JP2015129491A - 内燃機関の燃料供給制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】気体燃料の組成の変化による影響を少なくして燃焼を適正に実施する。【解決手段】燃料供給システムは、ガスタンク42と、ガスタンク42から燃料通路を通じて供給される気体燃料を噴射する気体噴射手段としての第1噴射弁21と、燃料通路に設けられ、第1噴射弁21に供給する気体燃料の圧力である燃料供給圧を減圧調整する圧力調整手段としてのレギュレータ43とを備える。制御部80は、気体噴射手段に供給される気体燃料の組成を学習し、その学習完了後において当該学習の結果に基づいてレギュレータ43により燃料供給圧を可変に制御する。【選択図】図1
Description
本発明は、内燃機関の燃料供給制御装置に関し、詳しくは内燃機関の燃焼用の燃料として気体燃料を供給可能な内燃機関の燃料供給制御装置に関する。
従来、例えば圧縮天然ガス(CNG)等の気体燃料を燃焼させて駆動する内燃機関を搭載した車両が実用化されている。こうした内燃機関において、気体燃料を燃料噴射弁に供給する燃料供給系の構成としては、気体燃料を高圧状態で貯蔵するガスタンクと、ガスタンクと燃料噴射弁とを繋ぐ燃料配管の途中に設けられ、ガスタンクから供給される気体燃料の圧力を減圧調整するレギュレータとを備える構成が知られている。
気体燃料の燃料供給系において、燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を調整可能な可変燃圧レギュレータを配置する構成が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、希薄燃焼ガスエンジンにおけるパイロットガスの圧力制御装置が開示されている。この装置では、パイロットガスの圧力と給気圧力との差圧ΔPを指標として、可変燃圧式のレギュレータによりパイロットガスの圧力を制御することが開示されている。
ところで、CNG等の気体燃料では、産地や生産工程によって燃料組成が異なることがある。また、前回のエンジン運転停止から今回のエンジン始動までの間に、組成が異なる気体燃料がタンク内に補充された場合、燃料組成の相違により燃料補充の前後で燃料密度が変わることがある。このとき、燃料密度が小さい燃料が充填された場合には燃焼ごとに要する燃料量が多くなり、必要量の燃料をエンジンに供給するのに要する噴射時間が長くなる。そのため、例えば高回転高負荷域で必要量の燃料を噴射しきれないことが考えられる。かかる場合、燃料不足により空燃比リーンとなることで、エンジンの出力不足や触媒の溶損などの不都合が生じることが懸念される。また、燃料密度が大きい燃料が充填された場合には燃焼ごとに要する燃料量が少なくなり、燃料噴射弁の最小噴射時間の制限にかかることが考えられる。この場合、噴射量過多により空燃比リッチとなる結果、エミッション悪化や燃費悪化などの不都合が生じることが懸念される。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、気体燃料の組成の変化による影響を少なくして燃焼を適正に実施することができる内燃機関の燃料供給制御装置を提供することを主たる目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
本発明は、気体燃料を高圧状態で蓄える燃料タンク(42)と、前記燃料タンクから燃料通路(41)を通じて供給される気体燃料を噴射する気体噴射手段(21)と、前記燃料通路に設けられ、前記気体噴射手段に供給する気体燃料の圧力である燃料供給圧を減圧調整する圧力調整手段(43)とを備える内燃機関(10)の燃料供給システム(40)に適用される内燃機関の燃料供給制御装置に関する。請求項1に記載の発明は、前記気体噴射手段に供給される気体燃料の組成を学習する組成学習手段と、前記組成学習手段による気体燃料の組成の学習完了後において、前記学習の結果に基づいて前記圧力調整手段により前記燃料供給圧を可変に制御する圧力制御手段と、を備えることを特徴とする。
