JP2015171302A - 電動機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電動機の動作領域に関わらず、制御の安定性や応答性の向上を図る。【解決手段】三相交流誘導モータ1の制御装置10は、回転子磁束がγ軸方向を向くように、すべり角周波数ωseを演算し、その補正値をすべり角周波数制御部19に出力する補正値演算部20を有している。補正値演算部20は、δ軸成分の回転子磁束φδrに基づいて回転子抵抗値を推定し、当該推定結果に基づいて補正値を出力する第1推定部と、固定子温度Tsに基づいて回転子抵抗値Rr^を推定し、当該推定結果に基づいて補正値を出力する第2推定部と、モータトルクの状態を判定する制御フラグ設定部と、モータトルクの状態が非低トルク状態である場合には第1推定部による補正値をすべり角周波数制御部19に出力し、モータトルクの状態が低トルク状態である場合には第2推定部による補正値をすべり角周波数制御部19に出力する補正値出力部と、を有している。【選択図】図1

Description

本発明は、ベクトル制御を用いた電動機の制御装置に関する。
従来より、ベクトル制御を用いた電動機の制御装置が知られている。ベクトル制御は、電動機の固定子に流す三相交流電流を電源角周波数に同期して回転する直交二軸座標系(磁束軸(γ軸)及びトルク軸(δ軸))に変換して調整することで電動機トルクを制御する方法である。このベクトル制御では、すべり角周波数を、比率(δ軸電流/γ軸成分の回転子磁束)に比例して制御することで、回転子磁束がγ軸方向と一致することとなる。すなわち、δ軸成分の回転子磁束がゼロの状態となり、ベクトル制御が成立する。
ところで、この類の電動機においては、温度によって回転子抵抗値が変化するため、ベクトル制御が成立するすべり角周波数も変化する。しかしながら、制御上、この回転子抵抗値の変化を認識できていない場合には、すべり角周波数がベクトル制御を成立させるための適切な値から乖離してしまうという問題がある。この場合、ベクトル制御が破綻し、制御性能が低下するおそれがある。
例えば非特許文献1には、ベクトル制御を成立させるため、回転子抵抗値を補正する手法が開示されている。この手法によれば、γ軸電圧、γ軸電流、δ軸電流及び電源角周波数に基づいて、軸ずれ、すなわち、δ軸成分の回転子磁束を推定し、フィードバック演算(例えばPI制御)により、回転子抵抗値を補正するための補正値を算出している。
山本直紀、他2名、「誘導機のベクトル制御における二次抵抗補正の一方法」、電気学会論文誌D、日本、1991年7月、第111巻、第7号、p.540−546
しかしながら、非特許文献1に開示された手法によれば、電動機トルクが低トルク状態の場合には、補正が適切に機能しない可能性がある。例えば、δ軸電流がゼロの状況や、電圧変動が小さい状況において、このようなことが起こりえる。このため、回転子抵抗値の変動をすべり角周波数に反映することができない。その結果、電流振動やトルク振動、トルク偏差が発生し、制御の安定性や応答性が悪化するという問題がある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動機の動作領域に関わらず、制御の安定性や応答性の向上を図ることができる電動機の制御装置を提供する。
かかる課題を解決するために、本発明の電動機の制御装置は、すべり角周波数を補正する補正値をすべり角周波数制御部に出力する補正部を有している。この補正部は、トルク軸成分の回転子磁束に基づいて回転子抵抗値を推定し、当該推定結果に基づいて補正値を出力する第1推定部と、固定子温度に基づいて回転子抵抗値を推定し、当該推定結果に基づいて補正値を出力する第2推定部と、電動機トルクの状態を判定する判定部と、非低トルク状態である場合には、第1推定部による補正値をすべり角周波数制御部に出力し、低トルク状態である場合には、第2推定部による補正値をすべり角周波数制御部に出力する
補正値出力部と、を有している。
本発明によれば、動作領域に適合した適切な補正値をすべり角周波数制御部に反映することができるので、電動機の動作領域に関わらず、制御の安定性や応答性の向上を図ることができる。
第1の実施形態に係る電動機の制御装置の構成を模式的に示す説明図 第1の実施形態に係るすべり角周波数制御部の構成を示すブロック図 第1の実施形態に係るすべり角周波数制御部の異なる構成を示すブロック図 第1の実施形態に係るすべり角周波数制御部の異なる構成を示すブロック図 第1の実施形態に係るすべり角周波数制御部の異なる構成を示すブロック図 第1の実施形態に係る補正値演算部の構成を示すブロック図 第1の実施形態に係る補正値演算部の異なる構成を示すブロック図 第1の実施形態に係る補正値演算部の異なる構成を示すブロック図 第1の実施形態に係る補正値演算部の異なる構成を示すブロック図 三相誘導モータの制御に係る各種のパラメータの推移を示す説明図 第2の実施形態に係る第2推定部20bの構成を示すブロック図 三相交流誘導モータの制御に係る各種のパラメータの推移を示す説明図 第3の実施形態に係る第2推定部の構成を示すブロック図 三相交流誘導モータ1の制御に係る各種のパラメータの推移を示す説明図 第3の実施形態に係る第2推定部の異なる構成を示すブロック図 第3の実施形態に係る第2推定部の異なる構成を示すブロッ 第3の実施形態に係る第2推定部の異なる構成を示すブロッ 第4の実施形態に係る第2推定部の構成を示すブロック図 第5の実施形態に係る補正値演算部の構成を示すブロック図
