JP2016041656A - 多孔質炭素 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メソ孔4と、ミクロ孔と、上記メソ孔4の外郭を構成する炭素質壁3とを備えた多孔質炭素であって、上記炭素質壁3には層状構造を成す部分が存在し、上記炭素質壁は3次元網目構造を成し、上記ミクロ孔の容量が0.12ml/g以上であることを特徴とするものである。望ましくは比表面積が200m2/g以上である。さらに望ましくは上記メソ孔は開気孔であって、気孔部分が連続するような構成となっている。
【選択図】図1
Description
炭素質壁における層状構造を成す部分は、結晶質が発達してきているといえる。この層状構造は、通常、炭素材をある温度以上で加熱処理することにより生成される。しかしながら、炭素材は加熱処理中に収縮を起こすため、炭素材における孔が潰れて、比表面積が小さくなってしまい、結晶質でありながら比表面積の高い多孔質炭素を得ることは困難であった。本発明の多孔質炭素は、メソ孔とこのメソ孔の外郭を構成する炭素質壁を有しているため、加熱処理中の収縮に耐え、この炭素質壁において層状構造を形成することができると考えられる。つまり、本発明の多孔質炭素にはメソ孔が存在しているので、比表面積が小さくなるのを抑制できる。このように、比表面積がある程度大きな状態で結晶質部分が発達しているので、本発明の多孔質炭素は多様な分野(例えば、ガス吸着材料、非水電解質電池の負極材料、キャパシタの電極材料等)で用いることができる。
ここで、本明細書においては、細孔径が2nm未満のものをミクロ孔、細孔径が2〜50nmのものをメソ孔と称することとする。
比表面積が200m2/g未満であると、三次元網目構造を形成し難いという問題があり、気孔の形成量が不十分で、ガス吸着能が低下することがある。一方、比表面積は1500m2/g以下であることが望ましい。比表面積が1500m2/gを超えると、炭素質壁の形状が保てなくなることがあり、メソ孔を十分形成できない可能性がある。
上記構成であれば、本発明の多孔質炭素をガス吸着剤として用いた場合に、ガスの流れが円滑になるので、よりガスを補足し易くなる。また、非水電解質電池の負極材料や、キャパシタの電極材料として用いる場合には、リチウムイオン等が円滑に移動する。
メソ孔の容量が0.2ml/g未満であると、比表面積を確保することが困難であり、また、相対圧力が高い場合のガス吸着能が低下する可能性があるからである。
嵩密度が0.1g/cc未満であると、比表面積を確保することが困難であり、炭素質壁の形状が保てなくなることがある一方、嵩密度が1.0g/cc以下を超えると、三次元網目構造を形成し難いという問題があり、メソ孔の形成が不十分で、ガス吸着能が低下することがある。
隣接する層の層間距離は0.33nm程度であり、多数の層が形成されると、層状構造を成す部分の厚みは大きくなる一方、少数の層しか形成されないと、層状構造を成す部分の厚みは小さくなる。ここで、多孔質炭素を作成する場合に、鋳型粒子の量を減少させると、炭素質壁の厚みが大きくなって、多数の層が形成されるので、層状構造を成す部分の厚みは大きくなる一方、鋳型粒子の量を増加させると、炭素質壁の厚みが小さくなって、少数の層しか形成されないので、層状構造を成す部分の厚みは小さくなる。層状構造の厚みが1nm未満である場合には、結晶質部分の発達が不十分である可能性がある。一方、100nmを超える場合には加熱処理の時間を延ばす、加熱温度を上げる等の処理を行う必要があるため、製造することが困難であり、本発明の多孔質炭素の他の特性の低下につながる可能性がある。
前記メソ孔を有する炭素質焼成体を、有機質樹脂を含む流動性材料と、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩よりなる群から選択されるアルカリ土類金属化合物の少なくとも1種から成る鋳型粒子と、を混合して混合物を作製するステップと、上記混合物を非酸化性雰囲気で加熱焼成して焼成物を作製するステップと、上記焼成物中の上記鋳型粒子を除去するステップとで製造することが望ましい。
