある。
ポリ乳酸樹脂の結晶化を促進するために延伸配向を行う方法として、ポリ乳酸系樹脂に脂肪族カルボン酸アミドなどの透明剤を添加し、その後成形時の延伸により配向させることにより、結晶化速度を向上させて、結晶化後の透明性を維持する方法が知られている(特許文献5)。しかしながら、一般に成形体の延伸倍率はその部位により大きく異なるため、低倍率の部位が存在する成形体や、全体が低倍率の成形体においては、成形体全体の耐熱性を向上させることが困難である場合があった。
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、環境負荷を低減することが可能であり、透明性、耐熱性に優れた成形体を得ることが可能で、成形加工性にも優れたポリ乳酸系樹脂組成物を提供することを目的とするものである。さらに、該ポリ乳酸系樹脂組成物からなり、透明性と耐熱性に優れたシート状成形体を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸樹脂と特定の可塑剤および特定の結晶核剤を含有したポリ乳酸系樹脂組成物は前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
すなわち、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1) ポリ乳酸樹脂(A)と下記式(1)又は式(2)に示す有機アミド化合物(B)とアジピン酸エステル系可塑剤(C)とを含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、有機アミド化合物(B)を0.1〜2質量部(B)、アジピン酸エステル系可塑剤(C)を0.1〜2質量部含有し、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の割合が80質量%以上であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
(2) 有機アミド化合物(B)とアジピン酸エステル系可塑剤(C)の合計含有量が、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、2.5質量部以下であり、かつ有機アミド化合物(B)の含有量をb、アジピン酸エステル系可塑剤(C)の含有量をcとしたときに以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
0.3<c/b<1.5
(3) 有機アミド化合物(B)がエチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、N,N´−ジステアリルアジピン酸アミドから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物にて形成されるシート状成形体であって、下記(イ)〜(ハ)を同時に満足することを特徴とするシート状成形体。
(イ)厚みが100〜500μmである。
(ロ)110℃、20秒熱処理後のヘイズ値が15以下である。
(ハ)(イ)の熱処理後、DSCで測定した融解熱量が25J/g以上である。
0.3<c/b<1.5
(3) 有機アミド化合物(B)がエチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、N,N´−ジステアリルアジピン酸アミドから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物にて形成されるシート状成形体であって、下記(イ)〜(ハ)を同時に満足することを特徴とするシート状成形体。
(イ)厚みが100〜500μmである。
(ロ)110℃、20秒熱処理後のヘイズ値が15以下である。
(ハ)(イ)の熱処理後、DSCで測定した融解熱量が25J/g以上である。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、実用性の高い成形サイクル時間での加熱により、結晶化が可能で、結晶化後の透明性や耐熱性に優れた各種の成形体を、成形加工性よく得ることができる。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を用いることで、低環境負荷材料であるポリ乳酸樹脂の使用範囲を大きく広げることができ、産業上の利用価値は極めて高いものである。
また、本発明のシート状成形体は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物にて形成されるものであるため、透明性と耐熱性に優れており、各種用途に広く用いることができる。
また、本発明のシート状成形体は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物にて形成されるものであるため、透明性と耐熱性に優れており、各種用途に広く用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称する場合がある)は、ポリ乳酸樹脂(A)、特定の有機アミド化合物(B)およびアジピン酸エステル系可塑剤(C)を含有するものである。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称する場合がある)は、ポリ乳酸樹脂(A)、特定の有機アミド化合物(B)およびアジピン酸エステル系可塑剤(C)を含有するものである。
ポリ乳酸樹脂(A)としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体を用いることができる。
本発明においては、得られる成形体の機械的特性や耐熱性を考慮して、ポリ乳酸樹脂は結晶性であることが好ましく、その中でも融点が150℃以上であることが好ましい。融点が150℃未満であると、耐熱性に劣る場合がある。ポリ乳酸樹脂の融点は、L−乳酸とD−乳酸との共重合比率によって異なる。ポリ乳酸樹脂のなかでも、ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂は実用化が進んでいるものであるが、このポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂は光学純度によってその融点が異なる。ポリ乳酸樹脂の融点を150℃以上とするためには、D−乳酸成分の割合を5.0モル%以下とすることが好ましく、中でもD−乳酸成分の割合が2.0モル%以下であることが好ましく、さらに、D−乳酸成分の割合が1.5モル%以下であることが好ましい。なお、通常、ポリ乳酸樹脂の融点の上限は190℃程度である。