上記構成では、燃料組成の学習結果に基づいて、燃料噴射弁に供給する気体燃料の燃料圧力を可変に制御するようにした。内燃機関で燃焼に供される気体燃料の組成が変化すると、同じ量の燃料を噴射するための噴射時間の長さが変わる。そのため、噴射可能な期間内に必要量の燃料を噴射し切れなかったり、最少噴射時間の制限にかかり過剰量の燃料が噴射されたりすることが考えられる。この点、上記構成とすることにより、燃料組成に応じた燃料圧力の気体燃料を燃料噴射弁に供給することができ、噴射可能な期間内に都度の燃焼に必要な量の気体燃料を内燃機関に供給することができる。これにより、気体燃料の組成の変化による影響を少なくして燃焼を適正に実施することができる。
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、気体燃料である圧縮天然ガス(CNG)と液体燃料であるガソリンとを燃焼用の燃料として使用する、いわゆるバイフューエルタイプの車載エンジン(内燃機関)に適用される燃料供給システムとして具体化している。本システムの全体概略図を図1に示す。
図1に示すエンジン10は、多気筒(例えば直列3気筒)の火花点火式エンジンである。エンジン10の吸気ポートには吸気マニホールド12を介して吸気管11が接続されており、排気ポートには排気マニホールド13を介して排気管14が接続されている。吸気管11には、空気量調整手段としてのスロットル弁15が設けられている。スロットル弁15は、DCモータ等のスロットルアクチュエータ15aにより開度調節される電子制御式のスロットル弁として構成されている。スロットル弁15の開度(スロットル開度)は、スロットルアクチュエータ15aに内蔵されたスロットル開度センサ15bにより検出される。
排気管14には、排気の成分を検出する排気センサと、排気を浄化する触媒19とが設けられている。排気センサとしては、排気中の酸素濃度に応じた検出信号を出力する酸素センサ18a,18bが、触媒19の上流側及び下流側にそれぞれ設けられている。
エンジン10の吸気ポート及び排気ポートには、気筒内に導入される空気量を調整する機関バルブとしての吸気バルブ25及び排気バルブ26がそれぞれ設けられている。吸気バルブ25の開動作により空気と燃料との混合気が気筒内に導入され、排気バルブ26の開動作により燃焼後の排気が排気通路に排出される。
エンジン10の各気筒には点火プラグ20が設けられている。点火プラグ20には、点火コイル等よりなる点火装置20aを通じて、所望とする点火時期に高電圧が印加される。この高電圧の印加により、各点火プラグ20の対向電極間に火花放電が発生し、気筒内に導入した燃料が着火され燃焼に供される。
本システムには、エンジン10の各気筒に対して燃料を噴射供給する燃料噴射手段として、気体燃料を噴射する気体噴射手段としての第1噴射弁21と、液体燃料を噴射する液体噴射手段としての第2噴射弁22とが設けられている。これら各噴射弁21,22は吸気マニホールド12にそれぞれ燃料を噴射する。
各噴射弁21,22は、電磁駆動部が電気的に駆動されることで弁体が閉位置から開位置にリフトされる開閉タイプの制御弁であり、制御部80から入力されるオン/オフ式の開弁駆動信号によりそれぞれ開弁駆動される。これら各噴射弁21,22は、通電により開弁し、通電遮断により閉弁することにより、通電時間に応じた量の燃料を噴射する。なお、本実施形態では、第1噴射弁21の先端部に噴射管23が接続されており、第1噴射弁21から噴出された気体燃料は噴射管23を介して吸気マニホールド12に噴射されるようになっている。第2噴射弁22について本実施形態ではポート噴射式としたが、エンジン10の気筒内に直接燃料を噴射する直噴式としてもよい。
