JP2016126907A - 燃料電池用コアシェル触媒の製造方法及び燃料電池用コアシェル触媒製造装置 - Google Patents

燃料電池用コアシェル触媒の製造方法及び燃料電池用コアシェル触媒製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】触媒活性の高い燃料電池用コアシェル触媒を製造する。【解決手段】コア金属粒子含有分散液を収容し、且つ、作用極と、対極と、参照極と、コア金属粒子の電位をモニターするためのプローブ電極を備える反応容器と、電位制御部を有する装置を準備し、コア金属粒子含有分散液を攪拌しながら、参照極に対するプローブ電極の電位が所定の電位以下になるまで、作用極に電位を印加し、反応容器に銅イオン含有電解液を供給し、銅イオン含有電解液中において、コア金属粒子に銅の酸化還元電位よりも貴な電位を作用極に印加することによって、コア金属粒子の表面を銅で被覆し、コア金属粒子に白金イオン含有溶液を接触させることによって、コア金属粒子の表面の銅を白金に置換し、シェルを形成する。【選択図】図6

Description

本発明は、燃料電池用コアシェル触媒の製造方法及び燃料電池用コアシェル触媒製造装置に関する。
燃料電池用電極触媒として、白金等の貴金属の使用量を低減することを目的としたコアシェル触媒が知られている。
例えば、特許文献1には、銅アンダーポテンシャル析出(Cu−UPD)を応用した置換メッキにより、コアシェル触媒を製造する方法が記載されている。
特開2013−215701号公報
燃料電池用コアシェル触媒の製造は、高い触媒活性を得るためには、Cu−UPD処理前に、コア金属粒子に対して、コア金属粒子表面の酸化物等の不純物を除去することを目的としたクリーニング処理が必要である。
従来、クリーニング処理は、Cu−UPD処理前に、ポテンショスタット等の電位制御装置を用いて、反応容器内に配置した作用極に電位を印加し、コア金属粒子含有分散液中でコア金属粒子に電位サイクルをかける方法により行われていた。
しかし、作用極に印加している電位と実際にコア金属粒子含有分散液中に浮遊しているコア金属粒子に印加される電位は異なり、実際にコア金属粒子含有分散液中に浮遊しているコア金属粒子にどのような電位が印加されているのかが不明である。また、コア金属粒子は作用極と接触しないと電位が印加されず、作用極からコア金属粒子への電位の印加の効率は、コア金属粒子の作用極への衝突回数で決まるため作用極の構造や反応環境(温度、pH、攪拌条件等)に大きく依存する。
そのため、従来の方法では、コア金属粒子に狙いの電位が印加されているか否か判断することができず、コア金属粒子への電位の印加が不十分な場合、コア金属粒子のクリーニング処理が不十分になり、結果として、高活性な燃料電池用コアシェル触媒が得られないという問題がある。また、コア金属粒子への電位の印加が十分な場合、必要以上の時間をかけてコア金属粒子への電位の印加を行っていることとなり、非効率である。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、コア金属粒子への電位の印加によるコア金属粒子表面の酸化物等の不純物の除去を効率的且つ十分に行い、触媒活性の高い燃料電池用コアシェル触媒を製造する方法及び燃料電池用コアシェル触媒製造装置を提供することである。
本発明の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法は、コア金属を含むコアと、白金を含み且つ前記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を備える燃料電池用コアシェル触媒の製造方法であって、
コア金属粒子を含有するコア金属粒子含有分散液を収容し、且つ、作用極と、対極と、参照極と、前記コア金属粒子含有分散液中に浮遊している前記コア金属粒子の電位をモニターするためのプローブ電極を備える反応容器と、前記作用極と前記対極と前記参照極の電位を制御する電位制御部を有する装置を準備する準備工程と、
前記コア金属粒子含有分散液を攪拌しながら、前記参照極に対する前記プローブ電極の電位が所定の電位以下になるまで、前記作用極に電位を印加する電位印加工程と、
前記電位印加工程後、前記反応容器に銅イオン含有電解液を供給し、当該銅イオン含有電解液中において、前記コア金属粒子に銅の酸化還元電位よりも貴な電位を前記作用極に印加することによって、前記コア金属粒子の表面の少なくとも一部を銅で被覆する銅被覆工程と、
前記銅被覆工程後、前記コア金属粒子に、白金イオン含有溶液を接触させることによって、前記コア金属粒子の表面の少なくとも一部を被覆している銅を白金に置換し、前記シェルを形成する置換工程と、を有することを特徴とする。
本発明の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法において、前記コア金属粒子が担体に担持されていることが好ましい。
本発明の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法において、前記反応容器が前記作用極としても機能することが好ましい。
本発明の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法は、前記電位印加工程において、前記コア金属粒子含有分散液を攪拌しながら、前記参照極に対する前記プローブ電極の電位が所定の電位以下、且つ、前記作用極と前記対極との間に流れる電流値が定常状態になるまで、前記作用極に電位を印加することが好ましい。
本発明の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法において、前記コア金属がパラジウムであり、
前記電位印加工程において、前記コア金属粒子含有分散液を攪拌しながら、前記参照極に対する前記プローブ電極の電位が0.60〜0.15V(vs.RHE)の範囲内になるまで、前記作用極に電位を印加することが好ましい。
