(1)第1実施形態
(1−1)全体構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用シフト装置(以下、シフト装置という場合がある)1が搭載された車両の車室前部の構成を示す図である。以下では、車幅方向すなわち図1の左右方向を単に左右方向といい、図1の右を単に右、図1の左を単に左として説明する。また、車両前後方向を単に前後方向といい、車両前後方向前を単に前、車両前後方向後を単に後という。また、各図において、符号FおよびBは、それぞれ前および後を示し、R及びLは、右及び左を示す。
この第1実施形態では、図1に示すように、車両用シフト装置1が搭載された車両が、運転者により操作されるステアリング4が右側に設けられたいわゆる右ハンドル車の場合について説明する。
図1に示すように、車室前部には、左右に延びるインストルメントパネル2が設けられている。インストルメントパネル2の運転席側(右側)には、ステアリング4の前方にメータユニット3が設けられている。運転席の左側には、インストルメントパネル2の車幅方向中央部から後方に延びるセンターコンソール5が設けられている。シフト装置1は、このセンターコンソール5に設けられている。
本実施形態において、車両は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関からなるエンジン(図示せず)のみを動力源とし、エンジンの駆動力を車速やエンジン負荷等に応じて自動的に変速しつつ車輪に伝達する有段式の自動変速機を備えている。自動変速機の変速レンジとしては、駆動力の伝達が切断されるニュートラルレンジと、駆動力の伝達が切断された上に出力軸がロックされるパーキングレンジと、車両を前進させる方向に駆動力が伝達されるドライブレンジと、車両を後退させる方向に駆動力が伝達されるリバースレンジとが設けられている。ここで、ニュートラルレンジ及びパーキングレンジは非走行レンジであり、ドライブレンジ及びリバースレンジは走行レンジである。シフト装置1は、これらの複数のレンジの中から所望のレンジを選択するために運転者により操作される。
図2は、センターコンソール5におけるシフト装置1の配設部分を拡大して示す平面図である。この図2に示すように、シフト装置1は、D/R切替ユニット7と、N/P切替ユニット8とを備えている。
D/R切替ユニット7は、ドライブレンジを選択する際に操作されるDレバー10(***作部、第1操作部材)と、リバースレンジを選択する際に操作されるRレバー20(リバース用***作部、第1操作部材)とを有する。
N/P切替ユニット8は、ニュートラルレンジを選択する際に操作されるNボタン50(第2操作部材)と、パーキングレンジを選択する際に操作されるPボタン60(第3操作部材)とを有する。
Nボタン50の上面には、「N」(ニュートラルレンジを表す)の文字が表記された文字盤が設けられており、ニュートラルレンジが選択されると、LED等の光源によって上記「N」の文字が強調表示される。同様に、Pボタン60の上面には、「P」(パーキングレンジを表す)の文字が表記された文字盤が設けられており、パーキングレンジが選択されると、LED等の光源により、上記「P」の文字が強調表示される。
本実施形態では、メータユニット3(図1参照)にも現在選択されているレンジが表示される。メータユニット3は、例えばスピードメータとタコメータとの間に表示部を有し、その表示部に、現在選択されているレンジに対応した「P」、「R」(リバースレンジを表す)、「N」、「D」(ドライブレンジを表す)のいずれかの文字が表示される。
(1−2)D/R切替ユニット
D/R切替ユニット7の詳細について、図2〜図7を用いて説明する。
図3は、D/R切替ユニット7の斜視図である。図4は、D/R切替ユニット7の分解斜視図である。図5〜図7は、D/R切替ユニット7の側面図である。これら図に示すように、D/R切替ユニット7は、Dレバー10およびRレバー20に加えて、これらを保持するD/R本体部30(保持部材)を有する。
(I)DレバーおよびD/R本体部
図4等に示すように、Dレバー10は、上下に延びるD側軸部12と、D側軸部12の上端部に設けられて運転者により把持されるD側ノブ11と、D側軸部12から下方に突出する棒状のD側ディテント用脚部16と、D側軸部12の左側面から左側に延びる被検出部17と、D側軸部12の右側面から右側に延びるD側スライド部18とを有する。
本実施形態では、D側ノブ11は、その下部から上端に向けて前斜め前方に延びた後左右に膨出する形状を有しており、運転者が、傾斜部分の後面に手首を載せた状態で膨出部分を指先で把持でき、これにより、容易に操作できるように構成されている。
D/R本体部30は、上面及び前後左右の側面で形成されるD/R筐体31(図3〜図7では右側面及び後側面が切り欠かれている)と、D/R筐体31の底面に設けられた誘導部材34と、D/R筐体31の左側面に前後に延びる長円形の開口33を介して設けられた位置センサ39と、R側スイッチ23とを有する。
D/R筐体31の上面には、前後に延びる長円形のゲート32が形成されている。D側軸部12はこのゲート32に挿通されており、図3等に示すように、D/R筐体31の上面から上方にはDレバー10のうちD側ノブ11のみが露出している。
図4等に示すように、D/R筐体31の左右の側面には、前後に延びる長円形の開口33が形成されている(図では、左側の開口33のみを示している)。これら開口33には、被検出部17とD側スライド部18のそれぞれ左右外側の端部が前後方向にスライド可能に挿入されており、これにより、Dレバー10は、D/R筐体31によって、前後にスライド変位可能に支持されている。Dレバー10は、各開口33の後端と被検出部17の後端およびD側スライド部18の後端とが当接する位置と、各開口33の前端と被検出部17の前端およびD側スライド部18の前端とが当接する位置との間でスライド可能となっている。