次に、第1噴射弁21に対して気体燃料を供給する気体燃料供給部40と、第2噴射弁22に対して液体燃料を供給する液体燃料供給部70とについて説明する。
気体燃料供給部40には、気体燃料を高圧状態で貯留するガスタンク42と、ガスタンク42と第1噴射弁21とを接続するガス配管41と、が設けられている。ガス配管41の途中には、第1噴射弁21に供給される気体燃料の圧力を減圧調整する機能を有する圧力調整手段としてのレギュレータ43が設けられている。レギュレータ43は可変燃圧式の圧力調整機構であり、ガスタンク42内に貯蔵された高圧状態(例えば最大20MPa)の気体燃料を減圧調整するものである。
本実施形態のレギュレータ43は電磁駆動式であり、電磁駆動部に対する通電制御により、第1噴射弁21に供給される燃料の圧力(燃料供給圧)が所定の圧力範囲(例えば0.2〜1.2MPaの圧力範囲)内になるようにレギュレータ43の制御圧(レギュレータ制御圧)が可変調整される。なお、第1噴射弁21の燃料供給圧がレギュレータ43によって調整されることにより第1噴射弁21の噴射圧が調整される。減圧調整後の気体燃料は、ガス配管41を通って第1噴射弁21に供給される。
ガス配管41には更に、ガスタンク42の燃料出口の付近に配置されたタンク主止弁44と、タンク主止弁44よりも下流側であってレギュレータ43の燃料入口の付近に配置された遮断弁45とが設けられている。これら各弁44,45によって、ガス配管41における気体燃料の流通が許容及び遮断される。タンク主止弁44及び遮断弁45はいずれも電磁式の開閉弁であり、非通電時において気体燃料の流通が遮断され、通電時において気体燃料の流通が許容される常閉式である。また、ガス配管41において、レギュレータ43の上流側及び下流側には、燃料圧力を検出する圧力センサ46,47が設けられており、レギュレータ43の下流側には、燃料温度を検出する温度センサ48が設けられている。
液体燃料供給部70には、液体燃料を貯留する燃料タンク72が設けられており、燃料タンク72が第2噴射弁22に燃料配管71を介して接続されている。燃料配管71には、燃料タンク72内の液体燃料を第2噴射弁22に給送する燃料ポンプ73が設けられている。燃料ポンプ73により汲み上げられた液体燃料は、燃料配管71を通って第2噴射弁22に供給される。
制御部80は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等を備えており、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、都度のエンジン運転状態に応じてエンジン10の各種制御を実施する。具体的には、制御部80は、上述した各種センサや、本システムに設けられたその他のセンサ類(クランク角センサ81、吸気管圧力センサ82、冷却水温センサ83、車速センサ等)と電気的に接続されており、これらのセンサからの出力(検出信号)が入力される。また、制御部80は、点火装置20a、各噴射弁21,22、エンジン始動装置としてのスタータ(図示略)等の駆動部と電気的に接続されており、駆動信号を各駆動部に向けて出力することにより各駆動部の駆動を制御する。
制御部80は、エンジン運転状態やタンク内の燃料残量、図示しない燃料選択スイッチからの入力信号等に応じて、エンジン10の運転に使用する燃料を選択的に切り替えている。具体的には、燃料選択スイッチにより気体燃料の使用が選択されている場合又はタンク72内の液体燃料の残存量が所定値を下回った場合には、エンジン10の燃料モードとして、気体燃料供給部40により気体燃料をエンジン10に供給する気体燃料モードを選択する。一方、燃料選択スイッチにより液体燃料の使用が選択されている場合又はガスタンク42内の気体燃料の残存量が所定値を下回った場合には、エンジン10の燃料モードとして、液体燃料供給部70により液体燃料をエンジン10に供給する液体燃料モードを選択する。