本発明の燃料電池用コアシェル触媒製造装置は、アンダーポテンシャル析出法により、コア金属を含むコアと、白金を含み且つ前記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を備える燃料電池用コアシェル触媒を製造する装置であって、
コア金属粒子を含有するコア金属粒子含有分散液を収容し、且つ、作用極と、対極と、参照極と、前記コア金属粒子含有分散液中に浮遊している前記コア金属粒子の電位をモニターするためのプローブ電極を備える反応容器と、
前記作用極と前記対極と前記参照極の電位を制御する電位制御部を有することを特徴とする。
本発明の燃料電池用コアシェル触媒製造装置において、前記反応容器が前記作用極としても機能することが好ましい。
本発明によれば、コア金属粒子が狙いの電位になっているか否かリアルタイムでモニターすることができる。また、本発明によれば、コア金属粒子の電位をモニターしながら電位制御を行うことにより、コア金属粒子への電位の印加によるコア金属粒子表面の酸化物等の不純物の除去を効率的且つ十分に行うことができ、結果として、触媒活性の高い燃料電池用コアシェル触媒を製造することができる。
本発明の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法の一例を示すフローチャートである。 本発明の燃料電池用コアシェル触媒製造装置の一例を示した斜視模式図である。 本発明の燃料電池用コアシェル触媒製造装置の一例を示した斜視模式図である。 参考実験例1及び2で得られたサイクリックボルタモグラムを重ねて示した図である。 実施例1の電位印加工程における電位印加開始時から2700秒経過時までのプローブ電極で測定されるPd/Cの電位挙動及びポテンショスタットで測定される作用極と対極間の電流挙動を示す図である。 実施例1、比較例1の燃料電池用コアシェル触媒の比活性を比較した棒グラフである。
1.燃料電池用コアシェル触媒の製造方法
本発明の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法は、コア金属を含むコアと、白金を含み且つ前記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を備える燃料電池用コアシェル触媒の製造方法であって、
コア金属粒子を含有するコア金属粒子含有分散液を収容し、且つ、作用極と、対極と、参照極と、前記コア金属粒子含有分散液中に浮遊している前記コア金属粒子の電位をモニターするためのプローブ電極を備える反応容器と、前記作用極と前記対極と前記参照極の電位を制御する電位制御部を有する装置を準備する準備工程と、
前記コア金属粒子含有分散液を攪拌しながら、前記参照極に対する前記プローブ電極の電位が所定の電位以下になるまで、前記作用極に電位を印加する電位印加工程と、
前記電位印加工程後、前記反応容器に銅イオン含有電解液を供給し、当該銅イオン含有電解液中において、前記コア金属粒子に銅の酸化還元電位よりも貴な電位を前記作用極に印加することによって、前記コア金属粒子の表面の少なくとも一部を銅で被覆する銅被覆工程と、
前記銅被覆工程後、前記コア金属粒子に、白金イオン含有溶液を接触させることによって、前記コア金属粒子の表面の少なくとも一部を被覆している銅を白金に置換し、前記シェルを形成する置換工程と、を有することを特徴とする。
本発明の製造方法における準備工程において、電位を印加する電極(作用極)とは独立した電極(プローブ電極)を反応容器内に配置し、電位印加工程を行うことにより、コア金属粒子含有分散液中を浮遊しているコア金属粒子がプローブ電極に衝突した時の、コア金属粒子の電位をモニターすることができる。
また、コア金属粒子含有分散液を攪拌することによって、コア金属粒子含有分散液中に浮遊している無数のコア金属粒子がプローブ電極に衝突する。そのため、プローブ電極を設けることにより、コア金属粒子含有分散液中に浮遊しているコア金属粒子の平均的な電位をリアルタイムでモニターすることができる。
したがって、本発明によれば、コア金属粒子が狙いの電位になっているか否かリアルタイムでモニターすることができる。また、上記モニターは、作用極の構造や反応環境(温度、pH、攪拌条件等)に依存することなく行うことができる。さらに、コア金属粒子の電位をモニターしながら電位制御を行うことにより、コア金属粒子への電位の印加によるコア金属粒子表面の酸化物等の不純物の除去を効率的且つ十分に行うことができ、結果として、触媒活性の高い燃料電池用コアシェル触媒を製造することができる。
本発明において、シェルがコアを被覆するとは、コアの全表面がシェルによって覆われている形態のみならず、コアの表面の少なくとも一部がシェルによって被覆され、コアの表面の一部が露出している形態も含まれる。さらに、シェルは、単原子層であっても、原子が2原子以上積層した多原子層であってもよいが、触媒活性向上の観点から、単原子層であることが好ましい。
以下、本発明の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法について詳しく説明する。
図1は、本発明の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法の一例を示すフローチャートである。
本発明の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法は、(1)準備工程、(2)電位印加工程、(3)銅被覆工程、及び、(4)置換工程を有し、必要に応じ、置換工程の後に(5)洗浄工程、(6)乾燥工程等を有する。
以下、各工程について、順に説明する。
(1)準備工程
準備工程は、コア金属粒子を含有するコア金属粒子含有分散液を収容し、且つ、作用極と、対極と、参照極と、前記コア金属粒子含有分散液中に浮遊している前記コア金属粒子の電位をモニターするためのプローブ電極を備える反応容器と、前記作用極と前記対極と前記参照極の電位を制御する電位制御部を有する装置を準備する工程である。