本発明においては、得られる成形体の機械的特性や耐熱性を考慮して、ポリ乳酸樹脂は結晶性であることが好ましく、その中でも融点が150℃以上であることが好ましい。融点が150℃未満であると、耐熱性に劣る場合がある。ポリ乳酸樹脂の融点は、L−乳酸とD−乳酸との共重合比率によって異なる。ポリ乳酸樹脂のなかでも、ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂は実用化が進んでいるものであるが、このポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸樹脂は光学純度によってその融点が異なる。ポリ乳酸樹脂の融点を150℃以上とするためには、D−乳酸成分の割合を5.0モル%以下とすることが好ましく、中でもD−乳酸成分の割合が2.0モル%以下であることが好ましく、さらに、D−乳酸成分の割合が1.5モル%以下であることが好ましい。なお、通常、ポリ乳酸樹脂の融点の上限は190℃程度である。
ポリ乳酸樹脂(A)の残留ラクチド量は、0.5質量%未満であることが好ましい。残留ラクチド量が0.5質量%以上であると、加工中の発煙が大きいなど加工性に悪影響を及ぼす可能性があるだけでなく、得られた成形体の加水分解が促進される場合がある。
ポリ乳酸樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、10万〜30万であることが好ましく、より好ましくは12万〜20万である。ポリ乳酸樹脂のMwが10万未満であると、溶融粘度が低すぎるため、得られる成形体は機械的特性に劣るものになりやすい。一方、Mwが30万を超えると、溶融粘度が高くなりすぎて、成形体を得る際に、溶融押出が困難となりやすい場合がある。なお、ポリ乳酸樹脂のMwは後述のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中には、ポリ乳酸樹脂(A)以外の他の熱可塑性樹脂が含有されていてもよいが、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の含有量は、ポリ乳酸系樹脂組成物全体に対して80質量%以上であることが好ましく、中でも90質量%以上であることが好ましく、さらには93質量%以上であることが好ましい。
ポリ乳酸樹脂(A)は市販品を好適に用いることができ、例えば、ネイチャーワークス社製、商品名「2500HP」、「3100HP」、「4032D」、「3001D」、「4042D」等が挙げられる。
ポリ乳酸樹脂(A)は市販品を好適に用いることができ、例えば、ネイチャーワークス社製、商品名「2500HP」、「3100HP」、「4032D」、「3001D」、「4042D」等が挙げられる。
本発明においては、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度を高め、ポリ乳酸樹脂が結晶化したときの透明性を維持することを目的として、下記式(1)又は式(2)に示す有機アミド化合物(B)(以下、単に「有機アミド化合物(B)」と称する場合がある)を、アジピン酸エステル系可塑剤(C)とともに用いることが必要である。有機アミド化合物(B)は核剤としての効果を奏することができ、かつポリ乳酸樹脂との相溶性に優れる化合物である。このため、有機アミド化合物(B)を用いた場合には、他の結晶核剤を用いた場合と比較して、透明性に優れた成形体を得ることができるという利点がある。
また、有機アミド化合物(B)の融点は110〜150℃とすることが好ましい。そして、成形時の熱処理温度より高く、かつ樹脂組成物を得る際の混練温度以下のものを選択することが好ましい。混練時に結晶核剤が溶解することによってその分散性が向上し、熱処理温度より高いと結晶核生成の安定化や熱処理温度が上げられるため、結晶化速度向上の観点でも好ましい。さらにこのような融点のものは、樹脂の溶融状態から冷却過程で速やかに微細な結晶を多数析出するので、透明性、結晶化速度向上の観点でも好ましい。
有機アミド化合物(B)としては、具体的には以下のような化合物が挙げられる。メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、N,N´−ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミドなどが挙げられる。これらの中でも、結晶化速度の調整が容易であるという観点、透明性の観点から、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N´−ジステアリルアジピン酸アミドを用いることが好ましい。これらの有機アミド化合物(B)は、単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物における有機アミド化合物(B)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが必要であり、中でも0.2〜1.5質量部であることが好ましく、0.3〜1.2質量部であることがより好ましい。0.1質量部未満では核剤としての効果が乏しいため、結晶化速度が不十分であるために、得られた成形体は耐熱性に劣るものになる。また、生成される結晶核が少なくなるため、結晶のサイズが大きくなり得られる成形体は透明性に劣るものとなる。一方、2質量部を超える場合は、結晶核剤としての効果が飽和するだけではなく、有機アミド化合物の添加量が多すぎるために、ポリ乳酸系樹脂組成物の透明性が低下する。
次に、アジピン酸エステル系可塑剤(C)について説明する。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度を高め、ポリ乳酸樹脂が結晶化したときの透明性を維持することを目的として、アジピン酸エステル系可塑剤(C)を含有するものである。アジピン酸エステル系可塑剤(C)は、ポリ乳酸樹脂との相溶性に優れる可塑剤である。そのため、アジピン酸エステル系可塑剤を用いた場合には、他の可塑剤を用いた場合と比較して、結晶化が速く、透明性に優れた成形体を得ることができるという利点がある。