燃料噴射制御について制御部80は、エンジン運転状態(エンジン回転速度及びエンジン負荷)に基づいて基本噴射量を算出し、その基本噴射量に対して各種補正を行うことにより燃料噴射量を算出する。そして、その算出した燃料噴射量を、燃料噴射弁(第1噴射弁21及び第2噴射弁22)の噴射圧に応じた噴射時間に換算し、その噴射時間だけ燃料噴射弁を開弁させることにより、都度のエンジン運転状態に応じて必要な量の燃料をエンジン10に対して供給する。
空燃比制御として本実施形態では、実空燃比と目標空燃比との偏差に基づくフィードバック制御を実施している。具体的には、エンジン運転状態(例えばエンジン回転速度及びエンジン負荷)に基づいて目標空燃比を算出するとともに、触媒19の上流側に設けられた酸素センサ18aの検出値に基づいて実空燃比を算出する。そして、実空燃比と目標空燃比との偏差に応じて、燃料噴射量の補正量である空燃比フィードバック補正量(以下、「空燃比補正量FB」ともいう。)を算出し、その算出した空燃比補正量FBにより基本噴射量を補正することで実空燃比を目標空燃比に一致させるようにしている。
空燃比補正量FBは、酸素センサ18aにより検出される空燃比がリッチである期間では所定量ずつ減量され、一方、リーンである期間では所定量ずつ増量される。また、酸素センサ18aにより検出される空燃比がリッチからリーンへ、又はリーンからリッチへ切り替わった場合には、空燃比補正量FBが階段状に増減(スキップ)される。なお、本システムの空燃比フィードバック制御では、触媒下流側の酸素センサ18bの検出値に基づく補正を加えることにより空燃比制御の制御性を高めるようにしている。空燃比フィードバック制御は、エンジン始動後、酸素センサ18aが活性状態になった後に開始される。
ここで、CNGなどの気体燃料には、燃焼に寄与する複数種の成分が含まれているとともに、窒素やCO2などの不活性ガス(不純物)が含まれている。また、気体燃料の組成は産地や生産工程によって異なり、燃料組成の相違により燃料密度が異なる。そのため、ガスタンク42内に充填される気体燃料の組成が常に一定であると仮定して燃料噴射を実施するとエンジン10に供給される燃料の過不足が生じ、ノックや失火、エミッション悪化などが生じることが考えられる。そこで本実施形態では、ガスタンク42内に気体燃料が補充された場合には、ガスタンク42内に充填されている気体燃料の組成を学習している(組成学習手段)。具体的には、本実施形態では、気体燃料の組成(燃料密度)が、空燃比フィードバック制御にて算出される燃料噴射量の補正量(空燃比補正量FB)と相関があることを利用して、空燃比補正量FBに基づいて気体燃料の組成を学習している。
燃料組成の学習は例えば次のようにして実施される。すなわち、ガスタンク42内に気体燃料が補充されたか否かを判定し、燃料補充ありと判定された場合には、気体燃料を用いての次回のエンジン始動時に気体燃料の組成を学習する。このとき、空燃比補正量FBが予め設定された所定の制御範囲を超えた場合には、燃料組成の学習値FAに所定の更新量fa1を加算し、この加算に併せて空燃比補正量FBから更新量fa1を減算する。こうした学習値FAの更新と、その更新に伴う空燃比補正量FBの修正とを順次繰り返し、空燃比補正量FBを制御範囲内に収める。これにより、燃料組成の変化に伴う空燃比補正量FBのずれ分を学習値FAに反映させて空燃比補正量FBの定常的なずれを解消する。
前回のエンジン運転停止から今回のエンジン始動までの間の期間に、燃料組成が異なる気体燃料がガスタンク42内に補充された場合を考える。ここでは、ガスタンク42内に充填されていた気体燃料よりも燃料密度が小さい燃料が補充された場合について考える。この場合、第1噴射弁21から噴射される気体燃料では単位噴射時間あたりの噴射質量が小さくなるため、実空燃比が目標空燃比よりもリーン側となる。その結果、図2に示すように空燃比補正量FBが大きくなる。制御部80は、燃料組成の学習値FAの更新と、この更新に伴う空燃比補正量FBの減算とを行うことにより、空燃比補正量FBの変化分ΔFBを燃料組成の学習値FAとして格納するとともに、この学習値FAを用いて気体燃料の燃料噴射量を算出する。