コア金属粒子含有分散液に用いられる溶媒は、水、有機溶媒等が挙げられ、水が好ましい。コア金属粒子含有分散液には、上記溶媒の他にも、例えば、酸等を含んでいてもよい。コア金属粒子分散液に添加できる酸としては、具体的には、硝酸、硫酸、過塩素酸、塩酸、次亜塩素酸等が挙げられ、硫酸が好ましい。
酸の濃度は、例えば、酸として硫酸を用いる場合には、硫酸の濃度は、0.001mol/L以上であることが好ましく、0.001〜1.0mol/Lであることが特に好ましい。
コア金属粒子の分散方法は、特に限定されないが、超音波ホモジナイザー、マグネチックスターラー、攪拌羽つきモーター等を用いる方法等が挙げられる。
コア金属は、パラジウム及びパラジウム合金が好ましく、パラジウムがより好ましい。
パラジウム合金の場合は、タングステン、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銀及び金からなる群より選ばれる金属材料との合金等が挙げられ、パラジウム合金を構成するパラジウム以外の金属は1種でも2種以上でもよい。
パラジウム合金を使用する場合には、合金全体の質量を100質量%としたときのパラジウムの含有割合が30質量%以上であることが好ましい。パラジウムの含有割合が30質量%以上であることにより、均一な白金含有シェルを形成することができるからである。
コア金属粒子の平均粒径は、特に限定されないが、10nm以下であることが好ましい。コア金属粒子の平均粒径が10nmを超える場合、白金の質量あたり表面積が小さくなり、必要な活性を得るには多くの白金が必要となるためコストがかかる。コア金属粒子の平均粒径が小さ過ぎると、燃料電池用コアシェル触媒の耐久性が低下するため、コア金属粒子の平均粒径は3nm以上であることが好ましい。
本発明に使用される粒子の平均粒径の算出方法は以下の通りである。すなわち、走査型電子顕微鏡(TEM)を用いて1,000,000倍のTEM写真をとり、粒子の平面上への投影面積と同一面積を有する真円の直径(円相当粒子径)を粒子の粒径とみなす。このような写真観察による粒径の測定を、同じ種類の500個の粒子について行い、これらの粒子の粒径の平均を平均粒径とする。なお、写真端部に観察される切れた粒子は解析から除外する。
コア金属粒子は、担体に担持されていることが好ましい。担体としては、特に限定されないが、本発明の燃料電池用コアシェル触媒を燃料電池の電極触媒層に使用した際、電極触媒層に導電性を担保する観点から、導電性担体を用いることが好ましい。
コア金属粒子を担持する担体として使用できる材料の具体例としては、ケッチェンブラック(商品名:ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)、バルカン(商品名:Cabot社製)、ノーリット(商品名:Norit社製)、ブラックパール(商品名:Cabot社製)、アセチレンブラック(商品名:Chevron社製)等の炭素粒子や炭素繊維等の導電性炭素材料、金属粒子や金属繊維等の金属材料、ペリレンレッド等の有機顔料等の非導電性材料が挙げられる。
担体の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜数百μm、より好ましくは0.01〜1μmである。担体の平均粒径が上記範囲未満であると、担体が腐食劣化する場合があり、当該担体に担持されるコア金属粒子が経時的に脱落してしまうおそれがある。また、担体の平均粒径が上記範囲を超える場合、比表面積が小さく、コア金属粒子の分散性が低下するおそれがある。
担体の比表面積は、特に限定されないが、好ましくは50〜2000m/g、より好ましくは100〜1600m/gである。担体の比表面積が上記範囲未満であると、担体へのコア金属粒子の分散性が低下し、十分な電池性能が発現しないおそれがある。また、担体の比表面積が上記範囲を超える場合、コア金属粒子の有効利用率が低下し、十分な電池性能が発現しないおそれがある。
担体によるコア金属粒子担持率[{(コア金属粒子質量)/(コア金属粒子質量+担体質量)}×100%]は特に限定されず、一般的には、20〜60%の範囲であることが好ましい。コア金属粒子の担持量が少なすぎると、触媒機能が十分に発現しないおそれがある。一方、コア金属粒子の担持量が多すぎると、触媒機能の観点からは特に問題は生じないかもしれないが、必要以上のコア金属粒子を担持させても、製造コストの上昇に見合った効果が得られにくくなる。
コア金属粒子を担体に担持する方法としては、従来から用いられている方法を採用することができる。例えば、担体を分散させた担体分散液に、コア金属粒子を混合し、ろ過、洗浄して、エタノール等に再分散した後、真空ポンプ等で乾燥する方法が挙げられる。乾燥後、必要に応じて、加熱処理してもよい。
プローブ電極としては、導電性を担保できるものであれば特に限定されないが、酸化還元反応がほとんど起こらず、酸性雰囲気下で変形しにくいものであることが好ましく、カーボンが特に好ましい。反応容器内におけるプローブ電極の配置場所は、作用極に接触せず、浮遊しているコア金属粒子と接触する場所であれば特に限定されない。
作用極(WE)としては、例えば、チタン、白金メッシュ、白金板、金板等の金属材料、グラッシーカーボン、カーボン板等の導電性炭素材料等の導電性が担保できる材料を用いることができる。また、反応に関与する作用極の表面積を大きくすることができる観点から、反応容器を上記導電性材料で形成し、作用極として機能させることが好ましい。金属材料の反応容器を作用極として用いる場合、反応容器の内壁には、腐食を抑制する観点から、RuOをコーティングすることが好ましい。炭素材料の反応容器を作用極として用いる場合は、コーティング無しでそのまま使用することが可能である。
対極(CE)としては、例えば、白金メッシュに白金黒をめっきしたもの及び導電性炭素繊維等を用いることができる。
参照極(RE)としては、可逆水素電極(reversible hydrogen electrode;RHE)、銀−塩化銀電極及び銀−塩化銀−塩化カリウム電極等を用いることができる。銀−塩化銀電極の測定値を可逆水素電極へ変換する場合は、事前にRHEと銀−塩化銀電極の電位差を測定しておき、あとで補正する。
