JP2016050179A - ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体及び有機エレクトロニクスデバイス - Google Patents

ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体及び有機エレクトロニクスデバイス Download PDF

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Abstract

【課題】合成が簡便でしかも電子の移動度(電界効果移動度)に優れるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を提供すること。
【解決手段】
下記一般式(1)で示されるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体:

(式中、R及びRは、所定の基を示す。)。
【選択図】なし

Description

本発明は、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体、並びにそれを用いた有機薄膜トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示デバイス、有機薄膜太陽電池、RFIDタグ及びセンサー等の有機エレクトロニクスデバイスに関する。
従来、有機薄膜トランジスタ(有機TFT)、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)又は有機薄膜太陽電池用の化合物としてベンゾビスチアゾール化合物が注目されており、ベンゾビス(チアジアゾール)を主骨格とする各種誘導体の研究開発が盛んに行われている。
特に、正孔及び電子の移動度を改良するために、強い電子吸引基を導入したベンゾビス(チアジアゾール)誘導体が提案されており、例えば、特許文献1並びに非特許文献1及び非特許文献2には、トリフルオロメチルフェニル基等がチエニレン基を介してベンゾビス(チアジアゾール)に結合している化合物が開示されている。この化合物は、強い電子吸引基であるトリフルオロメチルフェニル基等の導入によって、正孔及び電子移動度が向上している。
また、特許文献2にも、n型有機半導体の材料として各種のベンゾビスチアジアゾール化合物が開示されているが、当該文献の実施例で実際に合成されたのは、4,8−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾ[1,2−c;4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール(下記構造式参照)のみである。
また、ベンゾビス(チアジアゾール)を主骨格とするものではないが、チオフェン環に強い電子吸引基を導入することで、その化合物の電子の安定性や移動度の向上が図れることが一般的に知られている(例えば、特許文献3参照)。
WO2013/141182号パンフレット 特開2013−124231号公報 特開2009−280515号公報
Chem.Commun.,46,3265(2010) Applied Physics Lett.,97,133303(2010)
特許文献2では、n型有機半導体の材料として各種のベンゾビスチアジアゾール化合物が開示されているが、合成されている化合物は前述の通り、4,8−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾ[1,2−c;4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾールのみである。さらに、特許文献2には前記化合物のサイクリックボルタンメトリー(CV)測定結果は記載されているが、この化合物を用いて薄膜トランジスタ(TFT)等のデバイスを作製して特性を評価していない。このため特許文献2では、前記の実施例で実際に合成されている化合物についてすら、有機半導体材料として十分な特性を有しているかが確認されているとは言えない。
また、同じく特許文献2の一般記載には、ベンゾビスチアジアゾール化合物に、π過剰系ヘテロ芳香環であるチオフェンが結合した化合物が開示されているが、チオフェン上には電子吸引性の置換基が2つ結合していることが好ましいとされている。そして、そのようなチオフェン構造として、下記の例が示されている(下記(4−194)については、3つ電子求引性基が結合している)。
しかしながら、これらの構造ではチオフェン環上の置換基が結合可能な炭素の4か所の内、1か所がベンゾビスチアジアゾールとの結合、2か所(又は3か所)が電子吸引性基との結合に使用されており、芳香族環上の電子密度が著しく低下するため、このような化合物の合成は極めて困難であると予想される。そしてそのような化合物を含めて、上記で構造式を示した4,8−ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾ[1,2−c;4,5−c’]ビス[1,2,5]チアジアゾール以外に、一切の化合物が、そもそも特許文献2の実施例で合成されていないことは、上述のとおりである。
このような従来技術の状況のもと、本発明の課題は、合成が簡便でしかも電子の移動度(電界効果移動度)に優れるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を提供することにある。さらに本発明の課題は、当該ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を用いた、有機薄膜トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示デバイス、有機薄膜太陽電池、RFIDタグ及びセンサー等の有機エレクトロニクスデバイスを提供することにもある。
本発明は以下の事項に関する。
1. 下記一般式(1)で示されるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体:

(式中、二つのRは独立に、水素原子、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は下記式(2)の基のいずれかを示し、二つのRは独立に、水素原子、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は下記式(2)の基のいずれかを示し、但し、二つのR及び二つのRの一方は、下記式(2)の基のいずれかであり、他方は下記式(2)の基のいずれでもない。);

(式中、Rは、直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)。
2. 前記一般式(1)中、二つのRが独立に、前記式(2)の基のいずれかであり、 二つのRが独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である、上記1に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体。
3. 前記一般式(1)中、二つのRが独立に、前記式(2)の基のいずれかであり、 二つのRが、水素原子である、上記1又は2に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体。
4. 前記式(2)の基が、下記式(3)の基のいずれかである、上記1〜3のいずれかに記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体。
5. 前記一般式(1)中、二つのRが独立に、トリフルオロメチル基、シアノ基、又はアシル基(−C(=O)R)のいずれかであり、二つのRが、水素原子である、上記1〜4のいずれかに記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体。
6. 上記1〜5のいずれかに記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む有機層を備える、有機エレクトロニクスデバイス。
7. 基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、有機半導体層と、ソース電極及びドレイン電極とを有し、前記有機半導体層が、上記1〜5のいずれかに記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む、有機薄膜トランジスタ。
8. 前記基板が可撓性基板である、上記7に記載の有機薄膜トランジスタ。
9. 基板上に、陽極と、発光層と、正孔輸送層及び/又は電子輸送層と、陰極とを有し、前記正孔輸送層及び/又は前記電子輸送層が、上記1〜5のいずれかに記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
10. 有機薄膜トランジスタを用いて有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動・点灯を行う表示デバイスであって、前記有機薄膜トランジスタが、上記7又は8に記載の有機薄膜トランジスタである、表示デバイス。
11. 上記7又は8に記載の有機薄膜トランジスタと、有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える画素素子がマトリックス状に配置されている、アクティブマトリックス方式の表示デバイス。
12. 前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、上記9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子である、上記10又は11に記載の表示デバイス。
13. 有機薄膜トランジスタを用いて有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動・点灯を行う表示デバイスであって、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、上記9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子である、表示デバイス。
14. 基板上に、陽極と、正孔輸送材料及び電子輸送材料を含む電荷分離層と、陰極とを有し、前記電荷分離層が、上記1〜5のいずれかに記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む、有機薄膜太陽電池。
15. 基板上に、陽極と、正孔輸送材料及び電子輸送材料を含む電荷分離層と、正孔輸送層及び/又は電子輸送層と、陰極とを有し、前記正孔輸送層及び/又は前記電子輸送層が、上記1〜5のいずれかに記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む、有機薄膜太陽電池。
16. 前記基板が可撓性基板である、上記14又は15に記載の有機薄膜太陽電池。
17. 有機薄膜トランジスタを用いて作動するRFIDタグであって、前記有機薄膜トランジスタが、上記7又は8に記載の有機薄膜トランジスタである、RFIDタグ。
18. 有機薄膜トランジスタを用いて作動するセンサーであって、前記有機薄膜トランジスタが、上記7又は8に記載の有機薄膜トランジスタである、センサー。
本発明により、電子の移動度(電界効果移動度)に優れ、合成が簡便なベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を提供することができる。本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、電子の移動度(電界効果移動度)に優れることから、例えば、有機薄膜トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示デバイス、有機薄膜太陽電池、RFIDタグ、センサー等の有機エレクトロニクスデバイスに好適に使用することができる。また、その他多くのデバイスに好適に使用することができる。
本発明の有機薄膜トランジスタ(有機TFT)の一例の層構成を示す断面図である。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の一例の層構成を示す断面図である。 本発明の表示デバイスの一例の層構成を示す断面図である。 本発明の有機薄膜太陽電池の一例の層構成を示す断面図である。 実施例E−1cの有機TFTの伝達特性を示す図である。 実施例E−4aの有機TFTの伝達特性を示す図である。 比較例E−6aの有機TFTの伝達特性を示す図である。
以下、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体、及び有機エレクトロニクスデバイスについて、詳細に説明する。
<ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体>
本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、下記一般式(1)で示される。以下、下記一般式(1)における基R及びRについて説明する。
一般式(1)中、二つのRは独立に、水素原子、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は下記式(2)の基のいずれかを示す。また、二つのRは独立に、水素原子、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は下記式(2)の基のいずれかを示す。