以下、図面を参照し、本実施形態に係る電動機の制御装置について説明する。本明細書において、各パラメータに付与される添え字について、「s」は固定子側、「r」は回転子側、「γ」はγ軸(磁束軸)成分、「δ」はδ軸(トルク軸)成分を示す。
図1は、本実施形態に係る電動機の制御装置の構成を模式的に示す説明図である。本実施形態では、電気自動車の駆動源として適用される電動機を制御する電動機の制御装置について説明を行う。電気自動車は、電動機1と、電源2と、制御装置10と、インバータ11とを備えている。
電動機1は、例えば、U相巻線、V相巻線、W相巻線からなる3つの相巻線を有する三相交流誘導モータ(以下「三相交流誘導モータ1」という)である。この三相交流誘導モータ1は、インバータ3内で変換された3相の交流電圧が各相に印加されることにより生じる磁界と、回転子の永久磁石が作る磁界との相互作用により回転駆動する。
電源2は、高電圧を印加可能な直流電源であり、例えば積層型リチウムイオンバッテリである。
制御装置10は、三相交流誘導モータ1を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータ等を用いることができる。制御装置10は、インバータ11に対して駆動信号Duu *,Dul *,Dvu *,Dvl *,Dwu *,Dwl *を出力し、このインバータ11の制御を通じて三相交流誘導モータ1の制御を行う。
インバータ11は、三相交流誘導モータ1の各相に対応する3つのスイッチング回路を主体に構成されている。インバータ11は、電源2の正極に接続される正極母線と、電源2の負極に接続される負極母線との間に、U相用のスイッチング回路と、V相用のスイッチング回路と、W相用のスイッチング回路とを備える。このインバータ11は、駆動信号Duu *,Dul *,Dvu *,Dvl *,Dwu *,Dwl *に応じて各相のスイッチング回路をオンオフ制御し、電源2の直流電圧を三相の交流電圧V,V,Vにそれぞれ変換する。そして、インバータ11は、当該変換した交流電圧V,V,Vを三相交流誘導モータ1の各相にそれぞれ印加する。
制御装置10は、これを機能的にとらえた場合、電流指令値演算部12と、磁束電流制御部13と、トルク電流制御部14と、非干渉制御部15と、座標変換部16と、PWM変換部17と、座標変換部18と、すべり角周波数制御部19と、補正値演算部20とを主体に構成されている。
電流指令値演算部12には、トルク指令値T*、三相交流誘導モータ1の回転数に相当
する回転子機械角速度ωrm及び電源2の電源電圧Vdcが入力される。電流指令値演算部12は、トルク指令値T*、回転子機械角速度ωrm及び電源電圧Vdcに基づいて、
γ軸電流(磁束軸成分の電流)の指令値に相当するγ軸電流指令値iγs *と、δ軸電流
(トルク軸成分の電流)の指令値に相当するδ軸電流指令値iδs *とを算出する。電流
指令値演算部12は、予めメモリに記憶したマップデータ又は演算式を参照して、γ軸電流指令値iγs *とδ軸電流指令値iδs *とをそれぞれ算出する。
電流指令値演算部12において、トルク指令値T*は、例えば電気自動車を制御するコ
ントローラ(図示せず)から入力され、回転子機械角速度ωrmは、後述する角速度演算部25から入力される。また、電源電圧Vdcは、例えば電源2を管理するバッテリーコントローラ(図示せず)から入力される。
磁束電流制御部13には、電流指令値演算部12において算出されたγ軸電流指令値iγs *から、後述するγ軸電流iγsを減算した値が入力される。磁束電流制御部13は
、γ軸電流指令値iγs *がγ軸電流iγsに対して定常偏差なく所望の応答性で追従す
るように、フィードバック演算によりγ軸電圧指令値(初期値)vγs **を算出する。磁束電流制御部13では、例えばPI制御を用いる。
トルク電流制御部14には、電流指令値演算部12において算出されたδ軸電流指令値iδs *から、後述するδ軸電流iδsを減算した値が入力される。トルク電流制御部1
4は、δ軸電流指令値iδs *がδ軸電流iδsに対して定常偏差なく所望の応答性で追
従するように、フィードバック演算によりδ軸電圧指令値(初期値)vδs **を算出する。磁束電流制御部13では、例えばPI制御を用いる。
磁束電流制御部13及びトルク電流制御部14において、γ軸電流iγs及びδ軸電流iδsは、後述する座標変換部18から入力される。
非干渉制御部15には、γ軸電流iγs、δ軸電流iδs及び電源角周波数ωが入力される。ここで、γ軸電流iγs及びδ軸電流iδsは、座標変換部18から入力され、電源角周波数ωは、すべり角周波数制御部19から入力される。
具体的には、非干渉制御部15は、直交二軸であるγδ軸間の干渉電圧を相殺するために必要な非干渉電圧vγs * _dcpl,vγs * _dcplをγ軸及びδ軸についてそれぞれ算出する。γ軸に相当する非干渉電圧vγs * _dcplは、数1により算出され、δ軸
に相当する非干渉電圧vγs * _dcplは、数2により算出される。

ここで、Mは相互インダクタンス、Lは自己インダクタンスであり、sはラプラス演算子である。また、σは漏れ係数であり、数3で示される。τは回転子磁束の時定数であり、電流応答の時定数に比べ非常に大きい値である。
磁束電流制御部13において算出されたγ軸電圧指令値(初期値)vγs **は、非干渉制御部15において算出された非干渉電圧vγs * _dcplにより補正され、これにより、最終的なγ軸電圧指令値vγs *が算出される。同様に、トルク電流制御部14におい