電位制御部としては、ポテンショスタット及びポテンショガルバノスタット等を用いることができる。
(2)電位印加工程
電位印加工程は、前記コア金属粒子含有分散液を攪拌しながら、前記参照極に対する前記プローブ電極の電位が所定の電位以下になるまで、前記作用極に電位を印加する工程である。
電位印加工程により、コア金属粒子の表面から不純物であるコア金属酸化物等を除去し、コア金属粒子に対し、白金含有シェルを均一に被覆することができる。
本発明において「所定の電位」とは、コア金属酸化物がコア金属に還元される電位を意味する。コア金属酸化物がコア金属に還元される電位は、コア金属のサイクリックボルタンメトリー(CV)測定で得られるサイクリックボルタモグラムの還元波等から適宜設定することができる。
コア金属がパラジウムの場合の「所定の電位」は、0.60V(vs.RHE)以下、特に0.53V(vs.RHE)以下であることが好ましい(参考実験例1参照)。
また、コア金属がパラジウムの場合は、参照極に対するプローブ電極の電位が上記「所定の電位」以下、且つ、0.15V(vs.RHE)以上、特に0.37V(vs.RHE)以上の電位範囲内となるように作用極に電位を印加することが好ましい。0.15V(vs.RHE)以上であれば、パラジウムが水素を吸蔵することを抑制することができるため、後述する置換工程において、パラジウム粒子表面に均一な白金含有シェルを形成させることができる。また、0.37V(vs.RHE)以上であれば、電位印加工程後の銅被覆工程において、パラジウム粒子表面への銅の大量析出を抑制することができる(参考実験例2参照)。
電位印加工程においては、コア金属粒子の表面から不純物であるコア金属酸化物等を十分に除去する観点からコア金属粒子含有分散液を攪拌しながら、参照極に対するプローブ電極の電位が所定の電位以下、且つ、作用極と対極との間に流れる電流値が定常状態になるまで、作用極に電位を印加することが好ましい。
本発明において、「定常状態」とは、電位制御部により経時的に観測される作用極と対極との間に流れる電流値が、±10%の振れ幅の範囲内に収まっている状態のことを意味する。
参照極に対するプローブ電極の電位をモニターする方法は特に限定されず、電位制御部とは別に、電位計を設けてモニターする方法等が挙げられる。
コア金属粒子含有分散液を攪拌する方法は、特に限定されないが、超音波ホモジナイザー、マグネチックスターラー、攪拌羽つきモーター等を用いる方法等が挙げられる。
攪拌速度は、特に限定されないが、マグネチックスターラーを用いた場合、200〜1000rpmが好ましい。
本工程においては、コア金属粒子表面の原子配列を組み替えることによって触媒活性の高い結晶面を露出させ、コア金属粒子の表面活性を向上させる観点から、一定の電位範囲において、電位を複数回往復させることが好ましい。電位を複数回往復させる場合は、少なくとも、電位印加終了時に参照極に対するプローブ電極の電位が所定の電位以下になっていればよく、低電位の印加と高電位の印加を交互に繰り返す場合は、低電位の印加は、1サイクルごとに参照極に対するプローブ電極の電位が所定の電位以下になるまで行うことが好ましい。なお、低電位の印加と高電位の印加を交互に繰り返す場合は、最後の電位印加が低電位の印加であれば、最初の電位印加は、低電位の印加であっても高電位の印加であってもよい。
電位付与信号パターンは、矩形波、三角波、台形波等がある。低電位と高電位を繰り返すことに意味があるため、電位付与信号パターンは特に限定されない。
電位のサイクル数は、コア金属の種類、装置の規模等によって適宜設定することができ、コア金属がパラジウムの場合であって、電位付与信号パターンが矩形波の場合は、例えば、0.05〜0.30V(vs.RHE)で800〜2400秒ホールド、0.90V〜1.20V(vs.RHE)で800〜2400秒ホールドを1サイクルとし、10〜100サイクル行うことが好ましい。
また、電位付与信号パターンが三角波の場合の電位のサイクル数は、特に限定されず、10〜100サイクル行うことが好ましく、電位の掃引速度は、例えば、0.10〜5.0mV/秒とすることができる。
(3)銅被覆工程
銅被覆工程は、前記電位印加工程後、前記反応容器に銅イオン含有電解液を供給し、当該銅イオン含有電解液中において、前記コア金属粒子に銅の酸化還元電位よりも貴な電位を前記作用極に印加することによって、前記コア金属粒子の表面の少なくとも一部を銅で被覆する工程である。
銅イオン含有電解液としては、コア金属粒子の表面にCu−UPDによって銅を被覆させることができる電解液であれば特に限定されない。銅イオン含有電解液は、通常、溶媒に銅塩を所定量溶かしたものから構成されるが、特にこの構成に限定されず、銅イオンの一部又は全部が液中に解離して存在している電解液であればよい。
銅イオン含有電解液に用いられる溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられるが、コア金属粒子の表面への銅の析出を妨げないという観点から、水が好ましい。
銅イオン含有電解液に用いられる銅塩としては、具体的には、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、亜塩素酸銅、過塩素酸銅、シュウ酸銅等が挙げられる。
電解液中において、銅イオン濃度は、特に限定されないが、0.01〜1.0mol/Lであることが好ましい。
銅イオン含有電解液には、上記溶媒及び銅塩の他にも、例えば、酸等を含んでいてもよい。銅イオンを含有する電解液に添加できる酸としては、具体的には、硫酸、硝酸、塩酸、亜塩素酸、過塩素酸、シュウ酸等が挙げられる。なお、銅イオン含有電解液中の対アニオンと、コア金属粒子含有分散液中に含まれる酸の対アニオンとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、電解液は、予め、不活性ガスをバブリングしておくことが好ましい。コア金属粒子の酸化を抑制し、白金含有シェルによる均一な被覆が可能となるからである。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等を用いることができる。