図5等に示すように、D側ディテント用脚部16と誘導部材34の後側部分とは対接している。D側ディテント用脚部16は、D側軸部12に対して上下に進退可能であり、D側軸部12に内蔵された圧縮スプリング(図示せず)によって常時下方に付勢されている。
誘導部材34の後側部分の上面であってD側ディテント用脚部16と対接する面は、前方に向かって上方に湾曲する湾曲面34a(以下、後側湾曲面という)とされており、D側ディテント用脚部16の下端部は、圧縮スプリングの下方への付勢力によりこの後側湾曲面34aに常時押し付けられている。
図5に示すように、Dレバー10が最も後方の位置(開口33、33の後端と被検出部17の後端およびD側スライド部18の後端とが当接する位置)にある状態では、D側ディテント用脚部16は後側湾曲面34aの後端であって後側湾曲面34aのうち最も低い部分に対接する。このとき、D側ディテント用脚部16は、D側軸部12から下向きに最も進出し、圧縮スプリングは最も延びて、D側ディテント用脚部16に加えられる付勢力は最小となる。
この状態からDレバー10が前方にスライド移動すると、図6に示すように、D側ディテント用脚部16は後側湾曲面34aの後端よりも前方に移動して、D側軸部12の内部に後退する。このとき、圧縮スプリングは縮み、D側ディテント用脚部16に加えられる付勢力は増大する。D側ディテント用脚部16の後退量すなわち圧縮スプリングからD側ディテント用脚部16に加えられる付勢力は、Dレバー10の前方への移動量が大きくなるほど大きくなる。圧縮スプリングから加えられる付勢力が増大すると、D側ディテント用脚部16は後側湾曲面34aに強く押し付けられる。そして、この押し付け力は、D側ディテント用脚部16を後側湾曲面34aの後端に戻す力に変換される。
従って、D側ノブ11が操作されておらずDレバー10に前後方向の操作力が加えられていないときは、Dレバー10は、D側ディテント用脚部16が後側湾曲面34aの後端に対接する位置、すなわち、開口33、33の後端と被検出部17の後端およびD側スライド部18の後端とが当接する位置(ホーム位置)に保持される。そして、D側ノブ11が操作されて、これに伴い、ホーム位置にあるDレバー10が前方にスライド移動すると、Dレバー10をホーム位置に戻そうとする力が発生する。そのため、Dレバー10に対する操作力が解除されるとDレバー10は自ずとホーム位置に復帰する。このように、本実施形態のDレバー10は、ホーム位置から前方に移動可能であるとともに移動後にホーム位置に自動的に復帰されるモメンタリ式の装置である。
位置センサ39は、Dレバー10のホーム位置から前方への移動量を検出するものである。位置センサ39は、被検出部17と係合しており、この被検出部17の位置を検出する。
位置センサ39の検出結果は、車両に設けられたコントローラ(不図示)に送信される。コントローラは、この検出結果に応じて、Dレバー10の操作状況およびドライブレンジの選択の有無を判定する。具体的には、コントローラは、Dレバー10が最も前方の位置(開口33、33の前端と被検出部17の前端およびD側スライド部18の前端とが当接する位置)に移動したことが位置センサ39によって検出されると、Dレバー10が操作されてドライブレンジが選択されたと判定し、変速レンジをドライブレンジに切り替えるべく自動変速機を制御する。また、コントローラは、メータユニット3に「D」を表示するよう指令を出す。
(II)Rレバー
図4等に示すように、Rレバー20は、左右に延びる円柱状のR側軸部22と、R側軸部22の左右両端から前方に延びて運転者により把持されるR側ノブ21と、R側軸部22から後斜め下方に突出する棒状のR側ディテント用脚部26と、R側ノブ21の右側後端から後斜め下方に延びるR側押圧部27と、R側軸部22のうち互いに左右に離間した位置からそれぞれ後斜め上方に延びる連結部材28、28の後端に設けられて、これら後端どうしの間で左右に延びる棒状のR側ストッパ部29とを有する。
D/R筐体31の左右の側面には、図4に破線で示したように円形の開口35が形成されている(図では、左側の開口35のみを示している)。これら開口35には、R側軸部22の左右両端部がその左右に延びる中心軸を中心として回転可能に挿入されており、これにより、Rレバー20は、D/R筐体31によってR側軸部22の左右に延びる中心軸を中心として上下に回動可能に支持されている。以下において、このR側軸部22の中心軸回りの方向を単に回転方向といい、この中心軸から離間する方向すなわち上記回転方向に対する径方向を単に径方向という場合がある。
図5等に示すように、D側軸部12には、その左右両側面を貫通する案内孔13が形成されている。案内孔13は、前後に延びる長円形状の第1案内孔13aと、この第1案内孔13aと連通してこの第1案内孔13aの前端から下方に延びる第2案内孔13bとからなる。第2案内孔13bは、図5に示すように、Dレバー10がホーム位置にある状態で、第1案内孔13aの前端からR側軸部22の中心軸を中心とする円弧に沿って下方に延びている。
ストッパ部29は、第2案内孔13b内に挿通されており(Dレバー10がホーム位置にある状態において)、Rレバー20は、ストッパ部29と第2案内孔13bの上端とが当接する位置と、ストッパ部29と第2案内孔13bの下端とが当接する位置との間で上下に回動する。
R側軸部22の左右両端部はD/R筐体31の左右両側面の外面よりも外側に突出している。図4に示すように、R側ノブ21は、R側軸部22の左右両端部からそれぞれ前方に延びる延設部21a、21bと、これら延設部21a、21bの前端をつなぐ左右に延びる前端部21cとを有している。R側ノブ21は、図2に示すように、平面視で、D側ノブ11の前側部分を囲み、かつ、その前端部21cがD側ノブ11よりも前方に位置するような形状を有する。また、R側ノブ21は、図5等に示すように、側面視で、その前端部21cがD側ノブ11の前端部の前斜め下方に位置するように配置されている。この構成により、運転者は、D側ノブ11の前端に設けられた膨出部分の上面に手首を載せた状態で、R側ノブ21の前端部21cを指先で容易に操作できるようになっている。