上記基R及びRにおける直鎖状又は分岐状のアルキル基は、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の溶解度及び電界効果移動度の向上の観点から、その炭素数が1〜30であることが好ましく、炭素数が3〜25であることがより好ましく、炭素数が5〜20であることが特に好ましい。また、分岐状のアルキル基については、分岐鎖及び主鎖部分が結合して環状構造を形成していてもよい。すなわち前記分岐状のアルキル基には、シクロアルキル基が含まれる。
前記直鎖状のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、及びオクタデシル基等が挙げられ、さらに、下記に示す構造のものも挙げられる(なお、以上例示したものと重複しているものもある)。
以上示した構造において、アスタリスクは結合手である。以下においても同様である。
次に、分岐状アルキル基の具体例としては、例えば、イソプロピル基、1−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、t−ブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2−エチルオクチル基、3−メチルオクチル基、及び3−エチルオクチル基などが挙げられ、さらに、下記に示す構造のものも挙げられる(なお、以上例示したものと重複しているものもある)。
なお、以上説明した基R及びRの一方は、上記式(2)の基のいずれかであり、かつ、他方は前記式(2)の基のいずれでもない(すなわち水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である)。このように本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体では、中心のベンゾビス(チアジアゾール)核に結合した各チオフェン環に、一つの電子吸引性基(前式(2)の基)が結合しているため、電界効果移動度に優れるとともに、合成も簡便である。
前記の通り基R及びRの一方は、上記式(2)の基のいずれかであるが、式(2)の基において、Rは直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。
Rとしては、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の溶解度及び電界効果移動度の向上の観点から炭素数1〜30の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜15の直鎖状又は分岐状のアルキル基が特に好ましい。
このようなRの具体例としては、直鎖状のアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられ、
分岐状のアルキル基として、例えば、イソプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2−エチルオクチル基、3−メチルオクチル基、及び3−エチルオクチル基等が挙げられる。
以上説明した式(2)の基の中では、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体がn型トランジスタ特性を示す観点から、下記式(3)の基のいずれかが好ましい。

式中、Rは上記で定義した通りである。これらの中でも、同様な観点からトリフルオロメチル基、シアノ基、及びアシル基(−C(=O)R)がさらに好ましい。
(本発明の実施態様によるR及びRの好ましい組み合わせ)
以上説明した一般式(1)において、ある本発明の実施態様においては、二つのRが独立に、前記式(2)の基のいずれかであり、二つのRが独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが好ましい。また反対に、二つのRが独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、二つのRが独立に、前記式(2)の基のいずれかであることも好ましい。
また、別の本発明の実施態様においては、二つのRが独立に、前記式(2)の基のいずれかであり、Rが水素原子であることが好ましい。また反対に、Rが水素原子であり、二つのRが独立に、前記式(2)の基のいずれかであることも好ましい。
また、さらに別の本発明の実施態様においては、二つのRが独立に、トリフルオロメチル基、シアノ基又はアシル基のいずれかであり、Rが水素原子であることが好ましい。また反対に、Rが水素原子であり、二つのRが独立に、トリフルオロメチル基、シアノ基又はアシル基のいずれかであることも好ましい。
以上説明した2つのR、2つのR、はそれぞれいずれも、同一であっても異なっていてもよいが、通常、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の合成の容易性の点などから、同一であることが好ましい。
(ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体)
以上説明した本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体としては、例えば、以下の式(11)〜(84)で示される化合物が挙げられる。但し、式中、Rは上記式(2)において定義したとおりである。
(ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の合成方法)
本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、公知の反応を組み合わせて公知の出発原料から合成することができ、その合成方法は特に制限されるものではないが、例えば、以下に示す反応スキーム(スズ化工程A又はB、及びカップリング工程)に従って合成することができる。
(スズ化工程A又はB)
(カップリング工程)
以上の反応スキームにおいて、R、R及びRは上記で定義した通りであり、Buはブチル基を示し、X及びXは独立にハロゲン原子を示す(臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましい)。
(スズ化工程A)
スズ化工程Aは、式(2)の基であるR又はRがアシル基(−C(=O)R)以外である本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を合成する際に行う。スズ化工程Aでは、チオフェンのS原子に隣接する炭素原子及び当該炭素原子に隣接する炭素原子にそれぞれR及びRが結合したものを用意する。当該化合物は市販もされているし、チオフェンから合成することも可能である。
これに対して塩基(Base)の存在下、所定の有機スズ化試薬を反応させることで、チオフェンの、Rが結合していない、S原子に隣接する炭素原子の位置を有機スズ化する。前記塩基としてはn−BuLi(但し、Buはブチル基を示す。)、及びLDA(リチウムジイソプロピルアミド)が好ましい。以下のスズ化工程Bにおいても同様である。
(スズ化工程B)
スズ化工程Bは、式(2)の基であるR又はRがアシル基(−C(=O)R)である本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を合成する際に行う。スズ化工程Bでは、チオフェンのS原子に隣接する炭素原子がハロゲン化された化合物を用意する。当該化合物は市販されているし、チオフェンから容易に合成可能である。
これに対してフリーデルクラフツアルカノイル化を行ってチオフェン環に−C(=O)R基を導入し、続いて塩基及びパラジウム触媒(Pd cat)の存在下、所定の有機スズ化試薬を反応させることで、ハロゲン(X)が結合していた位置の炭素原子を有機スズ化する。
ここで使用されるパラジウム触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(PdCl(PPh)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(Pd(PtBu)、酢酸パラジウム(Pd(OAc))、塩化パラジウム(PdCl)等のパラジウム錯体の1種又は2種以上が好ましく、PdCl(PPh及びPd(PPhがより好ましい。
(カップリング工程)
カップリング工程では、まずベンゼン環位置に臭素原子を導入したベンゾビス(チアジアゾール)(式(94))を用意する。当該化合物は市販されており、また公知の原料及び反応により合成も可能である。
このベンゾビス(チアジアゾール)に、目的の本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体に応じて、スズ化工程A又はBで得た化合物を、パラジウム触媒の存在下に反応させることで、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を合成することができる。なお、上記スキームではスズ化工程Aで得た化合物を反応させる場合を示した。また、ここでのパラジウム触媒の使用量としては、ベンゼン環位置に臭素原子を導入したベンゾビス(チアジアゾール)1molに対して、0.01〜0.5mol用いることが好ましい。より好ましくは0.1〜0.5mol用いることである。
以上説明した本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の合成方法は、上記スズ化工程及びカップリング工程の2工程を含み、わずか2工程で目的化合物を合成することができる簡便な合成法であるが、必要に応じて、その他の工程を含んでもよい。
以上説明した反応スキームの反応終了後、得られた反応液から、例えば、濾過、濃縮、抽出、蒸留、昇華、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な操作によって、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を単離・精製することができる。溶解度の異なる不純物を除去し、化合物純度を向上させるためには、有機溶媒によるソックスレー抽出を精製工程に組み込むことが簡便で好ましい。
(ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の溶解性)
本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、通常、水や、種々の有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、イソブタノール、2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、n−オクタノール、ベンジルアルコール、及びテルピネオール等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、及びイソホロン等のケトン類:
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、サリチル酸メチル、マロン酸エチル、酢酸2−エトキシエタン、及び酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル等のエステル類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及びヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及び1,3−ジメチルイミダゾリジン−2,4−ジオン等の尿素類;
ジメチルスルホキシド、及びジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;
スルホラン等のスルホン類;
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、及びベンゾニトリル等のニトリル類;
γ―ブチロラクトン等のラクトン類;
ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、アニソール、フェネトール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、1,2−メチルアニソール、1,3−メチルアニソール、1,4−メチルアニソール、1,2−メチレンジオキシベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、フタラン、オクチルオキシベンゼン、ジフェニルエーテル、及びエチルセロソルブ等のエーテル類;
炭酸ジメチル、及び1,2−ブチレングリコールカーボネート等のカーボネート類;
チオアニソール、及びエチルフェニルスルフィド等のチオエーテル類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、プソイドクメン、ヘミメリテン、デュレン、イソデュレン、プレーニテン、エチルベンゼン、クメン、tert−ブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、フェニルアセチレン、インダン、メチルインダン、インデン、テトラリン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、フェニルオクタン、及びジフェニルメタン等の芳香族炭化水素類;
フェノール、1,2−クレゾール、1,3−クレゾール、1,4−クレゾール、1,2−メトキシフェノール、1,3−メトキシフェノール、及び1,4−メトキシフェノール等のフェノール類;
クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジクロロトルエン、1−クロロナフタレン、2,4−ジクロロトルエン、2−クロロ−1,3−ジメチルベンゼン、2-クロロトルエン、2−クロロ−1,4−ジメチルベンゼン、4−クロロ−1,2−ジメチルベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、m−クロロトルエン、1−クロロ−2,3−ジメチルベンゼン、4−(トリフルオロメトキシ)アニソール、及びトリフルオロメトキシベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;
ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、及びリモネン等の脂肪族炭化水素類;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジクロロプロパン、及び1,2−ジブロモエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;
2,6−ジメチルピリジン、及び2,6−ジtert-ブチルピリジン等のピリジン類
などに可溶である。
「水や有機溶媒に可溶」であるとは、常圧で、沸点以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは15℃から30℃以下の水又は有機溶媒に対し、好ましくは0.03wt%以上、より好ましくは0.1wt%以上の溶解度を有することを意味する。なお、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、水及び全ての有機溶媒に可溶であることが求められるわけではなく、水、又は例えば上記に挙げた有機溶媒の少なくとも一種に可溶である。また有機溶媒には、複数の有機溶媒の混合溶媒も含まれるものとし、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体はいずれかの有機溶媒単独には可溶でないが、混合溶媒には可溶である場合もあり得る。
有機溶媒としては、以下に説明する本発明の有機半導体インクの有機半導体薄膜の製膜性およびその半導体特性の観点から、上記に挙げた中でも、ハロゲン化芳香族炭化水素類、芳香族炭化水素類、及びハロゲン化脂肪族炭化水素類を好適に使用することができる。
好適なハロゲン化芳香族炭化水素類としては、クロロベンゼン、及び1,2−ジクロロベンゼンが挙げられる。
好適な芳香族炭化水素類としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、及び1−メチルナフタレンが挙げられる。
好適なハロゲン化脂肪族炭化水素類としては、クロロホルム、及び1,2−ジクロロエタンが挙げられる。
さらに、上記と同様な観点から好適なその他の有機溶媒としては、安息香酸メチル、サリチル酸メチル、アニソール、4−メチルアニソール、及びメタクレゾールが挙げられる。
(ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の半導体特性)
以上説明した本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、上記一般式(1)で示される、ベンゾビス(チアジアゾール)環を中心とし、これに芳香族性を有するチオフェン環が結合し、各チオフェン環に電子吸引性の式(2)で示される基のいずれかが結合しているため、電子の移動度に優れ、優れたn型有機半導体材料として利用することができる。
しかも、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、p型半導体特性よりもn型半導体特性を優勢に示すため、トランジスタ素子等における有機半導体材料として極めて有用である。
なお、本明細書において、「p型半導体特性よりもn型半導体特性を優勢に示す」とは、以下に挙げる条件を満たすときである。
n型の電界効果移動度が、p型の電界効果移動度に比べて10倍以上であること。
<有機半導体インク>
以上説明したとおり、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体はn型半導体特性を示し、しかも通常水や有機溶媒にも可溶であるので、水や有機溶媒に本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を溶解させ、得られた溶液を有機半導体インクとして利用することができる。なお、これらの水や有機溶媒は単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
有機半導体インクとできると、扱いが容易であり保存も可能である。さらに有機半導体層の形成方法としては一般に蒸着及び塗布が挙げられるが、蒸着には特殊な装置・環境が必要であり、塗布に比べてコストが非常に高い。すなわち本発明の有機半導体インクを利用すれば、有機半導体層の形成コストを大幅に下げることができる。
本発明の有機半導体インクは、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体1種以上を含むものであり、さらに他の有機半導体1種以上を含むこともできる。さらに本発明の有機半導体インクには、インクの粘度を調整するための添加剤、インクの親水性もしくは撥水性を制御するための添加剤、酸化防止剤、光安定剤、表面調整剤(レベリング剤)、界面活性剤、保存安定剤、滑剤、濡れ性改良材及びカップリング剤など、インクの物性を制御する添加剤を含むことができる。
前記インクの粘度を調整するための添加剤としては、絶縁性の高分子化合物が挙げられる。絶縁性高分子化合物とは、合成樹脂、プラスチック、及び合成ゴムなどであり、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂、ナイロン、ビニロン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリルゴム、アクリロニトリルゴム、及びウレタンゴムなどである。これらの添加により、有機半導体インクの粘度の最適化や製膜性の向上などが図られる。
本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の有機半導体インク中の含有量は特に限定されず、適宜選択することができ、例えば0.001wt%〜10wt%程度とすることができ、さらに0.01wt%〜1wt%程度が製膜性の観点から好適である。また、前記インクが他の有機半導体を含む場合には、これらと前記ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の含有量は、例えば0.001〜10wt%とすることができる。また、上記の各種添加剤の添加量は、従来公知の範囲から適宜選択することができる。
前記他の有機半導体としては、例えば、高分子半導体化合物が挙げられる。ここでの高分子半導体化合物とは、半導体特性を示すことを特徴とする高分子化合物であり、具体的には、ポリアセチレン系高分子、ポリジアセチレン系高分子、ポリパラフェニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリトリフェニルアミン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子、ポリエチレンジオキシチオフェン系高分子、ナフタレンジイミドを一成分とする共重合高分子、ペリレンジイミドを一成分とする共重合高分子、及びジケトピロロピロールを一成分とする共重合高分子などが挙げられる。
これらの高分子半導体化合物の中でも、ポリアニリン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子、ナフタレンジイミドを一成分とする共重合高分子、ペリレンジイミドを一成分とする共重合高分子、及びジケトピロロピロールを一成分とする共重合高分子などが好適である。
さらに他の有機半導体として、例えば、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体以外の低分子半導体化合物が挙げられる。ここでの低分子半導体化合物とは、半導体特性を示すことを特徴とする低分子化合物であり、具体的には、アセン、フェニレンビニレン、トリフェニルアミン、フルオレン、アザアセン、チエノアセン、チオフェン、ベンゾチオフェン、チエノチオフェン、チアゾール、チアゾロチアゾール、テトラチアフルバレン、フタロシアニン、ポルフィリン、ナフタレンジイミド、ペリレンジイミド、ベンゾチアジアゾール、ナフトビスチアジアゾール、ジケトピロロピロール、フラーレン及びこれらの誘導体などが挙げられる。
これらの低分子半導体化合物の中でも、アセン、チエノアセン、チオフェン、チエノチオフェン、テトラチアフルバレン、ナフタレンジイミド、ペリレンジイミド、ジケトピロロピロール、フラーレン及びこれらの誘導体などが好適である。
また、他の有機半導体として、例えば、Chem.Rev.,2012,Vol.112,pp.2208−2267に記載の有機半導体も挙げることができる。
さらに本発明の有機半導体インクは、必要に応じて、添加成分として、導電性の高分子化合物を含むことができる。ここでの導電性高分子化合物とは、電気伝導性を示すことを特徴とする高分子化合物であり、具体的には、ポリアセチレン系高分子、ポリジアセチレン系高分子、ポリパラフェニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリトリフェニルアミン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子、ポリエチレンジオキシチオフェン系高分子、及びポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の混合物(一般名、PEDOT−PSS)などが挙げられる。
これらの導電性高分子化合物の中でも、ポリアセチレン系高分子、ポリパラフェニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリトリフェニルアミン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、及びポリパラフェニレンビニレン系高分子などが好適である。これらの添加の効果としては、インクの粘度の最適化や製膜性の向上などに加えて電子移動度の向上が挙げられる。
また、本発明の有機半導体インクは、必要に応じて、下記の低分子化合物をインクの物性を制御する添加剤として含むことができる。具体的には、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、及びイコサン等の脂肪族炭化水素、
ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、及びエイコサノール等の脂肪族アルコール、
ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、及びエイコシルアミン等の脂肪族アミン、
ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘプタデカンチオール、オクタデカンチオール、ノナデカンチオール、エイコサンチオール、フェニルメタンチオール、(2−メチルフェニル)メタンチオール、(3−メチルフェニル)メタンチオール、(4−メチルフェニル)メタンチオール、(2−フルオロフェニル)メタンチオール、(3−フルオロフェニル)メタンチオール、(4−フルオロフェニル)メタンチオール、及び2−フェニルエタンチオール等の脂肪族チオール、並びに、
ベンゼンチオール、2−メチルベンゼンチオール、3−メチルベンゼンチオール、4−メチルベンゼンチオール、2−エチルベンゼンチオール、3−エチルベンゼンチオール、4−エチルベンゼンチオール、2−アミノベンゼンチオール、3−アミノベンゼンチオール、4−アミノベンゼンチオール、2−イソプロピルベンゼンチオール、3−イソプロピルベンゼンチオール、4−イソプロピルベンゼンチオール、2−(ジメチルアミノ)ベンゼンチオール、3−(ジメチルアミノ)ベンゼンチオール、及び4−(ジメチルアミノ)ベンゼンチオール等の芳香族チオールが挙げられる。
これらの添加の効果としては、有機半導体インクの粘度の最適化や製膜性の向上などに加えて電荷移動度の向上が挙げられる。これらの低分子化合物の中でも、インクの濡れ性の向上により移動度の向上を図る目的で、脂肪族チオール、及び芳香族チオールが好適である。
以上説明した本発明の有機半導体インクを塗布することで、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体の層、又は薄膜を形成することができる。なお、本発明の有機半導体インクの塗布は、公知の方法、例えば、スピンコート法、ドロップキャスト法、キャスト法、及びラングミュア−ブロジェット法などで行うことができる。また塗布法として、一般に印刷の技法として知られる公知の方法を用いることも可能で、例えば、インクジェット法、スクリーン法、オフセット法、グラビア法、フレキソ法、及びマイクロコンタクト法などで印刷を行うことができる。
なお、本発明の有機半導体インクを基材上に塗布した後に、溶媒成分が除去されると、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む層、又は含む薄膜(以下、有機半導体層とも称する)が形成されるが、溶媒成分除去条件は適宜選択することができる。
例えば溶媒成分を室温下で自然乾燥若しくは風乾することが好ましいが、溶媒の沸点が高く除去しにくい場合は、室温付近で減圧下で溶媒除去するか、50℃〜200℃程度に加熱して溶媒除去するか、若しくは両者を併用し減圧下で加熱処理することができる。
さらに本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む層、又は含む薄膜の半導体特性を向上させる目的で、前記層又は薄膜を加熱処理することができる。この場合の加熱処理条件は適宜選択することができ、例えば、50℃〜250℃程度で、0.1時間〜24時間、加熱処理する方法が挙げられる。この工程は溶媒除去工程を兼ねてもよい。
