JP2016053712A - 光学樹脂材料、該光学樹脂材料の製造方法、該材料からなる光学樹脂部材及び該部材からなる偏光板 - Google Patents

光学樹脂材料、該光学樹脂材料の製造方法、該材料からなる光学樹脂部材及び該部材からなる偏光板 Download PDF

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Abstract

【課題】配向複屈折が非常に小さい或いは所望する値である光学用途に有用な樹脂材料で、更に、光学特性に影響する固有複屈折の温度依存性を低減させた光学フィルム等の樹脂製品を、安定して確実に得ることができる技術の提供。【解決手段】(共)重合体の元数x(x≧1)を成分数に含めて計数する条件で定義される成分数zが2以上である複合成分系を含む光学樹脂材料であって、該複合成分系からなる一軸延伸フィルムを用いて、該フィルムの温度を15〜70℃の範囲で段階的に制御した状態で、個々の温度における固有複屈折Δn0をそれぞれ測定し、得られた測定結果から1℃あたりの固有複屈折の変化量として求めた15℃〜70℃における固有複屈折温度係数の絶対値が1.0×10-5(℃-1)以下の範囲内にあり、固有複屈折の温度依存性が低減されている光学樹脂材料、該光学樹脂材料の製造方法、該材料からなるフィルム状の光学樹脂部材及び偏光板。【選択図】図1

Description

本発明は、特にポリマーの固有複屈折の温度依存性が抑制された(すなわち、測定温度により固有複屈折が変化しない)、固有複屈折がほぼゼロ或いは所望の値に調整された、光学樹脂材料、該光学樹脂材料の製造方法、これらの材料からなる光学樹脂部材及び該部材からなる偏光板に関する。
近年、液晶ディスプレイの普及・発展は目覚ましく、電子機器のあらゆる製品に使用されているといっても過言ではない。そして、デスクトップパソコンのモニターや液晶テレビなどにおいて、その大型化も進んでおり、40インチ以上の製品も多く出回っている。液晶ディスプレイに一般に用いられている液晶パネルは、液晶成分が二枚のガラス基板間に挟持された液晶表示用セルと、偏光板が積層された構造を有し、それぞれの基板の表面には、一般的に、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルムなどの各種機能を発現し得る光学フィルム等の光学部材が積層された構造をしている。このような光学部材の材料には、「光学樹脂」あるいは「光学ポリマー」と呼ばれている光透過性の樹脂が汎用されている。また、これらの樹脂材料からなる光学部材は、上記した液晶ディスプレイ用に限らず、各種の光学関連機器に用いられている。例えば、上記に加えて、光ディスクの信号読み取り用レンズ系中のレンズや、プロジェクションスクリーン用フレネルレンズや、レンチキュラーレンズ等のプラスチックレンズのような、より光学特性に優れることが要求される機能性部材としても用いられている。
ここで、樹脂製フィルムは、その生産性から、例えば、溶融押出成形・延伸等によって製造されている。このようにして製造された光学ポリマーからなる各種の光学フィルムやプラスチックレンズ等では、種々の理由によりポリマー分子がいずれかの方向に配向し、理想的なアモルファスの状態ではなくなることにより、入射する光の偏光方向によって屈折率が異なる状態、すなわち、複屈折が生じることが知られている。ポリマーの複屈折には、いくつかのものが知られているが、上記した各種の光学関連機器で用いられている液晶ディスプレイ用の光学フィルムや、プラスチックレンズ等に用いられる透明ポリマーおいて重要なものは、特に光学特性に影響を及ぼす「配向複屈折」と「光弾性複屈折」である。
これに対し、光透過性のポリマーへの添加物とその添加濃度の選択、あるいは、共重合の組み合わせと組成比の選択により、配向複屈折及び光弾性複屈折の一方をほぼ消去する手法が知られていたが、一方を減殺する手法では、他方の減殺が不十分となっていた。このような状況下、本願の発明者らは、光学樹脂材料の配向複屈折性と光弾性複屈折性を同時に減殺し、ほぼ消去する手法を提案し、配向複屈折と光弾性複屈折の双方ともに非常に小さい光学樹脂(光学ポリマー)並びに同樹脂の光学部材(光学素子、光学部品等)への応用に関する提案をしている(特許文献1参照)。
具体的には、2元系以上の共重合系を含む3成分以上の複合成分系を持つ光学材料について、それら複合成分系の成分の組み合わせ及び成分比(組成比)を、該光学材料が配向複屈折性と光弾性複屈折性の双方が同時に相殺されるように選択する手法を提案しており、これによって、配向複屈折と光弾性複屈折の双方ともに非常に小さい光学樹脂を得ている。この結果、複屈折による光漏れの問題を改善でき、得られた光学樹脂を使用することで、画面内に生じる「色ムラ現象」、「光漏れ」や「観察角度に依存する色変化」などを抑制することを可能としている。
特許第4624845号公報
しかしながら、本発明者らは、更なる検討をした結果、上記した従来技術で、2元系以上の共重合系を含む3成分以上の複合成分系で、配向複屈折と光弾性複屈折の双方ともに非常に小さい光学樹脂が得られるが、この光学フィルムにおける光学特性は室温においてのものであり、実際の使用環境においた場合には下記の技術的課題があることを新たに認識するに至った。具体的には、上記した従来技術では、共重合体の各成分を構成する各モノマーに対応する各ホモポリマーの固有複屈折を利用して複合成分系を決定しており、その場合、固有複屈折を室温(常温)におけるもので考えていたが、固有複屈折に温度依存性があり、特に、温度上昇に伴ってその傾向が大きくなることを新たに見出し、本発明者らは、この点を考慮する必要があるとの認識を持つに至った。すなわち、先に述べたように、光学フィルムは、各種の光学関連機器に用いられているが、例えば、携帯電話やパソコン等は、必ずしも、いわゆる常温で使用されるものでなく、極寒や猛暑の多様な温度環境下においても使用されており、特に、これらの機器は稼働中に発熱することから、種々の放熱や冷却手段が考えられているものの、光学フィルムの温度が局所的に高くなるといったことも生じている。これに対し、光学特性に影響のある、本発明者らが新たに見出した固有複屈折の温度依存性を考慮した製品が得られれば、実用上、極めて有用である。
したがって、本発明の目的は、本発明者らが新たに見出した光学特性に影響する固有複屈折(すなわち、ポリマー固有の配向複屈折性)の温度依存性を考慮した光学フィルム等の樹脂製品を、安定して確実に得ることができる技術の提供、更には、固有複屈折が非常に小さく、しかも、その温度依存性が低減された光学用途に有用な樹脂材料を、安定して確実に得ることができる技術を提供することにある。このような技術が提供されれば、多用な温度領域で使用される各種の光学関連機器に用いられている光学フィルムに起因して画面内に生じる、「色ムラ現象」、「光漏れ」や「観察角度に依存する色変化」などを確実に抑制することができるようになり、安定した高性能の液晶ディスプレイ等の設計が可能になる。また、本発明の別の目的は、前記技術を適宜用いることにより、温度依存性を考慮した上で固有複屈折を所望の値にし、しかも、その温度依存性が低減された光学用途に有用な樹脂材料を安定して確実に調整することを可能にし、例えば、配向複屈折を発現し易いポリマーを合成することをも可能とする技術を提供することにある。このような技術が提供されれば、例えば、液晶ディスプレイの位相差フィルムの場合、製造過程において、フィルムを延伸することで所望のリタデーションとなるように配向複屈折と厚さを調整する必要があるが、製造し易い延伸倍率で、所望の配向複屈折のフィルムを得ることができるようになるので、製造上の大きなメリットが得られる。
上記した従来技術の課題に対し、本発明者らは鋭意検討した結果、例えば、2元系以上の共重合系や1元系以上の(共)重合系を含む2成分以上の、複合成分系を持つ光学樹脂材料について、該複合成分系を構成するモノマー成分の種類の組み合わせ及びその成分比(組成比)を設計する際に、本発明者らが新たに見出した、光学特性に影響する固有複屈折(すなわち、ポリマー固有の配向複屈折性)における温度依存性を低減させる手法を見出して本発明に至った。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、(共)重合体の元数x(x≧1)を成分数に含めて計数する条件で定義される成分数zが2以上である複合成分系を含む光学樹脂材料であって、前記複合成分系は、元数xが2以上の共重合体のみで構成されているか、或いは、元数xが1の重合体或いは元数xが2以上の共重合体と、分極率の異方性を有しポリマー中で配向し得る少なくとも1種類の低分子有機化合物とで構成されており、前記複合成分系を構成する成分の組み合わせは、前記共重合体或いは重合体を形成する各モノマー成分に対応する各ホモポリマーの固有複屈折温度係数、及び、前記低分子有機化合物が前記各ホモポリマー中で共通して示す固有複屈折温度係数の内、少なくとも一つは他と異符号であるように選ばれ、前記複合成分系を構成する各成分の成分比は、前記固有複屈折温度係数に関する異符号関係を利用して、前記固有複屈折温度依存性が相殺されるように選ばれていることを特徴とする光学樹脂材料を提供する。