図5等に示すように、R側ディテント用脚部26と、誘導部材34の前側部分とは対接している。R側ディテント用脚部26は、R側軸部22に対して径方向に進退可能であり、R側軸部22に内蔵された圧縮スプリング(図示せず)によって常時径方向外側に付勢されている。
誘導部材34のうちR側ディテント用脚部26と対接する面は、前方に向かうほどR側軸部22の中心軸との距離が短くなるように傾斜する傾斜面34b(以下、前側傾斜面という)とされており、この前側傾斜面34bにR側ディテント用脚部26の下端部が圧縮スプリングの径方向外側への付勢力により常時押し付けられている。
図5に示すように、R側ストッパ部29と第2案内孔13bの上端とが当接する位置にRレバー20がある状態で、R側ディテント用脚部26は前側傾斜面34bの後端であって前側傾斜面34bのうちR側軸部22の中心軸との距離が最も遠い部分に当接する。このとき、R側ディテント用脚部26は、R側軸部12から径方向外側に最も進出し、圧縮スプリングは最も延びて、R側ディテント用脚部16に加えられる付勢力は最小となる。
一方、図7に示すように、R側ノブ21が上方に回動操作されて、これに伴ってRレバー20がその前端が上方に移動する方向に回動すると、これに伴い、R側ディテント用脚部26は、前側傾斜面34bの後端よりも前方に移動してR側軸部22の内部に後退する。このとき、圧縮スプリングは縮み、R側ディテント用脚部26に加えられる付勢力は増大する。R側ディテント用脚部26の後退量すなわち圧縮スプリングからR側ディテント用脚部26に加えられる付勢力は、R側ノブ21の上方への回動量(Rレバー20の回動量)が大きくなるほど大きくなる。圧縮スプリングから加えられる付勢力が増大すると、R側ディテント用脚部26は前側傾斜面34bに強く押し付けられる。そして、この押し付け力は、R側ディテント用脚部26を前側傾斜面34bの後端に戻す力に変換される。
従って、R側ノブ21が操作されておらずRレバー20に回動方向の操作力が加えられていないときは、Rレバー20は、R側ディテント用脚部26が前側傾斜面34bの後端に対接する位置、すなわち、R側ストッパ部29と第2案内孔13bの上端とが当接する位置(ホーム位置)に保持される。そして、R側ノブ21が上方に回動操作されて、ホーム位置にあるRレバー20が上方(その前端が上方に向かう方向)に回動すると、Rレバー20をホーム位置に戻そうとする力が発生する。そのため、Rレバー20に対する操作力が解除されると、Rレバー20は自ずとホーム位置に復帰する。このように、本実施形態のRレバー20は、ホーム位置から上方(その前端が上方に向かう方向)に回動可能であるとともに回動後にホーム位置に自動的に復帰されるモメンタリ式の装置である。
R側スイッチ23は、押圧式のボタンスイッチであり、R側押圧部27の下方にこれと対向する位置に配置されている。Rレバー20がホーム位置にある状態でR側ノブ21が操作されて上方に回動し、これに伴ってR側押圧部27が下方に回動すると、R側スイッチ23はR側押圧部27により下方に押圧され、所定の信号を出力する。本実施形態では、R側スイッチ23は、R側ノブ21が最も上方の位置すなわちR側ストッパ部29が第2案内孔13bの下端と当接する位置に回動すると、所定の信号を出力する。
R側スイッチ23の検出結果は、コントローラに送信され、コントローラは、この検出結果に応じて、Rレバー20の操作状況およびリバースレンジの選択の有無を判定する。具体的には、コントローラは、Rレバー20が最も上方の位置まで回動してR側スイッチ23から所定の信号が出力されると、Rレバー20が操作されてリバースレンジが選択されたと判定し、変速レンジをリバースレンジに切り替えるべく自動変速機を制御する。また、コントローラは、メータユニット3に「R」を表示するよう指令を出す。
ここで、図7に示すように、第2案内孔13bの前後方向の寸法は、R側ストッパ部29の外径とほぼ同じ寸法に設定されている。そのため、Dレバー10がホーム位置にある状態でR側ノブ21が上方に回動操作されて、R側ストッパ部29が第2案内孔13b内に移動すると、D側軸部12は、R側ストッパ29と第2案内孔13bの前後の側面とが当接することにより、前後方向に移動不能となる。すなわち、本実施形態では、R側ノブ21が上方に回動操作された状態において、Dレバー10を前向きに押圧しても、第2案内孔13bの後側の内面とR側ストッパ部29とが当接することで、Dレバー10を前方に移動させることができないようになっている。
また、図6に示すように、Rレバー20がホーム位置にある状態でDレバー10が前方に移動操作されると、R側ストッパ部29は、第1案内孔13a内で相対的に後方に移動する。第1案内孔13aの幅(上下方向の長さ)は、R側ストッパ部29の外径よりもわずかに大きい寸法とされている。そのため、上記のように移動した状態において、R側ストッパ部29およびRレバー20は回動不能とされる。すなわち、本実施形態では、Dレバー10が前方に移動操作された状態において、R側ノブ21を上方に引き上げようとしても、第1案内孔13aの下側の内面とR側ストッパ部29とが当接することで、Rレバー20を回動させることができないようになっている。
このように、本実施形態では、R側ストッパ部29とD側軸部12に形成された案内孔13とが、Dレバー10の前方への移動とRレバー20の回動とが同時に行われるのを規制する走行レンジ用規制手段として機能しており、これによりDレバー10とRレバー20の同時操作ができないようになっている。
(1−3)N/P切替ユニット
N/P切替ユニット8の詳細について、図8〜図16を用いて説明する。
図8は、N/P切替ユニット8の斜視図である。図9は、N/P切替ユニット8の側面図である。図10は、N/P切替ユニット8の分解斜視図である。図11は、図9のXI−XI線断面図の一部を示した図である。図12は、Pボタン60が回動操作された状態を示す平面図である。図13は、図11のXIII−XIII線断面図である。図14は、図13に対応する図であってNボタン50が操作された状態を示す断面図である。図15は、図11に対応する図であってPボタン60が回動操作された状態を示す断面図である。図16は、図14に対応する図であってPボタン60が回動操作された状態を示す断面図である。