また、前記層又は薄膜の半導体特性を向上させる目的で、当該層又は薄膜を溶媒蒸気に曝露する処理を施してもよい。
本工程に用いられる溶媒としては、水や、種々の有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、イソブタノール、2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、n−オクタノール、ベンジルアルコール、及びテルピネオール等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、及びイソホロン等のケトン類:
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、サリチル酸メチル、マロン酸エチル、酢酸2−エトキシエタン、及び酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル等のエステル類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及びヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及び1,3−ジメチルイミダゾリジン−2,4−ジオン等の尿素類;
ジメチルスルホキシド、及びジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;
スルホラン等のスルホン類;
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、及びベンゾニトリル等のニトリル類;
γ―ブチロラクトン等のラクトン類;
ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、アニソール、フェネトール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、1,2−メチルアニソール、1,3−メチルアニソール、1,4−メチルアニソール、1,2−メチレンジオキシベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、フタラン、オクチルオキシベンゼン、ジフェニルエーテル、及びエチルセロソルブ等のエーテル類;
炭酸ジメチル、及び1,2−ブチレングリコールカーボネート等のカーボネート類;
チオアニソール、及びエチルフェニルスルフィド等のチオエーテル類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、プソイドクメン、ヘミメリテン、デュレン、イソデュレン、プレーニテン、エチルベンゼン、クメン、tert−ブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、フェニルアセチレン、インダン、メチルインダン、インデン、テトラリン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、フェニルオクタン、及びジフェニルメタン等の芳香族炭化水素類;
フェノール、1,2−クレゾール、1,3−クレゾール、1,4−クレゾール、1,2−メトキシフェノール、1,3−メトキシフェノール、及び1,4−メトキシフェノール等のフェノール類;
クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジクロロトルエン、1−クロロナフタレン、2,4−ジクロロトルエン、2−クロロ−1,3−ジメチルベンゼン、2-クロロトルエン、2−クロロ−1,4−ジメチルベンゼン、4−クロロ−1,2−ジメチルベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、m−クロロトルエン、1−クロロ−2,3−ジメチルベンゼン、4−(トリフルオロメトキシ)アニソール、及びトリフルオロメトキシベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;
ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、及びリモネン等の脂肪族炭化水素類;
ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジクロロプロパン、及び1,2−ジブロモエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;
2,6−ジメチルピリジン、及び2,6−ジtert-ブチルピリジン等のピリジン類
などが挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン化芳香族炭化水素類、芳香族炭化水素類、及びハロゲン化脂肪族炭化水素類を好適に使用することができる。
好適なハロゲン化芳香族炭化水素類としては、クロロベンゼン、及び1,2−ジクロロベンゼンが挙げられる。
好適な芳香族炭化水素類としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、及び1−メチルナフタレンが挙げられる。
好適なハロゲン化脂肪族炭化水素類としては、クロロホルム、及び1,2−ジクロロエタンが挙げられる。
その他の好適な溶媒としては、安息香酸メチル、サリチル酸メチル、アニソール、4−メチルアニソール、及びメタクレゾールが挙げられる。
なお、これらの溶媒は、単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。
溶媒蒸気曝露処理工程は、例えば、ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む層、又は含む薄膜と溶媒とを、直接前記層又は薄膜と溶媒(液体状態のもの)とが触れないようにしつつ、密閉性のある空間に静置することで達成される。溶媒蒸気の量を増やすために、溶媒を40℃〜150℃程度に加温してもよい。この溶媒蒸気曝露処理工程の後には、
当該工程で上記層又は薄膜に付着した溶媒を除去するために、上記と同様の乾燥や加熱処理を適宜選択して実施することができる。
<有機エレクトロニクスデバイス>
本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、電子の移動度(電界効果移動度)に優れ、例えば、有機薄膜トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示デバイス、有機薄膜太陽電池、RFIDタグ及びセンサー等の有機エレクトロニクスデバイスに好適に使用することができる。これらの各種デバイスのいずれも、その構成部材として有機半導体を含む有機層を備えており、この有機層が、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含んでいる。
また、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、バックライト、光通信、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読取光源、標識、看板、インテリア、さらに、物流管理、在庫管理、商品管理、個体識別や、温度測定、圧力測定、荷重測定、明暗測定、及び生体情報測定等の広範に亘る各分野の用途に供することができる。以下では、前記の有機エレクトロニクスデバイスについて個別に説明する。
(有機薄膜トランジスタ)
まず、本発明の有機薄膜トランジスタ(以下、有機TFTとも称する)について説明する。本発明の有機薄膜トランジスタは、その構成部材である有機半導体層が本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むものである。当該誘導体は分子の配向方向を揃えやすく、高電界効果移動度を達成できるので、有機TFTの有機半導体層に用いると効果的である。
本発明の有機薄膜トランジスタは、有機半導体層が本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むこと以外、公知の構造、材料を採用することができる。
有機半導体層の膜厚は、必要な機能を失わない範囲で、薄いことが好ましい。必要な機能を示すための有機半導体層の膜厚は、通常、1nm〜10μm、好ましくは5nm〜5μm、より好ましくは10nm〜1μmである。
図1に、本発明の有機TFTの一例の層構成を示す。図1に示す有機TFTは、ボトムゲート−トップコンタクト構造のものであり、基板11上に、ゲート電極12と、ゲート絶縁層13と、有機半導体層16と、ドレイン電極14及びソース電極15とをこの順に積層してなるものである。
基板11としては、例えば、ガラス、石英、シリコン又はセラミック等の材料や、プラスチック材料を用いることができる。前述の通り本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は通常水や有機溶媒に可溶であり、これに溶かして有機半導体インクとして、これを塗布することで有機半導体層を形成することができる。塗布においては、蒸着などと異なり、基板11が高温環境におかれることもない。これにより、その他の電極等も高温でない環境下で形成するものとすれば、基板11として耐熱性の低い材料も使用可能となる。
そのため、耐熱性の低いものを含めて各種プラスチック材料が基板11として利用可能になるのであるが、プラスチック材料として、可撓性を有する材料を使用することができ、この場合には基板11を可撓性(フレキシブル)基板とすることができる。これにより有機TFTを平面上だけでなく曲面等の上にも配置することが可能になり、有機TFTを備える有機エレクトロニクスデバイス全体の設計自由度が高まる。
次に、ゲート電極12としては、例えば、金、白金、クロム、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、アルミニウム、銀、マグネシウム、及びカルシウム等の金属、あるいはそれらの合金、並びにポリシリコン、アモルファスシリコン、グラファイト、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、及び導電性ポリマー等の材料を用いることができる。これらの材料を使用して、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、RFスパッタ法又は印刷法等の周知の膜作製方法によりゲート電極12を形成することができる。
上記ゲート絶縁層13としては、例えば、SiO、Si、SiON、Al、Ta、アモルファスシリコン、ポリイミド樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリフッ化炭素樹脂、及びジビニルテトラメチルシロキサンベンゾシクロブテン樹脂等の材料を用いることができる。これらの材料を使用して、ゲート絶縁層13は、ゲート電極12と同様の周知の膜作製方法により、ゲート電極12上に(ゲート電極12を被覆するようにして)形成することができる。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層16は、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体1種以上を含み、例えば、真空蒸着法やスピンコート等の周知の膜作製方法により形成することができる。好ましくは有機半導体層16は、本発明の有機半導体インクを使用して、塗布(印刷)法により前記ゲート絶縁層13上に形成する。
そしてドレイン電極14及びソース電極15は、例えば、金、白金、クロム、タングステン、タンタル、ニッケル、銅、アルミニウム、銀、マグネシウム、及びカルシウム等の金属あるいはそれらの合金、並びにポリシリコン、アモルファスシリコン、グラファイト、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、及び導電性ポリマー等の材料を用いて、ゲート電極12と同様の周知の膜作製方法により形成することができる。
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
次に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称する)について説明する。本発明の有機EL素子は、その構成部材である正孔輸送層及び/又は電子輸送層が本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むものである。本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、電子輸送性に優れているので、有機EL素子の、特に電子輸送層に用いると効果的である。
本発明の有機EL素子は、正孔輸送層及び/又は電子輸送層が本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むこと以外、公知の構造、材料を採用することができる。
有機EL素子は、基板上で、陽極と陰極の間に、発光層、並びに正孔輸送層及び/又は電子輸送層を含む有機化合物層を形成した素子である。典型的には、(基板/陽極/正孔輸送層/発光層/陰極)、(基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極)、(基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極)等の素子構造で構成される。
図2に、本発明の有機EL素子の一例の層構成を示す。図2に示す有機EL素子は、基板21上に、陽極22、正孔輸送層23、発光層24、電子輸送層25及び陰極26をこの順に積層してなるものである。