コア金属粒子に電位を印加する方法は、特に限定されず、一般的な方法を採用することができる。例えば、銅イオン含有電解液中に、作用極、対極及び参照極を浸漬させ、作用極に電位を印加する方法が挙げられる。
印加する電位は、コア金属粒子の表面に銅を析出させることができる電位、すなわち、銅の酸化還元電位よりも貴な電位であれば、特に限定されないが、例えば、0.35〜0.7V(vs.RHE)の範囲内であることが好ましく、0.38V(vs.RHE)であることが特に好ましい。
電位を印加する時間は、特に限定されないが、60分以上行うことが好ましく、反応電流が定常となり、ゼロに近づくまで行なうことがより好ましい。
銅被覆工程は、コア金属粒子の表面の酸化防止や銅の酸化防止の観点から、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で行なうのが好ましい。
また、銅被覆工程において、銅イオン含有電解液は、必要に応じて適宜攪拌することが好ましい。例えば、作用極を兼ねる反応容器を用い、該反応容器内の銅イオン含有電解液にコア金属粒子を浸漬、分散させた場合、銅イオン含有電解液を攪拌することで、各コア金属粒子を作用極である反応容器の表面に接触させ、各コア金属粒子に均一に電位を印加させることができる。この場合、攪拌は、銅被覆工程中、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。
(4)置換工程
置換工程は、前記銅被覆工程後、前記コア金属粒子に、白金イオン含有溶液を接触させることによって、前記コア金属粒子の表面の少なくとも一部を被覆している銅を白金に置換し、前記シェルを形成する工程である。
置換工程において、コア金属粒子の表面に析出した銅に、白金イオン含有溶液を接触させることによって、イオン化傾向の違いにより、銅と白金とを置換することができる。
本発明におけるシェルには、白金及び白金合金が含まれる。
白金合金としては、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケル及び金からなる群より選ばれる金属材料との合金等が挙げられ、白金合金を構成する白金以外の金属は1種でも2種以上でもよい。
白金合金は、合金全体の質量を100質量%としたときの白金の含有割合が90質量%以上であることが好ましい。白金の含有割合が90質量%未満であるとすると、十分な触媒活性及び耐久性が得られないからである。
白金イオン含有溶液は、少なくとも白金イオンを含有するものであれば特に限定されず、反応抑制剤を含有していることが好ましい。白金イオン含有溶液中においては、白金はイオンとして存在していてもよいし、白金錯体等の白金化合物として存在していてもよい。
白金イオン含有溶液に用いることができる溶媒は、上述した銅イオン含有電解液に用いられる溶媒と同様とすることができる。また、白金イオン含有溶液には、上記溶媒及び白金塩の他にも、例えば、酸等を含んでいてもよい。酸としては、上述した銅イオン含有電解液に用いられる酸と同様とすることができる。
白金イオン含有溶液に用いられる白金塩は、例えば、KPtCl、KPtCl等を用いることができ、また、([PtCl][Pt(NH])等のアンモニア錯体を用いることもできる。
白金イオン含有溶液中において白金イオン濃度は特に限定されないが、0.0005〜0.1mol/Lであることが好ましい。
反応抑制剤は、銅と白金との置換反応を抑制することができるものであれば、特に限定されない。反応抑制剤としては、白金、コア金属粒子表面に析出した銅、コア金属粒子表面に露出したコア金属等と溶液中において錯体を形成する錯体形成剤等が挙げられる。
錯体形成剤としては、クエン酸、クエン酸のナトリウム塩、クエン酸のカリウム塩、エチレンジアミン四酢酸(以下、EDTAと称する場合がある)、EDTAのナトリウム塩、及びEDTAのカリウム塩等が挙げられ、クエン酸が好ましい。上記錯体形成剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの錯体形成剤は、溶液中において白金、銅と錯体を形成するため、銅と白金との置換反応を抑制し、その結果、コア金属粒子の表面に対し均一に白金含有シェルを被覆することができる。
白金イオン含有溶液中における反応抑制剤の濃度は特に限定されないが、白金イオン濃度の1〜10倍であることが好ましい。
白金イオン含有溶液は、事前に十分に攪拌し、コア金属粒子の表面の酸化防止や、銅の酸化防止の観点から、当該溶液中には予め窒素をバブリングさせることが好ましい。
白金イオン含有溶液の温度は、特に限定されないが、燃料電池用コアシェル触媒の触媒活性向上の観点から、−3〜10℃であることが好ましい。
置換工程において、反応系内の温度は、特に限定されないが、−3℃以上10℃以下に維持されていることが好ましい。−3℃未満であると、溶液が凍結して反応が進行しなくなる恐れがあり、10℃を超えると十分な白金質量活性が得られなくなる恐れがあるからである。
反応系内の温度を維持する方法としては、特に限定されず、循環冷却装置(チラー)、冷却管等を用いる方法が挙げられる。
置換時間(白金イオン含有溶液とコア金属粒子との接触時間)は、特に限定されないが、10分以上確保することが好ましく、白金イオン含有溶液を加えていくと、反応溶液の電位が上昇していくため、そのモニター電位が変化しなくなるまで置換させることがより好ましい。
なお、銅被覆工程と置換工程とを、同じ反応容器内で行う場合には、銅被覆工程に使用した銅イオン含有電解液に、白金イオン含有溶液を加えてもよい。例えば、銅被覆工程後、電位印加を停止し、銅被覆工程において使用した銅イオン含有電解液に、白金イオン含有溶液を添加することで、銅が被覆したコア金属粒子を白金イオン含有溶液に接触させてもよい。
(5)洗浄工程