燃料密度が小さい燃料が補充された場合、第1噴射弁21に供給される燃料圧力が一定であれば、エンジン10に対して必要量の気体燃料を噴射するには噴射時間が長くなり、例えば図2に示すように、第1噴射弁21の噴射時間(噴射パルス幅)がΔtだけ長くなる。このとき、燃料補充の前後で気体燃料の組成が大きく異なると噴射パルスが過剰に長くなり、エンジン高回転高負荷域で必要燃料を噴射しきれない可能性がある。この場合、燃料不足により空燃比リーンとなり、エンジン10の出力不足や失火、触媒19の溶損等が生じることが考えられる。また逆に、燃料密度が大きい気体燃料がガスタンク42内に補充された場合には、第1噴射弁21で設定可能な最小噴射時間(最小噴射パルス)の制限にかかり、エンジン10に供給される燃料量が過多になる可能性がある。その場合、燃料過多により空燃比リッチとなり、エミッション悪化や燃費の悪化などを招くことが懸念される。
そこで本実施形態では、第1噴射弁21に供給される気体燃料の組成の学習結果を取得し、その学習結果に基づいてレギュレータ制御圧を可変にしている。より具体的には、燃料組成学習により更新した学習値が、今現在、ガスタンク42内に充填されている気体燃料の燃料密度が小さいことを示す値であるほど、第1噴射弁21の燃料供給圧(噴射圧)が高圧側となるようにレギュレータ制御圧を設定することとしている。例えば、前回のエンジン停止から今回のエンジン始動までの間にガスタンク42内に気体燃料が補充され、第1噴射弁21に供給される気体燃料の燃料密度が前回運転時よりも小さくなった場合には、レギュレータ制御圧を高圧側に変更することにより、図2に示すように、斜線で示す分(Δt)だけ噴射パルス幅(噴射時間)が短くなるようにする。
図3は、本実施形態のレギュレータ駆動制御の処理手順を示すフローチャートである。この処理は制御部80により所定周期毎に実行される。
図3において、ステップS101では、エンジン10の燃焼に使用する燃料として気体燃料が選択されているか否かを判定する。液体燃料が選択されている場合にはそのまま本処理を終了し、気体燃料が選択されている場合にはステップS102へ進む。ステップS102では、今回のエンジン始動前にガスタンク42内に気体燃料が補充されたか否かを判定する。ここでは、圧力センサ46によって検出される燃料圧力が前回のエンジン停止時の燃料圧力よりも所定値以上高くなったか否かを判定する。ガスタンク42内への燃料補充ありと判定された場合にはステップS103へ進み、燃料補充なしと判定された場合にはステップS106へ進む。
ステップS103では、今回のエンジン始動後において気体燃料の燃料学習が完了したか否かを判定する。気体燃料の燃料学習が完了していなければステップS106へ進む。一方、気体燃料の燃料学習の完了後であればステップS104へ進み、ガスタンク42内への燃料補充によって燃料組成が変化したか否かを判定する。ここでは、図示しない別ルーチンで実行される燃料組成の学習結果を取得し、その取得した学習結果に基づき判定する。具体的には、エンジン始動後、空燃比フィードバック制御が開始されてから所定時間内に空燃比補正量FBが所定値以上変化した場合に、燃料補充によりガスタンク42内の燃料組成が変化したものと判定する。
燃料組成が変化していなければステップS106へ進む。一方、燃料組成が変化していればステップS105へ進み、燃料組成の学習結果とエンジン運転状態とに基づいて、第1噴射弁21に供給する燃料圧力、つまり第1噴射弁21の噴射圧を補正するための圧力補正係数Fpを算出する(圧力制御手段)。圧力補正係数Fpは、レギュレータ制御圧Prgの基準圧Po(例えば0.2〜0.3MPaの所定圧)に対する補正係数(>0)であり、この値が大きいほど基準圧Poに対する圧力補正量が高圧側に大きいことを意味する。ここでは、燃料組成学習により学習される気体燃料の燃料密度と、エンジン運転状態(エンジン回転速度及びエンジン負荷)とを用いて圧力補正係数Fpを算出する。例えば、気体燃料の燃料密度に関する補正係数fp1と、エンジン運転状態に関する補正係数fp2とを乗算又は加算することにより圧力補正係数Fpを算出する。