上記のように構成された有機EL素子に対して、陽極22と陰極26との間に所定の直流電圧を印加すると、発光層24から高輝度の発光が得られる。この発光のメカニズムは以下のように考えられている。
すなわち、上記2つの層間に所定の直流電圧が印加されると、陽極22から正孔輸送層23に流入された正孔が発光層24まで輸送される。一方、陰極26から電子輸送層25に注入された電子は発光層24まで輸送され、この発光層24中を拡散移動して正孔と再結合し、電気的に中和状態となる。この再結合が行なわれると所定のエネルギーが放出され、そのエネルギーにより発光層24内の有機発光材料が励起状態に励起される。その状態から基底状態に戻る際に光が放出される。
特に有機EL素子の電子輸送層25に高電界効果移動度の本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を用いることによって、電子を発光層中に効率よく注入することができ、発光効率を高めることができる。
上記基板21としては、例えば、ガラス、及びプラスチック等の透明材料を用いることができる。ここで、正孔輸送層23や電子輸送層25を、本発明の有機半導体インクを使用して塗布法により形成することができ、基板21として可撓性基板を使用可能であることは、上述の有機TFTの場合と同様である。
上記陽極22としては、通常、光を透過させる材料を用いる。具体的には、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウム、及び酸化亜鉛合金を用いることが好ましい。また、金、白金、銀、及びマグネシウム合金等の金属の薄膜を用いることもできる。さらに、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、及びそれらの誘導体等の有機材料も使用可能である。陽極22は、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、RFスパッタ法又は塗布(印刷)法等の周知の膜形成方法により形成することができる。
上記陰極26としては、電子注入性の観点から、仕事関数の小さい、Li、K、及びNa等のアルカリ金属やMg、及びCa等のアルカリ土類金属を用いることが好ましい。また、安定なAl等を用いることも好ましい。安定性と電子注入性を両立させるために2種以上の材料を含む層にしてもよく、それらの材料については、例えば特開平2−15595号公報、及び特開平5−121172号公報等に詳しく記載されている。陰極26は、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、又はRFスパッタ法等の周知の膜形成方法により形成することができる。
上記発光層24としては、キノリノール錯体や芳香族アミン等のホスト材料に、クマリン誘導体やDCM、キナクリドン、又はルブレン等の色素材料を添加(ドーピング)したものを用いることが好ましいが、ホスト材料のみで発光層24を形成することもできる。また、イリジウム金属錯体をドーピングして発光層24を形成することで、効率の良い有機EL素子を作製することができる。発光層24は、真空蒸着法、スパッタ法又は塗布(印刷)法等の周知の膜形成方法により形成することができる。
正孔輸送層23及び/又は電子輸送層25は、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むものであり、当該誘導体を含む場合には、正孔輸送層23及び電子輸送層25は、本発明の有機半導体インクを用いて塗布法により好適に形成することができる。
正孔輸送層23に本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を用いない場合、正孔輸送層23としては、例えば、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン(TPD)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−2,2’−ジメチルベンジジン(α−NPD)、及び2,2−ビス(3−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)フェニル)ビフェニル(3DTAPBP)等の材料を用いることができる。
電子輸送層25に本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を用いない場合、電子輸送層25としては、例えば、2−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサゾール(PBD)、1,3−ビス[2−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン(OXD−7)、及び2,2’,2’’−(1,3,5−ベンジントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール(TPBi)等の材料を用いることができる。
正孔輸送層23及び電子輸送層25の膜形成方法としては、上記発光層24の膜形成方法と同様の方法が用いられる。また、これらの厚みは従来公知の範囲から適宜選択されるが、通常1nm〜1μm、好ましくは1nm〜100nmである。
なお、本発明の有機EL素子は、上記各層の他、電子注入層、正孔注入層、電子ブロック層、正孔ブロック層、又は保護層等を設けるように構成することが可能である。これらの層も、上記発光層24の膜形成方法と同様の方法により形成することができる。
<表示デバイス>
次に、本発明の表示デバイスについて説明する。本発明の表示デバイスは、有機EL素子及びそれに電気的に接続した有機TFTを備え、有機TFTにより有機EL素子の駆動(スイッチングトランジスタ)及び点灯(ドライビングトランジスタ)を制御するものであり、有機TFTが上記のような本発明の有機TFTであるか、有機EL素子が上記のような本発明の有機EL素子である、表示デバイスである。本発明の表示デバイスにおいては、高電界効果移動度の観点から、有機TFTが本発明の有機TFTであり、且つ、有機EL素子が本発明の有機EL素子であることが好ましい。
図3に、本発明の表示デバイスの構成の一例を示す。図3に示す表示デバイスは、基板111上に、バリア層112を介して、陰極101、電子輸送層102、発光層103、正孔輸送層104及び陽極105から構成される有機EL素子120と、ゲート電極106、ゲート絶縁層107、有機半導体層108、ソース電極109及びドレイン電極110から構成される有機TFT121とを有する。そして、これらの層構造の上方部分が保護膜113により被覆されている。
この表示デバイスは、有機EL素子120の陰極101(基板111に近い側の電極)と、有機TFT121のドレイン電極110が電気的に接続された構造となっている。ゲート電極106に電圧を印加することによりソース・ドレイン電極間に電流が流れ、有機EL素子120が発光する。また、陽極と有機TFTのドレイン電極が電気的に接続された構造とすることもできる。
本発明においては、前述の通り、有機TFT、及び有機TFTにより駆動・点灯される有機EL素子の両方とも、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を用いた本発明の有機TFT及び本発明の有機EL素子であることが好ましいが、いずれか一方が本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含まない、公知の材料及び構成のものであってもよい。
さらに、図3に示すような、駆動・点灯の制御用の有機TFTと有機EL素子とを組み合わせた画素素子をマトリックス状に配置することでアクティブマトリックス方式の表示デバイスを作製することができる。アクティブマトリクス方式の表示デバイスは、画素数が多くなっても、非選択点に不要な電圧が印加されるおそれが小さく、また、高デューティ時においても電界効率低下や劣化を生じるおそれが小さく、応答性に優れているという利点を有している。
なお、本発明の表示デバイス(ディスプレイ)は、本発明の有機TFT及び/又は本発明の有機EL素子を用いていること以外は、公知の構造、材料を採用することができ、公知の方法により製造することができる。
<有機薄膜太陽電池>
次に、本発明の有機薄膜太陽電池(以下、有機PV素子と称する)について説明する。本発明の有機PV素子は、基板上に、陽極と、正孔輸送材料及び電子輸送材料を含む電荷分離層と、陰極とを有し、前記電荷分離層が、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含むものである。
さらに本発明の有機PV素子として、基板上に、陽極と、前記電荷分離層と、正孔輸送層及び/又は電子輸送層と、陽極とを有し、前記正孔輸送層及び/又は電子輸送層が本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む構成のものも挙げられる。
本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、電子輸送性に優れているので、有機PV素子の、特に電荷分離層や電子輸送層に用いると効果的である。
本発明の有機PV素子は、上記の構成以外、公知の構造、材料を採用することができる。
有機PV素子は、基板上で、陽極と陰極の間に、電荷分離層を含む少なくとも1層の有機化合物層を形成した素子である。典型的には、(基板/陽極/電荷分離層/陰極)、(基板/陽極/電荷分離層/電子輸送層/陰極)、(基板/陽極/正孔輸送層/電荷分離層/電子輸送層/陰極)等の素子構造で構成される。
図4に、本発明の有機PV素子の一例の層構成を示す。図4に示す有機PV素子は、基板31上に、陽極32、電荷分離層33及び陰極34をこの順に積層してなるものである。
上記のように構成された有機PV素子に光が照射されると、電荷分離層33において正孔と電子が発生し、陽極32と陰極34を接続すると電流を取り出すことができる。この発電のメカニズムは以下のように考えられている。
すなわち、上記電荷分離層33に光が照射されると、光が吸収され、そのエネルギーにより有機分子が励起されて電荷分離を生じ、正孔と電子が発生する。正孔は電荷分離層33中の正孔輸送材料により陽極32まで輸送され、電子は電荷分離層33中の電子輸送材料により陰極34まで輸送され、外部回路へ取り出される。
有機PV素子の電荷分離層33に高電界効果移動度の本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を用いることによって、正孔及び電子を電荷分離層33中から効率的に取り出すことができ、発電効率を高めることができる。また、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を電子輸送層に用いることによって、電子を陰極に効率的に輸送することができ、発電効率を高めることができる。
上記基板31としては、例えば、ガラス、プラスチック等の透明材料を用いることができる。ここで、電荷分離層33、正孔輸送層や電子輸送層を、本発明の有機半導体インクを使用して塗布法により形成することができ、基板31として可撓性基板を使用可能であることは、上述の有機TFTの場合と同様である。
上記陽極32としては、通常、光を透過させる材料を用いる。具体的には、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウム、又は酸化亜鉛合金であることが好ましい。金、白金、銀、及びマグネシウム合金等の金属の薄膜を用いることもできる。さらに、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、及びそれらの誘導体等の有機材料も使用可能である。陽極32は、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、RFスパッタ法又は塗布(印刷)法等の周知の膜形成方法により形成することができる。
上記陰極34としては、電子取出性の観点から、仕事関数の小さい、Li、K、及びNa等のアルカリ金属やMg、及びCa等のアルカリ土類金属を用いることが好ましい。また、安定なAl等を用いることも好ましい。安定性と電子取出性を両立させるために2種以上の材料を含む層にしてもよい。陰極34は、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、又はRFスパッタ法等の周知の膜形成方法により形成することができる。
上記電荷分離層33には、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を有機半導体材料として用いる。使用するベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は1種類としてもよいし、複数種類としてもよい。さらに、電荷分離層33は、他の有機半導体化合物1種以上を含むこともできる。
ベンゾビス(チアジアゾール)誘導体とともに電荷分離層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送材料として、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(P3HT)、及びポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)等が挙げられ、
電子輸送材料として、フラーレンC60、(6,6)−フェニル−C61ブチル酸メチルエステル(C61−PCBM)、フラーレンC70、及び(6,6)−フェニル−C71ブチル酸メチルエステル(C71−PCBM)等が挙げられる。