洗浄工程は、置換工程後、燃料電池用コアシェル触媒を洗浄する工程である。
燃料電池用コアシェル触媒の洗浄は、製造された燃料電池用コアシェル触媒のコアシェル構造を損なうことなく、不純物を除去できる方法であれば特に限定されない。当該洗浄の例としては、水、過塩素酸、希硫酸、希硝酸等を用いて吸引濾過をする方法が挙げられる。
(6)乾燥工程
乾燥工程は、置換工程後、燃料電池用コアシェル触媒を乾燥させる工程である。
燃料電池用コアシェル触媒の乾燥は、溶媒等を除去できる方法であれば特に限定されず、例えば、不活性ガス雰囲気下、50〜100℃の温度を6〜12時間保持させる方法等が挙げられる。
燃料電池用コアシェル触媒は必要に応じて粉砕してもよい。粉砕方法は、固形物を粉砕できる方法であれば特に限定されない。当該粉砕の例としては、不活性ガス雰囲気下、或いは大気下における乳鉢等を用いた粉砕や、ボールミル、ターボミル、ジェットミル等のメカニカルミリングが挙げられる。
2.燃料電池用コアシェル触媒製造装置
本発明の燃料電池用コアシェル触媒製造装置は、アンダーポテンシャル析出法により、コア金属を含むコアと、白金を含み且つ前記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を備える燃料電池用コアシェル触媒を製造する装置であって、
コア金属粒子を含有するコア金属粒子含有分散液を収容し、且つ、作用極と、対極と、参照極と、前記コア金属粒子含有分散液中に浮遊している前記コア金属粒子の電位をモニターするためのプローブ電極を備える反応容器と、
前記作用極と前記対極と前記参照極の電位を制御する電位制御部を有することを特徴とする。
本発明によれば、電位を印加する電極(作用極)とは独立した電極(プローブ電極)を反応容器内に配置することによって、コア金属粒子含有分散液中を浮遊しているコア金属粒子がプローブ電極に衝突した時の、コア金属粒子の電位をモニターすることができる。
したがって、本発明によれば、コア金属粒子が狙いの電位になっているか否かリアルタイムでモニターすることができる。また、上記モニターは、作用極の構造や反応環境(温度、pH、攪拌条件等)に依存することなく行うことができる。
図2は、本発明の燃料電池用コアシェル触媒製造装置の一例を示した斜視模式図である。なお、燃料電池用コアシェル触媒製造装置は、「1.燃料電池用コアシェル触媒の製造方法」の(1)準備工程で準備する装置と同様なので、ここでは装置の構成について説明し、「1.燃料電池用コアシェル触媒の製造方法」の(1)準備工程で説明した内容は省略する。
図2に示す装置100は、反応容器21中に、コア金属粒子23を含有するコア金属粒子含有分散液22、及び、攪拌子24が加えられている。反応容器21中には、作用極25、対極26、参照極27、プローブ電極28がコア金属粒子含有分散液22に十分に浸かるように配置され、作用極25、対極26、及び、参照極27は電位制御部(図示せず)と電気的に接続されている。
対極26は、コア金属粒子含有分散液22中のコア金属粒子23が対極26に接触するのを防ぐため、ガラス製の対極用コンパートメント29内に収容された状態でコア金属粒子含有分散液22に浸漬されている。対極用コンパートメント29は、底部が多孔性のガラスフリットにより形成されており、対極26とコア金属粒子含有分散液22との接触性が確保されている。
本発明の燃料電池用コアシェル触媒製造装置の別の形態として、図3に示すものが挙げられる。なお、図3において、図2と共通する構成については、同じ番号を付し、また、その説明を省略する。
図3に示す装置200は、作用極25としても機能する反応容器21中に、コア金属粒子23を含有するコア金属粒子含有分散液22、及び、攪拌子24が加えられている。
また、反応容器21中には、対極26、参照極27、プローブ電極28がコア金属粒子含有分散液22に十分に浸かるように配置されている。
(参考実験例1)
[Pd/CのCV測定]
市販の平均粒径3.0nmのパラジウム粒子がカーボン粒子に担持されたパラジウム担持カーボン(以下、Pd/Cと称することがある)(Pd担持率30質量%)を0.5g用意し、グラファイト製の反応容器に入れ、酸素飽和の0.1mol/L過塩素酸水溶液を加えた。
グラファイト製の反応容器を作用極とし、対極(白金メッシュ)、参照極(銀−塩化銀)を反応容器内に設置し、各々が過塩素酸水溶液に浸るようにした。作用極、参照極、対極をポテンショスタット(北斗電工株式会社製、HZ−5000)に接続し、作用極の電位を0.05V〜1.20V(vs.RHE)、電位の掃引速度を5mV/sで、1回電位サイクルさせ、CV測定を行った。なお、銀−塩化銀電極の電位はRHEへ換算して記載した。得られたサイクリックボルタモグラムを図4に示す。
(参考実験例2)
[Cu−UPD時のPd/CのCV測定]
Pd/Cを0.5g用意し、グラファイト製の反応容器に入れ、14.6gの硫酸銅5水和物を66mLの0.05mol/L硫酸水溶液に溶解したものを加えた。
グラファイト製の反応容器を作用極とし、対極(白金メッシュ)、参照極(銀−塩化銀)を反応容器内に設置し、各々が硫酸水溶液に浸るようにした。作用極、参照極、対極をポテンショスタットに接続し、作用極の電位を0.35V〜0.75V(vs.RHE)、電位の掃引速度を5mV/sにして、1回電位サイクルさせ、CV測定を行った。得られたサイクリックボルタモグラムを図4に示す。
図4は、参考実験例1で得られたPd/Cのサイクリックボルタモグラムと参考実験例2で得られたCu−UPD時のPd/Cのサイクリックボルタモグラムを重ねて示した図である。
なお、サイクリックボルタモグラムとは、縦軸を電流、横軸を電位として、電位を走査した場合に現れる電流−電位曲線であって、通常プラスの電流が酸化電流、マイナスの電流が還元電流と定義される。したがって、後述するサイクリックボルタモグラムの還元波とは、マイナス電流波のことを指す。