また、当該方法で作製した場合、非晶質の炭素が結晶化する温度以上で熱処理しているので、本発明の多孔質炭素が高温雰囲気で用いられる場合(例えば、高温雰囲気でガス吸着部材として用いられる場合)に、当該温度が非晶質の炭素が結晶化する温度未満の温度であれば、多孔質炭素が変質するのを防止できる。この結晶化する温度以上とは、800℃以上が好ましく、より好ましくは約2000℃以上である。特に2000℃以上で多孔質炭素を用いる場面は少ないと考えられ、したがって、様々な用途に本発明の多孔質炭素を用いることができる。
上記の如く鋳型粒子の径が略同径となっていれば、鋳型粒子はマトリックス中(焼成物中)に均一に分散されるので、鋳型粒子間の間隔のバラツキが小さくなる。したがって、炭素質壁の厚みが均一に近い三次元網目構造となる。但し、流動性材料の炭素収率が余り小さかったり大きかったりすると(具体的には、流動性材料の炭素収率が40%未満であったり、85%を超えていると)三次元網目構造が保持されない炭素粉末となるが、上記の如く、炭素収率を40%以上85%以下に限定すれば、鋳型粒子を除去した後には、鋳型粒子が存在した場所が連続孔となる三次元網目構造を有する多孔質炭素を得ることができる。また、鋳型粒子の径が略同径となっていれば、同一サイズの連続孔が形成されるので、スポンジ状且つ略籠伏の多孔質炭素を作製することができる。
但し、流動性材料としては、200℃以下の温度で流動性を生じるものに限定するものではなく、200℃以下の温度で流動性が生じなくても、水或いは有機溶媒に可溶な高分子材料であれば本発明に使用できる。
除去後の鋳型粒子の残留率が0.5%を超えると、メソ孔内に残る鋳型粒子が多くなって、細孔としての役割を発揮できない部位が広く生じるからである。
本発明の多孔質炭素は、有機質樹脂を、酸化物(鋳型粒子)と溶液または粉末状態において湿式もしくは乾式混合し、混合物を非酸化雰囲気或いは減圧雰囲気で、たとえば500℃以上の温度で炭化した後、洗浄処理することで酸化物を取り除いて非晶質の多孔質炭素(炭素質焼成体)を作製し、しかる後、この非晶質の多孔質炭素を、非酸化雰囲気或いは減圧雰囲気で、非晶質の多孔質炭素が結晶化する温度以上(例えば、2000℃)で熱処理することにより得られる。
前記非晶質多孔質炭素は、大きさが略同等である多数のメソ孔を有しており、このメソ孔間に形成された炭素質壁におけるメソ孔に臨む位置には、ミクロ孔が形成されるような構造となっていることが好ましい。この非晶質の多孔質炭素の熱処理においては、多数のメソ孔が存在した状態は維持されており、しかも、炭素部分(炭素質壁)の少なくとも一部は層状構造を形成する。したがって、この熱処理により、結晶性の発達した多孔質炭素が得られることになる。
ここで、上記単位構造中に少なくとも一つ以上の窒素もしくはフッ素原子を含むポリイミドは、酸成分とジアミン成分との重縮合により得ることができる。但し、この場合、酸成分及びジアミン成分のいずれか一方又は両方に、一つ以上の窒素原子もしくはフッ素原子を含む必要がある。
具体的には、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を成膜し、溶媒を加熱除去することによりポリアミド酸膜を得る。次に、得られたポリアミド酸膜を200℃以上で熱イミド化することによりポリイミドを製造することができる。
また、ポリイミド前駆体の溶媒として用いる有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
更に、ポリイミド以外の樹脂としては、石油系タールピッチ、アクリル樹脂等40%以上の炭素収率を持つものが使用できる。
また、酸化物を取り除く洗浄液としては、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酢酸、ギ酸など一般的な無機酸を使用し、2mol/l以下の希酸として用いるのが好ましい。また、80℃以上の熱水を使用することも可能である。