電荷分離層33は、真空蒸着法、スパッタ法又は塗布(印刷)法等の周知の膜形成方法により形成することができ、本発明の有機半導体インクを用いて塗布(印刷)法により電荷分離層33を形成することが好ましい。また、電荷分離層33の厚みは従来公知の範囲から適宜選択されるが、通常5nm〜1μm、好ましくは10nm〜500nmである。
本発明の有機PV素子には、さらに、正孔輸送層及び/又は電子輸送層を設けることができる。これらの層にも本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を好適に用いることができる。使用するベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は1種類としてもよいし、複数種類としてもよい。さらに、正孔輸送層及び電子輸送層は、他の化合物1種以上を含むこともできる。
正孔輸送層又は電子輸送層に本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を用いない場合、正孔輸送層としては、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT−PSS)等の材料を用いることができ、電子輸送層としては、例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等の材料を用いることができる。
正孔輸送層及び電子輸送層の膜形成方法としては、上記電荷分離層33の膜形成方法と同様の方法が用いられる。また、これらの厚みは従来公知の範囲から適宜選択されるが、通常1nm〜1μm、好ましくは1nm〜100nmである。
<RFIDタグ>
次に、本発明のRFIDタグ(Radio Frequency IDentification tag)について説明する。本発明のRFIDタグは、有機TFTを用いて作動するものであり、有機TFTが上記のような本発明の有機TFTであるものである。
RFIDタグは集積回路部(以下、IC部と称する)とアンテナ部とを有し、IC部に記憶されているID、すなわち個体識別情報等について、アンテナ部を介して、無線でリーダライタ機器と通信することができ、リーダライタ機器によってIC部に記憶されている情報を非接触で読み取ったり、逆にIC部に書き込んだりすることが可能な電子デバイスである。
RFIDタグを物品に貼り付ける、もしくは物品に印刷することで、物品の情報管理、流通管理、及び固体認証などが可能であり、様々な分野へ応用されている。本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、高電界効果移動度を達成できるので、RFIDタグのIC部を構成する有機TFTの有機半導体層に用いると、RFIDタグの応答性を高めることができる。
本発明のRFIDタグは、例えばSolid−State Electronics 84(2013)167-178に記載の、公知の回路を組合せて作成することができる。
なお、本発明のRFIDタグは、本発明の有機TFTを用いていること以外は、公知の構造、材料を採用することができ、公知の方法により製造することができる。
RFIDタグのIC部は、複数の有機TFTを備えるものであってもよい。その場合、複数の有機TFTのうち、すべての有機TFTが本発明の有機TFTであってもよく、また一部の有機TFTが本発明の有機TFTであってもよい。
(センサー)
次に、本発明のセンサーについて説明する。本発明のセンサーは、有機TFTを用いて作動するものであり、有機TFTが上記のような本発明の有機TFTであるものである。
センサーは、有機TFTに与えられる外部の刺激により、有機TFTを構成する有機半導体の物理状態が変化し、その結果、有機TFTから得られる電流及び/又は電圧が変化する系に適用することができる。
本発明のセンサーとして、例えば、有機TFTを構成する有機半導体が熱や光を受けて、その有機半導体の物理状態が変化することで温度や光を検知する温度センサーや光センサーが挙げられる。
また、有機TFTを構成する有機半導体が応力を受けて、その有機半導体の物理状態が変化することで応力や圧力を検知する曲げ応力センサー、及び圧力センサーが挙げられる。
また、有機TFTを構成する有機半導体が特定の化学物質、例えば水分子や酸素分子などの影響を受けて、その有機半導体の物理状態が変化することで、その化学物質を検知する化学センサーが挙げられる。
さらに、有機TFTを構成する金属電極が特定の化学物質により影響を受けて、有機TFTから得られる電流及び/又は電圧に変化が生じることで、その化学物質を検知する化学センサーも挙げられる。
本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、高電界効果移動度を達成できるので、センサーを構成する有機TFTの有機半導体層に用いると、センサーの応答性やダイナミックレンジを高めることができる。
なお、本発明のセンサーは、本発明の有機TFTを用いていること以外は、公知の構造、材料を採用することができ、公知の方法により製造することができる。
センサーは、用途に応じて、単一の有機TFTを備えるものであってもよく、複数の有機TFTを備えるものであってもよい。複数の有機TFTを備える場合、有機TFTのうち、すべての有機TFTが本発明の有機TFTであってもよく、また一部の有機TFTが本発明の有機TFTであってもよい。
以上説明した各種本発明の有機エレクトロニクスデバイスにおいては、基板として、プラスチック基板を使用することができる。基板として用いるプラスチックは、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性及び低吸湿性に優れていることが好ましい。このようなプラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、及びポリイミド等が挙げられる。
プラスチック基板の場合、基板の電極側の面、電極と反対側の面、又はその両方に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることが好ましい。透湿防止層を構成する材料としては窒化ケイ素や酸化ケイ素等の無機物が好ましく挙げられる。透湿防止層はRFスパッタ法等の周知の膜作製方法により形成することができる。また、必要に応じてハードコート層やアンダーコー卜層を設けてもよい。
さらに、本発明の有機エレクトロニクスデバイスにおける基板に対しては、基板表面の表面エネルギーの調整や、基板に積層する材料との親和性を制御する目的で、ヘキサメチルジシラザンで処理したり、ポリスチレン等の樹脂をコーティングしたり、UVオゾン処理を施すなど、基板の表面修飾処理を施すことができる。
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
[有機TFTの作製・評価]
以下の実施例では、特に各項に記載のない限り、下記の有機TFTの作製手順に従い、シリコン基板上にボトムゲート−トップコンタクト素子を作製し、評価を行った。
<有機TFTの作製手順>
スピンコート法による有機半導体層の作製を経る場合、
(TFT基板の作製)−(スピンコート法による有機半導体層の作製)−(ソース電極及びドレイン電極の作製)
又は、
(TFT基板の作製)−(TFT基板の表面修飾)−(スピンコート法による有機半導体層の作製)−(ソース電極及びドレイン電極の作製)
の手順で有機TFTを作製した。
真空蒸着法による有機半導体層の作製を経る場合、
(TFT基板の作製)−(真空蒸着法による有機半導体層の作製)−(ソース電極及びドレイン電極の作製)
又は、
(TFT基板の作製)−(TFT基板の表面修飾)−(真空蒸着法による有機半導体層の作製)−(ソース電極及びドレイン電極の作製)
の手順で有機TFTを作製した。
(TFT基板の作製)
有機TFTの基板として、表面に膜厚200nmの熱酸化シリコンを形成した市販のシリコンウェハを用いた。シリコンウェハは低抵抗のものとし、有機TFTのゲート電極としても機能させた。また、酸化シリコン膜をゲート絶縁膜として用いた。このシリコンウェハは、過酸化水素水と硫酸の混合液で洗浄し、次工程で使用する直前にUVオゾン処理により表面を清浄して用いた。このように処理した基板を、以降「ベア基板」と表記する。
(TFT基板の表面修飾)
「ベア基板」を市販のヘキサメチルジシラザンに浸漬して12時間以上静置し、基板表面を修飾した。このように処理した基板を、以降「HMDS修飾基板」と表記する。
「ベア基板」に、市販の、ポリスチレンを0.5wt%でキシレンに溶解した溶液をスピンコートし、次いで150℃で1時間加熱して、基板表面におよそ20nmのポリスチレン薄膜を作製した。このように処理した基板を以降「PS基板」と表記する。
「ベア基板」に、市販のポリビニルフェノールとメラミンから調製したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをこれらの溶媒とする、ポリビニルフェノールとメラミンの混合溶液をスピンコートし、次いで180℃で1時間加熱して、基板表面におよそ20nmのポリビニルフェノール−メラミン薄膜を作製した。このように処理した基板を、以降「PVP基板」と表記する。
(スピンコート法による有機半導体層の作製)
合成した化合物(有機半導体化合物)を用いて、各項に記載の溶媒、溶質濃度の溶液(有機半導体インク)を作成し、その有機半導体インクを用いてスピンコート法により各項に記載の基板上に、膜厚約20〜50nmの有機半導体層を形成した。その後必要に応じて、各項に記載の条件で、熱アニールを施した。スピンコートと熱アニールは、特に各項に記載がない限り、窒素雰囲気下で実施した。
(真空蒸着法による有機半導体層の作製)
合成した化合物(有機半導体化合物)を用いて、各項に記載の基板上に、真空蒸着法により膜厚約50nmの有機半導体層を形成した。有機半導体層形成時の蒸着装置チャンバ内は圧力2×10−5〜6×10−4Paとし、有機半導体化合物を坩堝に入れ、坩堝周囲に巻いたフィラメントにより加熱し、蒸着を行った。蒸着速度は0.2±0.1Å毎秒とした。
(ソース電極及びドレイン電極の作製)
上記有機半導体層上に、金属マスクを用いて金を真空蒸着法で製膜することにより、ソース電極とドレイン電極を形成した。有機TFTのチャネル幅及びチャネル長はそれぞれ1000μm及び70μmとした。また、ソース及びドレイン電極の膜厚は約50nmとした。
(電界効果移動度の評価)
電界効果移動度(μ)は、KEITHLEY社の半導体特性評価システム4200−SCS型を用いて、作製した有機TFTの伝達特性を測定した結果から求めた。
電界効果移動度(μ)は、ドレイン電流Iを表わす下式(式A)を用いて算出することができる。
=(W/2L)μC(V−V … (式A)
ここで、L及びWはチャネル長及びチャネル幅である。また、Cはゲート絶縁膜の単位面積当たりの電気容量である。Vはゲート電圧であり、Vはしきい値電圧である。上記伝達特性測定から、あるゲート電圧時におけるしきい値電圧とドレイン電流の値が示されるので、電界効果移動度を求めることができる。
[実施例S−1]
<化合物(15)の合成>
以下の合成スキームに従い、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体である化合物(15)を合成した。以下、各工程について説明する。
(化合物(15b)の合成)
撹拌装置、及び温度計を備えた100mlの4口フラスコに,アルゴン雰囲気下、化合物(15a)を2g(13.2mmol)、及び無水テトラヒドロフラン40mlを加えた溶液を−55℃以下に冷却し、−55℃以下を保ちながら、そこに1.6規定のノルマルブチルリチウムヘキサン溶液9.0mlをゆっくりと滴下した。
1時間攪拌後に、トリブチルスズクロリド4.28ml(15.8mmol)を反応液に滴下し、室温まで昇温して1時間攪拌した。メタノールで反応を停止させ、逆相シリカゲルカラムで精製し、黄色液体として化合物(15b)を4.9g得た。
当該化合物(15b)の物性値は以下の通りであった。なお、以下、特に断りがない場合、測定は室温(25℃)で行った。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm)); 0.88−0.92(m、9H)、1.05−1.26(m、6H)、1.31−1.39(m、6H)、1.45−1.67(m、6H)、7.06−7.12(m、1H)、7.52−7.53(m、1H)
CI−MS;443(M+1)
(化合物(15)の合成)
還流管を備えた100mlのナス型フラスコに化合物(94)を0.98g(2.79mmol)、トルエン30ml、化合物(15b)を4.9g(11.2mmol)、及びビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド0.59g(0.84mmol)を加えて、100℃で4時間撹拌しながら反応させた。反応液を冷却、ろ過、トルエン洗浄して得たものを精製し、赤紫色固体として化合物(15)を0.19g得た。
当該化合物(15)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;1,2−ジクロロベンゼン−d:140℃;δ(ppm));7.62−7.63(m,2H),8.98−8.99(m、2H)
EI−MS;494(M+1)
[実施例S−2]
<化合物(22)の合成>
(化合物(22b)の合成)
撹拌装置、及び温度計を備えた500mlの4口フラスコにアルゴン雰囲気下、化合物(22a)を5g(45.8mmol)、及び無水テトラヒドロフラン400mlを加えた溶液を−70℃以下に冷却し、−70℃以下を保ちながら、そこに2.0規定のリチウムジイソプロピルアミン溶液31.0ml(50.4mmol)を滴下した。