て算出されたδ軸電圧指令値(初期値)vδs **は、非干渉制御部15において算出された非干渉電圧vδs * _dcplにより補正され、これにより、最終的なδ軸電圧指令値vδs *が算出される。
座標変換部16には、電源角θと、非干渉制御後のγ軸電圧指令値vγs *及びδ軸電
圧指令値vδs *とが入力される。座標変換部16は、電源角周波数(電源角速度)ωで
回転する直交二軸の座標系(γδ軸)から、三相交流座標系(uvw軸)への変換を行なう。具体的には、座標変換部16は、電源角θと、γ軸電圧指令値vγs *及びδ軸電圧
指令値vδs *とに基づいて、数4に示す座標変換処理によりU相・V相・W相に係る三相の電圧指令値v *、v *、v *を算出する。
座標変換部16において、電源角θは、後述する変換用角度部26から入力される。数4において、θ’は、制御系の入出力遅れを考慮して電源角θを補正したものである。
PWM変換部17には、座標変換部16において算出された三相の電圧指令値v *
*、v *が入力される。PWM変換部17は、三相の電圧指令値v *、v *、v *に応じて、インバータ11のスイッチング回路(IGBTなどのスイッチング素子を含
む)を駆動するための駆動信号Duu *,Dul *,Dvu *,Dvl *,Dwu *,Dwl *を生成する。
座標変換部18には、電源角θと、u相電流ius及びv相電流ivsとが入力される
。座標変換部18は、三相交流座標系(uvw軸)から、直交二軸座標系(γδ軸)への変換を行なう。具体的には、座標変換部18は、電源角θと、u相電流ius、v相電流ivs及びw相電流iwsとに基づいて、数5に示す座標変換処理により、三相交流誘導モータ1におけるγ軸電流iγs及びδ軸電流iδsを算出する。
座標変換部18において、u相電流ius及びv相電流ivsは、後述するAD変換部23から入力される。ここで、AD変換部23から出力されない、残りのw相電流iwsは、数6で求めることができる。
すべり角周波数制御部19には、回転子電気角周波数(回転子電気角速度)ωreと、γ軸電流iγs及びδ軸電流iδsと、補正値ΔRとが入力される。ここで、回転子電気角周波数ωreは、後述する角速度演算部25から入力される。また、γ軸電流iγs及びδ軸電流iδsは、座標変換部18から入力される。補正値ΔRは、すべり角周波数ωseを補正するための補正値であり、後述する補正値演算部20から入力される。
すべり角周波数制御部19は、γ軸電流iγsと、δ軸電流iδsと、補正値ΔRとに基づいてすべり角周波数ωseを算出する。そして、すべり角周波数制御部19は、回転子電気角周波数ωreと、すべり角周波数ωseとに基づいて、電源角周波数(電源角速度)ωを算出する。
補正値演算部20には、非干渉制御後のδ軸電圧指令値vδs *、γ軸電流iγs、δ
軸電流iδs、回転子電気角周波数ωre、電源角周波数ωなどが入力される。補正値演算部20は、これらのパラメータに基づいて、すべり角周波数を補正する補正値を演算し、これをすべり角周波数制御部19に出力する。
なお、すべり角周波数制御部19及び補正値演算部20の詳細については後述する。
電流センサ21は、u相、v相及びw相の三相のうち少なくとも二相の電流(例えばu
相電流i、v相電流i)を検出する。座標変換部18には、AD変換部23を通して
サンプリングしたu相電流ius及びv相電流ivsが入力される。
磁極位置検出部22は、回転子位置(角度)に応じたA相B相Z相のパルスを出力し、出力されたパルスは、パルスカウンタ24に入力される。このパルスカウンタ24を通じて、回転子機械角度θrmが出力される。
角速度演算部25は、パルスカウンタ24から入力された回転子機械角度θrmに基づいて、その時間変化率より回転子機械角速度ωrmを算出し、モータ極対数pを乗じた回転子電気角周波数ωreを算出する。
図2は、すべり角周波数制御部19の構成を示すブロック図である。一般に、直交二軸座標系(γδ軸)における誘導モータの伝達特性は、数7の状態方程式で示される(モータモデル)。また、モータトルクTは、数8で示される。同数式において、Rは抵抗値、L,Mは自己インダクタンス及び相互インダクタンス、φは磁束、σは漏れ係数、sはラ
プラス演算子、pはモータ極対数である。

すべり角周波数ωseを、数9に示すように、比率(δ軸電流iδs/γ軸成分の回転子磁束φγr)に比例して制御することで、回転子磁束が、δ軸(トルク軸)と直交するγ軸(磁束軸)方向を向くこととなる。すなわち、軸ズレゼロ、つまりδ軸成分の回転子磁束φδrがゼロの状態となり(φδr=0)、ベクトル制御が成立する。
この場合、誘導モータの伝達特性は、数10のように簡素化された3次の状態方程式で扱うことができる。また、モータトルクTも簡素化されて、数11に示す通りとなる。

上述したように、ベクトル制御が成立している場合、δ軸成分の回転子磁束φδrがゼロ、モータトルクTも数11となる。ここで、Rrは、回転子抵抗値であり、通常は固定値(ノミナル値)が用いられる。しかしながら、温度変動によって回転子抵抗値がノミナル値から乖離すると、すべり角周波数ωseにもずれが生じ、その結果、δ軸成分の回転子磁束φδrがゼロではなくなる(φδr≠0)。そのため、モータトルクTは数8となり、トルク変動が生じることとなる。
そこで、すべり角周波数制御部19は、補正値演算部20から出力される補正値を用いることで、回転子抵抗値を回転子温度の変化に応じた変数として扱い、すべり角周波数ωseを算出する。
具体的には、図2に示すように、すべり角周波数制御部19は、γ軸電流iγsと、δ
