JP2015076169A - 質量分析装置、同定方法、およびプログラム - Google Patents

質量分析装置、同定方法、およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】脂質のチャージリモートフラグメンテーションによる構造解析を容易に行うことができる質量分析装置を提供する。【解決手段】質量分析装置100は、イオン化部10と、第1質量分離部20と、開裂部30と、第2質量分離部40と、検出部50と、データベースを検索して、検出部50の検出結果から得られる脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する同定部64と、を含み、データベースには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによる各フラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差の情報、および各フラグメントイオンの強度の情報を含む脂肪酸のピークリストが登録されている。【選択図】図1

Description

本発明は、質量分析装置、同定方法、およびプログラムに関する。
タンデム質量分析法とは、一般的に、2台の質量分析計で行う質量分析法を意味する。具体的には、イオン源で何らかの方法でイオン化させたイオンを1台目の質量分析計で質量分離し、特定の質量電荷比m/zを持つイオンのみを選択する。選択したイオンを希ガスと衝突させる、光に反応させるなどして断片化させ、2台目の質量分析計で質量分離し、スペクトルを測定する方法である。
上記は2台の質量分析計を組み合わせて行う方法であるが、この他にも、1台の質量分析計でイオンをトラップしてタンデム質量分析法を行うことができる、イオントラップ型質量分析計や、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析計等が存在する。
脂質は、その種に応じた構造に脂肪酸が最低1つ結合しており、その脂肪酸の組成や構造により性質が異なる。脂質の構造解析は、例えば特許文献1に示すように、一般的に、タンデム質量分析法により行われている。なかでも、磁場型質量分析計を代表とした、実験室系で運動エネルギーが数keV以上のイオンを不活性ガスと衝突させる高エネルギー衝突誘起解離(HE−CID)が可能な装置では、チャージリモートフラグメンテーションにより脂肪酸の構造を反映したスペクトルが観測されることから、脂質の構造解析に用いられる。
ここで、チャージリモートフラグメンテーションとは、イオンの結合の開裂が見かけ上電荷の位置から遠く離れた場所で起こる現象を指す。脂肪酸や一部の脂質においては、末端に金属イオンを付加させる等して、電荷を固定させた上でタンデム質量分析法を行うことで、チャージリモートフラグメンテーションによるフラグメントイオンが観測できる。末端からそれぞれの結合が開裂したフラグメントイオンが観測されるために、スペクトルから直接構造解析を行うことが可能となる。
図12は、脂肪酸の炭素鎖のなかに1つの不飽和結合がある場合のイメージ図である。図12に示すように、不飽和結合に相当する部分のピーク強度が弱くなるなどの特徴が観測されるため、構造解析が可能となる。
特開2006−226730号公報
しかし、リン脂質やトリアシルグリセロール等の2つ以上の脂肪酸が結合している脂質では、チャージリモートフラグメンテーションが観測される領域に複数の脂肪酸それぞれの構造を反映したピークパターンが観測されるため、スペクトルの解析は非常に複雑なものとなる。
さらに、試料によっては脂肪酸部分の組成は同じであるが、脂肪酸の組み合わせが異なる構造異性体が存在する場合もあり、脂肪酸が2つ結合している脂質でもピークパターンとしては、3種類以上の脂肪酸のパターンが観測される可能性も考えられる。例えば、グ
リセリンに脂肪酸が2つ結合した場合であるが、2つの脂肪酸の炭素鎖総数36・不飽和結合総数2といっても、含まれる脂肪酸の種類によっては、図13に示すように3つの構造異性体を含んでいるケースも想定される。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、脂質のチャージリモートフラグメンテーションによる構造解析を容易に行うことができる質量分析装置、同定方法、およびプログラムを提供することにある。
(1)本発明に係る質量分析装置は、
脂肪酸を含む試料をイオン化するイオン化部と、
前記イオン化部で生成されたイオンを質量に応じて分離してプリカーサーイオンを選択する第1質量分離部と、
前記第1質量分離部で選択されたプリカーサーイオンを開裂させてフラグメントイオンを生成する開裂部と、
前記開裂部で生成されたフラグメントイオンを質量に応じて分離する第2質量分離部と、
前記第2質量分離部で分離されたフラグメントイオンを検出する検出部と、
データベースを検索して、前記検出部の検出結果から得られる脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する同定部と、
を含み、
前記データベースには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによる各フラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差の情報、および各フラグメントイオンの強度の情報を含む脂肪酸のピークリストが登録されている。
このような質量分析装置では、脂質のチャージリモートフラグメンテーションによる構造解析を容易に行うことができる。具体的には、このような質量分析装置では、例えば、脂肪酸が複数結合した脂質や、構造異性体を含む脂質の構造解析を容易に行うことができる。
(2)本発明に係る質量分析装置において、
前記同定部は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差をインデックスとして、前記データベースの検索を行ってもよい。