図4に、気体燃料の燃料密度と補正係数fp1との関係を示す。図4によれば、気体燃料の燃料密度が小さいほど補正係数fp1が大きい値に設定される。これにより、気体燃料の気体密度が小さいほどレギュレータ制御圧Prgが高圧側の値に設定されるようになっている。なお、気体燃料の燃料密度は、空燃比補正量FBの変化率や、噴射パルス幅の変化率に基づき算出する。例えば図2において、空燃比補正量FBの増大前の噴射パルス幅を1とした場合に、空燃比補正量FBの増大後の噴射パルス幅が1.5であれば、その空燃比補正量FBの変化の前後における噴射パルス幅の比率(1.5/1)に応じて燃料密度を変換することにより燃料密度を算出することができる。このとき、燃料密度と補正係数fp1との関係に代えて、例えば空燃比補正量FBの変化率と補正係数fp1との関係や、噴射パルス幅の変化率と補正係数fp1との関係を予め記憶しておき、これらの関係を用いて補正係数fp1を算出してもよい。
また、エンジン運転状態に関する補正係数fp2については、図5に示すように、エンジン回転速度とエンジン負荷と補正係数fp2との関係が圧力補正用マップとして予め定められており、このマップを用いて補正係数fp2を算出する。図5のマップでは、エンジン運転領域がエンジン回転速度及びエンジン負荷に応じて複数の運転領域に区分されており、それら運転領域ごとに補正係数fp2がそれぞれ設定されている。図5の圧力補正用マップによれば、エンジン回転速度が低回転域ほど又はエンジン負荷が低負荷域ほど、圧力補正係数Fpが小さい値に算出されるようになっている。これにより、エンジン低回転域であるほど又はエンジン低負荷であるほど、レギュレータ制御圧Prgが低圧側の値に設定される。
エンジン運転状態に応じてレギュレータ制御圧を可変にする理由は以下の通りである。気体燃料(本実施形態ではCNG燃料)は、ガソリン等の液体燃料に比べて単位質量あたりの体積が大きく、第1噴射弁21から噴射された燃料が吸気管11内に占める比率が大きくなる。また、気体燃料と空気は共に気体であり、両者は比較的混ざりにくい。そのため、第1噴射弁21から気体の状態で噴射された燃料は、燃料の固まりとなって例えば吸気バルブ25付近に局所的に滞在しやすい傾向にある。また燃料の局所化は、気流が小さいエンジン低回転側ほど現れやすい。こうした気体燃料の局在化が生じた場合、燃料と空気とのミキシングが不十分となり、燃焼が悪化する結果、燃費悪化や出力低下を招くことが考えられる。そこで、本実施形態では、図4に示すように、エンジン低回転域ほどレギュレータ制御圧Prg、すなわち第1噴射弁21の燃料供給圧を低くしている。これにより、エンジン10の低回転側では燃料の噴射時間を長引かせ、空気に対して燃料を少しずつ供給することでミキシング向上を図るようにしている。また、高負荷では燃料ごとに要する燃料量が多くなり、必要量の燃料が噴き切れなくなるおそれがあることを考慮して、高負荷ほどレギュレータ制御圧Prgを高くするようにしている。
なお、レギュレータ制御圧Prgの上限値及び下限値について本実施形態では、1回の燃料噴射で第1噴射弁21から噴射可能な燃料量の最大値である最大噴射量及びその最小値である最小噴射量での噴射がそれぞれ実現できるように各値が設定されている。これにより、エンジン運転状態に基づき算出される要求燃料量を気筒内に供給できるようにしている。
図3の説明に戻り、ステップS107では、圧力補正係数Fp基づいてレギュレータ制御圧Prgを算出する。ここでは、基準圧Poと圧力補正係数Fpとを乗算することによりレギュレータ制御圧Prgを算出する。続くステップS108では、算出したレギュレータ制御圧Prgに基づきレギュレータ43の電磁駆動部の通電制御を行う。