軸電流iδsと、補正値ΔRとに基づいて、すべり角周波数ωseを算出する。ここで、補正値ΔRは、回転子抵抗値の補正を通じてすべり角周波数ωseを補正するための補正値であり、本ケースでは、回転子温度変化に応じてノミナル値Rから変化した回転子抵抗値の変化量として規定されている。数12に示すように、補正値ΔRが回転子抵抗値のノミナル値Rに加算されることで、回転子抵抗値を回転子温度に応じた変数として扱うことができる。
すべり角周波数制御部19は、回転子電気角周波数ωreにすべり角周波数ωseを加算した値を電源角周波数(電源角速度)ωとして算出する。すべり角周波数制御を実施することで、モータトルクTは、γ軸成分の回転子磁束φγr(φγr∝iγs)と、δ軸電流iδsとの積に比例する。
図3は、すべり角周波数制御部19の異なる構成を示すブロック図である。すべり角周波数制御部19は、上述した構成に限らず、次に示す構成であってもよい。具体的には、すべり角周波数制御部19は、γ軸電流iγsと、δ軸電流iδsと、補正値Kとに基づいて、すべり角周波数ωseを算出する。ここで、補正値Kは、回転子抵抗値の補正を通じてすべり角周波数ωseを補正するための補正値であり、本ケースでは、回転子温度変化に応じてノミナル値Rから変化した回転子抵抗値の変化量の比率(変化量/ノミナル値R)として規定されている。数13に示すように、補正値Kに「1」を加算した値が回転子抵抗値のノミナル値Rに乗算されることで、回転子抵抗値を回転子温度に応じた変数として扱うことができる。
図4は、すべり角周波数制御部19の異なる構成を示すブロック図である。また、すべり角周波数制御部19は、次に示す構成であってもよい。具体的には、すべり角周波数制御部19は、γ軸電流iγsと、δ軸電流iδsと、補正値K’とに基づいて、すべり角周波数ωseを算出する。ここで、補正値K’は、回転子抵抗値の補正を通じてすべり角周波数ωseを補正するための補正値であり、回転子温度変化に応じてノミナル値Rから変化した回転子抵抗値の比率(回転子抵抗値/ノミナル値R)である。数14に示すように、補正値K’が回転子抵抗値のノミナル値Rに乗算されることで、回転子抵抗値を回転子温度に応じた変数として扱うことができる。
図5は、すべり角周波数制御部19の異なる構成を示すブロック図である。また、すべり角周波数制御部19は、次に示す構成であってもよい。具体的には、すべり角周波数制御部19は、γ軸電流iγsと、δ軸電流iδsと、補正値R とに基づいて、すべり角周波数ωseを算出する。ここで、補正値R は、回転子抵抗値の補正を通じてすべり角周波数ωseを補正するための補正値であり、本ケースでは、回転子温度変化に応じて変化した回転子抵抗値そのものである。数15に示すように、この補正値R が回転子抵抗値のノミナル値Rに代えて演算されることで、回転子抵抗値を回転子温度に応じ
た変数として扱うことができる。
図6は、補正値演算部20の構成を示すブロック図であり、図2に示す構成のすべり角周波数制御部19と組み合わせて使用されるものである。補正値演算部20は、第1推定部20aと、第2推定部20bと、制御フラグ設定部20cと、補正値出力部20dとで構成されている。
第1推定部20aには、γ軸電流iγsと、δ軸電流iδsと、γ軸電圧指令値vγs *と、電源角速度ωとが入力されている。第1推定部20aは、これらのパラメータに基
づいてδ軸成分の回転子磁束φδrを推定し、これに基づいて回転子抵抗値を推定する。そして、第1推定部20aは、この推定結果に基づいて、補正値、すなわち、ノミナル値Rから変化した回転子抵抗値の変化量ΔRr_1を算出する。この変化量ΔRr_1は、補正値ΔRの候補として補正値出力部20dに出力される。
第2推定部20bには、図示しないセンサを通じて三相交流誘導モータ1において検出される固定子温度Tsが入力されている。第2推定部20bは、温度を回転子抵抗値Rr^に変換する変換部20b1を有している。第2推定部20bは、この変換部20b1により、固定子温度Tsから回転子抵抗値R を推定する。そして、第2推定部20bは、推定した回転子抵抗値R から回転子抵抗値のノミナル値Rを減算した値を、ノミナル値Rから変化した回転子抵抗値の変化量ΔRr_2として演算する。この変化量Δ
r_2は、補正値ΔRの候補として補正値出力部20dに出力される。
制御フラグ設定部20cには、トルク指令値T*が入力されている。制御フラグ設定部
20cは、モータトルクの状態として、低トルク状態であるのか、それともこの低トルク状態よりも高いトルク状態である非トルク状態であるのかを判定するものである(判定部)。制御フラグ設定部20cは、トルク指令値T*が低トルク状態を規定する所定のトル
ク範囲に含まれている場合には、モータトルクの状態が低トルク状態であるとして制御フラグFlagを「オフ」に設定する。一方、制御フラグ設定部20cは、トルク指令値T*が上記の所定のトルク範囲から外れている場合には、モータトルクの状態が非低トルク
状態であるとして制御フラグFlagを「オン」に設定する。本実施形態では、図6に示すように、制御フラグFlagの設定には、2つの閾値th1,th2を用いてヒステリシスが設定されている。なお、低トルク状態に相当するトルク範囲は、すべり角周波数ωseの補正ができなくなるような状態を考慮して、実験やシミュレーションを通じて予め定められている。
なお、制御フラグ設定部20cは、低トルク状態を判定するため、上述のトルク指令値T以外にも、電流指令値iγs ,iδs や、すべり角周波数ωseといったパラメータを利用してもよい。
補正値出力部20dには、第1推定部20aにおいて演算された変化量ΔRr_1と、
第2推定部20bにおいて演算された変化量ΔRr_2と、制御フラグ設定部20cにお