図4に示すように、参考実験例1で得られたPd/Cのサイクリックボルタモグラムの還元波において、電位が0.6V(vs.RHE)以下になると、還元波ピーク強度の極大値(−2.5mA/cm)の半分以下(−1.0mA/cm)にまで還元波ピーク強度が弱まり、0.53V(vs.RHE)以下になると還元波ピークがほとんどなくなっていることがわかる。還元波ピークがなくなるということは、パラジウム酸化物が十分にパラジウムに還元されている(PdO+2H+2e→Pd+HO)ことを示している。
したがって、本発明においてコア金属がパラジウムの場合の「所定の電位以下」は、少なくとも0.6V(vs.RHE)以下とすることが好ましく、0.53V(vs.RHE)以下とすることが特に好ましいことがわかる。
また、参考実験例2で得られたCu−UPD時のPd/Cのサイクリックボルタモグラムの還元波において、電位が0.37V(vs.RHE)未満になると、還元波ピーク強度が高まっていくことがわかる。これは、パラジウム粒子表面に銅が過剰に析出していることを示している。
(実施例1)
[準備工程]
まず、Pd/Cを50g用意し、グラファイト製の反応容器に入れ、0.05mol/L硫酸水溶液10Lを加えた。
そして、超音波ホモジナイザーでPd/Cを分散させ、コア金属粒子含有分散液を得た。
グラファイト製の反応容器を作用極として、対極(白金メッシュ)、参照極(銀−塩化銀)、プローブ電極(グラファイト片)を硫酸水溶液に浸るように設置した。そして、作用極、参照極、対極を電位制御部であるポテンショスタットに接続し、装置を準備した。
[電位印加工程]
反応容器を密閉し、コア金属粒子含有分散液を窒素ガス(流量:1L/分)で30分間バブリングした。
そして、作用極に対して、0.05V(vs.RHE)で2700秒、1.20V(vs.RHE)で2700秒の矩形波信号パターンの電位印加を16サイクル実施し、その後、作用極に対して0.05V(vs.RHE)の電位を2700秒印加した。
電位印加工程における1サイクル目の0.05Vの電位印加の開始時から、2700秒経過時までの、プローブ電極を用いて測定したPd/Cの電位、及び、ポテンショスタットを用いて測定した作用極と対極との間に流れる電流を図5に示す。
図5に示すように、プローブ電極を用いて測定したPd/Cの電位は、電位印加の開始から800秒経過した時点で0.6V(vs.RHE)を下回り、1800秒経過した時点で0.5V(vs.RHE)を下回っていることがわかる。したがって、1800秒経過後は、酸化物が十分に除去されていることがわかる。
また、ポテンショスタットを用いて測定した作用極と対極との間に流れる電流値は、電位印加の開始から1800秒経過後は定常状態になっていることがわかる。
[銅被覆工程]
続いて、反応容器内に300gの硫酸銅5水和物を1Lの0.05mol/L硫酸水溶液に溶解したものを加え、銅イオン含有電解液を得た。
そして、作用極の電位を0.40V(vs.RHE)に固定し、銅イオン含有電解液を攪拌することにより、Pd/Cを作用極に衝突させることでパラジウム粒子表面を銅で被覆した。
[置換工程]
白金イオン含有溶液として24gのKPtClと450gのクエン酸1水和物を1Lの0.05mol/L硫酸水溶液に溶解させたものを用意した。
電位の印加を止め、反応容器内の銅イオン含有電解液を攪拌子で攪拌しながら、白金イオン含有溶液を、チューブポンプを用いて80分かけて滴下した。その後、混合液を3時間攪拌し続け、パラジウム粒子表面の銅を白金に置換した。
この時の混合液の温度を10℃に維持した。なお、KPtCl白金イオン含有溶液は、反応容器に投入する前に予め窒素バブリングしておいた。
[洗浄工程]
置換工程後、反応容器内の溶液をろ過し、粉末を回収した。回収した粉末を、常温純水4Lを10回に分けて加え、その都度ろ過し、洗浄した。
[乾燥工程]
その後、12時間、60℃で乾燥し、メノウ乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、燃料電池用コアシェル触媒を得た。
(比較例1)
準備工程において、反応容器内にプローブ電極を設置せず、その後の、電位印加工程において、作用極に対して、0.05V(vs.RHE)で15秒、1.20V(vs.RHE)で15秒の矩形波信号パターンの電位印加を2500サイクル実施したこと以外は実施例1と同様に燃料電池用コアシェル触媒を製造した。
[質量活性(MA)評価]
実施例1、比較例1で得られた燃料電池用コアシェル触媒をそれぞれ30mgずつ採取し、それぞれの燃料電池用コアシェル触媒を、5%ナフィオン(登録商標)分散液131μL、超純水30mL、及びイソプロパノール7.5mLの混合溶液に分散し、触媒インクを作製した。当該触媒インクを回転ディスク電極(RDE)のグラッシーカーボン電極上に塗布し、自然乾燥させた。
そして、それぞれの燃料電池用コアシェル触媒について酸素還元反応(ORR)測定を行った。
ORR測定条件を下記に示す。
・電解液:0.1mol/L 過塩素酸水溶液(事前に酸素ガスでバブリングし酸素飽和したもの)
・雰囲気:酸素雰囲気下
・掃引速度:10mV/秒
・電位掃引範囲:1.05〜0.05V(vs.RHE)
・回転数:1600rpm
ORR測定により得られた酸素還元波からそれぞれの燃料電池用コアシェル触媒における白金の単位質量当たりの触媒活性(以下、白金質量活性ということがある)を測定した。
具体的には、ORR測定により得られた酸素還元波において、2サイクル目の0.9V(vs.RHE)の電流値を酸素還元電流(I0.9)、0.35V(vs.RHE)の電流値を拡散限界電流(Ilim)とし、次式(1)から活性化支配電流(Ik)を求め、グラッシーカーボン電極上に塗布した燃料電池用コアシェル触媒に含まれる白金量(g)でIk(A)を除して白金の単位質量当たりの触媒活性(A/g−Pt)を算出した。
[式(1)]
Ik=(Ilim×I0.9)/(Ilim−I0.9
上記式(1)において各符号の意味は次の通りである。
Ik:活性化支配電流(A)
lim:拡散限界電流(A)
0.9:酸素還元電流(A)
燃料電池用コアシェル触媒の白金質量活性は、実施例1が580A/g−Pt、比較例1が540A/g−Ptであった。