図10等に示すように、N/P切替ユニット8は、上記Nボタン50および上記Pボタン60に加えて、これらを保持するN/P本体部70(保持部材)を有する。
(I)PボタンおよびN/P本体部
Pボタン60は、全体として、内側に上下に貫通する貫通穴60aが形成された上下に延びる略円筒状を有する。Pボタン60は、上下に延びる略円筒状のP側軸部62と、P側軸部62の上端部に設けられてP側軸部62よりも径の大きい円筒状を有し運転者により回転操作されるP側操作部61と、P側操作部61の径方向外周縁から下方に延びる外壁63とを有する。
N/P本体部70は、上面及び前後左右の側面で形成されるN/P筐体71(各図では左側面及び後側面が切り欠かれている)と、コイルスプリング72と、P側スイッチ73と、N側スイッチ74とを有する。
N/P筐体71の上面には、円形のゲート71aが形成されている。Pボタン60は、このゲート71a内に、挿通されており、N/P筐体71の上面から上方にはPボタン60のうちP側操作部61の上側部分のみが露出している。
Pボタン60の下端はN/P筐体71の底面に当接している。ゲート71aの内径はP側操作部61の外径よりもわずかに大きい寸法とされており、Pボタン60は、N/P筐体71によりその中心軸回りに回転可能に保持されている。
図9および図11に示すように、Pボタン60の外壁63には、その前端部分から前方に突出するP側押圧部64が設けられている。P側押圧部64には、上下に貫通する貫通穴64aが形成されている。コイルスプリング72は、Pボタン60の軸部62の周囲に巻きついた状態で、その両端がこの貫通穴64aとN/P筐体71の底面に形成された孔71cとに挿入されることで、N/P筐体71内に固定されている。コイルスプリング72は、Pボタン60を、P側押圧部64がPボタン60の前端に位置する状態になるように付勢している。
従って、Pボタン60に回転方向の操作力が加えられていないときは、Pボタン60は、P側押圧部64が前端となる位置(ホーム位置)に保持される。そして、このホーム位置にあるPボタン60が操作力を受けて回転すると、Pボタン60には、コイルスプリング72からホーム位置に戻そうとする力が加えられる。そのため、Pボタン60に対する操作力が解除されると、Pボタン60は自ずとホーム位置に復帰する。このように、Pボタン60は、ホーム位置から回転可能であるとともに回転後にホーム位置に自動的に復帰されるモメンタリ式の装置である。
P側スイッチ73は、Pボタン60が図12に示すようにその前端が左側を向くようにP側操作部61が反時計回りに90度回転操作された際に、P側押圧部64により後方に押圧操作される位置に配置されている。P側スイッチ73は押圧式のボタンスイッチである。従って、Pボタン60が反時計回りに90度回転すると、P側スイッチ73は所定の信号を出力する。
P側スイッチ73からの信号は、コントローラに送信され、コントローラは、この信号の出力状態に応じて、Pボタン60の操作状況およびパーキングレンジの選択の有無を判定する。具体的には、コントローラは、上記のようにPボタン60が反時計回りに90度回転することに伴ってP側スイッチ73から所定の信号が出力されると、Pボタン60が操作されてパーキングレンジが選択されたと判定し、変速レンジをパーキングレンジに切り替えるべく自動変速機を制御する。また、コントローラは、メータユニット3に「P」を表示するよう指令を出す。
(II)Nボタン
図10等に示すように、Nボタン50は、全体として、上下に延びる棒状を有する。Nボタン50は、上下に延びる円柱状のN側軸部52と、N側軸部52の上端部に設けられてN側軸部52よりも外径の大きい円柱状を有し運転者により押圧操作されるN側操作部51と、N側軸部52の外周面の互いに対向する位置からそれぞれ外側に突出するN側ストッパ部53、53と、N側軸部52から下方に突出する角柱状のN側押圧部55とを有する。
Nボタン50は、ゲート71a内に挿通されたPボタン60の貫通穴60aの内に、N側操作部51の上側部分のみがN/P筐体71の上面から上方に露出する状態で挿通されている。
N/P筐体71の底面には、N側押圧部55と対向する位置に、上下に貫通する貫通穴71bが形成されている。N側スイッチ74は、その上端端が貫通穴71b内に臨むように配置されており、Nボタン50は、N側スイッチ74の上端部によって上向きに支持されている。
N側スイッチ74の上側部分は弾性部材からなり、Nボタン50は、N側スイッチ74の上側部分の弾性変形を伴いながら上下方向に変位可能となっているとともに、N側操作部51が下方に押圧操作されることに伴い下方に移動した後、この操作力が解除されると上方に復帰するようになっている。具体的には、Nボタン50に下向きの操作力が加えられていないときは、Nボタン50は、その上面がPボタン60の上面とほぼ同じ高さとなる位置(ホーム位置)に保持される。そして、このホーム位置にある状態でN側操作部51が下方に押圧操作されると、Nボタン50は下方に移動する。このとき、Nボタン50にはN側スイッチ74からホーム位置に戻そうとする力が加えられる。そのため、上記操作力が解除されると、Nボタン50は自ずとホーム位置に復帰する。このように、Nボタン50は、ホーム位置から下方に変位可能であるとともに変位後にホーム位置に自動的に復帰されるモメンタリ式の装置である。
N側スイッチ74は上記のようにNボタン50を上方に付勢する付勢部材として機能するとともに押圧式のボタンスイッチとして機能し、Nボタン50が下方に押圧操作されると、N側スイッチ74は、N側押圧部55により下方に押圧されて所定の信号を出力する。