このような質量分析装置では、データベース検索の高速化を図ることができる。
(3)本発明に係る質量分析装置において、
前記同定部は、脂肪酸が同定された場合に、前記プロダクトイオンスペクトルのフラグメントイオンの強度から、同定された脂肪酸の前記ピークリストの各フラグメントイオンの強度を差し引いてもよい。
このような質量分析装置では、データベース検索の精度を高めることができる。
(4)本発明に係る質量分析装置において、
前記ピークリストにおいて、各フラグメントイオンの強度は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの強度に対する各フラグメントイオンの強度の比であってもよい。
このような質量分析装置では、試料のプロダクトイオンスペクトルと、脂肪酸のピークリストとの照合を容易に行うことができる。
(5)本発明に係る同定方法は、
脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルから、脂肪酸を同定する脂肪酸の同定方法であって、
データベースを検索して、前記プロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する工程を含み、
前記データベースには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによる各フラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差の情報、および各フラグメントイオンの強度の情報を含む脂肪酸のピークリストが登録されている。
このような同定方法では、脂質のチャージリモートフラグメンテーションによる構造解析を容易に行うことができる。具体的には、このような同定方法では、例えば、脂肪酸が複数結合した脂質や、構造異性体を含む脂質の構造解析を容易に行うことができる。
(6)本発明に係る同定方法において、
脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差をインデックスとして、前記データベースの検索を行ってもよい。
(7)本発明に係る同定方法において、
脂肪酸が同定された場合に、前記プロダクトイオンスペクトルのフラグメントイオンの強度から、同定された脂肪酸の前記ピークリストの各フラグメントイオンの強度を差し引いてもよい。
(8)本発明に係る同定方法において、
前記ピークリストにおいて、各フラグメントイオンの強度は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの強度に対する各フラグメントイオンの強度の比であってもよい。
(9)本発明に係るプログラムは、
脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルから、脂肪酸を同定するプログラムであって、
データベースを検索して、前記プロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する同定部としてコンピューターを機能させ、
前記データベースには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによる各フラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差の情報、および各フラグメントイオンの強度の情報を含む脂肪酸のピークリストが登録されている。
このようなプログラムでは、脂質のチャージリモートフラグメンテーションによる構造解析を容易に行うことができる。具体的には、このようなプログラムでは、例えば、脂肪酸が複数結合した脂質や、構造異性体を含む脂質の構造解析を容易に行うことができる。
(10)本発明に係るプログラムにおいて、
前記同定部は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差をインデックスとして、前記データベースの検索を行ってもよい。
(11)本発明に係るプログラムにおいて、
前記同定部は、脂肪酸が同定された場合に、前記プロダクトイオンスペクトルのフラグメントイオンの強度から、同定された脂肪酸の前記ピークリストの各フラグメントイオンの強度を差し引いてもよい。
(12)本発明に係るプログラムにおいて、
前記ピークリストにおいて、各フラグメントイオンの強度は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの強度に対する各フラグメントイオンの強度の比であってもよい。
本実施形態に係る質量分析装置の構成を示す図。 脂肪酸(16,0)のみが結合している脂質のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを模式的に示す図。 脂肪酸(16,1)のみが結合している脂質のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを模式的に示す図。 脂肪酸のピークリストの一例を示す表。 本実施形態に係る同定方法の一例を示すフローチャート。 スペクトル取得部で生成された試料のプロダクトイオンスペクトルの一例を模式的に示す図。 本実施形態に係る質量分析装置の同定部の処理を説明するためのフローチャート。 横軸をプリカーサーイオンの質量電荷比m/zとの差Δm/zとした試料のプロダクトイオンスペクトルの一例を模式的に示す図。 試料のプロダクトイオンスペクトルから作成された試料のピークリストの一例を示す表。 新たに作成された脂肪酸(16,0)のピークリストの一例を示す表。 同定部で新たに作成された試料のピークリストの一例を示す表。 脂肪酸の炭素鎖のなかに1つの不飽和結合がある場合のイメージ図。 炭素鎖総数36・不飽和結合総数2の脂肪酸の構造異性体を示す図。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. 質量分析装置