アジピン酸エステル系可塑剤(C)としては、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アジペート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、ベンジル[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アジペート、ジ−n−ブチルアジペート、ジオクチルアジペート、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルグリコールアジペート、ベンジルブチルジグリコールアジペートなどが挙げられる。
中でも、ポリ乳酸樹脂との相溶性や透明性の観点から、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アジペート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、ベンジル[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アジペートを好適に用いることができる。これらのアジピン酸エステル系可塑剤(C)は、単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。
中でも、ポリ乳酸樹脂との相溶性や透明性の観点から、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アジペート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、ベンジル[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アジペートを好適に用いることができる。これらのアジピン酸エステル系可塑剤(C)は、単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物におけるアジピン酸エステル系可塑剤(C)の含有量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが必要であり、0.2〜1.5質量部であることが好ましく、0.3〜1.2質量部であることがより好ましい。含有量が0.1質量部未満では結晶化促進効果に乏しく、成形時に充分に結晶化せず、得られる成形体は耐熱性に劣るものとなる。一方、含有量が2質量部を超えると、結晶核の生成速度よりも結晶成長速度が速くなり、結晶サイズが大きくなるために、透明性に劣るものとなる。また、可塑剤添加量が多くなるとガラス転移温度が下がるために、得られる成形体は耐熱性や耐湿熱性に劣るものとなる。さらに、ブリードアウトしやすくなるために、外観が悪くなる場合もある。
ポリ乳酸樹脂(A)に有機アミド化合物(B)やアジピン酸エステル系可塑剤(C)を単独で添加しても、本発明の効果を得ることができない。一般的にポリマーの結晶化はポリマー結晶核の生成、結晶成長の2段階で進行する。上記の有機アミド化合物(B)は、ポリ乳酸樹脂(A)中で分散性よく存在することができ、冷却時には瞬時に多数の微細な結晶核剤の結晶を生成し、その結果としてポリマー結晶核生成を促進させ、かつ結晶核数を増やす効果が著しい。しかしながら、結晶核が生成しても、結晶成長速度が遅いとトータルの結晶化速度は満足のいくレベルに到達しない。アジピン酸エステル系可塑剤(C)は、ポリマーの結晶成長速度を向上させる効果が著しく高い。有機アミド化合物(B)とアジピン酸エステル系可塑剤(C)を併用することで、結晶核の生成と結晶成長の両者をバランスよく向上させることができる。
さらに、透明性維持の観点からも有機アミド化合物(B)とアジピン酸エステル系可塑剤(C)の組み合わせが好ましい。ポリマーの結晶化において、多数のポリマー結晶核から均一に結晶成長をさせると微結晶化し、透明性が高くなる。そのため、多数の結晶核を生成できる有機アミド化合物(B)と結晶成長速度を向上させる効果が高いアジピン酸エステル系可塑剤(C)の組み合わせが好ましい。
そして、透明性と耐熱性の両者を向上させるには、結晶核の量と結晶サイズのバランスを取ることが重要であり、そのためには、有機アミド化合物(B)とアジピン酸エステル系可塑剤(C)をバランスよく添加することが重要となる。
つまり、有機アミド化合物(B)の含有量をb、アジピン酸エステル系可塑剤(C)の含有量をcとしたとき、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、両者の合計含有量(b+c)が2.5質量部以下であることが好ましく、中でも2.0質量部以下であることが好ましく、さらには1.5質量部以下であることが好ましい。
さらに、bとcの比率が、0.3<c/b<1.5であることが好ましく、0.4<c/b<1.2であることがさらに好ましい。bとcの比率がこの範囲内のものとなる場合、結晶核生成と結晶成長のバランスがよく、透明性と耐熱性ともに特に優れた成形体を得ることが可能となる。
ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化をより促進するために、本発明の効果を損なわない範囲において、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、上記の有機アミド化合物(B)以外の結晶核剤を配合することも可能である。このような結晶核剤としては、有機系結晶核剤や無機系結晶核剤が挙げられる。有機系結晶核剤としては、ホスホン酸金属塩、スルホン酸金属塩、芳香族アミドなどが挙げられる。無機系結晶核剤としては、シリカ、タルク、スメクタイト、マイカ、バーミキュライト、膨潤性フッ素雲母などの層状珪酸塩などが挙げられる。
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化をより促進するために、必要に応じて架橋剤を併用し、ポリ乳酸樹脂(A)に架橋を施してもよい。