[電気化学表面積(ECSA)]
実施例1、比較例1で得られた燃料電池用コアシェル触媒についてサイクリックボルタンメトリー(CV)測定を実施し、燃料電池用コアシェル触媒の電気化学表面積(ECSA)を算出した。
上記質量活性評価と同様の方法で触媒インクを作製し、当該触媒インクをグラッシーカーボン電極(RDE)に塗布、乾燥し、CV測定を実施した。
CV測定条件を下記に示す。
・電解液:0.1mol/L 過塩素酸水溶液(事前にArガスを30mL/分で30分以上バブリングし、Ar飽和させたもの)
・雰囲気:Ar雰囲気下
・掃引速度:50mV/秒
・電位掃引範囲:0.05〜1.2V(vs.RHE)
得られたサイクリックボルタモグラムから水素脱着ピークの電荷量(C)を積算した。
また、グラッシーカーボン電極に塗布した触媒インクの濃度と塗布量から白金の質量(g)を算出した。
水素脱着ピークの電荷量(C)を白金の単位活性表面積当たりの電荷量(C/m)と白金の質量(g)で割った値から、電気化学表面積(m/g−Pt)を算出した。
燃料電池用コアシェル触媒の電気化学表面積は、実施例1が113m/g−Pt、比較例1が131m/g−Ptであった。
[比活性(SA)]
実施例1、比較例1で得られた燃料電池用コアシェル触媒について、白金の単位質量当たりの触媒活性(A/g−Pt)を白金の電気化学表面積(m/g−Pt)で除することによって、比活性(白金の表面積当たり触媒活性(A/m))を算出した。結果を図6に示す。
図6に示すように、燃料電池用コアシェル触媒の比活性は、実施例1が5.1A/m、比較例1が4.1A/mであった。
[従来法との比較]
実施例1、比較例1で得られた燃料電池用コアシェル触媒の比活性(A/m)を比較した。
比較例1では、パラジウム粒子表面のパラジウム酸化物等の不純物が十分に除去されず、銅被覆工程においてパラジウム粒子表面における銅の被覆が十分に行われなかったと考えられるため、図6に示すように、比活性(SA)が低いものになったと考えられる。
一方、実施例1は、比較例1と比較して20%程度の比活性向上が確認できた。
したがって、本発明における電位印加工程によって、従来法よりもコア金属粒子表面からコア金属酸化物等の不純物を効率的且つ十分に除去することができ、結果として、触媒活性の高い燃料電池用コアシェル触媒を製造することができたといえる。
21 反応容器
22 コア金属粒子含有分散液
23 コア金属粒子
24 攪拌子
25 作用極
26 対極
27 参照極
28 プローブ電極
29 対極用コンパートメント
100 装置
200 装置

Claims (7)

  1. コア金属を含むコアと、白金を含み且つ前記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を備える燃料電池用コアシェル触媒の製造方法であって、
    コア金属粒子を含有するコア金属粒子含有分散液を収容し、且つ、作用極と、対極と、参照極と、前記コア金属粒子含有分散液中に浮遊している前記コア金属粒子の電位をモニターするためのプローブ電極を備える反応容器と、前記作用極と前記対極と前記参照極の電位を制御する電位制御部を有する装置を準備する準備工程と、
    前記コア金属粒子含有分散液を攪拌しながら、前記参照極に対する前記プローブ電極の電位が所定の電位以下になるまで、前記作用極に電位を印加する電位印加工程と、
    前記電位印加工程後、前記反応容器に銅イオン含有電解液を供給し、当該銅イオン含有電解液中において、前記コア金属粒子に銅の酸化還元電位よりも貴な電位を前記作用極に印加することによって、前記コア金属粒子の表面の少なくとも一部を銅で被覆する銅被覆工程と、
    前記銅被覆工程後、前記コア金属粒子に、白金イオン含有溶液を接触させることによって、前記コア金属粒子の表面の少なくとも一部を被覆している銅を白金に置換し、前記シェルを形成する置換工程と、を有することを特徴とする燃料電池用コアシェル触媒の製造方法。
  2. 前記コア金属粒子が担体に担持されている、請求項1に記載の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法。
  3. 前記反応容器が前記作用極としても機能する、請求項1又は2に記載の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法。
  4. 前記電位印加工程において、前記コア金属粒子含有分散液を攪拌しながら、前記参照極に対する前記プローブ電極の電位が所定の電位以下、且つ、前記作用極と前記対極との間に流れる電流値が定常状態になるまで、前記作用極に電位を印加する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法。
  5. 前記コア金属がパラジウムであり、
    前記電位印加工程において、前記コア金属粒子含有分散液を攪拌しながら、前記参照極に対する前記プローブ電極の電位が0.60〜0.15V(vs.RHE)の範囲内になるまで、前記作用極に電位を印加する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の燃料電池用コアシェル触媒の製造方法。
  6. アンダーポテンシャル析出法により、コア金属を含むコアと、白金を含み且つ前記コアの少なくとも一部を被覆するシェルと、を備える燃料電池用コアシェル触媒を製造する装置であって、
    コア金属粒子を含有するコア金属粒子含有分散液を収容し、且つ、作用極と、対極と、参照極と、前記コア金属粒子含有分散液中に浮遊している前記コア金属粒子の電位をモニターするためのプローブ電極を備える反応容器と、
    前記作用極と前記対極と前記参照極の電位を制御する電位制御部を有することを特徴とする燃料電池用コアシェル触媒製造装置。
  7. 前記反応容器が前記作用極としても機能する、請求項6に記載の燃料電池用コアシェル触媒製造装置。
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