いて設定された制御フラグFlagとが入力されている。補正値出力部20dは、制御フラグFlagがオンの場合には、補正値ΔRとして第1推定部20aによる変化量ΔRr_1を出力する。一方、補正値出力部20dは、制御フラグFlagがオフの場合には
、補正値ΔRとして第2推定部20bによる回転子抵抗値の変化量ΔRr_2を出力す
る。
図7は、補正値演算部20の異なる構成を示すブロック図であり、図3に示す構成のすべり角周波数制御部19と組み合わせて使用されるものである。補正値演算部20は、第1推定部20aと、第2推定部20bと、制御フラグ設定部20cと、補正値出力部20dとで構成されている。なお、制御フラグ設定部20cの構成は、図6に示す構成と同様である。
第1推定部20aには、γ軸電流iγsと、δ軸電流iδsと、γ軸電圧指令値vγs *と、電源角速度ωとが入力されている。第1推定部20aは、これらのパラメータに基
づいて、δ軸成分の回転子磁束φδrを推定し、これに基づいて回転子抵抗値を推定する。そして、第1推定部20aは、この推定結果に基づいて、補正値、すなわち、ノミナル値Rから変化した回転子抵抗値の変化量の比率Kを算出する。この比率Kは、補正値Kの候補として補正値出力部20dに出力される。
第2推定部20bには、図示しないセンサを通じて三相交流誘導モータ1において検出される固定子温度Tsが入力されている。第2推定部20bは、温度を回転子抵抗値Rr^に変換する変換部20b1を有している。第2推定部20bは、この変換部20b1により、固定子温度Tsから回転子抵抗値R を推定する。そして、第2推定部20bは、推定した回転子抵抗値R に回転子抵抗値のノミナル値Rの逆数を乗算し、これに「1」を加算した値を、ノミナル値Rから変化した回転子抵抗値の変化量の比率Kとして演算する。この比率Kは、補正値Kの候補として補正値出力部20dに出力される。
補正値出力部20dには、第1推定部20aにおいて演算された比率Kと、第2推定部20bにおいて演算された比率Kと、制御フラグ設定部20cにおいて設定された制御フラグFlagとが入力されている。補正値出力部20dは、制御フラグFlagがオンの場合には、補正値Kとして第1推定部20aによる比率Kを出力する。一方、補正値出力部20dは、制御フラグFlagがオフの場合には、補正値Kとして第2推定部20bによる比率Kを出力する。
図8は、補正値演算部20の異なる構成を示すブロック図であり、図4に示す構成のすべり角周波数制御部19と組み合わせて使用されるものである。補正値演算部20は、第1推定部20aと、第2推定部20bと、制御フラグ設定部20cと、補正値出力部20dとで構成されている。なお、制御フラグ設定部20cの構成は、図6に示す構成と同様である。
第1推定部20aには、γ軸電流iγsと、δ軸電流iδsと、γ軸電圧指令値vγs *と、電源角速度ωとが入力されている。第1推定部20aは、これらのパラメータに基
づいてδ軸成分の回転子磁束φδrを推定し、これに基づいて回転子抵抗値を推定する。そして、第1推定部20aは、この推定結果に基づいて、補正値、すなわち、ノミナル値Rから変化した回転子抵抗値の比率K’を推定する。この比率K’は、補正値K’の候補として補正値出力部20dに出力される。
第2推定部20bには、図示しないセンサを通じて三相交流誘導モータ1において検出される固定子温度Tsが入力されている。第2推定部20bは、温度を回転子抵抗値Rr^に変換する変換部20b1を有している。第2推定部20bは、この変換部20b1により、固定子温度Tsから回転子抵抗値R を推定する。そして、第2推定部20bは、推定した回転子抵抗値R に回転子抵抗値のノミナル値Rの逆数を乗算した値を、ノミナル値Rから変化した回転子抵抗値の比率K’として演算する。この比率K’は、補正値K’の候補として補正値出力部20dに出力される。
補正値出力部20dには、第1推定部20aにおいて演算された比率K’と、第2推定部20bにおいて演算された比率K’と、制御フラグ設定部20cにおいて設定された制御フラグFlagとが入力されている。補正値出力部20dは、制御フラグFlagがオンの場合には、補正値K’として第1推定部20aによる比率K’を出力する。一方、補正値出力部20dは、制御フラグFlagがオフの場合には、補正値K’として第2推定部20bによる比率K’を出力する。
図9は、補正値演算部20の異なる構成を示すブロック図であり、図5に示す構成のすべり角周波数制御部19と組み合わせて使用されるものである。補正値演算部20は、第1推定部20aと、第2推定部20bと、制御フラグ設定部20cと、補正値出力部20dとで構成されている。なお、制御フラグ設定部20cの構成は、図6に示す構成と同様である。
第1推定部20aには、γ軸電流iγsと、δ軸電流iδsと、γ軸電圧指令値vγs *と、電源角速度ωとが入力されている。第1推定部20aは、これらのパラメータに基
づいてδ軸成分の回転子磁束φδrを推定し、これに基づいて回転子抵抗値Rr_1
推定する。この回転子抵抗値Rr_1 は、補正値ΔRの候補として補正値出力部20
dに出力される。
第2推定部20bには、図示しないセンサを通じて三相交流誘導モータ1において検出される固定子温度Tsが入力されている。第2推定部20bは、温度を回転子抵抗値Rr^に変換する変換部20b1を有している。第2推定部20bは、この変換部20b1により、固定子温度Tsから回転子抵抗値Rr_2 を推定する。この回転子抵抗値Rr_2 は、補正値R の候補として補正値出力部20dに出力される。