前記光学樹脂材料の好ましい形態としては、前記複合成分系からなる一軸延伸フィルムを用いて、該フィルムの温度を15〜70℃の範囲で段階的に制御した状態で、個々の温度における固有複屈折Δn0をそれぞれ測定し、得られた測定結果から1℃あたりの固有複屈折の変化量として求めた15℃〜70℃における固有複屈折温度係数dΔn0/dTの絶対値が1.0×10-5(℃-1)以下の範囲内にあり、固有複屈折の温度依存性が低減されていることが挙げられる。
また、本発明は、共重合体の元数x(x≧2)を成分数に含めて計数する条件で定義される成分数zが3以上である複合成分系を含む光学樹脂材料であって、前記複合成分系は、元数xが3以上の共重合体のみで構成されているか、或いは、元数xが2以上の共重合体と、分極率の異方性を有しポリマー中で配向し得る少なくとも1種類の低分子有機化合物とで構成されており、前記複合成分系を構成する成分の組み合わせは、前記共重合体を形成する各モノマー成分に対応する各ホモポリマーの固有複屈折の各符号、及び、前記低分子有機化合物が前記各ホモポリマー中で共通して示す配向複屈折性の符号の内、少なくとも1つは他と異符号であり、且つ、前記各ホモポリマーの固有複屈折温度係数、及び、前記低分子有機化合物が前記各ホモポリマー中で共通して示す固有複屈折温度係数の内、少なくとも一つは他と異符号であるように選ばれ、前記複合成分系を構成する各成分の成分比は、前記配向複屈折性に関する異符号関係及び前記固有複屈折温度係数に関する異符号関係を利用して、前記光学樹脂の示す固有複屈折と固有複屈折温度依存性が同時に相殺されるように選ばれていることを特徴とする光学樹脂材料を提供する。
前記光学樹脂材料の好ましい形態として、下記のものが挙げられる。前記複合成分系からなる一軸延伸フィルムを用いて、該フィルムの温度を15〜70℃の範囲で段階的に制御した状態で、個々の温度における固有複屈折Δn0をそれぞれ測定し、得られた測定結果から1℃あたりの固有複屈折の変化量として求めた15℃〜70℃における固有複屈折温度係数dΔn0/dTの絶対値が1.0×10-5(℃-1)以下の範囲内にあり、固有複屈折の温度依存性が低減されていること;成分数が3種以上のモノマー成分を共重合してなる共重合体で構成された光学樹脂材料であって、前記3種以上のモノマー成分の組み合わせと、これらのモノマー成分の組成比が、各モノマー成分に対応する各ホモポリマーからなる一軸延伸フィルムの25℃における固有複屈折Δn0と、該フィルムの温度を15〜70℃の範囲で段階的に制御した状態で、個々の温度における固有複屈折Δn0をそれぞれ測定し、得られた測定結果から1℃あたりの固有複屈折の変化量として求めた固有複屈折温度係数dΔn0/dTとを用いて決定されており、前記共重合体からなる一軸延伸フィルムを用いて測定した25℃における固有複屈折Δn0が、その絶対値が3.0×10-3以下の、ほぼゼロとなるように調整され、或いは、25℃における固有複屈折の絶対値が0.01以上である所望の値になるように調整されており、且つ、いずれの場合も、前記15℃〜70℃における固有複屈折温度係数dΔn0/dTの絶対値が1.0×10-5(℃-1)以下となるように調整された、固有複屈折の温度依存性が低減されていることである。
また、本発明は、別の実施形態として、上記いずれかの光学樹脂材料の製造方法であって、原料として選択する複合成分系のモノマー成分の種類を決定し、且つ、選択した2種以上のモノマー成分の組成比を決定する原料調整工程を有し、該原料調整工程で、各モノマー成分に対応する各ホモポリマーからなる一軸延伸フィルムについて、フィルムの温度を15〜70℃の範囲で段階的に制御した状態で、個々の温度における固有複屈折をそれぞれ測定し、得られた測定結果から1℃あたりの固有複屈折の変化量である固有複屈折温度係数dΔn0/dTを算出し、該固有複屈折温度係数dΔn0/dTと、25℃で測定した固有複屈折Δn0との関係グラフを作成し、該関係グラフから、25℃で測定した固有複屈折Δn0と前記固有複屈折温度係数dΔn0/dTがともにゼロになる組成が存在し得る組み合わせ、或いは、前記固有複屈折温度係数dΔn0/dTがゼロで、且つ、25℃における固有複屈折の絶対値が0.01以上である所望の値になる組成が存在し得る組み合わせを選択することで、モノマー成分の種類を決定し、且つ、選択したモノマー成分を共重合してなる共重合体に固有の25℃で測定した固有複屈折Δn0が、ゼロ、或いは、25℃で測定した固有複屈折の絶対値が0.01以上である所望の値になり、且つ、前記固有複屈折温度係数dΔn0/dTがゼロとなると仮定し、各モノマー成分の質量比を算出することで、組み合わせるモノマー成分の組成比を決定し、上記で選択し決定した種類のモノマー成分を用い、該モノマー成分を上記で決定した組成比となるように配合したモノマー類を共重合して共重合体を合成することを特徴とする光学樹脂材料の製造方法を提供する。
前記光学樹脂材料の製造方法の好ましい形態として、前記組み合わせるモノマー成分の組成比を決定する際に、モノマー成分がN種類(ここでNは3以上の整数)であり、これらのモノマー成分を共重合してなる共重合体に固有の固有複屈折と固有複屈折温度係数が、ともに0(ゼロ)或いは前記所望の値になると仮定して、下記の連立方程式を用いて各モノマーの質量分率を算出し、共重合体を構成するモノマーの組成比を決定することが挙げられる。
[上記式(i)において、Δn0 1は、第1番目のホモポリマーの固有複屈折を表し、Δn0 2は、第2番目のホモポリマーの固有複屈折を表し、Δn0 Nは、第N番目のホモポリマーの固有複屈折を表す。上記式(ii)において、dΔn0 1/dTは、第1番目のホモポリマーの固有複屈折温度係数を表し、dΔn0 2/dTは、第2番目のホモポリマーの固有複屈折温度係数を表し、dΔn0 N/dTは、第N番目のホモポリマーの固有複屈折温度係数を表す。上記式(iii)において、W1、W2、WNは、それぞれ第1番目、第2番目、第N番目のモノマー質量分率(%)を表す。]
また、本発明は、上記いずれかの光学樹脂材料をフィルム状に形成してなる、その固有複屈折が示す温度依存性が生じないように調整されていることを特徴とするフィルム状の光学樹脂部材を提供する。その好ましい形態としては、更に、前記フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を形成してなるフィルム状の光学樹脂部材が挙げられる。また、本発明は、これらのフィルム状の光学樹脂部材からなることを特徴とする偏光板を提供する。
ここで、本明細書で固有複屈折Δn0が「ほぼゼロ」とは、ゼロ或いはゼロに近く、ほぼゼロと見做せる数値であることを意味しており、数値的に示すとすれば、その絶対値が3.0×10-3以下であることを意味するが、更には、1.0×10-3以下であればより好ましい。また、「固有複屈折の温度依存性が低減された」とは、数値的に示せば、一軸延伸フィルムの温度を15〜70℃の範囲で段階的に制御した状態で、個々の温度における固有複屈折をそれぞれ測定し、これらの測定結果から1℃あたりの固有複屈折の変化量である固有複屈折温度係数「dΔn0/dT」を算出した場合に、その絶対値が、1.0×10-5(℃-1)以下の範囲内にあることを意味している。
本発明によれば、例えば、配向複屈折が非常に小さい光学用途に有用な樹脂であって、更に、光学特性に影響する固有複屈折の温度依存性を考慮した光学フィルム等の樹脂製品を、安定して確実に得ることができる技術が提供される。この結果、多用な温度領域で使用され、特に稼働によって発熱する各種の光学関連機器に用いられている光学フィルムに起因して画面内に生じる、「色ムラ現象」、「光漏れ」や「観察角度に依存する色変化」などを確実に抑制することができるようになり、安定した高性能の液晶ディスプレイ等の設計が可能になる。また、本発明によれば、温度依存性を考慮した上で配向複屈折を所望の値に調整することを可能にし、配向複屈折を発現し易いポリマーを合成することを可能とする技術が提供される。例えば、液晶ディスプレイの位相差フィルムの場合、製造過程において、フィルムを延伸することで所望のリタデーションとなるように配向複屈折と厚さを調整する必要があるが、その場合に、製造し易い延伸倍率で所望の配向複屈折のフィルムを得ることができ、しかも、その温度依存性が低減された光学用途に有用な樹脂材料を安定して確実に調製できるようになるといった、工業上の極めて有用な効果が得られる。また、本発明によって提供されるフィルム状の光学樹脂材料に、更に粘着剤を用いて加工を施した、フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を形成してなる光学樹脂部材を液晶ディスプレイに使用することで、従来よりの課題であった「色むら現象」、「光漏れ」、「観察角度に依存する色変化」などを制御できるようになる、という実用上の極めて有用な効果が得られる。