N側スイッチ74からの信号は、コントローラに送信され、コントローラは、この信号の出力状態に応じて、Nボタン50の操作状況を判定する。具体的には、コントローラは、Nボタン50が下方に押圧されることに伴ってN側スイッチ74から所定の信号が出力されると、Nボタン50が操作されてニュートラルレンジが選択されたと判定し、変速レンジをニュートラルレンジに切り替えるべく自動変速機を制御する。また、コントローラは、メータユニット3に「N」を表示するよう指令を出す。
ここで、図11、図13等に示すように、Pボタン60の貫通穴60aの内周面には、その全周にわたって径方向内側に突出する周壁65が設けられている。この周壁65には、内側をN側ストッパ部53、53が上下に摺動可能な一対の案内溝65aが形成されている。N側ストッパ部53、53は、Pボタン60がホーム位置にある状態で各案内溝65aの上方に位置するように配置されている。本実施形態では、N側ストッパ部53、53は、N側軸部52の左右両端部に設けられており、各案内溝65aはPボタン60がホーム位置にある状態において周壁65の左右に形成されている。
この構成に伴い、Nボタン50は、Pボタン60がホーム位置にある状態では、N側ストッパ部53、53が案内溝65a内を移動することで、図14に示すように、ホーム位置から下方に変位可能となる。一方、図15および図16に示すように、Pボタン60がホーム位置から回動して、案内溝65aがN側ストッパ部53から離間すると、Nボタン50は、N側ストッパ部53に周壁65の上面が下方から当接することで、下方に変位不能となる。
また、図13に示すように、Nボタン50がホーム位置にある状態では、N側ストッパ部53、53は、周壁65よりも上方に位置する。そのため、この状態では、Pボタン60は回転可能である。一方、図14に示すように、Nボタン50が下方に移動すると、N側ストッパ部53、53は案内溝65a内に挿入される。そのため、この状態では、案内溝65aの内周面とN側ストッパ部53、53とが当接することで、Pボタン60は回転不能となる。
このように、本実施形態では、N側ストッパ部53と周壁65と案内溝65aとが、Pボタン60の回転とNボタン50の下方への移動とが同時に行うのを規制する規制手段として機能しており、これによりPボタン60の回転とNボタン50の同時操作ができないようになっている。
(1−4)作用効果
以上のように構成されたN/P切替ユニット8は、図1、図2に示すように、Dレバー10がホーム位置にある状態でこのDレバー10の右側に隣接するように配置されており、Nボタン50とPボタン60とは、Dレバー10の右隣に近接して配置されている。より詳細には、Dレバー10が占有する領域、すなわち、Dレバー10が移動時も含めて存在する領域の右隣に、各ボタン50、60が配置されている。そのため、このシフト装置1では、シフト装置1全体がコンパクトになっている。また、Nボタン50がPボタン60の内側に配置され、これに伴い、Nボタン50がPボタン60に囲まれており、これによっても、コンパクト化が実現されている。
また、Nボタン50とPボタン60とが、Dレバー10およびRレバー20の右側すなわちステアリング4側に配置されている。そのため、運転者は、これらDレバー10およびRレバー20(D側ノブ11およびR側ノブ21)に邪魔されることなくNボタン50とPボタン60(N側操作部51およびP側操作部61)を操作することができる。従って、このシフト装置1では、操作性が高められているとともに、Nボタン50とPボタン60の操作時に、誤ってD側ノブ11およびR側ノブ21が操作されるのをより確実に回避することができる。
ここで、このように各レバー10、20および各ボタン50、60を近接して配置すると、これらを他のレバーあるいはボタンと誤って操作するおそれがある。これに対して、本実施形態では、各レバー10、20および各ボタン50、60の操作の向き(操作方向)が全て異なるように構成されている。具体的には、Dレバー10の操作の向きが前向きとされ、Rレバー20(R側ノブ21)の操作の向きが上向きとされ、Pボタン50の操作の向きが反時計回りとされ、Nボタン60の操作の向きが下向きとされ、これらレバー10、20および各ボタン50、60の操作の向きが全て異なっている。そのため、これらを他のレバーあるいはボタンと間違って操作するのを抑制することができる。特に、本実施形態では、これらが移動するラインの方向自体が、前後方向、左右に延びる軸を中心とする回動方向、上下に延びる軸を中心とする回転方向、上下方向と、全て異なっている。そのため、これらの誤操作をより確実に抑制することができる。
また、何らかのものを手で把持して回転させる場合、一般的に、手首の回動可能角度が大きい方向、すなわち、手首を体から離間する方向に回す方が操作し易い。これに対して、本実施形態では、Pボタン60が運転者の左側において反時計まわり、すなわち、前端が運転者から離間する方向に回転するよう構成されているため、高い操作性を確保することができる。
(2)第2実施形態
(2−1)全体構成
本発明の第2実施形態に係る車両用シフト装置201であって、D/R切替ユニットおよびN/P切替ユニットの具体的構成が第1実施形態と異なるものについて、図17〜図26を用いて次に説明する。ここでは、車両用シフト装置201が、運転者により操作されるステアリングが左側に設けられたいわゆる左ハンドル車に搭載された場合について説明する。これに伴い、本実施形態では、図17に示すように、D/R切替ユニット207によってN/P切替ユニット208の操作が妨害されないように、N/P切替ユニット208が、左側(運転者側)に設けられている。
(2−2)D/R切替ユニット
D/R切替ユニット207について、図18〜図20を用いて説明する。
図18および図19に示すように、D/R切替ユニット207は、シフトレバー210(***作部、第1操作部材)と、シフトレバー210を前後方向に傾動可能に支持するD/R本体部(保持部材)220とを含む。