まず、本実施形態に係る質量分析装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る質量分析装置100の構成を示す図である。
質量分析装置100は、図1に示すように、イオン化部10と、第1質量分離部20と、開裂部30と、第2質量分離部40と、検出部50と、処理部60と、操作部70と、表示部72と、記憶部74と、情報記憶媒体76と、を含んで構成されている。
質量分析装置100は、タンデム質量分析法を用いて、試料の測定を行う装置である。質量分析装置100は、2つの質量分離部20,40の間に開裂部30を設けたタンデム型(MS/MS)質量分析装置である。
具体的には、質量分析装置100では、イオン化部10で試料をイオン化し、第1質量分離部20で特定の質量数のイオン(プリカーサーイオン)を取り出して開裂部30に導
き、第1質量分離部20で選択したプリカーサーイオンから生じた2次的なフラグメントイオン(プロダクトイオン)を第2質量分離部40で質量に応じて分離して検出部50で検出する。
質量分析装置100の分析対象となる試料は、例えば、脂肪酸を含む試料であり、例えば、脂質である。脂質は、その種に応じた構造に脂肪酸が最低1つ結合しており、その脂肪酸の組成や構造により性質が異なる。
試料となる脂肪酸や脂質には、例えば、末端に金属イオンを付加させる等して電荷を固定させる。これにより、質量分析装置100においてタンデム質量分析法で測定することで、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによるフラグメントイオンを観測することができる。先に説明したように、チャージリモートフラグメンテーションとは、イオンの結合の開裂が見かけ上電荷の位置から遠く離れた場所で起こる現象を指す。
例えば、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによるフラグメントイオンを観測する場合には、カルボキシル基にアルカリ金属を付加し、電荷を局在化させる。この場合、アルキル鎖の末端からアルカンに相当する質量が脱離したフラグメントイオンが連続的に検出される。
イオン化部10は、分析対象となる試料をイオン化する。イオン化部10は、脂肪酸を含む試料(脂質)をイオン化する。イオン化部10は、例えば、エレクトロスプレーイオン化法(Electrospray Ionization,ESI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization,MALDI)等により試料をイオン化する。なお、イオン化部10で用いるイオン化法は、特に限定されない。
第1質量分離部20は、イオン化部10で生成されたイオンを質量に応じて分離してプリカーサーイオンを選択する。プリカーサーイオンは、開裂部30に送られる。
第1質量分離部20としては、例えば、飛行時間型(Time−of−Flight,TOF)を用いることができる。なお、第1質量分離部20として、例えば、四重極型(Quadrupole,Q)、イオントラップ型(Ion Trap,IT)、磁場偏向型(Magnetic Sector)等の質量分析計を用いてもよい。
開裂部30は、第1質量分離部20で選択されたプリカーサーイオンを開裂させる。これにより、フラグメントイオン(プロダクトイオン)が生成される。
開裂部30におけるプリカーサーイオンの開裂方法としては、例えば、ガスとの衝突による衝突誘起解離(collision induced dissociation,CID)を用いる。特に、開裂部30におけるプリカーサーイオンの開裂方法として、高エネルギー衝突誘起解離(HE−CID)を用いることが望ましい。高エネルギー衝突誘起解離とは、実験室系で運動エネルギーが数keV以上(例えば1keV以上)のイオンを不活性ガスと衝突させることで行われる衝突誘起解離をいう。質量分析装置100では、高エネルギー衝突誘起解離を用いることにより、プロダクトイオンスペクトルからチャージリモートフラグメンテーション由来のピークパターンを観測することができる。
第2質量分離部40は、開裂部30で開裂されたフラグメントイオンを質量に応じて分離する。第2質量分離部40としては、例えば、飛行時間型(Time−of−Flight,TOF)の質量分析計を用いることができる。第2質量分離部40として、リフレクトロン型の飛行時間型質量分析計を用いることが好ましい。なお、第2質量分離部40
として、例えば、四重極型(Quadrupole,Q)、イオントラップ型(Ion Trap,IT)、磁場偏向型(Magnetic Sector)等の質量分析計を用いてもよい。
第1質量分離部20と第2質量分離部40の組み合わせとしては、例えば、第1質量分離部20および第2質量分離部40がともに飛行時間型質量分析計である場合が好ましい。すなわち、質量分析装置100は、タンデム型飛行時間型質量分析計であることが好ましい。
検出部50は、第2質量分離部40で質量に応じて分離されたフラグメントイオンを検出する。検出部50は、例えば、イオンを電子増倍管やマイクロチャネルプレート等で増感して検出する。検出部50が出力する検出信号は、処理部60に入力される。
PC(パーソナルコンピューター)2は、処理部60、操作部70、表示部72、記憶部74、および情報記憶媒体76を含んで構成されている。
操作部70は、ユーザーによる操作に応じた操作信号を取得し、処理部60に送る処理を行う。操作部70は、例えば、ボタン、キー、タッチパネル型ディスプレイ、マイクなどである。
表示部72は、処理部60によって生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD、CRTなどにより実現できる。表示部72は、例えば、処理部60で生成されたプロダクトイオンスペクトルや、脂肪酸の同定結果を表示する。