4種のモノマーに対応した各ホモポリマーでそれぞれ形成したフィルムを用いて測定した25℃における固有複屈折Δn0と、これらのホモポリマーについて求めた1℃あたりの固有複屈折の変化量である固有複屈折係数dΔn0/dTと、その場合に、これらのモノマーの組み合わせからなる共重合体(コポリマー)として、該共重合体のΔn0とdΔn0/dTがともに0(ゼロ)になる3種のモノマーの組み合わせが2種類あることを示した図である。 3種のモノマーを共重合してなる3元系の共重合体P(MMA/TFEMA/BzMA=52.0/42.0/6.0)で形成した、25℃における固有複屈折がほぼゼロのポリマーで形成したフィルムの配向複屈折Δnorの温度依存性を示した図である。MMAはメチルメタクリレートの略記、TFEMAは2,2,2−トリフロロエチルメタクリレートの略記、BzMAはベンジルメタクリレートの略記。 図2に示した3種のモノマーを共重合してなる25℃における固有複屈折がほぼゼロのポリマーで形成したフィルムの固有複屈折Δn0の温度依存性を示した図である。 2種類のモノマーを共重合してなる2成分系の共重合体P(MMA/MeMI=82/18)で形成したフィルムの固有複屈折Δn0の温度依存性を示した図である。MeMIはメチルマレイミドの略記。 実施例1で調製した3成分系の共重合体P(MMA/PhMA/BzMA=39/23/38)と、使用したモノマーの一つであるMMAのホモポリマーPMMAのそれぞれにおける(a)配向複屈折Δnorと配向度との関係を示すグラフと、(b)固有複屈折Δn0の温度依存性を示した図である。 実施例3で調製した3成分系の共重合体P(MMA/PhMA/EMI=29/54/17)と、使用したモノマーの一つであるMMAのホモポリマー(PMMAと略記)のそれぞれにおける固有複屈折Δn0の温度依存性を示した図である。PhMAはフェニルメタクリレートの略記、EMIはエチルマレイミドの略記。 固有複屈折の温度依存性を調べる際に使用したサンプルフィルムの温度制御装置の概念図である。 3種のモノマーに対応した各ホモポリマーでそれぞれ形成したフィルムを用いて測定した25℃における固有複屈折Δn0と、該フィルムを用いて測定した光弾性複屈折から求められる光弾性定数Cとの関係グラフであり、これらのモノマーの組み合わせで、Δn0とCがともに0(ゼロ)である共重合体(コポリマー)の組成が存在することを示した図である。
次に、発明を実施するための好ましい形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
まず、本発明で使用する各用語について説明する。「配向複屈折」は、一般に鎖状のポリマー(ポリマー鎖)の主鎖が配向することにより発現する複屈折であり、例えば、ポリマーフィルムの押出成形・延伸などによる製造過程、また、射出成形などによる種々のポリマー光学素子・部品の製造過程において生じる。すなわち、これらの成形過程で応力により配向したポリマー鎖は、一般に冷却固化する間に緩和し切れず、フィルム・光学素子中に主鎖が配向した状態で存在し、これが配向複屈折の源となる。
上記「配向複屈折」は、一般に、測定対象のポリマーフィルムをガラス転移温度以上に加熱し、軟化させた状態で一軸延伸し、続いて冷却固化させた後、室温下で市販の複屈折測定装置等により測定することができる。その際、式(1)に示したように、一軸延伸方向に平行方向及び直交方向に偏波面(光の進行方向と電界の振動方向を含む面)を有する直線偏光の、ポリマー主鎖の平行方向の屈折率npと直交方向の屈折率ndの差(np−nd)を、配向複屈折Δnorと定義する。
Δnor=(np−nd) (1)
そして、このΔnorがゼロでない場合を「複屈折が生じている」といい、その値を「配向複屈折」と呼んでいる。そして、Δnorが正の値の場合、すなわち、平行方向の屈折率の方が大きい場合を「正の配向複屈折」と呼び、Δnorが負の値の場合、すなわち、直交方向の屈折率の方が大きい場合を「負の配向複屈折」と呼んでいる。なお、正の配向複屈折性モノマーと、負の配向複屈折性モノマーとを、適切な比率でランダム共重合させることで、分子レベルでゼロ複屈折化できることが知られており、光ディスクのピックアップレンズ用ポリマーとして実用化もされている。
上記において、延伸フィルムに直線偏光が入射したときに、通過する光を直交する2つの直線偏光に分解して考えると、複屈折により位相差(リターデーション)が生じる。リタデーションReは、フィルムの配向複屈折及び厚さdと、下記式(2)のような関係にある。
Re=Δnor × d (2)
一般的な測定装置では、上記のリタデーションを測定できるものが多い。このことは、測定して得られたリタデーションの結果をフィルム厚さdで割ることで、配向複屈折Δnorを、計算によって求めることができることを意味する。
ここで、配向複屈折Δnorは、前記した配向度fと、固有複屈折Δn0と、式(3)のように関係付けることができる。すなわち、ポリマー主鎖が配向する度合を配向度と呼び「f」で表し、「f」は、ゼロから1の間の値をとる。
Δnor=f × Δn0 (3)
f=1は、ポリマー分子が全部揃った状態(完全に伸びきった状態)を意味し、f=0は、ポリマー分子が完全にランダムな状態を意味する。「固有複屈折」Δn0は、配向度f=1の時の配向複屈折に相当し、ポリマーの種類に固有の性質である。この配向度fは、赤外二色法などにより測定することができる。したがって、配向度fと、配向複屈折Δnorとをそれぞれ測定することで、測定対象のポリマーフィルムにおける「固有複屈折Δn0」を求めることができる。先述したように、配向複屈折は、ポリマーを溶融後、冷却固化する間に緩和し切れず、フィルム・光学素子中に主鎖が配向した状態で存在することに起因する値であることから、本発明者らは、ポリマー種に固有の「固有複屈折」の値を詳細に検討することによって、偏光を利用する光学用途において理想的な、配向複屈折の生じない材料選択を可能になると考えており、種々の検討を行っている。
なお、ポリマーによって形成された光学素子・部品においては、上記した配向複屈折に加えて、一般にガラス転移温度(Tg)付近からそれ以下の温度に冷却された際に生じる体積収縮や、Tg以下の温度で印加される外部応力などにより引き起こされる光弾性複屈折がある。この光弾性定数は、ポリマーの種類に固有の性質である。先述したように、本発明者らは、これまでに、複屈折が生じ易い溶融押出のような汎用方法で光学フィルムを製造方法で製造したとしても、上記した「配向複屈折」と「光弾性複屈折」が同時に発現しない、光漏れのない光学フィルムを得ることができる設計手法を提案している。
工業的に製造されるポリマーによる光学素子・部品は、一般に、押出成形、延伸、射出成形などの、「ポリマーをガラス転移温度以上に加熱し、溶融させた状態で成形し、冷却固化させる方法」により製造されることが多い。したがって、前述したように配向複屈折が生じ易く、また、得られた光学素子に、ガラス転移温度以下で応力を印加すると光弾性複屈折が生じ易い。これらの複屈折は、入射偏光の偏光状態を維持することが求められる液晶ディスプレイの光学フィルムや、種々のレンズなどにおいては、それらの性能を低下させる要因となる。これに対し、本発明者らは、既に、上記した固有複屈折及び光弾性定数に着目し、それらそれぞれにおいて異符号の組み合わせになるような3種以上のモノマー成分(繰り返し単位構造)を選び、いずれもおおよそゼロになるように共重合組成比を調整することで、本質的に配向複屈折と光弾性複屈折を生じないポリマーを得ている。このような方法で合成されたポリマーを用いれば、複屈折がほぼゼロの光学フィルム・光学素子・部品を得ることができ、そのような低複屈折性を要求される用途においては極めて重要な技術となる。
また、この技術を応用すれば、固有複屈折をある適当な値に調整し、配向複屈折を発現し易いポリマーを合成することも可能になる。例えば、液晶ディスプレイの位相差フィルムの場合、製造過程において、フィルムを延伸することで所望のリタデーションとなるように配向複屈折と厚さを調整するが、工業的には、製造装置等の特性などから、延伸倍率などの延伸条件の範囲も現実的には制限がある。つまり、製造し易い延伸倍率で所望の配向複屈折を得るためには、固有複屈折がある範囲であることが望ましい。