補正値出力部20dには、第1推定部20aにおいて演算された回転子抵抗値Rr_1
と、第2推定部20bにおいて演算された回転子抵抗値Rr_2 と、制御フラグ設定
部20cにおいて設定された制御フラグFlagとが入力されている。補正値出力部20dは、制御フラグFlagがオンの場合には、補正値R として第1推定部20aによる回転子抵抗値Rr_1 を出力する。一方、補正値出力部20dは、制御フラグFla
がオフの場合には、補正値R として第2推定部20bによる回転子抵抗値Rr_2
を出力する。
このように本実施形態において、三相交流誘導モータ1の制御装置10は、回転子磁束がγ軸方向を向くように、すべり角周波数ωseを演算するすべり角周波数制御部19と、すべり角周波数ωseを補正する補正値をすべり角周波数制御部19に出力する補正部としての補正値演算部20と、を有している。この補正値演算部20は、δ軸成分の回転子磁束φδrに基づいて回転子抵抗値を推定し、当該推定結果に基づいて補正値を出力する第1推定部20aと、固定子温度Tsに基づいて回転子抵抗値R を推定し、当該推定結果に基づいて補正値を出力する第2推定部20bと、モータトルクの状態として、低トルク状態又は非低トルク状態を判定する判定部としての制御フラグ設定部20cと、モータトルクの状態が非低トルク状態である場合には、第1推定部20aによる補正値をすべり角周波数制御部19に出力し、モータトルクの状態が低トルク状態である場合には、第2推定部20bによる補正値をすべり角周波数制御部19に出力する補正値出力部20dと、を有している。
図10は、三相交流誘導モータ1の制御に係る各種のパラメータの推移を示す説明図である。同図において、一点鎖線は指令値を示し、破線は、第1推定部20aのみで回転子抵抗値を補正した制御手法についてのシミュレーション結果を示し、実線は、本実施形態
に係る制御手法についてのシミュレーション結果を示す。同図に示すように、三相交流誘導モータ1の回転子抵抗値が変動した場合にも、これを補正することができる。また、モータトルクの状態に応じて、補正値を出力する第1推定部20aと第2推定部20bとを切り換えることで、動作領域に適合した適切な回転子抵抗値を制御に反映することができる。これにより、三相交流誘導モータ1の動作領域に関わらず、安定性や応答性の向上を図ることができる。
なお、上述した図6に示す補正値演算部20の構成では、制御フラグFlagのオンオフ
により第1推定部20aの出力ΔRr_1と、第2推定部20bの出力ΔRr_2とを切り換えている。しかしながら、補正値出力部20dは、数16に示すように、重み付け係数Wを通じて、第1推定部20aの出力ΔRr_1と、第2推定部20bの出力ΔRr_2とを切り換えてもよい。ここで、重み付け係数Wは、0乃至1までの値をとる変数であり、上述の制御フラグFlagに代えて制御フラグ設定部20cから出力される。この重み付け
係数Wの設定により、(1)第2推定部20bの出力ΔRr_2、(2)両出力ΔRr_1,ΔRr_2の組み合わせ、(3)第1推定部20aの出力ΔRr_1、からなる3つのパターンの出力を得ることができる。
なお、重み付け係数Wを用いる手法は、図6に示す補正値演算部20の構成に限らず、図7乃至図9に示す各補正値演算部20の構成にも適用することができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係る三相交流誘導モータ1の制御装置10について説明する。この制御装置10が第1の実施形態のそれと相違する点は、補正値演算部20における第2推定部20bの演算手法である。以下、第1の実施形態と重複する点については説明を省略し、相違点を中心に説明を行う。
図11は、第2の実施形態に係る第2推定部20bの構成を示すブロック図であり、第1の実施形態において図6に示した補正値演算部20に対応するものである。この第2推定部20bは、変換部20b1に加え、回転子温度推定部20b2を備えている。回転子温度推定部20b2は、三相交流誘導モータ1において検出される固定子温度Tsに基づいて、回転子温度Trを推定する。回転子温度Trの推定手法としては、近似式を用いたり、ローパスフィルタを用いたりすることができる。
変換部20b1は、回転子温度Trから回転子抵抗値R を推定する。回転子抵抗値R の推定は、マップ演算等を用いることができる。第2推定部20bは、推定した回転子抵抗値R から回転子抵抗値のノミナル値Rを減算した値を、ノミナル値Rから変化した回転子抵抗値の変化量ΔRr_2として演算する。
図12は、三相交流誘導モータ1の制御に係る各種のパラメータの推移を示す説明図である。同図において、一点鎖線は指令値を示し、破線は、第1の実施形態に係る制御手法についてのシミュレーション結果を示し、実線は、本実施形態に係る制御手法についてのシミュレーション結果を示す。本実施形態によれば、固定子温度Tsから回転子温度Trを推定し、これから回転子抵抗値R を推定しているので、回転子抵抗値R の推定精度の向上を図ることができる。このため、同図の領域Aで示すように、第1の実施形態に係る手法と比べて、電流応答やトルクの振動が低減する。これにより、三相交流誘導モータ1の動作領域に関わらず、制御の安定性や応答性の向上を図ることができる。
なお、回転子温度Trの推定演算を用いる手法は、図6に示す補正値演算部20の構成に限らず、図7乃至図9に示す各補正値演算部20の構成にも適用することができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態に係る三相交流誘導モータ1の制御装置10について説明する。この制御装置10が第2の実施形態のそれと相違する点は、補正値演算部20における第2推定部20bの演算手法である。以下、第2の実施形態と重複する点については説明を省略し、相違点を中心に説明を行う。