記憶部74は、処理部60のワーク領域となるもので、その機能はRAMなどにより実現できる。記憶部74は、処理部60が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部74は、処理部60の作業領域として用いられ、処理部60が各種プログラムに従って実行した算出結果等を一時的に記憶するためにも使用される。
記憶部74には、データベースが記憶されている。データベースには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによる各フラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差の情報、および各フラグメントイオンの強度の情報を含む脂肪酸のピークリストが登録されている。以下、この脂肪酸のピークリストについて説明する。
図2は、炭素鎖数16・不飽和結合数0の脂肪酸(以下「脂肪酸(16,0)」ともいう)のみが結合している脂質のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを模式的に示す図である。図3は、炭素鎖数16・不飽和結合数1の脂肪酸(以下「脂肪酸(16,1)」ともいう)のみが結合している脂質のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを模式的に示す図である。
図2および図3に示すピークパターン(スペクトル)は、上記の脂肪酸をタンデム質量分析法により測定して得られたものである。より具体的には、測定して得られた上記の脂肪酸のプロダクトイオンスペクトル(横軸が質量電荷比m/z、縦軸が強度)の横軸を、プリカーサーイオンの質量電荷比m/zとの差Δm/zに変換したものである。
Δm/z値は、各フラグメントイオンの質量電荷比m/zからプリカーサーイオンの質量電荷比m/zを差し引くことで求められる。したがって、図2および図3に示すスペクトルでは、プリカーサーイオンのΔm/z値は、0である。また、各フラグメントイオンのΔm/z値は、負の値をとる。図2および図3に示すスペクトルの縦軸は、イオンの相
対強度である。
図4は、脂肪酸のピークリストの一例を示す表である。図4に示す表では、図2に示す脂肪酸(16,0)のピークリスト、および脂肪酸(16,1)のピークリストを示している。
脂肪酸のピークリストは、図4に示すように、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによる各フラグメントイオンの質量電荷比m/zとプリカーサーイオンの質量電荷比m/zとの差(Δm/z値、Δm値)の情報と、各フラグメントイオンの強度(Relative Intensity)の情報と、を含む。図4に示すように、脂肪酸のピークリストでは、各フラグメントイオンごとに、Δm/z値、および強度が登録されている。Δm/z値の情報、および強度の情報は、図2および図3に示すスペクトルのピークを検出することにより得ることができる。
脂肪酸のピークリストにおいて、各フラグメントイオンの強度は、相対強度である。脂肪酸のピークリストでは、各フラグメントイオンの強度を、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの強度に対する各フラグメントイオンの強度の比で表わしている。以下、この強度の基準となる脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンを、基準フラグメントイオンともいう。
図4に示す脂肪酸のピークリストでは、脂肪酸の所与の位置を脂肪酸のΔ3位の位置(脂肪酸末端から3番目の位置)としている。すなわち、基準フラグメントイオンを、脂肪酸のΔ3位で開裂して生成されたフラグメントイオンに設定している。この脂肪酸のΔ3位で開裂して生成されたフラグメントイオンの強度は、図2および図3に示すピークパターンからわかるように、他のフラグメントイオンと比べて、強度が大きい。このように、基準フラグメントイオンとしては、プロダクトイオンスペクトルにおいて、特徴的なピークを持つフラグメントイオンを選択することが望ましい。
脂肪酸(16,0)のピークリストでは、基準フラグメントイオンは、Δm/z −184のフラグメントイオンである。そのため、脂肪酸(16,0)のピークリストでは、各フラグメントイオンの強度を、Δm/z −184のフラグメントイオンの強度に対する、各フラグメントイオンの強度の比として示している。
脂肪酸(16,1)のピークリストでは、基準フラグメントイオンは、Δm/z −182のフラグメントイオンである。そのため、脂肪酸(16,1)のピークリストでは、各フラグメントイオンの強度を、Δm/z −182のフラグメントイオンの強度に対する、各フラグメントイオンの強度の比として示している。
脂肪酸のピークリストでは、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差Δm/zをインデックスFとしている。図4に示す脂肪酸のピークリストでは、インデックスFとして、基準フラグメントイオン(脂肪酸のΔ3位で開裂して生成されたフラグメントイオン)を用いている。脂肪酸(16,0)のピークリストでは、インデックスFはΔm/z −184のフラグメントイオンである。脂肪酸(16,1)のピークリストでは、インデックスFは、Δm/z −182のフラグメントイオンである。
脂肪酸のピークリストには、図4に示すように、さらに、不飽和結合の位置の情報を含む。
図4の脂肪酸のピークリストには、例えば、図2および図3に示すスペクトルから検出
されたピークがすべて登録されていてもよいし、基準フラグメントイオン(脂肪酸のΔ3位で開裂して生成されたフラグメントイオン)から、プリカーサーイオン(すなわちΔm/z=0)までの範囲のイオンが登録されていてもよい。
なお、ここでは、データベースには、脂肪酸(16,0)のピークリスト、および脂肪酸(16,1)のピークリストの2つが登録されている場合について説明したが、データベースに登録される脂肪酸のピークリストの数は特に限定されない。例えば、データベースには、試料から想定される各種脂肪酸のピークリストが登録されていてもよい。