15分攪拌後に、トリブチルスズクロリド17.1g(50.4mmol)を滴下し、室温まで昇温した。順相シリカゲルカラムで精製し、黄色液体として化合物(22b)を4.99g得た。
当該化合物(22b)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm)); 0.80−1.00(m、9H)、1.04−1.26(m、6H)、1.26−1.42(m、6H)、1.42−1.70(m、6H)、7.08−7.20(m、1H)、7.66−7.76(m、1H)
EI―MS;399(M)
(化合物(22)の合成)
上記[実施例S−1]<化合物(15)の合成>において、化合物(15b)の代わりに化合物(22b)を用いた以外は、同様にして化合物(22)を得た。
当該化合物(22)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;重水素化ジクロロベンゼン;140℃);7.50−7.60(m、2H)、8.84−8.96(m、2H)
TOF−MS(ASAP+);408.9459(M+1);Calc.408.9459
[実施例S−3]
<化合物(23−1)の合成>
(化合物(23−1b)の合成)
撹拌装置、及び温度計を備えた1000mlの4口フラスコにアルゴン雰囲気下、化合物(23−1a)を25.8g(158.4mmol)、無水塩化メチレン500ml、及びアセチルクロライド11mlを加えた後に、水浴バスで冷却した。
反応系内温度を保持して塩化アルミニウム42.2gをゆっくりと加え、終夜室温撹拌した。反応溶液を6規定の塩酸水溶液に加えて、分液、洗浄、濃縮し粗体を31g得た。粗体にメタノールを加えてろ過し、得られたろ液を濃縮乾固し、白色結晶として化合物(23−1b)を15g得た。
当該化合物(23−1b)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm)); 2.51(s、3H)、7.11−7.43(m、2H)
CI−MS;204(M+1)
(化合物(23−1c)の合成)
撹拌装置、及び温度計を備えた1000mlの4口フラスコにアルゴン雰囲気下、化合物(23−1b)を15g(75.2mmol)、トルエン500ml、ビストリブチルスズ162g(279.3mmol)、トリエチルアミン15.2g(150.2mmol)、及びパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン13.35g(11.6mmol)を加えて110℃で加熱撹拌しながら反応させた。
反応終了後、トルエンを減圧濃縮し、ヘキサンを加えてワコーゲル(登録商標)50NH2で精製し、淡黄オイルとして化合物(23−1c)を4.56g得た。
当該化合物(23−1c)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm)); 1.67−0.88(m、27H)、2.57(s、3H)、7.18−7.78(m、2H)
CI−MS;415(M)
(化合物(23−1)の合成)
上記[実施例S−1]<化合物(15)の合成>において、化合物(15b)の代わりに化合物(23−1c)を用いた以外は、同様にして化合物(23−1)を得た。
当該化合物(23−1)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;1,2−ジクロロベンゼン−d;140℃;δ(ppm));2.51(s,6H),7.70−7.71(m,2H),8.94−8.96(m、2H)
EI−MS;442(M)
[実施例S−4]
<化合物(23−2)の合成>
(化合物(23−2b)の合成)
上記[実施例S−3]<化合物(23−1b)の合成>において、アセチルクロリドの代わりにオクタノイルクロリドを用いた以外は、同様にして化合物(23−2b)を得た。
当該化合物(23−2b)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm)); 0.86−0.90(m、3H),1.22−1.44(m,8H)、1.68−1.75(m、2H),2.79−2.83(m、2H),7.08−7.09(m、1H),7.43−7.44(m、1H)
EI−MS;290(M+2)、288(M)
(化合物(23−2c)の合成)
上記(化合物(23−1c)の合成)において、化合物(23−1b)の代わりに化合物(23−2b)を用いた以外は、同様にして化合物(23−2c)を得た。
化合物(23−2c)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm));0.86−0.93(m、12H)、1.05−1.25(m、6H)、1.27−1.39(m、14H)、1.48−1.78(m、8H)、2.86−2.90(m、2H)7.14−7.20(m、1H)、7.76−7.78(m、1H)
EI−MS;443(M−56)
(化合物(23−2)の合成)
[実施例S−1]<化合物(15)の合成>において、化合物(15b)の代わりに化合物(23−2c)を用いた以外は、同様にして化合物(23−2)を得た。
当該化合物(23−2)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;1,2−ジクロロベンゼン−d;140℃;δ(ppm));0.84−0.87(m、6H)、1.28−1.46(m、16H)、1.79−1.86(m、4H)、2.92−2.96(m、4H)、7.77−7.78(m、2H)、8.96−8.97(m、2H)
TOF−HRMS(ASAP+);611.1638(M+1);Calcd.611.1643
[比較例S−5]
<化合物(91)の合成>
(化合物(91)の合成)
[実施例S−1]<化合物(15)の合成>において、化合物(15b)の代わりに化合物(91a)を用いた以外は、同様にして化合物(91)を得た。
当該化合物(91)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl;δ(ppm));7.34−7.36(m、2H)、7.71−7.72(m、2H)、9.03−9.04(m、2H)
EI−MS;358(M)
[比較例S−6]
<化合物(92)の合成>
(化合物(92b)の合成)
上記[実施例S−1](化合物(15b)の合成)において、化合物(15a)の代わりに化合物(92a)を用いた以外は、同様にして化合物(92b)を得た。
当該化合物(92b)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl;δ(ppm));0.86−0.91(m、12H)、1.05−1.09(m、6H)、1.27−1.72(m、24H)、2.83−2.87(m、2H)、6.89−6.90(m、1H)、6.97−6.98(m、1H)
CI−MS;486(M−1)
(化合物(92)の合成)
上記[実施例S−1]<化合物(15)の合成>において、化合物(15b)の代わりに化合物(92b)を用いた以外は、同様にして化合物(92)を得た。
当該化合物(92)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl;δ(ppm)); 0.87−0.90(m、6H)、1.25−1.47(m、20H)、1.77−1.84(m、4H)、2.92−2.96(m、4H)、6.94−6.96(m、2H)、8.69−8.71(m、2H)
EI−MS;582(M
[比較例S−7]
<化合物(93)の合成>
(化合物(93b)の合成)
上記[実施例S−3](化合物(23−1c)の合成)において、化合物(23−1b)の代わりに化合物(93a)を用いた以外は、同様にして化合物(93b)を得た。
当該化合物(93b)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;CDCl;δ(ppm)); 0.82−0.98(m、9H)、0.98−1.22(m、6H)、1.24−1.40(m、6H)、1.40−1.66(m、6H)、7.48−7.57(m、1H)、7.60−7.67(m、1H)
CI−MS;400(M+1)
(化合物(93)の合成)
上記[実施例S−1]<化合物(15)の合成>において、化合物(15b)の代わりに化合物(93b)を用いた以外は、同様にして化合物(93)を得た。
当該化合物(93)の物性値は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz;1,2−ジクロロベンゼン−d;140℃;δ(ppm));9.08−9.14(m、1H)、9.14−9.20(m、1H)
TOF−MS(ASAP+);408.9453(M+1);Calc.408.9459
<実施例E−1a>
実施例S−1で得られた化合物(15)を用いて、「ベア基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFTを作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
上記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「ベア基板」上の化合物(15)の有機TFTでは、8.7×10−3cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<実施例E−1b>
実施例S−1で得られた化合物(15)を用いて、「HMDS基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFTを作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
上記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「HMDS基板」上の化合物(15)の有機TFTでは、5.1×10−2cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<実施例E−1c>
実施例S−1で得られた化合物(15)を用いて、「PS基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFTを作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。得られた伝達特性を図5に示す。図5の横軸はゲート電圧(V)、縦軸はドレイン電流(A)である。また、黒色塗りのまるがつけられた曲線がforeであり、白抜きのまるがつけられた曲線がbackである。
上記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「PS基板」上の化合物(15)の有機TFTでは、9.2×10−2cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<実施例E−2a>
実施例S−2で得られた化合物(22)を用いて、「HMDS基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFTを作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
上記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「HMDS基板」上の化合物(22)の有機TFTでは、6.0×10−3cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<実施例E−2b>
実施例S−1で得られた化合物(22)を用いて、「PS基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFTを作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
上記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「PS基板」上の化合物22)の有機TFTでは、3.1×10−3cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<実施例E−3a>
実施例S−3で得られた化合物(23−1)を用いて、「ベア基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFT素子を作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
上記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「ベア基板」上の化合物(23−1)の有機TFTでは、6×10−4cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<実施例E−3b>
実施例S−3で得られた化合物(23−1)を用いて、「HMDS基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFTを作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
上記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「HMDS基板」上の化合物(23−1)の有機TFTでは、8×10−4cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<実施例E−3c>
実施例S−3で得られた化合物(23−1)を用いて、「PS基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFT素子を作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