位相差フィルムは、工業的には数種類のものが製造され市販されており、液晶ディスプレイのモード・構成に合わせて、適宜選択され、使用されている。以下に、多くの液晶ディスプレイで使用されている4分の1波長板を例として、設計上、好ましい固有複屈折の範囲について説明する。4分の1波長板では、原理的には波長の4分の1のリタデーションを付与するが、ポリマーに複屈折の波長依存性があること、可視光も単一波長ではなく波長約400nm〜800nmの領域を有することから、一般的には、視感度が高い緑色の光の波長付近(例えば550nm付近)を基準に設計することが多い。ここでも波長550nmを基準に設計すると、まず4分の1波長は137.5nmである。位相差フィルムの市販品は、通常厚さ100μm程度以下であるが、近年、20μm程度のさらなる薄型化を目指し、研究開発が進められている。ここで、厚さ100μmのフィルムに対しては、前記した式(2)より配向複屈折Δnorは約1.4×10-3であり、通常の延伸により得られる高い配向度f=0.1においては、前記した式(3)より算出される固有複屈折Δn0は約0.014となる。近年の延伸技術の向上により、より高い配向度を得ることも可能になっていることから、フィルム材料に必要とされる固有複屈折の絶対値は低くなっている。それらを考慮すると、位相差フィルムを製造する場合における望ましい固有複屈折の絶対値は、0.01以上、更に望ましくは、0.05以上、より望ましくは0.1以上である。上記配向度fは、後述するような赤外吸収二色法等により測定できる。なお、配向度を測定することが困難な場合、結晶性の低いポリマーにおいては、厚さ100μm程度以下のフィルムで配向複屈折Δnorの絶対値が約1.4×10-3以上あれば、固有複屈折の絶対値が0.01以上と推定できる。このように推定される理由は、結晶性のポリマーを除き、この条件を満たさないポリマーが殆ど報告されていないためである。以上述べたように、液晶ディスプレイ用の光学フィルムなどのいくつかの用途においては、特に、ポリマーの固有複屈折をおおよそゼロ、或いは、適当な所望の値に調整することが重要となっており、この点を考慮した材料設計が行われている。
本発明者らは、上記したような手法で設計した位相差フィルムなどの光学フィルムを上記した要望に見合った製品として開発していく過程で、下記の重大な事実を見出すと同時に、光学フィルムを利用した製品が使用される環境が極めて多岐に亙っており、また、搭載した製品の稼働時に生じる発熱により光学フィルムも温度上昇するおそれがあるといった実情に鑑みて、先に提案した手法に改良を加える必要があるとの認識を持つに至った。すなわち、本発明者らは、詳細な検討を行っていく過程で、ポリマーの固有複屈折の温度依存性を測定したところ、固有複屈折の値は温度に対して一定ではなく、変化し、特に温度上昇に伴いその傾向が大きくなるという、従来、全く認識されていなかった新たな知見を得た。これまでポリマーの固有複屈折は、通常、室温(常温)で測定されており、これをもってポリマーに固有の値として種々の議論がなされていた。このことは、室温(常温)の条件下における製品の品質を前提として種々の開発が行われていたことを意味する。これに対し、例えば、光学フィルムを適用した液晶ディスプレイの利用環境は多岐にわたっており、極寒の条件下や、真夏の車両内や発熱を伴う作業環境下をなど、60℃を超えるような猛暑の条件下で使用されることも多い。また、電子機器類自体が稼働中に発熱することが知られており、この点でも光学フィルムは温度による影響を受ける。本発明者らは、このような実情に鑑み、光学フィルムの開発において、本発明者らが見出したポリマーの固有複屈折における温度依存性を考慮することが、より優れた性能を安定して発現できる光学フィルム製品を提供するためには必要であるとの認識を持った。本発明者らの検討によれば、例えば、液晶テレビに使用されるVA液晶用偏光板に使用される位相差板の延伸タックの固有複屈折に温度依存性があり、しかも、温度依存性の傾向が大きいものであった。このことは、少なくとも稼働時に発熱する製品に搭載する偏光板を従来のものよりも高品質な性能にするためには、本発明者らが見出した固有複屈折の温度依存性の低減を要求性能とし、温度依存性を考慮した製品の材料開発を行うことが重要になることを意味する。
そこで、本発明者らは、これまでに、ポリマーの固有複屈折の温度依存性について、更に詳細に検討したところ、下記のことを見出した。まず、このポリマー鎖の主鎖が配向することに起因する固有複屈折の温度依存性は、固有複屈折がほぼゼロであるポリマー種(すなわち配向が殆どない)においても、同様に温度依存性があること確認した。更に、種々のポリマーについて固有複屈折の温度に対する変化率(固有複屈折温度係数)を測定した結果、これらもポリマー固有の性質であり、符号が正のものと負のものが存在することを確認した。
先に述べたように、本発明者らは、固有複屈折及び光弾性定数に対する従来の測定結果を利用し、それらそれぞれにおいて異符号の組み合わせになるような3種以上のモノマー成分(繰り返し単位構造)を選び、いずれもおおよそゼロになるように共重合組成比を調整することを提案し、本質的に配向複屈折と光弾性複屈折を生じないポリマーを得ている。しかし、上記した新たな知見は、上記のモノマー組成の決定の際に用いた、従来は、温度に関係なく、固有の値を示すと考えられていた各ホモポリマーの固有複屈折の測定結果に温度依存性があることであり、本発明者らは、広範な使用温度の環境下や、搭載した機器が稼働に伴い発熱を生じた場合においても、優れた性能が安定に維持された光学フィルムを提供するためには、この点を考慮した新たな技術開発が必要であると認識するに至った。本発明者らは、上記認識の下、詳細な検討を行った結果、更に、固有複屈折の温度に対する変化率(固有複屈折温度係数)もポリマー固有の性質であるという新たな知見を得、このことを利用すれば、固有複屈折における温度依存性を考慮し、温度変化による影響を抑制したポリマー設計を実現することができることを見出して、本発明を達成した。
より具体的には、本発明では、ホモポリマーの固有複屈折の温度依存性(固有複屈折温度係数)がそれぞれ正或いは負を示すものがあることに着目し、それらのモノマー組成で構成される繰り返し単位構造を適宜選択し、適切な共重合組成比に調整することによって、所望の固有複屈折温度依存性の共重合体(ポリマー)などを得る技術を提供する。本発明で提供する技術によって実現される、固有複屈折がほぼゼロで、且つ、固有複屈折温度係数がゼロ(温度により複屈折が変化せず、常にゼロ)のポリマーや、或いは、固有複屈折が所望する適度な大きさで、且つ、固有複屈折温度係数がゼロのポリマーは、下記に述べるように、液晶ディスプレイ用の位相差フィルムとした場合に特に有望であると考えられる。位相差フィルムは、液晶パネルの液晶層及び他の光学フィルムの複屈折を補償する(3次元的に複屈折を相殺し合い、複屈折の影響を無くす)ために用いられており、温度に依存することなく複屈折を安定して保償できれば、極めて有用である。更に、本発明で提供される技術によれば、例えば、液晶層や他の光学フィルムなどの複屈折が温度に依存して変化することがあった場合に、それを相殺し得るように、反対の固有複屈折温度係数を適宜に付与することも可能であり、その補償方法を多様なものにできる、という実用上の顕著な効果も得られる。
更に、上記したように、所望の値の固有複屈折を示す材料が安定して確実に得られ、しかも、その温度依存性が低減され、固有複屈折が温度によって変化することが抑制された樹脂材料を確実に且つ安定して得ることができれば、この材料を使用して得られる位相差フィルム等の光学フィルムは、温度変化に対して固有複屈折が安定して維持されたものとなるので、その性能が安定に維持される。このため、このような位相差フィルム等を用いて構成した液晶ディスプレイは、多用な温度環境で使用された場合や、搭載した機器が稼働に伴い発熱を生じた場合にも、高い性能を安定して維持できる優れた製品になる。
本発明の固有複屈折の温度依存性を低減した光学樹脂材料は、本発明者らが先に提案した、固有複屈折がほぼゼロで、且つ、光弾性係数がゼロであるポリマーを得る場合の設計手法と同様にして行うことができる。その結果、後述するように、本発明が目的としている、固有複屈折が非常に小さく、しかも、その温度依存性が低減された光学用途に有用な樹脂材料や、固有複屈折が所望の値であり、しかも、その温度依存性が低減された光学用途に有用な樹脂材料は、下記式によってモノマー組成を設計し、得られたモノマー組成に合致するように樹脂の合成条件を決定すれば、容易に且つ確実に安定した性能の光学フィルムを得ることができる。
ここで、まず、本発明者らが先に提案した、固有複屈折がほぼゼロで、且つ、光弾性係数がゼロである共重合体を得る場合の設計手法について、メチルメタクリレート(MMA)と、2,2,2−トリフロロエチルメタクリレート(TFEMA)と、ベンジルメタクリレート(BzMA)からなる3元系の共重合体を例にとって具体的に説明する。
上記3種のモノマー成分を、それぞれWPMMA、WPTFEMA、WPBzMAの質量比率となるように合成した3元系共重合体の固有複屈折Δn0は、それぞれのモノマーから合成したホモポリマーの各固有複屈折を用いて、下記式(4)によって求められる。また、上記モノマー成分を、WPMMA、WPTFEMA、WPBzMAの質量比率となるように合成した3元系共重合体の光弾性定数Cは、それぞれのモノマーから合成したホモポリマーの各光弾性定数を用いて下記式(5)によって求められる。下記式(6)は、3元系共重合体のモノマー組成を示す式であり、3種のモノマー成分がWPMMA、WPTFEMA、WPBzMAの質量比率(%)で共重合されることを示している。
上記式(4)において、Δn0 PMMAは、MMAのホモポリマー(PMMA)の固有複屈折を表し、Δn0 PTFEMAは、TFEMAのホモポリマー(PTFEMA)の固有複屈折を表し、Δn0 PBzMAは、BzMAのホモポリマー(PBzMA)の固有複屈折を表す。また、上記式(5)において、CPMMAは、MMAのホモポリマーの光弾性定数を表し、CPTFEMAは、TFEMAのホモポリマーの光弾性定数を表し、CPBzMAは、BzMAのホモポリマーの光弾性定数を表す。