情報記憶媒体76(コンピューターにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部60は、情報記憶媒体76に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。情報記憶媒体76には、処理部60の各部としてコンピューターを機能させるためのプログラムを記憶することができる。なお、当該プログラムは、ホスト装置(サーバー)が有する情報記憶媒体からネットワーク等を介して情報記憶媒体76(記憶部74)に配信されてもよい。
処理部60は、記憶部74に記憶されているプログラムに従って、各種の計算処理を行う。処理部60は、記憶部74に記憶されているプログラムを実行することで、以下に説明する、スペクトル取得部62、同定部64として機能する。処理部60の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。なお、処理部60の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)で実現してもよい。
スペクトル取得部62は、検出部50の検出結果から、プロダクトイオンスペクトルを生成し取得する。質量分析装置100では、例えば、分析対象となる脂肪酸や脂質の末端に金属イオンを付加させる等して電荷を固定させた上で、タンデム質量分析法を行うため、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによるフラグメントイオンが観測される。そのため、スペクトル取得部62では、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルを取得することができる。
同定部64は、記憶部74に記録されているデータベースを検索して、スペクトル取得部62が生成した脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する。
また、同定部64は、脂肪酸が同定された場合に、プロダクトイオンスペクトルのフラグメントイオンの強度から、同定された脂肪酸のピークリストの各フラグメントイオンの強度を差し引く。これにより、同定された脂肪酸に由来するフラグメントイオンがプロダクトイオンスペクトルから取り除かれる。そして、同定部64は、同定された脂肪酸に由来するピークが取り除かれたプロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する処理を行う。同定部64は、同定した結果を、表示部72に表示させる処理を行ってもよい。
なお、同定部64の処理の詳細については後述する。
2. 同定方法
次に、本実施形態に係る脂肪酸を含む試料の同定方法について図面を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係る同定方法の一例を示すフローチャートである。ここでは、本実施形態に係る同定方法を質量分析装置100に適用した例について説明する。
まず、質量分析装置100において、脂肪酸を含む試料(脂質)を、タンデム質量分析法を用いて測定し、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含む試料のプロダクトイオンスペクトルを取得する(ステップS10)。
具体的には、イオン化部10で試料をイオン化し、第1質量分離部20で特定の質量数のイオン(プリカーサーイオン)を取り出して開裂部30に導き、第1質量分離部20で選択したプリカーサーイオンから生じた2次的なフラグメントイオン(プロダクトイオン)を第2質量分離部40で質量に応じて分離して検出部50で検出する。
そして、スペクトル取得部62は、検出部50の検出結果に基づいて、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルを生成する。これにより、プロダクトイオンスペクトルを取得することができる。
図6は、スペクトル取得部62で生成された試料(脂質)のプロダクトイオンスペクトルの一例を模式的に示す図である。図6に示す試料のプロダクトイオンスペクトルでは、横軸は質量電荷比m/zであり、縦軸はイオンの強度である。図6に示すプロダクトイオンスペクトルには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンが含まれている。
次に、同定部64は、記憶部74に記憶されている脂肪酸のデータベースを検索して、試料のプロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する同定処理を行う(ステップS12)。ここでは、脂肪酸のデータベースには、図4に示す脂肪酸(16,0)のピークリストおよび脂肪酸(16,1)のピークリストが登録されているものとする。
図7は、本実施形態に係る質量分析装置100の同定部64の同定処理(ステップS12)を説明するためのフローチャートである。
同定部64は、まず、取得したプロダクトイオンスペクトルから試料のピークリストを作成する(ステップS121)。
具体的には、同定部64は、取得したプロダクトイオンスペクトル(図6参照)の横軸(質量電化比m/z)をΔm/zに変換する。
図8は、図6に示す試料のプロダクトイオンスペクトルの横軸(質量電荷比m/z)をΔm/z値に変換した試料のプロダクトイオンスペクトルの一例を模式的に示すスペクトルである。
次に、同定部64は、図8に示すプロダクトイオンスペクトルにおいて、ピーク検出を行い、試料のピークリストを作成する。図9は、図8に示す試料のプロダクトイオンスペクトルから作成された試料のピークリストの一例を示す表である。
試料のピークリストは、図9に示すように、各フラグメントイオンのΔm/z値の情報と、各フラグメントイオンの強度の情報と、を含む。
次に、同定部64は、試料に含まれると想定される脂肪酸の組成から試料のピークリストの検索範囲を設定する(ステップS122)。