図13は、第3の実施形態に係る第2推定部20bの構成を示すブロック図であり、第1の実施形態において図6に示した補正値演算部20に対応するものである。この第2推定部20bは、変換部(以下「第1変換部」という)20b1、回転子温度推定部20b2に加え、第2変換部20b3を備えている。
回転子温度推定部20b2は、第2の実施形態と同様、固定子温度Tsに基づいて回転子温度Trを推定する。なお、後述するように、第2変換部20b3から回転子温度Trfが出力された場合には、当該温度Trfを回転子温度を推定するための初期値として用いる。変換部20b1は、回転子温度推定部20b2が推定した回転子温度Trに基づいて回転子抵抗値R を推定する。
本実施形態の特徴の一つとして、第2変換部20b3は、補正値出力部20dから出力される補正値(回転子抵抗値の変化量)ΔRが入力されている。第2推定部20bは、この補正値ΔRに回転子抵抗値のノミナル値Rを加算し、この加算値から回転子温度T を推定する。そして、第2推定部20bは、制御フラグFlag、すなわち、補正値ΔRの出力が第1推定部20aから第2推定部20bへと切り換わった場合には、回転子温度Trfを回転子温度推定部20b2に出力する。
このように本実施形態において、回転子温度推定部20b2は、補正値出力部20dが補正値ΔRの出力を第1推定部20aから第2推定部20bへと切り換えた場合には、切換前に出力された補正値ΔRに基づいて推定される回転子温度Trfを、回転子温度Trを推定するための初期値として推定演算を行うこととしている。
図14は、三相交流誘導モータ1の制御に係る各種のパラメータの推移を示す説明図である。同図において、一点鎖線は指令値を示し、破線は、第2の実施形態に係る制御手法についてのシミュレーション結果を示し、実線は、本実施形態に係る制御手法についてのシミュレーション結果を示す。本実施形態によれば、回転子温度Trの推定演算において、補正値(回転子抵抗値の変化量)ΔRを通じて求めた回転子温度T を初期値として利用している。このため、同図の領域Aで示すように、第1の実施形態に係る手法と比べて、切り換え時のショックも小さく、電流応答やトルクの振動が低減する。これにより、三相交流誘導モータ1の動作領域に関わらず、制御の安定性や応答性の向上を図ることができる。
なお、回転子温度Trの推定演算を用いる手法は、図6に示す補正値演算部20の構成に限らず、図15乃至図17に示すように、図7乃至図9に示す各補正値演算部20の構成にも適用することができる。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態に係る三相交流誘導モータ1の制御装置10について説明する。この制御装置10が第3の実施形態のそれと相違する点は、補正値演算部20における第2推定部20bの演算手法である。以下、第3の実施形態と重複する点については説明を
省略し、相違点を中心に説明を行う。
図18は、第4の実施形態に係る第2推定部20bの構成を示すブロック図であり、第1の実施形態において図6に示した補正値演算部20に対応するものである。この第2推定部20bは、第3の実施形態に示す手法に加えて、温度オフセット演算部20b4を備えている。
温度オフセット演算部20b4は、トルク指令値T*、電流指令値iγs ,iδs
、すべり角周波数ωseのいずれか1つ以上を参照し、固定子温度Tsと回転子温度Trとの温度の相違である温度オフセットΔTを演算する。温度オフセットΔTは、マップ演算や、二次銅損の計算式に基づく演算を通じて取得することができる。そして、回転子温度推定部20b2は、温度オフセットΔTと、固定子温度Tsとを加算して、この加算値に基づいてロータ温度推定を行う。
かかる構成によれば、固定子温度Tsから回転子温度Trを推定する際に、温度オフセットΔTを加味している。これにより、二次銅損などによる回転子温度Trへの熱損出などの影響を考慮することができるので、第3の実施形態に示す手法よりも電流やトルクの振動や偏差も低減する。これにより、三相交流誘導モータ1の動作領域に関わらず、制御の安定性や応答性の向上を図ることができる。
なお、温度オフセットΔTを加算する手法は、図6に示す補正値演算部20の構成に限らず、図7乃至図9に示す各補正値演算部20の構成にも適用することができる。また、第2の実施形態に示す手法に適用することもできる。
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態に係る三相交流誘導モータ1の制御装置10について説明する。この制御装置10が第4の実施形態のそれと相違する点は、補正値演算部20の構成である。以下、第4の実施形態と重複する点については説明を省略し、相違点を中心に説明を行う。
図19は、第5の実施形態に係る補正値演算部20の構成を示すブロック図である。補正値演算部20をPI制御とした場合には、2系統のそれぞれの出力ΔRr_1,ΔRr_2についてPI制御を共通して用いることとしている。具体的には、補正値演算部20は、軸ずれ推定部20eと、第2推定部20bと、制御フラグ設定部20cと、補正値出力部20dとで構成されている。第2推定部20bと、制御フラグ設定部20cとの構成は、第4の実施形態に示すものと同様である。