架橋剤としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シラン化合物、無水多価カルボン酸、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、有機過酸化物、金属錯体などが挙げられる。これらの架橋剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋剤としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シラン化合物、無水多価カルボン酸、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、有機過酸化物、金属錯体などが挙げられる。これらの架橋剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ヒドロキシプロピルモノメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。
シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。無水多価カルボン酸としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水アジピン酸、無水トリメリット酸などが挙げられる。
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルなどが挙げられる。イソシアネート化合物としては、ジイソシアネート、トリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
有機過酸化物としては、n−ブチル−4,4−ビス−t−ブチルパーオキシバリレート、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカルボネート、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパ−オキソナンなどが挙げられる。なお、有機過酸化物は樹脂との混合の際に分解して消費されるため、得られたポリ乳酸系樹脂組成物中には残存しない場合がある。金属錯体としては、蟻酸リチウム、ナトリウムメトキシド、プロピオン酸カリウム、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。
上記の架橋剤の含有量は、透明性、成形体への加工性の観点から、ポリ乳酸系樹脂組成物全体に対して、0.01〜1.0質量%であることが好ましく、0.01〜0.5質量%であることがより好ましい。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、耐湿熱性向上の観点から、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物およびオキサゾリン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の末端封鎖剤を配合してもよい。末端封鎖剤の配合量は、結晶化速度の阻害の観点から、ポリ乳酸系樹脂組成物全量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、その特性を損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、植物繊維、強化繊維、耐候剤、帯電防止剤、耐衝撃剤、相溶化剤等の添加剤を添加することができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を得る方法としては、溶融混練などの公知の方法により、ポリ乳酸樹脂(A)、有機アミド化合物(B)、アジピン酸エステル系可塑剤(C)および必要に応じて添加する添加剤とを混練する方法が挙げられる。溶融混練に際しては、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダーなどの一般的な混練機を用いることができるが、ポリ乳酸樹脂に対する各成分の分散性向上のためには、二軸押出機を用いることが好ましい。
上記のように、溶融混練してポリ乳酸系樹脂組成物を得る方法においては、ポリ乳酸樹脂(A)と有機アミド化合物(B)をドライブレンドしてホッパーから投入してもよいし、有機アミド化合物(B)を押出機の途中からフィーダーなどを利用して供給してもよい。また、アジピン酸エステル系可塑剤(C)は室温では液体のため、加熱定量送液装置などを利用して混練の途中から供給する方法がより好ましい。その後、得られたポリ乳酸系樹脂組成物をストランド状に引き取り冷却した後、ペレット状にカッティングして、ポリ乳酸系樹脂組成物のペレットを得ることができる。
次に、本発明の成形体について説明する。本発明の成形体は、上記した本発明のポリ乳酸系樹脂組成物にて形成されているものである。本発明の成形体としては、射出成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形等の種々の方法にて得られたものが挙げられる。一旦押出成形にて成形体(シート状物)を得た後、再度加熱加工を行い、成形体としたものであってもよい。また、一旦射出成形にて成形体(プリフォーム)を得た後、ブロー成形を行い、成形体としたものであってもよい。つまり、最終的な成形体及びその成形体を得るために使用される成形体(中間体)ともに本発明の成形体に含まれる。
中でも、本発明の成形体としては、押出成形によりシート状にしたシート状成形体が好ましい。シート状成形体は、通常、後述するような成形加工方法により各種の成形体を得るために使用される。
本発明のシート状成形体は、下記(イ)〜(ハ)を同時に満足するものである。
(イ)厚みが100〜500μmである。
(ロ)110℃、20秒熱処理後のヘイズ値が15以下である。
(ハ)(ロ)の熱処理後、DSCで測定した融解熱量が25J/g以上である。
本発明のシート状成形体は、下記(イ)〜(ハ)を同時に満足するものである。
(イ)厚みが100〜500μmである。
(ロ)110℃、20秒熱処理後のヘイズ値が15以下である。
(ハ)(ロ)の熱処理後、DSCで測定した融解熱量が25J/g以上である。
本発明のシート状成形体の厚みは、100〜500μmであり、中でも200〜400μmとすることが好ましい。用途や要求される性能等によってこれらの範囲内で厚みを適宜設定することが好ましい。