シフトレバー210は、上下方向に延びるレバー部212と、レバー部212の上端部に設けられてシフトレバー210の操作時に運転者により把持されるシフトノブ211と、レバー部212の下端部に設けられて左右に延びる円柱状の傾動軸部213と、レバー部212の上下略中間に設けられたブロック体215と、ブロック体215の左側面から左方に突出する棒状のディテント用脚部216と、ブロック体215の右側面から右方に突出する棒状の被検出部217とを有する。
D/R本体部220は、上面及び前後左右の側面で形成されるD/R筐体221(図18、図19では左側面及び後側面が切り欠かれている)と、D/R筐体221の左側面の内面に設けられたディテント用誘導部材224と、D/R筐体221の右側面に円弧状開口225を介して設けられた傾動角センサ229とを有する。
D/R筐体221の上面には、前後方向に延びる長円形のゲート222が形成されており、このゲート222内にシフトレバー210のレバー部212が挿通されている。ブロック体215は筐体221の内部に配置されている。筐体221の左右の側面には、円形開口223が形成されている。この円形開口223には、シフトレバー210の傾動軸部213の左右の端部がその左右に延びる中心軸を中心として回動可能に嵌合されており、これにより、シフトレバー210は、D/R本体部220によって前後方向に傾動可能に支持されている。シフトレバー210は、図20(b)に示すように、ゲート222の後端部に当接する位置とゲート222の前端部に当接する位置との間で傾動可能となっている。
ブロック体215の左側面に設けられたディテント用脚部216と、D/R筐体221の左側面に設けられたディテント用誘導部材224とは対接している。ディテント用脚部216はブロック体215に対して左右方向(接離する方向)に進退可能であり、ブロック体215に内蔵された圧縮スプリング(図示せず)により常時左方に付勢されている。図19および図20(a)に示すように、ディテント用誘導部材224のディテント用脚部216との対接面は、左方に凹んだ部分凹球面状の球状受け面224aとなっており、ディテント用脚部216の先端部は、この球状受け面224aに圧縮スプリングの付勢力により常時押し付けられている。
図20(a)に実線で示すように、ディテント用脚部216は球状受け面224aの中心部(凹球面の底部)に対接しているとき、ブロック体215から最も進出する。このとき圧縮スプリングは最も伸びて付勢力は最小となる。一方、図20(a)に鎖線で示すように、ディテント用脚部216は、球状受け面224aの中心部から離れると、ブロック体215の内部に後退する。このとき、圧縮スプリングは縮みディテント用脚部216に加えられる付勢力は増大する。ディテント用脚部216の後退量および圧縮スプリングからディテント用脚部216に加えられる付勢力は、ディテント用脚部216の球状受け面224aの中心部からの離間量が大きくなるほど大きくなる。圧縮スプリングから加えられる付勢力が増大すると、ディテント用脚部216は球状受け面224aに強く押し付けられる。そして、この押し付け力は、ディテント用脚部216を球状受け面224aの中心部に戻す力に変換される。
従って、シフトレバー210に前後方向の操作力が加えられていないときは、シフトレバー210はディテント用脚部216が球状受け面224aの中心部に配置される位置(ホーム位置)に保持される。ホーム位置ではシフトレバー210は、ゲート222の中央部に位置し、この位置で鉛直方向に起立した姿勢となる(図18参照)。
ホーム位置にあるシフトレバー210が操作力を受けて前後方向に傾動すると、ディテント用脚部216は球状受け面224aの中心部から離間し、それに伴いディテント用脚部216を球状受け面24aの中心部に戻す力が発生する。そのため、シフトレバー210に対する操作力が解除されると、シフトレバー210は自ずとホーム位置に復帰する。このように、本実施形態のシフトレバー210は、ホーム位置から前後方向に移動可能であるとともに移動後にホーム位置に自動的に復帰されるモメンタリ式の装置である。
ブロック体215の右側面に設けられた被検出部217と、筐体221の右側面に設けられた傾動角センサ229とは係合している。傾動角センサ229は、シフトレバー210がホーム位置から前後方向に傾動したときのシフトレバー210の傾動角度を検出する。具体的には、図20(b)に示すように、シフトレバー210が角度θoにある位置から角度θfの位置まで傾動したか否か、および角度θoにある位置から角度θrの位置まで傾動したか否かを検出する。
コントローラは、傾動角センサ229の検出結果に応じて、シフトレバー210の操作状況および走行レンジの選択の有無を判定する。具体的には、コントローラは、シフトレバー210が最も前方の位置(シフトレバー210とゲート222の前端とが当接する位置)に移動し、これに伴いシフトレバー210の傾動角度がこの位置に対応する角度になったことが傾動角センサ229によって検出されると、シフトレバー210が前方に操作されたと判定し、シフトレバー210が最も後方の位置(シフトレバー210とゲート222の後端とが当接する位置)に移動し、これに伴いシフトレバー210の傾動角度がこの位置に対応する角度になったことが傾動角センサ229によって検出されると、シフトレバー210が後方に操作されたと判定する。そして、コントローラは、シフトレバー210が後方に操作されたと判定すると、ドライブレンジへの切り替え要求があったとしてレンジをドライブレンジに切り替えるべく自動変速機を制御するとともにメータユニット3に「D」を表示するよう指令を出す。一方、コントローラは、シフトレバー210が前方に操作されたと判定すると、リバースレンジへの切り替え要求があったとしてレンジをリバースレンジに切り替えるべく自動変速機を制御するとともにメータユニット3に「R」を表示するよう指令を出す。
このように、本実施形態では、一つのシフトレバー210(シフトノブ211)の操作によってドライブレンジとリバースレンジとが選択されるように構成されているとともに、シフトレバー210(シフトノブ211)の前方への操作によりリバースレンジが選択され、後方への操作によりドライブレンジが選択されるようになっている。