例えば、想定される脂肪酸で最も分子量が小さいものの組成を(Cmin,Dmin)とし、想定される脂肪酸でもっと分子量が大きいものの組成を(Cmax,Dmax)とすると、検索範囲は以下の式で表わされる。
−(Cmax−3)×14+Dmax×2−2<Δm/z<−(Cmin−3)×14+Dmin×2−2
想定される脂肪酸の情報は、ユーザーによって入力されてもよいし、同定部64が試料のプロダクトイオンスペクトルに基づいて決定してもよい。
次に、同定部64は、試料のピークリスト(図9参照)から、設定された検索範囲で強度が最も強いフラグメントイオンを探す(ステップS123)。ここでは、同定部64は、図9に示す試料のピークリストからフラグメントイオンΔm/z −184(強度1000)を選択したものとして説明する。
なお、同定部64は、検索範囲を設定せずに、試料のピークリストの全範囲から強度が最も強いフラグメントイオンを探してもよい。
次に、同定部64は、ステップS123で選択したフラグメントイオンΔm/z −184に対して、脂肪酸のピークリスト(図4参照)のインデックスFから該当するものを探す(ステップS124)。
すなわち、同定部64は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオン(基準フラグメントイオン)のΔm/z値をインデックスとして、データベースの検索を行う。
同定部64は、例えば、データベースに登録されている脂肪酸のピークリストのインデックスFのなかから、統計的に最も有意なものを選び出す。
ここでは、同定部64は、ステップS123で選択したフラグメントイオンΔm/z −184と、脂肪酸(16,0)のピークリストのインデックスF(Δm/z −184)が一致するため、脂肪酸(16,0)が該当するものとする。
次に、同定部64は、該当する脂肪酸(16,0)のピークリストと、試料のピークリストとを照合する(ステップS125)。
具体的には、同定部64は、例えば、該当する脂肪酸(16,0)のピークリストの強度(Relative Intensity)に、ステップS123で選択されたフラグメントイオンΔm/z −184の強度1000を掛けて(乗算して)、新たに脂肪酸(16,0)のピークリストを作成し、試料のピークリストと照合する。図10は、新たに作成された脂肪酸(16,0)のピークリストの一例を示す表である。
そして、図9に示す試料のピークリストに、新たに作成された脂肪酸(16,0)のピークリストのフラグメントイオンが一定以上存在する場合には、試料に脂肪酸(16,0)が存在するものと判定する(ステップS126でYES)。この一定の基準は、試料の濃度、積算回数等から設定される。
ここでは、同定部64は、試料のピークリスト(図9参照)に脂肪酸(16,0)のピークリスト(図10参照)のフラグメントイオンが一定以上存在するため、試料に脂肪酸(16,0)が存在すると判定する。
一方、同定部64は、該当する脂肪酸のピークリストと試料のピークリストとを照合して、試料のピークリストに当該脂肪酸のピークリストのフラグメントイオンが一定以上存在しなかった場合(ステップS126でNOの場合)には、再び、試料のピークリストか
ら設定された検索範囲でフラグメントイオンを探す(ステップS123)。このとき、同定部64は、例えば、先に選択されたフラグメントイオンの次に強度が強いフラグメントイオンを探す。そして、同定部64は、ステップS124、ステップS125、ステップS126の処理を行う。
このようにして、同定部64において同定処理が行われる。
次に、同定部64は、脂肪酸が同定された場合(ステップS126でYESの場合)に、試料のプロダクトイオンスペクトルのフラグメントイオンの強度から、同定された脂肪酸のピークリストの各フラグメントイオンの強度を差し引く(ステップS14)。これにより、同定部64は、試料のピークリストを新たに作成する。
具体的には、同定部64は、試料のピークリスト(図9参照)の各フラグメントイオンの強度から、ステップS125において新たに作成された脂肪酸(16,0)のピークリスト(図10参照)の各フラグメントイオンの強度を差し引く。これにより、試料のピークリストが新たに作成される。
図11は、同定部64で新たに作成された試料のピークリストの一例を示す表である。
次に、同定部64は、試料のすべての脂肪酸が同定されたか否かを判定する(ステップS16)。同定部64は、例えば、図11に示す試料のピークリストの検索範囲内にフラグメントイオンが存在していない場合(すなわち各フラグメントイオンの強度が0の場合)には、試料のすべての脂肪酸が同定されたと判定し(ステップS18でYES)、試料のピークリストの検索範囲内にフラグメントイオンが存在している場合には、試料のすべての脂肪酸が同定されていないと判定する(ステップS18でNO)。
試料のすべての脂肪酸が同定されていないと判定された場合(ステップS18でNOの場合)、同定部64は、再び、脂肪酸の同定処理を行い(ステップS12)、ステップS14、ステップS16、ステップS18の処理を繰り返す。そして、試料のすべての脂肪酸が同定されたと判定された場合(ステップS18でYESの場合)、処理を終了する。
具体的には、同定部64は、図11に示す新たな試料のピークリストからフラグメントイオンΔm/z −182(強度1000)を選択する(ステップS123)。次に、同定部64は、同定処理を行い、試料に脂肪酸(16,1)が存在すると同定する(ステップS124〜ステップS126)。次に、同定部64は、図11に示す試料のピークリストから図4に示す脂肪酸(16,1)のピークリストの各フラグメントイオンの強度(Relative Intensity)に選択されたフラグメントイオンΔm/z −182の強度1000を掛けた値(乗算した値)を差し引く(ステップS14)。これにより、新たに作成された試料のピークリストには、フラグメントイオンが存在しなくなる。そのため、同定部64は、試料のすべての脂肪酸が同定されたと判定し(ステップS18でYES)、処理を終了する。これにより、同定部64は、試料に、脂肪酸(16,0)と、脂肪酸(16,1)と、が含まれるとして、処理を終了する。