(ロ)の条件は、本発明のシート状成形体は、成形加工時の熱処理を受けた後も透明性を維持していることを示す指標である。成形加工時の一般的な熱処理条件として、110℃、20秒間の熱処理を採用したものであり、本発明のシート状成形体は、この熱処理後のヘイズ値(Hb)が15以下であることが好ましく、中でも12以下であることが好ましく、さらには10以下であることが好ましい。ヘイズ値(Hb)が15を超えるものであると、成形加工後に得られる成形体は透明性に劣るものとなる。
そして、本発明のシート状成形体は、(ハ)の条件として、110℃、20秒熱処理後、DSCで測定した融解熱量が25J/g以上であることが好ましく、中でも30J/g以上であることが好ましく、さらには32J/g以上であることが好ましい。この値は、成形加工後の結晶化度を示し、耐熱性を示す指標である。融解熱量が25J/g未満であると、成形加工後に得られる成形体は結晶化度が進んでいないものとなり、耐熱性に劣るものとなる。
さらに、本発明のシート状成形体は、(ロ)の熱処理(110℃、20秒熱処理)後のシートを、1700W、60秒電子レンジで処理した後のヘイズ値(Hd)が20以下であることが好ましく、中でも18以下であることが好ましく、さらには15以下であることが好ましい。この値は、成形加工後に得られた成形体の耐熱性を透明性の観点から見た指標である。1700w、60秒電子レンジで処理した後のヘイズ値(Hd)が20を超える場合、シート状成形体より得られる成形体は、電子レンジで加熱すると透明性に劣るものとなる。
なお、(ロ)におけるヘイズ値(Hb)と上記のヘイズ値(Hd)の差〔(Hd)−(Hb)〕は、10以下であることが好ましく、中でも5以下であることが好ましい。このヘイズ値の差が10を超えるものであると、本発明のシート状成形体より得られる成形体は、電子レンジで処理した後に透明性に劣るものとなる。
なお、本発明におけるヘイズの測定方法は、JIS K−7105に従って行うものである。
本発明のシート状成形体の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法などが挙げられる。中でも、汎用性の観点から、Tダイを用いて材料を溶融混練して押出すTダイ法が好ましい。
Tダイ法により、シート状成形体を製造する場合には、予め溶融混練などの公知の方法で、ポリ乳酸系樹脂(A)、有機アミド系化合物(B)、アジピン酸エステル系可塑剤(C)を混練して樹脂組成物を得、該樹脂組成物をペレット化したものを成形機に供給することが好ましい。また、有機アミド系化合物(B)やアジピン酸エステル系可塑剤(C)のマスターバッチを用いてシート状成形体を作製する方法も好ましい。
本発明のシート状成形体の製造方法の一例を以下に示す。例えば、ポリ乳酸系樹脂組成物のペレットを、一軸押出機あるいは二軸押出機のホッパーに供給し、該二軸押出機を、例えば、シリンダー温度180〜230℃、Tダイ温度200〜230℃に加熱し、樹脂組成物のペレットを溶融混練して押出し、30〜50℃の温度範囲に設定されたキャストロールにて冷却することで、シート状成形体を得ることができる。
上記のようなシート状成形体を成形加工して成形体を得る方法については、特に限定されるものではないが、汎用性の観点から、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プレス成形のうちのいずれかの成形加工方法を採用することが好ましい。成形加工に先立って、熱板もしくは熱風によりシート状成形体を加熱しておくことが好ましい。熱板方式では、シート状成形体と熱板が直接接触するため、熱板の表面状態がシート状成形体に転写して成形体の透明性を損なう場合があるため、間接的な熱風方式により加熱を行うことがより好ましい。
シート状成形体を加熱する方法の具体的な例を以下に説明する。まず、(ポリ乳酸系樹脂組成物のガラス転移温度+20)℃〜(ポリ乳酸系樹脂組成物の融点−10)℃の範囲で、シート状成形体を熱板もしくは熱風にて5〜60秒加熱し、シート状成形体を軟化させ、加えて一部を結晶化させる。その後、真空または圧空の方法で賦型する。このとき、加熱温度が低すぎたり加熱時間が短すぎたりすると、軟化が不十分であり賦型できない。一方、加熱温度が高すぎたり加熱時間が長すぎたりすると、シート状成形体の結晶化が進行しすぎて、賦型性が低下する。
成形加工の際の金型温度は、ポリ乳酸系樹脂組成物のガラス転移温度以下に設定して、賦型後速やかに離型しても良いが、金型温度を実質的にポリ乳酸系樹脂組成物が最も結晶化しやすい温度である80〜130℃の範囲内で、金型内で結晶化させることが好ましく、90〜120℃で結晶化させることがより好ましい。金型温度が130℃を超えると、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度が極端に遅くなるとともに、ポリ乳酸樹脂の融点に近づくため結晶が融解してしまう恐れがあり、結果的に結晶化による硬化が遅れ、離型に必要な剛性を得るのに時間がかかる場合がある。一方、金型温度が80℃未満であると、結晶化が遅くなり、未結晶な部分が残り、耐熱性が不十分となる場合がある。なお、成形にかかる時間(成形サイクル)は、60秒以下であることが好ましく、中でも30秒以下であることが好ましい。
上記のような方法で得られた本発明のシート状成形体より得られた成形体の一例を以下に示す。例えば、従来耐熱性が不足するために使用が困難であった滅菌容器、熱湯を注ぐような容器、レトルト容器、電子レンジ内でも使用可能な容器、弁当箱、ホットドリンクの蓋などの各種容器やトレイ等に使用でき、さらに透明性が必要とされる容器蓋、ブリスターパック、クリアケースなどに好適に使用できる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例および比較例の評価に用いた測定法は次の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)
示差屈折率検出器(島津製作所社製、商品名「RID−10A」)を備えたゲル浸透クロマトグラフィ装置(島津製作所社製)を用い、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として、流速1.0ml/分、40℃で測定した。カラムは、SHODEX KF−805L、KF−804L(昭和電工社製)を用いた。サンプルは、樹脂組成物10mgをクロロホルム0.5mlに溶解後、THF5mlで希釈し、0.45μmのフィルターでろ過してから測定に供した。分子量は、ポリスチレン(Waters社製)を標準試料として換算した。