先ず、図1(a)に示すように、炭素前駆体としてのポリアミック酸樹脂(イミド系樹脂)1と、鋳型粒子としての酸化マグネシウム(MgO、平均結晶子径は100nm)2とを、90:10の重量比で混合した。次に、図1(b)に示すように、この混合物を窒素雰囲気中1000℃で1時間熱処理して、ポリアミック酸樹脂を熱分解させることにより炭素質壁3を備えた焼成物を得た。次いで、図1(c)に示すように、得られた焼成物を1mol/lの割合で添加された硫酸溶液で洗浄して、MgOを完全に溶出させることにより多数のメソ孔4を有する非晶質の多孔質炭素5を得た。最後に、この非晶質の多孔質炭素を、窒素雰囲気中2500℃で1時間熱処理して、多孔質炭素を得た。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、本発明炭素A1と称する。
非晶質の多孔質炭素を熱処理する際の温度を2000℃とした他は、上記実施例1と同様にして多孔質炭素を作製した。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、本発明炭素A2と称する。
本発明炭素A2のSTEM写真を図3に示す。図3から明らかなように、本発明炭素A2の炭素部分の少なくとも一部は層状を成しており、これによって、炭素部分の少なくとも一部の結晶性が発達していることがわかる。また、本発明炭素A2は3次元網目構造(スポンジ状のカーボン形状)を成し、更に、上記メソ孔は開気孔であって、気孔部分が連続するような構成となっていることが認められた。
非晶質の多孔質炭素を熱処理する際の温度を1400℃とした他は、上記実施例1と同様にして多孔質炭素を作製した。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、本発明炭素A3と称する。
非晶質の多孔質炭素を熱処理する際の温度を900℃とした他は、上記実施例1と同様にして多孔質炭素を作製した。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、本発明炭素A4と称する。
本発明炭素A4のSTEM(走査透過電子顕微鏡)写真を図4に示す。図4から明らかなように、本発明炭素A4の炭素部分の少なくとも一部は層状を成しており、これによって、炭素部分の少なくとも一部の結晶性が発達していることがわかる。また、本発明炭素A4は3次元網目構造(スポンジ状のカーボン形状)を成し、更に、上記メソ孔は開気孔であって、気孔部分が連続するような構成となっていることが認められた。
熱処理前の炭素材料として、非晶質の多孔質炭素に代えて活性炭(和光純薬工業株式会社製試薬)を用い、且つ、その活性炭を2000℃で熱処理した他は、上記実施例1と同様にして多孔質炭素を作製した。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、比較炭素Z1と称する。
熱処理前の炭素材料として、非晶質の多孔質炭素に代えて活性炭(和光純薬工業株式会社製試薬)を用い、且つ、その活性炭を1400℃で熱処理した他は、上記実施例1と同様にして多孔質炭素を作製した。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、比較炭素Z2と称する。
熱処理前の炭素材料として、非晶質の多孔質炭素に代えて活性炭(和光純薬工業株式会社製試薬)を用い、且つ、その活性炭を熱処理しなかった他は、上記実施例1と同様にして多孔質炭素を作製した。
このようにして作製した多孔質炭素を、以下、比較炭素Z3と称する。
上記本発明炭素A1〜A4における相対圧力とN2吸着量との関係(吸着等温線)を調べたので、その結果を図5に示す
本実験は、比表面積測定装置(Bellsorp 18、(株)日本ベル)を用い、窒素吸着法により測定した。試料は、約0.1gをセルに採取して装置の試料前処理部で、300℃で約5時間脱ガス処理をした後に測定した。