3. プログラム
次に、本実施形態に係るプログラムについて説明する。本実施形態に係るプログラムは、上述のように、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルから、脂肪酸を同定するプログラムであって、データベースを検索して、プロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する同定部64としてコンピューターを機能させ、データベースには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによって得られる各フラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電
荷比との差の情報、および各フラグメントイオンの強度の情報を含む脂肪酸のピークリストが登録されている。
4. 特徴
本実施形態に係る質量分析装置100では、同定部64は、データベースを検索して、検出部50の検出結果から得られる脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する。また、データベースには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによる各フラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差Δm/zの情報、および各フラグメントイオンの強度の情報を含む脂肪酸のピークリストが登録されている。そのため、脂質のチャージリモートフラグメンテーションによる構造解析を容易に行うことができる。具体的には、質量分析装置100では、例えば、脂肪酸が複数結合した脂質や、構造異性体を含む脂質の構造解析を容易に行うことができる。また、例えば、脂質の構造解析の自動化を図ることができる。
質量分析装置100では、同定部64は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差Δm/zをインデックスとして、データベースの検索を行う。そのため、データベース検索の高速化を図ることができる。
質量分析装置100では、同定部64は、脂肪酸が同定された場合に、プロダクトイオンスペクトルのフラグメントイオンの強度から、同定された脂肪酸のピークリストの各フラグメントイオンの強度を差し引く。そのため、データベース検索の精度を高めることができる。
質量分析装置100では、脂肪酸のピークリストにおいて、各フラグメントイオンの強度は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの強度に対する各フラグメントイオンの強度の比である。そのため、試料のプロダクトイオンスペクトルと、脂肪酸のピークリストとの照合を容易に行うことができる。
本実施形態に係る脂肪酸の同定方法では、データベースを検索して、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する工程を含み、データベースには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによる各フラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差Δm/zの情報、および各フラグメントイオンの強度の情報を含む脂肪酸のピークリストが登録されている。そのため、脂質のチャージリモートフラグメンテーションによる構造解析を容易に行うことができる。
本実施形態に係るプログラムでは、データベースを検索して、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する同定部64としてコンピューターを機能させ、データベースには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによる各フラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差Δm/zの情報、および各フラグメントイオンの強度の情報を含む脂肪酸のピークリストが登録されている。そのため、脂質のチャージリモートフラグメンテーションによる構造解析を容易に行うことができる。
5. 変形例
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上述した実施形態では、脂肪酸を測定して脂肪酸のピークリストを作成していたが、脂肪酸を測定せずに、過去の文献や構造が似ている脂肪酸の解析結果から脂肪酸のピークリストを作成してもよい。
また、例えば、脂肪酸を測定せずにその脂肪酸が結合している脂質の測定結果から脂肪酸のピークリストを作成してもよい。
また、例えば、上述した実施形態では、脂肪酸のテーブルのインデックスを、Δ3位で開裂して生成されたフラグメントイオンのΔm/z値とせずに、他の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンのΔm/z値としてもよい。
また、例えば、上述した実施形態では、2台の質量分析計でタンデム質量分析法を行う場合について説明したが、1台の質量分析計でイオンをトラップしてタンデム質量分析法を行ってもよい。すなわち、第1質量分離部20、開裂部30、第2質量分離部40を一体としてもよい。このような質量分析装置としては、例えば、イオントラップ型質量分析計や、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析計等を用いることができる。