上記式(4)において、左辺の3元系共重合体の固有複屈折Δn0の値をゼロ(Δn0=0)とし、上記式(5)において、左辺の3元系共重合体の光弾性定数Cの値をゼロ(C=0)とし、式(6)と連立させることにより方程式を解くことで、固有複屈折Δn0と光弾性定数Cの両方がゼロになるポリマー(以下、ゼロ・ゼロ複屈折ポリマーとも呼ぶ)の合成を可能にするMMAとTFEMAとBzMAのモノマー組成、WPMMA/WPTFEMA/WPBzMA=52.0/42.0/6.0が求められる。そして、このようなモノマー組成からなる3元共重合体を実際に合成し、その固有複屈折と光弾性定数を測定すると、25℃の温度条件下ではほぼゼロになる。
上記した連立方程式による3元系共重合体の設計手法は、図8により考えるとより理解し易い。図8は、光弾性定数を縦軸、固有複屈折を横軸に取ったグラフであるが、本発明者らは「複屈折マップ」と呼んでいる。各モノマーからなるホモポリマーの、PMMA、PTFEMA及びPBzMAにおける値を図8中にプロットしてあるが、これらを結んだ三角形が原点を含むことが分かる。数学的に明らかなように、この場合は、前述した式(4)と(5)の左辺をゼロとして連立させると解が得られる。更に、このように種々のホモポリマーについて固有複屈折と光弾性定数を測定し、複屈折マップ中に、これらの値をプロットすることで、どのような種類のモノマーの組み合わせの共重合体とすれば、ゼロ・ゼロ複屈折ポリマーとなり得るかを視覚的に判断できるようになる。そして、原点(ゼロ)を含む解が得られる組み合わせについて、式(4)−(6)を解いてモノマー組成を求めれば、容易に且つ確実に固有複屈折と光弾性定数がともにゼロの複屈折ポリマーを調製することができる。
(複屈折の測定方法)
本明細書における「ポリマーの固有複屈折」は、下記のような方法で測定したものである。まず、適宜な有機溶媒を用い、測定対象のポリマー溶液を調整し、該溶液でフィルムを作製し、得られたフィルムを用いて下記のようにして、配向複屈折と、その配向度とを測定し、得られたこれらの測定値からポリマーの固有複屈折を求めた。上記モノマーからなる3成分系のポリマーを例にとって説明すると、まず、得られたポリマーを、質量比で4倍量のテトラヒドロフランとともにガラス製のサンプル管に入れ撹拌し、十分に溶解させた。そして、該ポリマー溶液を、ガラス板状にナイフコーターを用いて約0.3mmの厚さに展開し、1日室温で放置し、乾燥させた。次に、得られたフィルムをガラス板より剥がし、60℃の減圧乾燥機内で更に48時間乾燥させ、得られた厚さ約40μmのポリマーフィルムをダンベル状に加工し、テンシロン汎用試験機(株式会社オリエンテック製)により一軸延伸を行った。この時、延伸温度を120〜140℃、延伸速度を2〜30mm/min.、延伸倍率1.1〜3.0などの範囲で調整し、いくつかの配向度fのフィルムを作製した。そして、延伸後のフィルムの配向複屈折を自動複屈折測定装置ABR−10A(ユニオプト(株)製)を用いて測定した。また、延伸後のフィルムの配向度を赤外吸収二色法により測定した。そして、上記のようにして測定した配向複屈折の値を、延伸後のフィルムの配向度で割って(或いは、外挿して)、当該ポリマーの固有複屈折を求めた。なお、上記した方法で測定した上記ポリマーからなるフィルムの固有複屈折は、25℃において0.16×10-3であり、常温で、ほぼゼロとみなせる大きさであった。
(固有複屈折の温度依存性)
上記のようにして得た3元系の共重合体(MMA/TFEMA/BzMA=52.0/42.0/6.0)からなる固有複屈折がほぼゼロのポリマーを用い、102℃、40mm/minで40mm熱延伸し、延伸後、24時間室温に保存したサンプルについて、16℃〜70℃で温度制御しながら、その固有複屈折の温度依存性を調べた。具体的には、温度を温度制御装置により昇温させたときのリタデーション(Re)を測定した。図2に、配向複屈折の測定結果を示した。これは、測定したリタデーションをフィルム厚28μmで割って求めたものである。更に、これをポリマーフィルム中のポリマー分子鎖の配向度f=0.107で割ったものが、図3に示す固有複屈折である。これらの図からわかるように、25℃の室温付近では複屈折がゼロであったが、温度が増加するほど複屈折が増加した。これらの図からもわかるように、この温度依存性は、比較的温度と線形な関係にあった。また、配向複屈折0.10×10-3の値を、一般的な偏光板保護フィルムの厚さ80μmに掛けると、リタデーションで8nmに相当することが分かる。一般に、1nmのリタデーションは、直交ニコル(直交させた偏光板)間に配置すると視認できることから、この温度変化による複屈折変化の影響が大きいことが分かる。
(ポリマーの固有複屈折の温度依存性の検討)
上記の結果から、本発明者らは、種々のモノマー組成の光学フィルムについて、同様の試験を行い固有複屈折の温度依存性について調べ、図4にその結果の一例を示した。
図4に示した例は、MMA/MeMI(メチルマレイミド)からなる2成分系の共重合体であり、共重合組成はMMA/MeMI=80/20である。図4に示したように、先に示した図3に例示した3成分系の共重合体と同様に、ポリマーの固有複屈折は温度依存性を示すことを確認した。固有複屈折温度係数dΔn0/dTは2.9×10-5-1であった。また、図示していないが、室温で正の固有複屈折を示すポリマーも、室温で負の固有複屈折を有するポリマーも、いずれも温度依存性があることを確認した。
(各ホモポリマーの固有複屈折の温度依存性)
図3、図4に結果を示したポリマーは、いずれも温度に対して正の相関を示したが、その程度は一様でなく、モノマー組成によって異なることが分かった。そこで、その程度の違いを検討するために、種々モノマーに対応したホモポリマーについて、1℃あたりのΔnの変化量で相関の度合を比べた。表1に、各ポリマーの25℃(室温)における固有複屈折Δn0の値と、15℃〜70℃で温度を制御しながら測定して得られた、1℃あたりのΔnの変化量である固有複屈折温度係数dΔn0/dTの結果を示した。その結果、温度に対する相関の度合いは、各ポリマーの側鎖構造に依存する傾向が認められた。例えば、剛直な構造を持つポリマーでは低く、剛直ではなく、分極率異方性の大きい構造を持つポリマーでは高いことが示唆された。なお、表1中のPPhMAはフェニルメタクリレートのホモポリマーの略であり、PMIはポリマレイミドに対応するホモポリマーの略であり、PMeMIは、ポリメチルマレイミドに対応するホモポリマーの略であり、PEMIは、ポリエチルマレイミドに対応するホモポリマーの略であり、PCHMIは、ポリシクロヘキシルマレイミドに対応するホモポリマーの略であり、その他は、先に述べたと同様のホモポリマーの略記である。
本発明の光学樹脂材料を構成する共重合体或いは重合体を形成するモノマーは、上記したモノマーに限定されず、例えば、下記に挙げるような、芳香族モノマー、アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、マレイミド系モノマー、極性モノマー等を適宜に使用することができる。
芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、アルファーメチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、6−(4,6−ジブロモ−2−イソプロピルフェノキシ)−1−ヘキシルアクリレート、6−(4,6−ジブロモ−2−s−ブチルフェノキシ)−1−ヘキシルアクリレート、2,6−ジブロモ−4−ノニルフェニルアクリレート、2,6−ジブロモ−4−ドデシルフェニルアクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)−1−エチルアクリレート、2−(2−ナフチルオキシ)−1−エチルアクリレート、6−(1−ナフチルオキシ)−1−ヘキシルアクリレート、6−(2−ナフチルオキシ)−1−ヘキシルアクリレート、8−(1−ナフチルオキシ)−1−オクチルアクリレート、8−(2−ナフチルオキシ)−1−オクチルアクリレート、2−フェニルチオ−1−エチルアクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられるが、それらに限定されない。
アクリル系モノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートやアルキル環式又は複素環を側鎖に有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、及びn−テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、アルキル(メタ)アクリレートとは、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートを意味する。
ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルトルエン、各種ビニルエーテル等が挙げられる。
マレイミド系モノマーとしては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチル)フェニルマレイミド、N−(2−イソプロピル)フェニルマレイミド、N−(3−メチルフェニル)マレイミド、N−(3−エチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−エチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)マレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジクロロフェニル)マレイミド、N−(2−ブロモフェニル)マレイミド、N−(パーブロモフェニル)マレイミド、N−(2,4−ジメチルフェニル)マレイミド、パラトリルマレイミドなどが挙げられる。上記のフェニルマレイミド類のほかにN−アルキル置換マレイミド類としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−ヘプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルシトラコンイミドなどのN−アルキル置換マレイミド類などが挙げられる。
極性モノマーとしては、例えば、エチレン系不飽和カルボン酸、エチレン系不飽和スルホン酸、エチレン系不飽和燐酸、水酸基含有モノマー、窒素含有モノマー等が挙げられる。
エチレン系不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びクロトン酸などが挙げられる。
他の極性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基含有単量体;プロピルトリメトキシシラン(メタ)アクリレート、プロピルジメトキシシラン(メタ)アクリレート、プロピルトリエトキシシラン(メタ)アクリレートなどのアルコキシシリル基含有単量体;(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
また、その他のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。更に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の2つ以上の重合性官能基を有するものが挙げられる。
上記の(共)重合体は、通常の溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合、活性放射線重合などにより製造することができる。
本発明の光学樹脂材料は、上記したようなモノマーで形成した共重合体或いは重合体と、これらのポリマー中で配向し得る低分子有機化合物とで構成することで、固有複屈折の温度依存性を低減した樹脂材料とすることもできる。その際に使用し得る、分極率の異方性を有しポリマー中で配向し得る低分子有機化合物としては、例えば、下記に挙げるような各種の可塑剤が挙げられる。代表的な可塑剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ジアルキルアジペート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、トルエンスルホンアミド、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリオキシプロピレンアリールエーテル、ジブトキシエトキシエチルホルマール、およびジブトキシエトキシエチルアジペートが挙げられる。本発明においては、特に芳香族基を2個含有する化合物が有効であり、例えば、1,2−ジフェニルエテン(別称:trans−スチルベン)或いはジフェニルスルフィド、安息香酸エステル系として、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ベンジルベンゾエート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートなどが挙げられる。なお、「芳香族基」の個数の数え方は、ナフタレン環などの縮合環は1個と数える。
本発明者らの検討によれば、先述した(共)重合体に、上記に挙げたような低分子有機化合物を添加することで、(共)重合体の固有複屈折(Δn0)と固有複屈折温度係数(Δn0/dT)を変化させることができる。この点についての検討結果を下記に示した。具体的には、低分子有機化合物として、trans−スチルベンとジフェニルスルフィドをそれぞれ例にとり、PMMAに、これらの低分子有機化合物を添加して得た光学樹脂材料をフィルム化し、各フィルムについて、固有複屈折(Δn0)と固有複屈折温度係数(Δn0/dT)をそれぞれ測定した。以下の表2に、結果をまとめて示した。その際、PMMAへの低分子有機化合物の添加量を、3質量%と10質量%の2種類とし、それぞれフィルムを作製した。また、比較のために、低分子有機化合物を添加しない、PMMA本来の固有複屈折(Δn0)と固有複屈折温度係数(Δn0/dT)を表2中に合わせて示した。表2に示した通り、(共)重合体であるPMMAに低分子有機化合物を添加することで、その添加量に応じて、該(共)重合体の固有複屈折(Δn0)と固有複屈折温度係数(Δn0/dT)を変化することが確認された。このことは、(共)重合体に、上記に挙げたような低分子有機化合物を、適宜な量で添加するという簡便な方法によって、得られるフィルムの固有複屈折温度依存性を低減するように設計できることを意味する。
本発明で規定する固有複屈折の温度依存性が低減されている光学樹脂材料は、下記のような方法で容易に且つ確実に得ることができる。例えば、上記したようなモノマー成分を共重合してなる共重合体に固有の固有複屈折と固有複屈折温度係数がともに0(ゼロ)、或いは、固有複屈折が、位相差フィルムなどの作製に好適な25℃における固有複屈折の絶対値が0.01以上であるような所望の値とし、且つ、固有複屈折温度係数が0(ゼロ)になると仮定して、下記の連立方程式を解くことで、各モノマーの質量分率を算出でき、上記した目的性能を示す共重合体を構成するモノマーの組成比を決定することができる。したがって、目的とする性能を示す共重合体は、上記で得られた目的のモノマー組成比となるように、各モノマーの反応性や反応条件等を考慮して、モノマーを配合して重合させることで容易に得られる。
[上記式(i)において、Δn0 1は、第1番目のホモポリマーの固有複屈折を表し、Δn0 2は、第2番目のホモポリマーの固有複屈折を表し、Δn0 Nは、第N番目のホモポリマーの固有複屈折を表す。上記式(ii)において、dΔn0 1/dTは、第1番目のホモポリマーの固有複屈折温度係数を表し、dΔn0 2/dTは、第2番目のホモポリマーの固有複屈折温度係数を表し、dΔn0 N/dTは、第N番目のホモポリマーの固有複屈折温度係数を表す。上記式(iii)において、W1、W2、WNは、それぞれ第1番目、第2番目、第N番目のモノマー質量分率(%)を表す。]
より具体的には、例えば、本発明が目的とする固有複屈折がほぼゼロ或いは所望の値のポリマーで、且つ、これらの固有複屈折の温度依存性を低減した光学フィルムに有用な樹脂材料は、3種のモノマーからなる共重合体の場合、下記のような手法で得ることができる。まず、先に述べた図8に示したような手法で、固有複屈折がほぼゼロのポリマーを形成し得るモノマー成分の種類を選択する。ここで、第1番目から第3番目までの3種のモノマーを選択したと仮定する。次に、これらの3種のモノマーのそれぞれに対応するホモポリマーからなる各フィルムについて、それぞれ、先に説明したような方法で固有複屈折の温度依存性を調べ、それぞれの固有複屈折温度係数dΔn0/dTを求める。そして第1番目から第3番目までの3種のモノマーの質量分率(%)をそれぞれW1、W2、W3であると仮定し、下記の(iv)−(vi)の連立方程式を立てる。そして、例えば、(iv)式の左辺をゼロ(Δn0=0)、(v)式の左辺をゼロ(dΔn0/dT=0)として、W1、W2、W3の解を求めることで、固有複屈折がほぼゼロのポリマーであって、しかも、固有複屈折温度係数がゼロの、配向複屈折に温度依存性のないポリマーを得ることができる。また、この際、(iv)式の左辺の値と、(v)式の左辺の値を所望の値にすれば、配向複屈折が所望の値に調整され、しかも、その温度依存性が低減された、液晶ディスプレイの位相差フィルム等に有用な光学フィルムを得ることができる。
前記した式(i)〜(iii)を3成分(N=3)の式としたものが以下の式である。