軸ずれ推定部20eには、γ軸電流iγsと、δ軸電流iδsと、γ軸電圧指令値vγs *と、電源角速度ωとが入力されている。軸ずれ推定部20eは、これらのパラメータ
に基づいて、δ軸成分の回転子磁束φδrを推定する。このδ軸成分の回転子磁束φδrは、マップ演算等を用いて推定することができる。
第2推定部20bには、第4の実施形態と同様に、図示しないセンサを通じて三相交流誘導モータ1において検出される固定子温度Ts等に基づいて回転子抵抗値の変化量ΔRr_2 を推定する。回転子抵抗値の変化量ΔRr_2 の推定は、マップ演算等を用いることができる。
補正値出力部20dには、第2推定部20bにおいて演算された回転子抵抗値の変化量ΔRr_2 と、制御フラグ設定部20cにおいて設定された制御フラグFlagとが入
力されている。補正値出力部20dは、制御フラグFlagがオンの場合には、PI制御
の制御ゲインKp,Kiとして予め定められたゲインKpin,Kiinを出力する。一方、補正値出力部20dは、制御フラグFlagがオフの場合には、PI制御の制御ゲインKp,Kiとしてゼロを出力するとともに、積分値の初期値Ki0としてΔRr_2 を出
力する。
軸ずれ推定部20eから出力されたδ軸成分の回転子磁束φδrは、制御ゲインKpを加味した値と、制御ゲインKiと積分演算とをそれぞれ加味した値とが合算され、補正値ΔRとして出力される。
かかる構成においても、電流やトルクの振動や偏差も低減する。これにより、三相交流誘導モータ1の動作領域に関わらず、制御の安定性や応答性の向上を図ることができる。
なお、温度オフセットΔTを加算する手法は、図6に示す補正値演算部20の構成に限らず、図7乃至図9に示す各補正値演算部20の構成にも適用することができる。また、第2の実施形態に示す手法に適用することもできるし、PI制御のみならず補正値演算部20がI制御を適用するような場合であっても適用可能である。
以上、本発明の実施形態にかかる電動機の制御装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。電動機の適用は、電気自動車のみならず電動機を駆動源として搭載する各種の車両や、それ以外のものであってもよい。
1 三相交流誘導モータ
2 電源
10 制御装置
11 インバータ
12 電流指令値演算部
13 磁束電流制御部
14 トルク電流制御部
15 非干渉制御部
16 座標変換部
17 PWM変換部
18 座標変換部
19 すべり角周波数制御部
20 補正値演算部
20a 第1推定部
20b 第2推定部
20b1 変換部(第1変換部)
20b2 回転子温度推定部
20b3 第2変換部
20b4 温度オフセット演算部
20c 制御フラグ設定部20c
20d 補正値出力部
21 電流センサ
22 磁極位置検出部
23 AD変換部
24 パルスカウンタ
25 角速度演算部
26 変換用角度部

Claims (5)

  1. 電動機の固定子に流す交流電流を電源角周波数に同期して回転する直交二軸座標系である磁束軸及びトルク軸に変換して調整することで電動機トルクを制御するベクトル制御を用いた電動機の制御装置において、
    前記電動機の回転子磁束が磁束軸方向を向くように、すべり角周波数を演算するすべり角周波数制御部と、
    前記すべり角周波数を補正する補正値を前記すべり角周波数制御部に出力する補正部と、を有し、
    前記補正部は、
    トルク軸成分の回転子磁束に基づいて回転子抵抗値を推定し、当該推定結果に基づいて前記補正値を出力する第1推定部と、
    固定子温度に基づいて回転子抵抗値を推定し、当該推定結果に基づいて補正値を出力する第2推定部と、
    前記電動機トルクの状態として、低トルク状態又は当該低トルク状態よりも高いトルク状態である非低トルク状態を判定する判定部と、
    前記電動機トルクの状態が前記非低トルク状態である場合には、前記第1推定部による補正値を前記すべり角周波数制御部に出力し、前記電動機トルクの状態が前記低トルク状態である場合には、前記第2推定部による補正値を前記すべり角周波数制御部に出力する補正値出力部と、
    を有することを特徴とする電動機の制御装置。
  2. 前記判定部は、トルク指令値、電流指令値及びすべり角周波数のうちいずれか一つ以上に基づいて前記電動機トルクの状態を判定することを特徴とする請求項1に記載された電動機の制御装置。
  3. 前記第2推定部は、
    前記固定子温度から回転子温度を推定する回転子温度推定部と、
    温度を前記回転子抵抗値へと変換する変換部と、を有し、
    前記変換部は、前記回転子温度推定部により推定された前記回転子温度から前記回転子抵抗値を変換すること特徴とする請求項1又は2に記載された電動機の制御装置。
  4. 前記回転子温度推定部は、前記補正値出力部が前記補正値の出力を前記第1推定部から前記第2推定部へと切り換えた場合には、切換前に出力された前記補正値に基づいて推定される前記回転子温度を、前記回転子温度を推定するための初期値として推定演算を行うことを特徴とする請求項3に記載された電動機の制御装置。
  5. 前記第2推定部は、
    トルク指令値、電流指令値及びすべり角周波数のうちいずれか一つ以上を利用して、前記固定子温度と前記回転子温度との温度の相違である温度オフセットを演算する温度オフセット演算部をさらに有し、
    前記回転子温度推定部は、前記固定子温度と前記温度オフセットとに基づいて前記回転子温度を推定することを特徴とする請求項3又は4に記載された電動機の制御装置。
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