上記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「PS基板」上の化合物(23−1)の有機TFTでは、1.0×10−3cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<実施例E−4a>
実施例S−4で得られた化合物(23−2)を用いて、「ベア基板」上にスピンコート法により塗布して有機半導体層を形成し、さらにソース電極及びドレイン電極を上述の通り形成して有機TFTを作製し、評価を行った。なお、有機半導体層の作製条件は以下の通りである。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(23−2)をクロロホルムに濃度0.1wt%となるように加え、80℃で加熱し作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「ベア基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「ベア基板」を240℃で35分間加熱した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。得られた伝達特性を図6に示す。図6の横軸はゲート電圧(V)、縦軸はドレイン電流(A)である。また、黒色塗りのまるがつけられた曲線がforeであり、白抜きのまるがつけられた曲線がbackである。
上記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「ベア基板」上の化合物(23−2)の有機TFTでは、5.0×10−3cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<実施例E−4b>
実施例S−4で得られた化合物(23−2)を用いて、「PVP基板」上にスピンコート法により塗布して有機半導体層を形成し、さらにソース電極及びドレイン電極を上述の通り形成して有機TFT素子を作製し、評価を行った。なお、有機半導体層の作製条件は以下の通りである。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(23−2)をクロロホルムに濃度0.1wt%となるように加え、80℃で加熱し作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「PVP基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。その後、有機半導体層を形成した「PVP基板」を120℃で35分間加熱した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはn型の半導体特性を示した。
上記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「PVP基板」上の化合物(23−2)の有機TFTでは、1.4×10−2cm/Vsの電界効果移動度が得られることが分かった。
<比較例E−5a>
比較例S−5で得られた化合物(91)を用いて、「ベア基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFTを作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはトランジスタの伝達特性を示さなかった。
<比較例E−5b>
比較例S−5で得られた化合物(91)を用いて、「HMDS基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFTを作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはトランジスタの伝達特性を示さなかった。
<比較例E−5c>
比較例S−5で得られた化合物(91)を用いて、「PS基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFTを作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはトランジスタの伝達特性を示さなかった。
<比較例E−6a>
比較例S−6で得られた化合物(92)を用いて、「ベア基板」上にスピンコート法により塗布して有機半導体層を形成し、さらにソース電極及びドレイン電極を上述の通り形成して有機TFTを作製し、評価を行った。なお、有機半導体層の作製条件は以下の通りである。
(有機半導体層の作製条件)
化合物(92)をトルエンに濃度0.3wt%となるように加え、室温で作成した溶液(有機半導体インク)の0.18mLを「ベア基板」上に滴下し、1000rpmで30秒間スピンコートを行い、膜厚約20nmの有機半導体層を形成した。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはp型及びn型の半導体特性(バイポーラ型の半導体特性)を示した。得られた伝達特性を図7に示す。図7の横軸はゲート電圧(V)、縦軸はドレイン電流(A)である。また、黒色塗りのまるがつけられた曲線がforeであり、白抜きのまるがつけられた曲線がbackである。
上記(式A)を用いて電界効果移動度(μ)を計算した結果、「ベア基板」上の化合物(92)の有機TFTでは、n型の半導体特性として、2.4×10−1cm/Vsの電界効果移動度が、p型の半導体特性として、2.4×10−2cm/Vsの電界効果移動度が、それぞれ得られることが分かった。
<比較例E−7a>
比較例S−7で得られた化合物(93)を用いて、「ベア基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFTを作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはトランジスタの伝達特性を示さなかった。
<比較例E−7b>
比較例S−7で得られた化合物(93)を用いて、「HMDS基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFTを作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはトランジスタの伝達特性を示さなかった。
<比較例E−7c>
比較例S−7で得られた化合物(93)を用いて、「PS基板」上に真空蒸着法により有機半導体層を形成し、さらにこの上に上述の方法でソース電極及びドレイン電極を形成して、有機TFTを作製し、評価を行った。
(有機TFTの評価)
作製した有機TFTについて、ドレイン電圧が100Vの条件で伝達特性を測定したところ、この有機TFTはトランジスタの伝達特性を示さなかった。
以上の結果から、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、高い電界効果移動度を示すことが分かった。
本発明により、合成が簡便で電子の移動度(電界効果移動度)に優れ塗布による薄膜形成が可能であるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を提供することができる。
また、本発明のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体は、高い電界効果移動度を有しているので、この化合物を有機TFTの半導体層に用いることで高い電界効果移動度特性が実現できる。また、この化合物を有機EL素子の、特に電子輸送層に用いることで高い発光効率が実現できる。さらに、この化合物を有機薄膜太陽電池の電荷分離層や電子輸送層に用いることで、高い光電変換効率が実現できる。
また、本発明の有機TFTと、本発明の有機EL素子又はそれと他の有機EL素子とを組み合わせてなる画素素子を配列した表示デバイスは発光効率に優れ、かつ応答性にも優れるという利点を有している。また、本発明の有機TFTは、RFIDタグやセンサーを作動させる有機TFTとして好適に用いることができる。
11,21,31,111 基板
12,106 ゲート電極
13,107 ゲート絶縁層
14,110 ドレイン電極
15,109 ソース電極
16,108 有機半導体層
22,105 陽極
23,104 正孔輸送層
24,103 発光層
25,102 電子輸送層
26,101 陰極
112 バリア層
113 保護層
120 有機EL素子
121 有機TFT
32 陽極
33 電荷分離層
34 陰極

Claims (18)

  1. 下記一般式(1)で示されるベンゾビス(チアジアゾール)誘導体:

    (式中、二つのRは独立に、水素原子、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は下記式(2)の基のいずれかを示し、
    二つのRは独立に、水素原子、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は下記式(2)の基のいずれかを示し、
    但し、二つのR及び二つのRの一方は、下記式(2)の基のいずれかであり、他方は下記式(2)の基のいずれでもない。);

    (式中、Rは、直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)。
  2. 前記一般式(1)中、二つのRが独立に、前記式(2)の基のいずれかであり、
    二つのRが独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である、請求項1に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体。
  3. 前記一般式(1)中、二つのRが独立に、前記式(2)の基のいずれかであり、
    二つのRが、水素原子である、請求項1又は2に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体。
  4. 前記式(2)の基が、下記式(3)の基のいずれかである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体。
  5. 前記一般式(1)中、二つのRが独立に、トリフルオロメチル基、シアノ基、又はアシル基(−C(=O)R)のいずれかであり、
    二つのRが、水素原子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む有機層を備える、有機エレクトロニクスデバイス。
  7. 基板上に、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、有機半導体層と、ソース電極及びドレイン電極とを有し、
    前記有機半導体層が、請求項1〜5のいずれか1項に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む、有機薄膜トランジスタ。
  8. 前記基板が可撓性基板である、請求項7に記載の有機薄膜トランジスタ。
  9. 基板上に、陽極と、発光層と、正孔輸送層及び/又は電子輸送層と、陰極とを有し、
    前記正孔輸送層及び/又は前記電子輸送層が、請求項1〜5のいずれか1項に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 有機薄膜トランジスタを用いて有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動・点灯を行う表示デバイスであって、
    前記有機薄膜トランジスタが、請求項7又は8に記載の有機薄膜トランジスタである、表示デバイス。
  11. 請求項7又は8に記載の有機薄膜トランジスタと、有機エレクトロルミネッセンス素子とを備える画素素子がマトリックス状に配置されている、アクティブマトリックス方式の表示デバイス。
  12. 前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子である、請求項10又は11に記載の表示デバイス。
  13. 有機薄膜トランジスタを用いて有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動・点灯を行う表示デバイスであって、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子である、表示デバイス。
  14. 基板上に、陽極と、正孔輸送材料及び電子輸送材料を含む電荷分離層と、陰極とを有し、
    前記電荷分離層が、請求項1〜5のいずれか1項に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む、有機薄膜太陽電池。
  15. 基板上に、陽極と、正孔輸送材料及び電子輸送材料を含む電荷分離層と、正孔輸送層及び/又は電子輸送層と、陰極とを有し、
    前記正孔輸送層及び/又は前記電子輸送層が、請求項1〜5のいずれか1項に記載のベンゾビス(チアジアゾール)誘導体を含む、有機薄膜太陽電池。
  16. 前記基板が可撓性基板である、請求項14又は15に記載の有機薄膜太陽電池。
  17. 有機薄膜トランジスタを用いて作動するRFIDタグであって、
    前記有機薄膜トランジスタが、請求項7又は8に記載の有機薄膜トランジスタである、RFIDタグ。
  18. 有機薄膜トランジスタを用いて作動するセンサーであって、
    前記有機薄膜トランジスタが、請求項7又は8に記載の有機薄膜トランジスタである、センサー。
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