上記した(iv)−(vi)の連立方程式による、例えば、固有複屈折がほぼゼロのポリマーであって、しかも、固有複屈折温度係数ゼロのポリマーを得るための3元系共重合体の設計手法は、先に説明した図8と同様に、図1により考えるとより理解し易い。図1は、後述する実施例で、光学樹脂材料を合成するためのモノマー組成比の設計にも用いたものであるが、上記式中の第1番目のモノマーをMMA、これに対応するホモポリマーをPMMAとし、上記式中の第2番目のモノマーをPhMA、これに対応するホモポリマーをPPhMAとし、上記式中の第3番目のモノマーをEMI或いはBzMA、これに対応するそれぞれのホモポリマーをPEMI或いはPBzMAとしている。図1では、横軸に25℃(室温)における固有複屈折Δn0をとり、縦軸に固有複屈折温度係数dΔn0/dTをとり、各モノマーに対応するホモポリマーである、PMMA、PPhMA、PBzMA及びPEMIについて、それぞれ、固有複屈折Δn0と、固有複屈折温度係数dΔn0/dTとをプロットしている。
図1から、PMMAとPPhMAとPEMIの各プロットを結んだ三角形と、PMMAとPPhMAとPBzMAの各プロットを結んだ三角形が、原点(Δn0=dΔn0/dT=0)を含むことが分かる。数学的に明らかなように、これらの場合は、前述した式(iv)と(v)の左辺をいずれもゼロとして連立させると、解が得られる。更に、このように、種々のホモポリマーについて、25℃(室温)における固有複屈折Δn0と、温度依存性を検討して得た固有複屈折温度係数dΔn0/dTを測定し、マップ中に、これらの値をプロットすることで、どのような種類のモノマーの組み合わせの共重合体とすれば、例えば、固有複屈折がほぼゼロで、且つ、固有複屈折温度係数ゼロのポリマーとなり得るかを視覚的に判断できるようになる。そして、原点を含む解が得られる組み合わせについて、式(iv)−(vi)を解いてモノマー組成を求めれば、容易に且つ確実に、配向複屈折がほぼゼロで、且つ、配向複屈折に温度依存性がない光学フィルムを得ることができるポリマーの組成比が得られる。したがって、上記した設計の下に複数のモノマーを共重合して調製した本発明の光学樹脂材料を用いることで、該樹脂の固有複屈折が持つ温度依存性が低減された、多様な温度下で使用されたとしても安定な光学特性を示す、光学用途により有用な光学フィルム製品の提供が可能になる。また、ここでの説明に限らず、前述した式(i)−(iii)において任意のN成分の方程式をΔn0=dΔn0/dT=0の下に解くことにより、固有複屈折がほぼゼロで、且つ、固有複屈折温度係数がほぼゼロの、固有複屈折の温度依存性が低減されたポリマーを設計することができる。通常、4成分以上の成分数となると、方程式の解となり得る共重合体のモノマー組成は、複数得られる。
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
[実施例1]
(モノマー組成比の設計)
本実施例では、図1中に示した3種のモノマーである、PhMA(第1番目のモノマー)、BzMA(第2番目のモノマー)及びEMI(第3番目のモノマー)を選択し、これらのモノマーの組み合わせで共重合体を得た場合に、得られた共重合体によって製造した光学フィルムが、固有複屈折と固有複屈折温度係数がともにゼロになるように設計した。具体的には、下記式(iv)〜(vi)を用い、前記したようにして上記3種のモノマーの組成比を計算により求めた。
具体的には、本実施例では、固有複屈折と固有複屈折温度係数がともにゼロになる光学フィルムを得ることができる共重合体を設計するため、上記した連立方程式(iv)〜(vi)を利用して、下記のようにしてモノマーの配合を算出した。上記で使用した各ホモポリマーについての、固有複屈折と固有複屈折温度係数をそれぞれ式(iv)〜(vi)に代入すると、下記式(vii)、(viii)、(ix)のようになる。
そして、上記式(vii)と、式(viii)の左辺を0(ゼロ)として上記連立方程式を計算すると、質量分率(%)で、MMA/PhMA/BzMA=33/34/33のモノマー組成比で合成された共重合体である場合に、該共重合体からなる光学フィルムの固有複屈折と、固有複屈折温度係数はともにゼロになると予想される。
(ポリマーの合成)
以下に、上記の例で算出された3種のモノマーの質量分率が、MMA/PhMA/BzMA=33/34/33のモノマー組成となるようにポリマーを合成する手順について説明する。計算により得た上記組成比を満足する共重合体を目指し、重合に使用する各モノマーの反応性等を考慮し、ガラス製のサンプル管に、メチルメタクリレート(MMA)と、フェニルメタクリレート(PhMA)と、ベンジルメタクリレート(BzMA)を、質量比で、41/22/37となるように配合した。更に、重合開始剤としてパーブチルO(商品名、日本油脂(株)製)を、これらのモノマー全量に対して0.2質量%となる量で添加した。これらの原材料を混合・撹拌し、十分に均一にさせた後、メンブランフィルターを通してろ過し、試験管に移した。これらの試験管を70℃の湯浴中に設置し、24時間重合した。続いて90℃の乾燥機中で24時間熱処理を行った。
このようにして得られたポリマーを10倍量の塩化メチレンに溶解し、得られたポリマー溶液をメタノール中に滴下し、ポリマーを析出させた。ポリマーをろ過し、十分に乾燥させることにより残存しているモノマーを除去し、3元系の共重合体を得た。この共重合体を、13CNMRを用いて共重合成比を測定した結果、目的としている質量分率とよい一致が得られた。
この測定された共重合体のモノマー比率で、上記式(iv)、(v)から計算した、25℃における固有複屈折は、Δn0=0.11×10-3であり、また、固有複屈折温度係数はdΔn0/dT=0.32×10-5-1になった。
(ポリマーから作製したフィルムの光学特性の測定)
下記のようにして上記で得られたポリマーでフィルムを作製し、更に、得られたフィルムの光学特性を調べた。まず、得られたポリマーを、質量比で5倍量の塩化メチレンとともにガラス製のサンプル管に入れ、撹拌し、十分に溶解させた。次に、得られたポリマー溶液を、ガラス板状にナイフコーターを用いて約0.3mmの厚さに展開し、1日室温で放置し、乾燥させた。そして、得られたフィルムをガラス板より剥がし、90℃の減圧乾燥機内で更に24時間乾燥させた。上記のようにして得られた厚さ約40μmのポリマーフィルムをダンベル状に加工し、テンシロン汎用試験機(株式会社オリエンテック製)により一軸延伸を行った。この時、延伸温度を114℃、延伸速度を50mm/min.、延伸倍率1.5〜2.5などの範囲で調整し、いくつかの配向度fのフィルムを作製した。そして、延伸後のフィルムの複屈折を自動複屈折測定装置ABR−10A(ユニオプト(株)製)を用いてそれぞれ測定した。また、延伸後のフィルムの配向度を赤外吸収二色法により測定した。その結果、上記で作製したフィルムの固有複屈折は、25℃において、−0.16×10-3であり、ほぼゼロとみなせる大きさであった。
(フィルムの固有複屈折の温度依存性)
上記のようにして得られた熱延伸したフィルムを、延伸後、24時間室温に保存したサンプルについて、12℃〜70℃で温度制御しながら、その配向複屈折・固有複屈折の温度依存性を調べた。具体的には、温度を温度制御装置により昇温させたときのリタデーション(Re)を測定した。これをフィルム厚で割ることにより配向複屈折を求め、ポリマーの配向度fに対してプロットした結果を図5(A)に示した。また、配向複屈折と配向度fから固有複屈折を求め、その温度変化を測定したものを図5(B)に示した。ここで配向度fは、測定温度範囲で一定とみなした。これらの図からわかるように、本実施例で調製した共重合体からなるフィルムは、温度が増加しても複屈折は殆ど変化せず、温度依存性が低減されていた。調製したフィルムの固有複屈折温度係数は、dΔn0/dT=0.15×10-5-1になった。なお、固有複屈折温度係数の算出は、15℃〜70℃のデータから求めた。本明細書のいずれの場合も、15℃〜70℃のデータから固有複屈折温度係数を算出した。また、比較のため、図5中に、PMMAの測定結果も同様にプロットした。
[実施例2]
共重合体のモノマーの質量比率をMMA/PhMA/BzMA=40/27/33にした共重合体を調製したこと以外は実施例1と同様にして、該共重合体から得られたフィルムについて、25℃における固有複屈折と固有複屈折温度係数を求めた。その結果、25℃における固有複屈折は、Δn0=−0.22×10-3であり、固有複屈折温度係数は、dΔn0/dT=0.38×10-5-1であり、本実施例で調製した共重合体からなるフィルムも、温度が増加しても複屈折は殆ど変化せず、温度依存性が低減されていた。
[実施例3]
共重合体のモノマーの質量比率をMMA/PhMA/EMI=29/54/17にした3成分系の共重合体を調製したこと以外は実施例1と同様にして、モノマー組成を設計し、得られたモノマー組成になるように共重合体を合成した。そして、この共重合体から得られたフィルムについて、25℃における固有複屈折と固有複屈折温度係数を求めた。図6に、その結果を示した。その結果、25℃における固有複屈折はΔn0=−0.47×10-3であり、固有複屈折温度係数はdΔn0/dT=−0.12×10-5-1であり、本実施例で調製した共重合体からなるフィルムも、温度が上昇しても複屈折は殆ど変化せず、温度依存性が低減されていた。
(ポリマーの固有複屈折の温度依存性の測定)