(2)ポリ乳酸樹脂の残留ラクチド量
測定用試料溶液は、試料0.5g、ジクロロメタン10ml、100ppm内部標準液を0.5ml加えてシェーカー(150rpm×40分)により攪拌し溶解させた。そこへシクロヘキサンを添加し、ポリマーを析出させ、HPLC用ディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過し、ガスクロマトグラフィーで測定した。標準物質は東京化成工業社製のL−ラクチドを用い、内部標準物質は2,6−ジメチル−γ−ピロンを用いた。
ガスクロマトグラフィー(Hewlwtt Packard社製、商品名「HP−6890」)は、ヘリウムをキャリアガスとして、流速2.5ml/分で、オーブンプログラムは80℃で1分間保持し、20℃/分で200℃まで昇温し、30℃/分で280℃まで昇温し、5分間保持する条件で行った。カラムは、J&W社製のDB−17(30m×0.25mm×0.25μm)を用い、検出器は水素炎イオン検出器(温度300℃)を用い、内部標準法で測定した。
(1)ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)
示差屈折率検出器(島津製作所社製、商品名「RID−10A」)を備えたゲル浸透クロマトグラフィ装置(島津製作所社製)を用い、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として、流速1.0ml/分、40℃で測定した。カラムは、SHODEX KF−805L、KF−804L(昭和電工社製)を用いた。サンプルは、樹脂組成物10mgをクロロホルム0.5mlに溶解後、THF5mlで希釈し、0.45μmのフィルターでろ過してから測定に供した。分子量は、ポリスチレン(Waters社製)を標準試料として換算した。
(2)ポリ乳酸樹脂の残留ラクチド量
測定用試料溶液は、試料0.5g、ジクロロメタン10ml、100ppm内部標準液を0.5ml加えてシェーカー(150rpm×40分)により攪拌し溶解させた。そこへシクロヘキサンを添加し、ポリマーを析出させ、HPLC用ディスクフィルター(孔径0.45μm)で濾過し、ガスクロマトグラフィーで測定した。標準物質は東京化成工業社製のL−ラクチドを用い、内部標準物質は2,6−ジメチル−γ−ピロンを用いた。
ガスクロマトグラフィー(Hewlwtt Packard社製、商品名「HP−6890」)は、ヘリウムをキャリアガスとして、流速2.5ml/分で、オーブンプログラムは80℃で1分間保持し、20℃/分で200℃まで昇温し、30℃/分で280℃まで昇温し、5分間保持する条件で行った。カラムは、J&W社製のDB−17(30m×0.25mm×0.25μm)を用い、検出器は水素炎イオン検出器(温度300℃)を用い、内部標準法で測定した。
(3)ポリ乳酸樹脂のD体含有量
ポリ乳酸樹脂(A)または樹脂組成物の約0.3gを1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した後、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させた。このサンプル5mL、純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard製HP−6890SeriesGCsystemでGC測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをD体含有量(%)とした。
ポリ乳酸樹脂(A)または樹脂組成物の約0.3gを1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した後、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させた。このサンプル5mL、純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard製HP−6890SeriesGCsystemでGC測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをD体含有量(%)とした。
(4)ヘイズ
得られたシート状成形体、容器Aのそれぞれから得られた測定用サンプルを用い、JIS K−7105に従って各種のヘイズ値を測定して透明性を評価した。
1)シート状成形体の(ロ)におけるヘイズ値(Hb)
得られたシート状成形体からサンプルを切り出し、これを25μm厚のポリイミドフィルムで挟んだ後に、金型温度110℃のプレス機で0.5kgf/cm2・gで20秒間プレスした後、直径60mmの円状に取り出し、これを測定用サンプルとした。
2)シート状成形体のレンジ処理後のヘイズ値(Hd)
直径55mm、容量が50mLの陶器製の坩堝に水30mLを入れ、これに1)の測定用サンプルを置き、1700W、60秒間電子レンジで処理を行った。電子レンジ処理後のサンプルを測定用サンプルとした。
3)成形体のレンジ処理前のヘイズ値
得られた容器Aの底面部を切り出し、これをヘイズ測定用サンプル(7mg)とした。
4)成形体のレンジ処理後のヘイズ値
陶器製の容器に水100mLを投入し、得られた容器Aで蓋をし、1700Wの電子レンジで60秒処理し、この電子レンジ処理後の容器Aの底面部からサンプルを切り出し、これを測定用サンプル(7mg)とした。
(5)融解熱量
(4)のヘイズの測定において、「1)シート状成形体の(ロ)におけるヘイズ値」を測定したサンプルを用い、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、DSC装置「DSC7」)を用い、サンプルを20℃から200℃まで20℃/分の昇温速度で加熱した際の、昇温結晶化熱量(ΔHc)と結晶融解熱量(ΔHm)を測定し、下記式により融解熱量を算出した。
融解熱量(J/g)=|ΔHm|−|ΔHc|
得られたシート状成形体、容器Aのそれぞれから得られた測定用サンプルを用い、JIS K−7105に従って各種のヘイズ値を測定して透明性を評価した。