また、例えば、上述した実施形態では、質量分析装置100を用いて測定した結果から、脂肪酸の同定を行ったが、他の質量分析装置で得られたプロダクトイオンスペクトルや、シミュレーションで得られたプロダクトイオンスペクトルから脂肪酸の同定を行ってもよい。この場合、スペクトル取得部62は、例えば、情報記憶媒体76を介して、プロダクトイオンスペクトルを取得してもよい。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…イオン化部、20…第1質量分離部、30…開裂部、40…第2質量分離部、50…検出部、60…処理部、62…スペクトル取得部、64…同定部、70…操作部、72…表示部、74…記憶部、76…情報記憶媒体、100…質量分析装置

Claims (12)

  1. 脂肪酸を含む試料をイオン化するイオン化部と、
    前記イオン化部で生成されたイオンを質量に応じて分離してプリカーサーイオンを選択する第1質量分離部と、
    前記第1質量分離部で選択されたプリカーサーイオンを開裂させてフラグメントイオンを生成する開裂部と、
    前記開裂部で生成されたフラグメントイオンを質量に応じて分離する第2質量分離部と、
    前記第2質量分離部で分離されたフラグメントイオンを検出する検出部と、
    データベースを検索して、前記検出部の検出結果から得られる脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する同定部と、
    を含み、
    前記データベースには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによる各フラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差の情報、および各フラグメントイオンの強度の情報を含む脂肪酸のピークリストが登録されている、質量分析装置。
  2. 請求項1において、
    前記同定部は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差をインデックスとして、前記データベースの検索を行う、質量分析装置。
  3. 請求項1または2において、
    前記同定部は、脂肪酸が同定された場合に、前記プロダクトイオンスペクトルのフラグメントイオンの強度から、同定された脂肪酸の前記ピークリストの各フラグメントイオンの強度を差し引く、質量分析装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、
    前記ピークリストにおいて、各フラグメントイオンの強度は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの強度に対する各フラグメントイオンの強度の比である、質量分析装置。
  5. 脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルから、脂肪酸を同定する脂肪酸の同定方法であって、
    データベースを検索して、前記プロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する工程を含み、
    前記データベースには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによる各フラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差の情報、および各フラグメントイオンの強度の情報を含む脂肪酸のピークリストが登録されている、同定方法。
  6. 請求項5において、
    脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差をインデックスとして、前記データベースの検索を行う、同定方法。
  7. 請求項5または6において、
    脂肪酸が同定された場合に、前記プロダクトイオンスペクトルのフラグメントイオンの
    強度から、同定された脂肪酸の前記ピークリストの各フラグメントイオンの強度を差し引く、同定方法。
  8. 請求項5ないし7のいずれか1項において、
    前記ピークリストにおいて、各フラグメントイオンの強度は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの強度に対する各フラグメントイオンの強度の比である、同定方法。
  9. 脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションのピークパターンを含むプロダクトイオンスペクトルから、脂肪酸を同定するプログラムであって、
    データベースを検索して、前記プロダクトイオンスペクトルから脂肪酸を同定する同定部としてコンピューターを機能させ、
    前記データベースには、脂肪酸のチャージリモートフラグメンテーションによる各フラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差の情報、および各フラグメントイオンの強度の情報を含む脂肪酸のピークリストが登録されている、プログラム。
  10. 請求項9において、
    前記同定部は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの質量電荷比とプリカーサーイオンの質量電荷比との差をインデックスとして、前記データベースの検索を行う、プログラム。
  11. 請求項9または10において、
    前記同定部は、脂肪酸が同定された場合に、前記プロダクトイオンスペクトルのフラグメントイオンの強度から、同定された脂肪酸の前記ピークリストの各フラグメントイオンの強度を差し引く、プログラム。
  12. 請求項9ないし11のいずれか1項において、
    前記ピークリストにおいて、各フラグメントイオンの強度は、脂肪酸の所与の位置で開裂して生成されたフラグメントイオンの強度に対する各フラグメントイオンの強度の比である、プログラム。
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