本発明においては、固有複屈折の温度依存性を調べる際に、フィルムサンプルの温度制御装置として、図7に示した構成のものを使用して、複屈折の測定時におけるフィルムサンプルが確実に所望の温度となるようにした。図7中の1は、中心が空胴になっているサンプルホルダーであり、この空胴部分にフィルムサンプルを配置することで、サンプルを所望する温度に確実にできる構造となっている。このサンプルホルダーは、図7中に2、3で示した2個の熱電対を有しており、これらの熱電対でサンプルの温度を測定する。図7中に4で示した密閉系向循環式ハンディクーラーTRL・108H・LM(トーマス科学器械株式会社製)を適宜に稼働することで、これらの熱電対の温度が所望の温度となるようにし、サンプルを所望の温度とし、その状態で複屈折を測定する。また、5は、熱電対からの情報を記録するレコーダーであるが、本発明では、タッチ型ペーパレスレコーダTR・V550(商品名、株式会社キーエンス製)を用いた。このような装置を用い、温度制御が厳格になされたフィルムサンプルを用いて固有複屈折の測定を行った。
1:サンプルホルダー
2、3:熱電対
4:密閉系向循環式ハンディクーラー
5:レコーダー

Claims (10)

  1. (共)重合体の元数x(x≧1)を成分数に含めて計数する条件で定義される成分数zが2以上である複合成分系を含む光学樹脂材料であって、
    前記複合成分系は、
    元数xが2以上の共重合体のみで構成されているか、或いは、元数xが1の重合体或いは元数xが2以上の共重合体と、分極率の異方性を有しポリマー中で配向し得る少なくとも1種類の低分子有機化合物とで構成されており、
    前記複合成分系を構成する成分の組み合わせは、
    前記共重合体或いは重合体を形成する各モノマー成分に対応する各ホモポリマーの固有複屈折温度係数、及び、前記低分子有機化合物が前記各ホモポリマー中で共通して示す固有複屈折温度係数の内、少なくとも一つは他と異符号であるように選ばれ、
    前記複合成分系を構成する各成分の成分比は、
    前記固有複屈折温度係数に関する異符号関係を利用して、前記固有複屈折温度依存性が相殺されるように選ばれていることを特徴とする光学樹脂材料。
  2. 前記複合成分系からなる一軸延伸フィルムを用いて、該フィルムの温度を15〜70℃の範囲で段階的に制御した状態で、個々の温度における固有複屈折Δn0をそれぞれ測定し、得られた測定結果から1℃あたりの固有複屈折の変化量として求めた15℃〜70℃における固有複屈折温度係数dΔn0/dTの絶対値が1.0×10-5(℃-1)以下の範囲内にあり、固有複屈折の温度依存性が低減されている請求項1に記載の光学樹脂材料。
  3. 共重合体の元数x(x≧2)を成分数に含めて計数する条件で定義される成分数zが3以上である複合成分系を含む光学樹脂材料であって、
    前記複合成分系は、
    元数xが3以上の共重合体のみで構成されているか、或いは、
    元数xが2以上の共重合体と、分極率の異方性を有しポリマー中で配向し得る少なくとも1種類の低分子有機化合物とで構成されており、
    前記複合成分系を構成する成分の組み合わせは、
    前記共重合体を形成する各モノマー成分に対応する各ホモポリマーの固有複屈折の各符号、及び、前記低分子有機化合物が前記各ホモポリマー中で共通して示す配向複屈折性の符号の内、少なくとも1つは他と異符号であり、且つ、
    前記各ホモポリマーの固有複屈折温度係数、及び、前記低分子有機化合物が前記各ホモポリマー中で共通して示す固有複屈折温度係数の内、少なくとも一つは他と異符号であるように選ばれ、
    前記複合成分系を構成する各成分の成分比は、
    前記配向複屈折性に関する異符号関係及び前記固有複屈折温度係数に関する異符号関係を利用して、前記光学樹脂の示す固有複屈折と固有複屈折温度依存性が同時に相殺されるように選ばれていることを特徴とする光学樹脂材料。
  4. 前記複合成分系からなる一軸延伸フィルムを用いて、該フィルムの温度を15〜70℃の範囲で段階的に制御した状態で、個々の温度における固有複屈折Δn0をそれぞれ測定し、得られた測定結果から1℃あたりの固有複屈折の変化量として求めた15℃〜70℃における固有複屈折温度係数dΔn0/dTの絶対値が1.0×10-5(℃-1)以下の範囲内にあり、固有複屈折の温度依存性が低減されている請求項3に記載の光学樹脂材料。
  5. 成分数が3種以上のモノマー成分を共重合してなる共重合体で構成された光学樹脂材料であって、
    前記3種以上のモノマー成分の組み合わせと、これらのモノマー成分の組成比が、各モノマー成分に対応する各ホモポリマーからなる一軸延伸フィルムの25℃における固有複屈折Δn0と、該フィルムの温度を15〜70℃の範囲で段階的に制御した状態で、個々の温度における固有複屈折Δn0をそれぞれ測定し、得られた測定結果から1℃あたりの固有複屈折の変化量として求めた固有複屈折温度係数dΔn0/dTとを用いて決定されており、
    前記共重合体からなる一軸延伸フィルムを用いて測定した25℃における固有複屈折Δn0が、その絶対値が3.0×10-3以下の、ほぼゼロとなるように調整され、或いは、25℃における固有複屈折の絶対値が0.01以上である所望の値になるように調整されており、且つ、いずれの場合も、前記15℃〜70℃における固有複屈折温度係数dΔn0/dTの絶対値が1.0×10-5(℃-1)以下となるように調整された、固有複屈折の温度依存性が低減されている請求項3に記載の光学樹脂材料。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学樹脂材料の製造方法であって、
    原料として選択する複合成分系のモノマー成分の種類を決定し、且つ、選択した2種以上のモノマー成分の組成比を決定する原料調整工程を有し、
    該原料調整工程で、
    各モノマー成分に対応する各ホモポリマーからなる一軸延伸フィルムについて、フィルムの温度を15〜70℃の範囲で段階的に制御した状態で、個々の温度における固有複屈折をそれぞれ測定し、得られた測定結果から1℃あたりの固有複屈折の変化量である固有複屈折温度係数dΔn0/dTを算出し、
    該固有複屈折温度係数dΔn0/dTと、25℃で測定した固有複屈折Δn0との関係グラフを作成し、
    該関係グラフから、25℃で測定した固有複屈折Δn0と前記固有複屈折温度係数dΔn0/dTがともにゼロになる組成が存在し得る組み合わせ、或いは、前記固有複屈折温度係数dΔn0/dTがゼロで、且つ、25℃における固有複屈折の絶対値が0.01以上である所望の値になる組成が存在し得る組み合わせを選択することで、モノマー成分の種類を決定し、且つ、
    選択したモノマー成分を共重合してなる共重合体に固有の25℃で測定した固有複屈折Δn0が、ゼロ、或いは、25℃で測定した固有複屈折の絶対値が0.01以上である所望の値になり、且つ、前記固有複屈折温度係数dΔn0/dTがゼロとなると仮定し、各モノマー成分の質量比を算出することで、組み合わせるモノマー成分の組成比を決定し、
    上記で選択し決定した種類のモノマー成分を用い、該モノマー成分を上記で決定した組成比となるように配合したモノマー類を共重合して共重合体を合成することを特徴とする光学樹脂材料の製造方法。
  7. 前記組み合わせるモノマー成分の組成比を決定する際に、モノマー成分がN種類(ここでNは3以上の整数)であり、これらのモノマー成分を共重合してなる共重合体に固有の固有複屈折と固有複屈折温度係数が、ともに0(ゼロ)或いは前記所望の値になると仮定して、下記の連立方程式を用いて各モノマーの質量分率を算出し、共重合体を構成するモノマーの組成比を決定する請求項6に記載の光学樹脂材料の製造方法。
    [上記式(i)において、Δn0 1は、第1番目のホモポリマーの固有複屈折を表し、Δn0 2は、第2番目のホモポリマーの固有複屈折を表し、Δn0 Nは、第N番目のホモポリマーの固有複屈折を表す。上記式(ii)において、dΔn0 1/dTは、第1番目のホモポリマーの固有複屈折温度係数を表し、dΔn0 2/dTは、第2番目のホモポリマーの固有複屈折温度係数を表し、dΔn0 N/dTは、第N番目のホモポリマーの固有複屈折温度係数を表す。上記式(iii)において、W1、W2、WNは、それぞれ第1番目、第2番目、第N番目のモノマー質量分率(%)を表す。]
  8. 請求項1〜5のいずれか1項の光学樹脂材料或いは請求項6又7に記載の光学樹脂材料の製造方法で得た光学樹脂材料をフィルム状に形成してなる、その固有複屈折が示す温度依存性が生じないように調整されていることを特徴とするフィルム状の光学樹脂部材。
  9. 更に、前記フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を形成してなる請求項8に記載のフィルム状の光学樹脂部材。
  10. 形成材料として、請求項8又は9に記載のフィルム状の光学樹脂部材が用いられていることを特徴とする偏光板。
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