上記本発明炭素A1〜A4について、BET比表面積と、メソ孔容量と、ミクロ孔容量とを求めたので、その結果を表1に示す。尚、BET比表面積は、吸着等温線の結果からBET法を用いて算出した。また、メソ孔容量はBJH(Berret−Joyner−Halenda)法で調べた。更に、ミクロ孔容量はHK(Horbath-Kawazoe)法で調べた。
さらに、比較炭素Z1、Z2と、比較炭素Z3を比べてみると、熱処理により、ミクロ孔が著しく減少していることがわかる。これに対して、本発明炭素A2、A3、A4を比べてみれば、メソ孔を有していることにより、熱処理温度が上昇しても、ミクロ孔の減少が抑制されていることがわかる。ただし、熱処理温度を2500℃まで上げた本発明炭素A1ではミクロ孔の減少が認められる。
以上の理由により、実験1のような結果となったものと考えられる。
以上のことから、本発明炭素A1、A2では、少なくとも一部の炭素を結晶化したにも関わらず、メソ孔を有していることにより多孔質状態が維持されるので、ガス吸着能等の炭素が有する利点をより十分に発揮することができると考えられる。
本発明炭素A1、A2、A4の嵩密度について調べたので、その結果を表2に示す。
本発明炭素A1、A2、A4の気孔サイズ分布(メソ孔のサイズ分布)をBJH法で調べたので、その結果を図6〜図8(図6は本発明炭素A1、図7は本発明炭素A2、図8は本発明炭素A4)に示す。
図6〜図8から明らかなように、本発明炭素A1、A2、A4におけるメソ孔のサイズのピークは3〜5nmであることから、熱処理温度の違いによって、メソ孔のサイズのピークは変化しないことがわかる。
上記本発明炭素A1〜A4及び比較炭素Z1〜Z3における比抵抗を調べたので、その結果を表3に示す。実験は、各炭素とバインダーとしてのポリテトラフルオロエチレン(デュポン社製テフロン(登録商標)6J)とを重量比で80:20の割合で物理的に混合したものに、溶剤としてのアセトンを添加し、シート状へと加工した。溶媒を乾燥させるため120℃で5時間乾燥させることにより100mm×100mm×1mmのシートを作製した。そして、このシートの比抵抗を、四端子法を用いて測定した。
尚、比抵抗は小さいほど好ましいが、3.1×101Ω・cm以下となっている必要はなく、1.0×102Ω・cm以下であれば多様な分野で使用することができる。
本発明炭素A1と本発明炭素A4とのX線回折(線源はCuKα)を行ったので、その結果を図9に示す。
図9から明らかなように、本発明炭素A1では、ブラッグ角度(2θ±0.2°)=26.45°において、黒鉛のピーク(002面)が顕著にみられるのに対して、本発明炭素A4では、ブラッグ角度=26.45°において、黒鉛のピーク(002面)がみられないことが認められる。したがって、本発明炭素A1では炭素が黒鉛化しているが、本発明炭素A4では炭素が黒鉛化していないことがわかる。
尚、X線回折結果のピークの半値幅からシェラーの式を用いて微結晶サイズを求めたところ、微結晶径は約30nmであった。
2:酸化マグネシウム
3:炭素質壁
4:メソ孔
5:多孔質炭素
Claims (7)
- メソ孔と、ミクロ孔と、上記メソ孔の外郭を構成する炭素質壁とを備えた多孔質炭素であって、
上記炭素質壁には層状構造を成す部分が存在し、
上記炭素質壁は3次元網目構造を成し、
上記ミクロ孔の容量が0.12ml/g以上であることを特徴とする多孔質炭素。 - 比表面積が200m2/g以上である、請求項1に記載の多孔質炭素。
- 上記メソ孔は開気孔であって、気孔部分が連続するような構成となっている、請求項1又は2に記載の多孔質炭素。
- 上記メソ孔の容量は0.2ml/g以上である、請求項1〜3の何れか1項に記載の多孔質炭素。
- 嵩密度は0.1g/cc以上1.0g/cc以下である、請求項1〜4の何れか1項に記載の多孔質炭素。
- 嵩密度は0.14g/cc以上である、請求項5に記載の多孔質炭素。
- 上記層状構造を成す部分の厚みは1nm以上100nm以下である、請求項1〜6の何れか1項に記載の多孔質炭素。
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