(2−3)N/P切替ユニット
N/P切替ユニット208について、図21〜図26を用いて説明する。
(I)Nボタン
図23等に示すように、本実施形態では、Nボタン250(第2操作部材)は、全体として、上下に延びるブロック状を有し、上下に延びる角柱状のN側軸部252と、N側軸部252の上端部に設けられてこの上端部から左側に延びるブロック状を有し運転者により押圧操作されるN側操作部251とを有する。
N/P本体部270は、上面及び前後左右の側面で形成されるN/P筐体271(図21〜図23および図25、26では右側面及び後側面が切り欠かれている)と、バネ部材であるN側スプリング274aおよびP側スプリング273aと、押圧スイッチであるN側スイッチ274およびP側スイッチ273とを有する。
図23に示すように、N/P筐体271の上面には、左右に延びるゲート271aが形成されている。このゲート271aの前後方向の幅は、その右側部分の方が大きくなるように設定されている。
Nボタン250は、N側操作部251のみがN/P筐体271の上面から上方に露出する状態で、このゲート271aの右側部分に上下方向に変位可能に挿通されている。なお、Nボタン250は、上記のようにN側操作部251がN側軸部252の上端部から左側に延びる姿勢で、ゲート271a内に挿通されている。
N側軸部252とN/P筐体271の底面との間には、N側スプリング274aが配置されており、Nボタン250は、N側操作部251が下方に押圧操作されるとN側スプリング274aを圧縮させながら下方に移動可能であるとともに、この操作力が解除されるとN側スプリング274aの付勢力によって上方に復帰するようになっている。以下、操作力が加えられていない状態におけるNボタン50の位置を「ホーム位置」と称する。このように、本実施形態のNボタン250は、ホーム位置から下方に変位可能であるとともに変位後にホーム位置に自動的に復帰されるモメンタリ式の装置である。
ここで、ホーム位置にある状態において、Nボタン250は、N側スプリング274aの付勢力を受けて、N側操作部251がN/P筐体271の上面から上方に離間する位置に保持されており、この状態において、N側操作部251とN/P筐体271の上面との間には所定の空間、具体的には、後述するP側操作部261の中間部分261bを収容可能な大きさの空間が確保されている。
N側スイッチ274は、N側スプリング274aの内側であって、N側軸部252の下端部の下方に配置されている。そのため、Nボタン250がホーム位置にある状態から下方に移動すると、N側スイッチ274はこのN側軸部252の下端によって押圧されて、所定の信号を出力する。
第1実施形態と同様に、コントローラは、N側操作部251が下方に操作されてNボタン250が下方に移動し、これに伴ってN側スイッチ274から所定の信号が出力されると、ニュートラルレンジが選択されたと判定して、変速レンジをニュートラルレンジに切り替えるべく自動変速機を制御するとともに、メータユニット3に「N」を表示するよう指令を出す。
(II)Pボタン
図23および図24に示すように、Pボタン260(第3操作部材)は、上下に延びる角柱状のP側軸部262と、P側軸部262の下端部からそれぞれ前方および後方に延びるスライド部263,263と、P側軸部262の上端部に設けられてブロック状を有し運転者により押圧操作されるP側操作部261とを有する。P側操作部261は、平面視で左側に膨出する略C字状を有し、左右に延びる前端部分261aと、この前端部分261aの左側から後方に延びる中間部分261bと、中間部分261bの後端から右方に延びる後端部分261cとを含む。P側軸部262の後側面からは、角柱状の延設部264が後方に延びており、この延設部264の右側面からは、円柱状のP側押圧部265が右側に延びている。
Pボタン260は、P側軸部262がゲート271aの左側部分に挿通され、P側操作部261のみがN/P筐体271の上面から上方に露出する状態で、N/P筐体271に保持されている。N/P筐体271の内側には、スライド部263を、左右にスライド可能な状態で支持する案内溝272aが形成された支持ブロック272が設けられており、この支持ブロック272によって、Pボタン260は左右にスライド可能に支持されている。
Pボタン260のP側押圧部265の右側にはP側スイッチ273が配置されている。なお、図ではP側スイッチ273の固定構造は省略しているが、例えば、P側スイッチ273はN/P筐体271の不図示の右側面に固定されている。そして、このP側スイッチ273にP側スプリング273aが左右に伸縮可能に固定されている。これに伴い、Pボタン260は、P側操作部261が右側に押圧操作されるとP側スプリング273aを圧縮させつつ右側に移動可能であるとともに、この操作力が解除されることで左側に復帰するようになっている。以下、操作力が加えられていない状態におけるPボタン260の位置を「ホーム位置」と称する。このように、本実施形態のPボタン260は、ホーム位置から右側に変位可能であるとともに変位後にホーム位置に自動的に復帰されるモメンタリ式の装置である。
そして、上記のようにPボタン260がホーム位置にある状態から右側に移動すると、P側スイッチ273はP側押圧部265によって押圧されて、所定の信号を出力する。Nボタン250と同様に、コントローラは、P側操作部261が右側に操作されてPボタン260が右側に移動することに伴ってP側スイッチ273から所定の信号が出力されると、パーキングレンジが選択されたと判定し、変速レンジをパーキングレンジに切り替えるべく自動変速機を制御するとともに、メータユニット3に「P」を表示するよう指令を出す。