1)シート状成形体の(ロ)におけるヘイズ値(Hb)
得られたシート状成形体からサンプルを切り出し、これを25μm厚のポリイミドフィルムで挟んだ後に、金型温度110℃のプレス機で0.5kgf/cm2・gで20秒間プレスした後、直径60mmの円状に取り出し、これを測定用サンプルとした。
2)シート状成形体のレンジ処理後のヘイズ値(Hd)
直径55mm、容量が50mLの陶器製の坩堝に水30mLを入れ、これに1)の測定用サンプルを置き、1700W、60秒間電子レンジで処理を行った。電子レンジ処理後のサンプルを測定用サンプルとした。
3)成形体のレンジ処理前のヘイズ値
得られた容器Aの底面部を切り出し、これをヘイズ測定用サンプル(7mg)とした。
4)成形体のレンジ処理後のヘイズ値
陶器製の容器に水100mLを投入し、得られた容器Aで蓋をし、1700Wの電子レンジで60秒処理し、この電子レンジ処理後の容器Aの底面部からサンプルを切り出し、これを測定用サンプル(7mg)とした。
(5)融解熱量
(4)のヘイズの測定において、「1)シート状成形体の(ロ)におけるヘイズ値」を測定したサンプルを用い、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、DSC装置「DSC7」)を用い、サンプルを20℃から200℃まで20℃/分の昇温速度で加熱した際の、昇温結晶化熱量(ΔHc)と結晶融解熱量(ΔHm)を測定し、下記式により融解熱量を算出した。
融解熱量(J/g)=|ΔHm|−|ΔHc|
(6)成形体の耐熱性
陶器製の容器に水100mLを投入し、容器Aで蓋をし、1700Wの電子レンジで60秒処理した。電子レンジ処理後の容器Aの外観を目視にて変形の有無を判断し、変形が生じていないものを○、変形が確認されたものを×、容器の変形はないがブリードアウトに起因するべとつきが確認されたものを△の3段階で評価した。
また、容器Aの電子レンジ処理前後の容積を測定し、下記式により、寸法変化率を算出した。寸法変化率は、0.5%以下であることが好ましく、0.4%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましい。
寸法変化率(%)=〔100×(電子レンジ処理前容積−電子レンジ処理後容積)/電子レンジ処理後容積)
陶器製の容器に水100mLを投入し、容器Aで蓋をし、1700Wの電子レンジで60秒処理した。電子レンジ処理後の容器Aの外観を目視にて変形の有無を判断し、変形が生じていないものを○、変形が確認されたものを×、容器の変形はないがブリードアウトに起因するべとつきが確認されたものを△の3段階で評価した。
また、容器Aの電子レンジ処理前後の容積を測定し、下記式により、寸法変化率を算出した。寸法変化率は、0.5%以下であることが好ましく、0.4%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましい。
寸法変化率(%)=〔100×(電子レンジ処理前容積−電子レンジ処理後容積)/電子レンジ処理後容積)
また、実施例および比較例に用いた各種原料は次の通りである。
・ポリ乳酸樹脂
(A−1):ネイチャーワークス社製、「4032D」(D体含有量:1.4モル%、残留ラクチド量:0.2質量%、Mw:160000)
・ポリ乳酸樹脂
(A−1):ネイチャーワークス社製、「4032D」(D体含有量:1.4モル%、残留ラクチド量:0.2質量%、Mw:160000)
・有機アミド化合物(B)
(B−1):エチレンビスステアリン酸アミド(伊藤製油社製「J−550S」、融点142℃)
(B−2):メチレンビスステアリン酸アミド(日本化成社製「ビスアミドLA」、融点142℃)
(B−3):ジステアリルアジピン酸アミド(日本化成社製「スリパックスZSA」、融点141℃)
(B−4):ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド(日本化成社製「スリパックスZHO」、融点110℃)
(B−5):ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(日本化成社製「スリパックスZHH」、融点135℃)
・その他の有機アミド化合物
(X−1):エチレンビスベヘン酸アミド(日本化成社製「スリパックスB」、融点142℃)
(B−1):エチレンビスステアリン酸アミド(伊藤製油社製「J−550S」、融点142℃)
(B−2):メチレンビスステアリン酸アミド(日本化成社製「ビスアミドLA」、融点142℃)
(B−3):ジステアリルアジピン酸アミド(日本化成社製「スリパックスZSA」、融点141℃)
(B−4):ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド(日本化成社製「スリパックスZHO」、融点110℃)
(B−5):ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(日本化成社製「スリパックスZHH」、融点135℃)
・その他の有機アミド化合物
(X−1):エチレンビスベヘン酸アミド(日本化成社製「スリパックスB」、融点142℃)
・アジピン酸エステル系可塑剤(C)
(C−1):ベンジル[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アジペート(大八化学社製「DAIFATTY−101」)
・その他の可塑剤
(Y−1):アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学社製「ATBC」)
(C−1):ベンジル[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アジペート(大八化学社製「DAIFATTY−101」)
・その他の可塑剤
(Y−1):アセチルクエン酸トリブチル(田岡化学社製「ATBC」)
実施例1
ポリ乳酸樹脂(A−1)を100質量部に対して、有機アミド化合物(B−1)を0.6質量部、アジピン酸エステル系可塑剤(C−1)を0.4質量部を二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS型)に供給し、押出温度190℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量15kg/hで溶融混練を行い、押出し、ペレット状に加工し、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。その後、得られたペレットを、60℃、40時間真空乾燥させた。