一方、エンジン始動前に気体燃料の補充なしと判定された場合、気体燃料の補充ありであっても燃料組成が変化していないと判定された場合、又は燃料組成学習の完了前であると判定された場合にはステップS106へ進み、エンジン運転状態(エンジン回転速度及びエンジン負荷)に基づいて圧力補正係数Fpを算出する。このとき、燃料組成の学習結果に基づき圧力補正係数Fpを算出する場合のマップと同一のマップ(図5)を用いてもよいし、図5のマップとは異なるマップを用いてもよい。その後、ステップS107及びS108の処理を実行し、本ルーチンを終了する。
以上詳述した本実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
燃料組成の学習結果に基づいて、第1噴射弁21に供給する気体燃料の燃料圧力を可変に制御する構成とした。エンジン10で燃焼に供される気体燃料の組成が変化すると、同じ質量の燃料を噴射するために要する噴射時間の長さが変わり、噴射可能な期間内に必要量の燃料を噴射し切れなかったり、最少噴射時間の制限にかかり過剰量の燃料を噴射したりすることがある。この点、上記構成とすることにより、燃料組成に応じた燃料圧力の気体燃料を第1噴射弁21に供給することができ、噴射可能な期間内に都度の燃焼に必要な量の気体燃料をエンジン10に供給することができる。これにより、気体燃料の組成の変化による影響を少なくしてエンジン10の燃焼を適正に実施することができる。
具体的には、燃料組成学習により気体燃料の燃料密度を学習し、その学習した燃料密度が小さいほどレギュレータ制御圧Prgが高圧側となるようにレギュレータ43を駆動させる構成とした。燃料密度が小さい燃料が充填されると、必要量の燃料をエンジンに供給するためには噴射時間が長くなり、例えば高回転高負荷域で必要量の燃料を噴射しきれない結果、燃料不足が生じることがある。また、燃料密度が大きい燃料が充填されると、燃料噴射弁の最小噴射時間の制限にかかり、燃料過多になることがある。こうした点を考慮し、上記構成とすることにより、燃料不足に伴うエンジンの出力不足や触媒の溶損の発生を回避するようにすることができるし、また燃料過多に伴うエミッション悪化や燃費悪化の発生を回避するようにすることができる。
圧力補正係数Fpについて、燃料組成の学習結果とエンジン運転状態に基づきこれを算出することにより、レギュレータ制御圧Prgを可変に制御する構成とした。第1噴射弁21から噴射された気体燃料は吸気管11内で局所的に滞在しやすい傾向があり、またその傾向は、気流が小さいエンジン低回転側又は低負荷側ほど現れやすい。こうした点を考慮し、燃料組成の学習結果とエンジン運転状態とを考慮してレギュレータ制御圧Prgを設定することにより、燃料と空気とが混合しにくい運転領域でもそれらを混合させやすくすることができ、エンジン10の燃焼状態の改善に好適である。
燃料組成の学習結果に基づいて気体燃料の組成の変化が生じているか否かを判定し、燃料組成の変化が生じていると判定された場合に、その学習結果に基づきレギュレータ制御圧Prgを可変に制御する構成とした。こうした構成によれば、燃料組成の学習が完了し、その学習結果に基づく圧力補正が必要な場合に限ってこれを実施することができる。
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
・気体燃料の燃料密度に関する補正係数fp1をエンジン運転状態に応じて設定する構成としてもよい。具体的には、例えば圧力補正係数FpをFp=(fp1*fp2)*fp2とする。このとき、燃料補充前の燃料密度に対する燃料補充後の燃料密度の変化量が判定値未満である場合には圧力補正係数Fp=fp1*fp2とし、該変化量が判定値以上である場合には圧力補正係数Fp=(fp1*fp2)*fp2としてもよい。なお、この場合にも第1噴射弁21の最大噴射量及び最小噴射量での噴射が実現できるようにレギュレータ制御圧Prgの上限値及び下限値を設定することが望ましい。