ここで、Pボタン260は、ホーム位置にある状態において、図17に示すように、平面視でNボタン250を囲むように配置されている。具体的には、P側操作部261は、その中間部分261bよりも右側であって前端部分261aと後端部分261cとの間の空間にN側操作部251が収容されるように配置されている。そのため、図25に示すように、N側操作部251がホーム位置から下方に移動した状態では、P側操作部251の中間部分261bの右側面とN側操作部251の左側面との当接により、P側操作部251の右側への移動は禁止される。一方、上記のように、Nボタン250がホーム位置にある状態では、N側操作部251とN/P筐体271の上面との間に所定の空間が確保されている。そのため、図26に示すように、Nボタン250がホーム位置にある状態では、Pボタン260は、N側操作部251の下方を通って右側に移動することが可能となる。また、図26に示すように、Pボタン260が右側に移動すると、P側操作部261は、N側操作部251とN/P筐体271との間に入り込む。そのため、この状態では、N側操作部251の下面とP側操作部261の上面との当接により、N側操作部251の下方への移動は禁止される。
このように、本第2実施形態では、各操作部251、261が、Pボタン260の右側への移動とNボタンの下方への移動とが同時に行われるのを規制する規制手段として機能する。そして、本第2実施形態においても、Pボタン260とNボタン250とは、他のボタンがホーム位置にある状態でのみ移動可能となっており、これらが同時に操作されるのが回避されている。
(2−4)作用効果
以上のように構成されたN/P切替ユニット208は、図17に示すように、Nボタン250およびPボタン260がシフトレバー210の左側に隣接して、前後方向について、シフトレバー210の占有領域(本実施形態では、ホーム位置にある状態でのシフトノブ211の後端位置から前端位置までの間の領域)に配置されている。そのため、このシフト装置201においても、センターコンソール5から上方に露出する部分を含めた装置全体がコンパクトになっている。また、このシフト装置201においても、Nボタン250がPボタン260に囲まれるように配置されており、これによっても、コンパクト化が実現されている。さらに、このシフト装置201では、1つのシフトレバー210によってドライブレンジとリバースレンジとが切り替えられるよう構成されていることで、さらにコンパクトになっている。
また、このシフト装置201においても、上記のように、N/P切替ユニット208が左側(運転者側)に設けられていることで、D/R切替ユニット207によってN/P切替ユニット208の操作が妨害されるのが回避されており、高い操作性が確保されているとともに、誤操作の発生が抑制されている。
また、このシフト装置201においても、レンジ毎にシフトレバー210および各ボタン250、260の操作の方向(向き)が異なっている。具体的には、ドライブレンジを選択するためのシフトレバー210の操作が前後方向の後向きとされ、リバースレンジを選択するためのシフトレバー210の操作が前後方向の前向きとされ、パーキングレンジを選択するためのPボタン260の操作が右向きとされ、ニュートラルレンジを選択するためのNボタン250の操作が下向きとされている。そのため、誤って異なるレンジを選択してしまうのを抑制することができる。
また、Pボタン260の操作方向が右向きすなわちシフトレバー210に近接する向きとされている。そのため、Pボタン260の操作の向きが、シフトレバー210をロックしてその操作すなわち走行レンジへの切替を禁止してパーキングレンジにするというイメージと合致しやすく、操作性を良好にすることができる。
(3)変形例
ここで、各レバー、ボタンの具体的な形状は上記に限られない。また、これらの具体的な操作方向は、上記に限られない。例えば、第2実施形態のシフトレバーにおいて、ドライブレンジへの切替操作の向きとリバースレンジへの切替操作の向きとを逆にしてもよい。ただし、従来の車両では、シフトレバーを前方へ操作することでリバースレンジが選択されるよう構成されているため、第2実施形態のようにシフトレバーを前方へ操作することでリバースレンジが選択され、後方へ操作することでドライブレンジが選択されるようにすれば、運転者が違和感を覚えるのを抑制することができる。
また、上記第1実施形態では、Nボタン50およびPボタン60が、Dレバー10がホーム位置にある状態でのDレバー10に隣接するように配置された場合について説明したが、Nボタン50およびPボタン60は、Dレバー10が占有する領域、すなわち、Dレバー10が移動する領域に隣接して配置されていればよい。また、本発明において、第2操作部材および第3操作部材は、少なくとも、センターコンソール5等から車室内に露出している部分を含んでいればよい。すなわち、Nボタン50、250およびPボタン60、260のうち、上記各操作部51、251、61、261がDレバー10あるいはシフトレバー210の占有範囲に隣接して配置されていればよい。
また、上記第1実施形態に係るシフト装置1を左ハンドル車に適用し、シフト装置1をステアリング4の右側に配置してもよい。ただし、この場合には、上記のように、Nボタン50およびPボタン60の操作時にDレバー10が邪魔になるのを回避して操作性を高めるべく、D/R切替ユニット7とN/P切替ユニット8の左右の位置を入れ替えるのがよい。また、この場合には、Pボタン60の操作方向を、運転者が右手でPボタン60を操作する際に手首の回動角度が広く操作が容易になる時計回りとするのがよい。
同様に、上記第2実施形態に係るシフト装置201を右ハンドル車に適用してもよい。ただし、この場合にも、操作性を高めるべく、D/R切替ユニット207とN/P切替ユニット208の左右の位置を入れ替えるのがよい。また、この場合には、Pボタン260の操作の向きを、シフトレバー210をロックするイメージと合致するように、シフトレバー210向き、すなわち、左向きにするのがよい。
また、上記第1実施形態に係るD/R切替ユニット7と上記第2実施形態に係るN/P切替ユニット208とを組み合わせてシフト装置を構成する、あるいは、上記第1実施形態に係るN/P切替ユニット8と上記第2実施形態に係るD/R切替ユニット207とを組み合わせてシフト装置を構成してもよい。