乾燥させたペレットを、幅1000mmのTダイを装着したスクリュー径90mmの単軸押出機を用いて、押出温度215℃にて溶融押出し、40℃に設定されたキャストロールにて厚み400μmのシート状成形体を作製した。
得られたシート状成形体を連続真空・圧空成形機(浅野研究所製FLPD−141−W型)に供給し、シート温度100℃で6秒予熱後、110℃の金型で20秒間プレスを行い、容器A〔開口部内径=150mm、底部内径=60mm、容器の絞り比(L/D)=0.5、どんぶり型のもの〕を成形した。
ポリ乳酸樹脂(A−1)を100質量部に対して、有機アミド化合物(B−1)を0.6質量部、アジピン酸エステル系可塑剤(C−1)を0.4質量部を二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS型)に供給し、押出温度190℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量15kg/hで溶融混練を行い、押出し、ペレット状に加工し、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。その後、得られたペレットを、60℃、40時間真空乾燥させた。
乾燥させたペレットを、幅1000mmのTダイを装着したスクリュー径90mmの単軸押出機を用いて、押出温度215℃にて溶融押出し、40℃に設定されたキャストロールにて厚み400μmのシート状成形体を作製した。
得られたシート状成形体を連続真空・圧空成形機(浅野研究所製FLPD−141−W型)に供給し、シート温度100℃で6秒予熱後、110℃の金型で20秒間プレスを行い、容器A〔開口部内径=150mm、底部内径=60mm、容器の絞り比(L/D)=0.5、どんぶり型のもの〕を成形した。
実施例2〜11、比較例1〜10
有機アミド系化合物(B)とアジピン酸エステル系可塑剤(B)の配合量および種類を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
そして、実施例1と同様にして、シート状成形体を得、得られたシート状成形体から容器Aを得た。
有機アミド系化合物(B)とアジピン酸エステル系可塑剤(B)の配合量および種類を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
そして、実施例1と同様にして、シート状成形体を得、得られたシート状成形体から容器Aを得た。
実施例1〜11、比較例1〜10で得られたポリ乳酸系樹脂組成物、シート状成形体及び容器の特性値及び評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜11のポリ乳酸系樹脂組成物は、成形加工性に優れるものであった。そして、該樹脂組成物より得られたシート状成形体は、熱処理後も透明性に優れ、かつ熱処理後の融解熱量が高く、耐熱性にも優れていた。さらに、シート状成形体を成形加工して得られた容器も、透明性と耐熱性に優れ、外観も良好なものであった。また、電子レンジ処理後も透明性に維持していた。
一方、比較例1のポリ乳酸系樹脂組成物は、アジピン酸エステル系可塑剤(C)が少なすぎたために結晶化速度が不十分となり、該樹脂組成物から得られたシート状成形体は、熱処理後の融解熱量が低く、耐熱性に劣るものとなった。また、該シート状成形体を成形加工して得られた容器は、レンジ処理後の変形が大きく、ヘイズの悪化も大きかった。
比較例2、5、9、10のポリ乳酸系樹脂組成物は、アジピン酸エステル系可塑剤(C)が多すぎたために、結晶サイズが大きくなりすぎ、該樹脂組成物から得られたシート状成形体は、熱処理後の透明性に劣るものであった。さらに、該シート状成形体を成形加工して得られた容器は、レンジ処理後にブリードアウトが見られ、外観に劣っていた。比較例3のポリ乳酸系樹脂組成物は、有機アミド化合物の添加量が少なすぎたために、結晶核の量が不十分となり、結晶サイズが大きくなったため、得られたシート状成形体、容器ともに透明性と耐熱性に劣るものとなった。比較例4のポリ乳酸系樹脂組成物は、有機アミド化合物の添加量が多すぎたために、得られたシート状成形体、容器ともに透明性に劣るものとなった。
比較例6のポリ乳酸系樹脂組成物は、アジピン酸エステル系可塑剤(C)以外の可塑剤を用いたために、結晶化速度が不十分となり、得られたシート状成形体、容器ともに透明性と耐熱性の両者に劣るものであった。
比較例7、8のポリ乳酸系樹脂組成物は、本発明で規定する有機アミド化合物(B)以外の有機アミド化合物を用いたため、ポリ乳酸樹脂との相溶性に劣っていた。そして得られたシート状成形体、容器ともに透明性と耐熱性の両者に劣るものであった。
Claims (4)
- 有機アミド化合物(B)とアジピン酸エステル系可塑剤(C)の合計含有量が、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、2.5質量部以下であり、かつ有機アミド化合物(B)の含有量をb、アジピン酸エステル系可塑剤(C)の含有量をcとしたときに以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
0.3<c/b<1.5 - 有機アミド化合物(B)がエチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、N,N´−ジステアリルアジピン酸アミドから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物にて形成されるシート状成形体であって、下記(イ)〜(ハ)を同時に満足することを特徴とするシート状成形体。
(イ)厚みが100〜500μmである。
(ロ)110℃、20秒熱処理後のヘイズ値が15以下である。
(ハ)(ロ)の熱処理後、DSCで測定した融解熱量が25J/g以上である。
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