・上記実施形態では、燃料組成の学習結果である燃料密度を用い、燃料密度に応じてレギュレータ制御圧Prgを可変に設定したが、燃料補充前の燃料密度に対する燃料補充後の燃料密度の変化量に応じて、レギュレータ制御圧Prgを前回値から所定量だけ高圧側又は低圧側に変更する構成としてもよい。
・上記実施形態では、気体燃料を用いてのエンジン運転時において空燃比補正量FBに基づいて気体燃料の組成を学習したが、気体燃料の組成を学習する方法はこれに限定しない。例えば、O2センサ18aの検出値に基づいて空燃比を推定し、その推定した空燃比に基づいて気体燃料の組成を学習してもよい。
・上記実施形態では、エンジン燃焼用の燃料として気体燃料と液体燃料とを使用するバイフューエルタイプの車載エンジンに適用する場合について説明したが、エンジン燃料用の燃料として気体燃料のみを使用するガス専用の車載エンジンに適用してもよい。
・上記実施形態では気体燃料をCNG燃料としたが、標準状態で気体状態の他の気体燃料を用いることもでき、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、水素、ジメチルエーテルなどを主成分とする燃料を用いる構成としてもよい。また、液体燃料についてもガソリン燃料に限定しない。例えば燃焼用の燃料として軽油を用いるディーゼルエンジンに対して気体燃料の供給系を搭載したシステムに本発明を適用してもよい。
10…エンジン、18a…酸素センサ、21…第1噴射弁、22…第2噴射弁、40…気体燃料供給部、42…ガスタンク、43…レギュレータ、70…液体燃料供給部、80…制御部(組成学習手段、圧力制御手段)。
Claims (4)
- 気体燃料を高圧状態で蓄える燃料タンク(42)と、前記燃料タンクから燃料通路(41)を通じて供給される気体燃料を噴射する気体噴射手段(21)と、前記燃料通路に設けられ、前記気体噴射手段に供給する気体燃料の圧力である燃料供給圧を減圧調整する圧力調整手段(43)とを備える内燃機関(10)の燃料供給システム(40)に適用され、
前記気体噴射手段に供給される気体燃料の組成を学習する組成学習手段と、
前記組成学習手段による気体燃料の組成の学習完了後において、前記学習の結果に基づいて前記圧力調整手段により前記燃料供給圧を可変に制御する圧力制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の燃料供給制御装置。 - 前記組成学習手段は、前記気体噴射手段に供給される気体燃料の密度を学習し、
前記圧力制御手段は、前記組成学習手段により学習された気体燃料の密度が小さいほど、前記圧力調整手段により前記燃料供給圧を高圧側にする請求項1に記載の内燃機関の燃料供給制御装置。 - 前記圧力制御手段は、前記組成学習手段の学習結果と前記内燃機関の運転状態とに基づいて、前記圧力調整手段により前記燃料供給圧を可変に制御する請求項1又は2に記載の内燃機関の燃料供給制御装置。
- 前記圧力制御手段は、前記内燃機関が低回転であるほど又は低負荷であるほど、前記圧力調整手段により前記燃料供給圧を低圧側にする請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の燃料供給制御装置。
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JP2016166565A (ja) * | 2015-03-09 | 2016-09-15 | いすゞ自動車株式会社 | 天然ガスエンジン及びその運転方法 |
JP2020159289A (ja) * | 2019-03-27 | 2020-10-01 | いすゞ自動車株式会社 | 内燃機関及び内燃機関の制御方法 |
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